遊戯王GX~精霊の抱擁~ 作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民
ゴブリン突撃部隊(効果モンスター)
星4
地属性/戦士族
ATK 2300/DEF 0
このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になり、次の自分のターンのエンドフェイズ時まで表示形式を変更する事ができない。
黎「いやはやもう説明不要だよね。元祖デメリットアタッカーです。とりま使い捨ての切り込みとして採用すると良いと思います」
???「一方で攻撃力は下級モンスター中ではかなり高いです。特殊召喚せずに手軽に出せるので、モンスターによるロックも外せますよ! 場に残る除去カードとして使いましょう!」
――レッド寮から約700メートルの位置・PM 20:30
SIDE:黎
「これで大丈夫だろう」
俺が今いるのは森から二十歩程度、奥へ歩いた場所だ。冬が近い為既に外は真っ暗。大徳寺先生に許可を貰い、破損した材質集めと偽ってこの肌寒い中表に出ている。ボランティアもやると言ってあるので、明日の朝までに帰れば問題は無いだろう。
何故嘘を吐いてまで外出するのか。その理由は至極単純、人に見られる訳にはいかないからだ。
目的は精霊界へと行く事。先日のプライドとの戦いで力不足を実感した黎は精霊界で何か新しい力かヒントを得に行くのだ。
『精神同調、安定。世界位相、リンク完了』
赤い宝玉から言葉が流れるようなイメージが脳裏に刻まれる。次いで地面に赤い魔法陣が現れ、外周を縁とするように淡い光の柱が立つ。どうやらこの魔法陣全体が入口のようだ。
「じゃあ、行くか! 開け、精霊界の扉……!」
ヒュオン! という音と共に俺は光に包まれた。
―――精霊界
光が止むと、周囲は一変した。
転送前は森だったが、今は赤い岩の荒れ地だ。結構暑いのは、この岩の赤さが熱を持っている事による発熱反応だからだろうか(要するに岩が赤くなるくらい暑い)。
『ここはほのおのさとのはずれですね』
「炎の里?」
『はい、なのあるほのおけいモンスターのしゅうらくです』
額の汗を拭い、身体を耐熱式に組み替えていると、『バック・ドラフトマン』が辺りを見渡し、頷きながら説明する。
人間界では不可能だった精霊との意志疎通も、精霊界なら可能なようだ。
「名のある炎系……。なるほど」
『にしても、誰もいないな…………』
『ヴォルカニック・ギア・ガイ』が首を傾げる。確かに、文字通り人(?)っ子一人いない。
近くには壊れた『ブレイズ・キャノン-トライデント』があった。こいつは『ヴォルカニック・デビル』を呼ぶのに必要なカード。つまり少なくともここに彼がいる事は確かなようだ。
……、壊れている? いや、壊れているのは良いんだが……。
「何だ、この壊れ方……!」
通常の経年劣化によるものでは無い。これは何者かが外部から攻撃を加えた結果による損傷の破壊だ!
よく見ると、『キャノン-トライデント』が濡れていた。
「水……?」
『それは変だな』
手で触れ、その液体が純粋な水である事が分かった。それを不審がったのは『ブレイジング・ナイト』だ。
「どういう事だ?」
『この炎の里には少量だが確かに水はある。だが、『トライデント』は壊れても非常に高い熱を持つというのに主殿は“湯”では無く“水”と言った。つまり……』
「『ブレイズ・キャノン-トライデント』が冷め切ってしまう程の、本来は無い大量の水があった」
『左様』
奇妙な話だ。
そして、もう一つ気になった事がある。
「微弱だが、何で邪神の気配がするんだ? まだ復活してないんだろ?」
『そのハズ、なのだがな……』
都、プライドとの戦い以降、黒い気配が感じ取れるようになった。邪神の気配だと気付くには時間は要らなかった。
顎に右手を添えて考える。分かった事は3つ。
1、ここには無い筈の大量の水。
2、不自然な壊れ方をした『ブレイズ・キャノン-トライデント』。
3、邪神の微弱な気配
この3つが導き出せる結論はただ一つ。
「急ぐぞ、皆! 邪神が人間と精霊の世界の両方を進撃して来た!」
『
再び皆を宝玉に戻し、炎の力を纏う。周囲をサーチすると、邪神の僅かな気配がとある一方だけ僅かに強い。恐らく気配の主はそっちへ向かったのだろう。
足に点火してブースターの代わりにし、飛び出そうとした時だった。
「んー、黎はてっきり手品師かと思ったんだけど……、違ったみたいだね」
『「!?」』
聞き慣れた声。半実体化した精霊と一緒に思わず振り返ると、そこにいたのは……。
「フィオ、どうしてここに……!」
「やー、あはははは……」
後頭部を掻きながらバツが悪そうに苦笑いするオベリスクブルーの少女。汗を掻いているのは暑いせいだけでは無いだろう。
友人である神山 フィオは視線を逸らしていたが、観念したのか、事情を話し始めた。
「オベリスクブルーの門限ってさ、9時なんだよ」
「知っている。レッドが8時、イエローが8時半だって事も知っている」
不公平、とは言わない。成績が悪い奴が集うのがオシリスレッドだ。他より早いのは当然だろう。
にしても、女子までそんな遅くまで許して大丈夫なのだろうか? 島とは言え孤島では無い。現に影丸理事長は空から、サイキック流は海から島にやって来た。良からぬ目的で誰かがやって来ないとは限らないのだ。
「でさ、ちょっと散歩してたんだ。
その帰りに森の中から赤い光が漏れててさ、何だろうって思って近付いたら光に包まれて……。で、気が付いたらここにいたってワケ」
それは良いんだが……。気になる事が一つある。
「何故最初から声をかけなかった? 俺は転移してから殆ど場を動いてないし、足音も聞いていない。つまり俺とお前の転移後の初期位置は大して離れていない事になる。
この辺りに障害物は無い。つまり最初から俺が見えていたハズだが?」
「えーと、ほら、手品とかドッキリを見る時ってさ、驚かないのが鉄則じゃん? これもてっきりそういうのかと思って……」
しどろもどろに言うが、怪しい。
そもそも俺の感覚器官は転送前には目一杯広げておいた。可能な限り広げれば、その感覚は1キロ先の会話をクリアに聞き取る事ができる(尤も、他の器官は潰さなくてはいけないが)。
だというのに、俺は彼女の存在を感知できなかった。どういう事なのか説明はつかないが、とにかく奇妙だ。
まあ良いや。今は追及している時間は無い。
「良いや。元の世界に送るから、少し待ってろ」
「待った。わたしも行くよ」
はい?
「何か大変な事が起きてるみたいだし、わたしだって多少腕に覚えはある。デュエルだって明日香程じゃ無いけど強いし、護身術ぐらいなら身につけてるよ」
「アマい。人間の体術で相手できるか怪しいし、デュエルでどこまで通じるかも疑問だ」
「でも」
「でもじゃねぇ。ゲート開くから帰んな」
冷たい言い方だが正直な話、俺一人では彼女と自分を守りきれないだろうし、帰すのが正しい選択肢だろう。こんな所で死なれても困るし悲しい。
『あー、ダンナ?』
「何さ『ウィスプ』?」
なんとかして説得を試みていたが、『ウィスプ』に肩を叩かれ、振り向く。
『時間が無い。その娘ごと連れて行って、誰かと一緒に避難してもらおうぜ?』
言われてハッとする。確かに、この事態が今も進行しているのならば余裕は一切無い。ゲートを開くとは言ったものの、すぐに開ける訳でも無い。先のあれとて、座標を固定して門を開くのにそれなりの時間がかかった。
……、仕方ないか。
「分かった。ただし、良いって言うまで俺の傍を離れるなよ?」
「オッケー!」
「とりあえず、お前の体に簡易的な耐熱効果を持たせる」
「オッケー、え?」
同じ調子で返したフィオ。だが、直後にOKを出してはいけないと悟ったのか、サッ、と青ざめ距離を若干取る。
それに構わず俺は彼女に詰め寄り、爪と髪を可能な限り細く長く伸ばす。
「れ、黎! ちょっとタンマ!」
「待った無しだ! 自家製耐熱型体組織変形ワクチン! 注・入!」
「ひぎゃぁ!?」
プスッ! と小さな音を立ててフィオの全身という全身に爪と髪を突き刺す。蚊の針のように細いので痛みは無い、ハズ。
「れ、黎~ッ!」
「これで2、3日は暑さに強くなったハズだ」
「乙女の体を勝手に好き勝手すんなぁっ!」
「語弊のある言い方をするな! ほら、行くんだろ、乗れ!」
不満そうだったが、観念したらしいフィオを背中に乗せると、足元に炎を逆噴射し、バーナーの形で推進力を得る。どこへ行くべきかはおおよそ分かっている。
「しっかり掴まってろ!」
「大丈夫!」
「よし来た!」
低空飛行で気配が濃い方へと向かう。何が待っているかは分からないが、きっとその先にこの一件の鍵がある筈だ。
そして、その先に邪神に繋がる手掛かりも。行くぞ、邪神! 首洗って待ってやがれ!
―――炎の集落から西へ約300メートルの地点
飛んでいる内にだんだんと見えて来た小さな集落。そこでは悪夢のような惨劇が巻き起こっていた。
『うわあぁあああっ!』
『キャァアアアアッ!』
三々五々に逃げ惑う炎の里の皆。それを嘲笑うかのように追撃を仕掛けるのは水属性モンスターだった。
『ギャハハハ、逃げ惑え! 泣き叫べ! もっと、もっと絶望を!』
『死ねぇ! テメェら全員ぶっ殺してやるよぉ!』
先頭で指揮を執っているのは『半魚獣・フィッシャービースト』と『水陸の帝王』だ。片や剛腕を振り回し、片や太い尾を振り回している。その他には『軍隊ピラニア』や『海賊船スカルブラッド号』が逃げ遅れた精霊を襲っている。
今のところは『炎獄魔人ヘル・バーナー』や『絶対服従魔人』といった強豪が反撃したり攻撃を防いだりしているが、全員異常な程に弱っている。今も『タイラント・ドラゴン』が地にゆっくりと倒れ伏した。
水陸の帝王(通常モンスター)
星5
水属性/爬虫類族
ATK 1800/DEF 1500
大きな口から四方八方に炎をはく、爬虫類のばけもの。
半魚獣・フィッシャービースト(通常モンスター)
星6
水属性/魚族
ATK 2400/DEF 2000
陸では獣のように、海では魚のように素早く攻撃する。
軍隊ピラニア(効果モンスター)
星2
水属性/魚族
ATK 800DEF 200
このカードが相手プレイヤーへの直接攻撃で与える戦闘ダメージは倍になる。
海賊船スカルブラッド号(通常モンスター)
星4
水属性/戦士族
ATK 1600/DEF 900
船首に赤い骸骨をかたどった海賊船。
あらゆる海域に神出鬼没に現れ、旅客船や貨物船を襲撃する。
炎獄魔人ヘル・バーナー(効果モンスター)
星6
炎属性/悪魔族
ATK 2800/DEF 1800
このカードを除く自分の手札を全て墓地に捨て、さらに自分フィールド上の攻撃力2000以上のモンスター1体を生け贄に捧げなければ通常召喚できない。
相手フィールド上モンスター1体につきこのカードの攻撃力は200ポイントアップする。
このカード以外の自分フィールド上のモンスター1体につき、このカードの攻撃力は500ポイントダウンする。
タイラント・ドラゴン(効果モンスター)
星8
炎属性/ドラゴン族
ATK 2900/DEF 2500
相手フィールドにモンスターが存在する場合、このカードはバトルフェイズ中にもう1度だけ攻撃する事ができる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードを対象にする罠カードの効果を無効にし破壊する。
このカードを他のカードの効果によって墓地から特殊召喚する場合、そのプレイヤーは自分フィールド上に存在するドラゴン族モンスター1体をリリースしなければならない。
絶対服従魔人(効果モンスター)
星10
炎属性/悪魔族
ATK 3500/DEF 3000
自分フィールド上にこのカードだけしかなく、手札が0枚でなければこのカードは攻撃できない。
このカードが破壊した効果モンスターの効果は無効化される。
「ヒドい……」
背中でフィオが呟く。まだあそこまで距離がざっと300メートルはあるのに、よく見えたな。
「うわっ!」
『ゲヒヒヒヒ!』
遠くで『逆巻く炎の精霊』が『レクンガ』の触手によって転ばされる。まずい、非力な攻撃力である彼には『レクンガ』のような下位中級アタッカーですら脅威だ。
あの『レクンガ』の振り上げた触手が、彼にとってどれ程の凶器か……!
逆巻く炎の精霊(効果モンスター)
星3
炎属性/炎族
ATK 100/DEF 200
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。
直接攻撃に成功する度にこのカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
レクンガ(効果モンスター)
星4
水属性/植物族
ATK 1700/DEF 500
自分の墓地の水属性モンスター2体をゲームから除外する度に、自分フィールド上に「レクンガトークン」(植物族・水・星2・攻/守700)を1体攻撃表示で特殊召喚する。
『ギヘヘェエエエエッ!』
「うわぁああああん! パパ、ママァ!」
音を立てて振り下ろされる触手。泣き叫ぶ『逆巻く炎の精霊』。させるか!
「『くず鉄のかかし』!」
ガギン!
間一髪、ディスクにセットした『くず鉄のかかし』が『レクンガ』の攻撃をガード。俺が到着するまで時間にして僅か数秒間に合わなかったが、どうにかなったようだ。
にしても、勘が当たって良かった。カードが全て実体化する世界だからこそ成し得た荒業だ。
「ぼうや、大丈夫かい!?」
「早く逃げた方が良いよ!」
「あ、はい!」
ピューッ、と駆け足で逃げて行く。おお、早い。達者でなー。
「にしても、もう順応したのか、フィオ」
「否定していても仕方ないよ。非日常ってのは受け入れて乗り越えないと、あっと言う間に呑み込まれてジ・エンドさ」
逞しいな。
他の水属性モンスター達は俺の登場に警戒しているのか、炎の民への攻撃を中断。その隙に炎の民は逃げ切ったらしく、もう炎属性モンスターは殆ど見当たらない。
倒れていた『タイラント・ドラゴン』は『絶対服従魔人』が運んだらしく、遠くに赤い巨体が巨竜を担いで走っているのが見えた。
『グルァアアアッ!』
「さぁ、お前の罪を数えろ……」
フィオが背後で「それなんて仮面ラ○ダー?」と言っていたが、気にしない。実際このセリフが合いそうなくらい俺は怒っている。
『ジェエイヤァアアアアッ!』
奇声と共に『レクンガ』が触手を俺に向けて伸ばす。
アマい。軌道ぐらい読めている。
(前方から2本、左右から1本ずつ、上から3本。だが本命は土の中を通る残る4本。全て俺の今いる座標を目掛けて放たれている。ならば!)
触手の数ぐらい対面すれば分かる。真ん中を突っ切り、剥き出しの目玉に蹴りをプレゼントだ!
俺の蹴りにワンテンポ遅れて触手が俺が一秒前までいた場所を攻撃する。
「おらよっ!」
『ギギュウッ!』
派手に『レクンガ』は吹っ飛ばされ、地面に倒れてノビた。
「さて、次はどいつだ?」
「この小僧!」
「ブチ殺ス!」
「ザケんな!」
俺の挑発に青い熊の『グリズリーマザー』、槍を持った半魚人『ニードル・ギルマン』、骨っぽいどちらかと言うとマグロのような特徴の『深海王デビルシャーク』が乗り、憤りを露わに爪や牙で襲いかかって来た。
グリズリーマザー(効果モンスター)
星4
水属性/獣戦士族
ATK 1400/DEF 1000
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の水属性モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
ニードル・ギルマン(効果モンスター)
星3
水属性/海竜族
ATK 1300/DEF 0
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する魚族・海竜族・水族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。
深海王デビルシャーク(効果モンスター)
星4
水属性/魚族
ATK 1700/DEF 600
このカードは1ターンに1度だけ、対象を指定しないカードの効果では破壊されない。
ヒュッ、と息を吐き、迎撃の構えを取る。隙だらけだ。山で相対した熊の方がよっぽど強かったぜ?
「おらっ!」
「ぐあっ!」
一番手の『グリズリーマザー』は爪を潜って顎を殴り、
「はっ!」
「ゲブッ!」
二番手の『ギルマン』の槍を鋼質化した腕で受け止めて脇腹を蹴り飛ばし、
「せいやぁっ!」
「アブがっ!」
三番手の『デビルシャーク』は浮いている所を下から鉄の棍で突き上げる。
ちなみにコイツに見られる特徴はマグロのような遊泳魚に見られるモノらしく、鮫に近い特徴は見受けられないらしい。
ドサドサドサ、と急所を突かれて3体が倒れる。
「次は、どいつだ」
ザワ、と殺気立つ。数にして50前後。俺の敵じゃない。
この程度、あのプロボクサー崩れ十人との地下デスマッチに比べたらなんて事無い。殺気も微風程度にしか思えないな。
ま、正直フィオの護身術も大したモンだ。飛びかかって来る敵を片っ端から投げて殴って絞めて蹴り飛ばしている。無駄な動きを削いだ良い動きだ。男子より体力面で劣り易い女子が戦う事を想定した戦い方であると言える。
ジャリ、と誰かが地を踏みしめた。来るか?
そう思った時だった。
「待てや」
「その場で待機だ」
奥からやって来たのは戦闘指揮を執っていた『フィッシャービースト』と『水陸の帝王』だ。
他のザコとは違ってしっかりとした気迫を感じる。
「へぇ、ようやくボスのお出ましか」
「ザコの相手も疲れたしね」
余裕の笑みを浮かべる俺。そして飄々とした物言いのフィオ。
「けっ、良い腕してんじゃねぇか」
「リアルファイト、デュエル。両方とも相当の使い手だとお見受けした」
キュイィィィン、と『フィッシャービースト』の腕にディスクが装着された。『水陸の帝王』は腕が無いので装着できない。きっと半透明のカードが展開したり、石板が降って来たりして戦うのだろう。
「デュエル、か?」
「おーよ! 力在る者はデュエルも強いってのが
「力と知能、双方を兼ね揃えてこそ、真の猛者なのだ」
ふーん、成程。そう言えば、随分と昔からデュエルモンスターズは存在していたらしいね。宇宙の始まりは1枚のカードだって、ダークネスも言っていたし。
どうやら精霊は人間よりも昔から生きていたのかも知れない。
それはさて置き。
「了解だ。だが、時間が無い。二人纏めて相手してや「待った!」る……、フィオ?」
ディスクを展開。時間短縮を目論んで2対1をやろうとした俺にストップをかけたフィオ。何を……?
「キミはこの後も戦うんだろう? だったら少しでも体力を残した方が良い。
折角のボス戦も、ピンチのまま迎えたらボコられて終わりだよ」
例えがゲームっぽいが、どうやら片方を引き受けてくれるらしい。
成程、彼女の言う事も最もだ。ラストの相手はこいつらじゃ無い。ここで体力使い切ったらアウト。
「分かった。片っぽ頼む」
「オッケイ! 『水陸の帝王』、アンタの相手はわたしだ!」
「てこたぁ、俺の相手はテメェか、『半魚獣・フィッシャービースト』!」
「少女とはいえ、容赦はせぬ!」
「叩き潰してやるよぉ!」
俺と『フィッシャービースト』が戦った後、フィオが『水陸の帝王』とやる事になった。あまり大きな通りがある村では無いし、まだ逃げ遅れた奴がいる可能性も考慮してこいつらから目を離すワケにもいかない。
ガシャン、とディスクをセットし、フィオと『水陸の帝王』から距離を取る。二人から十分に離れたら、スタートだ。
「行くぞ!」
「来いやぁ!」
『デュエル!』
黎VS半魚獣・フィッシャービースト
LP 4000 VS LP 4000
「俺のターン、ドロー!」
手札は悪くない。次のターンの反撃で大きくライフを削れるか、否か。そこが最初の勝負だな。
「モンスターを守備表示で召喚!」
バチバチッ、と電子音と共に裏側表示でモンスターが現れる。
「更にカードを2枚伏せ、ターンエンドだ」
黎:LP 4000
手札:3枚
フィールド
:セットモンスター1体
:伏せカード2枚
「おれのターン! フン、いきなり2枚も伏せるとはな!」
うっせぇ、ほっとけ。
つーか、それはそれだけ警戒するべきカードが増えたって事だぞ? 分かってんのか、コイツ?
「魔法カード『古のルール』を発動! おれは手札の『コスモクイーン』を特殊召喚!」
『はぁあああああっ!』
古のルール
【通常魔法】
自分の手札からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する。
コスモクイーン(通常モンスター)
星8
闇属性/魔法使い族
ATK 2900/DEF 2450
宇宙に存在する、全ての星を統治しているという女王。
コスモクイーン:ATK 2900
む、良いモンスターだ。通常モンスターだが、闇属性で魔法使い族。サポートカードは豊富にある。
「更に、『ゴブリン突撃部隊』を召喚!」
『グウェェエエエアッ!』
ゴブリン突撃部隊(効果モンスター)
星4
地属性/戦士族
ATK 2300/DEF 0
このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になり、次の自分のターンのエンドフェイズ時まで表示形式を変更する事ができない。
ゴブリン突撃部隊:ATK 2300
次は初代デメリットアタッカーか。当時は革新的だーなんて騒いでたなぁ。
でも、毎度毎度カードのイラストじゃあロクな目に合って無いんだよな、こいつら。完全にやられ役ってヤツ。
「まずは、『ゴブリン突撃部隊』でセットモンスターを攻撃! “パワーブロー”‼」
ブンブンブン! と三連続で鉄の棍棒が振るわれる。しかしそれは、ヘリポートによって受け止められた。
「生憎、『マッシブ・ウォリアー』はその程度じゃあやられないんでね!」
マッシブ・ウォリアー(効果モンスター)
星2
地属性/戦士族
ATK 600/DEF 1200
このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
このカードは1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されない。
マッシブ・ウォリアー:DEF 1200
「更に攻撃を行った事で、『突撃部隊』は守備表示になる!」
元の場に戻った『突撃部隊』はそれぞれの武器を斜に構えて低姿勢になるように屈む。
ゴブリン突撃部隊:ATK 2300→DEF 0
「破壊に耐性を持つモンスターか! ならば『コスモクイーン』で追加攻撃! “コズミック・ノヴァ”‼」
ギュォオオオオオオ! と闇の粒子が集まり球体を作る。そしてそれは野球のボールのように放たれた。はっ、通すかよ、そんな攻撃!
「リバースカードオープン、『くず鉄のかかし』! 1度だけ相手の攻撃を防ぎ、フィールドに再度セットする!」
毎度御馴染みくず鉄先生のご登場です。今回もバリアを張ってエネルギー弾を弾くという名に恥じぬ良い働きです。
ちなみに間違っても『突撃部隊』の方に『くず鉄のかかし』を使ってはいけない。攻撃そのものを無効化してしまうので、守備表示にならないのだ。
攻撃力2300の壁は意外と七面倒臭い。相手にダメージを1ポイントでも多く与えたいのならともかく、基本この手のデメリットアタッカーの攻撃は受けて反撃に繋げるのが定石だ。
「チィッ! 1枚カードをセットし、ターン終了だ!」
半魚獣・フィッシャービースト:LP 4000
手札:3枚
フィールド
:コスモクイーン(ATK 2900)、ゴブリン突撃部隊(ATK 2300)
:伏せカード1枚
「俺のターンだ。ドロー!」
さて、あの伏せカードは何だろうか。攻撃を封じたり、対象を変更したりするカードならまだしも、入学実技のあれだと厄介だ。今手札にいるこいつの攻撃力は奴のモンスターの攻撃力を下回る。
チッ、普段なら下位上級アタッカーとして活躍できるってのに。
ここは、もっと後で出す予定だったこいつに出てもらうか。
「俺は『マッド・デーモン』を召喚!」
『グルァアアアアッ!』
マッド・デーモン(効果モンスター)
星4
闇属性/悪魔族
ATK 1800/DEF 0
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、このカードの表示形式を守備表示にする。
マッド・デーモン:ATK 1800
肩に牛の頭骨、腹に大きく開いた口を持つガリガリの悪魔がニヤニヤ笑いながら現れる。
「『マッド・デーモン』は貫通効果を持つ!
行くぞ! 『マッド・デーモン』で『ゴブリン突撃部隊』を攻撃! “ボーン・スプラッシュ”‼」
『グィイイヤァアアアアアアアアッ!』
腹の口で中の人間の頭蓋骨をバリバリと噛み砕き、その破片をバババッ! と吐き出す。小さい子が見たら怖がりそうだな、この攻撃方法。
「永続罠発動! 『最終突撃命令』!」
「ッ、やはり伏せていたか!」
低レベルデメリットアタッカーの大抵は攻撃後に守備表示になる効果を持つ。逆を言うと守備表示を封じてやればデメリットは消滅する。
最終突撃命令
【永続罠】
このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上に存在する表側表示モンスターは全て攻撃表示となり、表示形式は変更できない。
ゴブリン突撃部隊:DEF 0→ATK 2300
マッシブ・ウォリアー:DEF 1200→ATK 600
「ならばチェーンして速攻魔法『突進』をオープン! 『マッド・デーモン』の攻撃力を700ポイント上げる!」
「何!?」
突進
【速攻魔法】
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力はエンドフェイズ時まで700ポイントアップする。
マッド・デーモン:ATK 1800→2500
骨片を撃ち返そうとする『突撃部隊』だったが、欠片の量が突如として増加し、全員に突き刺さった。
半魚獣・フィッシャービースト:LP 4000→3800
「ぐぁあああっ!」
「やった! 黎が先制した!」
「1枚カードを伏せ、ターンエンドだ」
黎:LP 4000
手札:2枚
フィールド
:マッド・デーモン(ATK 1800)、マッシブ・ウォリアー(ATK 600)
:伏せカード2枚(内1枚は『くず鉄のかかし』)
「ナメるな! おれのターン! 『死者への供物』を発動! 次のドローフェイズをコストに『マッシブ・ウォリアー』を破壊!」
っちゃ、頼もしい壁モンスターが……。ダメージまで無くしてくれるから結構期待していたんだが……。
死者への供物
【速攻魔法】
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。
次の自分のドローフェイズをスキップする。
さて、『マッド・デーモン』は自力で守備表示になれる攻防兼ね揃えた優秀な貫通アタッカーだ。だが、この状況下では守備表示になってもすぐに攻撃表示に戻されてしまう。さて、どう転ぶか……。
「『スピア・ドラゴン』を召喚!」
『クキョォオオオッ!』
スピア・ドラゴン(効果モンスター)
星4
風属性/ドラゴン族
ATK 1900/DEF 0
守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。
このカードは攻撃した場合、ダメージステップ終了時に守備表示になる。
スピア・ドラゴン:ATK 1900
またデメリットアタッカー!?
こいつのデッキはデメリットアタッカーのビートダウンか? だが、それだと『コスモクイーン』は何なのだろうか?
……、ゴチャゴチャ考えていても仕方ないか。まだ始まってから4ターン目だ。
「『スピア・ドラゴン』で『マッド・デーモン』を攻撃ぃ!」
「悪いが読んでいる! 罠カード『ヘイト・バスター』を発動!
こいつは俺の場の攻撃対象となった悪魔族モンスターと攻撃を行う相手モンスターを破壊し、攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
「んだとぉ!?」
ヘイト・バスター
【通常罠】
自分フィールド上に表側表示で存在する悪魔族モンスターが攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。
相手の攻撃モンスター1体と、攻撃対象となった自分モンスター1体を破壊し、破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
赤く発光した『マッド・デーモン』が『スピア・ドラゴン』を巻き込んで爆発。こちら側は『マッド・デーモン』の張ってくれたバリアのお陰で爆風に巻き込まれずに済んだが、当然相手はモロに喰らう。
「ぬぁああああああっ!」
半魚獣・フィッシャービースト:LP 3800→1900
「凄いじゃないか、黎!」
「ザマねぇなぁ! もうライフが半分切ったぞ!」
「う、うるせぇ! 『コスモクイーン』でダイレクトアタックだ!」
ふふ、こいつは焦ってるな、確実に。
『マッド・デーモン』は必ず守備表示になってしまい、その守備力は0。だからこうして自分のモンスターごと破壊してしまう『ヘイト・バスター』と組み合わせる事で更なるダメージを相手に与える戦法が有効なのだ。
悪魔族に破壊のデメリットを回避できたり、破壊された方が好都合だったりするモンスターはそこまで多くない。自分のカードの方が相手より多く墓地に送られてしまうカードはデュエリストの腕が試される。
「『くず鉄のかかし』!」
「しまった、また……!」
再び闇のエネルギー弾を弾く金属製の案山子。やー優秀だね、本当に。
また俺のターンかと思った時だった。
バギィイイイイイイイイン!
「は!?」
エネルギー弾の消滅と同時に案山子が砕け散ったのだ。一陣の旋風が後に残った土台を掻っ攫って行く。
「『サイクロン』!?」
「ハズレだァ!」
そう答える『半魚獣・フィッシャービースト』は先刻と比べて何か様子がおかしかった。
なんだ、あの黒い模様……?
「速攻魔法『邪神に渦巻く風』! このターン、モンスターの攻撃を無効化された場合、カードを1枚破壊して攻撃を無効化されたモンスターはもう1度攻撃できる!」
邪神のカード!? やはり、こいつらも何か持っているんじゃないかと薄々予想はしていたが……!
邪神に渦巻く風(オリジナル)
【速攻魔法】
自分フィールド上の攻撃が相手のカードによって無効にされたモンスター1体を指定して発動する。
相手の場のカードを1枚破壊する。
攻撃を無効にされたモンスターはこのターンもう1度バトルを行える。
「したがってもう1度攻撃! “コズミック・ノヴァ”‼」
「ぐぁああああああああああっ!」
黎:LP 4000→1100
「黎!」
「動くなァ!」
吹き飛ばされた俺に駆け寄ろうとしたフィオに、同じく様子の変化した『水陸の帝王』がグオン! と尾を振り降ろす。くっ、吹っ飛んで距離が開いている所為で助けに行けない!
「フィオオオオオッ!」
『危ない、マスター!』
それを突き飛ばして回避させたのは、光と共に現れた一人の少女だった。
青いショートカット、チアガールのような衣装。小顔だが、整っている顔立ち。そうか、この少女は……!
「助けてくれてありがとう、なんだけど……、キミは……?」
「お前の精霊だよ、フィオ。『勝利の導き手フレイヤ』の、な」
「初めまして、マスター」
ニコッ、と笑う『フレイヤ』。
「うん、よろしく!」
「『フレイヤ』、フィオを頼む」
「はい! マスターには傷一つ付けさせません!」
キュィイイイイン、と青くマーブル模様に光る結界が張られる。『水陸の帝王』はそれに噛み付いたり尾を叩きつけたりしているが、ビクともしない。やはり精霊の力は攻撃力が全てでは無いようだ。
ゴシッ、と口元の少量の血を拭う。
何故だか体の底から力が湧いてくる。これが何なのかは分からないが、今ならこの程度の奴に負ける気はしねぇ!
「続けようぜ、『フィッシャービースト』。全力で叩き潰してやる!」
「返り討ちだァ!」
to be continued