遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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丸い卵も切りようで四角:物事は話し方一つで円満にも角が立つようにもなるという事。

フィオ「成程」

都「メモっとこ」






STORY27:丸い卵も切りようで四角

黎:LP 3500

手札:2枚

フィールド

:モンスター無し

:魔法・罠無し

 

 

 

 

プライド:LP 2950

手札:4枚

フィールド

:ゴギガ・ガガギゴ(ATK 3150)、超古深海王シーラカンス(ATK 3000)、渦潮のエディギャング(ATK 2400)、レインボーフィッシュ(ATK 2000)

:伏せカード1枚、集中豪雨地帯(フィールド魔法)

 

 

 

 

SIDE:無し

 

 

 

 黎の膝が、ガクンと崩れ落ちた。

 プライドの放った止めの言葉が、心にとてもとても深く刺さった証だ。

 

 

―――貴方は生まれて来てはいけなかったのですよ!

 

 

 もちろん黎とて転生前は21年も艱難辛苦の中で生きて来た男。存在価値が平等で無くとも、命個々には貴賎は無く、全てが無意味のものでは無いという事ぐらい知っている。

 

「俺、は……」

 

 だが、どんな強靭な人間でも、追及されたく無い事や秘めておきたい事、突かれたく無い事ぐらいある。

 黎の場合、それは義妹を死なせてしまった事だった。

 心のどこかでずっと考えていた。もしかしたら遊馬崎 都は自分が原因で死亡し、義兄(自分)の事を嫌っているのでは無いか、黎の手で救われるのを望んでいないのではないだろうか、と。

 そんな事無い、都は俺の助けを待っている筈だと、黎は幾度もそう考えて己を鼓舞し、立ち上がり、戦って来た。

 だが、プライドの言葉は正鵠を射過ぎていた。

 

「あ、ぁ…………」

 

 何人の人が自分の所為で……。

 そう考えると、黎は巨大な自責の念に押し潰されそうになった。

 実際、他人の事なんて殆ど考える余裕は無かったのだ。今を、明日を生きていくので精一杯。都を守り、自分の身を守り、それでいて他人を気遣うなどできなかった。できるのは聖者やヒーローのような、プラスの方向に(・・・・・・・)人間から(・・・・)外れている者(・・・・・・)だろう。黎や都のようにマイナスの方向に(・・・・・・・・)人間から(・・・・)外れている者(・・・・・・)には、到底不可能な話だった。

 

「うぅ……」

 

 痛い。胸が、心が、思いが。

 

 戦う理由を、目指す場所まで駆ける心を、砕かれた。

 根こそぎに。

 木端微塵に。

 一片の欠片も残さずに。

 完膚無きまでに。

 虚ろにされるまでに。

 

 そんな事を自覚し、されど誰かを気遣う事ができない自分は、どこまでも愚かだった。

 

「マズい! 今の一言で完全に黎の心が折れた!」

「レェーイ!」

 

 十代とフィオが駆け寄ろうとするが、それを明日香と大地が後ろから羽交い絞めにして押さえる。

 

「何すんだよ!」

「十代、落ち着け! 俺達が行ってどうなるんだ!」

「離してよ明日香!」

「三沢くんの言う通りよ、フィオ! あの中に突っ込むっていうの!?」

 

 黎とプライドの周りを渦巻く真っ黒な霧。姿を見通せるという事が、逆にそれが恐ろしいものだと直感させる。

 下手に吶喊したらどうなるか分かったものでは無い。

 

「(確かに、何の対抗策も無いよ、だけど……!)黎!」

「(見捨てる事なんか、できるかぁ!)気をしっかり保つんだ!」

 

 明日香も十代も大地もフィオも、そして固唾を呑んで静観している翔、隼人、ジュンコ、ももえだって駆け寄りたい。だが、それが原因で自分達が負傷してしまっては更なるショックを彼に与えてしまい、逆効果になりかねない。

 

「相棒、これ、どうにかならないか!?」

『クリィ!』

 

 パァァァァ、と茶色い毛に覆われ、背中に羽のついた『ハネクリボー』が光を発する。だが、黒い霧は全く消えない。

 

『クリクリ~……』

「くっそぉ!」

 

 十代がパートナーの『ハネクリボー』に霧を退かしてもらおうとしたが、効果が無い。自分達に打てる手は無いのだろうか。

 

「黎(くん)…………」

「遊馬崎(さん)…………」

 

 そもそも黒い霧を突破できるかどうかすら怪しいし、仮に突破できたところで、プライドが黙って見逃すとは思えない。

 無力な自分達にできるのは、ただただ見守る事だけなのだ。

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

 痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

 

 イタイ。

 

 心が痛い。

 頭がイタイ。

 

 どこもかしこも痛くて堪らない。

 

 俺の所為だったのか?

 俺が悪かったのか?

 俺は生まれて来なければ良かったのか?

 

 都。

 義兄(にい)ちゃん、どうしたらお前に償えるんだ……?

 

「サレンダーなさい」

 

 プライドが唐突に告げた。

 

「最早勝っても貴方に得る物はありません。ならば兄妹揃って大人しく死になさい。あの世で許しを請い、尚も貴方の罪に苛みなさい」

 

 それが貴方の救われる道なのです。

 

 その言葉は、宗教嫌いな俺にとって、神様嫌いな俺にとって、何故か心の奥まで滲み込んだ。

 

 自分の罪を認めて負けろ(サレンダー)、か。

 

 それが、最善の道なのかもな。

 或いは、最初から俺みたいな化物に、ヒーローの真似事(世界を救う)なんて不可能だったのかも知れない。

 全てが救われるのなら、命の1つや2つ、喜んで投げ出す。でも、俺が死んでも何も救われない。

 だからと言って、生き続けてどうなるというのか。この心を塗り潰す真っ黒な絶望に、俺はもう抗う術を持たない。抗えない。毎日を廃人として生きろというのか。

 もう希望も義妹も、何もかも失った俺に、戦い抜く事なんて、無理だ。

 俺はそっと、デッキの1番上に掌を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めんか愚か者が!」

 

 デッキトップに手をかけようとしたその瞬間、俺は背後からいきなりぶん殴られた。

 

「だっ!?」

 

 目の前がチカチカと明滅し、星が舞う。

 

「何をしみったれた事をしているのだ貴方は! 敵の術中にまんまと嵌り、(あまつさ)え自分の意思で敗北を認めようとするなんて、正気か!」

 

 殴った張本人が耳元で怒鳴る。

 

「さ、桜……」

 

 ピンクの髪に軽鎧、ポニーテールにエメラルドグリーンの瞳を持つ女性、桜だ。

 この霧の中でも動けるのか。この霧は邪神の気配の塊に近い。慣れてない奴や心身が弱い奴なら一発で体調を崩すだろう。

 

「奴の言っている事は確かに正論だ! 貴方はこれまで何人もの人に迷惑をかけ、泣かせたのだろう! それが原因で貴方達は命を落としたのかも知れない! 人間になろうとした事は悪だったのかも知れない!」

 

 一方的に怒鳴り散らす桜。だが、フッ、と優しい顔になった。

 

「だが、それがどうした?」

「え?」

「人に迷惑をかけたり、泣かせたりなんて誰でもやる事だ。例え貴方や貴方の義妹君(いもうとぎみ)が他人の排他的な考えが原因で命を落としたとしても、それは貴方の所為では無い」

 

 何より、貴方は心から人間であろうとした。

 プライドの言葉同様に、否、それ以上に、桜の優しい言葉は俺の心を打った。

 

「人間であろうとする事の何が悪い、化物が人間と同居して何が悪い? 私はカードの精霊だが、そのくらいは解る。貴方は(・・・)義妹君は(・・・・)何一つとして悪くない(・・・・・・・・・・)! 化物だから何だ、どうせならばそれを誇ってみろ!」

 

 その言葉が胸に響いた時、もう俺は桜の手を取って立ち上がっていた。

 ディスクを構え、ダン! と足を踏み鳴らす。

 

「その意気だ」

「ありがとう、桜。お陰で立ち直れた」

「何、どうという事は無い」

 

 先にデッキに戻って出番を待っている。そう言い残して、桜は消えた。

 そして俺は、憎悪と敵意の感情を持ってプライドに向き直る。

 

「プライド……!」

「っ!」

 

 言葉はいらない。ただ殺気を込めて睨みつけてやるだけだ。

 そして気迫はそのままに、皆の方を振り向く。

 

「悪いな、心配かけた!」

 

 その言葉に、皆の不安そうな顔が明るくなった。

 

「よっしゃ! 黎の復活だぜ!」

「頑張るッスよ、黎くん!」

「ここからが見せ所なんだな!」

「勝てよ、黎!」

「また一緒に学校に行こう、黎!」

「負けたら承知しないわよ!」

「頑張りなさい!」

「応援致しますわ!」

 

 そして手札から魔法カードを1枚引き抜く。

 

「手札から魔法カード『生誕の種』を発動! このカードは自分の場にモンスターが存在せず、相手の場にのみモンスターが存在する時、デッキから植物族モンスターを1体、召喚条件を無視して特殊召喚できる!」

 

 

 

 

生誕の種(オリジナル)(改訂版)

【通常魔法】

このカード名の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時に発動できる。

デッキからレベル4以下の植物族モンスター1体を選択し、召喚条件を無視して特殊召喚できる。

 

 

 

 

 デッキからガシン、と1枚の、望んだカードが吐き出され、それをモンスターゾーンに置いた。

 

「『L(リーフ)S(スピリッツ) ウォーター・バイト・ツリー』を召喚!」

『ウォオオオオオッ!』

 

 

L・S ウォーター・バイト・ツリー:ATK 1500

 

 

 地面からメキメキと光と共に巨木が現れる。太い枝が腕の代わりとなっており、何本もの根がタコの足のように蠢く。

 

「な、『F(ファイア)S(スピリッツ)』では無いのですか!」

「阿呆が! メタ組まれてると分かってて誰が使うか!」

 

 リーフ・スピリッツ。

 草木の精霊。

 つまり『椿姫ティタニアル』から貰った緑色の結晶から生まれたカード達だ。

 

「ですが、その程度の攻撃力では我がモンスター達には届きません!」

「そいつはどうかな! 『ウォーター・バイト・ツリー』で『レインボーフィッシュ』を攻撃!」

「迎え撃ちなさい、『レインボーフィッシュ』!」

「“アクアブレイク”!」「“虹突進”!」

 

 猛スピードで突撃する『レインボーフィッシュ』。自慢の牙を突き立てようとしたその瞬間、いきなり『ウォーター・バイト・ツリー』の体が倍の大きさになった。

 

 

L・S ウォーター・バイト・ツリー:ATK 1500→3000/DEF 1400→2800

 

 

「な!?」

 

 いきなり開いた攻撃力差に敵う筈も無く、『レインボーフィッシュ』は『ウォーター・バイト・ツリー』に噛み砕かれた。

 

「ば、バカな!? 一体何が!?」

 

 

プライド:LP 2950→1950

 

 

「『ウォーター・バイト・ツリー』は水属性モンスターとバトルを行う時、ダメージ計算終了時まで、攻撃力と守備力は2倍になる!」

「なんですと!?」

 

 

 

L・S ウォーター・バイト・ツリー(効果モンスター)(オリジナル)(改訂版)

星4

地属性/植物族

ATK 1500/DEF 1400

(1):このカードが水属性モンスターとバトルを行う時、攻撃力と守備力はダメージ計算終了時まで倍になり、戦闘では破壊されない。

(2):このカードが表側表示で存在する限り、相手フィールドのEXデッキから特殊召喚されたモンスターは水属性としても扱う。

 

 

 

「これが、黎の新たな力なんだね」

「くぅー、カッコイイぜ!」

 

 草木は木火土金水(もっかどこんすい)の五行において「木」の役割だ。その存在は五行相克(ごぎょうそうこく)において「土」に打ち勝ち、五行相生(ごぎょうそうしょう)において「水」から力を得る。要するに木は水に強いって事だ。

 

 

L・S ウォーター・バイト・ツリー:ATK 3000→1500/DEF 2800→1400

 

 

「1枚リバースカードをセットし、ターンエンド!」

 

 

 

 

黎:LP 3500

手札:0枚

フィールド

:L・S ウォーター・バイト・ツリー(ATK 1500)

:伏せカード1枚

 

 

 

 

 さて、と。随分人の心ん中にズカズカ土足で入ってくれたモンだ。

 

「覚悟しろよ……」

 

 テメェは俺を、怒らせた!

 

to be continued

 

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