遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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暑い―――。
寒い―――。
眩しい―――。
暗い―――。
―――ここは…、どこだ………。



プロローグ:Nothing

 死んだ。その記憶だけがしっかりと残っていた。

 ならばここは、あの世か。

 何も無いとも、モノに溢れているとも表現できる奇妙な世界。俺はその中で、裸とも着衣ともつかない姿で浮いている。

 分かり易く、というより想像し易く言えば、虹色に輝く空間で体が輪郭線以外は光ってぼやけている、といった感じか。アニメの変身ヒロインの変身シーンでは体が光っているが、アレを思い浮かべると1番近い。

 

 

 ……………………っ!? あいつは!? あいつはどこだ!?

 一緒に死んだはずなのに!?

 

 自らの半身とも言える奴がいない。探しに行きたいが、右も左もどころか、上下も前後も分からない。

―――悔しい

 探しに行けない。共に幸せを絶対に掴もうと誓ったのに。

 

「…………、……」

 

 試しに移動を試みる。何もしないよりはマシかと思ったからだ。

 しかし、動かない。あるいは風景が変わらない。

 

 

 …………おい、神様とかいう奴。俺、何かしたか?

 あいつが何かしたのか?

 生まれてから不幸ばっかりを味わって来た俺達が、何故死した後も引き裂かれるという不幸を味わわなくてはいけない?

 運命か? ふざけんな。俺は、否、俺達はその言葉が大っ嫌いだ。

 

「どこにいるんだよ、ミヤコ…………」

 

 ポツリと呟く。誰も返す訳が無いと知りつつも。

 そばに誰もいないと分かりつつも。

 

『こんにちは』

「!!??」

 

 突然、俺の目の前にヒトが現れた。

 性別は不明。声は……女か?

 女神像の様な姿形がするが、どちらかと言えば光がヒトの形を作っている様な感じだ。ぼんやりとした全体像以外分からない。

 そして気がついた。強く発光しているのに、全く眩しく感じていない。何故だ。その能力は今は(・・・・・・・)適用してないのに(・・・・・・・・)

 

「……誰だ、あんたは?」

 

 恐る恐る聞く。

 そのヒトはニコリと笑って(光の微妙な動きで判断した)答えた。

 

『神、ではありませんが、そう定義するのが1番分かりやすいでしょうね』

「!?」

 

 神、だと…………。

 いや落ち着け。厳密に言えば違うだろう。

 1番分かりやすい、という事は、そうじゃ無いと言う事だ。

 

『初めまして、レイ』

「……、初めまして」

 

 挨拶ぐらいは返しておく。礼を失してしまえば聞きたい事も聞けなくなるだろう。

 だが、心は焦りに満ちていた。たった一つの聞きたい事があるからだ。

 

「いきなり質問、というのも無礼だとは承知しています。しかし、答えて頂きたい事があります」

『なんでしょう?』

 

 一拍、間をおく。自身を落ち着かせるためだ。

 

「俺と一緒にミヤコという人が死んだはずだ。あいつは今、どこに?」

 

 これがたった一つの不安。生きているなら俺自身を幽霊にでもしてもらう。死んでいるなら一緒にあの世で暮らす。しかし、何も分からない以上アクションは起こせない。

 

『ミヤコは、既に死んでいます。そして貴方と同じ世界に救世主の1人として転生してもらう………………、予定でした』

「……、どういう………………、意味です?」

 

 でした、つまり過去形という事は、現在は異なる、という事だ。

 

『その前に、こちらの事情をお話します。その後の方が、説明し易いですから』

 

 こちらをご覧下さい、と神様(とりあえずこう呼ぶ事にした)はスクリーンの様なものを示した。

 映し出されている、あれは…………………。

 

「遊戯王……?」

『厳密に言えば、その世界です。貴方達にはこちらに転生して頂くつもりだったのです』

 

 創作なんかでよくある転生モノか。まさか当事者になるとは思わなかった。

 

『世界は1つの括りが無数に集まり、そしてそのそれぞれの括りの中には無数の平行世界が存在します。』

 

 平行世界。同じように展開されている、されど異なる世界。

 自分がいる世界をAとするなら、世界Bにも俺はいる。ただし、Bの俺は嗜好や性別、考え方が違ったりする。

 

『そして異なる括り同士は互いに交わっています。交わりは互いの世界にそれぞれの特徴をもたらしたり、あるいは何かしらの作品となって表れます』

 

 なるほど。遊戯王は作品では無く、実際にある世界。それが“偶然”という形を取って作品としてこちらの世界に干渉した。そういう訳か。

 

「そこまでは分かった。本題に入って欲しい」

『………、実は、この平行世界は1つが欠けても他を元に修復できるという、パソコンでいうバックアップ機能のような便利な特性があります。

 しかし、その反面、連鎖破壊が起きやすいという欠点があるのです』

 

 砂で作ったアーチを思い浮かべれば分かりやすいだろう。どこか一ヶ所を壊すと、その近くも崩れたり、作りが弱ければ自身の重さで崩壊する。

 

『この世界の内の1つに、時代は貴方達で言う「GX」の世代で、他には無い変化があるのです。しかも、それは確実に世界が壊滅する方向へと向かっている』

「が、その世界の住人を無理に動かせば他のGXの平行世界で綻びが生じ、そこを何者かにつけ込まれる、そういう事ですか?」

『その通りです』

「だから、俺達という死んだばかりのイレギュラーを投入しようとした。不確定因子なら、他の世界では同じ形で事象は起きず、仮に起きても別の人を投入するという形で違うストーリーを展開させられる」

 

 自分なりに仮説を立ててみたが、神様は肯定してくれた。

 ほっ、と息を吐く。どうやら頭の中身は変わっていないらしい。

 

『不運にも命を落とされた貴方達は、正に適材でした。そのまま2人とも転生させ、歪みの修正に充てようと思ったのです』

「……だが、もう1人の死者、ミヤコの方になにかアクシデントが発生した、か?」

『はい。変化の根源は意思のあるものでした』

 

 調べ不足でした、と神様は素直に頭を下げたが、今の俺の頭の中はそれ所じゃ無かった。

 アクシデント、意思あるもの、ミヤコだけ、そして遊戯王…………。

 既に現状を表せる仮説が生まれていた。こういう時、自分の頭の回転力が恨めしい。

 

「まさか……! ミヤコは敵の手に落ちたのか……?」

『残念ながら、その通りです』

 

 間を開けずに言ってくれたのは優しさだと信じたい。

 意志ある邪悪。

 心が真っ暗になりそうなのを必死に堪え、どんな奴が黒幕なのか、時代を考慮し、考える。

 パッと思い浮かぶのは“オレイカルコス”や“邪神”、“ユベル”か。時系列を考えなければ、“地縛神”や“パラドックス”、“ナンバーズ”といった所も追加できる。

 世界を崩壊させる事を考えると、その中で否定できるのは、根源から断たれた“オレイカルコス”、目的が合わない“パラドックス”と“ユベル”、力の回し方が違う“ナンバーズ”だ。

 

「…………」

 

 黒幕である何者かは、自分を邪魔しようとする存在を敏感にキャッチし、ミヤコを奪ったのだろう。死んだのか、それとも人質か。しかし、ほぼ同時に死んだ自分はここにいる事は僥倖だった。

 

「……、ミヤコは取り戻せるのか?」

『あの世界ではデュエルは所謂「万能」ですから……。確実とは言えませんが、何とかなるかもしれません』

 

 希望は0じゃないという事か。もし不可能(インポッシブル)ならば断わろうと思ったが、僅かでも望みがあるのなら……!

 

「分かりました、引き受けましょう」

『ありがとうございます』

 

 あいつを俺は絶対に取り返す。それが1番の目的。世界の平和は2番だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、神様は俺を光のゲートへと導いた。

 必要な事があるらしく、物資は用意するのでこの先で力をつけて欲しい、との事。

 

(ミヤコ…………)

 

 きっと敵は無茶苦茶強い。何か対抗し得る力を身につけられるのはありがたい。

 

「待ってろよ、今助けに行くからな…………!!」

 

 静かに決意の言葉を呟き、俺はゲートをくぐった。

 

 

to be continued




にじファンにて投稿していた作品を発掘したため、改訂・増筆しつつ再投稿です。
何卒よろしくお願い申し上げます。
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