【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

95 / 107
投稿が遅くなってすいませんでした。


92話_行って参ります

「ん、此処は…」

 

背部より伝わる金属の様な冷たく硬い感触、それを感じ取ったハジメは、微睡の中に居た意識を急速に覚醒、自分が今どんな状況下に置かれているかを油断なく確認した。

光源など一切ない真っ暗闇だったもののハジメは『夜目』の技能を会得していたのでISのハイパーセンサーを使うまでも無く周囲の把握は容易に行えた。

その眼に映った光景からして、どうやら先程迄いたそれよりも二回り位大きい、巨樹の洞らしき場所へと自分達は転移した様だ。

尤も先程の洞と違うのは大きさだけではない、その空間内には長方形で黄褐色の透明な物体、人一人ぐらいがすっぽり収まる棺の様な物が規則正しく円状に置かれていたのである。

今しがた覚醒したハジメもまたそんな棺の1つへ転移し、そのまま眠らされていたのだろう、尤も起きる際に消失したのか棺があったと思しき場所には何もなかった、一方で他の7つの棺にはハジメとずっと同行していた香織と雫、優花とシアの他、魔物の姿に変貌した状態で離れ離れになるも後で合流したユエとティオ、幸利が元の姿に戻った上で棺に入れられ、今なお深い眠りについていた。

そう、転移と同時にハジメ達は棺の中で眠らされていたのである、恐らくは挑戦者達にとって何から何まで都合の良い事だけが存在する『理想世界』を夢として見せる為に。

きっとそんな理想世界を見せられながらも、それが夢だと気付き、己の意志で脱出出来るか否かを、理想世界という名の甘い幻想を振り払える意志があるのかを試す大迷宮の試練なのだろう、ハジメはそう推測した。

そんなハジメが見せられた理想世界、その世界におけるハジメはハイリヒ王家の庶流である地方領主ナグモ家の生まれだったが、その並外れた才覚を聞き付けた国王エリヒドの熱烈なアプローチもあって、婿養子という形で王家を継ぐ存在となっていた。

数年前、聖教の主神エヒトの名を騙り長年に渡ってその影響力を我が物としていた悪神エヒトルジュエを諸国と協力して討伐した事で『英雄王』と称されたエリヒド、彼には既に王子であるランデルが生まれていたにも拘わらずハジメを跡継ぎとして迎え入れた事については世界中で論争が巻き起こる程の衝撃であったが、エリヒドの期待に応えねばと奮起したハジメの活躍によってその声は間もなく沈静化、その英断を成し遂げたエリヒドへの支持は揺るがない物となっていた。

そして夢の中の年代においてハジメは、義理の両親であるエリヒドとルルアリア、義理の弟であるランデル、正室でありハイリヒ王国の姫であるリリアーナ、ナグモ家に居た頃の婚約者である香織と雫、優花と愛子に、吸血鬼族の国の姫であるユエ、兎人族の国の姫であるシア、竜人族の国の姫であるティオ、海人族の国の姫であるレミアとその『妹』であるミュウら側室達といった大事な家族に囲まれ幸せな時を過ごしながら次期国王に相応しい存在となるべく勉学や公務に邁進していた。

リリアーナがクーデターを起こす事もエリヒドらが操られた末に命を落とす事も無く、吸血鬼族の国が滅ぶ事もユエが監禁される事も無く、魔力が無いという理由で亜人族全体が差別される事もその中で魔力を有するシアが化物扱いされる事も無く、竜人族が絶滅の危機に瀕する事も無く、そもそも一連の黒幕であるエヒトルジュエは既にエリヒドらの手で討伐されている、そんなハジメにとって都合の悪い事が一掃された上で今とほぼ変わらない立場に就いた理想世界、然しながらその世界『に生まれ育った』ハジメの心中には言い知れぬ違和感が、『ありもしない記憶』が常に付きまとっていた。

惨劇が起こった事を物語る血まみれの王宮、その中で皆殺しにされたエリヒドら家族や重臣達、大粒の涙を流しながら彼らに銃口を向けるリリアーナ…

時間が経つ毎にはっきりとしていく記憶、心中で大きくなっていく違和感、それらは理想世界のハジメに、出来る事なら直視したくなかったであろう現実を突きつけた、この世界は己にとって都合の良い夢でしかないのだと、過去を変えるのも、消すのも、無かった事にするのも出来ないのだと、現実はそんな都合の良い事ばかりじゃない、どうしようもなく都合の悪い事もそれなりにあるのだと、消えない過去に、都合の悪い事に向き合い乗り越えてこそ、真の幸せは待っているのだと…

皮肉な事ではあるが、メルジーネ海底遺跡の試練でズタズタに切り裂かれたハジメの心に植え付けられたトラウマが、このハルツィナ樹海の理想世界の試練を攻略する手助けとなったのである。

こうして理想世界が夢の中のものだと把握したハジメは、その様に何事かと問うエリヒドらに、今なおエヒトルジュエを信仰する一派の残党が潜伏しており、その粛清を次期国王である己自ら行かねばならないと宣言、色々と理由付けて引き留めんとする彼らを説得、それが成せた次の瞬間、理想世界と言う名の空想はバラバラになった。

これによって試練は合格、現実へと意識が戻される刹那、恐らくはこの迷宮を作り上げたリューティリス・ハルツィナと思しき者から、甘く優しいだけでなく、与えられるだけでなく、辛くとも苦しくとも現実で積み重ねた物こそが幸福に導くのだとアドバイスを受ける。

それと共に、ハジメの背後にずっといたエリヒドとルルアリア、ランデルから背中をそっと押されたような気がした…

 

「行って参ります、義父上、義母上、ランデル…

必ずやこの手で偽りの神を討伐し、このトータスという世界を皆が笑顔に、幸せになれる世界にして見せます。どうか、どうか僕達の歩みを、天より見守って頂きたい…!」

 

ハジメは静かに涙を流しながら、天国にいるであろうエリヒドらにそう告げた。

そんな彼の懐にあるステータスプレート、その技能欄に出来た空欄部分に再生魔法の文字が何時の間にか刻まれていた事に気づいたのは、保留扱いになっていたであろうメルジーネ海底遺跡の試練の成否が合格と言う形で通達されていた事に気づいたのは、もうちょっと後の話。

 

------------

 

その後、他の皆も理想世界の脱出に成功して目覚めた事がトリガーになったのだろう、部屋の中央に出現した魔法陣によってみたび強制転移されたハジメ達は、今までと同じ樹海の様で、実は天井が存在したり広さもそれ程広くないのか目標と言える巨大な樹が見えたりする空間へと転移した。

どうやら此処での試練は最初のそれみたいに離れ離れにしたり偽物を紛れ込ませたりするタイプでは無いのか、転移された場所には全員が揃っていた。

それを確認した一行は巨樹へと一直線に飛行、転移の際に一時は所有していたISの反応がロストしていた、つまりISを没収されていたユエ達も此処への転移の際に元の状態で返却されたのか、何の問題も無く起動出来、一行から遅れる事無く進軍出来た。

その途中、天井や地面、樹々や草から乳白色のスライム状の魔物が大量発生、地上にいるであろう挑戦者達を飲み込まんとしていた。

恐らくはこの乳白色のスライムこそがこの空間における試練の担い手なのだろう、それを見たハジメが未来予測系の技能を駆使して確認してみると、その試練の概要が判明した。

そのスライムの粘液には強力な媚薬の成分が入っており、それに多少でも身体が触れてしまうと性的欲求が大いに増強され、正気を失わせる程らしい。

地上数mがスライムの海と化すほどの物量からしてほんの一滴も触れないなど不可能と言って良いだろう、それによって増大化した性的欲求に耐えて困難を乗り越えられるか、或いは性的欲求に飲み込まれても絆を保てるか、それを問うのが今回の試練なのだろう、それをハジメから聞かされた一行は、そのスライムが色合いもあって完全にハジメが妻達との(ピー)で注ぎまくる『イカ臭い』液体にしか見えなくなり「何処のR-18な展開なの…」と苦笑いを浮かべるしか無かった。

尤もハジメ達は空を自由自在に飛べるISを装備している為スライムに飲み込まれる事は無いし、天井から降って来るそれも、ISのシールド・バリアによって装着者に干渉する事は叶わない為、一行は完全にスルーしていたが。

こうして何の障害も無く巨樹の元に辿り着いた一行は、今までと同じ様な展開で出来た洞に出現した魔法陣で次なる場所へと転移した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。