【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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89話_リブート

訓練を兼ねての哨戒任務に当たっていたIS部隊が、此方へと進撃している魔物達を見つけた事で始まった魔人族との、魔国ガーランド軍との会戦。

その進撃ルートの途中に壁の如く立ちはだかるライセン大峡谷は、只でさえ急峻な山岳地帯な上、大気中に放出された魔法は即座に分解されてしまう特性上、軍内で多数を占める地上の魔物達が思う様に進めず、飛行出来る少数派の魔物達が先行する形となった。

尤も少数派と言っても総勢2万は軽く超える大軍である、ガーランドの将軍であり、今回の進撃において総指揮官を任ぜられたフリードとしては、自分達をも難なく退ける実力を有した『イレギュラー』が()()()()()()()()の時を狙っての電撃戦で人間族のテリトリーを陥落させてしまおうという考えで、それ故に飛行出来る魔物は遅れる魔物達に構わず進撃してしまえと指示を飛ばしてある。

彼らの言う『イレギュラー』、つまりヴァスターガンダムやストリボーグさえ無ければ人間族に自分達の魔物が後れを取る事は無い、それが先行する飛行戦力2万位あれば陥落は容易だと判断したのだ、人間族側の切り札として異世界から召喚された天之河とその仲間達すらもカトレア率いる魔物数十体程度で制圧して見せた事や、最強戦力と言って良い灰竜部隊と相棒の白龍『ウラヌス』が全くの無傷な事もそれを後押しした。

だが、

 

「放てぇぇぇぇ!ぶっ殺せぇぇぇぇ!」

「何、もう迎撃に来たと言うのか!?」

 

発見したIS部隊が足止めの積りでいち早く仕掛けたからか、ライセン大峡谷を抜けていざ、という所で発砲音と共に魔物達が次々と射殺されて行った。

進撃へ道半ばの所で待ち伏せされての先制攻撃に驚きを隠せないフリードだったが其処は流石に総指揮を任される身、直ぐ様状況を把握して周囲の魔物に襲撃を受けた事と、それを行っている人間族側の兵士達を討つべく囲い込む様に動けという命令を、魔力による通信で発して態勢を整え、反撃に移る。

攻撃を仕掛けたIS部隊もその圧倒的性能や、ヴィントレスやプラミヤといった兵器の火力に物言わせて魔物達を皆殺しにしていくも小隊規模の自分達に対して魔人族側の戦力数は2万オーバーと多勢に無勢、流石に自分達が負傷する事態は起こっていないが撃ち漏らして前線を突破していく魔物も少なからず出て来た。

然し、

 

「このヴァスターガンダムに敵うものかぁぁぁぁ!」

「ば、馬鹿な、イレギュラーだと!?大迷宮攻略に向かったのではなかったのか!?」

 

魔物達が前線を突破し出してから程なく、遥か彼方から此方へと放たれた光の奔流、それを浴びた魔物達は1体の例外なくその身が塵となって消失した。

その数瞬後に姿を現した純白の身から朱色の光を発する巨人、そう、メルドが搭乗するヴァスターガンダム・マルトゥだ、見つけてからの対応が迅速に行われたのとこの世界で類を見ない程の速さで戦地へ行けたからか、同じく出陣した別のIS部隊と共に、このライセン大峡谷と程近い戦地へと急行出来たのである。

それはヘルシャー帝国やアンカジ公国、フェアベルゲンからも同様で、各方面へ展開していた魔物軍は飛行戦力もそれ以外の戦力も関係なく見事に蹂躙され、

 

「ば、馬鹿な、馬鹿なぁぁぁぁ!」

 

壊滅的と言って良い惨敗、僅かな生き残りと共に撤退せざるを得なくなった。

 

------------

 

「圧倒的じゃないか、我らが軍は…てね」

 

そんな戦況を王宮のテラスから、ISの通信機能をフル活用して前線で戦うヴァスターガンダム等のカメラ越しに見ていたハジメは、連邦軍の圧倒的物量を物ともせず互角の戦いをしていたジオン軍守備隊の奮闘に満足そうなギレンみたくそう呟いていた。

元ネタとは物量、というより兵力差が顕著な所こそ一緒ではあれど、あちら側が本国の最終防衛ラインまで追い込まれた状況での発言だった為ネタ的に扱われる事も少なくない一方、こちら側は王都から戦地となっている平原まで数千kmも離れている、ヴァスターガンダムやIS、ストリボーグならほんの2・3時間位だが、此処トータスの主要な移動手段である馬車だと1週間は下らない、魔物達で構成されたガーランド軍の進撃もそれ位の日数が掛かるだろう、それ位の時間なら周辺都市や他国との連絡を密にして迎撃どころか野戦に持ち込める程の戦力を整える事等造作もないという点で決定的に違う。

 

「リリィ。僕はやるよ、やって見せる…!」

 

そんな覆しようのない圧倒的戦力差を見て勝利を確信、ハイリヒ王国を始めとした人間族・亜人族のテリトリーは任せても大丈夫だと安心したハジメは、改めて邪神エヒトルジュエ討伐、その為の大迷宮攻略へ決意を固め、弾き語りでもしたくなったのか宝物庫からギターラを取り出し、そのまま弾き出した。

彼が今回選曲したのは『宇宙世紀』シリーズのその後、このシリーズの軸と言って良いアムロ・レイとシャア・アズナブルの戦いの結末を描いた『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のその後を描いた映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の主題歌『閃光』。

その前奏を弾き進める中、ハジメの脳裏に此れ迄の道程がフラッシュバックして行った。

 

「Blinding lights are fading out from the night

あどけない夢掲げた 痛みを知らない赤子のように」

 

オルクス大迷宮の最深部、反逆者の住処にてこの世界の真実を知ったあの日、ハジメは邪神エヒトルジュエを討伐して元の世界へ帰還すると決意した。

この頃はまだこのトータスと言う世界へ、其処に住まう人間族等へ抱く印象は極一部を除いてマイナス寄りだったのもあってか、この世界を救って見せるだとか、此処に住まう人々を守って見せるだとかいう考えは毛頭なく、当然ながらトータスに存在する国の主になっているなんて考えもしていなかった。

故に今では国交を結んでいるヘルシャー帝国とも、シア達ハウリア族の面々とハルツィナ樹海へ向かう際に小隊程度とはいえ軍属の兵達と交戦、という名の虐殺をして来たし、ブルックの町の人達やフューレンの人達との関わり方も一言で言えばビジネスライクな物だった。

ウルの町を魔人族の襲撃から守ったのも、ウィルを救出する依頼の序でというのもあったが、最大の理由は愛子が守りたいと思ったから、ハジメ達にとって大切な人の想いを叶えたいと思ったからだ。

 

「Thunders calling to my ears all the time

揺れる心隠した 痛みを覚えた子供のようにって」

 

それが揺らいだのは、リリアーナがハジメ達を守る為にクーデターを起こして己の家族を始めとした親しい人達を皆殺しにした事、その際にハジメが「自己防衛の為に」提供した銃火器や兵器が使われた事を知った時。

ただ大切な存在であるリリアーナを守りたかっただけの行動が、逆に彼女を追い詰めて心をズタボロにする様な事態に発展してしまった事に衝撃を受け、そうなってしまった責任を取るべく結婚、同時に王の座が空位となったハイリヒ王国の国王に即位した。

と言ってもその時はまだ、ハジメとしてはリリアーナにとって、彼らにとって大切な存在がそうまでして守りたい程大切な物がこのトータスであり、ハイリヒ王国であり、王国に住まう人々であるから守りたいという感覚だったし、トータスへの、其処に住まう人間族への印象が彼女の奮闘によってマイナスからプラスに転じたからでもあった、本質を変えた訳では無いと思っていた。

 

「I'm scared to death and it's so cold all the time

当たり散らし乱れた 認めたくない過去思い出して

Take the sword and get prepared for the fight

気づけばいつのまにか 新しい世界に染まりだしていく」

 

だが即位して直ぐに行ったガーランド側のスパイや邪教関係者の摘発、それが済んでからの外遊を通じてトータス各国の情勢やら国民の生活やらを真剣に見聞きしている内に、トータスも人間族の国々も、其処に住まう人々も本質的には自分達がいた世界とそんなに変わらないのだと知り、ハジメ自身にとっても大事な物となってく内に、そんな大事な物に、その1人でもあるリリアーナに今までの自分が何をして来たのか、知らず知らずのうちに罪悪感に苛まれる様になった。

それをメルジーネ海底遺跡の最終試練で容赦なく突きつけられ、討つべき敵である邪神エヒトルジュエと同じでは無いかと言う有り得てはならない考えに行きついてしまい、取り乱して幻覚相手に乱射しようとした。

 

「Teach me how to fly

これ以上泣かないで 羽ばたけるように

“Just take one deep breath

And hold it still until you see your enemies inside your scope”」

 

1度行きついたその考えを振り払えず、段々と追い詰められていったハジメだったが、そんな彼を立ち直らせる切っ掛けとなる出来事があった、ミュウがハイリヒ王国を「大好き」だと言った今朝の事だ。

新たなる国王となったハジメの下でのハイリヒ王国が「大好き」と言える状況になるまでに起こった様々な出来事は当事者だから知っている、そういった出来事を知らない初見なら兎も角知っている自分が軽々と感想を口にしてはいけない事も幼いながら聡明な彼女は理解している、その上でミュウはハイリヒ王国を、ハジメが治めるこの国を「大好き」だと言ってくれた、オルクス大迷宮でトータスの真実を知ってから今に至るまでにやって来た事が決して間違いじゃ無かったと言ってくれた。

 

「鳴らない言葉をもう一度描いて

赤色に染まる時間を置き忘れ去れば

哀しい世界はもう二度となくて

荒れた陸地が こぼれ落ちていく 一筋の光へ」

 

ならば、これまでにやらかしてしまった事を過剰に悩むのはもう止めて、邪神エヒトルジュエの討伐という初志を貫徹すべく再び前へ進む。

そして見せつける、トータスを『盤』に、其処に住まう生き物を『駒』に見立てたゲームと称して1人愉悦に浸るよりも、皆を幸せに出来る様導き、数多の笑顔に満ちた世界を作り上げる方が余程やりがいのある楽しい事であると。




他の作品の更新を再開したり等で飛び飛びとなりましたが第7章は今回で終了、次回からは大迷宮攻略を再開します。

ただ次回の更新ですが、来週にはコロナの予防接種等の予定が入っている為、もしかしたら遅れるかも知れません。
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