遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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STORY 1:炎の力

 ゲートから抜け出ると、周囲を見回した。

 どう見ても……

 

「人間の世界じゃあ、ねぇな……」

 

 右を見ると夜だ。爽やかな草原が広がっている。

 左を見ると昼だ。ゴツゴツした荒野が広がっている。

 なんだ、ここ?

 そう思ったが、その疑問はすぐに解けた。

 

「あれは……」

 

 デュエルモンスターズが闊歩しているのだ。

 草原に“天位の騎士”の称号を持つ『アルカナ ナイトジョーカー』がいた。

 荒野に“神に最も近い”と言われた『神獣王 バルバロス』がいた。

 

「デュエルモンスターズの精霊界ってヤツか?」

 

 仮にも現代っ子。転生モノは幾つか読んだ事がある。

 しかし精霊界から物語を始める転生者は、もしや俺が最初では……。

 

「ん…?」

 

向こうから誰かがやって来る。遠くに町が見えるが、そこからやって来たのだろうか?

誰かは着実にこちらへ来ている。俺が立っている場所は道でも何でもないので、ただの通行者という訳でも無さそうだ。

やがてその姿を捉えた。黒い大きなボディに頭頂で燃える炎。人型では無く、大型のトカゲやワニといった印象を受ける。

そいつはいつの間にか目の前まで来ていた。

 

「『ヴォルカニック・デビル』……!」

 

 攻撃力3000、オブライエンの主力モンスター。召喚条件があるが、場の炎属性モンスターを守ったり、相手モンスターの全滅が出来たりと、間違いなく炎系統の中でトップクラスの内の1体だ。

 ヴォルカニック・デビルは、俺の前まで来ると、じっと見つめてきた。心の中を見透かされている様な感じがするが、不思議と嫌では無い。

 おもむろに口を開いた。その言葉は、老練な戦士を思わせるような1つ1つに重みがあるものだった。

 

「……なるほど。お主があの者の言っておった“騎士”か」

「騎士?」

 

 ?

 騎士を名乗った覚えは無いし、そう指摘された覚えも無い。

 

「カハハ、言っておらんかったのか。お主の魂の型じゃよ」

「魂の……型?」

「うむ。人の魂は、それぞれ生き方や気質で形を変える。ワシのような長い期間鍛錬を積んだ者や、才能のある者がそれを見る事ができる」

 

 つー事は、あの神様もそれが見えていて、俺を“騎士”の魂を持つ者とでも伝えたのか。名前知ってるクセに、魂見えない奴じゃ騎士って分からねぇじゃんよ。

 

「“騎士”は守る猛者の象徴。お主は何か守る者があり、そして、強い」

「炎属性最強クラスの貴方が何を……」

 

 こいつを相手取ったら勝率は薄い。魔法(マジック)(トラップ)を使うか、モンスター効果で対処するのが正しい方法だろう。

 こすっからいけど。

 

「何、力だけが強さでは無い。心に決意や覚悟が無ければ、その強さはハリボテじゃよ」

「『ヴォルカニック・デビル』……」

 

 “デビル”と名は付くが、こいつ凄く良い奴だ。

 

「強さを誤解したり、囚われたりする者は身を滅ぼす。そういう者は魂の型は“戦車”や“愚者”だったりする。なに、“騎士”のお主ならば無意識であっても履き違える事はあるまい」

「心強いです」

「ワシは老いてなお、炎の民を指揮する立場にある。しかして、その力は必然、強力となる」

 

 どうやら炎属性モンスターのリーダーみたいなものらしい。

 

「そう、自分で言うのも何じゃが、ワシは強者の部類に入る。しかし、そのワシですらお主という救世主に頼らざるを得ん」

 

 世知辛いのぉ、とヴォルカニック・デビルは切なさそうに笑った。

 

「炎の民を代表して頼む。どうか、この精霊の世界を、マスターの住む人間の世界を、救って頂けないか?」

 

 そんなの、答えは決まっている。

 このヒトが強いって事ぐらい、一目見て、そのオーラで分かった。それなのに俺に頼らなくてはならない状況。本当は自分で手を打ちたいのだろう。悔しさの溢れる決断だったに違いない。

 そして、俺はそんなヒトを見捨てられるほど、人間を捨ててはいない。

 

「もちろん、引き受けましょう」

「それは、ありがたい。感謝する……」

 

 さて、と言ってヴォルカニック・デビルは懐(多分)から何かを取り出した。

 赤い光を放つ、水晶玉の様に見える。

 

「これは……?」

「炎の力の結晶じゃ。お主の戦い、デュエルに役立つじゃろう」

 

 結晶は占いとかで使われるヤツが強い赤い光を放っていると考えてくれればいい。

 

「受け取れ。お主の思いが力に変わる」

 

 言われるがままに俺は結晶を手に取った。

 温かい力が掌から感じられた。勇気が溢れて来る気がする。

 

「名をもって宣誓せよ。戦いに臨む決意が、その結晶を武器へと変える……」

 

 名。俺は今ほどこの名字に感謝した事は無かった。きっとファーストネームだけだったら、拒まれるに違いない。

 すぅ、と息を吸う。煩くなく、大きな声で叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が名、遊馬崎(ゆまさき)(れい)! 今ここにこの身をもって、世界の平和を守り、巨悪を打ち倒す為に戦う事を誓う!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結晶は赤い光となって消え、代わりに1組のデッキがそこにあった。

 

「結晶が、デッキに……」

「それがお主の武器じゃな。“騎士”は武器をもって戦に臨む」

 

 パラパラとカードを確認する。OCGどころかアニメにも漫画にも出てきていないカードばかりだ。

これが、炎の力が具象化したカードという訳か……。

 

「ありがとうございます、『ヴォルカニック・デビル』」

「なに、礼を言うのはこちらじゃ。無関係のお主を無関係な世界を守らせる為に駆り立てた。拒まれても文句は言えんのにのぅ」

 

 それから『ヴォルカニック・デビル』は淡い赤色のゲートを出現させた。ここから原作、もとい人間の世界へ行けるらしい。

 別れ際に『ヴォルカニック・デビル』は言った。

 

「結晶を守る者は後7人いるという。いずれまた、こちらに来る時が来る。その時は結晶に念じるが良い。ゲートが開く」

「また来る時、か。そうだね、遊びに来る事もきっとあるだろうし、お別れの言葉は言わねぇ。じゃ、お元気で!」

 

 軽く右手を挙げ、『ヴォルカニック・デビル』に別れを告げ、ゲートをくぐった。

 

 さぁ、目指すは人間世界! どの辺りから介入するのか、楽しみだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何よりも、アイツを見つける為にも、強くならなくちゃいけないな。

 

 

to be continued

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