【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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※閲覧注意
今話以降、リリアーナへのハートフルボッコな展開が続きます。
リリィファンの方は特に、注意が必要です。


55話_その名はリリアーナ・ハイリヒ

行方不明だったハジメとの思わぬ邂逅から数時間後、空に朝日が昇り、ハジメ達がホルアドに到着した頃、リリアーナはこの後の行動に向けて、ハジメから受け取った武装の準備を進めていた。

お抱えのメイドであり、自分の下で秘密裏に拘禁している檜山達の管理等表に出せない事でも力になってくれているヘリーナに事情を『多少伏せて』説明、彼女の手伝いでプラグスーツに着替えてISを展開。

ヘリーナが退室した後、2丁あるグローサのシリンダーをスイングアウトしてボーク・スミェルチ弾を装填、ヴィーフリ及びヴァイクロップスもマガジンを外して弾を込めて装着し直し、弾が装填済みの給弾ベルトをヴィントレスに取り付けた。

カスチョール及びヴィーフリの銃身下部レールに取り付けられたアブーフカに専用の40×46mmグレネード弾を込め、それを既に装填した給弾ベルトを、ハジメがオルクス大迷宮で開発した銃火器の1つである自動式グレネードランチャー『プラミヤ*1』に取り付ける。

こういった銃火器やMS等の兵器の扱い方は、ISに搭載されている電子取扱説明書的な機能で教えて貰ったからか、初めて使う上に現代兵器の『げ』の字も分からない筈のリリアーナにしては問題なく準備を進められていた。

こうして安全装置を解除さえすれば何時でも発射出来る状態にした銃器を宝物庫内のパーソナルスペースへ次々と転送し、

 

「ハジメさん。どうかこの国の、この世界の未来を切り開く為に、私に力をお貸し下さい」

 

最後に、2丁あるグローサのうちの1丁を両手で握りしめ、まるで祈りを捧げるかの如く額に付け、これら武装(強大なる力)を授けてくれたハジメに縋る様な言葉を口にしてから宝物庫へ送り、ヘリーナを呼び戻してプラグスーツの上にドレスを着用してから部屋を出た。

これから行方不明になっているハジメ達の捜索、という名の身辺調査を行っていた兵士達からその結果が報告され、それを基に重臣らが集まって今後の対応が協議される予定だ、その場には王族であり政治にもある程度関わっている自分も参加する事になっている。

もしかしたらその場でハジメ達を異端者認定する決定が下されるかも知れない、ハジメの恋人であり彼らの教師でもある愛子の作農師としての実績を踏まえれば、彼女の気質も相まって大それた事は出来ない筈だが、どうも最近、今まで以上に聖教教会に傾倒して『エヒト』を崇める様になった両親や重臣達の様子を見たらそれも怪しいかも知れない、そもそも何処か機械的と言うか、上層部のイエスマンみたいになってしまった兵士達がその意向を汲んで悪い報告をしているのかも知れない。

とはいえまだこの時は、ハジメから直接聞いたウルの町における魔物の大軍との戦いやフューレンにおけるフリートホーフ摘発といった活躍と、愛子の存在をあげて理性的な対応を求めれば、それを王族である自分が求めれば父であるエリヒド王も考え直してくれる可能性はあるんじゃないか?という考えがリリアーナにはあった、天之河の横槍で有耶無耶にはなってしまったが自分の告発を受けて檜山達がハジメに仕出かした悪行を罰しようとした事もある、それを踏まえれば今回も自分がその報告をし、考え直す様求めれば無碍にはしないかも知れないと彼女は思った、銃火器の類を『ほぼ』全て宝物庫に保管したのも、着付けをするヘリーナを驚かせない為というのもあるが、話し合いの場に武器の類など必要ない、それを持ち出したら話し合いという名の脅迫になってしまうという理由が大きかったからだ。

あくまで何もかもが手遅れになったと分かったら銃火器の使用も、父エリヒドや重臣達を皆殺しにする事も、力に物言わせた王位の奪取(クーデター)も辞さないだけで、使わないに、話し合いで解決出来るに越した事は無い、それがリリアーナの考えだった。

 

ところが、事態はそんなリリアーナの想いなど通じないと彼女が思い知る程悪化してしまっていた。

リリアーナもその場に加わって始まった協議の場、やはりと言うべきかハジメ達の此処最近の動向についてかなり悪し様に報告されていた様で、エリヒドは即座にハジメ達を異端者として認定する旨の決議をとり、重臣達もこぞって賛成の意を示した。

とはいえそれはリリアーナの想定内の事態、其処で彼女は賛成一色に染まる重臣達を制止しつつハジメ達の功績を報告し、豊穣の女神として名高い愛子の存在も引き合いに出して考え直す様、せめて慎重な対応を取るべきだと主張した。

だがリリアーナの想いなど知った事かと言わんばかりにエリヒドは決議を強行、止めようとする彼女を信仰心が足りない等と叱り飛ばし、挙げ句には娘では無く敵を見る様な目で、これ以上発言したらお前も同じく異端者とするぞと脅し、重臣達もそれに追従するという光景を目の当たりにして漸く理解した、理解してしまった。

 

もう、自分の愛する家族も、親しき重臣達も邪神の手で洗脳され、憎き敵の操り人形と化してしまったんだ、何もかもが手遅れになってしまったんだ、と。

 

そう確信したリリアーナの行動は早かった。

 

「其処まで、其処まで邪神に魅入られたかエリヒドォォォォ!」

「な、ぐぁっ!?」

「へ、陛下!?」

 

最早自分の手ではどうにもならないと思い知った絶望の叫びをあげながら懐に忍ばせていたもう1丁のグローサを抜き取ってエリヒドへと発砲、ISを展開していないが故にハイパーセンサーは使えず、グローサに設けられた照準器も使わないクイックドロウなのでアバウトにしか狙えず、PICの補助も無いので発砲の反動でブレるも、放たれたボーク・スミェルチ弾は標的であるエリヒドの腹部に直撃した。

まさかの事態に慌てふためく重臣達と、食らった位置が位置であるが故か激痛で指示の出せないエリヒド、その隙を突いてリリアーナはドレスを早脱ぎしてプラグスーツ姿となり、ISを展開、ヴィントレスを取り出して構えた。

 

「もう一度言います。今直ぐにハジメさん達を異端者に認定する決議を撤回しなさい。さもなくば貴方達を全員殺してこの決議を握り潰します!」

「だ、誰か!ハイリヒ王家に、エヒト様に牙剥くこの逆賊を討て!」

 

これが最後通牒だと言わんばかりにヴィントレスの銃口を向けながら要求を突きつけるリリアーナ、だがエリヒドがそれを聞き入れる事はなく、それどころか全く耳に入っていないと言いたげな様子で、今出せる限りの声で王宮内にいるだろう兵士達を呼び出し、リリアーナを処刑する様命じた。

最早自分の事など娘でも何でもない、王家に、エヒトに牙を剥いた『異端者』としか見ていない事実に今一度胸が締め付けられる様に感じたがそれを顔に出す事無く、

 

「交渉の余地なし、ですか。では仕方ありません。己の愚かさを恨みながら散りなさい!」

『ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 

ヴィントレスを乱射、ISが有する各種機能のサポートを存分に活用し、この場から逃げ出そうとする重臣達を寸分の狂い無く射殺していく。

この場に生きている者が自分自身とエリヒドのみ、つまり重臣達全てを撃ち殺したタイミングで外が騒がしくなるのを聞き取ったリリアーナ、恐らくはエリヒドが呼び掛けた兵士達が駆け付けたのだろう、それを見越して今度はプラミヤを展開した。

 

「弾が勿体ありませんし、これで殲滅します!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「我が怒りよ、雷となりて、敵を討たん!狙い打ちます!」

「あぐっ!?」

 

扉が開かれる瞬間を狙って何発かの対人榴弾を発射、扉の前にいた兵士達は勿論、その横、つまりは壁を隔てた向こう側にいた兵士達すらも巻き込んで蜂の巣に変え、その大軍に風穴が空いたのを見たリリアーナは扉の前へと急行しながら、今度はヴァイクロップスに持ち替えると共に詠唱、彼女用に組み込まれた魔法陣を起動させて高圧電流を流し込みレールガンの機能を働かせ、秒速数kmのボーク・スミェルチ弾が一直線に並んだ兵士達を皆揃って消し飛ばした。

これで後は深手を負ったエリヒドのみ、そのエリヒドをも撃ち殺さんとグローサに持ち替え、余りの惨状にへたり込んでいる彼へ1歩、また1歩と歩みを進めていく。

 

「おのれ、おのれリリアーナ!貴様、血迷ったかぁぁぁぁ!」

「貴方が悪いんだ!貴方が裏切るからぁぁぁぁ!」

「ぐぅっ!?」

 

その圧倒的な力に、鬼気迫る姿に恐れをなしながらも、あくまでも自分は悪くない、悪いのはエヒトルジュエに刃向かうハジメ達及びそれを擁護するリリアーナだと言わんばかりに非難の声を上げるエリヒド、そんな父にリリアーナは己の想いの丈を叫びながら、眼から一筋の涙を流しながらグローサを発砲、放たれたボーク・スミェルチ弾はエリヒドの右眼から脳内を貫き、今度こそその命を刈り取った。

 

「あ、姉う、うぐっ!?」

「り、リリアーナ、これは、きゃぁ!?」

 

そんな騒ぎを聞き付けたのだろう、母であるルルアリア王妃は政治の表舞台に出る立場を取らない事から、弟であるランデル王子はまだ年端もいかない身である事から、共に協議の場に参加していなかったのだが、ただ事では無いと判断して急行、リリアーナが起こしたその惨状を目の当たりにして言葉を失った。

だが既に親しき重臣達も、父であるエリヒド王を射殺したリリアーナの辞書に自重という文字は無かった、その存在を認識するや否や即座にグローサを発砲、ルルアリアは心臓部、ランデルも首元を貫かれた。

 

「あ、姉上、何故…?」

 

撃たれた箇所が箇所だ、ルルアリアは即死、ランデルもそう長くは生きられないだろう。

その残り僅かな生命力を振り絞って、ランデルは自分の姉にどうしてこんな事をと問い質し、その僅か十年の生涯を閉じた。

そんなランデルの問いに対し、リリアーナは泣きじゃくりたい気持ちを必死に抑えながら、こう答えた。

 

「申し訳ありません、母上、ランデル。ですが貴方達を生かしておいては後々、禍根の源となりうるでしょう。ハジメさん達の邪神討伐と言う目的の為、ひいてはこのハイリヒ王国の為、トータスの為にも、その禍根は刈り取っておかねばならないのです。それが例え、愛する家族であろうとも」

 

こうしてリリアーナがたった1人で決行したクーデターは実に呆気なく成功、重臣も自分以外の王族も皆殺しにした今、ハイリヒ王家の血をただ1人引く彼女が実権を掌握する事となった。

だがリリアーナの心中に権力を手にした達成感など無く、その眼からは今も尚、大粒の涙が流れていた。

*1
ロシア語で炎。ロシアのトゥーラ造兵廠で設計・開発された自動式グレネードランチャー『AGS-17』の愛称でもある

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