【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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60話_魂魄魔法

ハイリヒ王国の背後に聳え立つ神山、その頂上8000m超に建てられた大聖堂。

聖教教会の総本山たるこの聖堂はそれ自体が強固な結界を展開する事の出来るアーティファクトとなっており、それ故かこの地は並大抵の攻撃では陥落させるどころかほんの僅かな被害を齎す事も叶わない要塞と言って良い。

聖教教会の教皇であるイシュタルを筆頭とした此処にいる聖職者一同は、自分達の主たる『エヒト』の代行者たる『使徒』達の命を受け、この大聖堂へ殴り込みを掛けようとしているハジメ達『反逆者』を討たんとすべく舞い降りた『使徒』達の援護をすべく、敵に対して強烈なデバフ効果を掛ける魔法『覇堕の聖歌』を発動せんと詠唱を試みた。

ところがいざ使徒達と『反逆者』との戦いが始まってみれば、繰り広げられていたのはハジメ達が乗り込んだヴァスターガンダム及びその母艦たるストリボーグによる一方的な蹂躙劇だった。

香織達による5連装ローリングマルチプルカノンの嵐によって数多の使徒達が薙ぎ払われ、それから逃れられたとしても控えていたハジメ達が其処を狙い撃つ、覇堕の聖歌を発動する暇も無く行われた息の合った連携攻撃の前に、数万もいた筈の使徒達は僅か数分で1体も残らず消し飛ばされてしまった。

まさかの事態に動揺が広がる聖職者達、だが(彼らにとって)悪い事というのは立て続けに起こる物だ。

 

「数多の身に宿りし魔力(マナ)よ、我が呼びかけに応じ、我の号令(オーダー)に従え!我こそは全ての魔力を統べし者なり!これこそが貴様ら邪教徒に誅罰を下す鉄槌!『月光蝶』であぁぁぁぁる!」

「な!?大聖堂の結界が!?」

 

使徒達が殲滅されるという想像だにしない事態が起きながらも、大聖堂の結界がある以上は此方に被害は及ばない、そんなイシュタルの自信を打ち砕くかの如く、先行していた幸利の月光蝶が浸食、一瞬の内に極彩色の奔流が大聖堂へと殺到、発生装置らしき部分が壊れたのか結界その物が消失した。

前線に立って戦う使徒達もいなければ、自分達を守る筈の結界も無い、残るは事実上無防備な自分達だけ、そんな聖職者達だけの大聖堂でこれから始まるのは、本気で人を殺しに掛かっていたり、近接武器による殺傷をメインにしたりしている分、フリートホーフやオルクス大迷宮の時よりも残虐性マシマシなスプラッタである。

 

「ふっ!はっ!せいっ!」

 

もう彼の十八番と言って良いハジメの錬成魔法による体液への干渉による効率的な殺人術、

 

「お前も月光蝶の前にひれ伏すが良い!」

 

此方は幸利の代名詞と言って良い月光蝶、

 

「一太刀のもとに切り伏せてあげる!」

 

雫のリェーズヴィエを用いての八重樫流剣術、

 

「己の罪を後悔しながら、小間切れになって死ぬと良いわ!」

 

優花のキンジャールを用いての縦横無尽な剣舞、

 

「粉砕!玉砕!大喝采ですぅぅぅぅ!」

 

シアの、今度は何処の嫁大好きな社長だよと突っ込まれそうな事を口にしながらのヴァルを用いた撲殺は勿論の事、

 

「これグリ姉というよりラウラちゃんの方だよね?」

 

メタ発言を口にする香織と、

 

「まあグリフィンさんはどちらかと言うと殴る方ですからね」

 

その発言に反応するリリアーナ、

 

「2人共、口よりも手を動かして」

 

そしてそれを窘めるユエが、適性の有る光魔法を駆使して両腕に光を纏わせての、まるでビームサーベルを扱うかの如く繰り出される剣撃、

 

「これは貴様らの姦計によって陥れられた妾達竜人族の分!これは貴様達の忌まわしき考えによって謂れなき被害を受けた者達の分じゃぁぁぁぁ!」

 

ティオの、部分的に竜化させた手足を用いての復讐心を剥き出しにしたかの様な暴力、

 

「やぁぁぁぁぁっ!」

 

愛子の、人を殺す事への恐怖心を抑え込むかの様な声を上げながらの、ギザルメ*1を振り回しての斬撃によって次々とその命を散らしていく聖職者達。

尚、それを行っているのはハジメ達ガンダムパイロットだけじゃない。

 

「俺は、もう恐れの儘に逃げたりなんかしない!」

 

リェーズヴィエのファブリカモデル2振りを手にして聖職者達をバッタバッタと切り裂く淳史も、

 

「南雲達だって必死に戦っているんだ、俺もこの手で未来を掴むために戦う!」

 

ハルバートを手に、取得してる技能の1つである槍術を活かして堂に入った使い方で振り回す昇も、

 

「私は、私達は南雲君達と共に!例えこの手が、返り血に塗れようとも!」

 

ウルミ*2を手にして、しなりを効かせながらも切れ味ある攻撃を繰り出す妙子も、

 

「南雲っち達は、こんな重たい物を何時も背負っていたんだよね。こんな苦しい思いをさせておいて、私は後ろでのんびり、なんて訳には行かないよね!」

 

ハジメを参考にしたと言わんばかりに、魔法陣が刻まれた手袋を嵌めた手で頭や胸部に触れると同時に、心臓や脳の特に急所と言える部分を直接凍らせて殺し回る奈々も、決然とした様子で戦っていた。

それ故か、銃火器や魔法等による遠距離攻撃を行わず、然しながら大した時間を掛ける事無く、

 

「邪教を信ずる者は、偽神エヒトルジュエに魂を売った反逆者達は、1人たりとも逃す事無く誅罰を下した!エヒクリベレイ様の御膝元たるこの神山は、長き時を経て遂に偽神の手から取り戻したのだ!」

 

制圧に成功、それを受けてハジメは何処からともなく取り出した拡声器を手に、神山の奪還を宣言した。

 

因みに銃火器等を使用せず、近接武器(ハジメが製作した物なので性能はお墨付きとはいえ)や魔法でもハジメのそれみたいな使い方に終始しているのは何故かと言うと、ハイリヒ王国の王宮が崩壊してしまった今、この大聖堂を新たなる王宮として接収しようというハジメの考えに基づき、王族であるリリアーナは勿論、彼女と結婚する事で王族となるハジメ及び彼と結婚する事で(ry)香織達が住むのに流れ弾等でズタボロになっていたらアカンがなという思いから銃火器や魔法による遠距離攻撃を禁止した為である。

大聖堂を手中に収める事自体は当初から決めてはいた、エヒト信仰の総本山たる神山、その頂上に建てられた大聖堂を手にしたとなればこのトータスに、人間族のテリトリーに与える衝撃は大きい、暴動等の混乱が起こったり、大聖堂を奪還しようと動いたりするのは確実であり、それによって聖教陣営の足並みが乱れている隙を突いて大迷宮攻略を進めて行こう、それが当初のハジメ達一行の方針だった。

然しながら王族や重臣を皆殺しにしたクーデター、それに伴う王宮の崩壊、そしてエヒトルジュエを「真なる神エヒクリベレイを追放してその座を乗っ取った簒奪者」とした演説、といったリリアーナの一連の行動を経て方針転換、聖教関係者の皆殺しと大聖堂の占拠自体は予定通りなものの、偽神エヒトルジュエ及びそれを信仰する聖教教会――邪教教会から奪還したと喧伝し、自分達がエヒクリベレイを解放する者とアピールするのも兼ねて、大聖堂に傷を付けてしまう様な攻撃はするなとの指示が追加されたのである、この場に射手を天職に持ち、ストリボーグの砲撃士を務める明人がいないのはその為だ(ミュウの御守の為という理由もあるが)。

まるで戦う前から大聖堂を制圧したかの様な、聖教教会や使徒達を相手に勝ちを確信していたかの様な考え、捕らぬ狸の皮算用じゃねぇかと突っ込まれそうな考えだが、結果から見ればそれは正しかったと言うしかない。

 

「ハジメ。其処に人がいるみたいだぜ。いや、人と言うべきなのか、アレは?明らかに透けているし、ふわふわ浮いているし。まさか幽霊じゃねぇよな?」

「何だって?それは本当なのか、トシ?」

 

そんなハジメに、幸利が警戒心と戸惑いを滲ませた声を掛ける。

それを聞いたハジメ達が幸利の視線を追うと、其処には確かに、白い法衣らしき物を着用した禿頭の男がいて、ハジメ達を真っすぐに見つめていた、尤もこれも幸利の言う通り透けているし、ふわふわと浮いて揺らいでいるので明らかに普通の人間ではなさそうだが。

その男はハジメ達が自分達を認識した事を察したのか、まるでついてこいと言っているかの如く踵を返し、明らかに幽霊じゃんと言わんばかりにスーッと滑る様に移動していく。

 

「あれ、よく考えたらあの風貌…

間違いない、ミレディ・ライセンが言っていたラウス・バーンの特徴と合致している。もしかして大迷宮攻略の条件を満たしたから神代魔法を授けてやる、って所かな?にしては、まだ神山の深層に入っていないけど…」

 

その姿を見たハジメが、男が何をしようとしているのか自らの推察を口にした。

然しながら、Xラウンダーによる近未来予知を使って見るも、予知の範囲外になってしまう程長い移動となる事からついて行ったその先を見る事は出来なかった為、その口調に確信めいた様子は無かった。

 

「兎も角行ってみようぜ。元々此処には神代魔法目当てで来たんだ、今はその手掛かりに成り得る物は1つでも縋らないと。仮に罠だとしても、コイツら守りながら切り抜ける事は造作も無い、そうだろ?」

 

然しながら黙って此処に留まっている訳にも行かない、それは男に付いて行く事を提案した幸利も、それに無言で応じたハジメ達も同じだった為か、満場一致で決定した。

こうして男に付いて行く事数分、その途上で隠し扉を発見する等の驚きがありながらも辿り着いたのは、大迷宮の紋章の1つが中心に描かれた魔法陣であった。

其処に大聖堂制圧の為に乗り込んだ14人と、制圧後に合流した明人とミュウが足を踏み入れた直後、その魔法陣が輝き、次の瞬間には、中央に別の魔法陣、古びた本が置かれた台座のある黒塗りの部屋へと転移した。

やはり此方の予想通り男はラウス・バーンの幽霊か何かで、此処は大迷宮の最深部にある神代魔法習得の間なのだろう、既に経験済みのハジメ達6人は平然とした様子で、まだ1つも神代魔法を習得していない他のメンバーはそれにくっつく形で魔法陣の中に入ると、今までのそれより深い部分に何か入り込んで来る感覚を覚え、恐らくは資格者と認められなかったであろうミュウ以外の15人が思わず呻き声を上げた。

一瞬驚くも次の瞬間にはあっさり霧散したその感覚に疑問を抱く暇も無く、今までと同じく新たなる神代魔法、その知識が脳内に直接刻み込まれた。

 

「魂魄魔法…魂に干渉する魔法」

「降霊術師である恵理ちゃんのそれとどう違うんだろう?」

「魂の『意志』に干渉するのが中村の降霊術、魂『その物』に干渉するのが魂魄魔法って所じゃねぇか?」

「成る程、ならミレディ・ライセンがゴーレムの姿で出て来たのも説明が付くわね。ミレディの魂をゴーレムに定着させたって所かしら」

 

その神代魔法――魂魄魔法がどういう物か考察する香織達、一方でハジメは台座に置かれていた本を手に取り、それを読み進めた。

其処には解放者となるまでの経緯や他の解放者達との交流、この神山で果てるまで等のラウズ・バーンの足跡や、この大迷宮に映像体としてだけ自分を残した理由等が書き記されており、

 

「この神代魔法を得る条件は3つ。1つ、2つ以上の攻略の証を有する事。2つ、神を信ずる心を抱かぬ事。3つ、神の力に寄る物に打ち勝つ事。これを満たせし者に、我は姿を現す…か」

 

その最後に、大迷宮の攻略条件が書き記されていたのだが、どうやら大聖堂で男――ラウス・バーンの映像体を見つけた時点で済まされていたらしい、確かに1つ目は言うまでも無く、2つ目はハジメ達地球から転移して来た一行は勿論の事、ユエやシア、ティオやリリアーナもエヒトルジュエへの信仰心は抱いていない、そして3つ目は、エヒトルジュエの使徒達や聖教関係者達を皆殺しにした事で満たされた、大迷宮の深層に踏み入る事無くあの映像体が現れるのも道理だ。

 

「つまり、俺達はあれか?後方からとはいえエヒトルジュエの眷属達の殲滅に1枚嚙んでいたから、この魂魄魔法を覚えるに値すると認められたって事か?」

「みたいね。正直ストリボーグも、この武器とかも100%南雲君が作り上げた物なんだけど…」

「な、何だかつくづく南雲っち達のコバンザメ化しているよね、私達…」

「言うな宮崎、それは俺達が心の底から痛感しているんだからさ…」

「お前らは大聖堂に殴り込んだだけまだマシだろ、俺なんてついさっきまで留守番していたのに…」

 

尚、その話を聞いた淳史達は、ハジメ達と比べて圧倒的に実力の劣る自分達が何故魂魄魔法を習得出来たのかという疑問を、その条件を聞いた事で解決しつつも『コバンザメ』と自虐している場面があったが余談である。

*1
中世ヨーロッパで広く使われた、農耕器具を基にしたポールウェポン

*2
英語でフレキシブルソードと言う、インド発祥の剣と鞭の中間と言って良い武器




これでリリアーナへのハートフルボッコな展開から始まった戦乱は一段落しました。

さて皆さん、次回からはお待ちかねの…
諸事情あり年末年始は更新を休止させていただきますが、再開した暁には、皆さんを愉悦に浸らせられるような物を書けるよう、頑張ります(邪笑
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