遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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フレイ・ポーラ「「なーにかな、なーにかな! 今回は、これ!」」



ドローパン
【通常魔法】
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分の墓地にモンスターが存在する場合、200LPを払って発動できる。
自分は1枚ドローし、お互いに確認する。
それがモンスターだった場合、さらにその属性によって以下の効果を適用する。
●自分の墓地に存在しない属性:自分は1枚ドローする。
●自分の墓地に存在する属性:自分の手札を1枚選んで捨てる。



フレイ「デュエルアカデミア名物のドローパンです! 200ライフの代金で食べられますよ!」

ポーラ「……2枚ドローは期待薄。……【暗黒界】とかの効果を狙った方が良いかも?」

フレイ「発動後に墓地のモンスターを退かす、【天変地異】で使う等、利用方法は様々です。頭の体操をしてみましょう!」


STORY103:一緒にドローパンを食べよう

※念のためグロ注意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黎:LP 1500

手札:『RUM-ケイオス・フォース』

フィールド

:EXモンスターゾーン無し

:CX ガガガ侍大将(ATK 2400/CORU:2)

:伏せカード1枚

 

 

 

闇の人形:LP 8000

手札:2枚

フィールド

:CX ヴェルズ・カオス・ウロボロス(ATK 3150/CORU:4)(右のEXモンスターゾーンに配置)

:CX 闇遷幽士 モリオーガンティス(ATK 2950/CORU:3)

:Xトラネット(永続罠)

 

 

 

 状況は悪化の一途。

 相手のフィールドにはモンスターが2体、手札も2枚残っている。

 こっちはライフも目減りしてギリギリだってのに、アドバンテージの差がエグい。

 

『いかがかな? 俺の新しいカオスエクシーズは』

「トラップ発動、『オーバーレイ・レッドシグナル』! 『ガガガ侍大将』のカオス・オーバーレイ・ユニットを1つ使い、デッキから発動条件を無視して『オーバーレイ・ブレッシング』を発動する!」

『何!?』

「『オーバーレイ・ブレッシング』は相手がエクシーズモンスターを召喚した時、そのオーバーレイ・ユニットの数だけドローする! 『ヴェルズ・カオス・ウロボロス』のカオス・オーバーレイ・ユニットは4つ、よって4枚をドロー!」

 

 

CX ガガガ侍大将:CORU 2→1

 

 

 

オーバーレイ・レッドシグナル(オリジナル)

【通常罠】

(1):「C」XモンスターのX素材を1つ取り除いて発動できる。

デッキから「エクシーズ」または「オーバーレイ」罠カードを1枚セットする。

この効果でセットしたカードは、セットしたターンには発動できない。

自分LPが相手LPの半分未満の場合、セットせずに発動条件を無視して発動する事もできる。

(2):自分フィールドにXモンスターが存在し、カード効果でダメージを受ける時、墓地のこのカードを除外して発動できる。

自分の墓地から「エクシーズ」または「オーバーレイ」罠カードを2枚除外し、このターン自分が受ける効果ダメージを全て0にする。

 

 

 

オーバーレイ・ブレッシング(アニメオリジナル)

【通常罠】

相手がエクシーズモンスターの特殊召喚に成功した時、自分の手札が0枚の場合に発動できる。

そのエクシーズモンスター1体のエクシーズ素材の数だけ、自分はデッキからドローする。

 

 

 

 即座に手札を補充し、次の攻撃に備える。

 幸いにも『侍大将』は破壊を1度だけ防ぐ効果がある。これでライフを守りつつ次のターンの反撃を準備できた。

 ダメージを喰らう事もなく態勢を整え、返しの刃で奴を討つ。

 

『とか思ってるんだろ?』

「!」

『『ヴェルズ・カオス・ウロボロス』の効果発動! このモンスターは自分フィールドのエクシーズモンスター全てに貫通能力を与える!』

「何だと!?」

『それだけじゃねぇ、『モリオーガンティス』は既にフィールド・墓地に同名カードがある効果を発動した時、それを無効にして除外できる! お前はこのターンを凌いでも、次のターンにランクアップはできねぇ!』

 

 ちょっと待て、それはマズい! ハッキリ言って話が変わる!

 『ガガガ侍大将』の破壊耐性は守備表示の時の効果、貫通を2回受けたらライフが尽きる! よしんば耐えたとしても、『ケイオス・フォース』が封じられていたら意味が無い!

 取り敢えずまずは攻撃を凌ぎきらないと、俺の負ける以外のルートが無くなる!

 

(こうなったら──)

『墓地の『超電磁タートル』を使うしかない、かぁ?』

「っ!」

『残念だったな、お前が『昇格の天地降札』で捨てたカードがそれだってのは分かってるんだよ。

 俺は『ヴェルズ・カオス・ウロボロス』のモンスター効果を発動! このモンスターはカオス・オーバーレイ・ユニットを1つ使う事で、お前の墓地からモンスターを5体除外する!』

「何ぃ!?」

『この効果で俺は『超電磁タートル』『ガガガマジシャン』『ガガガシスター』『ガガガヘッド』『カゲトカゲ』を除外!』

 

 

CX ヴェルズ・カオス・ウロボロス:CORU 4→3

 

 

 

CX ヴェルズ・カオス・ウロボロス(エクシーズ・効果モンスター)(オリジナル)

ランク6

闇属性/ドラゴン族

ATK 3150/DEF 2750

ドラゴン族・闇属性レベル6モンスター×4

(1):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、自分のXモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

(2):EXモンスターゾーンのこのカードが相手の攻撃で破壊されたターンの終了時、手札の魔法カードを1枚捨てて発動できる。

自分の墓地から「RUM」カードを1枚手札に加え、墓地からこのカード以外の「C」Xモンスターを1体選択し、守備表示で特殊召喚する。

この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、攻撃できない。

(3):このカードが「ヴェルズ・ウロボロス」をX素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

以下の効果から1つを選択して適用する。

次のターン、このカードは前のターンに選択した効果を使用できない。

〇このカードの攻撃宣言時に発動できる。

相手フィールドのカードを1枚選んでデッキの1番上に戻し、カードを1枚ドローする。

〇相手の手札をランダムに1枚選んでゲームから除外し、相手のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。

この効果で墓地に送られたカードの効果は無効となり発動できない。

〇カードの種類(魔法・罠・モンスター)を1つ宣言する。

相手の墓地から宣言した種類のカードを5枚選んでゲームから除外する。

 

 

 

CX 闇遷幽士 モリオーガンティス

ランク6

闇属性/岩石族

ATK 2950/DEF 2450

岩石族レベル6モンスター×3

このカード名の(1)(2)の効果は、それぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが相手の効果によって除外された場合に発動できる。

自分の墓地から岩石族Xモンスター1体を選んで特殊召喚し、除外されたこのカードをそのモンスターの下に重ねてX素材とする。

(2):お互いのフィールド・墓地に存在するカードと元々のカード名が同じカードの効果を相手が発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

その発動を無効にし、ゲームから裏側表示で除外する。

(3):このカードが「暗遷士 カンゴルゴーム」をX素材としている場合、以下の効果を得る。

●相手がフィールド・墓地のカード1枚を対象とした効果を発動した時に発動できる。

その効果を無効にする。

このターン既にこのカードのX素材が取り除かれている場合、この効果は発動できない。

 

 

 

 暗黒龍の凍えるブレスが俺のディスクを焼き、墓地からモンスター達が吐き出される。

 これで墓地リソースごと防御札を潰されてしまった。俺と思考回路が似ているだけあって伏兵も返しの手も読まれているらしい。

 

『お前のデッキに入ってるんだろう? 墓地から闇属性モンスターを除外して3枚ドローする『終わりの始まり』がよ。だがこれで墓地の闇属性モンスターは0、ドローしても発動はできねぇ!』

「くっ!」

『バトルだ!』

 

 このまま攻撃を通せば負ける。

 迷っている暇は無い。

 

「この瞬間、俺は手札のトラップ装備カード『エクシーズ・チャーム』を発動! このカードは相手の場のモンスターが俺より多く、その全てが特殊召喚されている場合に手札から発動できる!

 装備モンスターは1ターンに1度、戦闘では破壊されずダメージも受けない! そしてこの効果は自身のオーバーレイ・ユニットの数だけ増やす事ができる! これでこのターンのバトルは全て無効だ!」

 

 相手の手を読めるのは俺も同じ、そのために4枚のカードをドローしたのだからな。

 『エクシーズ・チャーム』を装備した事で、『ガガガ侍大将』は2回まで破壊を免れ、更に自身の効果でもう1度破壊を防ぐ事ができる。

 お互いの場と墓地に同名カードが無い以上、奴の場にいる2体のモンスターでは攻撃を通しきる事はできない。まだ勝負は終わらない!

 

 

 

エクシーズ・チャーム(オリジナル)

【通常罠】

相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多く、全て特殊召喚されている場合、このカードの発動は手札からもできる。

(1):発動後、このカードは自分フィールドのXモンスターの装備カードとなる。

装備モンスターは戦闘では破壊されず、装備モンスターの戦闘によって自分が受ける戦闘ダメージを0にする。

この効果は、装備モンスターの下に重ねられているX素材の数+1回だけ1ターンに発動できる。

 

 

 

『無駄だ、俺は『モリオーガンティス』の効果を発動! 1ターンに1度、フィールドか墓地のカード1枚を対象に効果が発動した時、その効果を無効にする!』

「何だと!?」

 

 岩の大鬼が瞳から光線を放ち、武者に装備されたお守りを射抜く。撃たれた護符はそのまま黒い塵となり、モロモロと崩れて消え去った。

 これで破壊を防ぎきる事はできない。1度目は防げるが、2度目は貫通を食らって倒れるのは避けられない。

 

『もう攻撃を凌ぐ手はねぇだろ! やれ、『ヴェルズ・カオス・ウロボロス』! 奴のモンスターを破壊しろ! “ブラックゼロ・バイデント”!』

「相手の攻撃宣言時、『ガガガ侍大将』は自身の効果で守備表示になる! そして残るカオス・オーバーレイ・ユニットを全て失うが、戦闘で破壊されない!」

 

 

CX ガガガ侍大将:ATK 2400→DEF 2100/CORU 1→0

 

 

『だが貫通能力の前には無意味! 寧ろダメージは300増えるぜぇ!』

「更に手札の『ガガガシャーマン』の効果発動! このカードを手札から捨てて、戦闘で受けるダメージを0にする!」

 

 敵の黒い吹雪が直積する寸前、黒い衣装の祈祷師が俺の前に現れ半透明のバリアを展開する。

 武者は自身の効果で破壊を持ち堪え、俺も攻撃から身を守った。

 これで一撃目は防いだが……、次は防げない。まだ手札は3枚あるが、その中に攻撃を防ぐ手段が残っていない。

 

『小賢しい! ならば『モリオーガンティス』で攻撃! “ダーク・オーガハンマー”!』

「ぐ、あぁああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 

黎:LP 1500→650

 

 

 続けて打ち込まれた巨人の鉄拳。こちらは過たず初老の侍を捉えて粉砕、その余波で俺を大きく吹き飛ばす。

 真っ黒な床を転がる俺。何とかライフは残ったが、本当にギリギリだ。『ガガガンマン』の効果すら耐えられない。

 対する相手は8000まるまる残っている。

 正直ヤバい、効果が通じないってだけでここまで追い詰められるとは。

 

「ぐ、クソ、が……っ!」

『そのまま倒れてろ』

「アァ?」

『立たずに寝て、死を受け入れろ。お前が死んだら俺がお前の体を治して使ってやる』

「笑えねぇ冗談だなぁ……!」

『さて、本当に冗談かな? 俺はこれでターンエンドだ』

 

 

 

闇の人形:LP 8000

手札:2枚

フィールド

:CX ヴェルズ・カオス・ウロボロス(ATK 3150/CORU:4)(右のEXモンスターゾーンに配置)

:CX 闇遷幽士 モリオーガンティス(ATK 2950/CORU:3)

:Xトラネット(永続罠)

 

 

 

 まだだ、まだライフは残っている。

 650だ、0じゃない。

 なら戦える。立ち上がれ、そしてカードを引け。

 ガタつく足に力を込め、重い全身を全力で持ち上げた。そしてデッキに手を伸ばそうと右腕を上げる。

 

「俺の……、っ!」

 

 ズギリと右腕が痛む。新しく作って貰ったからだろうか、それともランク・アップ・マジックを一番触ってるからだろうか。

 痛みで一瞬気が遠くなり、視界がモノクロになる。

 1秒程かけてカラーリングが施され、俺の眼は正常に戻った。

 

『諦めろ、もう限界じゃねぇか。テメェ後戦えて1回か2回なんだろ? その2回目がここなら帰っても戦えねぇじゃねぇか』

「うる、せぇよ……! 俺の体が限界だったら何だ、都にもう無理だゴメンって謝れば良いのか!」

 

 ふざけるな。

 俺とあいつは義兄妹、真っ当な産まれでも生き様でも無かった。

 だが、それでも血を分けた家族だ。20年も一緒にいた大切な家族だ。

 それを救えないですゴメンナサイは通じない。

 

「そんな情けない結末、男として許されない。何より、これまで俺に手を貸してくれた皆に顔向けができないだろうが!」

 

 喉よ裂けろ、と言わんばかりに声を張る。

 そしてそれを受けて闇の人形は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『甘ったれんじゃねぇ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 逆に大声で返してきた。

 

「──!」

『今更キショいんだよ、化物が! なーにを一丁前に人間ぶった事を言ってやがる! お前は化物、人間じゃねぇだろが! 人間じゃないからこそ連中と戦ってこれたんだろ! 体はモンスターだけど心は人間ってか!? そんな都合の良い理屈が通るなら、何で俺の最期はああだったんだよ(・・・・・・・・・・・・・・・)!』

 

 っ、それ、は……!

 

『おい『ヴァンダルギオン』、デュエルが始まってからずーっと黙ってるがよ、こいつ本当に蘇生させて良いのかよ!』

「……」

『チッ、シカトしやがって』

 

 黙してデュエルを見守る黒龍の視線を後目に、俺の脳裏にはあの日の事が鮮明に思い出される。

 ずっと記憶に蓋をして、思い出さないようにしていた……、最期(・・)が。

 

 

  ☆

 

 

 その日は大雨だった。

 俺と都は潜伏していたアパートを引き払い、次の潜伏先へ移動しようと夜闇を移動していた。

 これまで何度も同じような事をしたし、今回も問題無いと思っていた。索敵はしたし、足跡も痕跡も消した。筈だった。

 傘を刺しながら歩く俺達。

 雨で夜の黒と、電灯の白が強調される中、明日の朝ご飯は何にしようと破顔して相談する。

 そんな俺達に明日は訪れなかった。

 唐突に一瞬で囲まれたのである。有り得ない程の物量に。

 

 まぁ数に囲まれるなんてよくある事だった。

 俺はその程度どうって事無いし、都も俺が仕込んだナイフ術がある。鉄の鎧だろうと防刃チョッキだろうと倒せるよう俺が改良を重ねた技術。

 そして可燃ガスを吐いて火を吐き、生命電気を操り雷すら操作し、大砲だろうとミサイルだろうと死ぬ事の無かった俺。

 2つ合わさればどんな敵でも勝てて来れたのだから、その油断も当然だったのかも知れない。

 けれども。

 もしそうなら、俺はここにはいない。

 

「多いね……」

「……妙だな、数が探れない」

 

 俺は自分の肉体を改造し、鮫のロレンチーニ器官を作る事ができる。体内電気で相手の場所や次の動きを探る事ができる部位だ。

 だがそれが何故か探れない。空気中の電位差を探るために自己改造したその部位が、殆ど機能しなかったのである。

 ならば取り敢えず頭数を減らすためと、俺は髪の毛を刃状にして伸ばし、周囲の敵兵の首を斬ろうとした。

 

「!?」

 

 だがそれらは『ぶぢょり』という聞き覚えの無い気持ち悪い音がして止まってしまう。

 驚いたのはそれが何によって奏でられたか、という事。

 何とその音は断った筈の敵兵の首からしたのだ。半分、いや8割は斬った首から。

 まるで接着剤の塊のようなもので止められ、逆に俺の髪は絡め取られていたのだ。

 

「っ!?」

「お義兄ちゃん、こいつらヤバい!」

 

 都は瞬時に危険性を察知したのだろう、その言葉に従い、俺もすぐ髪の毛を切り離す。

 そして向けられる無数の銃。首は斬ったのに手元に1ミリの狂いも無い。

 当たってはいけないと判じた俺は、都を抱えてその場から近くのビルの屋上まで一足飛びに跳躍した。

 果たしてその結論は正しく、銃から放たれたのは弾丸ではなかった。着弾の衝撃を受けた弾丸は破裂するでも穿孔するのでもなく、その設置した物にまとわりつくように液状になって広がり膨らみ始めたのである。

 着弾したのは5センチにも満たない弾丸。しかし壁にへばりついたそれは、瞬時に30センチ程の銀色の餅と化していた。

 あれは俺達を撃ち殺すものではない。枷として戒め、高熱で焼き殺すための新兵器だ。雨粒が蒸発し、アスファルトが真っ赤になっている事から分かる。

 

 市街地でそんな武器を使う異常性、首を抉ったのに生きている不自然さ。

 大雨という音を掻き消す世界、夜という視界を奪う時間帯。

 間違いなく俺達をここで殺すために編隊された本気の特殊部隊だ。

 

(あのクソアマが……)

 

 こういう事をする奴には1人だけ心当たりがあった。

 赤星明可(あかほしあきか)、クソ科学者の女。そして腐りきった日本の国会で熱弁を振るうタカ派の気狂いでもある。

 余程周到に対策したと判断した俺はビルの屋上に着地して逃げようとした。

 しかしそこで別の敵兵に囲まれてしまう。

 俺達がそこに逃げる事を……いや恐らくどこに逃げても良いよう大量の兵力を忍ばせていたのだろう。戦争で人の数そのものが減っているというのに、どこから集めたのやらだ。

 

 

──逃げられない

 

 

 そう判断した俺は、都を背中に負ぶったまま無数のビルの屋上を埋め尽くす敵の大軍を相手に殺戮を開始した。

 手前の敵の頭に燃える膝蹴りを叩き込み、そのまま縦回転して踵落としを次の敵の左肩に打ち込む。

 手前のはそのまま頭部が爆散、次のは肩から心臓を経由して股まで引き裂けた。

 伊達に十数年人殺しを続けて来たワケじゃない。化物の肉体を使った人殺しは呼吸のように俺には簡単なのである。

 次の敵には電流を流し、その隣にいた奴は口の中に手を入れて顎から喉に向けてブレードで切断。別の敵は眼球を直接燃やして動きを封じ、両隣の奴らはビルの屋上から地表に投げ落とした。

 途中、別の敵が攻撃してきたが、それは都が体で受け止める。

 

「いっっったぁっ!?」

「都!」

「こっち向かない!」

 

 深々と刺さった銃弾は、しかしあっと言う間に都の体表に押し戻され、傷口の消滅と共に屋上にコロコロと落ちる。

 都の超速再生は自身の血液に依存している。なので血が一滴でもあれば死ぬ事は無く、そしてそこある異物は排除される。銃弾は愚か、爆弾やチェーンソーでも都を殺す事はできない。

 都は不死身だ。

 少なくとも、その時の俺はそう思っていた。

 

「チィッ!」

 

 屋上にいた奴らは強くない、いくらでも殺せる雑魚敵だった。

 だが何人倒しても、何人殺しても、何人引き裂いても、何人砕いても一向に減らない。

 次から次へと屋上に繋がる階段や外壁からゾンビのように溢れて来る。

 足場を変え、武器を奪い、地形や環境を利用して殺しまくるも、敵の数は全く減らなかった。

 そして。

 

「がっ!?」

「ぎゃんっ!?」

 

 突如として走る激しい衝撃。まるでダンプカーか新幹線にでも撥ねられたような強いショックを背中から喰らい、俺と都は宵闇の中で宙を舞う。

 一瞬だけ見えたのは、ビルの屋上にいた身長10mはありそうな巨人だった。

 有り得ない、人間の体は身長4mを越えると自分の重さで潰れてしまう筈だ。10mなんてデカさを維持できるワケが無い。

 更に地面に着地しようとした俺は、コンクリートを踏む筈だった足を掴まれ握り潰された。

 

「ギッ!?」

「お義兄ちゃん!?」

 

 正体は巨人。それもビルの屋上にいたようなビッグサイズの人間ではなく、ただ手足だ無駄に長いタイプの巨人。

 それが少し離れた場所から手を伸ばし、落下の勢いが付いた俺を掴んだのだ。

 ペギャリという音がして骨が潰れた。そのまま俺の足を潰したそいつは俺の反対側の足を掴むと、

 

 

 ミジリ

 ブヅッ

 ビキキキキ

 

 

 俺の両足を左右に引っ張り、文字通り縦に引き裂きに来たのだ。

 

「が、ぁぁぁぁっ! 都っ!」

「いつでも!」

 

 咄嗟に俺は片足を自切、都はナイフで自分の腕に傷を入れる。

 都の血を浴びた傷口は蘇生する、都にはそういった治癒の力もあるのだ。

 ズル、とそこから先が無くなったように切れた俺の足。そこに都は血をかけるが、しかし大雨のせいで血が薄まって上手く再生できない。

 雨の夜を狙ったのは、同じ液体である都の血液の機能不全も狙いだったのだと気付いたがもう遅い。

 自力で何とか足を復活させるしかない俺は、素早く都を庇って着地。した筈だった。

 気付くべきだったのだ、地面が地面である保証なんて無いという事に。

 

「なっ!?」

「ガッ!?」

 

 俺が足を下ろしたのは地面ではなく、地面に化けた敵。そういった妖怪のように、そいつは大地に寝そべっていた。そして踏み下ろした左足は、イソギンチャクか何かのように触手に絡め取られ、反動で俺は都を放り投げてしまったのである。

 

「おにい──

「都、逃げろ!」

 

 そしてバラバラにされた都にも、次の魔の手が。

 ハッと振り返るより早く、都の両足が股関節ギリギリから切断される。

 切った刃物は、ウォーターカッターと思しき液体。それが放たれたのは……、機械ではなく干乾びた人間。

 ここまで来たらもう分かるだろう。

 俺達を殺した巨人やらゾンビやらの正体が。

 

「あがっ!?」

 

 都の再生能力は早いが、それでも数秒のラグがある。

 いわんや片足を失った俺なんて言うに及ばず。

 足をいきなり切られて倒れた都。その干乾びた人間の隣に別の人間が立ち、再びウォーターカッターを放って今度は腕を切り落とす。

 

「ぎぃっ!?」

 

 雨粒のせいで都の血が無駄に流出している。再生が普段より遅い。

 乾物になった人間2人を押しのけ、今度は腹が異常に膨れたデブ以上の何かが現れた。明るい所で見たら蛙でも連想しただろう。

 助けに行きたいが無事な足を絡め取った触手はそのまま俺の足を噛み砕き始め、移動できない。

 

 ゴリュ、バギ、ベキュ

 

 骨を折る音は何度も聞いたが、断続的に噛み砕かれるなんて初めて聞く。

 痛覚神経をカットしていなければ、発狂していたかも知れない。

 

「クッソがぁ!」

 

 刀を生成して毒を通し、イソギンチャクもどきを何度も突き刺す。続いて炎を吐き、足から電気を流し、全身から鉄のトゲを生やして突き刺す。

 にも関わらず、地面もどきの何某かは決して俺を離さなかった。まるで痛覚が無いかのように。

 そうこうしている内に倒れた都に異常デブ人間が近寄り、その腹が破れた(・・・・・・・)

 破れて絶命し、代わりにその腹から溢れて来た液体は──金属質に赤く輝いている。

 

「都ぉおおおおおおおおおお──ッ!!」

 

 叫んでも近寄れない。

 髪の毛を伸ばして掴もうとするが、無駄に手足の長い巨人が盾になって全て掴んで受け止めてしまった。

 巨人はそれで絶命するも、都を引き寄せられなければ意味は無い。

 

「お義兄ちゃ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 都の剥き出しの四肢ごと、布団のように溶けた金属が覆っていく。

 まるで傷口を焼いて止血する、焼灼止血法のように。

 

 連中の狙いはシンプルだった。都の四肢を切り落とし、その上から溶けた金属を被せる。

 銃弾程度なら自力で弾き出せるが、溶けた金属なんてのは無理だ。しかも雨ですぐに冷えて固まってしまう。

 結果、残るのは四肢をもがれてダルマにされた女。傷口は無遠慮に金属によって蝕まれて痛覚を苛む。

 都の再生能力が活きるのは傷口や病毒のみ。精神的なショックには使えない。

 

「アガ、が、ァ……!?」

「みやごがぁがががががががっ」

 

 他方で俺も脚を砕かれるだけでは済まされなかった。

 めきゃ、と音が鳴った。左足が割り箸のように砕け、中から血が噴き出す。

 痛みをカットしてる筈なのに脳に痛覚信号が届けられ、呂律が消えた。

 右足がズル……とズレた。いつの間にかこちらはハムのように輪切りにされ、内側の筋肉と骨が露出。二重の円になったそれはグジャグジャとナニカに食われて消えて行く。

 伸ばした髪は未だ巨人に捕まれたまま。ブヅブヅと引き千切って抜けてしまい、頭皮が引っ張られて脳漿ごと頭から去っていき。

 

「クソが、クソがぁ!」

「良いザマね、化物」

 

 俺の耳にあの女、赤星の声が聞こえた時、既に俺の両足は無くなり、髪と頭皮も大半が奪われていた。

 両手の爪を伸ばして赤星のいる方を突き刺すも、雑兵らしい敵が肉壁になって届かない。寧ろ刺した爪がジュウジュウと異様な音を立てて溶けている。

 突き出した腕は再び手足だけ巨大な巨人が掴み、今この瞬間もベキベキと音を立てて潰され始めていた。

 

「あか、ほしぃっ!」

「普段ならクズがワタシ様の名前を呼ぶなと言ってるトコだけど、今日は気分が良いわ。お前の死の祝賀祭なのだからね」

「ぜぇ、ぜぇ……! テメ、ぇ、こいつら──俺の弟妹か(・・・・・)!」

「あら大正解。ゴミのクセに頭は相変わらず回るわね」

 

 首を斬られても死なない兵士。

 無駄に大量にいる雑兵。

 一部だけイビツに大きな巨人。

 全身の水分と引き換えに水の刃を作る存在。

 俺の足を噛み砕く触手生物。

 爪を溶かす酸を内包した盾役。

 

 明らかに生命体としての範疇を逸脱している。科学的に考えても有り得ない。

 だがもし最初からそういう生物として設計されていれば、自然に発生したのではなく人為的に作られたのであれば話は別だ。

 俺と都という成功例に対し、彼らは失敗例。この日この場所で浪費されるために作られた生物兵器であれば、存在してもおかしくはない。

 この国は、この女が信奉しているこの国の『正義』は、そういうものだ。

 

「でも流石にお前らと同等の怪物は作れなかったわ。流石に万単位の中から偶然生まれた奇跡をもう1度期待する程、ワタシ様達は莫迦じゃないのよ」

 

 な・の・で、と奴は笑う。

 その口角は本当に耳まで届きそうな程に釣り上がり、心底から俺を殺せる事が楽しいと言わんばかりに。

 

「合体させたのよ」

「がっ、たい……!?」

「そうよ化物、産まれついての異能が作れないなら、後から異能にしてやれば良い! 天才のワタシ様にはそれが出来る!」

 

 このアマ……。

 

「ウォーターカッター、濃硫酸、ベンディングマシン(鉄板を曲げる装置)! そうしたものを生物に取り込ませ、お前を殺す最強の部下が作れたのよ! オマケに無数に失敗作もできたから人海戦術も万全! しかも寿命は数年にしてあるから人件費も減らせるわ! どうかしら、これが権力よ化物!」

 

 悍ましい。素直にこの時、俺はそう思った。

 この女にとって、世界とは自分の名声を高めるための舞台装置でしかない。他人の命を潰して輝けるのなら──ましてや自分でいくらでも作ってしまえるのなら──、何万人でも何億人でもそうするのだろう。

 命が大切とか生きる事は素晴らしいとか、そういう浮ついた事を言うつもりは無い。けれども、敢えて『不幸な命』として産み落とす事については、流石に物申すとも。

 大勢を殺すために作られた俺には、その権利があるだろうから。

 

「てめ、ぇ……。まだアレを繰り返したいのか……っ! そんなに……、怪物(悲劇)を量産したいのか!」

「あーあー、聞こえないわー。半死人の化物語は解読できないのよ、オッホホホホホホホ!」

「魂の髄まで腐り果てた女め……っ!」

 

 だがそれは届かず。

 

「さて化物、お前の足を噛んでいるそいつは何がベースの改造人間だと思う?」

 

 俺の足を噛んで離さないクリーチャー(人間)は、未だ俺から離れず。

 否、そのまま歯のような部分を回転させどんどん俺の体を呑み込み始めた。

 

「破砕機、ウッドチッパー。何でもかんでも粉々にする機械よ!」

「なっ」

 

 ガジュリ

 足が本格的に砕けて呑み込まれた。

 逃げられない。

 

 ギニ゛ャ

 身長が減って鉄の牙が腹に届いた。

 逃げられない。

 

 ゴリゴリ

 内臓も骨も次々と砕かれ食われ無くなっていく。

 逃げられない。

 

「クソ、がぁ!」

「アハハハハハハハハハハハ!」

 

 吼えても叫んでも俺は逃げられないままどんどん体は削られて行く。

 せめて何かと思っても、その何かを成せる肉体が無い。

 その瞬間瞬間にグジュグジュと俺の体はミンチ肉にされて、死神が俺の命を削り取って行く。

 

 そして俺はそのまま脱出できずに呑み込まれ、赤星に一太刀浴びせる事すらできず、化物の生涯は幕を下ろした。

 四肢を失った上に溶けた金属で焼かれた都に対して、全身が挽肉になり雨水で泥まみれになった俺。

 人類に敵対する怪物義兄妹としては、残念でもなく当然だったのかも知れない。

 

 

  ☆

 

 

『テメェは守れなかった』

「……」

『テメェは世界を壊せなかった』

「…………」

『テメェはただ破壊と殺戮をまき散らしただけだった』

「……っ」

『そんな奴が希望だの友情だの、反吐が出るぜ。違うか? 遊馬崎黎という男は人殺しの兵器で、正義の味方では断じてない。お前の手で誰かが救われたってのはただの偶然と結果論、そんなもの功績でも何でもネェだろうが』

 

 確かに、そうだ。

 言い返せる言葉は無い。

 俺はこの力を暴力のためにずっと使った。滅びゆく世界で他の誰かを助けるために振るった事も多々あったが、それは裏返せば『助けるために他人を傷付けた』事でもあった。

 つまる話、俺は悪である。

 もし化物の力が無かったとしても、俺は表社会にはいられない存在である事は変わらない。目的のためなら誰を傷付けても頓着しない邪悪な性根を持った、正義の対極に位置する化物だ。

 そんな俺に色々な人が手を貸してくれた理由は3つ。

 1つ、そもそも世界が違うため。この世界に俺達を拒む奴らはおらず、俺らも悪である必要は無かったから。

 2つ、引き裂かれた義兄妹という手を差し伸べる大義名分(悲劇)があったから。

 3つ、俺がわざと『悪』であるという情報を流さなかったから。

 

(……彼らの目にはさぞ、俺は目付きが悪いだけの悲劇の主人公に見えた事だろう。巨悪に立ち向かう正義の味方に見えた事だろう)

 

 滑稽だな、と自嘲する。

 正義vs悪ではなく、悪vs悪であるのに、それを伏せて騙して、その上で命の危険に晒した。

 残酷な末路を辿っておきながら、俺はあいつらに死のリスクを背負わせたのだ。

 

「確かに、お前の言っている事は正しい」

 

 成程、俺には正義は言うまでもなく、男だの顔向けだの、人間らしい事を吼える資格は無いのだろう。

 それは人間の権利であり、人間ではない俺には許されない。

 (人殺しの化物)に求められているのは殺戮と破壊、或いはその逆である救済だ。

 どちらも半端という義務を遂行できていない俺に権利が無いというのは正論だろう。

 

 

 

 

 

──それでも

 

 

 

 

 

 改めて立ち上がりデッキトップに指を置いた。

 まだ全身が痛い。ダメージを受けた事に加え、ランク・アップ・マジックの影響もあってあちこちが軋む。

 

「嗚呼、正しいとも。きっと百人に訊けば百人とも、化物が人間のフリをするなと言うだろう。俺という化物の生き方は歪で、クソみたいな偽善以下の我儘なんだろうよ」

『ハ、だったら』

「だが断る」

 

 痛覚遮断……、失敗。

 6人もの護衛との戦いを経て、もう俺の全身はとっくに限界だ。

 でもそれで良い。

 俺は1度は死んだ命、そもそも産まれる筈の無かった命。

 であるのなら。

 “(生の終わり)”というのは幸福に他ならない。

 

「俺のターン……、ドロー!」

『まだ諦めねぇのか!』

「当然だ。俺は化物、人間じゃねぇ。だったらよぉ、何で人間的に正しい事を受け入れないといけない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)んだ?」

 

 奴の言ってる事は正しい。

 だが正しい事が、必ず成さねばならない事とは限らないのもまた事実だ。

 俺は人間じゃないし正義でもない、通すべき筋はこの世界にはない。

 

「果たしてお前が俺なのか、俺を模した偽物なのか、もっと別の何かなのかは分からない。だが、1つ言える事がある」

『何だ』

「今の俺は学生だ、化物に用事があるなら卒業まで待ってくれ」

『ッ、それを聞いてくれる奴らじゃ──』

「ああ、前世では通らなかったよ、前世ではな。だがここは前世じゃない、違うか? それとも次元の壁を突き破って赤星達が来るって? 俺が最期に殺した(・・・・・・・・・・)から転生してやって来るってか?」

 

 若返った俺はもう化物であろうと努力する必要は無い。

 人間に一々牙を剥くべき相手かどうか見極める必要も無い。

 ただこの世界に生きる若人の1人として、家族を探しにいくだけで良いんだ。

 学友と笑って、喧嘩して、仲直りして、時には泣いて、怒って、また笑って。

 そうしながら都を見つけて……、アカデミアに連れて来れば良い。海馬社長とペガサス会長に頭下げて戸籍と学籍作って貰って、学園祭やったりテスト勉強したりして。

 後は……。

 

「俺は魔法カード『ドローパン』を発動!」

 

 一緒に面白おかしくて、美味しくて不味いパンを食べれば良いんだ。

 この世界に敵はいないんだから。

 

「ライフを200払って効果発動! デッキからカードを1枚ドローする! そして引いたカードによってアタリかハズレか(効果)が変わる!」

『自分の墓地に同じ属性のモンスターがいれば手札を1枚捨て、違う属性ならもう1枚ドローでき、魔法・罠ならそこで処理が終わる……!』

「その通りだ!」

 

 言うまでもなく、俺の前世にドローパンなんてなかった。

 それだけでも、これを楽しめるのだけでも、こっちの世界に来た甲斐があるってものだろう。

 

 

 

ドローパン

【通常魔法】

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分の墓地にモンスターが存在する場合、200LPを払って発動できる。

自分は1枚ドローし、お互いに確認する。

それがモンスターだった場合、さらにその属性によって以下の効果を適用する。

●自分の墓地に存在しない属性:自分は1枚ドローする。

●自分の墓地に存在する属性:自分の手札を1枚選んで捨てる。

 

 

 

「代金を支払って、1つ食べさせて貰うぜ?」

『ハ、最後の晩餐だ、味わって食えよ?』

 

 

黎:LP 650→450

 

 

 本来ならこのカードは【暗黒界】のように捨てる事をメインにしたり、もっと属性がバラバラなデッキで使うものだ。俺のデッキのように半端に地属性と闇属性に固まってるデッキに入れるべきじゃない。

 ああ、本来なら、な。

 

「俺の墓地にいるのは炎属性の『ラヴァル・チェイン』、地属性の『アステル・ドローン』達。そして闇属性の『ガガガマジシャン』……だったが」

『チッ』

「そう、お前は前のターンに俺の墓地の闇属性モンスターを全て除外した。お陰でハズレを引くリスクが減ったぜ! ドロー!」

 

 このデュエル中で墓地に埋葬された闇属性モンスターは4体。その全てが先程『ヴェルズ・カオス・ウロボロス』の効果で除外されてしまった。

 本来なら痛手。だがそれを逆手に取るのもまたデュエリストとしての使命だ!

 

「俺がドローしたカードは『ガガガマンサー』、闇属性だ!」

『チッ、運の良い奴め!』

「よってもう1枚をドロー!」

 

 これで俺の手札は5枚。

 態勢を立て直すには充分だろう。

 

「続けてマジック発動、『エマージェンシー・ナンバーズ』! 自分フィールドにカードが存在せず、相手フィールドにEXデッキから召喚されたモンスターが存在する時、“ナンバーズ”を特殊召喚する!」

『ここで『エマージェンシー・ナンバーズ』だと!? だがソイツには重い代償があった筈!』

「そうだ、このカードは極めて重い対価が必要となる。だがこの局面、それに怯えていたら敗北ルートを引き返すなんてできない。

 横臥せよ、『No.41』! 永劫に微睡みの中で揺蕩う夢魔の獣! 『泥酔魔獣バグースカ』!」

『グゴォォォォォ!』

 

 

No.41 泥酔魔獣バグースカ:DEF 2000

 

 

 俺のエクストラデッキから直接引っ張り出して来たのは酒瓶片手に寝ているバクの悪魔。

 周囲に睡魔をまき散らし、自分ごと相手を眠らせる大酒飲みだ。

 それが俺の場に寝転がりながら登場し、その場ですぐにイビキを響かせ始める。

 

「発動後、『エマージェンシー・ナンバーズ』は2つの道を辿る。1つ目は召喚されたモンスターのオーバーレイ・ユニットになる事、もう1つは墓地に送り1度だけ戦闘破壊耐性を与える事。俺は破壊耐性を選ぶ」

『成程な、『バグースカ』はスタンバイフェイズにオーバーレイ・ユニットを取り除かなければ破壊される。だがそれによって逆に、スタンバイフェイズに破壊されお前にダメージを与える前に退場できるっていう寸法か』

「その通りだ。『エマージェンシー・ナンバーズ』のデメリットは『バグースカ』がその効果で破壊された時のみ有効、先に自爆してしまえば俺が2000のダメージを受ける事は無い」

 

 

 

エマージェンシー・ナンバーズ(オリジナル)

【通常魔法】

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドにカードが存在せず、相手フィールドにEXデッキから特殊召喚された攻撃力3000以上のモンスターが存在する場合に発動できる。

自分のEXデッキから「No.」モンスター1体をEXモンスターゾーンに特殊召喚する。

この効果で特殊召喚されたモンスターは次の自分のスタンバイフェイズに破壊され、自分はその元々の攻撃力分のダメージを受ける。

その後、以下のどちらかの効果を適用し、ターン終了時まで自分はカードの効果を発動できず、モンスターを召喚・特殊召喚できない。

●このカードをそのモンスターの下に重ねてX素材とする。

●そのモンスターが戦闘で破壊される場合、代わりに墓地のこのカードを除外できる。

 

 

 

No.41 泥睡魔獣バグースカ(エクシーズ・効果モンスター)

ランク4

地属性/悪魔族

ATK 2100/DEF 2000

レベル4モンスター×2

このカードのコントローラーは、自分スタンバイフェイズ毎にこのカードのX素材を1つ取り除く(取り除けない場合、このカードを破壊する)。

(1):このカードがモンスターゾーンに攻撃表示で存在する限り、このカードは相手の効果では破壊されず、相手はこのカードを効果の対象にできない。

(2):このカードがモンスターゾーンに守備表示で存在する限り、フィールドの表側表示モンスターは守備表示になり、守備表示モンスターが発動した効果は無効化される。

 

 

 

 これで俺が発動できるカードはこのターン無くなった。

 強力なカードだが欠点も多い『エマージェンシー・ナンバーズ』は、しかしこの場では強力な防御札として機能している。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド。この瞬間、お前の『ケイオス・フォース』の効果は終了し、俺の効果を受けない耐性は切れる。よって『バグースカ』の効果が適用される」

『全てのモンスターは守備表示になり、守備モンスターの発動した効果は無効となる』

 

 

CX ヴェルズ・カオス・ウロボロス:ATK 3150→DEF 2750

CX 闇遷幽士 モリオーガンティス:ATK 2950→DEF 2450

 

 

 睡魔の煙に巻かれ、敵の場にいた三つ首の邪竜と黒岩の巨人が蹲って動きを止める。

 見た目では分からないが眠っているらしく、両者の色も褪せて見えた。

 これで少なくともあの2体の攻撃で『バグースカ』が倒される事は無い。

 

 

 

黎:LP 450

手札:1枚、『RUM-ケイオス・フォース』、『ガガガマンサー』

フィールド

:No.41 泥睡魔獣バグースカ(DEF:2000)(右のEXモンスターゾーンに配置)

:メインモンスターゾーン無し

:伏せカード1枚

 

 

 

 辛うじて仮初の迎撃態勢を整えた俺に対し、闇の人形は鼻で嗤う。

 

『時間稼ぎだな、『バグースカ』で防衛しようとも俺がカオス・エクシーズを出せば終わりだって事は分かってるだろ』

「当然だ」

 

 このドローで奴の手札は3枚、ランクアップを行うには充分な枚数になる。

 そして『バグースカ』は発動しない効果は無効にできない、つまり『ヴェルズ・カオス・ウロボロス』の貫通能力を付与する効果は生きているワケだ。

 奴が攻撃力2450以上のカオス・エクシーズを召喚すれば、もう俺の敗北は免れない。

 

『行くぜ、お前の運命を決めるドローだ!』

 

 相手の手札が2枚から3枚に増える。

 さっきまでの発言からして、最低でも新しいエクシーズモンスターを呼ぶ下地はあるのだろう。後は引いたカード次第だ。

 

『俺は『闇の誘惑』を発動。デッキから2枚ドローし、手札の『召喚僧サモンプリースト』を除外!』

「ッ、ここでドローソースで手札を入れ替えたか!」

 

 新たなカードが奴の手札に加わる。再び3枚に増えた手札はもう完全に読めない。

 だがそれは相手も同じだったらしく、増えた手札を見て舌打ちした。

 

『チッ。俺は手札から『テイク・オーバー5』を発動、デッキからカードを5枚墓地に送る』

 

 

 

【デッキから墓地に送られたカード】

 

『フル・アーマード・エクシーズ』

『ブリキンギョ』

『灰流うらら』

『ダブル・カオス・アセンション』

『ヴェルズ・マンドラゴ』

 

 

 

 ジャッ、と黒い俺がデッキから丁度5枚カードを引き抜いて墓地に落とす。

 取り敢えず即座に使えるカードが落ちなかっただけ助かるな。

 俺の場に『バグースカ』がいるから『サモンプリースト』も切らざるを得なかったのも有難い。

 

『フン、まぁ後で使えるカードが落ちたから良しとするか。俺はカードを1枚伏せてターンエンド』

 

 

 

闇の人形:LP 8000

手札:1枚

フィールド

:CX ヴェルズ・カオス・ウロボロス(DEF 2750/CORU:4)(右のEXモンスターゾーンに配置)

:CX 闇遷幽士 モリオーガンティス(DEF 2450/CORU:3)

:伏せカード1枚、Xトラネット(永続罠)

 

 

 

「俺の、タァーンッ!」

 

 引いたカードは……、『死者蘇生』か!

 

「行くぜ!」

『返り討ちだ!』

 

 このターンが勝負。

 勝つ、絶対に。

 そして帰ってフィオ達に「ただいま」を言って、最後の敵を討つ!

 

 ……そして、一緒に、フィオと、桜と、フレイと、ポーラと、都と。

 一緒にドローパンを食べよう。

 食べても明日は普通に来るし、他に美味しい物もあるけれど。アカデミアに来たのなら1度くらい食べておくべきだと俺は思う、それがGXの世界に来た醍醐味の1つだと思うから。

 そうした下らない日常を求めるため、俺は新しく引いたカードを手札を持つ左手に持ち替えた。

 

 

to be continued




AIイラストで黎のイメージを作成してみました
コワモテ系のイケメン


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