遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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STORY110:命の1ターン

 徹底した封じた筈の敵の手は、しかしあまりにも違反じみた手で易々と掻い潜られてしまう。

 結果、命がけで転身した天使フィオは敗北。血達磨になりながら大地を舐めていた。

 

「ぁ……、ぁ゛……」

「う、うぅ……」

 

「フィオ!」

「神山さん!」

「フレイさん!」

「フレイ!」

 

 死力を尽くしなお敗北した天使2人は、見るも無残にその場で呻き声をあげるしかできない。

 さながら処刑され、衣擦れの音しか出せない醜い亡骸のように、敗者はぐったりとした姿で横たわっている。臓腑も骨も露出させ、痛々しく全身から血を流しているその姿は死者と呼ばれても文句は言えないだろう。

 

「惜しかったなぁ? 中々惜しかった。俺様がこの肉体を完全に統治できなければ、『憤界通行税(アンガーサイド・トール)』を操るだけの力も無かっただろう。だからこそ貴様のノロマな足に感謝しなくてはならんなぁ? ギヒッ、ギャッヒャハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 実際、フィオは惜しい所まで行っていた。

 ただ邪神の創造するカードが埒外だっただけに過ぎない。

 これまでも黎が幾度も死の淵を見、時にライフが尽きてしまう程の邪悪なカード。その総本山が相手では、いかに女神の力を受け継いだ天使でも善戦できただけでかなり褒められた物と言える。

 

「さて、食うか」

 

 だが敗北は敗北。

 その対価として天使達のズタズタになった肉体は少しずつ闇に蝕まれ溶けていく。邪神によって肉も魂も直接食されているのだ。

 これまで護衛がやっていたカードに封印して吸収する方法とは異なる、直接の捕食である。

 ジワジワと蚕食するように輪郭から消えていく2人。抵抗するだけの力も残ってないのか、体を失う事に蠢いて逃げようとする素振りすら無い。

 そして2人の体が溶け始めると同時、守るべき者達への毒牙が再び剥かれた。

 

「当然貴様らもだ。その姑息な結界ごと食ってやろう」

「ひっ」

「くっ!」

「相棒、何とかできないか!?」

『クリリ~……!』

 

 ドロリとした粘液じみた黒が結界ごと十代達を覆っていく。

 咄嗟に『ハネクリボー』に打診した少年だが、有翼の毛玉は悲しそうに返事をするのみだ。

 事前に張った瘴気を遮断する結界こそ未だ無事だが、触れるだけで生命力を奪うそれに囲まれていては、最早結界ごと食われる未来から逃げる術は無い。

 

「イヤッ! こんな所でこんな形で死にたくなんてない!」

「そんなの僕もッス!」

「だが、全方位全く隙間が無い! 神山さんも動かないし、最早手の打ちようが……!」

「さっさと逃げてれば良かったか!?」

「最初からこの黒いのには囲まれてたノーネ、我々は最初から逃げられなかったノーネ!」

 

 焦る。

 逃げ場が無い。

 もう数分で結界ごと邪神の腹の中に入ってしまう。

 精霊も対抗できない、栗色の毛玉は打つ手が無く、黄色の獣に至っては失神していた。

 迫り来る『死』に太刀打ちする術が無い。

 

 どうしてこうなった、とギャラリーの中の誰かが頭を抱えた。

 この世界は歪んでしまったと言う。

 歪んでいなければ黒い神はいなかったのだろうか。

 何故あんなクリーチャーがここにいるのだろうか。

 誰の所為で?

 誰の責任だ?

 そうその者が考えた時、思わず1つの答えを導いた。

 否。

 導き出してしまった。

 

 

 

 

 

──遊馬崎黎さえこの世界に来なければ良かったのに

 

 

 

 

 

 それはただの侵入思考だったのだろう、本人の本音では無い。

 だが一度生まれてしまったその考えは死の恐怖を前に秒速で膨れ上がる。

 そしてその恨みは邪神の餌そのものであり、つまり天使のバリアと相反するウイルスでもあった。

 

「くっ、内側にも黒い靄が!」

「地中から伝わって来たのか!?」

「結界が!?」

「マズいわ、壊れる!」

 

 生まれたウイルスは即座に拡散し、聖なる防御にヒビを入れる。

 不幸中の幸いは、皆が周囲に気を取られ──その当人すら──その誰かの内から湧き出る黒い感情が誰から発生したか気付かなかった事。

 もし知られていれば……、例え無事に全てが終わったとしても責任感から生きていられなかっただろう。

 結界の内側に【黒】が発生した数秒後、内部は闇に包まれ閉ざされた。

 

 

  ☆

 

 

 化物は歩く。

 化物は歩く。

 化物は歩く。

 

 ただ暗い冥府の淵を。

 闇より恐ろしい常闇の世界を。

 

「……」

 

 冥王竜との試練を経た俺はとある数枚のカードを使うための旅をしていた。

 この道を辿るのが正しいかどうかは分からない。だが、正しいと信じるしかない。

 信じて1秒でも早く生き返るしか道は残されていないのだ。

 

「それでも戦えるのは後1回が限度、そしてその1回の途中で斃れる可能性だってある」

 

 試験管ベビー。

 本来なら人間用である精霊の力。

 邪神のエナジーを利用したカオス。

 これ即ち『人でなし』、故に人間に力を貸す精霊との相性は最悪。

 

 度重なる致命傷。

 跳ね返って来た人殺し。

 全身を侵食する邪神の力。

 ラースから受けたトドメの一撃。

 これ即ち『因果応報』、故に人間として生きるにはそれは弱すぎる。

 

 戦うためには人間であってはならず、人間でなければ正しい力とは反目する。

 だから俺の戦いは、きっと最初から終わりが決まっていたのだ。

 生きたくば死へと進むしかなく、戦って返り血を浴びる以外に何もできない無能には、当然の末路だろう。

 

 だがそれでも、そんな化物にも最期の役目は残っている。それを果たさずして死ぬ事は許されない。

 現実の俺の肉体は崩壊しているが、そっちは現世の面々が何とかしてくれると聞いた。

 ならオレのやるべき事はただ1つ。

 『ヴァンダルギオン』から授けられたこの白いカードを使いこなせるようになるのみだ。

 

「なぁ、神様、もし本当にいるのなら、そして俺を見ているのなら、取り引きしようぜ。このままだと世界は恐らくどうにもならねぇ、奴に食われて全部終わりだ。そうすれば奴は世界を食った事でパワーアップして次は次元を超える。次元を超えれば次の世界を食える、食ったら2つ分の世界のエネルギーが手に入る。そのまま行けば次元を超えず、次元ごと食えるだろう。奴はそういう生き物だ」

 

 奴こと邪神は、よく理解している。

 いや、理解させられている。

 何せ生まれてからずっと一緒にいたんだ、都より長く共にいたのだから。嫌でも分かってしまうというものだ。

 だから、奴の行動原理も習性も、どういう仕組みやメカニズムなのかも大体分かる。

 嫌な事だが、同時に有難い事だ。奴の思考回路や行動パターンに当たりを付けられるのだから。

 

「俺を奴と戦わせろ、代わりに必ず奴のライフをゼロにする」

 

 元は俺に押し付けた負債だ。俺が何かをする義務は無い。

 だが俺が立て替えてやれば都を救える。

 だったら戦うしか無いだろう。

 その取り引きに対して、まるで神が『その言葉が虚勢かどうか試させて貰おう』と言わんばかりに闇の中に3つの像が産まれた。

 

「……こいつらをデュエルで倒せ、って事か」

 

 1つは『アウサル』と赤い文字で書かれた、冥界の空気を全身から醸すミイラの像。

 1つは『ケプリ』と黄色い文字で書かれた、金色の炎が内側で燃えるハヤブサの像。

 1つは『ベンベン』と青い文字で書かれた、無数のヒエログリフが刻まれた四角柱。

 いずれも一見するとデュエルをしそうにない。

 だが目の前に立つ俺には分かる。

 

「受けて立つ」

 

 こいつらは強い、と。

 この3つの石像を倒せないなら、きっと邪神には敵わない。

 

 

 

──残り1度しかデュエルできなくとも、倒せ。

──我らの懐から勝利を掴み取れ

 

 

 

 如実にそう語りかけてくる物言わぬ無機物相手に、俺は迷わずディスクを展開した。

 最初の相手として、冥界の空気をまとうミイラが立ち塞がる。

 

「デュエル!」

『ディアハ!』

 

 

  ☆

 

 

 包まれた筈の黒は、しかし何故か十代達を侵食しようとして止まった。

 脊髄の中を這い回る生温いタールのような感覚はあったものの、途中でプツリと消えてしまった。それどころか寧ろ雪の降る真冬のような寒さすら感じる。

 

「……間一髪」

「何とかなったか」

 

 全員の耳に届く、聞き覚えのある女の声が1つ2つ。

 片や桃色のポニーテールをした騎士、片や青いツインテールをした民族衣装の踊り子。

 

「桜さん!」

「ポーラさんも!」

「無事であったか。異常事態と聞きつけ馳せ参じたのだ」

「……フィオとフレイも氷で包んだ、これ以上は侵食させない」

 

 周囲を見れば、黒い靄が凍って動きを止めている。ピシピシと罅割れる音はしているが、すぐには崩壊しなさそうだ。

 

「……この黒いのは瘴気に近い、でも物理的に存在するしとても重い。……実在するなら、凍らないワケが無い」

「主殿は精霊界にて治療を受けている、我々はそれまで彼奴の足止めのために死力を尽くす」

 

 ガバリ、と結界が物理的に開き、一同が外気に晒された。周囲は巨木の根と氷の壁で覆われており、【黒】の侵食を抑え込んでいる。

 よく見れば根と氷は一本道を形作っており、片方は邪神に、もう片方はアカデミアへの帰路になっていた。

 

「校長達は急ぎ、学園に戻って避難を」

「桜さん達は!?」

「時間稼ぎのためにここに残る。我々は主殿の帰還を、そして皆の無事をここから祈り戦う」

「……この規模が相手では瞬殺される。……でも1ターンで良い、命懸けで1ターンを使わせる」

 

 2人の目は本気だった。

 本気で皆を逃がすために、そして黎の帰還のために、死ぬのを承知でデュエルを挑む気なのである。

 それが希望に繋がると信じているのだ。

 

「……行って、1人でも多くを救うために」

「行け、1秒でも長く生きて希望を信じるために」

 

 そうして凍った木の根が2人とギャラリーを隔てた。これ以上の侵入を許さんと言わんばかりに。

 対して挑む邪神は、その様子を見て手を出す事もせず、ニヤニヤと都の目と口で嗤っている。

 まるで羽虫を甚振って殺す幼子のように、ただ死の運命に無駄な抵抗をする者を観察するように待っていた。

 

「作戦会議は終わったかぁ?」

「ああ、待たせたな。……精霊騎士団植物族支部、東方師団総隊長補佐、桜」

「……リチュア凍土神秘境、対魔龍神楽巫女団が副巫女長、ポーラ」

「ククク、良いぜぇ? 名乗りたいなら名乗れ、生涯最期の名乗りだからなぁ」

 

「「……参る!」」

 

 

  ☆

 

 

黎:LP 500

ミイラの像(アウサル):LP 8000

 

 

劫火の三幻魔-神炎皇ウリア:ATK 12000

キラーチューン・レッドシール:ATK 4400

 

 

「はぁ……、はぁ……っ! 『レッドシール』の効果を発動! 墓地のチューナーを除外し、『ウリア』の効果をターン終了時まで無効にする!」

『!』

「墓地のチューナーが減って攻撃力は300ダウンするが、それでも充分だ!」

 

 

キラーチューン・レッドシール:ATK 4400→4100

劫火の三幻魔-神炎皇ウリア:ATK 12000→0

 

 

「これで終わりだ! 『キラーチューン・レッドシール』で『ウリア』を攻撃! “ライジング・エヴォーク・デリランテ”!」

『!!』

 

 

ミイラの像(アウサル):LP 8000→3900

 

 

「そして『キラーチューン B2B(バックトゥバック)』の効果で『レッドシール』はもう1度攻撃でき、『ラウドネスウォー』の効果でお前は他のチューナーを効果の対象にできない! よって先程伏せた『デモンズ・チェーン』は使えない! ……ッ、トドメだぁっ!」

『!!!』

 

 

ミイラの像(アウサル):LP 3900→0

 

 

「っぐ、はぁ、はぁはぁ、はぁ……っ、はぁ……はぁ……ッ」

 

 肺と心臓が砕けそうだ。

 残っていた力を全部使って戦ったが故に、もう俺の体に余力は1グラムも無い。死後に等しいこの世界でも、生前から引きずっている死因が多大に影響しているのだろう。

 或いは、これが魂の壊れる感覚だろうか。

 

『汝の健闘を認める』

「そう、か……」

 

 そんな俺の涙ぐましい奮戦もどこ吹く風、ミイラはそれだけを告げると赤い光と共に消えて行った。

 

「……あ?」

 

 訂正、ミイラは消えたが赤い光は消えていない。

 それどころか俺の体の中に流れ込み、全身にヒビか唐草模様のように染み渡って行く。

 これは──、俺の体が砕けた断面と同じ場所、か?

 戸惑う俺に、鼓膜を震わす事無く声が届いた。

 

『天の雷、冥界の翼は汝を導く。大いなる力の象徴は古来より命を見守り続けて来た』

『始まりに天在りき、終わりにて地が続く。その狭間にて汝らの営みは、時に多く、時に細く、されど永劫に紡がれん。これ即ち世界と呼ぶ』

『我、数多の命が紡ぎ行く世界を嘲笑せし愚者に、鮮烈なる裁きを与えん』

 

 終わると同時、全身に走っていた死ぬ程キツい負荷が消える。死そのものを回避したのではないが、それでも死に損なっていた時よりずっと体がラクだ。痛みも無ければ息苦しさも無い。

 だがどういう事だろうかと困惑する時間は誰も与えてくれない。次の試練だと言わんばかりに、鳥の像が滑らかに俺の前に移動してきた。

 今度は先よりも本気で向こうも来る、という事が気配だけで分かる。

 

「……デュエル!」

『ディアハ!』

 

 休む時間は無い。

 そいつは、死んで動けなくなるまでお預けだ。

 

 

  ☆

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

「……っく、ぐ、ぅぅ……」

 

 

 

桜:LP 950

手札:0枚

フィールド

:黒薔薇の破滅竜(ATK:0)

:六花聖ティアドロップ(ATK:0)、捕食植物ドラゴスタペリア(ATK:0)

:増草剤(カード名を『デス・トロイ・ウイルス』に変更中)、伏せカード4枚(発動封印)

 

 

 

ポーラ:LP 800

手札:0枚

フィールド

:氷水啼エジル・ギュミル(ATK:0)

:氷結界の還零龍 トリシューラ(ATK:0)、魔救の奇跡-ドラガイト(ATK:0)

:氷結界の晶壁(カード名を『デス・トロイ・ウイルス』に変更中)、伏せカード4枚(発動封印)

 

 

 

邪神【名称不明】:LP 8000

手札:1枚

フィールド

:モンスター無し

:魔法・罠無し

 

 

 

「俺様のターン、ドロー! この瞬間、貴様らの永続魔法『デス・トロイ・ウイルス』の効果発動! 手札から闇属性モンスターを墓地に送り、3枚ドローする! 俺様は手札から『七罪士(セブンクライム) ラスト』と『スロウス』を墓地に送り、6枚ドロー!」

「くっ、また6枚に!」

「……この永続魔法のせいで!」

 

 

 

破壊瘴菌の狂気流行(オリジナル)

【通常魔法】

相手がこのカードの発動と効果に対しカードの効果を発動した場合、その効果は「自分のLPを1にする」効果となる。

(1):相手フィールドの表側表示の魔法・罠カードを2枚まで選んで発動できる。

そのカードの名前は「デス・トロイ・ウイルス」となり、以下の効果を持つカードとして扱う。

●このカードは他の効果を受けず、カードの発動・モンスターの特殊召喚のためにフィールドから離れない。

●相手の手札が2枚以下の場合、お互いのターンのスタンバイフェイズに発動する。

相手は手札の闇属性モンスター1体を墓地に送り3枚ドローしなくてはならない。

この効果で墓地に送ったカードと同名カードの効果は次のエンドフェイズまで発動できない。

ドローできない場合、手札は全てデッキに戻りLPは半分になる。

●自分のLPが1以下の場合、このカードはゲームから除外される。

 

 

 

「そして魔法カード『ブラッド・ノート』と『デビルズ・サンクチュアリ』を発動! 現れろ、3体のトークン共!」

 

 

 

ブラッド・トークン:ATK 0

ブラッド・トークン:ATK 0

メタルデビル・トークン:ATK 0

 

 

 

 精霊2人による猛攻を前に、邪神は涼しい顔をしていた。

 魔法・罠ゾーンを埋められ、毎ターン勝手に相手の手札を補強する効果に書き換えられ、更には過去に倒した邪神の護衛をも召喚して状況を追い込み続ける。

 それでも何とか食らいつく桜とポーラ。しかし邪神は攻撃という攻撃の全てをいなし続け、一方的に女傑達は消耗を強いられていた。

 

「……モンスターが、3体」

「また来るか!」

「この3体をリリース! オラッ、テメェの出番だ! 働け、『七罪士 プライド』!」

 

 

七罪士 プライド:ATK 3600

 

 

 そうして召喚されたのは、最初に倒した邪神の護衛。

 否、今となっては護衛ではなく、ただの時間稼ぎのためのコマだったのだろう。

 この下っ端でさえも、黎が一度は辛酸を舐めた男でさえも。

 

「そして魔法カード『不正の賦令(プレイ)』を2枚発動! 貴様らのプレイ内容を1つ、俺様が指定し強制的に行わせる! 俺様は貴様らの墓地から効果を無効にしてモンスターを特殊召喚させる!

 さぁ、『月華竜ブラック・ローズ』と『氷結界の剣士 ゲオルギアス』を呼び戻せ!」

「ハ、皮肉だな。私が切り捨てたコイツに今度は切り捨て返されるワケだ」

「……喋らない。……もう、護衛の魂は無い。……あれはただの抜け殻」

 

 

月華竜ブラック・ローズ:ATK 2400

氷結界の剣士 ゲオルギアス:ATK 2000

 

 

「この瞬間、『プライド』の効果発動! レベル6以上のモンスターが召喚された時、1000のダメージを与える! これで死ねぇ!」

「……すまない、ポーラ」

「……ん。……謝るのは侮辱」

 

 

 

ブラッド・ノート(アニメオリジナル)

【通常魔法】

相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターのレベル4毎に1体、自分フィールド上に「ブラッド・トークン」(戦士族・闇属性・レベル1・攻/守0)を特殊召喚する。

 

 

 

不正の賦令(オリジナル)

【通常魔法】

このカードはドロー以外の方法で手札に加える事はできない。

このカードの発動・効果が無効になった場合、このカードは手札に戻る。

(1):以下のプレイの中から1つを選び、それを相手に行わせる。

●デッキからカードを5枚までドローする(ドローする枚数はこのカードを発動したプレイヤーが決める)。

●手札・墓地・除外状態のいずれかからモンスターを1体、効果を無効にして特殊召喚する。

●フィールド・手札・墓地・除外状態のいずれかに存在するモンスター1体の効果を発動する。

●LPを1000回復する。

●モンスター1体でメインフェイズ中に攻撃宣言を行う。

●手札の魔法カードを1枚発動する。

●フィールドの表側表示・裏側表示の魔法・罠カード1枚を発動する。

●相手の手札を確認し、その中からモンスター1体を選び、そのモンスターを召喚またはセットする。

 

 

 

七罪士 プライド(効果モンスター)(オリジナル)(再改訂版)

星10

闇属性/戦士族

ATK 3600/DEF 3300

このカードは特殊召喚できず、自分フィールドのモンスターを3体リリースしなければA召喚できない。

(1):自分のモンスターの攻撃力は、バトルフェイズ中のみ2000アップする。

(2):このカードは魔法・罠カードの効果では破壊されない。

(3):相手がレベル6以上のモンスターを召喚・特殊召喚・反転召喚した時に発動できる。

相手に1000ダメージを与える。

 

 

 

 そして何より、桜とポーラは今や、邪神にとってはコマにも劣る程度でしかない。

 全力を振り絞ってなお、僅かに時間を稼いだだけの2人は、抜け殻となった最初の護衛によって跡形も無く消し飛ばされた。

 

 

桜:LP 950→0

ポーラ:LP 800→0

 

 

「あるじ、どの……、じゅうだいど、の……っ!」

「……ごめん、まけ、ちゃっ……たぁ……」

 

 

  ☆

 

 

黎:LP 900

隼の像(ケプリ):LP 8000

 

 

クシャトリラ・シャングリラ:DEF 3000

クシャトリラ・アライズハート:ATK 3000

罪禍の三幻魔-降雷皇ハモン:ATK 4000

 

 

(中々やるなぁ)

 

 進化した『ハモン』はターン1の制限こそあれど、モンスターが墓地に行けば俺にダメージを与える。

 墓地にモンスターを送らないデッキは殆ど無い、維持するだけで強いプレッシャーをかける事ができる。あのモンスターは棒立ちするだけでも毎ターンずっとダメージを与えられるという寸法だ。

 そこに『失楽園』を張りつつ『オネスト』を使い回し、時には『はたき落とし』や『手札抹殺』を交える戦術を取って、攻守ともに厳重な態勢を取っている。あの盤面は見た目より遥かに固い。

 だが、もう勝負はついている。

 

「『ティアラメンツ・クシャトリラ』の効果で墓地に送られるカードは、『アライズハート』の効果で除外される。そして『アライズハート』の効果により、その3枚の中から1枚をオーバーレイ・ユニットとして吸収する。もうこれで『ハモン』の効果ダメージは発生しない」

 

 除外されたカードは3枚。その中から『手札抹殺』を奪い、黒紫色の鎧を着た大戦士に3つの衛星が灯った。

 相手の場にはフィールド魔法以外に守りの手段が無い。さっきまでの攻防で全部使い切ってしまったからである。

 このターンの俺の除去を凌ぐ手はゼロだ。

 

「『アライズハート』の効果発動! オーバーレイ・ユニットを3つ使い、フィールドのカードを1枚除外する! フィールド魔法『失楽園』を除外! これで『ハモン』の守りはなくなった!同時にオーバーレイ・ユニットとしてカードが除外された事で、除外されている『失楽園』を吸収!

 そしてオーバーレイ・ユニットの『六世壊他化自在天(クシャトリラ・パーピヤス)』が除外された事で、永続魔法『クシャトリラ・バース』を回収して発動! さぁ戻って来い、『クシャトリラ・フェンリル』!」

『ヌゥン!』

 

 

クシャトリラ・フェンリル:ATK 2400

 

 

 これでモンスターは全部で5体。内1体は守備表示。

 対する相手は1体、攻撃力では勝るが今は丸裸のノーガード状態だ。

 

「行くぞ、『クシャトリラ・フェンリル』で『ハモン』を攻撃! この瞬間『フェンリル』の効果で場の表側表示のカード、進化系の『ハモン』を除外!」

『何!?』

「前のターンで全ハンデスと『クシャトリラ・シャングリラ』以外の全てのカードを破壊したのは見事だった! だが1番残しちゃいけないモンスターを放置したのはミスだったな!

 これでガラ空き、全軍でダイレクトアタック! 『クシャトリラ・フェンリル』、『ティアラメンツ・クシャトリラ』、『クシャトリラ・ユニコーン』、『クシャトリラ・アライズハート』! 行けぇ!」

『ぐ、ぐぉおおおおおおおお!』

 

 

隼の像(ケプリ):LP 8000→0

 

 

 ミイラに続けて鳥の像にデュエルで勝ったが、再び肺が破裂しそうだ。

 元々生命力が限界まで削られていた魂、死後の世界であってもデュエルをするだけの力は残っていない。

 先程の赤い光で多少は回復したとしても、元々がズタズタでは焼け石に水だったのだろう。

 

『汝の健闘を認める』

「ああ」

 

 そんな俺の涙ぐましい奮戦もどこ吹く風、ミイラに続けて鳥もまたそれを告げ、今度は黄色い光と共に消えて行った。

 黄色の光は俺の中に溶け込み、赤色の光の時と同様に全身の断面を金継ぎのように繋げていく。

 そしてまた赤の時と同様、鼓膜を震わさずに俺に語り掛けて来た。

 

『この世の始まりに黒があり、命と共に白が生まれた。やがて命は炎を見出し、恐怖を乗り越えた』

『水を求め、風を愛し、地と共に歩み出し、更なる彩りと共に人の子は世界を渡り続けた。これ即ち、未来を導く人の希望、世界の理』

『我、世界の基底を蹂躙せし愚者に、無限の罰を与えん』

 

 そうして再び、俺の全身を蝕んでいた負荷がどこかへと消え去る。

 先の赤だけの時よりずっと体は軽く、特に痛めていた肺と心臓が完全にラクになっている。それらを支える肋骨も然り、筋肉も然り。

 次第に分かって来た。

 『ヴァンダルギオン』の渡した物の意味、そしてこのデュエルの意味を。

 状況を噛み締める俺に対し、最後の像である巨大な塔が重厚感たっぷりの音と共に俺の前に移動してきた。

 

「3つの像、或いはその後ろにいる大いなる存在よ。……感謝する」

『不要』

「そうか」

 

 ほんの僅かな延命にしかならないだろう。

 だが。

 

「デュエル!」

『ディアハ!』

 

 その『僅か』な差で事足りる。

 

 

  ☆

 

 

 桜が倒れても、彼女の生み出した大木の道は消えない。

 そこに戦いに敗れた少女達──精霊の年齢は考えないものとする──4名が倒れ伏したまま動かなくなっている。

 

「クフカカカカカ、これで邪魔者はいなくなった。精霊2匹、いや3匹とその使い手が3人、それとサイバーの継承者。後は雑魚だが、全てまとめれば食前酒にはなるか」

「っ、フィオ、桜さん!」

「ポーラさん、フレイさん!」

「無駄だ、俺様の一撃をまともに受けたのだ、最早そいつらは死を待つだけの負け犬よ。──さて、食うか」

 

 精霊という出せる手札は全て出し尽くし、なお邪神は健在。

 周囲は邪神の放つ瘴気に満ちており、アカデミアの校舎へ直通する道しかない。

 

「……ぁ、ぁ」

「ぅ゛……、……」

 

 そんな中で、一度は校舎に退避した一同がその場に戻って来ていた。

 ただ戻って来たワケではない。

 そこには学校の教師、そして生徒の中でも選りすぐった精鋭チームが勢揃いしている。

 そしてその全員が邪神へと敵愾心を燃やしていた。

 

「一応聞いてやろう。尻尾を巻いて逃げた塵芥共が何をしに来た」

「当然、お前を倒すためだ! 桜さんはお前に吹っ飛ばされる寸前に俺の腕を治してくれたんだからな!」

 

 意気軒昂に叫んだのは本来なら主人公である十代。

 

「これだけの邪悪な存在、見過ごす事はできん。サイバー流の力、拝ませてやろう」

 

 その隣で冷静に眼光を光らせるカイザー亮。

 

「私は教師、生徒達を危険から守る義務があるノーネ。それで戦う理由は十分過ぎるーのデス」

 

 反対側ではクロノス教諭が僅かに震える手足を隠しながら、大人として前に出る。

 彼らだけではない。

 

「負傷兵の十代だけに良い顔はさせん、貴様はこの万丈目サンダーの前に這い蹲らせてやる!」

「この世界ならざる力、それに俺の計算がどれだけ通用するか確かめる良い機会だ」

「フィオは私の友達なの、それをあんなボロボロにされて黙って見てられる奴はいないのよ」

 

「桜さん達は命を使って1ターンを稼いだッス! なら僕らだって、皆が逃げるための1ターンを稼いでみせる!」

「ここでおめおめと逃げたら友達にも桜さん達にも、そして故郷の父ちゃん母ちゃんにも顔向けできないんだな!」

「連絡船に生徒全員を乗せきるまで時間がかかりますのでね、それまでお付き合い願います」

「三幻魔が貴様に吸収される前に、私に僅かに力を寄越してくれた。若返る事はできなんだが、何、老人の世迷言くらいはできる」

 

 先程まで戦いを見守っていた老いも若きも全員が立ち塞がっていた。

 邪神としては無視する事も、デュエルをせずに食い尽くす事もできる。

 だが、邪神はそれをしない。

 必死に戦おうとするデュエリストを打ち倒し、心を絶望に染める。仮初の勇気を挫いて食う。それは悲しみや嘆きや怒りを好んで食うこの黒き悪にとっては、極上の御馳走だ。

 そして更に。

 

「これは何事ですか? 大きな爆発があったと思ったら、いつぞやの女の子から汚い男の声がするのですが」

「あれ遊馬崎の妹さんじゃ? もしかしてもう乗っ取られちゃったんじゃない……?」

「だ、だったら皆さん逃げる筈です! 戦おうとしてるって事は、希望は潰えてないんじゃないでしょうか!」

「そうね。坊やにここで貸しを1つ作って、ついでにあの可愛い子も救ってあげたら、色々プラスになるんじゃない?」

「うむ、明らかな異常を前に何かできるのなら、動かず逃げるのは寧ろ恥じゃて」

「よーし、やろっか! 正直今すぐ逃げ出したいくらい怖いけど、逃げても意味無さそうだしねっ!」

 

 かつて共に戦った、手を取り合う強さを知る学友達(タッグフォース)もまた、森を掻き分け次々と参上する。

 邪神相手に1人何分も耐えられない面々。

 だが数さえ集まれば、その数分は十数分になり、十数分は数十分になる。

 

「愚か」

 

 それを邪神も理解している。

 故にただ嗤った。

 

「あまりにも愚か」

 

 たった数分か数日か、生き永らえる事をしない人間を。

 有り得ない希望に縋る彼らを、ただただ嗤う。

 

「知ってるさ」

『クリクリ~!』

「百も承知ナノーネ」

「絶望の先にこそ希望はあるのよ」

「黎が来るまで持ち堪えるぞ、アイツが最後の希望だ!」

「その前にこいつを倒してしまおうじゃないか!」

「こんな私でも躓く小石程度にはなれるのなら、全員で転がして傷だらけにしてやるわ!」

「稼げる時間は1人何分でしょうか……」

「遅延でも何でもして、稼げるだけ稼ぐまでだ」

「教師として生徒を戦わせるのは心苦しいのですが……、もうそんな悠長な事すら言えそうにありませんね」

 

「来い、愚かな三下共。その見出した希望が如何に儚く頼りないか、魂に刻んでやろう。絶望という刃によってなぁ!」

 

 

 

 

 

「「「デュエル!」」」

 

 

  ☆

 

 

黎:LP 1500

石の塔(ベンベン):LP 8000

 

 

無窮の三幻魔-幻魔皇ラビエル:ATK 6000

三幻魔の殉教者:ATK 0

三幻魔の殉教者:ATK 0

三幻魔の殉教者:ATK 0

 

 

 謎の石像達との3回目の戦い。

 そこでも俺は追い込まれていた。

 敵が使うモンスター『無窮の三幻魔-幻魔皇ラビエル』はこちらのモンスターを全て破壊し、その数だけ自己強化される。さっきまで展開していた俺のモンスターはこれにより2体とも破壊され、攻撃力が6000にアップされている。おまけに防御札も無かったので直接攻撃で大ダメージを受けてしまった。

 だが手札0枚から始まった俺のターン、引き当てたのは『E・HERO バブルマン』。これで『エアーマン』と『融合』をドローし、場に召喚してサーチ効果を発動。そうして『エアーマン』と『シャドー・ミスト』を融合し、場の状況を整えたのが現状である。

 

「融合召喚! 光輝け、『E・HERO サンライザー』!

 そして『シャドー・ミスト』が墓地に送られた事で効果発動、デッキから『プリズマー』を手札に加える! 同時に『サンライザー』の効果で『ミラクルフュージョン』を手札に加え、発動! 墓地から『エアーマン』と『シャドー・ミスト』を除外し、融合! 出でよ、『E・HERO Great TORNADO』! その効果でお前のモンスター、『ラビエル』の攻撃力は半分になる!」

『トァッ!』

『ハァッ!』

「『E・HERO サンライザー』の効果により、俺の場のモンスターの攻撃力はその属性の種類×200アップ! 俺のモンスターは光属性の『サンライザー』と風属性の『Great TORNADO』と水属性の『バブルマン』、よって600アップする! そして『サンライザー』は他の“HERO”が攻撃する時、フィールドのカードを1枚破壊できる!」

 

 

E・HERO サンライザー:ATK 2500→3100

E・HERO Great TORNADO;ATK 2800→3400

E・HERO バブルマン:ATK 800→1400

 

 

「まだだ! 俺は墓地の『クロス・キーパー』の効果発動! ヒーローを融合召喚した時、このカードを墓地から除外し、デッキから2枚ドロー! そして手札を1枚デッキの下に戻す!」

 

 デッキボトムに1枚戻し、これで手札は2枚。例えこの陣形を崩されても充分なカードを手に入れられた。

 敵の場のモンスターは4体。主力である進化体の『ラビエル』に加え、その効果発動のために場に再び展開された『三幻魔の殉教者』が3体。

 フィールド魔法『三幻魔の失楽園』に効果破壊を防ぐ効果は無い、これで『無窮の三幻魔-幻魔皇ラビエル』を破壊すれば、残るは攻撃力0のモンスター達のみだ。

 敵のライフは8000と全く削られていないが、この連続攻撃で致命傷には届く。

 

「貰った! バトル! 俺は『Great TORNADO』で──」

『この瞬間、『無窮の三幻魔-幻魔皇ラビエル』の効果を発動。自分フィールドの“三幻魔”モンスター2体をリリースする事で敵軍を全て破壊し、その数×1000の攻撃力を得ル』

「相手ターンでも発動できるだと!?」

『“天堂蹂躙波”』

 

 しまった、だからわざわざ手札を割いてまで攻撃力0のモンスターを揃えていたのか。

 破壊されたモンスターは3体、3000に下げた『ラビエル』の攻撃力はこれで6000に戻ってしまう。

 

 

無窮の三幻魔-幻魔皇ラビエル:ATK 3000→6000

 

 

『終わりだ、次のターンで除外された『E-HERO ヘル・ゲイナー』がフィールドに戻ル。その残った最後の手札で凌げるカ?』

 

 確かに攻撃力6000は脅威だ。

 奴に耐性は無いとはいえ、高い攻撃力はそれだけで十二分に驚異的な存在であり、それだけで処理にリソースの分配を強制させられる。

 だが、自分で言っていて疑問に思わなかったのか、石の塔よ。

 

『……待テ。手札が1枚足りないが、どこにやっタ?』

「気が付いたか。俺はお前が“天堂蹂躙波”を発動した時、このカードを発動させて貰った」

 

 墓地ポケットから取り出し、とあるカードを相手に見せる。

 OCGなら使い勝手が悪く、他にいくらでも入るカードのある、無駄にスロットを食うだけの弱い速攻魔法。

 だが、この世界はアニメや漫画といったフィクション準拠。下らない現実主義に用は無い。

 

「速攻魔法『バブルイリュージョン』。こいつは『バブルマン』がいる時にのみ発動でき、手札から罠カード1枚を発動できるようになる」

『だが、既に『バブルマン』は存在しなイ』

「『バブルイリュージョン』は発動時に『バブルマン』がいれば、このターンいつでも手札からトラップを発動できるようにするカードだ。よって破壊されても問題は無い」

 

 裁定や少々ややこしいが、発動に成功すれば強力な罠カードも速攻魔法のように発動できる。

 消費に見合ったコンボになるかはその時次第だが……、今回は行けたぜ。

 

「俺が発動するのは、これだ! 罠カード『融合複製(フュージョン・デュプリケーション)』!」

『何!?』

「このカードは墓地の『ミラクルフュージョン』を除外し、それと同じ効果を得る! 俺は墓地から『サンライザー』、『Great TORNADO』、『バブルマン』、『リキッドマン』、『ブレイズマン』、『ソリッドマン』、『クレイマン』を除外し、融合!」

 

 墓地から合計7枚のカードが吐き出され、取り除かれる。今墓地にいる全モンスターを除外する事による融合、これが通らなければ俺の墓地リソースは空っぽだ。

 だが奴に防ぐ手は無い、決める!

 

「稀代の光を抱く英雄達よ! 高鳴り止まぬ胸の鼓動と共に、力の限り駆け抜けろ!」

 

 

融合素材:「E・HERO」融合モンスター+戦士族モンスター1体以上

 

 

「融合召喚! 翼広げ翔け上がれ、朝陽と共に! レベル10、『Wake Up Your(ウェイクアップユア) E・HERO(エレメンタルヒーロー)』!」

『トァッ!』

「このカードの攻撃力は融合素材の数×300アップする! よって攻撃力は2100アップ!」

 

 

Wake Up Your E・HERO:ATK 2500→4600

 

 

 俺が呼び出したのは、1枚のカードに複数種類のモンスターが描かれた特異な1枚。『シャイニング・フレア・ウィングマン』を中心に、『ワイルドジャギーマン』『バブルマン・ネオ』『ネクロダークマン』『ヒーローキッズ』が立ち並び、その足元では『ハネクリボー』が彼らを真似するように腕を組んでいた。

 本来なら俺が使っちゃいけないんだが、ここは生者の世界じゃない、少しだけお目こぼしして貰おう。

 

「行くぞ! 『Wake Up』で『殉教者』を攻撃!」

『ぐぬっ!』

 

 

石の塔(ベンベン):LP 8000→3400

 

 

 『ヒーローキッズ』が飛び蹴りで体勢を崩させ、そこをすかさず『バブルマン・ネオ』が水鉄砲で撃ち抜く。流石はヒーロー、連携もバッチリだ。

 

『ぬぅ……! だが『ラビエル』の攻撃力は6000、そのモンスターでは勝てなイ!』

「『Wake Up』は融合素材にした融合モンスターの数だけ、モンスターに対して攻撃できる! よってもう1回攻撃が可能だ! 行け、『ラビエル』を攻撃!」

 

 更に『ネクロダークマン』が鋭い爪で切り裂かんと飛び掛かり、その反対側で『ワイルドジャギーマン』が大剣で一刀両断せんと切り掛かる。

 これを青い巨人の悪魔は反撃の鉄拳で押し返し、そのまま後方にいた『ヒーローキッズ』と『バブルマン・ネオ』ごと吹っ飛ばした。

 

「っ!」

 

 

黎:LP 1500→100

 

 

『これで貴様のモンスターはいなくなった、次のターンで終わりダ』

「……残念だが、このデュエルはもう終わってるんだよ」

 

 お前の負けでな。

 

「『Wake Up』の効果! 戦闘を行ったダメージ計算の後、つまりモンスターが破壊される直前にバトルした相手モンスターを破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

『何ッ!?』

「これで終わりだ! “シャイニング・ユア・フューチャー”!」

 

 吹っ飛ばされた皆は、しかし白い翼を大きく広げた『ハネクリボー』が受け止めていた。

 そしてその瞬間に生まれた隙を、『シャイニング・フレア・ウィングマン』が掻い潜り、全身から眩い光を放って敵を焼く。

 真正面からそれを浴びた悪魔と石塔は派手な大爆発と共に全てを粉砕され、やがてディスクからデュエル終了のブザーを鳴らした。

 

 

石の塔(ベンベン):LP 3400→0

 

 

「はぁ、はぁ……はぁ……っ!」

 

 これで3勝、石像達の試練には打ち勝てた。

 いずれも“三幻魔”と呼ばれる魔神の進化系を、それぞれ専用に構築したデッキだった。3体それぞれを混ぜても戦えると言うのに、それを1種類ずつに尖らせて来れば手強いのも当然か。

 

『汝の健闘を認める』

「感謝する」

 

 兎角、これで3つの像は全て倒した。

 最初は死に体だった全身も、赤と黄、そして今この瞬間に流れ込み始めた青いオーラが修繕してくれたらしく、動きに問題が無い程度には回復している。

 金継ぎよろしく全身が3色の模様に覆われる俺。それらはやがて色が溶け合うと、黒い唐草模様のように変色した。

 そしてまた赤と黄の時と同様、鼓膜を震わさずに俺に語り掛ける声が1つ。

 

『森羅万象の命は大地の恩寵の上にあり、その営みを以て大地への返礼と成す』

『空は支える大地ありてこそ空、命は踏みしめる土ありてこそ命。歩む事、泳ぐ事、飛ぶ事、全て大地の糧。これ即ち、生きる事と死ぬ事である』

『我、命の明日を唾棄する愚者に、無限の罰を与えん』

 

 世界、これはこの生きていると実感する空間の全て。

 生きる、これは食べて寝て笑って泣いてと生物が成す営みの全て。

 死ぬ、これは星の上で最後まで命を育み続けた終点の全て。

 神の視点にてそれを俺に説いた■■は、今その力のごく一部を俺に貸し出してくれた。

 全て有難く使わせて貰おう。

 

(筋肉……、断裂部位は全て修復完了。

 骨……、損傷個所は内部まで全て再生済み。

 血管……、出血や脆くなっている箇所は無し。

 臓器……、これは良いか(・・・・・・)

 っし、オールOKだ)

 

 全身を文字通り全ての身体の意味で確認し、壊れたパーツの点検も行う。

 現世では今、邪神の相手をフィオがしていると『ヴァンダルギオン』が言っていた。

 

(間に合えよ……)

 

 だがそれじゃあ駄目だ。

 フィオでは、いいや違う。

 俺以外の誰であっても奴には勝てない《・・・・・・・・・・・・・・・・・》、露悪的に言ってしまえば無駄死にの捨て石になるだけだ。

 早まるな、フィオ、皆。

 戦って名誉の死なんて求めるな。

 俺が行くまで、生き延びろ。

 3つの力が入ったといえど、未だ軋む体を強引に動かして歩き出す。この先が出口かどうかは知らない、だが歩き続けなければどこにも行けないのだから。

 

『汝よ』

「……何だ」

『今のまま彼奴と戦えば、汝は勝敗の前に死するであろう。それでも行くか』

「愚問」

 

 神を名乗る割には弱腰、とは言わない。

 寧ろこの声の主の方が正解だ。

 幾度も致命傷を負い、とうとうラースにぶった斬られた俺の体は原型をギリギリ留めている状態。奴と戦えばすぐに接合面が綻んで再びバラバラになってしまうだろう。

 それでも、ここで尻尾を巻いて逃げ出すという選択肢は無い。無いったら無いのだ。

 

『汝、一度きりの奇跡を望むか』

「奇跡の内容と、それが奴に通じるか次第だ」

『その奇跡を以て勝利する事ができるのであれば、その命を擲つ覚悟はあるか』

「覚悟? そんなもの、最初から決まっている。決まってない奴に、戦えるワケが無い」

『理解した』

 

 犬死にで良い。捨て石で構わない。

 それで奴の首が、俺と同じように獲れるのなら本望だ。

 俺にそれができる力を与えてくれるのであれば、拒む理由は無い。堂々と受け入れる。

 

『人の子よ』

「今度は何だい」

『汝に押し付ける事を謝罪する』

「無用だ」

『その旅路の終極に、汝の幸福あれ』

「ハ」

 

 祈るなよ、祈られる側が。

 そう言いたかった。

 まぁきっとそれは、あっちもよーく理解している事だろう。

 

 全身の赤・黄・青の模様が輝きだす。

 そこかしこが千切れそうだった俺の体の切断面に、パテやはんだ(低融点合金)のように接合を施していく。

 だが同時にそこには熱──否、鈍痛が染みるように広がる。超越した力は俺という埒外の生物の更に上にいて、俺でもこの身に受け入れる事はできないというワケだ。

 

 それでも、ただ1度だけなら。

 1度だけならば、或いは。

 嗚呼、やれる。絶対に。

 

「……行くぞ」

 

 聞こえなくなった声の主に向けて、俺はただ一言だけを告げる。

 いつの間にか生まれていた、現世へ戻るための入り口は、もうすぐそこだ。

 

 

to be continued




次回、最後のデュエル・スタンバイ
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