【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

6 / 107
3話_ステータスプレート

このトータスにおける人間族と魔人族の戦争に、人間族側の勇者として参加して欲しいというイシュタルからの要望を全員(最後まで反対していた愛子もハジメの「今は表向きだけでも従おう」という説得で折れた)承諾したが、幾ら規格外の力を宿したといってもそれだけで魔人族や魔物と戦える訳では無い。

自衛官になる事を志望し、その為に外国の射撃場で様々な実銃の扱いを覚えたり自衛隊に体験入隊して訓練を受けたり等、戦場に出る可能性も視野に入れて鍛錬を積んだハジメだが実際に戦地に赴いた事は流石に無い、増してハジメ以外の、戦争なぞ無縁な環境にどっぷりと浸かりきった日本の高校生である生徒達及び愛子の練度などお察しくださいと言うしかない。

とはいえ教会側もそれは織り込み済みだった様で、イシュタル曰くこの聖教教会本山が建てられている『神山』、その麓に建国されている『ハイリヒ王国』にて受け入れ態勢が整っているとの事だ、恐らくハイリヒ王国に滞在しながら、王国直属の兵士等から戦闘訓練を受ける事になるだろう。

そのハイリヒ王国、教会とは密接な間柄らしく、エヒトの眷属であるシャルム・バーンという人物が建国した、此処トータスにおいて最も伝統ある国である。

そんなハイリヒ王国に行くべく下山する為、教会の正門前にやって来たハジメ達、その視界には此処が高山である事を知らしめる雲海が広がっていた。

特有の息苦しさなど感じなかった(このファンタジーな世界観から、恐らく魔法で気圧等の環境を整えた為だろう)のもあって高山にいたとは気づかなかったハジメ達は思わず、太陽の光を反射してキラリと煌めく雲海、遮蔽物1つ無い透き通った青空という雄大な景色に見惚れていた。

そんな彼らの反応に気を良くしたイシュタルに促されて、大聖堂で使われているのと同様、大理石で出来ているらしい美しい回廊を進むと、柵に囲まれた大きな円形の白い台座が見えた。

促されるまま台座の中央に身を寄せた生徒達を確認したイシュタルは、好奇心を抑えきれずキョロキョロと周りを見回す彼らを他所に、

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――『天道』」

 

何かしらの詠唱を唱えると、台座中央に刻まれた巨大な魔法陣が光り輝き、それと共にロープウェイの如く台座が動き出し、斜め下に下って行った。

どうやら今しがたイシュタルが唱えた『天道』なる魔法はこの魔法陣を起動させる物だった様だ、その初めて見る『魔法』に生徒達がキャッキャッと騒ぐ中、

 

(まるで危機感が無いね、皆して。これが県下の難関校である南陽高校の生徒なのかな?この世界とか、戦争とか、エヒトとか、考えなきゃいけない事は山ほどあるのにそうしようともしない。

…まあ、未だに僕の制服の袖を離さない香織達、締まった顔したトシ、何処か思いつめた様子の愛子は不安を感じている辺り問題なさそうだけど。頼れるのは今の所この5人だけ、か)

 

ハジメは相変わらず冷静に周囲を見回し、頼れそうな存在を把握するが、転移前から近しい仲である5人以外は何も考えていないんじゃないかと呆れた様だった。

然しながら今嘆いていても仕方がない、この状況からより早く、より安全に脱出すべく出来る事をやって行くしかないと、改めて決意を固めたのだった。

 

------------

 

当面の滞在地であるハイリヒ王国に到着し、其処で文官武官、貴賤貧富、老若男女関係なく期待や畏敬に満ちた眼差しを向けられた事で自分達がどういう立場で見られているか(少なくともハジメは)実感したり、国王エリヒド・S・B・ハイリヒよりも教皇であるイシュタルの方が偉いという力関係を目の当たりにしたり、王子であるランデルが香織に一目惚れしたらしく、その恋人であるハジメをまるで仇敵を見るかの様に他の(幸利を除く)男子と共に睨み付けたり、天蓋付きベッドが設けられた個室を割り振られて落ち着かなかったりと色々あった転移初日から一夜明け、早速訓練と座学が始まる事となった。

その指導担当となった、ハイリヒ王国騎士団長であるメルド・ロギンスは、部下が12センチ×7センチ位の銀色のプレートを生徒達に配り終えたのを見計らって説明を始めた。

 

「よし、全員に配り終えたな。このプレートはステータスプレートと呼ばれていてな、文字通り自分の客観的なステータスを数値化して、示してくれる物だ。また最も信頼のある身分証明書にもなる。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

と、昨日の士官達が向けていた畏敬の念からは想像もつかない程気楽な口調で話した。

本人曰く「これから戦友になろうってのに何時までも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士達にも普通に接する様に忠告したそうだ。

生徒達も遥か年上の偉い人から慇懃な態度を取られては居心地が悪くてしょうがなかったので、その方が良かった。

尚、騎士団長という偉い人が自分達の訓練に付きっ切りでいいのかと考えたハジメ達だったが、対外的・対内的にも『勇者様一行』を半端な者には預けられないという訳から、ハイリヒ王国はおろかトータスの人間族全体でもトップクラスの強さを持つ彼が抜擢されたそうな。

尤も本人は「むしろ面倒な雑事を副長に押し付ける理由が出来て助かった!」と豪快に笑いながら爆弾発言をしていたが…

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。其処に、一緒に渡した針で指に傷を作り、魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。『ステータスオープン』と言えば表に自分のステータスが表示される筈だ。ああ、原理とか聞くなよ、そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

「アーティファクト?」

 

そんな指導担当にメルドが就いた経緯はさておき、説明をしていた最中に聞き慣れない単語を耳にした天之河が早速質問をする。

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現出来ない強力な力を持った魔法道具の事だ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。ステータスプレートもその1つでな、それを複製するアーティファクトと共に、昔からこの世界に普及している唯一の物だ。普通、アーティファクトと言えば国宝になる物なんだが、これは一般市民にも流通している、身分証にも便利だからな」

 

質問に対するメルドの答えになるほど、と頷いた生徒達は、指先に走る痛みに顔を顰めながらも針でチョンと刺し、浮き上がった血を魔法陣に擦り付ける。

すると魔法陣が一瞬輝き、

 

======================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1 天職:錬成師

筋力:55

体力:255

耐性:25

敏捷:225

魔力:25

魔耐:25

技能:錬成・精錬・狙撃・乱撃・縮地・先読・隠業・短剣術・格闘術・新型(ニュータイプ)・言語理解

======================

 

(なんでやねん、何でファンタジーな異世界に来といてニュータイプなんて単語が出て来んねん、僕は宇宙世紀の世界で生まれたスペースノイドかいな…)

 

ゲームのキャラクターの如く表示されたステータス、その中の1つである技能欄に表示された、はっきり言ってこのファンタジーな世界に似合わない単語に思わず心の中で、関西弁で突っ込んだハジメ。

 

「全員見れたか?なら説明するぞ。最初に『レベル』があるだろう。それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100で、それがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達出来る領域の現在値を示していると思ってくれ。まあレベル100に至った奴、人間としての潜在能力を全て発揮する極致に至った奴はそうそういないがな」

 

そんなハジメの心中はさておき、全員がステータスプレートに自らのステータスを表示させたのを確認したメルドは説明を続けた。

一般的なゲームはレベルが上がる事でステータスが上がる物だが、此処トータスではその逆らしい。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法道具で上昇させる事も出来る。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しい事は分かっていないが、魔力が身体スペックを無意識に補助しているのではないかと考えられる。それと後で、お前達用に装備を選んで貰うから楽しみにしておけ。何せ救国の勇者御一行だからな、国の宝物庫大開放だぞ!」

 

この説明だと、どうやらゲームみたいに強力な魔物を倒せばステータスが一気に上昇する、というご都合主義は起こらない様で、強くなるには地道に特訓や実戦を積まねばならないらしい。

 

「次に『天職』ってのがあるだろう。それは言うなれば『才能』だ。末尾にある『技能』と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に1人、物によっちゃあ万人に1人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが、百人に1人、物によっちゃあ十人に1人という珍しくない奴もある。中でも生産職は持っている奴が多いな」

 

その天職と言う項目に関する説明を聞き、自らの天職である錬成師がどの様な職業かハジメは想像した。

錬成、と聞いて真っ先に思い浮かんだのが『機動戦士ガンダムSEED』シリーズの繋ぎみたいな形で同じ局・曜日・時間に放送されたアニメの主人公。

義手である右手を色々な武器に組み替えたり、地面に含まれる金属分子を用いて武器を生成したりして戦う国家錬金術師の男、その名は…!

 

「後、各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10位だな。まあお前達ならその数倍、場合によっては数十倍高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ、訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

と、自分の天職に基づいた戦い方をイメージしていたハジメだったが、メルドの説明は終わっていなかった。

その呼び掛けに応じて天之河がステータスの報告をしに前へ出た、そのステータスは…

 

======================

天之河光輝 17歳 男 レベル:1 天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

======================

 

「ほぉ、流石勇者様だな。レベル1で既にオール三桁か。技能も普通は2つ3つなんだがな。規格外な奴め、頼もしい限りだ!」

「いやぁ、あはは…」

(うわっ…僕のステータス、歪すぎ…?)

 

メルド曰くチートの権化と言うしかないステータス、その全体的に高い数値を見聞きしたハジメは、それを見た上で自分のステータスが如何に歪か、某ネット広告のキャッチフレーズの如く唖然としていた。

それも無理は無い、全ステータスの数値を合計すると僅かながら天之河を上回ってはいるが、その8割近くが体力と敏捷に割り振られており、後は筋力が高めな一方、防御面と魔力が今一歩(それでもこの世界の平均よりは上だが)という極端な配分となっていたのだから。

だがそんなハジメを他所に時間は進んで行く、天之河に続いてクラスメートが続々と報告し、皆が彼程では無いにしても(この世界においては)十分にチートなステータスと、千人に1人な筈の戦闘系天職を持つ者ばかりだった。

そしてハジメが報告する番がやって来た、これまで規格外のステータスばかり確認して来た影響かホクホクとした表情のメルドだったが、そのステータスプレートを見るや否や、その笑みは益々輝いた。

 

「おぉ、総合力で勇者様を上回るか、これは凄い!中でも体力と敏捷の数値が凄まじい、もう今の俺に迫る程の値を叩き出すとはな!」

 

メルドのレベルは62、各ステータスは300前後である、ハジメの体力と敏捷は、レベル1で既にこの世界のトップクラスを誇るメルドにすら迫っていたのだ、彼の絶賛も頷けるだろう。

だがそれも束の間、天職の項目に記された『錬成師』の表記に困惑の表情を浮かべた。

 

「それだけに、天職が錬成師なのは気になるな。錬成師と言うのは、まあ言ってみれば鍛冶職の事だ。鍛冶を行う際に便利だとか。それに技能の欄だが、最初に書かれた錬成や精錬はまだしも、錬成師と関係ない技能ばかりが習得されているのはどういう訳だ?まああって困る様な技能では無いし、高いステータスを活かせはするが…」

 

歪だが天之河をも超える高ステータス、戦闘面でそれを十分に活かせる技能、だが天職は明らかに非戦系、と余りに滅茶苦茶なハジメのステータスプレートを目の当たりにし、困惑しきりなメルド。

それをどう捉えたか、此処ぞとばかりにハジメを責め立てんとする存在がいた。

 

「おいおい南雲、錬成師ってのはつまり非戦系だろ?そんなんで戦える訳?」

 

天之河と同じ位、或いはそれ以上に、ハジメを目の敵としている男子、檜山(ひやま)大介(だいすけ)だ。

中学時代の事件及び『三大女神』全員と恋人という明らかにハーレムを形成している事から大半のクラスメートから嫌われているハジメ、中でも檜山は香織に歪んだ好意を抱いている様で、そんな香織と恋人であるハジメの事を蛇蝎の如く嫌っており、取り巻きである中野(なかの)信治(しんじ)斎藤(さいとう)良樹(よしき)近藤(こんどう)礼一(れいいち)と共に、一方的に突っかかって来るのだ。

とはいえその性根は、弱い者に対しては痛めつけて優越感に浸る一方、強い者には媚びへつらう事しか出来ない卑劣な小心者、中学時代に『そっち系の人』を脅迫した(事になっている)ハジメに正面切って突っかかれる様なデカい態度は持ち合わせておらず、悪知恵を働かせて潰そうとしてきたのだ。

例えばその風貌と趣味から『キモオタ』と蔑まれる幸利と親友な事から『キモオタとつるむ奴は皆キモオタ』と飛躍した理論でハジメを『キモオタ』扱いする。

例えば伝手を利用して何十人もの不良仲間を呼び出してハジメを袋叩きにしようとする。

例えばハジメが返り討ちにした様子を写真や映像にして「南雲に暴力を振るわれた」と教師や天之河に泣きつく、等々。

だがそれらの悉くが効果が無い、或いは対策済みで逆襲され、檜山達の悪評が広まるだけの結果に終わって以来、目の敵にはしつつも手を出そうとはしなくなり、ハジメにとっては効果の無い噂を流すしか出来なかったのだ。

然しながら今トータスに転移された際、正に俺TUEEEE!と言える様な力が自分達に宿った一方、不倶戴天の敵と言って良いハジメは戦いで役に立たない天職、と付けあがった檜山はハジメのステータスが総合的に天之河をも凌駕する事も既に頭にない。

だが生憎、ハジメは1人ボッチでは無い。

 

「はっ!想像力の無い奴はこれだから困る」

「んだとキモオタ!」

「お前高校生にもなって鋼の錬金術師も知らねぇのかよ、パッパラピ山」

「ああ、ハガレン!面白いですよね、ハガレン!私も小さい頃アニメ見ていましたよ~」

 

そう、檜山がキモオタと蔑む、ハジメの親友である幸利だ。

幸利は既に(ハジメもだが)、錬成師の才を戦闘で活かすアイデアを、その基となった人気アニメの主人公の存在が頭にあったのだ。

そしてその発言に、そのアニメをリアルタイムで見ていたらしい愛子が反応した。

 

「はがれん?鋼の錬金術師?そりゃあ一体?」

「鋼の錬金術師、略してハガレン。僕達の世界では有名な冒険物語です。錬金術師、トータスにおける錬成師を生業としている主人公エドワード・エルリックが、実験の失敗によって失った自分達の身体を取り戻す為の旅をするというストーリーで、その中でエドワードは錬成によって、義手となっている右腕を武器に組み替えたり、地面の成分を利用して武器を生成したりして立ちはだかる強敵と戦います」

「地面から武器を!?成る程な、如何なる才能も使い方次第、という訳か。勉強になったよ」

 

幸利たちの発言で挙げられた言葉が何なのか疑問を投げかけるメルド、それに答えたのはハジメだ。

錬金術師エドワード・エルリックを主人公としたそのアニメのストーリーを、其処で見せたエドワードのバトルスタイルを聞き、驚くと共に感心するメルド。

その様には檜山も反論する余地はなく、舌打ちしながら引き下がるしかなかった。

 

「そういえばハガレンで思い出したのですが、私の天職もハガレンの原作者が描いた漫画繋がりみたいなんです。ある意味ハジメ君とお揃いで、ちょっぴり嬉しいですね」

 

それはさておき、そう言いながら愛子がステータスプレートをハジメ達に見せた。

其処には、こう書かれていた。

 

======================

畑山愛子 25歳 女 レベル:1 天職:作農師

筋力:5

体力:10

耐性:10

敏捷:5

魔力:100

魔耐:10

技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・鎌術・言語理解

======================

 

「…もしかして銀の匙の事?」

「はい、そうですよ」

「さ、作農師!?」

 

愛子が言っていた漫画が何なのかという話題で話そうとしていたハジメ達だったが、その表記にメルドはそれを遮るかの如く驚きの声を上げ、部下に何かしらの指示を出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。