遊戯王GX~精霊の抱擁~ 作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民
結局こんな終盤まで来てその評価を突き付けられたら今更軌道修正なんて不可能で
しょうがないからその評価を覆すのは次の作品にするしかないのであります
半エタってても、最後まで頑張る
視界の端で「お、更新してるなー」程度に認識して頂けてたら幸い
……いつか隔日更新で新しい作品手掛けるのじゃ
あ、2話更新なので次のお話は15分後に投稿されます
「ジョーカーから連絡がありました。黎さんは冥界の淵で蘇生を試みているそうです」
聖堂前での戦い。
そこでぶつかった最後の邪神の護衛ラースとの戦いで、黎は致命傷を負った。
真正面から大斧によりX字型に切り裂かれ、それでも自前の頑丈さとメタモルフォーゼを利用した自己修復を使う事で何とか勝利まで肉体を維持したのだが……。
「蘇るの……!? この体で……!?」
ラースの完全消滅と共に、その肉体は崩れてしまった。
上半身と下半身は分断され、手足も千切れている。切断面から覗く内臓や筋肉は空虚な程にスカスカだ。憤怒の護衛の一撃“エクスラスフル・アンゴドリネス”が彼に致命傷を負わせたため、それらの細胞を使って肉体を継ぎ接ぎしたのである。
ここまで続いた戦いとラースがバラ撒いた邪悪な瘴気、そして強烈な破壊の攻撃が黎の全身を浸食。死に至らしめたのであった。
死者は、例え精霊であろうとも蘇る事は能わない。
それが例え冥界の番人であったとしても。
「信じるしかありません、マスター。黎さんがここで死ぬ男ではないという事を」
「……肉体の腐敗は、私が凍らせて防いでいる。……後は運次第」
「息を吹き返したら私が治療する、だから……死なせぬ、絶対にだ」
「冥王竜が蘇らせると言ったらそれは口約束ではありません。絶対の決定です、マスター。わたくし達は彼の復活を待つのです」
「フレイ……、うん、そうだね」
砕け散った肉体は氷と包帯で繋ぎ合わせてある。
後は彼の心臓が復活するのを待つのみ。
「でも問題は、復活しても戦えるかどうか、か……」
「……確かにそう。……サーは元々、体の限界いっぱいまで戦ってた」
「私の術で治療を施して何とかできるが、果たしてそれで敵の総大将を相手にどこまで張り合えるか」
「祈るしかありません。我々精霊とて万能ではなく、最後はただ運を天に任せるしかないのです」
「フレイ……」
冷たい反応だと一瞬思った。
しかし彼女は1万年以上を生きる長寿の精霊、死生観が人間に転生したそれと同じなワケが無い。
そして本当に冷酷なら、黎の死を以て彼を切り捨てている。まだ蘇生を信じ、彼に望みをかけているのであるが故に、冷たく見えても本当は寄り添ってくれているのだ。
(今は、信じよう)
フィオには1つだけ裏技に心当たりがあった。
行使すれば、黎の蘇生と邪神の討伐すら叶う、かも知れない裏技中の裏技。
しかし裏技とは意図しないバグである事が多い。彼女もまた、その裏技を使えば致命的な不確定要素を招きかねない事を察していた。
(使う時が来ませんように)
だから、祈る。
彼を信じているがために。
☆
『ク、ククク……』
某所、或いはどこでもない場所にて。
黒い闇は蠢く。
まるで何かの繭のような
『でかしたぞ、ラース』
【黒】はすぐに人の形を取った。
半透明のゲルのような【黒】は、その中心に細身の女を内包しながら、2m以上ある大男へと変化する。
『貴様の魂、確かに余のための大きな一歩となった』
これ即ち邪神、敵の首魁にして中枢。
多くの人間の怒りや悲しみを糧に成長し、この段階を以て覚醒した巨悪だ。
『ん~? 余? いや俺様? 吾輩? いや儂? それとも我?』
未だその存在は不安定であり、少しでも自身の領域の外に出れば自壊するだろう。
しかしその核として取り込んだのは死後間もない都、不死に等しい自己再生ができる女。
即ち、自壊してもすぐに蘇生できるのだ。
『まぁ良い、適当に考えておくか』
ひたり、と邪神は黒い足を大地に置く。
飽く迄も『それっぽい』物として作った空間は、その瞬間にボロボロと煤のように崩れ落ちた。
まるで最初から黒い虫の集まりだったかのように、大地らしき場所が消えたのである。
『あー、あー、あーあー……、ごほん」
だが邪神はそれに視線1つくれてやりはしない。
もうこの空間は用済みなのだから。
「行くか」
これなる【黒】きナニカの目的は破壊。
しかし何故求めるのかは分からない。
ただ1つハッキリしているのは、こいつを捨てれば世界は文字通り終わりという事だ。
そして世界を超える途中で都に干渉できたのなら、次元を超える能力があると見ても良い。
ならばこの世界を滅ぼしてパワーアップできてしまったらどうなるか、自明の理だろう。
「さぁ、良からぬ世界を始めようではないか」
次の瞬間、邪神の根城は消えた。
後に残ったのは、濃密な破滅の気配のみ。
☆
SIDE:フィオ
それは唐突な感覚だった。
何と言うべきか、いきなり全身がネトネトの油に包まれたような感覚。人肌より微妙に温度が低く、粘着性が強すぎて振り払えないし、おまけに鼻も舌も壊れるような悪臭がする。
あまりにも『人間』の感覚では例えようの……、いや。
違う。訂正しよう。
『この世』の感覚で例えられないものだ。
この場合の『この世』とは人間の世界だけの話ではない。精霊を始めとした人間以外の、それこそダークネスと呼ばれる『裏世界』の感覚にも存在しない
「行かなきゃ」
「マスター?」
魂が訴えた。
「ごめん、ここお願い」
「フィオ殿?」
「……フィオ?」
「わたしが行かないといけない、わたしが戦わないといけないから」
自分の中で何かのカラが割れる。
(嗚呼、そういう事か)
だから少しずつ『わたし』の中に『私』の記憶が入り始めてたんだ。
『私』と『わたし』は違うから、時間をかけて馴染ませようとしたんだ。そうしないと『神山フィオ』が耐えられないから。
でも邪神が目覚めようとしている今、悠長にしている暇は無い。わたし一個人より優先されるべきものがある。
「マスター」
「止めないで」
「止めませんよ」
砕け散った黎のパーツを集めていたフレイがわたしを呼び止めた。
フレイは懐から光る石を取り出し、それをわたしに握らせる。
「これは?」
「1度だけ、人間界でも違法なカードを使う事が許される許可証のようなものです。この“違法なカード”が何を意味するかは分かりますよね?
どうかご武運を。状況がマズい時は呼んで下さい、必ず駆け付けます」
「……ありがとう、フレイ」
どうやらわたしは最高に理解のある精霊と縁を結べたらしい。
こんな可愛くて素晴らしい相棒を持てたのだ、しくじる事は許されない。やるべき事をやり、得るべき未来を掴まねば顔向けできないだろう。
最後にわたしは一度だけフレイ達に頭を下げると、大地を蹴って駆け出した。
向かうべきは、この光の領域から人間界に直通するゲート。
「──ふっ!」
わたしは背中から翼を生やすと、迷う事無くその中へと、文字通りの意味で飛び込んだ。
☆
一方、人間界では。
「“究極剣サバティエル”!」
黄金に輝く英雄の一太刀により、大いなる悪が阻まれていた。
その攻撃力は14500ポイント、いかに悪魔が如き巨神であろうとも受け止めきれる筈もなく、その後ろに控えていた筋骨隆々とした男のライフを完全に削り切ったのであった。
そうしてその大いなる悪魔──三幻魔を操る学園理事長の影丸を討った男こそ遊城十代。何事も無ければこの世界の主人公として、多くの困難を乗り越え幾度も世界を救う英雄である。
影丸:LP 0
そう。
何事も無ければ。
影丸:LP 0→0.1→10→100000→0.01
即ち、外部から干渉が無ければ、だが。
「な、何だ!?」
影丸:LP 0.01→繝ゥ繧、繝輔→繧、繝ウ繝→縺励⊂縺
勝敗は確かに決した。影丸のライフが尽きた時、デュエル終了を告げるブザーは鳴った。
しかしそれなのにライフポイントは変動を続けており、本来有り得ない小数点はおろか文字化けまで始めてしまったのである。
デュエル終了のブザーは本当に決着が着いた時にしかならない。ごく僅かに存在する、ライフが0でも発動できるカードによりデュエルが続いていれば、敗北を告げる音は鳴らない。
「こ、これは一体、何が……!?」
『サ』『んGE』『ん魔か』
【これは】
【使えるか】
【もなァ】
何かが聞こえた。
全員、咄嗟に耳を塞いだ。三幻魔を従えていた影丸理事長ですらだ。
<嗚呼>
<腹の足しにはなるでおじゃる>
<マロに献上せよ>
その場にいた数名が眩暈を起こして蹲る。
脳を直接揺さぶり、内臓をミキサーで掻き混ぜられるような不快感を覚えた。
[何やねん、残りカスやんけ]
[このジジイが勝手に使うたんか]
主人公と黒幕の口の端から、耳から、目から血が流れる。
精霊の加護を受けた十代、そして幻魔を繰っていた影丸すらそれだけのダメージを負っているのだ。他の者達が近くにいれば、もっと酷いダメージを受けていたかも知れない。
『く、クリクリィ!』
「あい、ぼう……っ!」
『アニキ、これヤバいわよん! 何かとんでもないのが出て来るわん!』
「どういう事だ、もっと詳しく言え!」
精霊達も騒ぎ始めた。
何か来る。
何が来るかは分からないが、兎に角来る。
それだけを伝え、必死に逃げようとさせるが、眩暈によってそれが叶わない。
「ぬぅ!?」
「うわっ!?」
そうして逃げ遅れた彼らを闇が飲み込む。
最初は影丸、次に一番近くにいた十代。そこから離れた場所で観戦していた準や明日香達。
まるで源泉のように地面から染み出してきた黒いナニカが、彼らを急速に、まるで海面上昇するかのように飲み込んでいく。
「あ、あにっ、きぃっ!」
「何なんだこれはっ! くそっ、頭が……ッ!」
「いや、気持ち悪いっ!
闇に実体は無い。ただ黒い霧のようなそれは、しかしまるでタールのようにまとわり付いていた。
それが肉体ではなく精神にこびり付いているのだと、知っている者はいない。
黎が度々言っていた『脊髄の中に生温かいタールを流し込まれている』という表現がピッタリ合うそれは、加速度的にその場にいた全員の生命力を──有り体に言って生きるのに必要なカロリー・意志・魂・免疫力、そういったものの総称を削り取っていた。
吸い取るのではない、無くすのだ。その結果、飢餓や激痛のような『生の苦痛』が生まれる。それらは絶望に凝縮され、邪神の糧となるからである。
それが奴の、邪神■■■■■■■■にとって最高の馳走と化すのだ。
「がっ、あがぁ……!」
「痛いっ、痛い痛い痛いっ! 痛いよ、助けてアニキ……!」
「相棒、何とかできないか!?」
『く、ぅりぃ……』
「相棒ッ!」
それは精霊も例外ではない。
見る間に弱っていく羽毛玉を始めとして、黄色のエイリアン獣も、巨大なコアラも、そしてこの場にはいない精霊達も、急速に衰弱していった。
{うましうまし、ひめいうまし、うまし}
{にんげん、せいれい、くるしむ、うまし}
{このよはでっかいめし、じつにじつにうまし}
彼らが弱っていくのとは逆に、黒い沼は次第に何かの形を作り始める。
「あれは、獣……!?」
「何言ってんだ、悪魔だろ!」
「私にはモヤにしか見えないわね……っ」
「僕には……、ウネウネした逆向きのタコ……に、見える……ッス!」
見えるモノは人それぞれ。
だが確実に何かが形成されていた。
自分達には良くないナニカが。
そのナニカは、やがてある程度の大きさに成長すると黒い触手のようなものを勢いよく飛ばした。
狙う先は、既に老人に戻った影丸。
「っ、影丸理事長!」
「ぬぅ!?」
十代は反射的に動いていた。弱った足に喝を入れ、咄嗟に影丸を突き飛ばしたのである。
「あっがぁぁぁぁぁ!?」
「アニキッ!」
「十代!」
その甲斐あってか、ギリギリで影丸は触手のようなものが当たらずに済んだ。しかし代わりに十代はその一撃を受けてしまい、右腕に思い切り
(触手じゃないぞ、これ! 木の枝、いや水か!? 腕に刺さってるクセに煙みたいに実体が無い!!)
すぐさま命を奪う程では無い。だが突き刺さったそれはすぐに腕の内側から体内に侵食、激痛と共に片口から皮膚を食い破って十代の全身を覆い始める。
少年は慌てて掴んで引き剝がそうとするが、何故か触れる事ができない。相棒の『ハネクリボー』も嚙みついたり光ったりと抵抗するが、やはり黒いナニカを引き剥がす事はできない。
なのに飛び退く事も振り払う事もできず、まるで最初から腕と一つだったかのように執拗に十代の腕から全身にかけて何かを吸い出そうとしていた。
「が、ぁぁぁぁぁ!?」
〔うんめぇにゃー〕
〔せいれいのちからもっててうっめぇにゃん〕
〔きにいった、おまえにするにゃ〕
「十代ぃ!」
「十代っ!」
「あ、くっ、ふ、何なんだ、よ、これはっ!」
べきり、と嫌な音が右腕からした。
見れば自分の腕が異常な方向に捻じ曲がっている。骨の折れた音が鮮明に響いた音だったのだ。
「ぁ、……っ!?」
悲鳴は無い。
まるでカビに覆われるかのように、赤い服の少年は黒く染まって、消えた。
≪これまでの人生、ご苦労様であります≫
≪後は我輩の養分になるであります≫
≪人間如き、それで十分でありますよ≫
☆
<ん?>
<んん~?>
<ンンンンンン?>
ただしそれは【黒】に呑まれたワケではない。
「間一髪!」
「フィオ!?」
黒いナニカが彼を食い尽くす直前、文字通り飛んで現れた少女が十代、そして近くにいた影丸を回収して飛び去ったのだ。
少年と老人を回収した天使は、ゆっくりと観戦していた皆の所へと降り立つ。彼女の近くには淡い光で円が作られ、全身を蝕んでいた霧のような【黒】が怯えるように退いていく。
「ふぅ……」
「フィオ、なのよね?」
「うん、そうだよ」
明日香が困惑した声をかけるのも無理は無い。
服装こそ見知ったオベリスクブルーの白シャツ青スカートだが、純白の鳥のような羽が生えていたのだから。人間に羽は生えていないし、空も飛べないのだ。
「うぐ、ぁぁ……!」
「が、はっ! ごほっ!」
「十代君、影丸理事長、ここで休んでて下さい。奴の【黒】を間近で浴びた貴方達は今、生命体として危険な水域にいます」
「フィオ、貴女……」
「ごめん明日香、言いたい事はいっぱいあると思うけど後で。今は、黎に代わってアイツを倒す」
「ちょ、ちょっとフィオ!」
ばさり、と再び白い翼を羽ばたかせて飛び立ち【黒】の前に立つフィオ。
それを見た【黒】は、愉快そうにその不定形の影を歪めた。
『あー』『アー』『Aaー』
『貴様が』『出て来たか』『バランサー』
「お前がお前の世界で満足していたのなら、わたしは何も言わなかった。でも表の世界に出て来るのなら話は変わる」
しゅるっ、とフィオは髪をまとめていた白いリボンを解き、再びまとめる。
一瞬まとまっていた長髪が広がり、それがまた白い輝きを周囲にふりまいた。
「わたしはバランサー、天使、或いは女神。そして神山フィオ。であれば、お前の横紙破りを見過ごすワケにはいかない」
『な』『るほど』
『つまりお前』『は』
『目的の前の最後の余興』『か』
「そうなるだろうね。でも……、その余興に潰されないよう注意するこった!」
ジャキン、とデュエルディスクの衝撃スイッチを入れるフィオ。
そのディスクはアカデミアで配布されているものと異なり、白い翼を模った異種のものであった。
ブレードが展開し、デッキを差し込むスペースにカードの束を突っ込む。同時にフレイから貰ったお守りが光を放ち、デッキに吸収されていく。
『ほう?』
邪神の方はそれを見て興味深そうにフィオを見つめた。
この黒い神は、ここで邪魔な
だが敢えてこのナニモノかはそれに乗る事にした。
<良いだろう>
無視すれば必ず、この天使は自分を追って来る。返り討ちにするのなら、無駄に手がかからない今が最速だと判断したのである。
{されど、我はまだこの世に肉が無い}
{故に}
{この依り代を使わせて貰おう}
ぐに、と黒い存在がうねり、少しずつ形を変えていく。粘土のように、触手のように、サナギの中身のように。
数秒かけて成形されたそれは縦に割れ、中から出て来たのは人間。
その人間は、瘦せているのか非常に細身の少女だ。髪は長く、黒く彩られている奥には茶髪と茶眼が僅かに見えた。まるで影や夜を人間の形に切り取ったかのようである。
そして何より、その顔立ちには見覚えが1度だけあった。
自分達も知っている男の面影がある女の子。
そしてこのカミが依り代にできる人間と言ったら、もう1人しかいない。
「都ちゃん……!」
全裸、と思われる少女の全身は黒のボディスーツで覆われている。左腕には悍ましい程に黒く不定形なデュエルディスクのオマケ付きだ。
最初はニヤニヤとした表情が作られていた顔もやがてラバーマスクのようなもので包まれ、その表情は目以外は最早窺い知れなくなる。
黎が見たら怒りが爆発したか、或いは嘆いたか……。
「ふぅ、やはり肉は良い。この肉の世界で活動するには一番の器だ」
対する声は、彼女のものではない。どこか不快感を感じる中性的な男性のボイスが耳朶を打った。
口と思しき箇所にも、ダークパープルの牙のようなエネルギーが浮いている。文字通り体だけ使っている、という事だろう。
「……1回だけ言うぞ、その子を返せ邪神」
「返させてみろ、天使」
「行くぞ!」
「ヒャハハハハハ! 来い!」
交渉なんて成立する余地は無い。
なれば後は実力行使あるのみ。
白い翼を折り畳んだ少女と、黒い全身を不気味に蠢かす少女。
両者の腕に展開されたディスクのライフカウンターが『8000』を表示した。
「「デュエル!」」
天使フィオ:LP 8000
邪神ミヤコ:LP 8000
to be continued
本編デュエルは、残り3回