【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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73話_粛清と葛藤

こうして、帝城にて起こったヘルシャー帝国家臣達による反乱の鎮圧の為に派遣されたフェアベルゲンの中隊、それを事前に知らされていたガハルドの号令に応じた戦士達と、その攻撃を察知して迎撃態勢に移る逆臣達の戦いが始まった。

亜人族達の軍隊と相対する逆臣達もヘルシャーの実力主義な環境下で揉まれて鍛え上げられ、その立場へとのし上がったり守ったりして来た者達ばかり、派遣部隊の主力である兎人族なら、ハジメ直々の指導による戦闘訓練で見違える程の実力を身に着けたハウリア族の戦士達なら兎も角、その又聞きみたいな形での指導しか受けて来なかった他の亜人族達は、指導力の差や期間の短さもあってまだまだ発展途上、正直タイマン勝負であれば魔力の有無もあって劣勢に追い込まれていたに違いない。

その差を埋めるどころか覆しているのはやはりハジメが開発・製造している銃火器等の武装であろう。

亜人族の兵士達は銃火器の類を使うどころか見知ってすらもいない者が殆どである事を踏まえた淳史の、とりあえず引き金を引けば打てるダブルアクションリボルバー式の機構、アバウトな狙いでも標的を撃ち倒せる(逆にそれ以外を、例えば味方すらも巻き込んでしまう危険もあるが)散弾を使用出来る40×46mmグレネード弾を採用したルイシを使うようにとの提案を受けて亜人族が手にした件の銃火器、その猛威は凄まじいの一言だった。

剣士等前衛タイプの天職を有し、近接武装を手に突撃して来た者達をたった1発でなぎ倒したかと思ったら、その後方で魔法による援護射撃を行おうとしていた魔術師等後衛タイプの天職を有する者達よりも早く発砲してその者達を蜂の巣に変え、その猛威と性質を目の当たりにして横へと回り込もうとする者も逃がす事無く風穴を開けていく。

銃火器なんぞ使うどころか見るのすら初めてでありながらも、直ぐに慣れたのかそつのない動作で散弾をまき散らして逆臣達を圧倒していく中、1人の年端も行かないハウリア族の男子は妙に手慣れた動きでルイシを操作し、敵が集まる地点の中心を正確に狙って榴弾を曲射、内側から爆発させて逆臣達を効率よく討ち取るという中々テクニカルな攻撃をしていた。

言うまでも無いがハジメを人一倍慕い、今回の部隊派遣においても「ハジメ兄ちゃん達の為にも!」といの一番に志願した少年、パルだ。

ライセン大峡谷で鉢合わせてからフェアベルゲンに戻るまでの短い間とはいえハジメ達が銃火器の類を使用していたのを見聞きしていたハウリア族、中でもパルはハジメの側についていたのもあって発射や弾の装填の仕方、狙いを定め方からサプレッサーの付け方等と細かい所まで見ていたのもあって銃火器の使い方をイメージトレーニングで会得、部隊の中で唯一散弾を使わないながらも素晴らしい戦果を挙げていた。

後にこの活躍を聞いた長老達によってフェアベルゲンが保有するボルショイ・ティラーの専属パイロットとなり「密林のファイアーボール」と、何処ぞの外伝漫画で聞いた様な異名で敵陣営に恐れられる事となるのだが、それはまた別の話。

 

「標的の制圧、完了しました」

「救援、まことに感謝する。然し、話には聞いていたが実際に見るとやはり凄まじいな。反乱を起こした連中の実力は俺も見知ってはいた、ヘルシャーはおろか人間族全体でも指折りの実力者達だったが、そいつ等が正に雑魚扱いだ。ハジメ殿が作り上げたアーティファクトの力もあろうが、それを使っていたフェアベルゲンの兵士達もヘルシャーの戦士達と引けを取らねぇ実力だな」

 

そんな地獄絵図が帝城全体で繰り広げられ、壁という壁が、床という床が撃たれた逆臣達の血で染まって行き、僅かに生き残った者達も戦意を喪失したのを受けて救援部隊の隊長たるハイリヒ族の男がハジメ達に報告する。

それを聞いたガハルドは援軍に来てくれた礼をしつつ、生き残った逆臣達を並べて、

 

「お前ら、これでもフェアベルゲンの兵達を薄汚い雑魚だと見下すか?ハジメ殿達を簒奪者だの異端者だのと敵視するか?偽りのエヒトだの邪教だのと言った俺を憎悪するか?そうやって偽りのエヒトの、聖教と自称する邪教の在り様から目を逸らし、力こそ至上というヘルシャーの建国以来掲げて来た理念を知らん振りし、ハイリヒ王国やフェアベルゲン、もっと言えば偽りのエヒトが拉致した方々や、ソイツの言いつけを基に虐げられてきた亜人族の者達が俺らを凌駕する程の力を身に着けた事実に気付かない振りをして癇癪を起した結果がこれだ」

 

反逆を企てた事への罰を直ぐに下すのでなく、それを行うに至るまでの心情を指摘しつつそれがどれだけ愚かな事かを質し始めた。

 

「お前らが邪教に現を抜かし現実逃避している間にハイリヒ王国や亜人族の、フェアベルゲンの面々は無茶苦茶強くなった、敵と見られた奴は瞬く間に滅ぼされる位にな。それはこのヘルシャー帝国だって例外じゃねぇ、喧嘩売ったが最後、魔人族の奴らが攻め込む前に三百年の歴史が終わるぞ。膝を折って平伏しろとは言わねぇが、強きと共に在る帝国の民ならその力から目を逸らすんじゃねぇ!まずは認めろ、お前達は惨敗したのだと!敗者は勝者に従う、それが帝国のルールであり、戦の常識だ!嫌なら自害でもして、討たれた者達の後でも追いやがれ!分かったな!」

 

そして今回の敗北を胸に刻み、ハイリヒ王国とフェアベルゲンとの国交樹立という方針に従え、嫌なら死ねと怒鳴り付けた。

亜人族達との戦いで満身創痍な中、人間族最強と謳われるガハルドが放つ怒声と威圧には、流石の逆臣達も従わざるを得ず、頭を垂れた。

『帝城の血脂染め』と後世で語り継がれるヘルシャー帝国内におけるクーデター未遂事件は、それに及んだ家臣達が、救援に駆け付けた亜人族達によって返り討ちにあうという結果に終わった。

 

------------

 

「思い描いた通りの結果になったってのに何処か浮かねぇ感じだな、ハジメ殿。どうした?」

「…ガハルド殿」

 

こうしてハイリヒ王国とフェアベルゲン、ヘルシャー帝国との間で国交樹立が非公式ながら発表、その後殺された逆臣達の血によって汚された帝城の清掃作業が進む中、テラスで1人佇むハジメの姿を見つけたガハルドは、その背中からどうも陰鬱な雰囲気を感じ取り、声を掛けた。

 

「人間という生き物はどうにも面倒臭い、それは元居た世界もトータスも変わりません。どんなに正論を並べようと、どんなに現実的で且つ現状をより良く出来る目標を掲げても、どんなに真っ当な行動をしようと、何かと理由をつけて反抗する輩は少なからず出る、確実に。正直僕は政治家になどなりたくはなかった、そういった輩も考慮して政を進めねばならないのが役目ですからね。同じ国を守る立場でも、僕は一兵卒になりたかったんです。敵相手に己が力の限りを尽くして対応すれば良いのですから」

 

声を掛けて来たガハルドにハジメは、己の恋人達や幸利達にも明かしていなかった本音を語り始めた。

 

「でもハイリヒ国王に、王国を引っ張る政治家になるしかなかった。ハイリヒの政治中枢にいた者達はリリィを除いて皆がエヒトルジュエの傀儡となった結果、彼女は刃を振るわざるを得なくなってしまった。リリィ1人となってしまった政治中枢、彼女もまだ14と国を引っ張るには心許ないと言われかねない、彼女を、ハイリヒ王国を守る為に僕が国王となるしかなかった。その原因となってしまったのにリリィを、ハイリヒ王国を見捨てるなんて真似は出来なかったんです」

 

元は自衛官、国防を担う軍隊的な組織の一兵卒になろうとしていたハジメ、その心中を何故今日初めて会ったばかりのガハルドに明かそうと思ったのかはハジメ自身も分からなかった。

幾らエヒトルジュエを討伐すべきという悲願を共にする仲間とはいえ、既にハイリヒ王国とヘルシャー帝国が今まで通りの親密な間柄を維持する事で合意したとはいえ、まだ知り合ったばかりな相手に明かせるだろうか、いや無理だろう。

 

「分かるぜ、その気持ち。俺もこの皇帝の座を受け継いだばかりの時はそう思ったもんだ。ロクにやった事もねぇ雑務に追われ、内外様々な問題をどうするか試行錯誤して、体力には自信あったのに毎日クタクタだった。何でこんな事やんなきゃいけねぇんだ、俺はこの為に強くなった訳じゃ、皇太子の座を守り続けた訳じゃねぇんだぞって思った事は一度や二度じゃきかねぇ。色々と異論を並べる教会の奴等や臣下を怒鳴りたくなったのもしょっちゅうだ。

 

けど、ヘルシャー帝国の、帝国民の事を思ったら辞めるなんて選択肢は選べなかった。国王と皇帝、呼び方は違っても国を引っ張る立場なのは同じ。嫌だから辞めるなんて我儘が通せる程、この座は軽くねぇんだよな」

 

ただ1つ確かなのは、ガハルドもまた同じ様な葛藤を抱いていたという事だった。

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