【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

65 / 107
62話_処刑前夜

「お会いになれないってどういう事だ!?速やかに報告せねばならぬ件があると言うのに!」

「ですから陛下並びに重臣の方々は速やかに対処せねばならぬ件の為にご多忙であらせられますので、本日はお会いになれませぬ」

「此方に誰がいるのか分かっているのか!勇者御一行だぞ!それを、随分とぞんざいな!」

「誰であろうとお会いになれませぬ、そう言いつけられておりますので本日はお引き取り下さい」

 

ハイリヒ王国王都への入場が許された勇者一行(本人達が捕まっている中でそう呼ぶのは違和感があるが…)が喫緊の事態が発生した事による臨時の宿舎として案内されたとある宿、其処で一行は、国王を始めとした王国中枢の者達が多忙の為に面会出来ないという、案内した騎士と思しき者からの連絡だった。

魔人族との会敵及びハジメ達の介入が無ければ全滅は免れなかった程のその脅威、それらをいち早く報告せねばと実戦訓練を切り上げて戻って来たというのに、その報告をする相手は多忙で会えないという連絡…

急いで魔人族襲撃の報告をせねばならない焦りと、勇者一行というこの国にとって重大な存在がいるにも関わらずぞんざいな扱いを受ける事への憤りがごちゃ混ぜになり、声を荒げるメルドだったが、騎士の対応が覆る事は無く、かといって先程天之河達が逮捕された光景を目の当たりにした中で王宮へ突撃するのはリスクが高すぎるという事で、止む無くこの日はその宿に泊まるしか無かった。

彼らが王宮へ差し掛かる所で感じた違和感の正体に気付くまで、自分達がこのハイリヒ王国、というより人間族のテリトリーにおける立場が様変わりしてしまった事に気付くまで、あと1日…

 

------------

 

「よぉ。3日振りだな、中村」

「し、清水、君、その恰好は…?」

 

場所は変わって、嘗て王宮があった場所の地中に存在する地下牢、其処に先程収監された中村だったが、其処へ、プラグスーツの上に王国の高官である事を誇示するかの如き豪奢なマントを羽織っているという異様な恰好をした幸利が現れた。

 

「ああ、これか?実を言うとあの後、ハイリヒ王国の国王様に取り立てて貰ってな、偶々その座が空いていた宰相に就かないかと持ち掛けられたんだ。ハジメ達の旅で助けになればと思って、その話を受けたって訳だ。おっと、俺の近況はどうでも良いんだ、本題に入るぞ。お前、何で自分が拘留されているのか分かんねぇって言いたげだな?でも国家反逆の罪に問われる様な事をした覚えはあるんじゃねぇか?」

「な、何の事かな?」

 

その姿に驚きを隠せない中村に自分が今どんな立場に就いたかを話しながらも本題に移る幸利、彼女が何故国家反逆の容疑で拘留されているのか本当は分かっているんじゃないかと問い詰めるも、当の彼女は全く意味が分からないと言いたげな反応だった。

 

「しらばっくれんじゃねぇよ、証拠は上がってんだよ。何者かによって殺害された王国士官の骸、其処から降霊術によって干渉された事を示す魔力反応があった。つまりその士官は死後、降霊術師の操り人形となって色々嗅ぎ回っていたって事だ」

「そ、それって」

「闇術師舐めんなよ?そしてこのハイリヒ王国関係者に降霊術師はお前しかいねぇ。つまりこの件はお前って事になる訳だ。とは言っても今言ったのはあくまで状況証拠に過ぎねぇ。お前があくまでしらを切り通すならそれまでだがな」

 

然しながら幸利にとってその反応は想定していた物、一連の騒動の後に行った現場検証の際にクーデター鎮圧にあたって命を落とした兵士とは別の死体を発見、それを幸利が己の技能を活用して調べてみるとそれには、降霊術師によって魂を介して操られていたと思しき形跡があったのだ。

此処ハイリヒ王国の中枢に関わる者の中に、降霊術師の天職持ちなのは実を言うと中村しかいない、よって王国ではこの操り人形を用いて彼女が国家を転覆させかねない事態を画策していたとの疑いをもち、こうして今拘留する運びとなった訳だが、あくまでそれは幸利も言った通り状況証拠に過ぎない、確たる物証を見つけるか彼女自身が詳細な自供をしなければ容疑を罪として確定する事は出来ないが、幸利に抜かりは無い、こんな事もあろうかと高威力の爆弾を持ち込んでいたのだ。

 

「あ、そうそう、お前と同じ容疑で一緒に捕まった天之河と、お前達を庇った坂上だがな、

 

 

 

アイツらは詮議の結果、明日ギロチンによる斬刑に処される事が決まった」

「え…?」

 

天之河と坂上の処刑が既に決まっている、その事実に、驚きを通り越して呆然とするしかない中村。

 

「おいおい、ハトが豆鉄砲食らったみてぇな顔してんじゃねぇよ。お前の容疑とは違ってアイツらのそれは確定的明らかって奴じゃねぇか。天之河は聖教教皇イシュタルと共謀してハイリヒ王国の政に公然と介入してんだし、その他国家転覆を企てたネタは揃っている、坂上はそんな天之河を力づくで匿おうとしている。聖教の勇者及びその仲間に指定しているからそれは無理ってか?生憎だが、国王様は聖教こそ排すべき障害と捉えている、その手先たる天之河及び奴に与する者をこの機に処断するって訳だ」

「そ、そんな!?」

 

状況証拠の積み重ねによって犯罪者扱いされている中村とは違って、天之河の場合は実戦訓練前に起こった事件での対応等確たる物証だらけであり、坂上はそんな天之河(重大犯罪者)の逮捕を妨害したのだ、国家反逆罪は疑いの余地なしとして直ぐに斬刑が決まったのである。

捕まってから判決が決まる迄が明らかに短過ぎるのさえ目をつぶれば、普通に考えたら分かる様な事態だが幸利が言った通り中村が考えてもいなかったと言いたげな反応を示したのは何故か、それは勇者及びその同胞という聖教において重大な存在であるが故に、その影響力の大きい人間族のテリトリーにおいて丁重に扱われると思い込んでいたが故か、或いは…

そんな中村の心中を見透かしてか、幸利はとある提案をした、悪魔の取引とも言うべき提案を…

 

「まあ、お前自身に掛かっている国家反逆の罪を認めるって言うなら、それに関する詳細な自供をするなら、アイツらの命を救けてやっても良いが?所謂司法取引って奴だ」

「ほ、本当!?認めたら、ちゃんと話したら光輝君を助けてくれるの!?」

「あぁ、必ずや国王様に掛け合って来る。どうだ?」

 

罪を認め、捜査に協力する見返りが中村本人ではなく天之河達の処罰の軽減なので厳密には司法取引ではないのかもしれないが、天之河達の命を餌に中村の自白を引き出そうと取引を持ち掛けた幸利。

幸利の提案に飛びつくも、その目は本当に天之河を救けてくれるのか、本当は救ける気など無く自分を陥れようとしているんじゃないのかと何処か訝しむ様子だったが、何であれ彼女に選択肢など無かった。

 

「はぁ、分かったよ。確かにボクは、国家反逆と言われても仕方ない事を起こす下準備で、王国士官を殺して、降霊術師のスキルを使って操り人形に変えた、それは認めるよ」

「…随分とまた雰囲気が変わったな、いや、今のがお前の本性って所か?」

「本性、ねぇ。そんな大層な物じゃ無いよ。誰だって猫の1匹や2匹被っているのが普通だよ、君の親友である南雲だって優しそうな顔してサイコパスじみた発想するんだし」

 

取引にあっさりと応じ、国家反逆の容疑を認めた中村、然しながらそれを自供する彼女の様子は、何時もの温和で大人しい、THE図書委員と言いたげな(実際そうだったが)それとはまるで違う、利己的で残忍さを醸し出していた。

その変貌ぶりに驚きを隠せない幸利だったが一方で彼女の言い分も尤もだなと思えた、普段は生まれついての英雄(NaturalBornHERO)と言わんばかりに優しいハジメも、一度敵と定めた相手に対してはサイコパスと言われてもおかしくない冷酷さ、残虐さを剥き出しにして襲い掛かるのだ、そういう意味ではアイツも猫被っていると言えなくは無いなと変な所で感心していた。

 

「まあ猫被りの件は一先ず置いて、何を起こそうとした?何だってそんな事を企てた?」

 

ともあれ中村が取引に応じた以上、なるべく多くの自供を引き出したい所、そう切り替えた幸利は操り人形を作ってまで何を、国家反逆罪が成立する程のどんな大事を成そうとしたのか、その動機は何なのか、それを尋ねたら、

 

「光輝君が欲しかった、その為に必要な事をした。それだけの事だよ」

「…What’s?」

 

動機と思われる部分で、何とも彼の頭では理解しがたい内容が、彼女の口から出て来た。

天之河が欲しかった?つまり天之河と恋仲になりたかったって事だろうか?なら告白すれば良かったんじゃないか?そうすれば…と色々と疑問が浮かび上がる幸利の心中を見抜いてか、

 

「はは、告白すれば良いじゃ無いかって感じしてるね。でもダメだよ、ダメ、ダーメ。告白なんてダメ。光輝君は優しいから特別を作れないんだ。周りに何の価値も無いゴミしかいなくても、優し過ぎて放って置けないんだ。だからボクだけの光輝君にする為には、ボクが頑張ってゴミ掃除をしないといけないんだよ」

 

その詳しい訳を、ハジメの事をサイコパスと言って置いてそっちの方がよっぽどサイコパスじゃねぇかと幸利が一瞬思った暴論を言い放ったのだ。

とは言っても、天之河の人間性を踏まえれば分からなくも無い。

此処で中村の言う『ゴミ』とは恐らく、天之河の周りにいる大勢の『大切』な存在の事であろう、多分(当人達は拒絶しそうだが)天之河の幼馴染である香織や雫も含まれているだろう、そんな天之河に告白して、仮に付き合えたとしてもそれは沢山いる『大切』の中に加わったに過ぎない、余りにも『大切』な存在が多すぎる為に自分に向いてくれる時間はごく限られてしまうだろう。

そう、天之河にとって『大切』とは大切であって『大切』では無くなってしまっている、中村の言う『特別』を作れないのだ、それ故に彼女は『大切』を徹底的に排除して、自分1人のみが『大切』…『特別』になろうとしたのだろう。

 

「異世界に来れて良かったよ。日本じゃあ過激な手段は取れないから、色んな噂を流すとかしてゴミ掃除の為に面倒な下準備をしなきゃいけなかったし、効果も中々現れないから本当に住みにくかったよ。その点この異世界に、力も地位も得られた今なら」

「…おい今、日本で色んな噂を流していたって言ってなかったか?」

 

言いたい事を納得こそしなかったが理解はした幸利、そんな彼を他所に自供を続ける中村だったが、とある一言が幸利の琴線に触れたのか、剣呑な雰囲気を露わにした彼がそれを遮った。

 

「まさか、ハジメに関するある事無い事を義妹(ソウルシスターズ)なる連中に流したのは、ハジメにまつわる根も葉もない噂を流させたのは、お前だったのか!?」

 

色んな噂を流した、それはもしかしたらハジメに関する事実無根な物も含まれた悪い噂も含まれるのではないか、天之河の幼馴染で『大切』の範疇に入る香織も雫もハジメと付き合っているのだからもしかしたら入っているかも知れない、だが何のために、ハジメ達が破局するリスクがあるそんな噂を何で流したのか…

そんな様々な考えが入り混じった疑問をぶつける幸利、

 

「ご名答。光輝君は未だに執着しているけど、南雲とあの2人との絆が揺るがないのは明らかだからね、南雲を孤立させて、それでも尚南雲にベッタリな2人の姿を見せつけられたら、光輝君に対する2人のヘイトを強めれば流石に諦めるだろうと思ってさ」

 

それに対する中村の答えは、余りにもあっさりとした是認だった。

 

「てめぇ、何開き直ってんだ…!?

 

 

 

何笑ってんだてめぇ!ハジメが、アイツがその所為でどれだけ傷ついたのか分かってんのか!」

 

完全に開き直ったかの如く認めた中村に、幸利がマジギレしたのは言うまでも無い。

 

「…まあいい、ハジメを地獄に叩き落しやがったてめぇの事は今すぐぶち殺してぇ位に憎たらしいが、男に二言は無い、約束通り国王様に掛け合って来る。じゃあな、期待して待っていろクソビッチ」

 

一時は人間不信に陥り、自分達大切な存在以外を蔑ろにする位に荒んでしまったハジメの様を間近で見ていた為に、その原因となった中村の身勝手な動機、それをへらへらした様子で明かした言動に彼女への憎悪が吹き荒れる幸利だったが、自分から持ち掛けた手前、司法取引には応じなければならない、そう思い直した彼は、悪態をつきながらも地下牢を後にした。




さあ皆さん、次回はいよいよお待ちかねの…(邪笑
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。