遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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都・フィオ「「なーにかな、なーにかな! 今回はこれ!」」



スピリットバリア
【永続罠】
自分フィールド上にモンスターが存在する限り、
このカードのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。



都「モンスターがいる限り、ダメージを受けなくするカードだ!」

フィオ「破壊処理はダメージの後だから、実質的にはモンスター同士のダメージを防ぐカードだね」

都「破壊耐性持ちや『アストラルバリア』とのコンボで無敵のライフになろう!」


STORY32:恋する乙女

SIDE:黎

 

 

 

「ありがとう。お陰で新しいデッキの影が見え始めた気がする」

「ああ、力になれてこちらも光栄さ」

 

 お昼を奢ってもらう事を条件に神楽坂のデッキ構築を手伝った帰り、すっかり真っ暗になった空を見上げながら俺は口笛を吹く。明るいメロディが星空の下でBGMとして響き渡る。

 

「あいつも元気そうで何よりだ。……そう言えば解析はそろそろ終わる頃かな」

 

 一週間の謹慎も、新たな可能性を前にしたあいつにはあまり堪えないようだ。

 

 一方で、魔法陣の解析を精霊界の研究者に任せっきりというのは少々申し訳ない気がするが、どうせ俺らが見てもチンプンカンプンなので、細かい事は専門の人に任せるべきだ。

 都の事を考えると焦りが募る。でも、打開策が見つかった今、以前の様に空回る程の焦りは無くなった。これは良い進歩なのだと言い聞かせつつ、俺は寮の自分の部屋の扉に手をかけた。

 

 

 ガチャ。

 

 

「へ?」

「は?」

 

 部屋の中に、人がいた。

 パチパチ、と目を瞬かせる。俺が使っている部屋は3人まで入れるが、入学した生徒の数の関係なのか一人で使っていた。要するに誰かが居る筈が無いのだ。

 

 落ち着け。こういう時、取り乱したら生き残れない事は既に学び取ったハズだ。

 まずは相手の容姿を観察。

 

 髪は黒。ただし何故か室内でも被っている帽子のせいで殆どヘアスタイルは分からない。小柄で肌の色は白。日焼けしていないというか、地で白いのだろう。

 

「えーと……」

 

 声は高い。変声期前の児童といった印象を受ける。顔立ちも幼いし、どうやら結構年下の子が俺の部屋にいるようだ。

 

 それでは改めまして。

 

「君は誰だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君もレイってのいうのか。奇遇だな」

「えーと、はい……」

 

 そうか、カイザーの追っかけの子がやって来る時期か。

 

「改めて自己紹介と行こうか。俺は遊馬崎黎。この部屋に一人で住んでいた」

「わ、ボクは早乙女 礼と申します……! あの、レイって呼んで下さい」

「はいはい。宜しくね、レイちゃん。女の子がこんなヤローばっかのトコに来るなんて珍しい事もあるモンだ」

「え!?」

 

 あ、どうして分かったのって顔だ。

 まあ、会ってからまだ十分も経ってないし、驚くのも当然かな。

 ちなみに俺は原作の正体が明かされていない段階で女の子って気が付きました。バレバレですよ。

 

「声はまだ幼い女子のモンだし、顔立ちだって女の子のモンだ。それならまだ女の子っぽい少年かとも思えるが、極めつけはこれだよ」

 

 ヒョイ、と帽子を取る。バレッタで止めた長髪が現れた。

 

「あ!」

「キミくらいの年代の男の子はここまで髪の毛を伸ばさないし、伸ばせない。キミの年代の男子は女子扱いされる事を嫌うし、伸びる速度も遅いからね。

 室内でこんな大きな帽子を取らないのはキミが頭部の何かを隠したい証拠であり、こんな膨らんだ帽子を被るって事は隠したいのは長い髪の毛って事だ。声、顔、髪の全てを統合して考えればキミが男でない事ぐらい丸分かりだよ」

 

 うう、と一切の反論を封じられて押し黙るレイちゃん。ちょっとやり過ぎたか?

 

「で、キミがここに来た目的は? 親兄弟や親戚にでも会いに来た? それともカイザー辺りを追っかけて来たのかな?」

「はぅっ!」

「図星か……。まあ定期船が出るのはもう暫く先だし、それまでこの部屋にいると良いさ」

 

 変な事はしねぇから安心しろ。そう言って俺は自分の使わないベッドに布団を敷いてあげた。

 

「どうして……」

「ん?」

「どうして初対面のボクにここまで優しくしてくれるんですか……?」

「どうしてって、んー……」

 

 まあ、都の影を重ねているってのもあるけど、やっぱ性格かな。

 

「誰かを助けるのに、その理由が『助けたいから』じゃダメなのかな?」

「ダメじゃ、ないですけど……。でもやっぱりおかしいです、秘密にしても何のメリットも無いのに……」

「メリットどうこうで動いていたら人助けは満足に出来ないよ。

 どうしても知りたいのなら、明日誰かに俺の事を聞いてみな? なんとなく分かったら、それはきっと正解だ」

 

 夜ももう遅い。彼女の成長を阻むワケにもいかんし、続きはまた明日だ。

 ああ、眠い。ここ最近夜の間中精霊界で色々と修行だの調べ物だの何だのとしていたからなぁ、まともに寝たのは何日前だっけか……?

 そんな事を考えながらベッドに入り、俺は眠りの渦の中に落ちて行った。

 あまり寝なくて良い化物の体でも、眠い時は眠いのだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE:無し

 

 

 

 翌日、レイは早速黎の事を調べてみる事にした。

 

『遊馬崎黎? ああ。あの化物か。まぁヒドい人生を歩んで来たみてぇだな』

 

『義理の妹さんをよく分からないけど悪い人達に奪われちゃったらしいわ』

 

『そーそー、しかも操られて殺し合いの相手にさせられちゃったんだよね』

 

『不幸だらけの人生だったらしくってさ、それでこの有様なんだから、同情するよ』

 

『未来人らしいよ? 未来の召喚方法とか知ってたし』

 

『ようやく義妹さんを助けられるかってなったら、悪い奴らに封じられたんだよね』

 

『うんうん、カギを持ってる人達が会えないようにされたとか何とか』

 

『とっても優しい人だよ? 困った時は相談に乗ってくれるし?』

 

『ブルーにカード取られた時、取り返してくれたんだ。お礼はいらねってさ。カッコイー!』

 

 成程、とレイは納得した。黎の義妹の存在を知った彼女は、彼がどうして自分に優しいのかを瞬時に理解した。根っからの性格が優しい上に、自分に義妹の存在を重ねているのだろう。不幸に満ちた人生を歩んだが故に、他人に優しくなれる。荒んでもおかしくないのに、自分と同じ不幸にさせたくないから何のメリットが無くとも誰かを助ける。

 

「すごい……」

 

 パソコンで彼が命を賭けたデュエルの画像を見て、レイは思わず呟いた。

 血ダルマになっても尚戦う精神力、それを支えてくれる仲間、よく分からないけど人間離れした能力と、彼は自分達とは一線を画した領域の存在のように見えた。

 彼だったら、もしかしたら…………。

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

「で、追っかけてたらレイが女の子って事を知ったと」

「ああ。もうビックリだったぜ」

 

 あのバカが……。

 

「だが十代、レイはまだ帰って来ていない。帰って来たら知らせるよ」

「サンキュ」

 

 バタン、と扉が閉まる。と後ろの天井に1番近いベッドの布団の中から二人の少女が出て来た。

 茶髪のショートカットと帽子を被った黒髪。フィオとレイだ。

 フィオにレイが女の子である事を話し、彼女が生活する上で必要なものを分けてもらっていたのだが、そこに十代がやって来た時は正直肝を冷やした。ノック無しで入って来るんだからなぁ。ベッドの上で「女の子同士の会話」とやらをしていなかったら多分見つかっていただろうな。

 

「ったく、見つかっちまったんか」

「ごめんなさい……」

「見つかったモンは仕方ないさ。親御さんは明日の定期便で帰って来るように言われたんだろ?」

「うん」

「なら十代は俺が言い包める。フィオは明日香と一緒にカイザーを呼び出してほしいんだ」

 

 計画を早く実行しないとな。どの道今日にはやる予定だったんだから、それが駆け足になった程度だ、問題無い。

 やり方はこう。まずは十代にレイについて話があると言って夕方に海岸に呼び出す。予めレイの事を口止めしておくのも忘れない。

 そしてカイザーを同じ場所に呼び出し、レイのデュエルを見て貰う。後は野となれ山となれ、カイザーの返答次第だ。勿論、乙女心をぶった斬るようなマネをしようものなら俺がぶん殴る。

 だったら時間が無いね、そう言うと、フィオは急いで部屋から出て行った。

 

「レイ、デッキを見せてみな」

「え?」

「お前さんがカイザーにアピールしたいんだったら、実力を示してやるのが一番だ。多少力になる事はできる」

 

 強い事が分かったらカイザーも惚れるかもな、その一言を放ったら素直にデッキを差し出してくれた。

 んん、やっぱり『恋する乙女』を中心にしたコントロール奪取系のデッキか。

 だが……。

 

「ど、どう?」

「レイちゃん、キミは何年生だい?」

「えと、小学5年生です……」

「11歳前後か。その年でこれだけ出来てりゃ大したモンだ。だが、残念ながらまだまだ、というのが正直な感想かな」

「そ、そんな……」

「なんつーかワガママなんだよな、このデッキは」

 

 え、とレイちゃんが面食らった顔になる。

 このデッキ、コントロールを奪う事にだけ特化し過ぎている。

 

「これだと奪ったモンスターや『恋する乙女』への戦闘ダメージですぐにライフが尽きてしまう。たった400しかない攻撃力を補えるカードが無い」

「で、でもその前に倒しちゃえば……」

「並みのデュエリスト相手ならそれで行ける。だが、お前が夕方戦う事になるだろう十代やフィオ、明日香や俺はそんなのは通じないぐらい強い」

「う……」

「カイザーにしたってそうだ。最強モンスター『サイバー・エンド・ドラゴン』は攻撃力4000に加えて貫通効果があるし、時折その攻撃力を2倍3倍に平気で上げてくる。いくら戦闘では破壊されないからって、能力値が低かったら、そんなのただの殴りたい放題の格好の的だよ」

 

 例えば戦闘破壊されないモンスターの代表格には『マシュマロン』がいる。セットされている状態で攻撃を受けたら1000ダメージを相手に与えるが、攻守は僅か300/200とかなり低い。

 ジェネックスの時は万丈目が貫通ダメージで、卒業前のデュエルでは攻撃表示のところを十代が三連続攻撃でそれぞれ相手を倒した。

 また2回まで攻撃を防げる『シールド・ウィング』もいるが、あれだってそうだ。遊星がジャックとのデュエルの時に出したが、複数回の貫通ダメージを与える為の格好の標的になってしまった。

 

「ダメージを回復するカードは何枚か入っているトコを見ると、少なくともその辺りは理解しているみたいだね」

「うん……」

「このデッキは“勝つデッキ”というよりか“『恋する乙女』活躍用のデッキ”なんだ」

 

 

 

恋する乙女(効果モンスター)(未OCGモンスター)

星2

光属性/魔法使い族

ATK 400/DEF 300

このカードはフィールド上に表側攻撃表示で存在する限り戦闘によっては破壊されない。

このカードを攻撃したモンスターに乙女カウンターを1個乗せる。

 

 

 

 年相応にまだまだアマい。そしてそれを見過ごせない俺もまたアマい。

 俺はトランクに詰め直したカードの中から2枚のカードを取り出した。

 

「これは?」

「永続罠『スピリットバリア』。モンスターが自分の場にいれば戦闘ダメージを発生させないカードだ。これなら戦闘破壊されない『恋する乙女』と組み合わせて鉄壁のライフガードになる」

 

 破壊耐性を持つモンスターの大半は攻守が低い。それを補うのがこの『スピリットバリア』だ。『恋する乙女』の自爆特攻もサポートできる優れ物であり、攻撃表示にせざるを得ないという欠点を克服できる。

 

 

 

スピリットバリア

【永続罠】

自分フィールド上にモンスターが存在する限り、このカードのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。

 

 

 

「でも、これじゃ『キューピッド・キス』の効果が使えなくなっちゃう……」

「ああ。そこでこっちの『霞の谷(ミストバレー)のファルコン』を使うんだ」

 

 

 

霞の谷のファルコン(効果モンスター)

星4

風属性/鳥獣族

ATK 2000/DEF 1200

このカードは、自分フィールド上に存在するカード1枚を手札に戻さなければ攻撃宣言をする事ができない。

 

 

 

 攻撃を行う為には自分の場のカードを1枚手札にバウンスする必要があるカードだ。これで『スピリットバリア』を自分のターンに手札に戻し、相手ターンで再び発動させる。これなら相手からのダメージを防ぎつつコントロールを奪える。

 場に残り続ける『光の護封剣』を連続使用したり、『ビッグバン・シュート』で連続除外を狙ったりと、使い方次第で非常にエグいモンスターになる。下級モンスターの中でも高い攻撃力を持つため容易くやられないというのもポイントだ。

 

「『霧の谷のファルコン』がやられた時用に『ハリケーン』と『トラップ・スタン』もあげるよ。これで、このデッキは更にパワーアップしたハズ」

「あ、ありがとうございます!」

「それから戦闘ダメージを相手に押しつける『ウォールバリア』とか、手札1枚で全ダメージを回復に変える『レインボー・ライフ』とかがあるが……、まあ後は実力と運次第だね。頑張れ!」

「うん!」

 

 細かいデッキ調整をやって十代を呼びに行こうとした所で、フィオが成功したと知らせに来てくれた。

 後はキミ次第だぜ、レイちゃん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへっ! 強いな、レイ!」

「恋する乙女は強いんだから!」

 

 

 

 

十代:600

手札:4枚

フィールド

:モンスター無し

:魔法・罠無し

 

 

 

 

レイ:LP 4500

手札:0枚

フィールド

:恋する乙女(ATK 400)、E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン(ATK 1000・乙女カウンター:1)、E・HERO スパークマン(ATK 1600・乙女カウンター:1)

:キューピッド・キス(装備魔法・『恋する乙女』に装備)、スピリットバリア(永続罠)

 

 

 

 

キューピッド・キス(未OCGカード)

【装備魔法】

乙女カウンターが乗っているモンスターを装備モンスターが攻撃し、装備モンスターのコントローラーが戦闘ダメージを受けた場合、ダメージステップ終了時に戦闘ダメージを与えたモンスターのコントロールを得る。

 

 

 

「ここまでは上々。さてさて、これで終わらないのが十代の恐ろしい所だ……」

「絶対反撃来るもんね、この後」

「そうね。と言うか、来なかったら怒るわよ、私」

 

 レイちゃんの一斉攻撃を『攻撃の無力化』で防御した十代。『ファルコン』はやられたものの、レイは魔法や罠でライフを初期値以上に回復してみせたが……。

 フィオと明日香も今後の展開が分かっているみたいだな。

 

「行くぜ、俺のターン! 俺は『E・HERO バーストレディ』を召喚!」

『ハァッ!』

 

 

E・HERO バーストレディ:ATK 1200

 

 

 紅のスーツに身を包んだ女性ヒーローが現れる。黒いマスクに金色のヘルメットをし、黒い長髪を持っている。

 

『何をしている、そんな小娘の色仕掛けに惑わされおって……! それでもヒーローか!』

『ハッ! 確かに、オレは何をしていたんだ……!』

『クソゥ! ヒーローの名が泣くぜ!』

 

「ねぇ黎、『バーストレディ』が怒ってるように見えるんだけど……」

「奇遇、俺もだ」

 

 んー、アニメ版唯一の女性ヒーローだけあるね。女としての誇りというか矜持というか、そういうのが子供に負けたのが許せないのかねぇ。

 

「女って怖い」

「女で一括りにされるとちょっと困るんだけど……」

 

 女心は一生かかっても男にゃ理解できなさそうだ。

 

「魔法カード『バースト・リターン』を発動! 自分の場に『バーストレディ』がいる時、『バーストレディ』以外のE・HEROは全て持ち主の手札に戻る!」

 

 

 

バースト・リターン

【通常魔法】

「E・HERO バーストレディ」が自分フィールド上に表側表示で存在する時のみ発動する事ができる。

フィールド上の「E・HERO バーストレディ」以外の「E・HERO」と名のついたモンスターを全て持ち主の手札に戻す。

 

 

 

 緑と黄色の光になって『フェザーマン』と『スパークマン』が十代の手札に戻る。

 あらら、こりゃ決まったな。

 

「で、でもまた『恋する乙女』で奪えば良いモン!」

「いやレイちゃん、キミの負けだ。十代はまだ切り札を出していない」

「え?」

 

 そう、それは十代の代名詞とも言えるカード。

 

「魔法カード『融合』を発動! 手札の『フェザーマン』と場の『バーストレディ』を融合! 来い! 『E・HERO フレイム・ウィングマン』!」

『はぁぁっ、てやぁっ!』

 

 

E・HERO フレイム・ウィングマン:ATK 2100

 

 

「更に『融合回収』を発動! 墓地の『フェザーマン』と『融合』を手札に加えて、もう1度『融合』! 来い、『E・HERO サンダー・ジャイアント』!」

『ぬうぅぅ、はぁっ!』

 

 

E・HERO サンダー・ジャイアント:ATK 2400

 

 

 次元の渦から飛び出す融合戦士達。鳥の片翼を持つ風と炎の魔人と、雷を司る黄色の巨体が現れる。

 手札に『クレイマン』がいたのか。相変わらずの鬼引きだ……。

 

「う、でも『スピリットバリア』があるからダメージは通らないよ!」

「そいつはどうかな! 『サンダー・ジャイアント』の効果発動! 融合召喚に成功した時、元々の攻撃力が『サンダー・ジャイアント』より低い相手モンスター1体を破壊する! “ヴェイパー・スパーク”!」

「え、ウソ、きゃぁぁぁっ!」

 

 ズガァァァァン! と『サンダー・ジャイアント』の胸部のコアから放たれた蒼い雷が悲鳴と共に『恋する乙女』を焼き尽くす。これだけ見ると悪者は完全に『サンダー・ジャイアント』だな……。

 

「モンスターが場にいなくなった事で『スピリットバリア』は効果を発揮できない! 『サンダー・ジャイアント』と『フレイム・ウィングマン』でダイレクトアタック! “ボルティック・サンダー”! “フレイム・シュート”!」

『ハァァァァァ、ハアァッ!』

『タァァァァァ、タアァッ!』

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!」

 

 

レイ:LP 4500→0

 

 

十代:WIN

レイ:LOSE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ、レイちゃん」

「黎さん、負けてしまいました……」

 

 まぁ、相手が悪かったとしか言いようが無いな。十代に勝ちたいんだったら本当に伝説級の実力とハイレベルに構築されたデッキが必要だ。彼に勝利したのは海馬氏のデッキを使う『カイバーマン』、プロのエド・フェニックス、学園最強のカイザー亮の3人ぐらい。しかも十代は、エドには再戦時に勝利を収めたし、カイザーとは引き分けた。そんな奴が相手なら戦って勝利するのはまず難しい。

 大地だって十二分に分析したというのにHEROデッキの更なる隠された戦術に敗れた。あのデッキは確かに融合モンスターを中心にしたものではあるが、それが敗れた時を想定し、融合以外の戦術だってちゃんと組み込まれている。

 俺だって正直、シンクロとエクシーズを毎ターン出して恐らくは漸く互角といった所だろう。これで二期には『ネオス』達ネオスペーシアンが、四期には実際には殆ど出てないが『ユベル』が参加する事を考えるとこいつに勝利するのは並大抵どころか一流デュエリストでも無理だろう。

 それはさておき、俺は隣で、レイちゃんには見えない位置からデュエルの勝敗を見守っていたカイザーに話しかけた。

 

「で、カイザー。どうします? 貴方を探してたった一人の女の子がこのアカデミアにまでやって来ました。学園最強以前に一人の男として何か言う事があるのでは?」

「う、む」

 

 ここで俺は僅かに、感覚の鋭い人間ぐらいにしか感じられないくらいの量の殺気を放つ。野生動物ならば感じられるだろうが、平和ボケした人間相手なら無理だ。

 カイザーくらいならギリギリ相手が怒っているくらいに感じるだろう。

 

(年下の女性にアマいな、俺は)

 

 長い事、都以外の女性とは長く深く接した事が無かったので、どうも女性との付き合い方は経験から相手優先になってしまう。今度フィオと明日香に接し方を享受してもらおう。

 

「りょ、亮サマ! ボ、ううん、私は!」

「レイ、お前の言いたい事はよく分かる。お前がここに来た事は俺の部屋に落ちていた髪留めで分かったし、遊馬崎から力とカードを借り、神山が俺をここまで呼び出した事も分かった。そして年齢を偽り年不相応な試験にまで受かった。それは並大抵な努力ではないだろう。

 だが、敢えて俺は言う。お前の気持ちを受け取る事はできない」

「そんな……!」

「カイザー、あんた……!」

「今の俺は確かに皇帝(カイザー)などと呼ばれている。だが、それはデュエルだけだ。恋愛事に関して俺は全くの素人だ。そしてデュエルでさえまだ修行中の身でもある」

 

 だからそちら側に意識を振り分ける事はできない。そう言ってカイザーは謝罪の意を込めて頭を下げた。

 む、こうも誠意を込めた謝罪をされたら怒るモンも怒れねぇな。

 だが、揚げ足取りは生憎と得意分野なんでね。

 

「亮、サマ……」

「泣くな、レイちゃん。まだチャンスは残ってるよ」

「え?」

 

 ポン、と彼女の頭に手を乗せて優しく撫でてやる。

 

「『修行中だから付き合えない』って事は『修行が終わったら君に構う事ができる』って事だよ」

「な、遊馬崎!?」

「彼がプロに行って修行を終える頃には君は大人になって、今の何倍も魅力的な女性になっているだろう。その時に改めて彼に告白したらどうかな。時間はまだまだ山のようにある、今泣いて諦めるのは早いよ」

「…………(パアッ)! はい!」

「か、勝手に話を進められた……」

「諦めるべきね、亮。好きになられた時点で貴方はもう詰んでるのよ」

 

 目元の涙を拭って輝かしい笑顔を放つレイちゃんに対し、若干青ざめた顔で落ち込むカイザー。女の子は大切にね。

 

「ところでレイはアカデミアには通えないのか?」

「文脈で察せアホ」

 

 普通に1年生の自分よりも年下だって事くらい解れ。

 

 

 

 

 

 

 

―――黎とレイの部屋・夜

 

「ごめんなさい、負けちゃいました」

 

 部屋に帰ると、レイちゃんがぺこりと頭を下げた。単独で孤島へと来るというアグレッシヴさを披露した彼女だが、やはり小学5年生だ。この辺は素直である。

 

「謝る必要は無いよ。君は最善を尽くしたし、俺はその協力をした。そもそも、十代が相手だったからね」

 

 十代が相手というのは非常にマズい対戦カードだ。まず俺でもほぼ勝てん。要するに彼女ではムリ。

 確実に勝ちたいならロックの上にそれを守るロックをかけるぐらいの事をする必要があるが、それは生前にはロックやメタを得意としていた俺でも不可能に等しい。

 

 それぞれの時代の主人公に備わっている能力は“ディスティニードロー”だ。デュエルの腕は素人同然の4代目主人公、九十九遊馬にも備わっているんだから困り物である。それに勝つ為には強い引きが回ってくるよりも早く倒すか、完全にメッタメタに構築したデッキを用意しなくてはいけない。

 

 まあ、長ったらしく話してしまったが、勝ちたいなら120%を通り越して2400%彼に勝利できるデッキが必要だと結論を下しておく。

 

「それに、折角手伝ってもらったのに、その、フラれちゃったし……。うぅ……」

 

 自分で言ってショックが戻って来たのか、レイちゃんは再び涙目になる。

 ううん、やっぱり小さな女の子だな。こういう子は、俺みたいな強さが他者とは一線を画す存在が守るべきなんだろうな。

 

「そう落ち込むな。大きくなってからまた告白しなおせば良いさ。何も相手一人につき告白のチャンスが一回限りって訳じゃないんだからさ」

 

 初恋は失恋の味、なんて言葉をふと思い出す。これも言おうかと思ったが、俺自身は色恋沙汰に目を向ける余裕が無かったのを思い出し、真実味が分からないので言うのをやめる。

 何より、この小さな少女には残酷過ぎる言葉だろうから。

 

「でも、手伝ってもらって、カードももらって、それでこの結果ってのは……、グスッ」

「はいそこまでだ。それ以上言うなら、怒るよ?」

「え?」

「何時までもデュエルの勝敗でウジウジしないの。俺は気にしないって言ってるんだから。後はキミが心の中でどうケリをつけるか、だよ」

 

 これで話はお終い、と俺はお説教を終わらせる。

 黙って俺の言葉を聞いていたレイちゃんだったが、俺の話が終るとボロボロと涙を零し始めた。

 

「黎さん……、ボク……、ううん、私……っ! デュエルに負けて……、恋にも負けて……っ! すっごく、悔しいよぉ……!」

「泣きたいなら思いっ切り泣くと好いよ。涙を流した数だけ、人は強くなれる。その為なら俺の胸くらい貸してやるさ」

 

 レイちゃんが俺の胸元に顔を埋め、声を押し殺して泣き始めた。

 やっぱり、まだ十歳ぐらいの繊細な女の子には、失恋は厳しかったかな。

 

「うぇぐ、ふられちゃったよぉ……! うぅっ! うっ! うぇあああああああああああああああああああああああああああああああん……っ! うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああんっ!」

 

 声をあげるのを我慢していた少女は、堪え切れなくなり、大声で泣き始めた。

 俺は静かに風の力で部屋に防音処理を施し、彼女が泣き止むまで付き合う事を決めた。どうせ数日は寝ないで済む体だ、明日の朝までトコトン慰めてあげよう。

 

 その夜は、月が天頂を過ぎるまで少女の涙を聞きながら俺はサラサラの黒髪の頭を撫で続けた。

 レイちゃんが泣き疲れて眠った時には既に、真夜中を過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――港・翌日

 

「じゃあ、これ。少ないけどカード。もっともっと強くなりな。君の目指す高みは遥か彼方にある。でも君の才能なら日々精進を怠らなければきっと何時かは辿り着けるハズだ」

「ありがとうございます!」

 

 彼女に関わった数名でレイちゃんの乗船を見送る。メンバーは俺、フィオ、十代、明日香、カイザー、翔、隼人だ。

 後に出て来る彼女はもっと別のデッキを使っていた筈なので、汎用性の高い『ダメージ・コンデンサー』や『月の書』、『攻撃の無力化』等十枚程を包んで餞別(?)として彼女にあげた。年下と女性には優しくがモットーです。

 

 ポォ――――――――ッ! と汽笛を鳴らして船が出港する。こちらに向けて手を振る彼女に手を振り返す。

 

「また来まーす! 待ってて下さいね、亮サマ、十代サマ、黎サマァッ!」

「「俺も!?」」

 

 知らない間に彼女とのフラグを立ててしまったようだ。

 やいのやいのと皆は港から立ち去り、後には困惑しきった俺と十代が残されたのであった。

 

 

to be continued

 

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