【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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59話_多目的大砲

「これは貴方の差し金ですか、イレギュラー?」

 

ヴァスターガンダム及びストリボーグに乗り込んで、エヒトルジュエの眷属達が集結している神山上空へと飛来したハジメ達、其処には見渡す限りの人、人、人…いや、同じ顔をした眷属達がいた。

先程ハジメは、地上から見た限りでも十や二十、百や二百ではきかない大軍とは思っていたものの、いざ戦場である神山上空に辿り着いて見渡してみると、5桁は下らないんじゃないか?と言いたげな群れである事が分かった、何としても自分達を排除すべく、投入できる限りの眷属達を投入したと言わんばかりである。

とはいえ、何人束になって来ようが殲滅するだけだとハジメ達は特に焦る事は無く、寧ろエヒトルジュエの方が焦りに焦って、なりふり構っていられないんだろうなぁと感じただけだが…

そんなハジメ達を他所に、彼女(?)達の代表とでも言いたげな最前列の眷属がハジメに問うた。

 

「…否定はしない。僕がリリィに銃火器等を渡さなければこの事態は起きなかっただろうから」

 

恐らくはハジメ達の異端者認定を阻止しようとリリアーナが起こしたクーデターの事を聞いているのだろう、そう思ったハジメは胸が締め付けられる様な感覚に顔をしかめながらも素直に答えた。

どうせ眷属達及びその主たるエヒトルジュエは兵器の出処など分かっているのだから、何と答えようと向こうが自分達を排除する事は、自分達がそれを拒絶して戦争する事は変わらないのだから、と。

 

「主の意志を尽く妨げる貴方は、いや、貴方達は皆、この世界には不要です。主の名の下、排除します」

「それは不可能だ。お前達に僕達を殺す事など出来やしない。何故なら僕は、僕達は」

「「「「「「「「「ガンダムだから!」」」」」」」」」

 

その返答を聞いた眷属達は、エヒトルジュエのそれをそのまま受け継いだかの様な傲慢な宣言と共に武器を構え、ハジメ達が搭乗するヴァスターガンダムやストリボーグに飛び掛かろうとしたが、ハジメ達が動くのが早かった。

 

「行け、ビットブラスター!」

「くっ!?こ、これは!?」

 

問答をしながら魔力をビットブラスターに密かに充填していた、ハジメが搭乗するアヴグストはビットブラスターを戦闘開始と共に腰から外して飛行させ、其々を乱射させながら戦場を飛び交わせたのだ。

開始早々に行われる奇想天外且つ掠っても終わりな一撃の嵐によって多数が塵と消える状況には流石に動揺を隠せなかったのだろう、焦りの声を上げる眷属だが、ハジメ達は更に畳みかける。

 

「私は、私達は、貴方達を許さない!」

 

香織が搭乗するアクチャブリは、ウイングガンダムゼロのツインバスターライフルをイメージして造られた、両太腿に1門ずつマウントされているマルチプルカノン『レッグブラスター』を取り出し、

 

「私達の世界を、その日常を脅かすと言うのなら、誰であろうと捻じ伏せる!」

 

雫が搭乗するナヤブリは、其々の二の腕に装着された機関部に、前腕に装着された砲身を装填、ガンダム・バルバトスルプスの腕部ロケット砲をイメージして造られたマルチプルカノン『アームブラスター』に組み立て、

 

「アンタ達の身勝手は私達が止める!今日、此処で!」

 

優花が搭乗するフィブラリは、ガンダムヴァーチェのGNキャノンをイメージして造られた、両肩に1門ずつ装着されたマルチプルカノン『ツインブラスター』にエネルギーを充填、

 

「これ以上、このトータスを貴様達の好きにはさせない!その犠牲になるのは、私で最後です!」

 

リリアーナが搭乗するイユリは、背中に展開させていた翼型パーツを肩部へ動かし、それを大砲の砲身らしき物体へと変形させ、付け根部分に設けられた機関部に組み込まれる事で両肩に1門ずつのマルチプルカノン――フリーダムガンダムのバラエーナプラズマ収束ビーム砲をイメージして造られた、平時は砲身を姿勢制御用翼、機関部をその制御機関として使用し、砲撃時に翼を砲身に変形、組み立てる事でマルチプルカノンとして使用出来る様になる姿勢制御翼兼用マルチプルカノン『エアロブラスター』を展開、

 

「解放者、竜人族、そしてハイリヒ王国の中枢!どれだけ人の生を狂わせれば気が済むのじゃ貴様らは!じゃがそれも今日迄の事!此処で殲滅してくれる!」

 

ティオが搭乗するアプリエルは、両腕に其々装備された大盾を割り開く形で展開、内部に組み込まれていたマルチプルカノン――ガンダムヘビーアームズのビームガトリングやプロヴィデンスガンダムの複合兵装防盾システム等をイメージして造られた、平時は防御用の大盾として使用し、砲撃時に覆っていた盾を開く事でマルチプルカノンとして使用出来る様になる大盾兼用マルチプルカノン『ガードブラスター』を展開、

 

「「「「「ローリングマルチプルカノン!」」」」」

 

そして5機のヴァスターガンダムは、互いが互いの砲撃に巻き込まれぬ様高度を変え、其々のマルチプルカノンの砲口を左右に向けて極太のビームを放出、そのまま体をスピンアタックの如く横に回転させる事で、ウイングガンダムゼロの代名詞と言って良い技『ローリングバスターライフル』を模した砲撃を披露、周囲を飛び交っていた数多の眷属達を殲滅した。

 

「ば、馬鹿な、こんな、こんな理不尽が起こる等…!」

 

その破壊光線の嵐から、高低差の関係で逃れた眷属も少なからずいるのはいる、その生き残りが余りに強力過ぎる一撃の嵐に呆然と呟いた。

それも無理もないと言うしかないだろう、この世界の人間族はおろか魔人族ですら敵いっこない圧倒的なステータス、どんな物をも分解して自らの身を害させない固有魔法のバリア、そういった絶対的優位性を持つ邪神エヒトルジュエの眷属がまさか、いともたやすく殲滅されるなど誰が考えられようか。

が、幾ら自分の理解を超える出来事に直面したとはいえ、戦場で呆然とするのは何時でも殺して下さいと言っているのと同じ、そんな隙を逃す程ハジメ達は甘くない。

 

「よくもまあ私達を寄ってたかって貶めてくれやがりましたねぇ?で、自分達の思う様に動かないからハジメさん達を犯罪者扱いですか。そんなふざけた貴方達はこの場で撃滅!ですぅ!」

 

ガンダム・バルバトスルプスレクスの超大型メイスを模した打撃形態から、ランチャーストライクガンダムのアグニを模した砲撃形態に移行させたメイスブラスターを構えるシンチャブリが、

 

「戦うのは、誰かを殺すのは、物凄く怖い事です。だけどそうしなければ愛するハジメ君達が、守りたい生徒達が、そして私達の帰るべき故郷が危険に晒されると言うのであれば、その怖さに立ち向かいます!私は武器を取り、貴方達と戦います!」

 

ガンダムスローネアインのGNランチャー及びGNビームライフルを模して造られたマルチプルカノン『アインブラスター』を右肩に担いで構えるマイが、

 

「ハジメ達の故郷は、私にとっても故郷。それを脅かす貴方達を、私は完膚なきまでに潰す!」

 

ガンダム・キマリスヴィダールのシールド及びドリルランスを模して造られた、2門の機関部を内蔵した大盾と、接続した際に刺突部が砲身に変形する槍のセットとなったマルチプルカノン『ランスブラスター』を砲撃形態に移行させたイユニが、

 

「テメェらさえいなければ、皆が苦しむ事は無かったんだ!テメェらの所為でハジメ達は、お姫さんは、愛ちゃん達は地獄の苦しみを味わったんだ!その罪を、あの世で詫びろォォォォ!」

 

バスターガンダムの350mmガンランチャー及び94mm高エネルギー収束火線ライフルを模して造られた、両腰のアームに据え付けられたマルチプルカノン『ダブルブラスター』を構えたディカブリが、

 

「俺達には南雲達の様な圧倒的ステータスも無ければ、愛ちゃん先生の様な揺るぎない信念も無い。お姫さんの様な地獄に落ちようが心身をズタボロにしようが突き進められる程の覚悟にも程遠い。それでも、守りたい物があるんだ!マルチプルカノン、発射用意!」

「エネルギー充填完了!砲身温度、各部動作状況、オールグリーン!何時でも行けるわ!」

「良し!マルチプルカノン!」

「撃てェェェェ!なのぉ!」

「ちょ、ミュウ!?」

 

後衛での砲撃に専念する計10門もマルチプルカノンが積まれたストリボーグが、

 

「こっちも続くよ!私達の、守りたい物を守る為に!」

 

その周囲を飛ぶイエヌヴァリが、ガンダムXのサテライトキャノンやハイドラガンダムのバスターカノン等を模して開発された、右肩に担ぐ1門のマルチプルカノン『プロトブラスター』を構え、

 

「「「「「「マルチプルカノン!行っけぇぇぇぇ!」」」」」」

 

既に戦場を縦横無尽に荒らし回るビットブラスターと共に残る眷属達を狙い撃ちした。

戦場を埋め尽くさんばかりに飛来する数多の破壊光線、それが先程のローリングマルチプルカノンの嵐で撃ち漏らされた眷属を1体たりとも逃す事無く消失させた。

 

「玉井。周囲の敵性反応は?」

「邪神エヒトルジュエの眷属と思しき反応はもう無いな。残るは神山の大聖堂に籠っている邪教のお偉いさん達だけって所だぜ」

「分かった、ありがとう。皆、聞いたね?ではこれより我らは神山へ突入、抵抗する邪教徒達を処断し大聖堂を制圧、そのまま神山内の大迷宮を攻略するよ。準備は良いね?」

『はい!』

 

それを確認したハジメは次なる指令を飛ばす、このハイリヒ王国王都へ戻る本来の目的であった神山内の大迷宮攻略及びその障害となるであろう邪教徒達を皆殺しにして大聖堂を制圧するという指令を。

それを受けてガンダムパイロット達は己の専用機から飛び出して宝物庫内に格納しつつ大聖堂へと一直線に飛び、ストリボーグのクルーもそれに続けと言わんばかりに進路をとった。


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