【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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88話_再起の兆し

王都へと帰還してからの己を追い詰めるかの如き激務を咎められ、抵抗空しく半強制的に外出させられたハジメと、彼に同行する事となったミュウとレミアの3人は一先ず、王都をぶらついていた。

当然と言えば当然だが、ハイリヒ王国を統べる立場にいるハジメのそんな姿を見た民衆達はまさかの状況に驚き、そして国を統べる存在相手に失礼があってはいけないと恐縮し切りであったのは、案の定ハジメの懸念通りの事態になったのは言うまでも無い。

尤も元は一般的な学生(+その教師)だった異世界から召喚された者達の身の上が広く知れ渡っていた事、国王に即位してから王宮に中々留まらず邪教関係者や魔国ガーランドが送り込んだスパイの摘発に精を出したかと思えば周辺諸国との関係構築を目指して外遊したまま大迷宮攻略に自ら挑む等、ヘルシャー皇帝のガハルドもびっくりなフットワークの軽さが知れ渡っていた事からか驚き具合は其処まででは無く、ハジメからの「何時も通りで大丈夫だよ、プライベートで此処をうろついているんだし」という一声で落ち着き、変わらぬ日常に戻って行った。

そんなごく一部を除けば日常の光景が広がる王都、その上空では先程ハジメが言っていた通り銃火器等の最新兵器を用いた戦闘訓練を兼ねて、潜伏しているであろう邪教関係者や魔人族スパイの探索、魔国ガーランドによる侵攻を想定した哨戒任務に向かうであろう、ISを身に着けた小隊規模の兵士達が王都の外へと旅客機並みのスピードで飛び立つ姿が見えた。

市井の人々は最初の時こそ明らかに人間族な見た目にも拘わらず翼人族の数倍~数十倍ものスピードで大空を自由自在に飛行する兵士に、その人間が纏うIS及びプラグスーツの場違いにも程がある未来的な姿に面食らってはいたが国王であるハジメら国の重鎮達が皆揃ってこの姿なのもあって直ぐに順応、国王謹製のアーティファクトを身に着けて王国を、人間族及び亜人族のテリトリーを守る為に日々任務に励む兵士達に憧れにも似た敬意を示してか満面の笑みで敬礼のポーズを取る者がちらほらいた。

そしてそんな憧れを抱くのはハジメの、ISを生み出した開発者の娘であるミュウも例外ではない、尤もそれは兵士達が担う責務に対してと言うよりISを身に着けて空を飛べる事に対してではあるが。

 

「わぁ、ISなの!パパ、ママ、ミュウも何時かISを身に着けてお空を自由に飛びたいの!」

「そっか。分かったよ、ミュウ。そしたらミュウも身に着けて飛べる様に設計を見直さないとね」

「あらあら。良かったわね、ミュウ。パパ、ミュウもお空を飛べる様にしてくれるって。その時が待ち遠しいわね」

「うん、ママ!そしたら今日みたいにパパとママと3人でお出かけするの、今度はお空を!」

 

陸の景色は言うまでも無く、海人族なので泳ぎも潜水もお手の物であるが故に海の景色も知っているし、空の景色もストリボーグの窓越しではあれど見た事はある(言うまでも無いが初めて乗った時は思いっきりはしゃいでいた)、それでも生身に多少の鎧を身に着けるだけで空を自由に飛べると言うのはミュウに限らず魅力的に感じるだろう、子供の頃にドラえもんのうたの一節「そらをじゆうに とびたいな」に共感し、それを可能にするタケコプターを欲しいと思った読者も多いのではないだろうか。

そんなミュウの隠そうともしない願望を聞き、その辺りはまだまだ年相応だなぁと、レミアと共にほっこりしつつその願望を叶えるべく、早速ISの改善案を模索していた。

 

「パパ!ミュウね、この国が大好き!パパやママと、ずっとこの国にいたい!」

「…え?」

 

その時ミュウが、ハジメに抱き着きながら発した言葉、それは今の今までずっと己の罪から逃げ続け、前へ進めないままでいたハジメの心が立ち直る切っ掛けになった。

 

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「皆、ただい…どしたの、この状況?」

「おお、丁度良い所に帰って来たか、ハジメ!今朝追い出しておいてあれだが会議に参加してくれ!」

「勿論だよ、トシ!」

 

その後も3人でのお出かけを満喫したハジメ、ところが王宮へ戻ってみると如何にも緊急事態だと言わんばかりの騒々しさに直面、其処に通り掛かった幸利から恐らく今起こっている事態への対応を話し合う会議への参加を要請されて快諾、会議室へ向かう中で何が起こったのかを知る事となった。

幸利からの話によると今朝見掛けた、王都外へ訓練を兼ねた哨戒任務にあたっていたIS部隊が先程、魔人族が使役していると思しき魔物の大軍がライセン大峡谷から此処を始めとした、人間族の主要都市へと進撃する様子を捉えたとの情報が入り、今しがた友好国にもその件で連絡を入れたばかりだとか。

魔国ガーランドの将軍であるフリードが先日、大量のドラゴンを引き連れてグリューエン大火山の攻略に出向いたのを見るにガーランドは防振りならぬ攻振りに方針を決めたのだろう、ストリボーグによる絨毯爆撃もハルツィナ樹海上空で行ってからは1回もやっていないが故に戦力も整ってしまったか。

尤も超長距離砲撃を行わなかったのは人道的な理由でとかではない、地理的にあの砲撃が出来るのがハルツィナ樹海上空しか無かったからだ。

もう周知の事ではあろうがこの大陸には、人間族のテリトリーである北側と魔人族のテリトリーである南側を隔てる様にライセン大峡谷が広がっている。

その大気中に放たれた魔法は即座に魔力が分解されて消失してしまうがそれは遥か上空を通っても変わらずに適用されてしまう、よって魔力を用いた砲撃兵器であるマルチプルカノンによる超長距離砲撃は、ライセン大峡谷という壁が無いハルツィナ樹海上空でしか出来ず、ハジメ達の外遊や大迷宮攻略に同行した事で中断せざるを得なくなったのだ。

 

「待ってくれ、ハジメ。此処は俺に、俺達に任せてはくれないか?」

「メルドさん?」

 

何であれ此方のテリトリーに侵攻すると言うのであれば返り討ちにするまで、IS部隊はおろかヴァスターガンダムの投入も早々と決まったが、其処で騎士団長として会議に参加していたメルドが発言した。

因みに主君である筈のハジメに対して何で今まで通り呼び捨て且つ砕けた口調なのか、部下である筈のメルドに対して何で今まで通りさん付けで呼んでいるのかと言うと、メルドが再び騎士団長に就任した際に当のハジメが「今更畏まった態度は止めて欲しい」と要請、いや主君相手にそれはちょっとと渋るメルドを「畏まったりしたら許さない」と脅して承諾させたからだ、国王になった今でもハジメにとってメルドは尊敬すべき存在、という事なのだろうか。

 

「魔人族が此方への攻撃を本格化させた以上、今後も魔物の頭数を揃えて侵略して来る可能性は高い。それに一々対応していたらキリがない。皆には邪神エヒトルジュエ及びその眷属討伐、その為の残る大迷宮攻略という指名があるだろう。こっちに出向いてばかりでは、それは遅々として進まず、その間にエヒトルジュエは新たなる手を打って来るに違いない。そんな事態を避ける為にも、魔人族の相手は俺達に任せてそっちはそっちのやるべき事をやって欲しい。心配しなくても俺達には国王様自ら作り上げられた銃火器やISといったアーティファクトがある、何より『女神の巨神兵』ことヴァスターガンダムもある。今更奴らに遅れは取らんさ」

「…分かった、それなら今回の迎撃にはイユリ、マイ、マルトゥ、以上3機のヴァスターガンダムを投入、メルドさん達騎士団はリリィの指揮の下、迎撃に当たって貰うよ」

「聞きましたね、メルド。陛下が後顧の憂いなくエヒトルジュエ討伐に当たれる様、騎士団一同が全力で迎撃に臨むのです、良いですね!」

「はっ!お任せあれ!」

 

そんなメルドの提案を聞いて確かにその通りだと思ったのか、提案に沿う形で投入するヴァスターガンダムの機種を決定、それを受けてメルドは無線越しに部下達へ指示を飛ばしながら王都の外へと向かい、己の専用機であるマルトゥを顕現させた。

 

「ふん。どうやって持って来たかは知りたくも無いが、そんな有象無象の魔獣共を揃えた所で、この国王様謹製のヴァスターガンダムの相手が出来るとでも?」

 

訓練を重ねた事で手慣れた様子でマルトゥに乗り込んだメルドは、そのメインカメラ越しに見える光景の中で此方へと向かう魔物の大軍を見据え、不敵な笑みを浮かべながらそう呟いた。

嘗てオルクス大迷宮で戦った時は、魔人族への対抗策という名目で異世界から召喚された筈の天之河達ですら一捻りだった魔物達に手も足も出ず、捕縛された末に天之河達の行動を封じる為の人質として使われる事となった。

だがこのモビルスーツなる巨人型ゴーレムのアーティファクトに乗り込んで、文字通り己の魂すら委ねた途端、そんな圧倒的実力差から来る威圧は微塵も感じられなくなり、寧ろ有象無象と鼻で笑える程度の存在にしか思えず、その相手に自分が、自分達ハイリヒ王国が負けるイメージが全く湧かなかった。

 

「メルド・ロギンス、マルトゥ。出撃する!」

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