【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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50話_リタ―ナーズ

さて、天之河達の救出依頼を受けてオルクス大迷宮へと潜って行ったハジメ達の一方、ミュウの子守も兼ねて待機する事となった淳史達はどうしているのかと言うと、

 

「どわっ!?」

「きゃぁっ!?」

「うわっとと!?」

「危なっ!?」

「うぉっ!?」

 

其々が交代でミュウの面倒を見て、残るメンバーが少しでも戦える力を身に着けようと訓練に励んでおり、その一環として各員に支給されたヴィーフリ等の銃火器を使いこなせる様、射撃訓練を行っていた。

ハジメが作り上げた銃火器の有用性は、オルクス大迷宮に初めて潜ったあの頃ベヒモスを相手に少なくないダメージを負わせて足止めに成功する等の例を挙げるまでも無く高い、増してや今は神代魔法の1つである生成魔法を会得し、MSやIS、ストリボーグ等の強大な兵器を開発する等してハジメの錬成師としての技術力も別次元と言って良いレベルにまで上がっている、それを駆使して既存の兵器もマイナーチェンジが何度か行われたのである。

それを、量産性と扱いやすさと言う方向に重点を置いた『ファブリカ*1』モデルを開発、転落前の香織や幸利みたいな非力な人にも扱える程の軽量化や簡素化等の改良を施して作られ、それが淳史達に配布されたのだ。

自分達の主な仕事はストリボーグに乗り込んでの後方支援だったり、現時点でミュウの子守をする等の雑用だったりな役目だが、それも自分の身は自分で問題なく守れる位の実力を有していれば円滑に行えるし、ハジメ達だって安心して前線で力を振るえる、そう思った淳史達は交代交代でミュウの子守をしつつ、町外れの林で射撃訓練を行っていたのである。

ところがいざ発砲してみると、転移前から常日頃その訓練を行っていたハジメと、彼に付き従って銃器の扱いを学んで来た香織達と淳史達とではステータスも練度も全然違うとでも言いたいのか、終始銃に振り回されっ放しだった。

一応、ハジメ達が使用しているヴィーフリにも搭載された、クリス・スーパーVを基にした反動吸収システムはファブリカモデルにも採用されてはいる、だが最大の問題点をハジメは見落としていた。

それはこれらの銃器が使用しているボーク・スミェルチ弾の存在だ。

全元素で2番目に比重が大きいイリジウムを弾芯として採用した事で150gという銃弾としては常識外れな重さを有する事となったこの弾、それを20発込められるヴィーフリのマガジン一杯に詰め、それをグリップ後方にある機関部に装填したらどうなるか。

総重量4kg近くという、本体をも軽く上回る重量物が後方に圧し掛かる訳で、それによって極端な程の後重心と化し、銃撃の度に後方が暴れ回って狙いが定まらなくなってしまったのである。

一応はその対策も兼ねてフォアグリップをオプションパーツとして、ハンドガード部に設けられたピカティニーレールらしき機構に装着出来、淳史達もそれを予め装着して訓練に臨んでいたのだが、寧ろ4kg近くものバラストを加えた重量物の負荷が、狙いをつける為にフォアグリップを握る手、というより腕に圧し掛かってしまい、それに悲鳴をあげた腕が支えきれずに結局は反動で何処へ飛ぶか分からない代物と化してしまったのだ。

一方でサブアームとして同じく配布されたグローサのファブリカモデルは、リボルバーにしては重過ぎる重量とその割には強い反動の所為で長時間の使用には不向きではあったものの、此方は問題なく使用出来る様だった。

 

「とりあえずブルパップ方式は止めて貰おう、普通にグリップの前に機関部設ける感じにして貰おう。こんなじゃじゃ馬ライフル、俺達にはフルオートどころかセミオートですら扱えない」

「そうだね、玉井君。これ、どう考えても使いにくいわ」

「南雲っち達って、ずっとこれを使って戦って来たんだよね。色々とぶっ飛び過ぎでしょ…」

「俺も技能のお陰で敵を狙い撃ちするの得意だけど、これじゃあ狙うどころじゃ無いぜ…」

「モデルに取り入れた南雲も南雲だが、この基になった奴を最初に作った連中は皆頭おかしいだろ…」

 

ヴィーフリのベースモデルであるAsh-12.7みたいなブルパップ方式では無く、普通のアサルトライフルみたいなグリップの前に機関部を有する方式の小銃開発をハジメに要望する、という意見が5人の間で一致したのは言うまでも無い。

その要望が通ったかどうかはまた別の話だが、淳史達の間でハジメの銃火器=色々とぶっ飛んだ人向けという認識が広まった瞬間だった。

 

------------

 

地上において淳史達がヴィーフリの使いにくさを話し合っている一方、天之河達の救出依頼を受け、オルクス大迷宮に入って行ったハジメ達、ISの機能をフル活用した地形を物ともしない高速移動と、ハジメお手製の銃火器での魔物の蹂躙によって、ハジメの脇に抱えられている遠藤が「俺達の苦労は一体…」と呟く程の早いペースで下って行き、僅か十数分で二十階層に到達、其処で遠藤が制止する暇も無く、全ての切っ掛けと言って良いグランツ鉱石の罠を作動、あの六十五階層の奈落に繋がっている空間へと転移し、同時に出現したベヒーモスやトラウムソルジャー達を瞬殺しつつ奈落へと降下、天之河達が潜伏している隠し部屋がある八十九階層と同じ高さに到着した。

 

「さて、最終確認だよ。今回の依頼における目的は天之河達の救出。現在地点はその天之河達と遠藤が別れた八十九階層、魔力感知の反応から言っても未だ天之河達が此処に留まっている可能性が高く、そして此処で戦闘が行われている様子、其処に介入するよ。まず僕がメルキューレを用いた錬成で壁に穴を開け、突入口を作る。出来次第、各員は其々の行動に移る様に。香織は負傷者の治療を」

「うん、ハジメ君!」

「優花、雫は香織達の護衛を」

「ええ、ハジメ!」

「分かったわ、ハジメ」

「ユエとシア、ティオは魔物達の殲滅を」

「ん!」

「了解ですぅ!私のピサニエ・セドモイで抹殺!ですぅ!」

「うむ!妾のティスでBad boysを蜂の巣にしようぞ!」

「トシは僕と同行し、魔人族の女の制圧を頼む」

「お安い御用だ!俺の月光蝶に不可能は無い!」

 

ISならではのホバリングで空中を浮かんでいるという現実離れした光景に遠藤が唖然とする中、ハジメ達は予め打ち合わせしていた内容を確認する。

回復魔法の使える香織が治療担当だったり、月光蝶による無力化を行える幸利が制圧担当だったりと、一見すると適材適所と言えるポジショニングではあるが、それ以上に転移前は『三大女神』と呼ばれる人気者だった香織達をクラスメートの御守に回す一方で、少なくとも向こう側にいるクラスメート全員から嫌われている自分と幸利、彼等とは初対面なユエ達は離れる事で混乱を最小限に食い止め、余計な介入を阻止しようというハジメの考えから、この形となった。

確認を終えたハジメはメルキューレを展開し、壁を侵食するかの如くへばり付かせて錬成を発動、壁に大穴を開けて行き、

 

「よし!突入!」

「「「「「「「了解!」」」」」」」

 

貫通したのを確認したハジメの号令で、スプィーシカを取り出した香織以外の全員がヴィーフリを取り出し、揃って内部の方向へ構え、

 

「お、おい!?まさか!?」

「「「「「「「「撃っちゃうんだなぁこれが!」」」」」」」」

 

何をしようとしているのか理解して焦る遠藤を尻目に、一斉射撃を行った。

 

------------

 

「ふん、こんな単純な手に引っ掛かるとはねぇ。色々と舐めてるガキだと思ったけど、その通りだった様だ。然し、こんなガキに梃子摺るとはねぇ」

 

丁度その頃、天之河達対魔人族の女が率いる魔物の軍勢の戦いは、その趨勢を決しようとしていた。

最初に遭遇した際の戦闘で、一度は魔物の数に物を言わせて追い詰め掛けた一方で、人間族側の勇者である天之河の想像以上の実力を目の当たりにし、割り当てられた魔物の何割かを犠牲にしてしまった魔人族の女は、ただ魔物に襲撃させていては無駄な犠牲を増やすだけだと実感、作戦を変える事にした。

隠し部屋を発見してそれを塞ぐ壁を突破しようと攻撃する魔物達を切り伏せて現れ、皆を守って見せると言わんばかりに油断なく構える天之河に対し、周囲に待機させていたブルタールらしき魔物に命じて何かを持って来させた。

その光景に一体何だと言わんばかりに訝しむ天之河だったが、その持ち込まれた物を見て愕然とする。

それは七十階層で転移魔法陣を守っていたメルド、配下の騎士達と共に魔物の軍勢と遭遇して戦い、皆殺しにされた彼らと同様、瀕死の重傷を負っていたメルドだったのだ。

その姿に激昂した天之河がメルドを救けようと我を忘れて突進を敢行したのだが、それこそ魔人族の女の思う壺、待ってましたと言わんばかりに、牙の生えた馬らしき頭、某2秒間に1000発ものパンチを放つポケモンみたいな4本の腕と筋骨隆々の体躯を有した魔物が奇襲を仕掛け、咄嗟にガードの構えをとった天之河をそれごと粉砕、その後は少なくないダメージを負っていた彼を戦闘不能に追い込んだ事で勝敗は決したと言って良い。

戦闘が終わった事を物語る様に静かになった洞窟内、それを受けて隠し部屋に潜伏していた坂上達が警戒心を解く事無く出て来るが、その表情は、瀕死の重傷を負って馬頭の魔物に捕まっている天之河の姿を目の当たりにした事で絶望に染まった。

それを尻目に己の仕事を全うしようと改めて鞍替えの話を持ち掛けようとする魔人族の女、今では相手側の頼みの綱である天之河も、魔人族=諸悪の根源だと思い込んでいる為に持ち前の正義感から絶対話を聞かなかった天之河も口を挟む事は出来ない、そう判断して再び話を持ち掛けようとしたその時だった。

 

『ガァァァァァァァァ!?』

「な!?一体、何が起こっているんだい!?」

 

突如として響き渡った炸裂音と共に身体が蜂の巣の如く無数の風穴が空き、断末魔の悲鳴をあげて絶命していく魔物達、まさかの事態に魔人族の女が驚きを隠せなかったのは言うまでも無い。

一方、唐突に魔物達が次々と死んでいく光景に驚いたのは坂上達も同じと言えば同じではあったが、魔人族の女とは違ってそれを成し遂げている炸裂音の正体に覚えがあった。

まさかアイツらが、いやアイツらはこのオルクス大迷宮の奈落の底に落ちて死んだ筈、と魔人族の女とは別の意味で困惑しきりな坂上達、その疑問にお答えしますと言わんばかりに8人の人影がその場に突入、それは言うまでも無く、

 

「か、カオリンに、シズシズに、ユカリン?」

「うん、鈴ちゃん」

「ええ。雫よ、鈴」

「まあ色々と変わっちゃったけどね」

 

件の、オルクス大迷宮の奈落の底に消えた4人と行方不明だった筈の幸利、及び道中でハジメの恋人となったユエ達だ。

ハイパーセンサー、及びハジメとシアがXラウンダーによる近未来予知で戦況を把握、魔物達に捕まっていたメルドと天之河を確保して後方へと避難させて持ち場についた彼らは、こう、帰還を宣言した。

 

「ソロモンよ!」

「「「「「「「「私は帰って来た!」」」」」」」」

*1
ロシア語で工場

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