遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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STORY12:「シャキッとしやがれ!」

SIDE:黎

 

 

「ドアを開けろ! さもなくば爆破すブッ!」

「き・ん・じょ・め・い・わ・く・だ・ろ・う・がっ!」

 

 はい、皆さんこんにちは。今作の主人公の遊馬崎黎です。1時間程の睡眠の後、こうして査問委員会の連中に押し掛けられ、『朝っぱらから煩い』の苛立ちの下に扉ごと蹴り飛ばしてやりました。モチ反省無しです。

 キィキィ、と扉が悲しく鳴るが、元々ボロいので気にしない。

 

「今、何時だと思っている。7時前だ。まだ寝てる奴もいるんだぞ……!」

「ぐっ、スマナイ、配慮不足だった……」

「俺に謝るな。それと爆破したらしたで、その後の責任はどう取るつもりだったんだ?」

「せ、責任……?」

 

 ……、こいつら、爆発物の免許持ってんのか? それとも爆破云々はハッタリか?

 

「あのなぁ、爆破したらこんな古い寮じゃあ他に影響出るだろうが。

 もしも柱なんかが衝撃で折れたら? 爆破した時に扉の向こう側に誰かいたら? 壁が崩れて風が入り、大切なカードが飛んで行ったら? そういう時、どうやって責任を取るつもりなんだ、ええ? お・ね・え・さ・ん?

 まさか身体で払うなんてベッタベタな事、言わねぇよなぁ?」

「ぐっ、ぐぐぐぐぐ…………っ!」

 

 良し。正論は鬱陶しいモンだが、こうやって相手を言い負かす事には役立つ。そしてこいつらは恐らくこうやって反論される事を想定していない。傲慢な連中は相手にバカにされる事を嫌い、見下される事を嫌悪する。故に相手より常に上にいようとするのだ。

 ならば話は簡単。重箱の隅を楊枝で穿る様な真似は正直嫌だが、こうやって相手の足元につけ込み、上から引き摺り下ろす。

 うん、我ながら意地が悪い。

 

「と、兎に角、連行する!」

 

 ガチャリ、と俺の手に手錠が掛けられた。

 

「この手錠(ワッパ)は俺へのプレゼントかい?」

「そうだ」

 

 にひひ、それなら遠慮なく……。

 

頂きます(・・・・)♪」

「は?」

 

 ガリッ! バリバリガギガギバギョバギョムギャムギャ…………。

 ゴクン!

 

「て、手錠を、食べた……!?」

 

 いやー。この間、都とぶつかった時に金属があっちこっち傷んじまってねぇ。修復や不足分の補充に困っていた所だったんだよ。ありがたいなぁ。

 

「あ、おかわり」

『無い!』

 

 チッ、ケチな奴らだ(←違う)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『退学ぅ―――――――――――――――――っ!?』

「その通り。本日未明において遊城 十代以下5名は閉鎖・立ち入り禁止となっている廃寮へ無断で侵入。よって遊城 十代、丸藤 翔、遊馬崎 黎を退学処分とする!」

「隼人と明日香は!?」

「前田 隼人~は1度留年となっているたぁめ、いつでも退学にできるという点をか~ら大目に見て反省文と一週間の謹慎処分とするの~ネ。

 シニョーラ明日香は、成績優秀でオベリスクブルー、更に~は何かしらの被害に合ったという事を考慮し~て、無罪放免とするの~ネ」

 

 チッ、エリート贔屓が。

 

「な、何でも言う事聞くからさぁ、チャンスくれよぉ!」

「どうか機会を!」

 

 十代が悲鳴に近い声を上げ、俺もそれに乗る。

 

「む~むむぅ。それで~ハ、別のペナルティを提案するの~ネ。制裁デュエルなの~ネ!」

「制裁……?」

「デュエル……?」

「ドロ……、もとい遊城 十代と丸藤 翔はタッグ、遊馬崎 黎はシングルでデュエルを行う~ノ! 勝てば学園に残り、負ければ即退学なの~ネ」

「乗った!」

「分かった!」

「対戦相手ーハ、追って連絡するの~ネ」

 

 では、とクロノス先生が話を締め括る。

 さて、デュエルにおいて相手がエンド宣言をすればこちらのターン、というのは常識であり、恐らくはどんなターン制のゲームでもそれは共通、だと思う。

 そんじゃ、次は俺のターンだ。

 

「校長先生、宜しいでしょうか?」

「おい貴様、立場を弁えビビビビビビビビッ!?」

「ちょいと黙っててくれ」

 

 何をやったかって? 靴下とズボンの隙間の肌から細いアースを伸ばして査問委員会の女の肌に巻きつかせて電流を流したのサ。夜のリングから逃げる時に十代に使ったスタンガン代わりの掌から流した電流と同じくらいだから、人間が喰らったら気絶するぜ?

 

「言いたい事がいくつかあります」

「ん、む。言ってみなさい」

 

 同時に相手を怖がらせる効果もある。俺=正体不明の化物、という認識が皆の心の底にこびり付いている。それを利用して『要求を蹴ったら次は自分の番だ』という恐怖の感情を与えるのだ。

 どんな人間も、恐怖に立ち向かう為には勇気がいる。そしてその勇気は、相手の恐怖の根源に対抗し得るだけの力量――この場合はリアルファイト――が無ければ生まれない。

 

「まず、生徒手帳に『廃寮は立ち入り禁止』とは書いてありますが、『入った場合は退学』とは書かれていません。従ってこの退学処分は不当であると言えます」

「むむ」

「次に、調べが速すぎます。確かに俺達は廃寮に行きました。しかし、俺達が廃寮から出たのは今朝の5時過ぎ。そして査問委員会がやって来たのは午前7時前。

 明らかにたった2時間弱で全員分の証拠を揃え、こうして連行できる、という事は何者かが我々を見ていた、という事か、廃寮へと誘導したという事だと思われます。そうでなければ我々が廃寮に入って行ったのを黙って見過ごしたものと推測されます」

「むむむ」

「最後に、これを」

 

 パサッ、と俺は懐からあの請求書を取り出す。

 

「クロノス先生宛てです。廃寮にて明日香に危害を加えた男が持っていた物です。彼は依頼されたと言っていました。

 もし、犯人が我々を何らかの方法で廃寮へ誘導。そして査問委員会に報告したとすれば2つ目と3つ目の俺の主張に説明がつきます。

 つまり、今回の一件はクロノス先生、またはクロノス先生を騙った何者かが裏で糸を引いている、と言えます」

「(ままままままま、マズイの~ネ!)で、で~も、そんな都合良く行くものなの~ネ?」

 

 ああ、動揺してる動揺してる。

 それじゃ何か一枚噛んでいると言っているようなモンだぜ?

 

「確かに、今回は大徳寺先生が廃寮の話をしたが故に廃寮に行きました。しかし、別に何でも構わないのですよ。

 大徳寺先生に誰か伝いで廃寮の話をするように頼んでも良いし、レッド寮の中に廃寮にレアカードが眠っている、という噂を流しても良い。

 兎に角廃寮へと誘導し、それを確認すれば終わり。報告して俺達は連行」

「ぐ~ぬぬぬぬぬぬぬぬっ。結局、何が言いたいの~ネ!」

「別に。退学云々も呑んでしまった後だから何も言いようが無いです。

 ただ、以降、廃寮へと入った人への処分を寛大にしてほしいのです。それと、クロノス先生かクロノス先生の名前を騙った奴にも罰を」

「分かりました」

 

 おし、お終い。俺が卒業した後もきっとこういうバカする奴は出てくるだろうからね。先輩からのちょいとした贈りも「ちょっと待った!」……、チッ、もう目が醒めたか。

 俺の行動が癇に障ったのか、それとも自分の思い通りにならなかった事に腹を立てたのか、兎に角俺が気に入らないらしく、大声で彼女は捲し立てる。

 

「このバケモノがっ! 貴様などデュエルを待たずして退学だ、退学!」

「お前にそんな権限あるのか? もう俺が制裁デュエルに勝てばここに残れる事が確定している。この結論を覆したいのであるならば、大多数の教師を納得させられる理屈が必要だ。私怨以外にそれができる理由はあるのか?」

「そんなもの、お前がバケモノであるという理由で十分だ! ここは人間様の居場所だ、人間でない貴様に居場所があると思うなゴミめ!!」

「あ゛?」

「怪物は怪物らしく、怪物の巣に帰れオブッ!」

 

 ……気が付いたら、俺は右腕を金属化させ、あの女の鼻っ柱をぶん殴っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後の記憶は殆ど無い。気が付いたらあの女が全身血だらけで、俺はその胸倉を掴んでいた。

 

「テメェは化物を怒らせるとどうなるか、分かってねぇらしいなぁ、おい!」

「ひ、が……」

「ぼ、暴力反対なの~ネ!」

「ウルセェ!」

「ヒィッ!」

「ああ、俺は化物さ。だから何だ? 化物がここデュエルアカデミアに通っちゃいけないなんて校則あったか?」

「い、ぎぃ……」

「化物だ何だって言って、元々俺は人間だったんだよ。化物だから俺が傷付いても構わないってか? お前のその考えこそが化物と言うべきなんじゃねぇのか!?」

「あ、ぐ…………」

「何とか言えよ、おい!」

「そこまでだよ、黎」

 

 フシュー、と怒りが抜けていくのが分かった。肩を誰かに掴まれたのだと自覚するのに数秒の時を要した。

 そして掴んだ人物とは……。

 

「フィオ……!」

 

 そう、フィオだ。

 

「何故ここに?」

「事情は明日香から聞いた。真相を確かめるべくここに来たんだけれど、その様子じゃ元気そうだね」

「ん、まあな」

 

 沈静化した俺から制裁デュエルの話を聞いたフィオは納得した様に頷いた。

 

「分かった。わたしも協力しよう。キミがこんな形でここを去るなんて後味悪いだろうからね」

「ありがとう」

 

 そして俺は鮫島校長へと向き直る。唖然とした表情をしているが、俺の視線が自分に向いた事を認識すると、すぐに俺に注意を向けた。

 

「この女を血ダルマにした事に関してはどういたしましょう?」

「う、む。彼女の言い方にも問題があった事ですし、反省文と奉仕活動でどうでしょう」

「奉仕活動?」

 

 反省文は兎も角として、何だそりゃ? 普通は謹慎とかじゃ無いのか?

 

「キミの能力を恐れている人は大勢います。そこでキミが怖い化物では無いという事を、ボランティアを通じて知ってもらうのです」

 

 成程。部屋の中に閉じ込めても、訳の分からない能力で密かに脱出される可能性がある。だったら、目の届く範囲で行動してもらい、尚且つ今後『化物』呼ばわりによる傷つく人を減らす算段か。

 っと。そこまで邪推しなくても良いか? どうも人の腹を探るクセがついてるな。

 

「それで良いのなら。ご用があれば何なりと」

 

 その一言の後、俺とフィオは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――海岸沿いの道・昼過ぎ

 

「ゴメンねぇ、黎ちゃん。こんなに手伝ってもらっちゃって」

「いえ、この程度は準備運動にもなりませんよ」

 

 早速ボランティア。第1号は俺が化物だと知っても何の変化も無く接してくれた購買のトメさん。良い人だなぁ。

 トラックに荷物を乗せるのだが、如何せんダンボールの数が多く、しかももう一人の購買部員のセイコさんもいなかった為に困っていたらしい。

 重いヤツは少なかったし、トラックの荷台に乗せれば良かっただけなので、髪と腕に荷物を持ち、2~3回往復しただけで全部運べた。

 

「ご用があればまたどうぞ」

「ありがとう。はい、お駄賃」

 

 ニッコリ笑ってくれた。きっとこれがミス・デュエルアカデミアの由縁、笑顔の素敵な人だ。美人はいくつになっても美人、か(年上好みじゃ無いからね?)。

 おまけにお駄賃としてドローパン(余り物じゃ無いよね?)もくれた。後で食~べよっと♪

 

 トラックが発進したのを見届けると、俺は寮の方へと歩く。新しい力を手に入れるのならまた精霊界へと向かう事になるだろう。

 炎が強化するのか、水や風の力を手に入れる事になるのかは分からないが、人目につかない場所から行った方が良いだろうな。

 そんな事を考えていた時だった。

 

「レーイ!」

「十代?」

 

 後ろから十代が駆けて来た。何やら焦っているようだが……。

 

「翔を見なかったか?」

「いや」

「くっ、あいつどこ行ったんだ!?」

「落ち着け、十代。何があったか話してみろ」

「ああ、実は……」

 

 

【事情説明中】

 

 

「成程……、『パワーボンド』か」

 

 封印された機械族専用の融合カードか。そういえばそんな事があったな。

 

「鍵を握るのは“カイザー”の異名を持つ男。俺も探す」

「ありがとう!」

「十代は海岸沿いをこのまま探してくれ。俺は森の中を行く」

 

 翔の成長イベントだな。これを逃すと十代達は退学。そうなると本気でヤバい。これ以降も十代の力を借りる時が来るかも知れないし、何より主人公を失えば第3期と4期は確実にマズい。いっちょ行きますか。

 ダッ、と二人して駆け出す。俺は森の中の木々を飛び移り、途中で炎の精霊達を呼び出す。

 よく枝が折れないなって? 重心や跳び方にコツがあるんだよ。コツさえ掴めば体重が400キロ程度なら大丈夫。

 

「翔っていう水色の髪に丸眼鏡の小柄な少年を探している。島中に散開し、一緒に探してくれ! 何かあったら花火弾を上げろ!」

 

 ヒュン、と一瞬で赤い精霊達はあちらこちらへ飛び散る。

 夕方になれば多分イカダと一緒に海にいるんだが、それ以前の行動は分からない。こういう所が原作知識の不便な所だな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――海岸・夕方

 

 

「いた! 翔!」

「ッ、黎、くん……!」

 

 岩をタンタンタン、と飛び降り、翔の近くに行く。その後ろで『バック・ドラフトマン』が信号弾を空中に放つ。直に他の皆もやって来るだろう。

 

「事情は十代から聞いた。が、お前は何をしているんだ、イカダなんざ作って?」

「……、分かってるクセに…………」

 

 ボソリ、と翔が呟く。ああ、その通りだよ翔。俺は分かっていてこう言っているんだ。だが、ソレはお前の口から発されなくてはいけない。黙っていては自分の中で誤魔化されてしまうからだ。

 

「僕は……、島を出るッス」

「何故? 十代のダッグデュエルのパートナーだろうが」

「……それは、その役目は、黎くんに譲るッス」

「?」

 

 翔は悲しげに目を伏せる。

 

「僕じゃあ、アニキの足を引っ張るだけッス。だったら二人退学になるより僕だけが退学になった方が良い」

「……………………………………」

「じゃあ、アニキに宜しく伝えて欲しいッス」

 

 イカダに翔は向き直る。上手な出来とは言えないが、近くの港や島に行くのなら十分だろう。

 

「止めないで下さいッスね、サヨナラだけが人生だから」

 

 じゃあ、と手を振りイカダに乗ろうとした翔の行く手に、俺は髪の毛を伸ばし、その先端に形成したブレードを突き刺した。

 ガガガガガガガガッ! と何本もの黒い剣が柵の様に立ちはだかる。

 

「れ、黎くん……?」

「まだ、俺は言いたい事を言ってないぞ」

 

 そうだ、こいつは勝手な理屈を押しつけて困難から逃げようとしている。そんな好い加減な臆病者を臆病者のままで帰す訳にはいかない。

 髪を元に戻しつつ俺は極力冷やかに言う。ここは心を鬼にするべきだ。

 

「なんだかんだ言って、結局お前は、十代を見捨てるんだな」

「な、違うッス!」

「違わない。足を引っ張らないためにとか言うが、お前がいなくなったら十代は2対1で戦う事になる。それこそ足手纏いだろう」

「黎くん、組んでくれないんスか……?」

「俺はもうシングルで決定している。手持ちのカードを十代とのタッグ用にしたらシングルでデッキが回らなくなる。逆にシングル用に組んだらタッグでのデッキの回り具合が悪くなるだろうな。

 恐らくは黒幕のクロノス先生の事だ。ブルーの中でも1、2を争う実力者か……、或いは外から腕のある奴を連れて来るだろう。そんな奴相手に中途半端なデッキを使えば、いくら俺でも勝つ事はできん」

 

 これは真実。今から俺の手持ちのカードで上手く戦えるデッキをもう1つ構築する事はできない。それにクロノス先生が翔の事を聞いたら済し崩し的に十代は不戦敗の可能性がある。

 

「他でも無い、お前の力が十代には必要なんだよ、丸藤 翔。俺でも隼人でも明日香でも無い、お前が、な」

「……ッ、弱い僕の代わりなんていくらでもいるッスよ! でも、アニキの代わりはいないッス! だから、アニキだけは退学になっちゃ駄目なんスよ!」

 

 

 

 

 

 

「ふざけんなッ!」

 

 

 

 

 

 

 今のは怒ったぞ、翔!

 

「人間は機械の部品じゃねぇんだよ! お前の、十代の友達の代わりなんざドコ探したっていねぇんだ!

 第一、聞いていなかったのかっ! お前が十代のパートナー出来んのはお前だけなんだよ!

 俺がタッグに回ればシングルがヤバくなる! 決定事項の都合上、隼人も明日香もタッグを組む事はできないんだよ!」

 

 それに、俺はさっきから考えていた事がある。

 

「もし、お前がこのまま島を去ったとしても、俺は十代のパートナーやらねぇし、隼人も明日香も同じだろうよ」

「で、でも……」

 

 ああ、もう! 何時までもウジウジウジウジと!

 

「この分からず屋! 敗北の責任から逃げるんじゃねぇよ! 男ならシャキッとしやがれ!」

「黎の言う通りだぜ、翔」

 

 不意に後ろから声がし、振り向くと、十代を始めとした面々が揃っていた。

 む、原作より多いな。

 

「アニキ、隼人くん、三沢くん、明日香さん、浜口さんに枕田さん、神山さんまで……」

「皆がお前を探してくれたんだぜ、感謝しろよ?」

 

 多分『バック・ドラフトマン』の上げた信号弾に十代か隼人か『ハネクリボー』が気付いたんだろう。『ハネクリボー』が自力で翔を見つけたのか、それとも?

 翔の俯き具合が大きくなる。後ろめたいのだろうか。

 

「アニキ…………。僕とタッグなんて止めて欲しいッス。僕が足を引っ張って負けるだけッスから。どうにか交渉して隼人くんや明日香さんと組んで、学園に残って欲しいッス」

「イヤだ!」

 

 翔が紡いでいった自責の言葉を十代は一言でぶった斬った。

 

「俺のパートナーはお前だ! 他の誰でもねぇ!」

「な、何でッスか!? 何でそこまで僕に拘るんスか!?」

「お前、俺の弟分名乗るんだったら、もっと本気見せてくれよ! 本気出せないでここを去るなんて悲しいぜ?」

「アニキ…………」

 

 うん、と皆も頷いてくれる。

 翔の顔に光が戻り、決意の表情を新たにした。

 

「うん、僕頑張るッス!」

「その意気だ、翔」

 

 そう言ったのは十代でも誰でも無かった。

 

「亮!」

 

 それは丸藤 翔の兄、“カイザー”の異名を持つサイバー流の男、丸藤 亮だった。

 

「貴方が、カイザー亮」

「そうだ」

 

 ピン! と閃いた。原作にもあった気がするが、覚えてないので自分の案にしておこう。

 

「カイザー、十代とデュエルをしてくれませんか?」

「ほう?」

「翔に見せてあげて下さい、貴方の皇帝と呼ばせるまでのデュエルタクティスを。弟さんに欠けている何かを見せてあげて下さい」

 

 ふっ、とカイザーが笑う。

 

「俺は別に構わない。そちらは?」

「俺もオッケーだぜ! くー、学園ナンバー1とのデュエル、楽しみだなぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――波止場付近・夜

 

 

「来い! カイザー!」

「ああ。行くぞ、『サイバー・エンド・ドラゴン』で『マッドボールマン』を攻撃! “エターナル・エヴォリューション・バースト”‼」

 

 

 

 

サイバー・エンド・ドラゴン(融合・効果モンスター)

星10

光属性/機械族

ATK 4000/DEF 2800

「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」

このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 

 

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) マッドボールマン(融合・効果モンスター)

星6

地属性/戦士族

ATK 1900/DEF 3000

「E・HERO バブルマン」+「E・HERO クレイマン」

このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。

 

 

 

 

 カイザーの切り札『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃が、三つ首から放たれる光線が強固なる守備力を持つ『マッドボールマン』を呑み込み、そのまま十代を襲った。

 

 

十代:LP 0

 

 

「強いな……。十代が敗れるとは……!」

「これが、学園最強……」

 

 大地とジュンコが感心する。十代の引きは凄まじい。ピンチになればなるほどそれは強くなる。

 だが、カイザーはその上を行った。十代が防御を固め反撃に移る前に、彼を倒したのだ。

 そして……。

 

「欠けていた何かは掴めたか、翔?」

「うん!」

 

 大した男だ。この短いデュエルの中で弟に足りないものをしっかりと分からせやがった。ただ強いだけじゃ無い。タクティクスのみならずメンタルの方も強い。

 

「なら、デュエルの方は大丈夫だな?」

「大丈夫ッス!」

 

 ふふっ。もう元気を取り戻したか。なら、タッグデュエルは安心だな。

 

「ああっ!」

『!?』

 

 っとと、ビックリしたなぁ。

 突然、十代が何かを思い出したかのように声を上げた。

 

「寮の夕飯の時間、間に合わなくなる!」

「確実に間に合わないと思うが」

 

 だって真っ暗だもん。冬が近いからってこの暗さじゃあ夕飯の時間は過ぎていると思うぞ。

 

「ああ~、晩御飯食べ損ねてしまいましたわ……」

「そう言えばお腹空いた……」

 

 ももえ&ジュンコもか。

 ま、しゃーない。ここは一肌脱ぎますか!

 

「俺の部屋の台所に食材があったから、あれを使って何か振舞おう」

「黎くん、料理できるんスか!?」

「黎が!?」

 

 ……、コイツら失礼だな。

 

「今時、男でも料理の1つや2つできないと社会でやって行けねぇからな」

「意外なんだな……」

「黎、キミの料理って一般人でも食べられる、よ、ね…………?」

 

 ……フィオ、人をゴキブリみたいに言わないでくれないか?

 なまじ自分が人間じゃ無い事を自覚しているから、凄まじく傷つくんだけど。

 

「それとも、化物の作った食事を食うなら、一食抜いた方がマシか? なら俺の分だけで良いかな」

『食べる、食べます、食べさせて!』

「俺も良ければ、ご相伴に預からせてくれ」

 

 おっと三段活用。

 皆、食欲には勝てないみたいだね。カイザーも相伴する事になったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――レッド寮食堂・夜

 

「ウメェ! スッゲェ美味い!」

「い、一流シェフ並み…………!」

「黎、キミは何者!?」

「あー、それ僕のッス」

「早い者勝ちなんだな!」

 

 食材が思ったよりも買ってあったので、ちゃんと振舞えた。

 しかしオーバーだな。別に高級レストランで出るようなフレンチとかじゃ無く、普通の一般家庭料理なんだが……。

 

「そこまで言われると、作り甲斐があるよ。機会があればまた振舞おう」

「そ、その時は教えて下さいませっ!」

「あ、アタシも!」

「わたしも!」

「良ければ私も……!」

 

 あらら、男を掴むには胃袋から~、とか言う諺があったが、逆もありか? 女性陣が皆喰い付いて来た。

 

「ふむ、俺も良ければ頼むよ」

「おっと……、大地、どっから沸いた?」

「きゃっ! み、三沢さん、いつからそこに!?」

「今さっきだ! ついでに言うと人をゴキブリやボウフラみたいに言うな!」

 

 むー、この頃から空気男の片鱗が……?

 因みにボウフラは漢字で書くと『孑孑』になる。意外と覚えやすそうだな。

 

 こうして、俺達の夜は更けて行く。

 暫く後に待つ、制裁デュエルに向けて。

 

 

to be continued

 

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