遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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フィオ・桜「「なーにかな、なーにかな! 今回は、これ!」」



幻層の守護者アルマデス(シンクロ・効果モンスター)
星5
光属性/悪魔族
ATK 2300/DEF 1500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。



フィオ「レベル5のSモンスターだね、バトルする時に相手のカードの発動を封じるよ」

桜「強力な封印効果だがこのカード自身に耐性は無い。幸い自分はカードを使えるのでバトル中に一方的に守る事は可能だ」

フィオ「攻撃力もちょっと低め、それを補ってこそデュエリストだよ!」


STORY40:チーム黎VS エリート軍団

 

 

──デュエルアカデミア デュエルフィールド・PM 16:54

 

 

 

SIDE:無し

 

 

 

 アカデミアのデュエルリングと言えば全ての出入り口の上に『オベリスクの巨神兵』のレリーフがある事が特徴の1つとして挙げられるだろう。これはオーナーである海馬コーポレーションの若社長、海馬瀬戸が嘗て所持していた神のカードと同じである事から、彼の好みで設置されたと推測する者は数少なくない。

 それはさて置き、アカデミアのデュエルリングは授業や行事で使用される。全校生徒全員が座れる立体型の観客席に、入場ゲートも付いている。

 ただし1度にできるのは1組分のデュエルなので、月一試験のような1度に大多数の数のデュエルが行われる場合はこのデュエルフィールドを使用するのである。

 この他、施設としては体育館、武道場、プール、温泉、グラウンド、巨大図書館、コンピュータルーム、冷暖房完備、自動ドア配置などが挙げられる。

 アカデミアは私立であるが故に、この様に施設が取り揃っているのだ。

 

 ならば何故、オシリスレッドの寮がボロ屋とまで形容される程古い建物なのか。それは海馬オーナーが『オシリスの天空竜』や赤色の事が嫌いだから、では無い。

 元々オシリスレッドとは、成績が退学の危機に瀕する程に悪い生徒が所属する物である。対し、ラーイエローは成績がそれなりに良好、オベリスクブルーは最上級の成績の者が所属する。ならばある程度はランクが低い寮でも文句は言えない。文句があるのなら成績を向上させろ、という話だ。

 ただし、レッドにもメリットが存在する。レッドに所属する生徒は出席日数に関係無く進級・卒業ができるのである。

 

 もう理解しただろうか? レッドだけが出席日数を問わない理由、それは出席しない日々を実力の研鑽に充てて欲しいという教師の願いである。

 しかし設立当初なら兎も角、現在ではその願いは届いていない。レッド生はその位に満足、或いは挫折し、向上心の一切を失ってしまったのである。結果として、レッドは永遠にレッドである、という卑屈な方程式が生まれてしまったのだ。

 

 また、ブルーやイエローが格下の寮の生徒を蔑む事の背景には“状況の力”という物が存在する。これは如何なる人でも陥ってしまう危険な力だ。

 これは大きく“権威への服従”、“非個人化”、“非人間化”の3つに分かれる。

 即ち“上(この場合は上級生や既卒生、または一部の教師)が蔑むのだから自分も蔑まなくてはいけない”という意識が生まれ、“自分だけでは無く皆やっている”と責任が分散し、“格下の寮生は自分よりも劣る存在だから蔑んでも一切問題無い”と相手の尊厳を無視する流れに身をおいてしまうのである。

 これは都合の良い言い方をすれば“場の空気を読む”である。日本人で無くとも陥るこれは“ジンバルドの実験”というスタンフォード大学で嘗て行われた実験を、または“ES”というドイツの映画を見ればその恐ろしさの末端が理解できるであろう。

 

 さて、その風潮が色濃く存在する男子ブルー。田中康彦の様に寮に関わらずに相手に接する人物はかなり少ないと言えば、その風潮が理解できるだろう。

 即ち、大多数のブルー生が威張り散らす人間だと思えば良い。

 そしてそんな彼らが威張る元となっているのがデュエルの腕。これがあるからこそ空威張りにならないで済むのだ。デュエルが世界の根幹と深く結びついているからこその理由であると言える。

 当然、そんな彼らにとってデュエルが自分達よりも強い格下の寮生とは我慢ならない存在である。だからこそ彼らは集団で強い格下の寮生を襲う。

 時に暴力で、時に禁止されているアンティで。兎に角強い格下の寮生の力を削ぎ取るように動く。

 黎の所へ乗り込んで行ったのもそれが原因である。

 彼ら曰く、「出席しないクセに強い奴らは許せない」「レッドやイエローは這い蹲っていればいい」「成り上がりでブルーになった奴は排除するべきだ」との事。中には同じブルーでも女子を蔑んでいる者までいる。寮長のクロノス教諭までこの風潮に流されかけているのだから始末が悪い。

 しかし、弱者だって何時までも弱者では無い。窮鼠猫を噛むの諺通り、一矢報いる事だって有り得る。

 そして報いる事を目的とした生徒達が、黎を中心として集まっていた。

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

「モノローグが長いぞ、作者」

「何言ってるの、黎?」

「あ、いや、何でも無いよ、フィオ」

 

 駄作者の長いモノローグに付き合っていただき、ありがとうございます。

 

 それはさて置き、ここ、デュエルフィールドとデュエルリングは夜までなら自由に使用できる場所だ。そして今、俺達はさっき殴り込んで来たガラの悪いブルー連中を迎え撃つ為にここで待機している。

 本当は俺1人でやろうと思ったんだが……、

 

「わたしも行く。黎の事をバカにされっぱなしじゃ、腹の虫が治まらない」

「彼らには礼儀というものが著しく欠如しています。風紀委員として、看過できません」

「僕だってやればできるんだ。それを証明するッス!」

「俺は友達を侮辱されてヘラヘラしてられる程、子供じゃ無いぜ」

「同じブルーとして、けじめはつけさせてもらうよ」

「思い上がったボウヤをイジめるのってゾクゾクしちゃうのよねぇ……。貴方の為にもさせて頂戴、ね?」

「私、恩を仇で返せる程薄情な人間じゃ無いよぉ? 無視もきっと仇になっちゃうからね」

「オレだって、黎には感謝しているんだな。少しはお返しさせてほしいんだな」

「別に、アンタの為じゃ無いわよ。ただ単にあいつ等がムカついたから、他意は無いんだからね!」

「えぇと、その、頑張りますっ」

 

 と、皆やる気なのです。止めるのも申し訳無いので、着いてきてもらう事にした次第である。

 ちなみに上から順にフィオ、原、翔、十代、田中、藤原、加藤、隼人、ディレ、宇佐美。義理固いな、皆。

 この他のメンバーとして明日香やジュンコ、ももえ、大地もいるし謹慎明けの神楽坂もいる。

 意外と、俺には味方が沢山いたんだな。

 都、お前が戻って来たら、きっと沢山の友達ができるぞ。もう寂しい思いをしなくても、泣かなくても済むんだ。へへ、嬉しいな。

 

「! 黎、来たよ」

「お、漸くか」

 

 入口からやって来たのは、先刻のガラの悪いブルー生を始めとした数十名のブルー。おっと、万丈目の元取り巻きもいるな。

 

「多いね」

「この機会に俺達みたいな奴を潰そうっつー魂胆なんだろうな」

 

 ギラギラした敵意が伝わって来る。もっとも、ここにいる全員そんなモン堪えてないがな。心がしっかり据わっている。俺という大将がいるからか、それとも心が結束しているからか。何れにせよ、頼もしい。

 数の全体が露わになる。こっちの人数は30人弱。あっちは50~60人くらいか。

 

「ノルマは1人につき最低1勝、仕留めた奴が次の奴を相手に。早い者勝ちだな」

「だね」

 

 1人につき2人を倒せば良いが、そこまでは求めないとも。出来る事を出来る奴がやれば良い。

 そんな俺とフィオの会話が聞こえたのか、先陣を切っていたブルー(確か高田、とか呼ばれてたな)が大声をあげて怒鳴る。

 

「随分と余裕だな、レッドの分際で!」

 

 それに対して俺は余裕の表情と声で返す。

 

「お前らに負けるとでも? 後ろにいる皆には、俺が知っている事、分かっている事の全てを叩き込んだ。中途半端な覚悟と知識のお前らが敵う相手じゃねぇよ」

 

 ギリリ、と歯軋り。歯を駄目にするからオススメはできない行為だ。

 

「テメェ! だがその余裕もここまでだ! 見ろ、この圧倒的な数を! ここのブルーはただのブルーじゃねぇ! ブルーの中でも上位に位置する58人を集めた上位ランカーズだ! レッドやイエロー、女で混成されたテメェらクズが敵う相手じゃねぇんだよ!」

「御託は結構。数で物を言わすとは粗末な思考回路ですねと言っておいてやろう。

 ついでに言えばさっきからクズだなんだと、もっと別の言葉を知らねぇのか。腕はあっても脳は無いみてぇだな」

「キッサマァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 激昂するブルー。俺はそれを軽く流しながらも、皆に注意を促す。

 

「……、仮にも連中はブルーだ。油断するな、全力で行くぞ」

「オーケー」

「うぅ、大見栄切ったけど、私なんかで大丈夫かなぁ……」

「あ、はは、僕も不安ッス……」

「大丈夫。皆のセンスは光るものがある。今まで教えて来た事、実践で試すチャンスだ」

「その通りだぜ、翔。お前は強い、一緒にタッグデュエルをした俺が保障する」

「うさみんも、ここが踏ん張り所よ」

 

 弱気の翔と宇佐美、それを励ます十代とジュンコ。チームワークは万全だ。

 激昂して正常な判断を下せない高田に代わって、別のブルーが前に出て挑発する。

 

「逃げるなら、今の内だぜ……! 今なら弱虫で済むからな! ザコで弱虫、笑えねぇな、ハハハハハハハハハ!」

「ンだと!」

「ふざけないで!」

「止せ、挑発に乗るな」

 

 明らかな挑発に乗る十代とフィオ。それを諌めるのは大地だ。

 

「熱くなるのは構わないが、度を過ぎれば正しい判断を下せずに負けるぞ」

「ぐ、悪い」

「ゴメン……」

 

 実の所、挑発に乗らないかと心配していたが、どうやら大丈夫のようだな。この人数なら全員の心が全く同じ方向へと動く事は無い。誰かが怒り狂っても別の誰かがそれを止められる。

 

「ホラホラ、どうした? 逃げるならさっさとしろよ」

「冗談だろ。大将が逃げたらチームは終わりだぜ?」

「そんな安い挑発で戦力を削りに来るとは、ナメられたものね」

「こんな所で逃げたら、度胸が無いと思われてしまいますわ。女は度胸、ですもの」

 

 相も変わらず神経を逆撫でする言い方だが、ならば冷静なメンバーで返せば良い。そうすれば怒りは収まる。

 ちなみに順に俺、明日香、ももえ。

 

「さて、好い加減この押し問答にも飽きて来たな。どうせ口じゃ勝敗を決する事は不可能。ならば、そろそろ始めようぜ?」

 

 ジャキッ、とデッキをディスクにセットする。更にディスクの起動ボタンをオンにし、ディスクのエッジがレーンにそって移動。収納されていた残りの部分が飛び出す。これで準備は完了だ。

 

「主殿、助太刀致す」

「桜、頼む。ちょいと向こう側の方が多いみたいでね」

「承知」

「わたくしもいますよー! 本気のデッキを出すまでも無さそうですが!」

「フレイ、お願い! 頑張ろうね!」

「勿論です!」

 

 桜とフレイも飛び出し、彼女専用のディスクを展開。それぞれ薄桃色と水色のディスクが第三世代のディスクの様にオープンする。周囲の人間は突然現れた彼女に驚いているようだが、味方だと分かると安心したようだ。

 さて、双方共に、もう準備は万端の様だな。

 

「図に乗りやがって……! 後悔させてやる!」

「どっちがする事になるかね? さあ、行くぞ、皆!」

『おお!』『はい!』『ええ!』『うん!』

「クソ生意気な奴らを叩き潰せぇ!」

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』

 

 こうして、後に第1次アカデミア大戦と呼ばれない大規模な衝突が始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の相手は高田と呼ばれた男だった。既にアチコチでデュエルが始まっており、皆一進一退の攻防を繰り広げている。

 

「高田、と言ったな。覚悟は良いか?」

「オシリスレッド如きが気安く名前を呼ぶんじゃねぇ! それと覚悟するのはテメェだ!」

「御高説結構。なら、始めるぞ」

「叩き潰してくれる!」

 

 

『デュエル!』

 

 

黎VS高田

LP 4000 VS LP 4000

 

 

「先攻はオレだぁ! オレのターン、ドロー! オレは『コーリング・ノヴァ』を召喚!」

 

 先手は天使族のリクルーターか。見た目としてはクリスマスなんかで飾る葉っぱの輪っか、リースに天使の羽根が生えた、とでも言えば良いだろうか。

 リクルーターをわざわざ攻撃表示で場に出す、この時代ならナメプや雑魚の戦術にも見られるが……。

 

 

コーリング・ノヴァ:ATK 1400

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

 

高田:LP 4000

手札:4枚

フィールド

:コーリング・ノヴァ(ATK 1400)

:伏せカード1枚

 

 

 

 あのモンスターは『天空の聖域』が存在していれば『パーシアス』をリクルートできたんだったな。だが、そのフィールド魔法は無い。という事は、狙いは『パーシアス』のリクルートではなさそうだ。

 

 

 

コーリング・ノヴァ(効果モンスター)

星4

光属性/天使族

ATK 1400/DEF 800

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の天使族・光属性モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

フィールド上に「天空の聖域」が表側表示で存在する場合、代わりに「天空騎士パーシアス」1体を特殊召喚する事ができる。

 

 

 

「俺のターン」

「さあ、来いよ! シンクロだろうがエクシーズだろうが叩き潰してやるぜ!」

「そうか、ならば望み通りに出してやるよ。俺は『切り込み隊長』を召喚!」

『ハッ!』

「このカードを召喚した時、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚できる。出て来い、『ゾンビキャリア』!」

『ヒッヒッヒッヒ……』

 

 

ATK:1200

ATK:400

 

 

「レベル3の『切り込み隊長』に、レベル2の『ゾンビキャリア』をチューニング!」

 

 いぶし銀な騎士が空へと跳躍し、遅れて太った死体が2つの星になる。2つの星は緑のリングに変化し、その中を通る騎士を光の柱へと変えた。

 

「我は未来を渇望せし者! 巨蟲の進行阻みし戦士、闇の正義の威を示さん! 希望が溢れる明日となれ!」

 

 

☆2+☆3=☆5

 

 

「シンクロ召喚! 破滅の浄化、『A・O・J(アーリー・オブ・ジャスティス) カタストル』!!」

『クキィヤアアアアアアアアアアアアアァッ!』

 

 

A・O・J カタストル:ATK 2200

 

 

 光の柱の中から飛び出す、白いカマキリのような機械。リクルーター相手ならこいつだ。

 

「バトル! 『カタストル』で『コーリング・ノヴァ』を攻撃! “ダーク・ポイント・レーザー”!」

「永続罠発動! 『スピリットバリア』! モンスターが場にいる限り、俺へ戦闘ダメージは通らない!」

 

 

 

スピリットバリア

【永続罠】

自分フィールド上にモンスターが存在する限り、このカードのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。

 

 

 

 真っ黒なレーザーに貫かれたリースはボロボロと黒い塵へと朽ち果てていく。余波を防ごうと結界が張られるが、結界にはエネルギーの欠片ですら届かなかった。

 本来なら戦闘ダメージの発生時にモンスターはまだ戦闘破壊されていないから『スピリットバリア』は確かに有効だが……、今回においては全くの無意味だ。

 

「更に『コーリング・ノヴァ』の効果でデッキから2体目の『コーリング・ノヴァ』を特殊召喚だ!」

 

 デッキから新しいカードを取り出した高田は、そのままそのカードをモンスターゾーンに置くが、瞬間にビー! ビー! とディスクがエラー音を鳴らした。

 

「な!?」

「『カタストル』が今やったのは効果破壊だ。戦闘破壊では無いため、『コーリング・ノヴァ』のリクルート効果は発動しない。もっとも、ダメージも無いが」

「こ、効果破壊だと!?」

「『A・O・J カタストル』は闇属性以外のモンスターとバトルを行った時、そいつをダメージ計算無しで効果破壊する。リクルーターにとっては天敵と言えるだろうな」

 

 

 

A・O・J カタストル(シンクロ・効果モンスター)

星5

闇属性/機械族

ATK 2200/DEF 1200

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードが闇属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

 

 

 

「て、テメェ!」

「どうした、シンクロを出せと言ったのはお前だぞ? 要望に応えてやったというのに、まだ何か不満があるのか?」

「ぐっ……」

「カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 

 

黎:LP 4000

手札:3枚

フィールド

:A・O・J カタストル(ATK 2200)

:伏せカード1枚

 

 

 

 出だしは上々。さて、彼はどう来るかな?

 

「オレのターン! 『天使の施し』を発動! デッキから3枚ドローし、2枚捨てる!」

 

 墓地に送られたカードは……、『残骸爆破』と『巨大ネズミ』か。

 

「ぬ……」

 

 何やら悩み始めた高田。

 時間がかかると踏んだ俺は周囲に視線を配る。

 

「行け! 『スチームロイド』で『牛鬼』を攻撃ッス!」

「フフフ、『名推理』で引いた『モイスチャー星人』のレベルは9、貴方の宣言した8より1つ高い。よって特殊召喚!」

「『ビッグコアラ』で『サイコ・ショッカー』を攻撃するんだな! 必殺“ユーカリ・ボム”!」

「リバースカード、オープン! 『メテオ・プロミネンス』! 手札2枚をコストに貴方に2000ポイントのダメージを与えます!」

 

 うん、皆大丈夫そうだ。

 

「ダハハハハ! 『メテオ・ストライク』を装備した『ゴブリン突撃部隊』で『クレイマン』を、『切り込み隊長』で『魔界の足枷』を装備した『テンペスター』を攻撃!」

「うわっ!」

「『ボマードラゴン』の効果で『サイレント・ソードマンLV7』を破壊だぁ! そして『エメラルドドラゴン』で『コマンドナイト』を攻撃!」

「キャッ!」

 

 でも無い!?

 戦いの要である十代と加藤が押されている!?

 

「くっ、強ぇ……!」

「ヤバい、かも……!」

「落ち着け!」

 

 負けそうなら、叱咤してやるのがリーダーの責任ってモンだろ。

 十代、加藤、諦めるのはまだ早いぞ!

 

「お前らのデッキを信じる心はそんなモノか!? 十代、『突撃部隊』は守備表示になる、アタックチャンスだ! 加藤、攻撃力2400ぐらい超えて見せろ! レベル5と6のボーダーラインだ!」

「……、おう!」

「うん、そうだよね!」

 

 良し、元気が戻った「余所見してるヒマがあるのか!」いけね。俺もデュエルの真っ最中だった。

 

「オレはモンスターをセットし、『太陽の書』を発動! 『魔導雑貨商人』をオープンだ!」

 

 

魔導雑貨商人:ATK 200

 

 

 表側表示になったのは4本の手に様々な商品を持ったコガネムシ。キキキ、と笑いながら高田のデッキトップに手を伸ばす。

 

「その効果でデッキから魔法か罠が出て来るまでモンスターを墓地へ送る!」

 

 デッキからカードを捲っては墓地へ送る事を繰り返す高田。

 

 

 

魔導雑貨商人(効果モンスター)

星1

光属性/昆虫族

ATK 200/DEF 700

リバース:自分のデッキを上からめくり、一番最初に出た魔法か罠カード1枚を自分の手札に加える。

それ以外のカードは墓地へ送る。

 

 

 

 順に『メタモルポット』、『キラートマト』、『軍隊竜(アーミードラゴン)』、『仮面竜(マスクドドラゴン)』、『キラートマト』、『シャインエンジェル』、『グリズリーマザー』、『魔導雑貨商人』、『ドラゴンフライ』、『ジャイアント・ウィルス』……。

 その数10枚をオーバーしている。随分とデッキの残り枚数が減ったようだ。

 

「俺が手札に加えるのは『サイクロン』! これをそのまま発動! テメェの伏せカードを破壊させて貰うぞコラ!」

 

 高田のカードにより暴風が巻き起こり、こちらの伏せたカード『次元幽閉』が除去された。

 ああ、お前もミラフォのように働かないと言うのか。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだぜ!」

 

 

 

高田:LP 4000

手札:2枚

フィールド

:魔導雑貨商人(ATK 200)

:伏せカード1枚、スピリットバリア(永続罠)

 

 

 

 奴が伏せたカードは1枚。恐らく『魔導雑貨商人』を守るか、新しいモンスターを呼び出すカードの可能性が高い。

 ならば!

 

「俺のターン! 俺は『スピード・ウォリアー』を召喚!」

『ハッ!』

 

 

スピード・ウォリアー:ATK 900

 

 

 空中に勢いよく跳び上がるのはクリーム色のアーマーを着込んだ、通称“過労死”。靴底にローラーがついているというのに、よくもまぁあんな派手にジャンプできるものだ。

 倒され、墓地に送られて尚アドバンテージに繋がりやすいこいつで、攻撃を仕掛ける!

 

「バトル! 『スピード・ウォリアー』で『魔導雑貨商人』を攻撃! 『スピード・ウォリアー』は召喚されたターンのバトルフェイズのみ元々の攻撃力が倍となる!」

 

 

スピード・ウォリアー:ATK 900→1800

 

 

「“ソニック・エッジ”!」

 

 勢いをつけたカポエラの蹴りがコガネムシの頭を捉えようとした瞬間、高田が伏せカードを開けた。

 

「速攻魔法発動! 『月の書』! 『魔導雑貨商人』にはもう一働きしてもらうぜ!」

 

 蹴りが当たる瞬間、『魔導雑貨商人』が裏側表示になる。一周させて下段の蹴りに切り替えて蹴り飛ばすが、その瞬間『魔導雑貨商人』が再び高田のデッキへと手を伸ばした。

 

「さぁて、今度は何枚墓地行きになるかなぁ? 1枚目は『素早いモモンガ』! 2枚目は……、『スピリットバリア』!? チッ!」

 

 危ない。ダブリが来てくれて助かった……。

 

 

スピード・ウォリアー:ATK 1800→900

 

 

「『カタストル』!」

『キキィッ!』

「ぐぉっ!」

 

 

高田:LP 4000→1800

 

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 

 

黎:LP 4000

手札:2枚

フィールド

:A・O・J カタストル(ATK 2200)、スピード・ウォリアー(ATK 900)

:伏せカード1枚

 

 

 

 出来れば、このターンで致命傷まで行きたかったんだがな。腐ってもブルー、そう上手くいかないか。

 

「オレのターン、『強欲な壺』を発動! カードを2枚ドロー!」

 

 2枚のカードを引く高田。引いたカードを見た瞬間、ニヤ、と笑った。

 まさか!? 確かにこれだけデッキを圧縮すれば来る可能性もあるが、このタイミングでだと!?

 

「ハハハハ! テメェはもう終わりだ! オレの勝ちはたった今確定したぁ!」

「来たか、『カオス・ネクロマンサー』!」

「その通り! 『カオス・ネクロマンサー』を召喚!」

 

 

カオス・ネクロマンサー:ATK ?

 

 

 黒いマントを羽織った闇の、否、死を司る戦士が現れる。

 ここでコイツか……!

 

「更に『死者蘇生』を発動! 墓地の『カオス・ネクロマンサー』を特殊召喚!」

 

 

カオス・ネクロマンサー:ATK ?

 

 

 もう1体来ただと!? 『強欲な壺』で引いたのはその2枚か!

 

「『カオス・ネクロマンサー』は自分の墓地のモンスターの数×300ポイント攻撃力が上がる! オレの墓地には合計で19体のモンスターがいる! よって攻撃力は……」

 

 

カオス・ネクロマンサー:ATK ? →5700

カオス・ネクロマンサー:ATK ? →5700

 

 

 

カオス・ネクロマンサー(効果モンスター)

星1

闇属性/悪魔族

ATK 0/DEF 0

このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在するモンスターカードの数×300ポイントの数値になる。

 

 

 

「攻撃力5700……!」

「終わりだな! 『カオス・ネクロマンサー』は闇属性! 『カタストル』の効果は通じねぇ! この圧倒的な攻撃力の前じゃ、テメェみてぇな化物でもゴミカスだな!」

 

 だが、と高田は前置きする。

 

「念には念だ。魔法カード『ライトニング・ボルテックス』を発動! 手札の『スピリットバリア』を墓地へと送り、お前の場のモンスターを全て破壊する!」

「そうは行かない! 速攻魔法『神秘の中華なべ』を発動! 『カタストル』を墓地へ送り、ライフを2200ポイント回復!」

「そんなモン、焼け石に水だ! 喰らいやがれ!」

 

 ズッガァアアアアアアアアアアァン! と雷が降り注ぐ。素早く『カタストル』を光に変えてライフを回復するものの、取り残された『スピード・ウォリアー』は雷に焼き払われてしまった。済まない、過労死くん……。

 

 

黎:LP 4000→6200

 

 

「ハハハ! 1体目の『カオス・ネクロマンサー』でダイレクトアタック! “デス・パレード”!」

「ぐっ!」

 

 

黎:LP 6200→500

 

 

「止めだぁ! 2体目の『カオス・ネクロマンサー』で攻撃ぃ!」

「黎!」

「遊馬崎っ!」

「クズはクズのままで、一生を終えるんだよぉ!」

 

 2体目の死の攻撃。無数のエネルギー弾が炸裂して俺のライフは……、残るんだよなぁコレが!

 

「『血涙(けつるい)のオーガ』を特殊召喚!」

『ゴガァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 

 

血涙のオーガ:ATK 0

 

 

「今更攻撃力0のモンスターが何の役に立つ!」

「そいつは『血涙のオーガ』の効果を見てから言うんだな! “ブラッディ・ペインフォース”!」

 

 

血涙のオーガ:ATK 0→5700

 

 

「何!?」

「2回目のダイレクトアタックを受ける時、手札から『血涙のオーガ』を特殊召喚できる。この時、『血涙のオーガ』の攻撃力は1回目に受けたダメージと等しくなり、相手はこのカード以外のモンスターと戦闘を行えない!」

 

 

 

血涙のオーガ(効果モンスター)

星4

闇属性/悪魔族

ATK 0/DEF 0

相手ターンに1度のバトルフェイズ中に2回目の直接攻撃が宣言された時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。

この効果で特殊召喚に成功した時、このカードの攻撃力・守備力はこのターンに1回目の直接攻撃を行った、フィールド上に表側表示で存在するモンスターと同じ数値になる。

このターン、この効果で特殊召喚したこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手はこのカード以外のモンスターを攻撃対象に選択する事はできない。

 

 

 

「だ、だったらそいつに攻撃だ!」

 

 血の涙を流す鬼が、闇の戦士に殴りかかる。無数のエネルギー弾を浴びつつも強力な拳が突き刺さり、闇の戦士は倒れる。同時に、蓄積したダメージに耐え切れずに血の涙を流す鬼も倒れた。

 

「ぐ、この……!」

「ありがとう、『血涙のオーガ』。助かった」

「く、だが、墓地のモンスターが増えた事で、攻撃力が更に上がる!」

 

 

カオス・ネクロマンサー:ATK 5700→6000

 

 

「ゴミカス風情が、一丁前に耐えやがって生意気なんだよ!」

「お褒めに預かり恐悦至極だ」

「チッ! リバースカードを1枚伏せて、ターンエンドだぜっ!」

 

 

 

高田:LP 1800

手札:0枚

フィールド

:カオス・ネクロマンサー(ATK 5100)

:伏せカード1枚、スピリットバリア(永続罠)

 

 

 

 あっぶねぇ。奴が欲を掻いてくれたお陰で『血涙のオーガ』の効果が逆に通ったぜ……。

 俺の残りライフは500、奴は1800、差は1300とそこまで大きくは無い。だが、ライフアドバンテージは比較的軽視されやすいため、この場合は言及しない。

 そしてハンドアドバンテージは俺が上、ボードアドバンテージは高田が上。

 今の手札は2枚、手札のカードは『簡易融合』と『マジック・ストライカー』。どちらも逆転には繋がらないとなれば、勝負は次に引くカードだ。

 どうすれば良い? 大将になった手前、負ける訳にはいかない。クソ、どうすれば……!?

 

 ……、何を迷っている? 俺は何を迷う必要がある?

 俺がすべき事は邪神を倒し、世界に今最も近い滅びを回避する事。何故、連中が滅びを齎すのかは知らない。

 そんなのはどうでも良い。奴らは、俺の家族に手を出した。戦う理由はそれで十分。

 あいつらに勝つためにも、こんなトコで立ち止まり、敗北するワケにゃあ、いかねぇな!

 ゴチャゴチャ考えるのは、カードを、最後の望みを引いてからだ!

 

「俺の、ターン!」

 

 引いたカードは……、!

 

「この勝負、俺の勝ちだ!」

「なんだと! この攻撃力6000を倒せるとでも言うのかよ!」

「そうだ、俺は手札から『マジック・ストライカー』を召喚!」

『ヤッ!』

 

 

ATK:600

 

 

「そんな雑魚モンスターに何が出来る!」

「雑魚とは酷いな、こいつは墓地の魔法カード1枚という緩いコストで特殊召喚できるしダイレクトアタックもできる。更に戦闘ダメージを俺に通さない優秀なモンスターでもあるんだ、お前より万倍マシだぜ?」

「あ゛ぁ!? このオレがそいつより劣ってるってのかよ!」

「そう言ってるつもりだが? ま、今回は効果を使わず素材にするから、お披露目は次の機会にって事で。

 続けて墓地の『ゾンビキャリア』の効果発動。手札を1枚デッキの1番上に戻し、墓地から特殊召喚できる。ただしフィールドを離れた時、ゲームから除外される」

『ア゛~』

 

 

 

ゾンビキャリア(チューナー・効果モンスター)

星2

闇属性/アンデット族

ATK 400/DEF 200

(1):このカードが墓地に存在する場合、手札を1枚デッキの一番上に戻して発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

 

 

 手札の『簡易融合』を戻し、墓地から蘇生される腐乱死体。

 これで準備は整った。

 

「さて、覚えてるよな? こいつはチューナーだ」

「またシンクロか! クドいんだよカスが!」

「そのシンクロを出せって言ったのはお前だよ!」

 

 ダブルスタンダードな奴め、社会に出てから苦労するぞそういうのは。

 

「俺はレベル3の『マジック・ストライカー』に、レベル2の『ゾンビキャリア』をチューニング!」

 

 紫のずんぐりした亡骸が2つの輪に化け、その中に杖を持った小柄な戦士が潜る。合計3つの星は光の柱となり、新たなモンスターを産み出した。

 

「始まりと終わりの狭間に生きる幻影が、姿無き悪魔となる! 希望が溢れる明日となれ!」

 

 

☆2+☆3=☆5

 

 

「シンクロ召喚! 生誕せよ、レベル5! 『幻層の守護者アルマデス』!」

『トァッ!』

 

 

ATK:2300

 

 

 現れたのは炎と氷のような幻影を携えた守護者。神々しさを感じる白い衣をまといながらも、その相貌は悪魔と呼ぶに相応しい。

 これで準備完了、後は勝つだけだ。

 チラ、と周囲を見渡す。

 

「行け、『フレイム・ウィングマン』! 『カオス・ソルジャー』を攻撃! “スカイスクレイパー・シュート”!」

「『サイバー・エンジェル-弁天-』でダイレクトアタック! “エンジェリック・ターン”!」

「『サブマリンロイド』は相手プレイヤーに直接攻撃できる! 行け、“オーシャン・デス・ミサイル”!」

「お前が攻撃したのは『デスコアラ』! リバース効果でお前の手札1枚につき400ポイントのダメージを受けてもらうんだな!」

「このスタンバイフェイズ、『黒蛇病』の効果で互いに1600ポイントのダメージです。しかし、私の場には『デス・ウォンバット』が存在しますので、ダメージを受けるのは貴方だけになりますわ! お喰らいなさい!」

「『ハーピィレディ3姉妹』で『ニュードリア』を攻撃! “トライアングル・X(エクスタシー)・スパーク”!」

「『大天使クリスティア』で『ゴブリンエリート部隊』を攻撃! “ホープ・ジャッジ・シャイニング”!」

「『巨大化』を装備した『ウォーター・ドラゴン』で『UFOタートル』を攻撃! “アクア・パニッシャー”!」

「『サイレント・ソードマンLV5』で『ハウンド・ドラゴン』を攻撃! “沈黙の剣LV5”!」

「これでお終いよ。やりなさい、『デビル・ドーザー』! 『デーモンの召喚』を攻撃!」

「『ギア・フリード』! ダイレクトアタックだ! “鉄剣斬”!」

「罠カード発動、『ファイヤー・ダーツ』! 手札が0枚の時、サイコロを3回振り、出た目の数×100ダメージを与えます! 出た目は6、5、1、よって1200ダメージです!」

「リバースカード、オープン! 『破壊輪』! オレの勝ちだぁ!」

「えと、ごめんなさい! 『超伝導恐竜(スーパーコンダクターティラノ)』で『マキシマム・シックス』を攻撃します!」

「これで僕の勝ちだ! 『六武衆-ザンジ』でダイレクトアタック!」

「『ギガプラント』で『女帝カマキリ』を攻撃! これで止めだ!」

 

『『『ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』』』

 

 

十代:LP 100

明日香:LP 1300

翔:LP 2250

隼人:LP 700

ももえ:LP 2600

ジュンコ:LP 1400

フィオ:LP 2000

大地:LP 1700

友紀:LP 500

雪乃:LP 4000

康彦:LP 900

麗華:LP 3500

神楽坂:LP 1100

彰子:LP 4000

ツァン:LP 2400

桜:LP 3000

 

 

ブルー生達:LP 0

 

 

十代・明日香・翔・隼人・ももえ・ジュンコ・フィオ・大地・友紀・雪乃・康彦・麗華・神楽坂・彰子・ツァン・桜:WIN

ブルー生達:LOSE

 

 

 良し、皆順調に勝っているみたいだな。

 教師気取りと言われた後で恐縮な感想だが、やっぱり俺が教えた生徒が勝利するのは嬉しいものだ。

 

「さて、俺もそろそろ終わらせるかな」

「ナメんな! たかが攻撃力2300ぽっちのクソカスゴミ雑魚モンスターに何が出来るってんだ!」

「本当に口悪いな、お前。ま、そんなお前の元に集ったんだから、連中の腕もお察しよ」

「てんめぇえっ!!」

 

 まさに類は何とやら、所詮お前もまたその程度ってワケだ高田。

 

「行くぞ、バトルだ! 『アルマデス』で『カオス・ネクロマンサー』を攻撃!」

「ハッ、ならこれでも喰らってな! 『魔法の筒(マジック・シリンダー)』発動だぜ! このカードは相手モンスターの攻撃を無効にして、攻撃力分のダメージを与える! くたばりなぁ!」

「『アルマデス』のモンスター効果! このカードがバトルする時、相手はカードの効果を発動できない! よって『魔法の筒』は発動できない!」

「ンだとぉ!?」

 

 

 

幻層の守護者アルマデス(シンクロ・効果モンスター)

星5

光属性/悪魔族

ATK 2300/DEF 1500

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。

 

 

 

「だ、だがそれがどうしたぁ! こっちの攻撃力は6000だ! 2300で勝てるワケがネェ!」

「本当にそう思うのなら、『カオス・ネクロマンサー』の攻撃力をよく見てみな!」

「あ!? テメェ、何寝呆けた事を―――」

 

 

カオス・ネクロマンサー:ATK 6000→400

 

 

「な、何だと!? 何しやがった、テメェ!」

 

 ニィ、と俺は笑って最後の手札のカードを示す。それは緑色の、魔法カードだ。

 

「速攻魔法『禁じられた聖杯』。エンドフェイズまでモンスター1体の攻撃力を400ポイントアップさせる代わりに、モンスター効果を無効にする。

 『カオス・ネクロマンサー』の爆発的な攻撃力は効果で得た物。ならばそれを無効にしてしまえば、後に残るのは低スペックなステータスのみって寸法だ」

 

 モンスター効果の無効化は意外と重要だ。『魔王 ハ・デス』や『ブラック・ローズ・ドラゴン』の様なこっちにとって不利になるモンスター効果は勿論の事、『神獣王バルバロス』のようなデメリットアタッカーや今回同様『カオス・ネクロマンサー』の能力を打ち消せばデュエルを有利に進められる。

 しかも今回は『アルマデス』の効果でカウンターを許さない状態にしてやったから、安心して相手の効果を潰せるってワケです。

 

 

 

禁じられた聖杯

【速攻魔法】

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は400ポイントアップし、効果は無効化される。

 

 

 

「攻撃力の差は1900ポイント。それが残り1800のお前のライフから差し引かれれば、どうなるか解るよな?」

「ぜ、ゼロ……」

 

 その通りだ。

 

「そうだよ、エリート。大正解だ! “ミラージュ・ストライク”!」

「うぎゃぁあああああああああああああああああああああっ!」

 

 

高田:LP 1800→0

 

 

黎:WIN

高田:LOSE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『スターダスト・ドラゴン』で『パンサー・ウォリアー』を、そして『レッド・デーモンズ・ドラゴン』で『魔導戦士 ブレイカー』を攻撃! 響け、“シューティング・ソニック”! 轟け、“アブソリュート・パワーフォース”!」

「ぐぁああああああああああああああっ!」

 

 

黎:LP 4000

ブルー生①:LP 450→0

ブルー生②:LP 1300→0

 

 

「『テンペスター』で『コスモ・クイーン』を攻撃! “スカイスクレイパー・テンペスト”! そして『融合解除』! 『スパークマン』、『フェザーマン』、『バブルマン』でダイレクトアタック!」

「ぎゃぁあああああああああああああっ!」

 

 

十代:LP 25

ブルー生③:LP 800→0

ブルー生④:LP 3200→0

 

黎、十代:WIN

ブルー生達:LOSE

 

 

「良し、終わり!」

「最後の1人、打ち取ったぜ!」

 

 煌めき白い光の粒を散らす衝撃波と業火の鉄拳が相手を吹き飛ばす。隣で十代もヒーローの連続攻撃で敵を打ち倒した。これで、最後のブルー生も敗北を確認。

 要するに……。

 

「俺達の、勝ちだぁ!」

「ぐ、ぅうううぅっ!」

 

 結果、58戦中13戦がノーダメージの完勝。ただ翔やももえ等が2人目のブルーとの戦いで敗北してしまった。その辺のスタミナは課題だな。

 それでも文句の付けようの無い、俺達の勝利だと言える。

 

「い、イカサマだ! こいつらイカサマしやがった!」

「何……?」

 

 悔しさのあまりか、高田の奴がそんな事をほざき始めやがった。

 それにつられて他のブルー(負け組)もそうだそうだ、と喚く。こいつら、見苦しいにも程があるぞ。

 他の皆がその負け惜しみに対して怒りで飛び出しそうな所を手で制して止め、俺が前に出る。

 

「おいおい、一体何を以てイカサマ呼ばわりするんだ。悪いが、それは敗者の言い訳であり、そんな事をする奴は自分のデッキを信じきれてない奴だ。こっちにそんな奴はいねぇよ」

「ふざけんな! そうじゃ無かったらオレ達が負ける訳がねぇだろうが! この似非デュエリスト共が! おめぇら全員アカデミアから消えやがれ!」

「また随分と酷い言い草だな。お前らが負けたのは純然たる力量不足だ。それに俺達が似非ならお前らも似非だよ、この似非エリート、略して似非ート共が」

「テ、メェ! 言わせておけば! 我らエリートを愚弄する気か!」

「第一、イカサマをしていると気付いた時点でお前らは指摘しなかった。それは何故だ?」

「ぐ、それは……」

「俺達がイカサマなんてしてなかったから、だろう?」

「う、ぐ…………、そ、そういう訳じゃ」

「遅い。すぐに反論できない時点でそれはもう言い訳だ。それに……」

 

 ジリ、と下がるブルー軍団。

 俺は殺気を強めに込めて、ドシン! と脚を踏み下ろす。

 野生動物ならこの殺気に危険を感じて逃げ出すが、本能を半ば失っている人間には危険と分かっても逃走には結びつかない。

 

「まだ何かするっつーなら、俺がリアルファイトで相手になるぜ……?」

「う、うわぁあああああああああああああああああああああぁぁっ!」

 

 その言葉で、ブルー生達は一目散に逃げ出した。これで解決だ。

 後で床に入ったヒビを修繕したのは別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ、と一息吐き、皆が解散し始めようとした頃。

 

「遊馬崎くん」

「遊馬崎さん」

「田中? 原?」

「済まなかった」

「済みませんでした」

 

 はい?

 もしかして同じブルーとして代わりに謝罪してる訳?

 

「彼らと同じブルーの人間として、謝罪する。本当に申し訳無い」

「化物扱いさせてしまい、申し訳ありません」

「アホ」

 

 ピシピシ、と軽く指で額を弾く。威力の調整を間違うと頭蓋骨にヒビが入りかねないので、その辺は細心の注意を払っている。

 

「アダッ!?」

「痛いっ!?」

「あいつらはあいつら、お前らはお前ら。代わりの謝罪なんざ何の意味も持たねぇよ。それに、半分は俺の責任だよ」

「「え?」」

 

 目を点にして聞き返す二人。

 

「俺みたいな人ならざる者が皆に物事を教えていたから、今回みたいな一件が起きた。奴らの逆恨みの原因は、俺だ。だからこそ、俺が謝るべきなんだ」

「そ、そんな事無いですよ! 遊馬崎くんの教えで私は、いえ、私達は今までよりもずっと強くなれました!」

「そうだ! 感謝こそすれ、君を恨む理由なんて無い! そうだろう、皆!」

 

 田中の呼びかけに、皆が首肯する。

 俺は、思わずそれに笑ってしまった。

 

「ありがとうな、皆。化物として、人間から外れた身として、幸いだよ」

 

 ツ、と頬を塩分を含んだ液体が流れる感触がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──レッド寮から北へ約500メートルの位置・翌日の夜PM 20:33

 

 

『本当に良い仲間を持ったな、主殿』

「ありがとう、桜」

 

 再び休学の申請を出し、俺は森の中の広場へと歩を進めた。

 魔法陣の展開は既に完了済み。護衛の1人の位置も細くしてあるし、後は踏み出せば良いだけだ。

 

 俺は、何を思って彼らに物を教えていたのだろうか。

 多分だが、ブルーに勝てる人を作るため、では無いだろう。

 

 邪推かも知れないが、誰かが俺の死んだ後に遺志を継いでくれる事を期待したのでは無いだろうか。だからこそ、自分の持っている知識を全て叩き込み、俺亡き後も戦える戦士を育成していたのではないだろうか。

 憶測の域は出ない。だが、全くの間違いでも無いハズだ。

 俺は、一体この世界で何がしたいのだろう?

 邪神を倒す事は使命だ。都を助ける事は目的だ。

 ならば果たして、俺の成し遂げたいと願う欲の対象は、何なのだろうか?

 人間として、否、生物として生きていて良いのだろうか。時にはそんな疑問ですら頭をもたげる。

 

 

【TRANSMISSION:to SLOTH】

【with MANA HIIRAGI】

 

 

 微妙にスッキリしない気分で、俺はゲートを潜るのであった。

 そんな俺の心情を察してくれたのか、桜が言葉をかけてくれる。

 

『主殿、深く考える事は時に害悪だ』

「?」

『アカデミアの生徒達は、主殿が教えを授けていた彼らは主殿の味方だ。そして主殿はまだこの世に生を授かり21年、己の身の全てを考え決めるには若すぎる』

 

 ……、そういう物なのだろうか?

 

『私はこの世に生まれて数百年経つが、自分が何をするべきであり、どうすれば良いかなど未だ解らない事の方が多い。

 それに、人間の世界に居場所が無くなったら精霊界にある私の家に来ると良い』

 

 歓迎するぞ? と桜は笑った。

 ふ、ありがとな。お陰で元気が出たよ。

 

『私の言いたい事は、伝わったか?』

「ああ。ゴチャゴチャ考えるのは後回しだ。今は目の前にある事をやるし、居場所だったら暫くは考える必要は無いしな。何をしたいか、それは戦いが終わってから考えるさ」

『ならば、負ける訳にはいかないな』

「当然。護衛も邪神も全員ぶっ潰す!」

 

 人間というのは、単純で複雑だ。言葉一つで、行動一つで変わる。今だってそうだ。クヨクヨ悩んでいた事が桜のアドバイスで吹っ飛んだ。本当に不思議なものだ。

 心の中に立ち込めていた暗雲が晴れて行くのを感じながら、俺は異世界へと転送されて行った。

 

 

to be continued

 

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