遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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黎・フィオ「「なーにかな、なーにかな! 今回はこれ!」」



金華猫
スピリット・効果モンスター
星1/闇属性/獣族/攻 400/守 200
このカードは特殊召喚できない。
(1):このカードが召喚・リバースした時、自分の墓地のレベル1モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは除外される。
(2):このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。
このカードを持ち主の手札に戻す。



フィオ「レベル1のスピリットモンスターだね。墓地からレベル1のモンスターを蘇生できるけど、実質ターンの終わりに除外されちゃうんだね」

黎「効果は無効にならないから、使い切りで墓地のモンスターを使い回す事ができる。相手モンスターと交換しても良いぞ」


STORY24:SALは間違いでSLAが正しい

SIDE:ももえ

 

 

 

 あ、皆さん、こんにちは。

 デュエルアカデミア女子オベリスクブルー1年生、浜松ももえですわ。

 私がナレーションのようですね。はい、与えられた仕事ですもの。しっかりやりますわ。

 

 月一試験(結果は聞かないで下さい)から数日が経過した先日の事です。万丈目さんが三沢さんと退学を賭けてデュエルを行いましたわ。結果は三沢さんの勝利。『ウォータードラゴン』の一撃で万丈目さんの残りライフを一息で削りきったあれは今思い出しても背筋が痺れますわ。ああいうのを“バニッシャー”と言うのでしょうね(え、違うのですか? “フィニッシャー”? それは失礼致しました)。

 そして学園最強になるまでイエローで居続けるという理由で、ブルーへの昇格を蹴ってしまわれました。恐らくカイザー様が認めたというデュエリスト、遊城 十代さんが次のターゲットなのでしょう。

 頑張って下さいまし、応援していますわ!

 

 そしてその翌日、敗れた万丈目さんの姿がどこを探しても見えないのです。まさか本当に退学になり、この島を去ってしまわれたのでしょうか……?

 事の真相を確かめるべく、明日香様、ジュンコさん、フィオさんと共に外に出たのですわ。

 

 そして今、正門からこっそりと抜け出して……。

 ……、どうして壁の下の方に空いている穴から声がしてますの?

 あれは……?

 

「げ、明日香!? それにジュンコにももえにフィオまで!?」

 

 あらら、噂(?)をすれば何とやら。2ヶ月前に偶然(・・)にも明日香様に勝利した遊城さんではありませんか。後ろにいらっしゃるのは以前の覗き事件の犯人さんと、お二人の同室の……、どちら様でしたっけ? お名前を伺った覚えさえ無いような……?

 

「ヒドいっす!」

「酷いんだな!」

「「「?」」」

 

 地の文に突っ込まないで下さいな。一応これは私の心理描写なのですよ? それともテレパシーの持ち主でしたか?

 

 

 

ヒュウウウウウウウウウウウウウウゥッ、ドシィィイイイイイイイン!

 

 

 

「きゃっ!」

「うわっ!」

 

 何事ですか!? 何か上から降って来たような……!?

 

「考える事は、皆同じか」

「全くだ」

 

 あらら、またもや噂をすれば、ですわ。

 

「黎!」

「三沢くんも!」

「よう、サボタージュか?」

「キミ達も万丈目の行方が気になるんだね?」

 

 今度は真上からですわね。まさかそんな所から参上とは思いもよりませんでした。

 件の三沢さんと、心優しい化物とブルー女子の中で意外と評判の遊馬崎 黎さんですわ。人間の範疇から外れているとは聞きましたが、まさかあの窓の開いている3階から三沢さんを背負って飛び降りを……?

 

 まあ、兎に角、皆さん目的は『万丈目さんを見つける』という共通したものなので、このまま行動を共にする事になりました。

 さて、面食いなジュンコさんの為にも、あのイケメンさんの行方を捜して差し上げないと。

 では、ナレーションの仕事はここまでです。後はどなたかお願いしますわ。

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

 オッケ、ナレーションのバトンタッチは完了だぜ、ももえ。

 こんにちは皆さん。現在俺達は行方不明となった万丈目を探す為に、皆で授業をサボタージュしているところだ。まあ、彼がどうなったかは知っているから無駄と言えば無駄なんだが、そこはまぁ、ノリで。

 ちなみに大地を連れているのは仲間外れにしたくないからだ。この間の桜戦以降、なんというかこのメンバーが固定っぽくなってしまったのだ。今度万丈目が帰って来たら加えてあげようかな?

 にしてもあいつ、俺(イレギュラー)のせいでどっかで野垂れ死んでたりしねぇよな? もしそうだったら嫌だなぁ……。

 死んでたらまあ、骨くらい拾ってやらねぇと。

 

 違う。死んでる事前提に話すな。

 

 まあ、この森のどこかで迷っている可能性もあるし。探しておくか。

 ちなみに俺は万丈目VS三沢のデュエルは見ていない。あの後精霊界からお呼び出し喰らって雷の力を受け取ったのがその日だったからだ。

 

 俺の目の前にいきなり『双頭のサンダー・ドラゴン』が出て来て、「この間は力になれなかった。せめてものお詫びに。これを受け取ってほしい」だとさ。

 だから俺の胸中には新しい、紫の結晶から生まれた雷の精霊の力が眠っているのだ。

 

 なんて回想に耽っていると、明日香が隣で大声を出した。

 

「万丈目くぅぅぅぅぅぅん! デュエルに負けたくらいで雲隠れなんて、みっともないわよぉっ!」

 

 明日香の大声が森中に響く。ふむ、俺もやるか。

 スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ、と大きく息を吸い込む。バカなら女性の胸と思うのではないかと言える程に胸部が目一杯に膨れる。

 その光景をあんぐりと口を開けていた皆は、これから想定される大声を予期し、一斉に耳を塞いだ。ありがたい。鼓膜が破れたら治すの大変だからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぅおらぁあああああっ! 万丈目ェエエエエエエッ! 出ぇて来やがれこのプライドだけのお坊ちゃんがぁあああああああああぁっ! 人の事さんざっぱらバカにしといて、自分が負けたらバカにされるの怖いかゴラァァァァァァァッ! 悔しかったら何か言ってみやがれこのクソッタレのバカガキがぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビリビリビリビリ、と周囲に声の波動が伝わる。明日香の時は何羽かの鳥が飛んで行ったが、俺の時は森の木々が揺れ、鳥の大群が飛んで行った。

 耳から手を離した皆が、怒ったように俺に詰め寄る。

 

「なんつー大声出すんスか!」

「鼓膜が破れるかと思ったぞ!」

「つーかどっかで木が倒れる音したからな!」

「もう少し加減というものを知りませんの!?」

「まだ耳がキンキンするんだけど!?」

「うぅー、音がまだ良く聞こえないんだな……!」

「貴方何かあったら責任取れるの!?」

 

 ううー、しまった。やり過ぎたか。昔から都には「加減を知らない」とよく怒られていたなぁ。

 

「あーその……、ごめんなさい」

 

 とりあえず謝っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バサリ、と背中の翼を羽ばたかせて飛翔する。精霊の力で作ったものなので、半透明だ。

 続いて息を肺一杯に吸い込み、喉で高速で振動させる。

 

「キッ、キョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョッ!」

 

 今度は大声では無いが甲高い。ほぼ鼓膜では聞き取れないだろう。

 あっちこっちに音を反響させ、全身で帰って来る音波を受け止める。コウモリやイルカが超音波でやるソナーと理屈は同じだ。森でやっても効果は薄いけどね。

 反響を全て回収すると、そのまま着地し、翼を折りたたむ。

 

「どうだった?」

「駄目だ。音波検知にも何も反応しない。熱探査にも電磁波にも引っかからないし、この森にはいないと見るべきだろうな」

 

 そう言って変身を解除する。スルリ、と胸元から黄色の宝玉と紫色の宝玉が出て来て手の中に収まった。意外と二つ同時の変身もできた。さっきは炎と風を掛け合わせられたし、今度何が良くて何がダメなのか調べておこう。

 

 と、近くの草むらからガサガサと音がした。

 

「万丈目か?」

「しまったな、この近くは探知してねぇや」

 

 背の低い草むらだが、人が隠れるにはまあ十分だろう。

 

「ほら万丈目くん、隠れてないで出て来なさい!」

「いつものあの態度はドコ行ったの? もっと堂々としなよ!」

 

 明日香に続いてフィオがそう言った瞬間だった。

 

 

 

「ウッキィ――――――――――――――――――ッ!」

『うわぁああああああああっ!?』

 

 

 

 草むらから飛び出して来たのはほんd……、もといデュエルザル。

 

「さ、サル!?」

「あー!? あのサル、デュエルディスクをつけてるぞ!」

 

 腕や頭、胴の部分などに機械を取り付けてあるが、十代の言う通り、まさしくサル、英語で言うモンキーだった。

 

「ウッキィィ――――――――――――――――――――――――ッ!」

「うわわわっ!?」

 

 突然、そのおサルくんは俺達に向かって飛びかかって来た。これはしっかりと覚えていたのでサッ、と俺は横に回避し、回し蹴りを叩き込む。

 だが、向こうもサル者、違った、()る者であり、ピョンと軽くジャンプして躱すと逆に顔面を踏み台にされてしまった。

 

「へぶっ!」

「黎!?」

 

 そのままバランスを崩した俺はもんどりうって後頭部で地面に頭突き。柔らかい草地だったので一刹那だけ頭が揺れただけで、すぐに起き上がれた。

 

「んなろぉ!」

 

 このサルが! 化物ナメんなやぁっ!

 この時点でもう原作がどうこうはすっかり頭の中から抜け落ちていた俺である。

 皆の中で暴れて人質を取ろうとしたサルに向けて俺は走り出した。

 

「喰らえ!」

 

 流石に森の中で炎はマズいので、両手を金属に変えて殴りかかった。ヒラリと躱されてしまったが、それを予期していた俺は、避けた先に髪を伸ばして動かし、捕まえる。

 

「Capturing complete !」(捉えた!)

「ウキッ!?」

「やたっ!」

「ナイスだぜ、黎!」

 

 へっ! どんなモンだい!

 が、サムズアップで十代達の方を向いてしまったのが失敗だった。

 

「ウキウキ、ウッキィ―――――――――ッ!」

「黎くん、サルが逃げてるッス!」

「へ? あ!」

 

 髪の毛を硬質化させるのを忘れていたせいで、あっという間に髪を引き千切って脱出してしまった。

 

「へ? きゃあっ!」

 

 しかもジュンコを連れて行かれた。クソッ! 完全に油断した!

 

「スマン、油断した!」

「謝るのは後! 今はジュンコを追いかけるのが先よ!」

「分かった、空から追跡する! 十代、乗ってくれ!」

 

 再び黄色の結晶を取り出して合体し、翼を生やす。背中に一人くらいなら乗せられる。

 

「お、俺!?」

「イザって時、お前は頼りになる! 早く背中に!」

「わ、分かった!」

 

 十代を背負うと翼を大きく羽ばたかせ、上空に一気に飛び立つ。木の高い所を移動しているので、見つけるのは容易だった。

 

「いた! 皆、こっちだ!」

 

 しかし、俺の言葉に答えたのは明日香達じゃ無かった。

 

「ぬぅ、あのサルを追うのじゃ!」

「はっ!」

 

 例の研究所の所長と麻酔銃を持った黒服二名だ。チッ、奴らに見つかると面倒だな。先に崖のトコまで行くか。

 

「飛ばすぜ、十代!」

「頼む!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまでだな、おサルくん」

「大人しくジュンコを返せ!」

 

 海岸に先回り、したつもりだったのだが、残念ながら僅かに遅れてしまった。海岸にせり出した一本の木の上ではジュンコが「いや~! 助けてぇー!」と叫んで暴れている。おいおい、バランス取らないと危ないぞ?

 

「レーイ!」

「十代!」

 

 少し遅れて明日香達があの研究者のジジイと一緒にやって来た。

 

「何としてもあのサルを捕らえるのじゃ!」

「はっ!」

「人質はどうしますか?」

「構わん。あの小娘ごと撃て」

 

 ジャキン! とポンプ音がして銃を構える黒服二人。

 ジュンコに構わず麻酔銃を構えるその姿には少々怒った。

 黒服が引き金に指を添えるよりも速く、俺は踵で銃を蹴り飛ばし、手に作り出した刃で麻酔銃を切断した。

 

風魔昇月華(ふうましょうげっか)!」

「うあっ!」「ぐあっ!」

 

 切断されて4つの破片になった銃を拾って一呑みにすると、ギロリ、と殺気を込めて黒服とジジイを睨みつけた。

 

「オイコラ……、一般人巻き込むたぁどういう了見だ、おい? 事と次第によっちゃぁ、テメェら……」

 

 

 

 

 生 き て 帰 さ ね ぇ ぞ ?

 

 

 

 

「ご、極道ッスか!?」

 

 おっと、やり過ぎたか。反省。

 それはまあ兎に角として黒服とジジイは殺気に脅えて動けないので、今の内に事態に収拾つけとかないと。

 

「おサルくん、俺の実力は今ので分かったハズだ。人質を帰してくれれば穏便に済ます。さあ、彼女を返してくれないか」

 

 動物は本能的に火と実力が確実に上の者を怖がる。それは自分の身を守るために必要なスキルだからだ。

 

「ひぃぃぃ…………」

「ウ、ウキキッ!」

 

 だが、あのおサルくんはその本能を捻じ伏せてまで逆らった。彼の後ろのジュンコが恐怖を感じている事から殺気を感じていないワケでは無いのだろう。

 

「………………………」

 

 成程。そう言えばこのおサルくんは仲間の元に帰りたくて研究所を脱走したんだったな。帰属意識が恐怖を乗り越えた、という訳か。

 俺は静かに殺気をしまうと、十代を呼び寄せた。

 

「十代、ちょっと」

「ん?」

「(あのおサルくんの腕にはデュエルディスクがついている。つまり、デュエルで条件を呑ませる事ができる可能性があるんだ。俺とお前で彼とデュエルをやって…………)」

 

 ボソボソと耳打ちをして作戦会議。納得したのか十代も囁き返す。

 

「(だったらさ、こういう条件はどうだ? もしあいつが俺達の内どっちかにでも勝ったらあいつは自由。二人に負けたら人質は返す)」

「(名案だ。研究所に返さないあたりが特にな。実力行使は俺に任せな)」

 

 そして二人してザッ、とおサルくんに向き合う。

 

「サル! 俺達とデュエルだ!」

「ルールはイージー。俺達二人と一回ずつデュエルを行い、俺達が二人とも勝ったら君の負け。人質は解放してもらう」

「俺か黎、どっちかがお前に負けたら、お前は自由だ!」

「そのマシンを外すオマケもつけよう!」

「ちょ、何それぇ! 意味分かんないんですけど!?」

 

 あー、悪いなジュンコ。一番平和的に解決する方法がこれなんだよ。

 

「ど、どうしますか?」

「構わん。良いデータが取れそうだ」

「データ? どういう事だ?」

 

 後ろの黒服達の会話に興味を持ったのは大地だ。

 ジジイが早速説明を開始する。

 

「知っておるか? 人間よりサルの「人間よりサルの方が、デュエルモンスターズの精霊の力を感知しやすい、という説があるんだ。恐らくあのおサルくんはその為にそこのジジイ共の研究施設に連れ去られ、精霊の力を具現化、或いは検証する為の実験動物にされていたんだろうな。

 俺達の言葉がさっきから明確に伝わっているように見えたのは恐らくその実験過程でデュエルをおサルくんがやる必要性が発生し、その為に色々とされたか機械で思考回路を補助されているんだろ」……そういう事だ」

「所長!」

「おっとスマヌ。つい喋ってしまった。まぁそれであの名前をSuper Animal Learning、略してSAL(サル)と名付けたのだ」

「まんまじゃん」

 

 翔、ナイスツッコミ。

 にしてもこのジジイ、口軽いな。

 

「ジジイ、その英文法は間違いだ。超学習動物とでも言いたいのならば、Super Learning AnimalかSuper Learned Animal、つまりSLA(スラ)とでも名付けるべきなんだ」

「ゴロを優先したのだ」

「あっそ」

 

 そろそろ恐怖で精神が参ったらしく、木の上でジュンコが「早く助けてってばぁああああああああっ!」と叫んでいる。

 喉潰すぞ? というツッコミは置いておき、十代に先を促す。

 

「十代、先頼む。あのジジイ共にシンクロやエクシーズを見せたくない。お前がやっている間にデッキを急いで調整する」

「分かった。勝てるデッキを作ってくれよ」

「無論。デュエルにおいて、俺は妥協の二文字を用いない」

 

 さあ、やろうか。猿芝居にならないお芝居を!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『捨て身の突進』の効果で、『クレイマン』の守備力分のダメージを受けてもらう!」

「ウッキィ―――――――――ッ!」

 

 

サル:LP 0

 

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」

 

 改めて十代のデュエルセンスには惚れ惚れする。原作通りだったが、最初に『スパークマン』を出し、戦闘ダメージを低く抑えた事。返しのターンで『フレイム・ウィングマン』を出し、大きなダメージを与えた事。最後に『クレイマン』の高い守備力を利用してフィニッシュした事。全てが高いレベルのタクティクスだ。

 

「お疲れ様、十代」

「やったー! アニキが勝ったッス!」

「まずは一勝なんだな」

 

 互いに視線を合わせてパチリとウィンクする。それで十分に伝わったのか、十代は後ろに下がった。

 草陰では他のサルが不安気に事態を見守っている。

 

「ウキィ……」

「ほらほらおサルくん、落ち込んでいる暇は無いぞ。まだ俺に勝つっていう道が残ってるぜ? 仲間の元に帰りたいんだろ?」

「ウ~、ウキッ!」

「その調子だ」

 

 ガシン、とディスクが展開する。デッキをセットしたら、準備完了だ。

 

「おサルくん、行くぞ!」

「ウッキィ!」

 

 

『デュエル!』

 

 

黎VSサル

LP 4000 VS LP 4000

 

 

「先攻はもらう! ドロー!」

 

 お、良いカードが来たな。

 

「手札のモンスターカードを1枚墓地に送り、『パワー・ジャイアント』を手札から特殊召喚! この時、送ったモンスターのレベル分だけコイツのレベルは下がる。『ミスティック・パイパー』のレベルは1、よってレベルは5になる!」

『ヴォォオオオオ!』

 

 

パワー・ジャイアント:ATK 2200/☆6→5

 

 

 一番槍を任せるのはカラフルなクリスタルのゴーレム。攻撃力は申し分無いし、何よりもう一手を仕込むのに最適なカードだ。

 

「続けて手札から『金華猫』を召喚!」

『フニャアアゴ!』

「このモンスターを召喚した時、墓地のレベル1モンスターを蘇生させる事ができる。蘇れ『ミスティック・パイパー』!」

『ヘッヘェ~!』

 

 

金華猫:ATK 400

ミスティック・パイパー:DEF 0

 

 

「ちょっとぉ! マジメにやってよぉ!」

「やっているよ! モンスター効果発動! このモンスター自身をリリースする事で、デッキからカードを1枚ドローする。そしてそれがレベル1のモンスターカードの場合、相手に見せる事でもう1枚だけドローできる!」

 

 ポン、と笛吹きの男が光となって消滅し、デッキトップのカードが光る。これでドローが許可されたという事なのだろう。

 ……ところでディスクじゃなくてカードが光るってどういう原理なんだろうね。

 

 

 

ミスティック・パイパー(効果モンスター)

星1

光属性/魔法使い族

ATK 0/DEF 0

このカードをリリースして発動する。

自分のデッキからカードを1枚ドローする。

この効果でドローしたカードをお互いに確認し、レベル1モンスターだった場合、自分はカードをもう1枚ドローする。

「ミスティック・パイパー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

 

「ドロー。引いたのはレベル1の『ワタポン』。したがってもう1枚ドロー!」

 

 『ミスティック・パイパー』は召喚権を失い、かつ場に残らないという少々難しいモンスター。だが、場に防御の布陣を引き、『金華猫』を使えば1ターンに1枚という強力なドローソースに化ける。

 ちなみに2枚目がレベル1のモンスターでも3枚目は引けないので注意。

 

「ドロー。そして手札に加わった『ワタポン』の効果を発動。通常ドロー以外のドローで手札に加わった時、場に特殊召喚できる!」

『ワタポン!』

 

 

 

ワタポン(効果モンスター)

星1

光属性/天使族

ATK 200/DEF 300

このカードが魔法・罠・効果モンスターの効果によって自分のデッキから手札に加わった場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 

 

 

ワタポン:DEF 300

 

 

「もう一丁! 同じレベルのモンスターが2体、俺の場にいる時『スロワースワロー』を特殊召喚!」

『ピィ!』

「自身をリリースしてモンスター効果発動! 次の俺のターン、通常ドローを2倍にする!」

 

 “ハーメルンの笛吹き”のような男の次は、綿を集めて作ったような生命体。そして最後には一瞬だけ登場した肩掛けカバンを下げた青いツバメ。

 これで陣形は整った、後は迎え撃つのみ。

 

 

 

スロワースワロー(効果モンスター)

星1

風属性/鳥獣族

ATK 100/DEF 100

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

(1):フィールドに同じレベルのモンスターが2体以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードをリリースして発動できる。

次の自分ドローフェイズの通常のドローは2枚になる。

 

 

 

「カードを伏せて、ターンを終了する。スピリットであるため『金華猫』は手札に戻る」

「成程、これで毎ターン通常召喚権をドローに変換できる寸法か。『パワー・ジャイアント』で失った手札もすぐに回復した。やはりやるな、黎」

「本来なら強力なモンスターを召喚できないデメリットになるけど、そこはさっきのように手札から特殊召喚しやすいモンスターでカバーするのね」

 

 

 

金華猫(スピリット・効果モンスター)

星1

闇属性/獣族

ATK 400/DEF 200

このカードは特殊召喚できない。

(1):このカードが召喚・リバースした時、自分の墓地のレベル1モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは除外される。

(2):このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。

このカードを持ち主の手札に戻す。

 

 

 

黎:LP 4000

手札:3枚(内1枚は『金華猫』)

フィールド

:パワー・ジャイアント(ATK 2200)、ワタポン(DEF 300)

:伏せカード1枚

 

 

 

「ウキッ! 私のターン!」

 

 さて、あのデッキはシャレなのか何なのかサルを中心に作られたものだ。多くは知らないが、一発で状況を覆せるようなカードは記憶していない。

 さあ、鬼が出るか蛇が出るか。……、猿が出るか?

 

「私は『怒れる類人猿(バーサークゴリラ)』を召喚!」

『ゴガァァァァッ!』

 

 

怒れる類人猿:ATK 2000

 

 

 荒々しいゴリラ(どう見ても教科書なんかに載っている類人猿には見えない)が飛び出したか。あいつ、カードのイラストじゃ火ぃ吐いてんだよなぁ。

 

 

 

怒れる類人猿(効果モンスター)

星4

地属性/獣族

ATK 2000/DEF 1000

このカードが表側守備表示でフィールド上に存在する場合、このカードを破壊する。

このカードのコントローラーは、このカードが攻撃可能な状態であれば必ず攻撃しなければならない。

 

 

 

「更に装備魔法『ビッグバン・シュート』を装備! これで『怒れる類人猿』は攻撃力が400アップし、更に貫通ダメージを相手に与えられる!

 まだ終わらない! 魔法カード『ダブルアタック』と『野性解放』を発動! 『怒れる類人猿』は守備力分パワーアップし、2回攻撃できるウッキー!」

「げげ!?」

 

 

ATK 2000→2400→3400

 

 

 ちょ、おま、待て待て待て!?

 いきなり貫通持ちの2回攻撃かよ!? つーか合計ダメージ4300じゃねーか!?

 

 

 

ビッグバン・シュート

【装備魔法】

装備モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。

装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

このカードがフィールド上から離れた時、装備モンスターをゲームから除外する。

 

 

 

ダブルアタック

【通常魔法】

自分の手札からモンスターカード1枚を墓地に捨てる。

捨てたモンスターよりもレベルが低いモンスター1体を自分フィールド上から選択する。

選択したモンスター1体はこのターン2回攻撃をする事ができる。

 

 

 

野性解放

【通常魔法】

フィールド上の獣族・獣戦士族モンスター1体を選択して発動できる。

選択した獣族・獣戦士族モンスターの攻撃力は、そのモンスターの守備力分アップする。

この効果を受けたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

 

 

 

「『怒れる類人猿』で『ワタポン』を攻撃!」

『ゴァアアアアアッ!』

『ワタァアアアアァァッ!?』

「続けて『パワー・ジャイアント』にも攻撃!」

『ガァアアアアアア!!』

『グォオオオオオ!?』

 

 力任せに振われる剛腕。それは『ワタポン』と『パワー・ジャイアント』を断末魔の悲鳴と共に殴り飛ばした。

 

「くっ! 罠カード『スキル・サクセサー』発動! 『パワー・ジャイアント』の攻撃力を400アップだ!」

 

 

パワー・ジャイアント:ATK 2200→2600

黎:LP 4000→900→100

 

 

「ひぃー!? しっかりしてよ、ギリギリじゃないのー!?」

「悪い、油断があった!」

 

 間一髪で強化した数値により、俺のライフは残った。場は空っぽになったけど、ギリギリセーフ。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド! この瞬間、『野性解放』の効果を受けたモンスターは破壊される!」

『ゴガアァァアア!?』

「やった、これでガラ空きッス!」

「これで直接攻撃のチャンスですわ!」

 

 グガガ、と強すぎる力を得たゴリラが突如として苦しみ、ポリゴンの欠片として爆散する。ちなみに「野性」であって「野生」じゃない点には注意。

 さて確かにチャンスに見える、だが奴の墓地には……!

 

「獣族モンスターが効果で破壊されたこの瞬間、墓地の『森の番人グリーン・バブーン』の効果発動! ライフポイントを1000支払う事で特殊召喚できる!」

「いつの間に!?」

「やはり『ダブルアタック』の時に捨てていたのはそれか!」

 

 

LP 4000→3000

ATK 2600

 

 

 

森の番人グリーン・バブーン(効果モンスター)

星7

地属性/獣族

ATK 2600/DEF 1800

(1):このカードが手札・墓地に存在し、自分フィールドの表側表示の獣族モンスターが効果で破壊され墓地へ送られた時、1000LPを払って発動できる。

このカードを特殊召喚する。

 

 

 

サル:LP 3000

手札:0枚

フィールド

:森の番人グリーン・バブーン(ATK 2600)

:伏せカード1枚

 

 

 

 砕け散ったゴリラの後から生まれたのは、棍棒を担いだ巨大な狒々。ライフコスト1000で26打点はこの時代だと脅威だな。

 やるな、おサル君。良い戦術だ。

 

「一発良いヤツ貰っちまったよ、俺のターン! 『スロワースワロー』の効果で2枚ドロー!」

 

 手札はこれで5枚、こっから挽回だ。

 

「もう1度『金華猫』を召喚! 効果で蘇れ、『ミスティック・パイパー』!」

『ミャオ!』

『ホオッ!』

 

 

ATK 400

ATK 0

 

 

「リリースして効果発動! カードを1枚ドローする! 引いたカードはレベル1の『グレイブ・スクワーマー』! よってもう1枚ドロー!」

「良し、良いぞ、順調にデッキを掘り進んでいる」

「黎の得意技、デッキを削って墓地に溜めていく戦術だな。俺も真似しようっと」

 

 おーっし、デッキの回転も順調。このまま押し込む!

 

「手札1枚を墓地に送り、『THE トリッキー』を特殊召喚! 『グレイブ・スクワーマー』を墓地へ!」

 

 

 

THE トリッキー(効果モンスター)

星5

風属性/魔法使い族

ATK 2000/DEF 1200

(1):このカードは手札を1枚捨てて、手札から特殊召喚できる。

 

 

ATK 2000

 

 

「『グリーン・バブーン』の攻撃力は2600! 『トリッキー』より高い!」

「慌てるなエテ公、俺は装備魔法『災いの装備品』を発動! これを『グリーン・バブーン』に装備し、その攻撃力を俺のモンスター1体につき600ダウンさせる!」

「ウキッ!?」

 

 

 

災いの装備品

【装備魔法】

装備モンスターの攻撃力は、自分フィールド上に存在するモンスターの数×600ポイントダウンする。

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択してこのカードを装備する事ができる。

 

 

 

森の番人グリーン・バブーン:ATK 2600→1400

 

 

 

「攻撃力が『トリッキー』を下回ったッス!」

「もう一丁! 速攻魔法『速攻召喚』発動! 手札からモンスター1体を召喚できる! 来い、『クリバンデット』!」

『バンデット!!』

「俺のモンスターが増えた事で、『グリーン・バブーン』の攻撃力は更に600ポイント下がる!」

 

 

クリバンデット:ATK 1000

森の番人グリーン・バブーン:ATK 1400→800

 

 

 いやぁ便利だねぇ『速攻召喚』。速攻魔法ってのが特に良い。

 怪しいオーラの鎧で攻撃力が下がった狒々に対し、こちらは奇術師・毛玉・妖猫の3体。勝負アリだ。

 

「バトル! まずは『トリッキー』で『グリーン・バブーン』を攻撃!」

「リバースカード、オープン! 罠カード『パワー・ウォール』! バトルダメージ100ポイントにつき1枚カードを墓地に送り、そのダメージを無効にする!」

「何だと!?」

 

 

 

パワー・ウォール(アニメ効果)

【通常罠】

自分が受ける戦闘ダメージ計算時に発動できる。

デッキの上から任意の枚数分墓地へ送り、自分が受けるダメージを墓地に送ったカードの枚数×100ポイント少なくする。

 

 

 

<墓地に送られたカード>

『アクロバットモンキー』

『DNA改造手術』

『ボルテック・コング』

『怒れる類人猿』

『サルベージ』

『スクラップ・コング』

『落とし穴』

『闘争本能』

『森の番人グリーン・バブーン』

『魂の解放』

『礫岩の霊長-コングレード』

『天使の施し』

 

 

 指の間に挟まれたナイフが投げられ、大猿が打ち倒されるも、障壁でデュエル猿のライフを削るには至らなかった。

 しまった、アニメ効果か。一気に12枚も墓地に落とさせちまったな……。というか今、ネタ枠混ざってなかった?

 

「続けて『金華猫』と『クリバンデット』でダイレクトアタック!」

「キッ!」

 

 

サル:LP 3000→2000→1600

 

 

 クッソ、墓地の『スキル・サクセサー』と合わせてこのターンで終わらせるつもりだったのに!

 仕方ない、何とか耐えるしかないか。幸いにもおサル君の手札は0枚、何とかなる筈。

 

「バトル終了。カードを1枚伏せる。そしてエンドフェイズに『金華猫』と『クリバンデット』の効果発動。まず前者は手札に戻る。そして後者は自身をリリースしてデッキからカードを5枚めくり、その中にある魔法・罠1枚を手札に加えて残りを墓地に埋葬する」

 

 一瞬で俺のモンスターは2体とも煙のように立ち消え、俺の手札の2枚に変化する。

 さて、リバースカード1枚だけで耐えられるか……?

 

 

 

クリバンデット(効果モンスター)

星3

闇属性/悪魔族

ATK 1000/DEF 700

(1):このカードが召喚に成功したターンのエンドフェイズにこのカードをリリースして発動できる。

自分のデッキの上からカードを5枚めくる。

その中から魔法・罠カード1枚を選んで手札に加える事ができる。

残りのカードは全て墓地へ送る。

 

 

 

「俺は……『ワン・フォー・ワン』を手札に加え、残りは墓地に送る。ターンエンド!」

 

 墓地に行ったカードは『ダーク・バースト』『無抵抗の真相』『ワンチャン!?』『ジェスター・コンフィ』。いやぁ酷いこって、普通に来たら事故ですわコレ。

 

 

 

黎:LP 100

手札:2枚(『金華猫』『ワン・フォー・ワン』)

フィールド

:THEトリッキー(ATK 2000)

:伏せカード1枚

 

 

 

「私のターン! 私は『強欲な壺』を発動! デッキから2枚ドロー!」

 

 ここでドローソースか、引きが良いのか俺がデッキを削らせたせいか……。

 

「『怒れる類人猿』を召喚!」

「3体目だと!?」

 

 おいおいおいおい、研究者さんよ。いくら何でもアレを3積みは無いだろ!? もっと良いカード無かったの!?

 さてどうする、残りの手札1枚でどう動く。『トリッキー』と『類人猿』の攻撃力は互角……、いや待てまさか……。

 

「行くぞ、バトル! 私は『怒れる類人猿』で『THEトリッキー』を攻撃! “アクロバット・ゴリラ”!!」

「『アクロバットモンキー』の時と言い、もっと良い技名にしてやれよ! 迎え撃て、“トリック・キリング”!!」

 

 激怒するゴリラと?面の奇術師の拳がぶつかり合い、爆炎と共に弾け飛ぶ。

 これで互いのモンスターはいなくなったが……。

 

「相撃ち狙いだったのかしら?」

「いや、恐らく奴の最後の手札は――」

「この瞬間、手札の『森の狩人イエロー・バブーン』のモンスター効果! 自分獣族モンスターが戦闘で破壊された時、墓地の獣族モンスター2体を除外し、特殊召喚できる!」

「やはりか!」

 

 

 

森の狩人イエロー・バブーン(効果モンスター)

星7

地属性/獣族

ATK 2600/DEF 1800

自分フィールド上に存在する獣族モンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に存在する獣族モンスター2体をゲームから除外する事で、このカードを手札から特殊召喚する。

 

 

 

 おサル君の墓地から『怒れる類人猿』2枚が吐き出され、代わりに召喚の光と共に弓を持った狒々が登場した。

 これはもう暫く後の時代に登場した【バブーン】の動きか……! 十代の時はデッキを掘り進められず出て来なかったんだな!?

 

 

ATK 2600

 

 

「バカな、ここに来て攻撃力2600のモンスターだと!?」

「トドメ! 『イエロー・バブーン』でダイレクトアタック!!」

「黎のライフは残り100!」

「この攻撃を受けたら終わりよ!」

「イィヤァアアアアッ!?」

 

 ギチギチと弓が引き絞られ、俺の心臓目掛けて今にも矢を放たんとする。

 良い腕だ、おサル君。こんな形じゃなければ、君ともっとデュエルを堪能したかった。だが、この俺に敗北は許されない!

 

「トラップ発動、『ガード・ブロック』! 戦闘ダメージを打ち消して1枚ドローする!」

 

 

 

ガード・ブロック

【通常罠】

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

「ふぅ、危ない危ない。それで、どうする?」

「……私はこれでターンエンド!」

 

 

 

サル:LP 1600

手札:0枚

フィールド

:森の狩人イエロー・バブーン

:魔法・罠無し

 

 

 

 間一髪でバリアを展開しダメージを消したが、状況は全く芳しくない。このデッキ【金華猫】は打点が無いから、攻撃力2600と上級モンスターには物足りない数値でも、今の俺には中々に致命的である。

 自分の手札を見る。

 

『金華猫』

『ワン・フォー・ワン』

『バトルフェーダー』

 

 当然ながら、これじゃあ勝てない。1ターン引き延ばすくらいは可能だが、ジュンコをいつまでも怖いままにするワケにもいかないだろう。勝負はこのターンのドロー次第だ。

 嗚呼、学友のピンチだというのにワクワクする。この勝敗をかけて血潮を滾らせるこの瞬間、堪らない、堪らない堪らないッ!!

 

「俺の、ターン! 三度(みたび)出番だ『金華猫』! そして『ミスティック・パイパー』!」

 

 

ATK 400

ATK 0

 

 

 またまた登場する黒い猫と笛吹きの男。

 流石に3度目は疲れたのか、どこかげんなりしてる。

 悪いね、もうちょい頑張ってくれ。

 

「『ミスティック・パイパー』の効果発動! リリースして1枚ドロー!」

 

 ……来たぜぇ!

 

「悪いがおサル君」

「ウキ?」

「俺の勝ちだ」

「キキッ!?」

 

 このデッキは打点が確かに足りない。

 足りないのなら……、用意すれば良い!

 

「このカードは、墓地の光属性モンスター1体を除外する事で、手札から特殊召喚できる! 出でよ、『暗黒竜 コラプサーペント』!」

『ジャァァ!』

 

 

ATK 1800

 

 

 

暗黒竜 コラプサーペント(特殊召喚・効果モンスター)

星4

闇属性/ドラゴン族

ATK 1800/DEF 1700

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地から光属性モンスター1体を除外した場合のみ特殊召喚できる。

この方法による「暗黒竜 コラプサーペント」の特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。

デッキから「輝白竜 ワイバースター」1体を手札に加える。

 

 

 

 墓地の『ワタポン』が吐き出され、緑眼を光らせた黒鱗のワイバーンが手札から現れる。

 これで準備完了!

 

「そしてこのカードは、自分フィールドの獣族と闇属性ドラゴン族モンスターを1体ずつリリースする事で、『融合』魔法を使わずに特殊召喚できる!」

「『融合』無しで!?」

「融合召喚だと!?」

 

 周囲が薄暗くなると同時に赤色と青色の渦が産まれ、浮かび上がったそこに黒い竜と猫が溶け合う。

 

「久遠を齎す妖猫よ、黒き冥空の竜よ! ここに一つに重なりて、新たな力を生み出さん!」

 

 さぁお披露目といこうか、とくと拝んで砕け散りやがれ!

 

「融合召喚! 出でよ、野獣の眼光りし獰猛なる龍! レベル8! 『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」。

『キュアァアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

ATK 3000

 

 

 召喚の渦から現れたのは、赤い鱗に黄色の鎧、青い毛並みを持つ大型のドラゴン。『金華猫』素材じゃちっと物足りないが、今はこれで十二分!

 勿論、こっそり『ワイバースター』をサーチしておくのは忘れない。

 ちなみに「融合召喚」とは言ったが、これ実は融合召喚扱いじゃなかったりする。

 

「ここで俺は、墓地の『スキル・サクセサー』の効果を発動。墓地からこのトラップを除外し、俺のモンスターの攻撃力をターン終了時まで800アップさせる!」

「ウキ!? 墓地から罠カード!?」

「墓地から!?」

「トラップが発動した!?」

 

 お約束サンキュー皆、そういうトコ好きだよ。

 

 

ATK 3000→3800

 

 

「う、ウキ……!?」

「バトルだ! 行け、『ビーストアイズ』! 『イエロー・バブーン』を攻撃! “ヘルダイブバースト”!」

『ガァァァァッ!』

『ゴォオオオ!?』

 

 野獣の眼光を持つ龍の吐き出した炎で黄色い狒々が焼き尽くされる。

 手軽に出せる攻撃力3000を更に底上げしたのだ、この時代にこれを防ぐ手段は無い筈だ。

 そして、これで終わりではない。

 

「ウッキィ!?」

 

 

LP 1600→400

 

 

「まだだ、まだ私のライフは残っている!」

「残らない! ここで『ビーストアイズ』の効果発動! 相手モンスターを破壊した時、融合素材に使用した獣族モンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える! 『金華猫』の攻撃力は400、そしてお前のライフもまた400!」

「って事は!」

「ジャストキルね!」

「これで終わりだ、“ビーストソウル・バーン”!!」

「ウキィイイイイイイイイイイイイ!!?」

 

 野獣の炎は狒々を焼いただけで留まらず、猫の形を取って相手に向かう。

 灼熱の炎、そして猫の魂の突撃がおサルくんを襲い、そのライフを削り切った。

 

 

LP 400→0

 

 

 

黎:WIN

サル:LOSE

 

 

 

スキル・サクセサー

【通常罠】

自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで400ポイントアップする。

また、墓地のこのカードをゲームから除外し、自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

選択した自分のモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで800ポイントアップする。

この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できず、自分のターンにのみ発動できる。

 

 

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン(融合・効果モンスター)

星8

地属性/ドラゴン族

ATK 3000/DEF 2000

ドラゴン族・闇属性モンスター+獣族モンスター

このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●自分フィールドの上記カードをリリースした場合にエクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。

(1):このカードが戦闘でモンスターを破壊した場合に発動する。

このカードの融合素材とした獣族モンスター1体の元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで俺達の2勝だ」

「さあ、ジュンコを返してもらうぜ!」

 

 俺達がそう言うと、おサルくんはトボトボと木の上に向かい、ジュンコを丁寧に地面に下ろした。パタパタパタ、とジュンコが急いでこちらに走って逃げる。

 

「ひぃん、怖かったです明日香さぁーん!」

「ああ、よしよし。もう大丈夫よ。後で2人にお礼を言いなさいね」

 

 

「さて、おサルくんちょっと」

「ウキ?」

 

 ジュンコが安全に内陸に逃げたのを確認すると、スタスタとおサルくんに近づく。装着されたマシンを軽く調べると、どういう構成なのかが大まかに分かった。

 

「ここをこうして……。ほい一丁上がり」

「ウキキ?」

 

 ガキン、と伸ばした爪を上手く機械の接合部に合わせておサルくんの体から引き剥がしてやる。そのまま放置するのも何なのでペロリと呑み込む。

 

「ほら、群れにお帰り。君はもう自由だ」

「ウキ……、ウッキ!」

 

「おい食ったぞあいつ、メカ食ったぞ」

「今更ですわ」

「僕らはもう悪食は見慣れたッス」

 

 最初は状況がよく解らなかったのか首を傾げていたが、呑み込むと嬉しそうに群れの方へと走って行った。群れの仲間も嬉しそうにハシャいでいる。

 ちなみにデュエルディスクはそのままにしておいた。お土産だ。

 

「ちょっと待ちたまえ! そのサルを逃がすというのか!」

「SALは我々の研究の成果だ! 返してもらおう!」

 

 後ろのジジイ共が煩い。面倒だがこのままではおサルくんの群れに飛び込んで乱獲しかねないので、再び殺気を纏って振り返る。

 

「あ゛? 寝呆けた事ほざいてんじゃねぇぞ、オイ?」

「ヒィッ!」

 

 武器を持ってない事を確認して殺気をしまう。それから十代の方を向き、アイコンタクトで呼吸を合わせる。

 

「だってなぁ、十代。俺達の出した条件は『こっちの2勝で人質の解放』と『あっちの1勝で自由の身』だぜ?」

「ああ。『研究所に返す』なんて一言も言ってねぇもんな」

 

 ぬぅ! と言葉に詰まるジジイ&黒服2名。は、いい気味だ。もっとちゃんと条件は確認しておかないと、保険とかで痛い目見るぜ?

 

「な、ならば群れごとで構わん! 力尽くで」

「力尽くっつーんなら、相手になるぜ……?」

 

 ベキリ、と袖捲りをした右腕が音を立てて変形する。サイズは二倍、三倍と膨らみ、指先には鋭利な爪が生えた。

 色も変える。黄色人種らしいベージュ色の肌からドス黒い赤へ。さながら悪魔とでも呼べる腕に変化した。

 

「ヌン!」

 

 ゴシャッ! と近くの岩を拳で殴って粉砕する。デモンストレーションとしてはこれで十分だろう。

 

「どうする……? 丸腰でも良いって言うんなら、止めねぇぜ……?」

「ヒ!」

「こ、怖いッス……!」

「黎の底が知れない……」

「か、解剖学でも学んでみようか……」

 

 皆が何か言っているが、気にしない。案外傷つく事を言っているケースが多々あるので、こういうのは無視するのが処世術のコツです。

 腰を抜かしたジジイ共は、慌てて後ろ向きに後ずさる。そして一人の足に当たった。

 

「な、なんじゃ!?」

『大徳寺先生!』

 

 スラリとした長身、グレーの長い髪、細長い目に「ニャー」が口癖の錬金術教師、大徳寺先生だ。

 後のアムナエルでもあり、『アームド・ドラゴンLV7』や攻撃力が倍になった『サイバー・ブレーダー』相手に勝利を収めた猛者でもある。腕や膝の上で「ニャー……」と時折眠たげに鳴く、デップリと太った愛猫ファラオがトレードマークとも言える。

 

「はい黎君、その辺にしておくのニャー。君まで悪くなってしまうのニャ?」

「む、分かりました」

 

 そう言われては仕方がない。腕を元の人間の物に戻すと、捲った袖を元に戻した。

 続いて大徳寺先生はジジイ共を見て「あなた達もですニャ」と続けた。

 

「事が公になれば、マズいのはあなた達ですニャー? 動物虐待で訴えられてしまいますよ?」

 

 そう言われて何も言い返せなかったジジイ共は、踵を返してどこかへ帰って行った。

 あいつらみたいな奴らに虐げられる動物が一匹でも多く減る事を、俺は切に願うのだった。

 

 

to be continued

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