【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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今回は予定を変更して、ハジメ達が外遊している頃の、別チームの動きを書きました。


75話_蝶と龍と兎と…

ハジメ達が外遊においてフェアベルゲンや、ヘルシャー帝国等の人間族の国々と交友関係を結ぶという想定以上の結果を残していく中、他のチームはどうしているのか、今回は別のチームの動向に目を向けてみよう。

ハジメ達がヘルシャー帝国を訪れ、ガハルドと会談していたその頃、幸利とシア、ティオの3人、一行の主力メンバーでまだ生成魔法等の習得していない神代魔法がある3人はオルクス大迷宮の奈落の底、深層部の五十階層に到達し、その一角にあるユエが封印されていた部屋に辿り着いた。

 

「此処がハジメ達の言っていた、ユエが封印されていたって言う部屋か…」

「暗くて殺風景な場所ですね、ハジメさん達の話だと更に、スライムみたいなもので身動きも封じていたとか…」

「かような場所にその状態で三百年も閉じ込められておったと聞く、死ぬ事の無い身故に自ら命を絶つ事も発狂する事も許されずに。ユエ殿の心境は如何ばかりだったのかのぅ、妾であれば耐えられぬぞ…」

 

事前にこの部屋の事を聞かされていた幸利達は、聞いていた通りの重々しい空間に眉を顰めつつ、中へと入って行く。

 

「その身動きを封じられたユエがいた場所の下に、何かが保管されている空間があるとハジメは言っていたな。それは何かしら強固な封印が施されていて、ハジメの手では如何にも出来なかったとも」

「幸利殿?身体から名状しがたいオーラを纏って何をする積りじゃ?」

「ああ、月光蝶で術式をハッキングするか、或いは鍵穴らしき紋章に流し込んでピッキングしようかと」

「何とんでもない事を居酒屋での「とりあえず生」みたいな感じで言ってんデース!?」

「シア、お主は何処のリアルダビスタなサラブレッドがモデルのウマ娘じゃ?中の人が同じで、作者が初めて育成したウマ娘だからって無理矢理ネタを引っ張り出さんでも…」

「ティオさんも何メタいツッコミをしてんデース!?」

 

その目的は、ハジメがその存在を見つけつつも中を暴く事敵わなかった空洞、幸利はそれを、己の十八番である月光蝶を用いて開けようとしていた。

そんな正に強盗と言いたくなる事を、居酒屋でまずはビールを頼むかの様な気軽さで実施しようとする幸利にシアはツッコミを入れるも、動揺の余り何処か日本語覚えたてのアメリカ人みたいな口調になり、それを聞いたティオがメタ発言でツッコミを入れていた。

それはさておき、月光蝶を発動した事で幸利の手から吹き上がる闇魔力の因子による靄、それを嘗てユエが封印されていた場所にある紋様へ手を付いて、流し込んだ。

その直後術式の改変(ハッキング)鍵のこじ開け(ピッキング)に成功したのか、紋様に光が迸り、金属同士が擦れる様な音と共に周囲の床がせり出して来た。

良く見るとそれは直径30cm程の石柱、それが屈んでいた幸利程まで上がって来た所で止まり、側面が扉の如くパカっと開いた。

その中を見ると其処にはダイヤモンドの如き透き通った輝きを放つボール状の鉱石が安置されていた。

 

「コイツはアーティファクトの類か?シア、お前のX領域は何と言っている?」

「どうやら映像を記録するタイプの物みたいですね。此処オルクス大迷宮の最深部にある反逆者の住処にも、オスカー・オルクスの遺言を記録したそれがあるとハジメさんが言っていましたね」

「ふむ、さような物をこの部屋に保管していたとなると、これに記録されているのは…」

「ともかく、起動させてみようぜ。何かしらの情報が手に入るかも知れない」

 

何時の間にか会得していたシアのXラウンダーによる近未来予知によってこれが映像記録・再生用アーティファクトだと分かり、それを此処に保管した者の事も相まって何か情報を得られるかも知れない、そう判断した幸利がそれを起動させるべく魔力を流し込むと、

 

「何だこのオッサン?何処かユエに似ているな」

「もしかしたらユエさんの叔父にあたる人では?あの権力欲しさにユエさんを殺そうとして、出来なかったから此処に封印したって言っていた」

「で、あろうな。然しユエ殿を手酷くこの場へと追いやっておいて今更何の用なのかのぉ…」

 

案の定アーティファクトが起動、プロジェクターの如く部屋の一角を照らす形で映像を映し出したのだが、其処にいたのは何処かユエに似た面影の男性だった。

その姿からして権力欲しさにクーデターを起こしてユエから王座を簒奪し、殺そうとしたが出来なかったので此処へ封印した彼女の叔父だろうとみた一行は少なからず不信感を露わにするも、

 

『…アレーティア、久しい、と言うのは少し違うかな。

君は、きっと私を恨んでいるだろうから。いや、恨むなんて言葉では足りないだろう。私のした事は…

あぁ、違う。こんな事を言いたかった訳じゃない。色々考えてきたというのに、いざ遺言を残すとなると上手く話せない』

 

それも仕方ないかと自嘲するように苦笑いを浮かべながら、彼は気を取り直すように咳払いをして話し出した。

 

『そうだ。まずは礼を言おう…

アレーティア。きっと、今、君の傍には、君が心から信頼する誰かがいる筈だ。少なくとも、変成魔法を手に入れることが出来、真のオルクスに挑める強者であって、私の用意したガーディアンから君を見捨てず救い出した者が』

 

元から「ユエの叔父は本当に私利私欲でクーデターを起こして彼女を封印したのか?」と疑問を抱いていたハジメから話を聞いていたのもあって、部屋に違和感を抱いていたものの、排すべき政敵に向けて離すにしては余りに優しくも悲し気な姿に何やら只ならぬ物を感じた一行は不信感を引っ込め、その言葉に耳を傾けた。

 

『…君、私の愛しい姪に寄り添う君よ。

君は男性かな?それとも女性だろうか?アレーティアにとって、どんな存在なのだろう?恋人だろうか?親友だろうか?あるいは家族だったり、何かの仲間だったりするのだろうか?直接会って礼を言えない事は申し訳ないが、どうか言わせて欲しい…

ありがとう。その子を救ってくれて、寄り添ってくれて、ありがとう。私の生涯で最大の感謝を捧げる』

 

尚彼が言う誰かであるハジメは勿論ユエ――彼がアレーティアと呼ぶ少女も此処にはいなかったり、恐らくは神代魔法の1つであろう変成魔法など誰も会得していなかったりとツッコミ所が多すぎてシュールな光景となっているのだが、それを指摘するのは無粋だと口にしなかった。

 

『アレーティア。君の胸中は疑問で溢れているだろう。それとも、もう真実を知っているのだろうか。私が何故あの日、君を傷つけ、あの暗闇の底へ沈めたのか。君がどういう存在で、真の敵が誰なのか』

 

それは兎も角、其処から語られた話に一行は流石に驚きを隠せなかったものの、この世界の真実を既に知っている彼らにとっては妙に納得出来る物だった。

即ち、ユエが神子として生まれ、その肉体を己の依り代としたいエヒトルジュエに狙われていた事。

それに気がついた彼が、欲に目の眩んだ自分のクーデターにより、ユエを殺したと見せかけて奈落に封印し、あの部屋自体を神をも欺く隠蔽空間とした事。

ユエの封印も、僅かにも気配を掴ませない為の苦渋の選択であった事。

 

『君に真実を話すべきか否か、あの日の直前まで迷っていた。だが、奴等を確実に欺く為にも話すべきでは無いと判断した。私を憎めば、それが生きる活力にもなるのではとも思ったのだ』

 

封印の部屋にも長くいるべきでは無かったのだろう、それ故に、王城でユエを弑逆したと見せかけた後、話す時間もなかったに違いない。

その選択がどれ程苦渋に満ちた物だったのか、映像の向こうで握り締められる拳の強さが、それを示していた。

 

『それでも、君を傷つけた事に変わりはない。今更、許してくれ等とは言わない。ただ、どうかこれだけは信じて欲しい。知っておいて欲しい。

 

 

 

愛している。アレーティア。君を心から愛している。ただの一度とて、煩わしく思った事等ない。

 

 

 

――娘のように思っていたんだ』

 

苦しげなそれから泣き笑いの様な表情に、ひどく優しげで、慈愛に満ちていて、同時に、どうしようもない程の悲しみに満ちた表情になって発せられた想いを聞き、一方的に不信感を抱いていた事を恥じると共に感極まり、静かに涙を流した一行。

 

『守ってやれなくて済まなかった。未来の誰かに託す事しか出来なくて済まなかった。情けない父親役で済まなかった』

 

彼の目尻にも光るものが溢れるが、決してそれを流そうとはしなかった。

グッと堪えながら、愛娘へ一心に言葉を紡ぐ。

 

『傍にいて、いつか君が自分の幸せを掴む姿を見たかった。君の隣に立つ男を一発殴ってやるのが密かな夢だった。そしてその後、酒でも飲み交わして頼むんだ。『どうか娘をお願いします』と。アレーティアが選んだ相手だ。きっと、真剣な顔をして確約してくれるに違いない』

 

夢を見ているかの様に映像の向こう側で遠くに眼差しを向ける彼。

もしかするとその方向に過去のユエが、その隣に立つハジメと思しき存在がいるのかもしれない。

 

『そろそろ時間だ。もっと色々話したい事も、伝えたい事もあるのだが…

私の生成魔法では、これ位のアーティファクトしか作れない。もう、私は君の傍にいられないが、例えこの命が尽きようとも祈り続けよう。アレーティア、最愛の娘よ。君の頭上に、無限の幸福が降り注がん事を。陽の光よりも温かく、月の光よりも優しい、そんな道を歩めます様に』

 

そんな衝撃的な真実を内包したこのアーティファクトに記録された映像もあと少しとなったのか、別れの言葉を紡ぐ彼。

その直後、その視線が彷徨う様に左右へ動いた、どうやらユエに寄り添う者にも伝えたい事があるのだろう。

 

『私の最愛に寄り添う君。お願いだ。どんな形でもいい。その子を、世界で一番幸せな女の子にしてやってくれ。どうか、お願いだ』

「…ああ、ハジメなら必ずしてくれるさ、アンタの可愛い姪っ子さんを、幸せにな」

 

その最後の言葉に、無意識にそう呟いた幸利。

 

『…さようなら、アレーティア。

君を取り巻く世界の全てが、幸せでありますように』

 

あくまで映像の中の存在、幸利の言葉が届く筈も無いが、だけど確かに彼は満足そうに微笑み、虚空に溶ける様に消えて行った。

恐らくは遠い未来で自分の言葉を聞いた者がどう答えるのか確信していたのかも知れない、其処は流石にユエの叔父といった所か。

 

「シア、ティオ。エヒトルジュエのクソ野郎をぶっ殺さなきゃならねぇ理由がまた1つ出来たな…!」

「そうですね幸利さん、もう今更感がある位、エヒトルジュエへの殺意は満タンですが…!」

「うむ。眷属もろとも、完膚なきまでに潰してくれようぞ…!」

 

映像を見終えた一行は、ユエの叔父が実は彼女を守るべく嫌われ役に徹していた事を知り、涙を流し続けると共に、邪神エヒトルジュエを倒さねばならないという想いを強くした。

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