さて、今話から皆のトラウマことメルジーネ海底遺跡攻略です。
魔国ガーランドの将軍で、神代魔法の1つを修得していた魔人族の男フリード率いるドラゴンの軍勢を難なく退け、グリューエン大火山を攻略して空間魔法を修得したハジメ達と合流したストリボーグは、夕食を兼ねた休憩の為エリセンに一旦立ち寄った後、その西北西約300kmに位置するとミレディ・ライセンから教えられた七大迷宮の1つ『メルジーネ海底遺跡』があるとされるポイントへと辿り着いた。
其処は一見すると、周辺の海域と比べて特に変わった点は見られない、海底遺跡と名乗るだけあってその痕跡もあるかと思いそうな物だが、何らかの仕掛けによって巧妙に隠されている為か或いはそもそも此処では無いからか、それは何一つ見当たらない。
だがハジメ達は前者の為だと微塵も疑っていなかった、それは海底遺跡があるとされる場所と共に、それを暴く為の術もミレディから教わっていたからだ。
グリューエン大火山の最深部にあるドーム、其処で空間魔法を修得したと共に授かったアイテム、サークルの中に女性がランタンを掲げているデザイン、そのランタンの部分に穴が開いたペンダント――グリューエンの証をメルジーネ海底遺跡の上にて月光で照らせ、そうすれば道は開かれる、というミレディからのアドバイス。
グリューエン大火山を僅か1日足らずで攻略し、そのままメルジーネ海底遺跡へ向かうという強行日程は、其処までの距離を僅かな時間で移動出来るストリボーグの存在や、短時間攻略を成せるハジメ達の高い実力もあるが、夜にならないとその入口が開かれないという迷宮の仕掛けも理由だったのである。
このポイントに辿り着いた頃には既に太陽は沈み、月は大分昇っていて月光を煌々と放っていた、それを見たハジメは香織達を連れストリボーグの甲板へと出て、首にぶら下げていたペンダントを月に翳す。
すると、
「わぁ、ランタンに光が溜まって行きますぅ。綺麗ですねぇ」
「ホント、不思議ね。穴が開いているのに…」
暫くしてペンダントの穴が開いているランタン部が、少しずつ月光を吸収するかの如く其処から光を溜め、その穴を塞いで行き、やがて光を溜め切ったランタン部から光線が放たれ、海面のとある場所を指し示したのだ。
「…中々粋な演出、ミレディとかとは大違い」
「これをやる為のペンダントを入手する所も過酷だから尚の事ね」
「だな。如何にもファンタジーって感じで、俺ちょっと感動してるわ」
「それを行っているのがSF丸出しなストリボーグの上でだけどね」
何ともロマンチックな光景に感嘆の声を上げる一行、ハジメもそうしたいのは山々だったが、ペンダントのランタン部が何時まで光を放出可能かが分からないので出発の号令を上げてISのシールド・バリアを展開、海中へと潜って行った。
夜の海中というだけあって周囲は暗いと言うより真っ黒と言った方が良い位に光が届かない空間と化しているが、香織の光魔法によってある程度の視界は確保、ペンダントの光が指し示す先が海底の岩壁地帯である事、その光がとある岩石に当たった瞬間ゴゴゴという音と共に「開けゴマ」なんて呪文が聞こえて来そうな感じに岩壁が扉の様に開く光景が見えた。
それを受けて岩の扉の先、冥界へ誘うかの様な暗い道へと歩みを進めるハジメ達、そんな一行を飲み込まんと言わんばかりに横から激流が襲い掛かるものの、シールド・バリアによって激流が身体に直撃するのを防いでいるのと、PICによってその運動エネルギーが身体を押し流そうとするのを無効化している為にハジメ達には何の影響も無く、
「うーむ、海底遺跡と聞いた時から思っておったのだが、ISが無ければ、まず平凡な輩では迷宮に入る事も出来なさそうじゃな」
「…強力な結界が使えないとダメ」
「他にも空気や光の確保、あと水流操作も最低限同時に出来ないと駄目だな」
「でも此処に来るのにグリューエン大火山の攻略が必須ですから、大迷宮を攻略している時点で普通じゃないですよね」
「もしかしたら空間魔法を利用するのがセオリーなのかも、例えばISのシールド・バリアみたく空気のバリアを形成する、みたいに」
「香織とか幸利君とかじゃなかったら魔力が持たないわよ、それ」
ティオの発言を切っ掛けに、余裕だと言わんばかりにISが無い場合の攻略方法を考察していた。
「月の光に導かれて」なんてフレーズが浮かびそうな特定方法といい、イスラム世界にて広く知られる物語「アリババと40人の盗賊」で出て来る有名な扉の開け方といい色々とファンタジックな入口に感動こそしたものの、その実超一流の魔法使いが何人もいなければ侵入すら不可能な時点で、他の大迷宮に負けない厄介さを有しているのは間違いない、ハジメ達もそれは理解しているのか、メルジーネ海底遺跡のISが無い場合の攻略をどうするかで話を重ねながらも周囲の探索を怠らない。
見た感じは巨大なチューブ状の洞窟らしいその空間、自分達を飲み込まんとする激流の影響で飛来する砂利等に時折視界が遮られたり、トビウオの様な姿の魔物達が襲い掛かって来てその対応に追われたりしながらも、ISに搭載されたハイパーセンサーをも駆使して探索を続けた結果、この洞窟が流れるプールの如く円環状に周回する構造である事と、
「皆、あそこにもあったよ!」
「これで5ヶ所目、マーキングを繋げてみると正五角形になる配置だね…
五芒星の紋章、その頂点にあたる5つの場所に刻まれたそれ、そして光を残したまま発光を止めたペンダント、となれば…!」
そのうちの5ヶ所に、大体50cm四方くらいの、五芒星の頂点の1つから中央に向けて線が伸び、その中央部分に三日月の模様がある紋章――メルジーネの紋章が刻まれていた事が判明したのだ。
その5ヶ所をマーキングした点で結ぶと、円環状の洞窟と相まって五芒星となった事に気付いたハジメが、溜めていた月光を半分残したまま発光を止めたペンダントを紋章にかざしてみると、案の定と言うべきかペンダントが再起動したかの様に発光、紋章へと一直線に伸び、それを浴びた紋章が一気に輝き出した。
そうと分かれば話は早い、と言わんばかりに手掛かりを掴んだ一行は他の紋章のある場所へと急ぎ、ペンダントをかざして光を浴びせて行き、5ヶ所目のそれにも同様の措置を取ると、再びゴゴゴという音と共に岩壁が扉の様に開いた。
それを受け中心部――メルジーネの紋章には三日月が描かれている場所へと向かうと、真下へと通じる水路があり、下って行く一行、すると突然、何故かザバァッ!という音と共に空中へと出て来た。
「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!」と言いたくなる程の超常現象を目の当たりにし、流石のハジメ達も困惑を隠せないが、その頭上、自分達が下って行った水路の方を見るとその疑問が解明された。
ハジメ達が現在いる場所はヴァスターガンダムも出せるであろう大きな半球状の空間、その上部に空いている穴、先程迄自分達がいた水路と繋がっている穴はどういう原理なのか水面が揺蕩っていたのだ。
何もせき止める物が見当たらないにも拘わらず、重力が逆になっているかの様にユラユラと揺れている水面、それを境に上部には海、下部には空気に満たされた空間、という物理法則ガン無視な空間に何処からツッコめばいいんだと言いたくなる心境な一行だったが、これも神代魔法による物だろうと結論付け、此処からが本番だと切り替えて探索を再開した。