遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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STORY29:手掛かり

SIDE:黎

 

 

 プライドとの戦いの後、俺が真っ先に取った行動は精霊界へ調べに行く事だ。どうせ人間界には大した資料なんて無いのだから、探したって無駄だろう。ならば餅は餅屋、という事で精霊界に来た。こちらなら何かあるのでは無いかと期待を込めて。

 こちらにやって来た時俺はまず1番資料のある場所を探し、それがこの『王立魔導図書館』、という訳だ。

 細かい資料を見るためには王や政府の許可が必要という事で、コンタクトの取れる主に紹介状を書いてもらったのだ。王は快く許可してくれたが、ここからが問題だった。

 書庫の奥、約1万冊の本を片端から読み漁るのは並大抵の労力ではなく、3日かけてようやく読み終えた。が、残念ながら有力な情報を得る事は出来なかった。

 

「くはー……、これじゃ『ティタニアル』や王様に会わす顔が無いってモンだぜ……」

「確かに。しかし主殿の気持ちも分かるが、見つからなかったのは貴方の所為では無い」

 

 それはそうだ。しかし手掛かりが消えるというのは思いの外メンタルに堪えるものだ。

 カラン、と炭酸水を入れたグラスの中の氷が音を立てる。

 

「はぁ……」

「調べ物は上手く行かなかったようだな」

 

 突然、後ろから威厳のある声がかけられた。

 バッ! と振り向くと、威風堂々を身に纏ったかのような巨漢がいた。

 

「え、『エンディミオン』王!?」

 

 ローブを羽織り、鎧こそ着ていないが、正しく魔導都市の王がそこにいた。

 

 

 

神聖魔導王 エンディミオン(効果モンスター)

星7

闇属性/魔法使い族

ATK 2700/DEF 1700

このカードは自分フィールド上に存在する「魔法都市エンディミオン」に乗っている魔力カウンターを6つ取り除き、自分の手札または墓地から特殊召喚する事ができる。

この方法で特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在する魔法カード1枚を手札に加える。

1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てる事で、フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

 

 

 

「王様……」

「今はただの『エンディミオン』だよ。店主殿、私にも彼と同じものを」

 

 恐縮した様子で、酒場の主が炭酸水と氷の入ったグラスを出す。これ、美味く無いんだけどな……。どっちかって言うと舌が痺れる程の炭酸と微かっつーか僅かな塩っぽい味を楽しむモンだから。本来ならジュースと組み合わせるものだし。

 が、王様はそんな事は関係無しにグビッと一口、口に含む。

 

「その様子では、ヤツの資料は見つからなかったようだな」

「すみません。見つかったのはいつの時代に封じられたとか、レリーフに彫られた見た目とか、そんなのばっかりで……」

「謝るのは寧ろ私の方だよ、“騎士”よ。すまなかった」

「何故謝りますか。何一つとして悪くは無いというのに」

「いや、私も一国の王でありながら、君に協力できるのは精々図書館の閲覧許可と、こうして酒場にやって来て君に謝る事だけ。情けないと自分でも思っている」

 

 この人は……。

 どっち向いても精霊界ってのは人徳者ばっかがリーダーやってんのな。

 

「十分過ぎますよ。こうして相談に乗ってくれると気分が楽になりますし、貴方の許可が無かったら、『コレ』は見つかりませんでしたから」

 

 そう言うと、俺は懐から1枚の紙を取り出した。

 

「これは……」

「確かに“有力な”手掛かりは手に入りませんでしたが、“一切の”手掛かりを失ったと言った覚えはありませんよ?」

 

 パサ、と王様が紙を慎重に広げる。そこには幾何学的な魔法陣が描かれていた。

 

「これは…………」

「古文書の中に挟まっていたのを書き写したものです。古文書とは違う文字なので何が書かれているのかは分かりませんが、これ」

 

 紙の右上に描かれた奇妙な生き物を指差す。

 この世のあらゆる生命体に似通った特徴を持たず、されども何故か人間に近しくも見えるその姿は、他の資料にあった邪神のレリーフ像と全く同じものだった。

 

「明日から、古今東西あらゆる言語と照らし合わせて解読を行います。今度こそ手がかりになる事を願ってますとも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――デュエルアカデミア・昼過ぎ

 

「それで、見つかったの?」

「ああ。3種類の言語を古代言語にした後に3語ずつ後ろにズラし、更に鏡文字にしたものだった」

「うわぁ陰湿」

 

 茜色に染まる廊下を、俺とフィオが歩く。

 羊皮紙を調べたところ、邪神に関しての有力な手掛かりは記載されていなかった。だがその代わりに連中の居場所を見つける為の特殊な魔術を解読できた。

 

「おジャマカントリー第2言語とヒーローズタウンのV(ヴィジョン)言語は解読が楽だったんだけど、もう滅んだ終焉世界の言語は流石に骨が折れたよ」

 

 辞書はすぐに見つかったものの、3種類の言語を混ぜた言い回しに四苦八苦してしまった。解読ができたのは開始から4日、捜索から1週間もかかってしまった。

 こっちとあっちは時間の流れがおおよそ同じらしいので、結局無断で1週間の休みになってしまい、校長先生と大徳寺先生に怒られたよ。

 

「あはは、笑えねぇ……」

「そういや夕方から遊戯さんのデッキの公開チケットの販売だっけ?」

「おう。そしてそのチケットはここに」

 

 ぬ、と懐から2枚のチケットを取り出す。

 

「え、ちょ、何で!? 何で黎が持ってるの!? 販売は夕方だよ!?」

「ああ、トメさんに譲ってもらった」

 

 今朝こちらに帰って来た俺は、校長&大徳寺先生のダブルのお説教の後、また困っていたトメさんを助ける事になった。そこでトメさんがお礼にとくれたのがこのチケットらしい。

 

「『もう2枚、こっそり発行しておくからフィオちゃんと一緒にデートしときなさい』だってさ」

「デ!?」

「デート」

「違う、聞きなおしたんじゃ無いよ! わたしと黎はそんな関係じゃ無いのに貰って来ちゃったの!?」

「うん。否定すんのも面倒だから『ありがとうございます』って言っておいた」

「うわぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!」

「そんなに嫌か……」

 

 ブンブンと抱えた頭を振りまくる茶髪少女。

 流石にショックだぞ、フィオ。

 

「い、嫌とかそんなんじゃ無くて、その……」

「?」

「う、良いよ別に! 黎のバカ!」

 

 スマンな、フィオ。残念ながら俺は鈍感な部類だ。お前が俺に抱いている感情がどんな物なのか、俺にはサッパリ解らん。声に、言葉に出して告げてくれないと、このおバカな化物くんには伝わらないのです。ゴメン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――購買前・夕方

 

 

 

SIDE:フィオ

 

 

 

「お、やってるやってる」

 

 購買部の前では、最近自信と実力をつけてきた丸藤くんがラーイエローとデュエルを行っていた。

 

「十代くん、三沢くん」「十代、大地」

「黎、フィオ!」

「お、神山くんに黎か」

 

 丁度近くにいた十代くんと三沢君に話しかける。

 事態を聞くと、どうやらチケットのラス1を賭けて二人がデュエルを行っているようだ。

 

「あのイエローくんは誰、三沢くん?」

「彼は神楽坂。クロノス先生のコピーデッキを使う」

「へぇ、あれが……」

 

 

「『古代の(アンティーク・)機械巨人(ギア・ゴーレム)』で攻撃なの~ネ! “アルティメット・パウンド”!」

「『ジェット・ロイド』の効果で、手札の『魔法の筒(マジック・シリンダー)』を発動!」

 

 

「あ、決着ついた」

 

 黒い拳の影が赤い筒の片方に吸い込まれると、もう片方の筒から神楽坂くんに向けて発射された。翔くんの勝ちだね。

 

 

 

 

ジェット・ロイド(効果モンスター)

星4

風属性/機械族

ATK 1200/DEF 1800

このカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードのコントローラーは手札から罠カードを発動する事ができる。

 

 

 

 

「アニキ~! 勝ったッスよ~!」

「お、やったじゃねぇか!」

「ナイス戦略だった。『古代の機械巨人』の効果がモンスター効果には及ばない事を上手く利用したな。百点だ」

「やった!」

 

 十代くんの為にもう1枚チケットを入手した翔くんの後で、敗北した神楽坂くんは、何か尋常ではない程に悔しがっていた。

 レッドとかイエローとか、階級では無い何かに彼は苛立ちを感じていたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「? 今から?」

「うん。十代くん達は既に行ったよ。明日香ももう行ったし、後はわたしと黎だけ」

「お前がこんなルール違反をするたぁな。良いだろう、乗った!」

 

 夜も更けた頃、わたしは黎を誘いにこっそりと寮を抜け出して彼の元へやって来た。狙いは今晩にはもう展示されている武藤遊戯さんのデッキ。デュエリストキングと名高い彼のデッキは、恐らくわたし達の物とは一線を画すだろう。正直な話、決闘者(デュエリスト)の端くれとして、明日の展示開始まで、待ちきれない。

 黎もわたしが来なかったら自分から誘いに行く予定だったらしく、すぐに賛成してくれた。

 

「(で、バカやる奴がいるんだよな)」

「?」

「いや、何でも」

 

 展示室の前で、明日香達と合流した。メンバーは十代くん達いつものメンバー。

 待ちきれないのは皆同じだったみた「マンマミ~ア~!?」い……?

 

「クロノス先生の声だ!」

「嫌な予感がする。急ぐぞ!」

 

 扉は鍵が掛かってなかったらしくすぐに開いた。奥の方では金髪おかっぱ頭の実技最高責任者であるクロノス・デ・メディチ教諭が頭を抱えていた。

 視線の先には割られた円筒のガラスケース。プレートには【デュエリストキング 武藤遊戯のデッキ・レプリカ】と書かれて…………。

 ええっ!!!?

 

「デュエリストキングのデッキが盗まれたの!?」

「まさかクロノス先生が!?」

 

 えええっ!

 確かにエリート思考でどっかイヤな人だとは思っていたけど、まさか犯罪行為に手を染めるような人だったなんて! 見損ないました!

 

(マスターも大概口悪くなりますよね)

(ほっといて)

「ち、違うの~ネ! 私はやって無いの~ネ!」

「教諭、ケースの鍵は?」

「こ、ここにある~ノ!」

 

 黎の問いかけに先生がチャラリ、とポッケから鍵を取り出す。

 

「ふーむ、じゃあ教諭がやったワケじゃあ無さそうだ」

「黎、この鍵が何の証拠になるのさ」

「分からないか? 鍵があるのにケースを壊したりはしねぇ。デッキをくすねて後は知らぬ存ぜぬで押し通し、鍵穴の周りに傷でも付けときゃあっという間に架空のピッキング犯の完成だ。ガラスを割ったらその音で勘付かれる可能性があるからな。

 だが、ガラスケースは音が鳴る事を厭わず何者かに破壊された。これは鍵が無い奴がデッキを盗む為にやる事だ」

「プラス、クロノス先生はここにいて悲鳴まで上げた。少なくとも俺が犯人ならそんな自ら犯人と名乗り出るようなマネはしない」

 

 ほへー。

 黎と三沢くんの説明はもっともだね。

 ……て事は、犯人は別にいるって事?

 

「そうなるな。このままじゃ朝にはチケット買った連中がやって来てデッキが無い事がバレる」

「そうしたら、クロノス先生は責任を問われて……」

「せ、先生はクビになっちまうって事か!?」

「ク!?」

 

 ギョッとした顔になる先生。今まで思いつかなかったの?

 

「お、お願いなの~ネ! デッキを探してほしい~ノ! ワタシ、クビはイヤなの~ネ!」

「切り捨てるのは簡単だが、そうすっと後味悪そうだな」

「俺、クロノス先生がクビなんて嫌だぜ」

「クビ云々はさて置き、デュエリストキングのデッキが盗まれた事は看過できない。協力します」

「中身も気になるしね」

 

 皆が協力する気満々なので、わたしも一応名乗り上げておこうかな。

 

「頼むの~ネ! シニョール・シニョーラ達が頼りなの~ネ!」

「教諭は一度この近くを捜索して下さい、まだ近くにいるかも知れない。俺達は外へ」

 

 かくして、盗まれたデッキの捜索が始まったのである。

 

 

to be continued

 

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