【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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序盤は下ネタ注意です。


93話_紫紺の蝶VS黒い悪魔

ハジメ達が転移した先、それは先程迄いた洞と一見すると変わらない場所だったが、既に出口が空いていた事、その先の景色が先程の樹海とまるで違っていた事等から転移に成功したのだと一行は確信、また何人か偽物が紛れ込んだり琥珀の棺に入れられたりといった今まで見た様な仕掛けも無かった為、今回の空間も今までとは違う様な試練が待ち構えているのだろうと一行は警戒心を強め、洞を後にした。

 

「…まるでフェアベルゲンだね、これは」

 

洞を出た先に広がる光景はフェアベルゲンを思わせる樹の枝で出来た空中回廊、その美しい光景に思わず呟いたハジメに、他のメンバーも確かにと頷いた。

尤もフェアベルゲンのそれが幾本もの巨木から生えた枝が絡み合って出来ているのに対して、この空中回廊はハジメ達が先程迄いた洞を生み出した巨木1本から生えた枝だけで形成されているという違いがあるが。

そんな空中回廊を、人が通れるほどの頑丈さと太さを併せ持った枝で作れるとなると、それはそれは巨大な樹という事になる、実際背後には捉えきれない程の幹が見える。

見上げてみれば石で出来た天井、つまりここは馬鹿でかい地下空間、そしてこれ程の巨木が世界に2つ以上もあると思えないとなると…

 

「此処までの太さとなると、ひょっとして地上の大樹と繋がっているのかな?」

「…そうかも。となるとこの空間は大樹の真下」

「だがそれだと、地上に見えていた大樹は…」

「地下の幹から枝が生えているんだ、本当の根はもっともっと地下深くで、地上で見えるのはほんの先端部分と言う事になるね。あれでほんの一部って事は、本当の大きさは一体どれ位なのかな…」

「つまりク(ズギャーン!)スって事だね!」

「きゅ、急に何を言い出しているの香織!?」

「何と、我らが毎晩目にしておったク(バキューン!)スは先端部分だけであったのか?」

「まあ吸血鬼族や兎人族、竜人族もそうかは分かんないけど、人間族はそうだって聞いた事あるわね。大部分は身体の中に埋まっているとか。確かにこの大樹もそれっぽいわね」

「へぇー、勉強になるですぅ」

「いや何の勉強なの!?」

 

背後の巨木の正体が、大迷宮の入口たる大樹の地下に埋まっている部分だと気付き、改めてその凄まじいまでの巨大さに度肝を抜かれて頭上を仰ぐハジメと幸利、ユエの一方で、そんな真面目な考察を耳にした香織が突如下ネタ全開な例えをし、雫がツッコむのも構わず猥談に興じていた。

と、その時全員のハイパーセンサーが、何かしらの音をキャッチした、どうやら通路の下の方、闇が一面に広がる底の部分から聞こえる様だ。

それを聞いた全員がすわ敵襲かと警戒、音の正体が何なのかを確認すべく油断なく枝の淵へと移動した、してしまった。

ハイパーセンサーの視覚補正によって超絶強化された視界が捉えた、闇の向こう側に居るであろう音の正体、それは、

 

「ゴ…」

「ゴ…!」

「ゴ…!?」

『ゴキブリィィィィィィィィ!?』

 

ゴキブリ、それは「1匹いたら30匹いると思え」という格言にもある通りの『下半神』ハジメも顔負けな繁殖力、強力な大顎を駆使してゴムやプラスチックすらもバリバリと喰らう雑食性、どんな環境でもしぶとく生き残る生命力からトイレや生ごみを捨てる場所等の不衛生な所に住み着き、そういった場所で増殖した病原体をばら撒いて行く事や、気色悪い見た目、駆除を困難にさせる素早い動きからか現代日本において嫌わぬ者はほぼいないと言って良いヤベー奴、またの名を黒い悪魔、或いはG。

そんなゴキブリと思しき存在が、恐らくはそれを模したであろう魔物がこの地下空間の底辺、大枝の道の下に広がる暗い闇の向こう側に数百、数千、数万という膨大な数で群がっていたのである!

音の正体がゴキブリだと知らずに確認してしまった事を今更ながら後悔しつつ即座に飛び退くハジメ達、幾ら化物級の戦闘能力を有し、IS等の強力なアーティファクトを装備している一行と言えどゴキブリに対する嫌悪感と恐怖感が払しょく出来る訳では無いのだ。

それと同時に、出来れば当たって欲しくない憶測が一行の脳裏に浮かび上がる、この空間における試練、それは闇の底に潜むゴキブリ型魔物を殲滅しろとかそういう物なんじゃないか、でなければ回廊の端から視界を強化して覗き込まねば見えず、聴覚を研ぎ澄ませなければ僅かな音すら捉えられない場所に魔物を配置する筈は無い、きっと然るべきタイミングで此方に襲い掛かって来るか、逆に闇の底へ突き落して来る筈だと。

此処まで一行に擬態した魔物を紛れ込ませたり一行の誰かを魔物の姿に変えた上で別の場所に転移させたり、冒険者の理想を体現した夢を見せたり、意味深な色合いのスライムに触れさせる事で発情させたりと、挑戦者の『精神力』やら『絆』やらを試す様な試練を課して来たこの大迷宮ならさもありなん、と判断した一行は何時そんな事態になっても良い様に身構えながら移動する。

すると案の定、

 

『き、来たぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!と響き渡る大量の羽ばたき音と共に、ゴキブリの大軍が此方へと襲撃すべく急上昇して来たのだ、それはさながら真っ黒な津波の如く。

 

「『五天龍』!」

「抹殺!ですぅぅぅぅぅ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「来るでないわぁぁぁぁ!」

「汚物は消毒だぁぁぁぁ!」

「『月光蝶』であぁぁぁる!」

「スプィーシカ、バスターモード!」

 

それを耳にした一行は即座に反応、ユエは様々な属性を有する5体の龍型エネルギーを、ティオは竜化させた頭部から灼熱のブレスを、優花はパリャーシからやはり火炎放射を、幸利は十八番である月光蝶を、香織はスプィーシカをバスターモードに変形させてビームを、ハジメ達専用の遠距離攻撃手段を持っていない者達はプラミヤから大量の榴弾を放ち、ゴキブリの大軍を殲滅していく。

だが数は余りにも多すぎるし、だだっ広い地下空間のあらゆる場所から出て来るし、統率も十分に取れている為か其々の攻撃がどういう物かをある程度把握して被害を最小限に食い止められる様な布陣へと即座に変えられてしまうしで、相当な数が戦場へ飛び立つのを許してしまった。

 

「Fervor,mei Sanguis!」

「「『聖絶』!」」

 

そのまま重力に従ってハジメ達へと降下して襲撃して来るゴキブリ達、だがそれを甘んじて受け入れる訳が無く、ハジメはメルキューレによって金属障壁をドーム状に展開、ユエと香織が聖絶でそれを補強し、敵の侵入を一切許さない。

それに構わず障壁へ突進して来るゴキブリの大軍、障壁を粗いヤスリ状にした事でぶつかったゴキブリが瞬時に粉みじんと化すという中々グロい光景が広がっていたが、金属障壁の影響で視界が塞がれていたのが逆に幸いしたか精神崩壊を起こす者はいなかった、もし障壁が透明な聖絶だけだったら…想像するだけでも悍ましい。

だが何時までも守っているだけと言う訳にも行かない、メルキューレは元々シュタル鉱石なので耐久力は無限じゃないし、補強の為の聖絶にも時間制限がある、何よりゴキブリ達が何かしらの対策を立てて来るだろう、そろそろ反撃しなければと各員が各々の武器を構えようとしたその時だ。

突如として聞こえなくなった衝突音、それを訝しんだハジメがメルキューレによる障壁を撤去すると案の定と言うべきか障壁に群がっていたゴキブリの大軍が既に引いていた後、そのゴキブリ達は空中で球体を作り出したかと思ったら、それを中心に囲うかの如く円環を作り出し、その円環に紋様を描くかの如く他のゴキブリが各地に配備されて行ったのだ、まるで魔法陣を形成するかの如く。

 

「トシ!今すぐに月光蝶を発動して!全力全開で魔法陣の方に叩き込んで!」

「何が起こるか分かんねーが了解だ、ハジメ!『月光蝶』であぁぁぁぁる!」

 

その光景を目の当たりにしたハジメがXラウンダーによる近未来予測を行った事でその魔法陣の効果を把握、それが阻止しなければならない凶悪な物だと理解したのだろう、幸利に対して即座に月光蝶の発動を指示し、幸利もそれに応じて極彩色のエネルギーの奔流を魔法陣へと殺到させる。

そうはさせじとその魔法陣を守るかの様にゴキブリの波が立ちはだかる、然しながら『月光蝶』の本質は魔力関連のハッキング、放出された闇魔法の因子は重さを有していないので重力の影響を受けず、壁役となったゴキブリ型の魔物に接触したとしても運動エネルギーの消失なくすり抜ける様に、或いは瞬殺しつつはたき落とす様に奥へと殺到、何かしらの術式を発動しようとした魔法陣を、それを構成していたゴキブリごと崩壊させた。

 

「トシ、次は下!通路の裏に新たな魔法陣が!」

「任せろハジメ!俺の月光蝶に不可能は無い!」

 

だがそれは囮だと言わんばかりに新たなる手を打っていた様で、ハジメ達の立つ通路の裏側で別の効果を有するであろう魔法陣を形成するゴキブリ達、だがそれをXラウンダーで感知していたハジメが幸利に指示を飛ばし、それに即座に応じた幸利の手によって未然に防がれた。

どうやらあの魔法陣以外にこの状況を変える手段を持ち合わせていなかったのか、その後は先程迄の様に突っ込む事しかしなくなり、程なくハジメ達の手によって殲滅され、それで試練は成功となったのか天井付近からハジメ達の方へと大きな枝が伸び、やがてそれは波打つかの様に変形して階段状と化した。

それを受けて折角だからと階段を上って行く一行、その途上であの魔法陣にどんな効果があるのかをハジメに聞いてみた所、最初の魔法陣はゴキブリ達の大ボスと言える、ムカデ型に合体したゴキブリを召喚する物で、2つ目の魔法陣は挑戦者の好意と敵意を『反転』させる物だそうだ。

もしその魔法の発動を許していたらどうなるか、1つ目は兎も角、2つ目の場合は、それまで愛し合い、背中を預け合った仲間達を『仇敵』、視界に入れるのも躊躇われるゴキブリ型魔物を『大切な物』と捉えて同士討ちに走ると言う、ちょっと考えただけでも恐ろしく感じる未来が見えた一行はそれ以降、考えるのを止めた、まあ結果的に発動を許さなかったのだから良しとしようと思ったのだろう。

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