【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

9 / 107
6話_月下の語らいと誓い

オルクス大迷宮。

遥か昔に世界を滅ぼそうとして討ち滅ぼされた『反逆者』が作り上げたとされる危険地帯『七大迷宮』の1つでハイリヒ王国の南西に存在、100階層からなると言われているこの迷宮は下に進むほど魔物が強くなるという特性から実力を測りやすい事と、良質な魔石が手に入る事から冒険者や傭兵、新兵の訓練場として人気が高く、それは周辺に設けられたホルアドという宿場町の賑わいからも明白である。

王都からずっと馬車で揺られていたハジメが「錬成で車とかバイクとかを作った方が良かったかな」とジョークか本気か分からない事を口走る場面もあったが、やがて一行はメルド率いる騎士団員複数名と共にそのホルアドに到着、王国直営の宿屋に宿泊する事となった。

 

「それにしても、何だか久々に普通の部屋を見た気がするね」

「そうだねハジメ君、やっぱり私達にはこういう部屋の方が落ち着くね」

「もしこの宿まであの豪華仕様だったら頭痛くなって来るわ…」

「流石に無いでしょ、あんな豪華仕様で冒険者や傭兵向きとかニーズのにの字も無いわよ」

 

その一室、ハジメが泊まる(他の生徒が最低でも2人部屋なのに何故か個室)部屋に恋人達がやって来て会話をしていた所、扉をノックする音が聞こえて来た。

 

「幸利だ。ハジメ、いるか?」

「トシ?」

 

時刻で言えば深夜に差し掛かった所である今になって訪問者という違和感満載な展開、まさか檜山達がお礼参りに来たのかと誰もが一瞬身構えたがそんな事は無かった、親友でありパーティメンバーでもある声に別の意味で違和感を覚えながらも鍵を外してドアを開けると、其処には思いつめた様な表情の幸利がいた。

其々の部屋に移動する前とは明らかに様子が違う幸利にどうしたのかと思いつつも、折角の来客だとお茶の準備をするハジメ、と言っても水差しに入れたティーパックらしき物から抽出した紅茶っぽい物だが。

 

「私達は外した方が良いかな?大事な話みたいだし」

「いや、この話には白崎達も関わってくる。このまま残っていて欲しい」

 

幸利の只ならぬ雰囲気からして余程重大な要件があるのだろう、もしかしたら親友であるハジメにしか話せない事かも知れないと席を外そうとした香織達だったが、当の本人は香織達にも関わってくるとの事なので留まった。

 

「明日の訓練なんだが…

ハジメ達には町で待っていて欲しいんだ。教官達やクラスの皆には俺が必ず説得する、愛ちゃん先生やお姫さんを介してでも。だから、頼む!」

 

そうして話始めた幸利だったが、その内に興奮したのか身を乗り出して懇願して来た。

その風貌も相まって傍から見ると色々とヤバい光景になってしまっているが、それに突っ込むKYな存在は此処にはいない。

 

「一体、どうしたの清水君?私達に待っていてって…」

「まさか天之河達と檜山達との不和を気にしているの?今更じゃない」

「メルドさん達も先日の件でそれは把握している筈、その為に今も騎士団の皆が檜山達を監視しているのよ。にも拘わらず仲悪いから行かない、行けないと言うのは認められないんじゃないかしら?」

「そんなんじゃ無い!いや、あるかも知れないが、そうじゃ無いんだ!」

 

まさかの自粛要請に戸惑いを隠せない香織達、もしかしたら先日の事件を未だに気にしているのか、それで無用な軋轢を生まない様に自粛を提案して来たのかと思ったがそうでは無いらしい(いや、無いとも言い切れない様だが)。

然し幸利も余りに慌て過ぎだと思ったのか「いきなりすまん」と謝りながら深呼吸をし、落ち着いたタイミングで静かに話し始めた。

 

「明日から本格的な訓練が始まるからと早めに寝たんだが、其処で夢を見たんだ。その夢にはハジメが、白崎が、八重樫が、園部がいたんだけど、声を掛けても気付いてくれなくて、走っても全然追いつけなくて…そして最後は…」

「最後は?」

 

先程まで見ていたという夢の内容、此処にいるメンバー以外に親しい人といえばハイリヒ王国の各都市に派遣されている愛子くらいしかいない幸利にとって悪夢と言うしかないその内容を話すうちに俯き、やがてその先を口にする事が恐ろしくなり押し黙ってしまった。

 

「…消えて、無くなっちまうんだ…」

 

香織に促された幸利は、今にも泣きそうな表情で顔を上げ、絞り出すように結末を口にした。

其処で、幸利を部屋に招き入れてから今までずっと黙って話を聞いていたハジメが口を開いた。

 

「夢は夢だ、と切り捨てるのは簡単だけどそう言えない位、明日の訓練は危険要素が多すぎるのは確かだね。全体で実戦形式の訓練をするのは初めてで各パーティと連携出来るか未知数、それも相対する魔物は地上のそれとは一線を画す強さを持っているそうだから。それに優花が言った様に天之河達と檜山達の存在もあるし。先日の事件では明らかに向こうが悪いと断じられ、軽い物とはいえ罰が下ったのに、どうやら檜山達は僕を逆恨みしている様だと監視していた騎士の人が言っていたよ。天之河も、僕にも襲われる原因があるからだ何てある事無い事言いふらしているみたい」

「そうだろ、ハジメ!悪い事は言わない、此処での訓練参加は止めて、王都に戻ろう!愛ちゃん先生やお姫さんにも伝えれば力になってくれる筈、そうだ、愛ちゃん先生だ!王国の各都市を回っている愛ちゃん先生の護衛として同行する事にすればいい!それなら教会も王国も悪い顔はしないさ!」

 

そう、ハジメが幸利の話を単なる夢だと切り捨てられない懸案があったのだ。

先日ハジメを襲撃した檜山達のパーティはその罰として騎士団の監視下での生活を送っている訳だが、その不自由な生活を強いられるのはハジメの所為だと見当違いな憎悪を抱いているらしく、ハジメの姿を見た時の表情と言えば、これより醜くなる事は無いんじゃないかと言わんばかりに歪んでいたとか。

自分の話を真面目に検討するハジメの様子に、分かってくれるかと再び興奮したかの如く身を乗り出し、代案を提示する幸利だったが、

 

「だけど許可が下りる可能性は無いと思うな、僕は」

「…え?」

「元々天之河に乗せられる形で参加を表明した奴ばかり、内心は戦争に参加する事への、敵とはいえ人を殺す事への、自分や親しい存在が敵に殺される事への不安が一杯だと思うよ。其処に愛子の護衛に参加するという逃げ道を提示され、僕達がその逃げ道を選んだという話が齎されたら、絶対に皆が食いつくよ。僕達が許された以上は断りにくいだろうし、かといって皆が皆選んだら訓練にならない、きっと誰かが大迷宮での訓練に参加しないと行けなくなる。その誰かが抱く怒りの矛先は、逃げ道を提示した愛子やリリィ、選ぶ事を許した王国首脳、そして真っ先に進んだ僕達に向くだろうね。そうなってしまっては士気も、各パーティの信頼もダダ下がりだよ。王国や教会の人達がそれに思い当たらない筈が無い以上、不参加は認められないと、愛子の護衛任務が言い渡される事は無いと僕は思う」

「そんな…」

 

それが通る可能性は万に一つも無いと断じられて、この世の終わりだと言わんばかりに青ざめた。

 

「大丈夫だよ、トシ。僕も香織も、雫も優花も、トシも、皆が皆チートだ。幾ら迷宮の敵が強いと言ってもそれは此処トータスの人間族基準、僕達であれば慢心や油断が無い限り負けはしない。檜山達だってそうだよ、警戒を怠らない様にさえすれば後れなど取らない、襲ってきてもまた返り討ちさ」

 

自らが提示した代案は受け入れられないだろうというハジメの言葉に絶望に打ちひしがれる幸利、そんな彼を元気づけるかの如きハジメの言葉に耳を傾けながら尚も不安は拭えず、それは現状を認識したハジメの恋人達にも伝染した。

 

「それでも不安が拭えない、と言うのなら…」

 

そんな4人にハジメは、意を決してこう提案した。

 

「此処に誓おう。皆が皆、他の皆を守る、と」

「「「「皆が皆、他の皆を守る?」」」」

「ああ。例えば僕は香織を、雫を、優花を、トシを守る、という様に」

「という事は、私はハジメ君を、雫ちゃんを、優花ちゃんを、清水君を守るって事?」

「そうだよ、香織」

「なら私はハジメを、香織を、優花を、清水君を守るって事ね」

「アタシはハジメを、香織を、雫を、清水を守る」

「俺はハジメを、白崎を、八重樫を、園部を守る」

「うん。いま一度、誓おう」

 

「僕は香織を、雫を、優花を、トシを守る」

「私はハジメ君を、雫ちゃんを、優花ちゃんを、清水君を守る」

「私はハジメを、香織を、優花を、清水君を守る」

「アタシはハジメを、香織を、雫を、清水を守る」

「俺はハジメを、白崎を、八重樫を、園部を守る」




はい、今作であの夢を見たのは香織では無く幸利です。
つまり…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。