【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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6章『大陸横断、外遊の旅』
65話_王宮に籠るだけが王ではない


天之河達に重罰を下し、永山達を脅迫めいた通告で王宮内の部屋に引き籠らせた翌朝、ハジメ達を乗せたストリボーグは、東の方向へ全速力で飛行していた。

天之河達国内に潜伏する『敵』への対処に一段落ついた事から大迷宮攻略に再び乗り出したのかと言われそうだがそうではない、その証拠にハジメ以外にこのストリボーグに乗っているメンバーは、玉井達クルーを除けばリリアーナとミュウしかいない。

では何故ハイリヒ王国を離れて東へ向かっているのかと言うと、未だエヒトルジュエへの、聖教への信仰が熱心であろう周辺国の動向を探る為だ。

総本山である神山の大聖堂や、その御膝元に位置するハイリヒ王国こそ制圧したが、聖教教会の影響下にある地域は人間族のテリトリー全域といっても過言では無い、隣国であるヘルシャー帝国を始めとした周辺国には未だ聖教関係者が潜伏、或いはその支配力を振るい続けている可能性が高く、ハジメ達の不在を見計らっての大聖堂奪還、それを口実としたハイリヒ王国への宣戦布告も考えられる。

エヒトルジュエ討伐の為に各地の大迷宮を攻略している最中にそうなってしまっては元も子も無い、勿論それを見据えて留守を任せる予定であるリリアーナと愛子、そして昨日の謁見の後、神殺しを成そうとするハジメ達に忠誠を誓った事で改めて騎士団長となり、ヴァスターガンダム3号機『マルトゥ*1』を授けられたメルドという3人のガンダムパイロット及び其々の専用機が常駐する計画だし、その他の、例えばデビットら騎士達にも標準装備としてISを始めとした個人用兵器を所持させているのだが、自国が戦場になりかねない事態を防げるに越した事は無い。

折しも天之河達への処断を済ませて内憂への対処に一段落着いた頃、其処でハジメ達はこの外患への対処に、本格的に乗り出す事となったのだ。

新国王であるハジメ、元々ハイリヒ王国の王女として周辺国に名が知られ、政治にもある程度関りを持っていたリリアーナ、移動手段であるストリボーグのクルーである淳史達(それとエリセンに寄る事からミュウ)がフェアベルゲン→ヘルシャー帝国→中立商業都市フューレン→アンカジ公国というルートで周辺国を外遊(その後、ミュウに関する依頼も兼ねてエリセンへ立ち寄る予定)、新国王へ即位した事の挨拶を名目に各国首脳との会談に臨みつつ、各国の国内事情に探りを入れる計画だ。

尚、外遊ルートに亜人族の国でありエヒトルジュエの影響を受けていない筈のフェアベルゲンが入っている(然もいの一番に向かう国である)のはヘルシャー帝国等とは事情が違い、ハイリヒ王国として国交を結ぶ為だ。

現状はハウリア族出身のシアがハイリヒ王国の第七王妃となっている等、個人単位での外交パイプはあるのだが、国単位でのそれは構築されていない、そもそもトータスにおいて被差別種族である亜人族が建国したフェアベルゲンを国として認めている他国など現時点で存在しないのだ。

其処で聖教の影響力を排除したハイリヒ王国が真っ先にフェアベルゲンを国として認めると共に国交を結び、親密な関係を構築すると共に、嘗てハジメが直々にハウリア族を鍛え上げた様に戦力増強を図り、自分達の不在を狙わんとする周辺国、殊に自分達が転移される前まで最大規模の軍事力を誇ったヘルシャー帝国への牽制とし、場合によっては…といった腹積もりだ。

無論その間にも大迷宮の攻略という課題を疎かにするつもりは無い、とは言っても新しい大迷宮を攻略する訳では無く、まだ魂魄魔法しか習得していない幸利とティオ、重力魔法と魂魄魔法の2つに留まっているシアは別行動、オルクス大迷宮及びライセン大峡谷の迷宮攻略を行わせ、神代魔法を扱える戦力の増強を図る。

外遊を行うハジメ達の一団と、他メンバーが攻略済の大迷宮に挑む幸利達の一団、双方が其々の行動を済ませてエリセンで合流したのを機に、再び新たな大迷宮攻略に乗り出す方針だ。

…因みにどちらの一団にも名前の挙がらなかった香織、雫、優花、ユエ、愛子だが、未だ残っている内憂、ハイリヒ王国内に潜伏しているであろう聖教関係者及び信者への対応等があるので留守番となっている、それを伝えられた彼女達がハジメを「行っちゃうの?」と言いたげな涙目でじっと見つめ、ハジメも彼女達のそんな姿に後ろ髪引かれる様だったのは言うまでも無い。

 

「あそこが大迷宮の1つがあるって言うハルツィナ樹海か?本当に木が隙間なく密集しているんだな」

「中は霧が立ち込めていて住人じゃないと迷うって聞いたけど、傍目からはそうは見えないな。この辺りも流石にファンタジーな世界って所か」

「鬱蒼とする木々に数メートル先も見えない程濃い霧、其処を中々の強さを誇る魔物が徘徊している…

危険だらけなこの地で、嘗ての亜人族の人達は、魔法が使えないハンディを乗り越え、力を合わせてフェアベルゲンを建国したのよね。その苦労は如何ばかりだったのか…」

「そんな亜人族の人達を虐げる様に仕向けるとはエヒトルジュエやっぱクソだな、許す訳には行かねぇ」

 

それはさておき、ハイリヒ王国王都を出発して数時間後、ハジメは見覚えのある、それ以外のメンバーは初めて見る、鬱蒼とした木々が広がるハルツィナ樹海の光景が見えて来た。

その光景を見て、予め知らされた過酷な環境、其処からフェアベルゲンを建国する迄の苦労を思い起こし、そんな彼らを迫害する様に仕向けたエヒトルジュエへの敵意を滾らせる中、

 

「南雲っち、樹海の外にウサミミ生やした集団がいる!何だかこっちに手を振っているけど、もしかして…」

「確実にカム、或いはその指示を受けて迎えに来たハウリア族の皆だね…

出迎えに来るのは分かるけど子供じゃないんだから…」

 

今回は戦闘ではないのでイエヌヴァリでは無く、妙子と共にオペレーターとしてストリボーグ艦内で作業していた奈々が、異様な光景を目にした。

それは、恐らくハウリア族と思われる兎人の集団が樹海の外に出て、一部が此方に向かって「おーい!」と言わんばかりにブンブンと手を振っているという、子供がやる分には微笑ましいものだった。

因みに何故ハウリア族の面々はまるで此方が此処に来る事を分かっていたかの様な対応をしているのかと言うと実は、シアとの結婚を彼女の父親であるカムに伝えるのも兼ねて、国王に就任したその日にハジメが手紙を送っていたのである。

その返事が昨日届いたのだが、それによると、ハジメが国王に就任した事を聞いたアルフレリックが、嘗て1回ハジメ達がフェアベルゲンに立ち寄った際に彼が露わにした民族等に関する差別への嫌悪感情を思い起こし、緊急で長老会議を招集、その場でこう提案したそうだ。

 

「これを機に、人間達に我らの国を認知させ、国交を結ぶべきではないか?人間族と魔人族による戦火は拡大の一途、其処に邪神エヒトルジュエの手の者も加わるであろう。いずれこのフェアベルゲンにも飛び火するやも知れん。この地に住まう同胞達を守る為にも、此処は人間族と手を取り合う必要がある。まずは南雲ハジメが王となったハイリヒ王国と手を結ぶのが良い、彼なら我らの置かれた状況を鑑みて、力となってくれる筈だ」

 

ハジメ達への敵意を隠そうともせず噛み付いたグゼとゼルは長老の座を追われ、真っ先に殴り掛かったジンは再起不能、今のメンバーはアルフレリックの他はマオとルア、そしてハジメ達によって見違える程強化されたその実力が認められてハウリア族で初めて選出されたカムの計4人、その誰もがアルフレリックの提案を受け入れ、詳しい話し合いをフェアベルゲン国内で行いたいと要求されたのだ。

ハジメとしてもその提案は渡りに船だったので快諾、この外遊で最初に向かう国としてフェアベルゲンを選び、今こうしてストリボーグを飛ばして向かっていたと言う訳だ。

 

『お帰りなさいませ、司令!』

「久しぶり、ハジメ兄ちゃん!」

「パルか、ああ、久しぶりだね。といっても二週間も経っていないけどね」

 

樹海の中に着陸出来る程の広大な平原など存在しないので、ハウリア族の集団が手を振る場所近くへと舞い降りたストリボーグ、其処から出て来たハジメを出迎えたハウリア族の面々の中に、人一倍ハジメを慕っていた少年、パルの姿もあった。

ハジメの言う通りハルツィナ樹海を離れてから2週間も経っていないもののそれでも久しぶりの範疇に入るだろう、再会を喜ぶ2人、一方で彼らの一流の軍人やSPもたるやと言いたくなる整然としたその姿に、予め聞いていたハウリア族のそれとは大分かけ離れた佇まいに、コイツどんな指導を施したんだ!?と言いたげに玉井達が戸惑ったのは言うまでも無い。

*1
ロシア語で3月

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