遊戯王GX~精霊の抱擁~ 作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民
黎:LP 3125
手札:0枚
フィールド
:G・L・S ダイヤモンド・チェリー(ATK 2500)、G・S アースカノン・ドラゴン(ATK 17600)、G・S モール・ドリラー(ATK 2800)
:伏せカード1枚、リビングデッドの呼び声(永続罠・対象不在)
真奈:LP 500
手札:手札4枚
フィールド
:究極魔導神-テネブラエ(ATK 6000)
:伏せカード2枚
スロウス:LP 40300
手札:0枚
フィールド
:七罪士 スロウス(ATK 23500)、死神竜 ヘリング(ATK 3600)、アボミナブル・ジェノサイド・ドラゴン(ATK 5000)
:伏せカード2枚、軽金属の正装(永続魔法)、超過重力空間(フィールド魔法)
SIDE:黎
美しい。
その容姿においては、例えどれだけのボキャブラリーを増やしたところで、そう表現する以外に無いだろう。
【BGM:pray】
『クスクスクス、妾が目覚めるにはまだ早いが、まぁ良い。今回は特別じゃ、妾の力を使う事を許してやろう。存分にこの力を振るうが良いぞ?』
究極魔導神-テネブラエ:ATK 6000
古風な言葉遣いに、妖艶な表情。神々しいオーラに、絶大な力の波動。
透き通るような薄紫のロングヘアーに、アメジスト色の宝石のような瞳。
薔薇をモチーフにしたような紫のドレスの上から黒いローブを羽織っており、背中からは虹色の菱形がいくつも集まって構成された翼が生えている。
「ぬぅ、まぁた妙なモンスターが出て来たぁ~。でぇもぉ、オデには勝てないぃ~」
『クスクス、邪神の、それも護衛如きが妾に敵うと思うかや? 片腹痛いのう』
クリスタルで出来た杖の先端にはアメジスト色の水晶が嵌め込まれている。女性版『ブラック・マジシャン』、ルーンにその見た目はある程度近い。
周囲を舞うオーバーレイ・ユニットは全部で4つ。素材と、その素材のユニットを自身のオーバーレイ・ユニットとしているらしい。
カードは左半分が黒、右半分が紫という奇妙な感じだ。
「テネブラエ、あいつに勝つよ!」
『無論じゃ。この新たな名と体に懸けて、必ず勝ってしんぜようぞ?』
ふと真奈ちゃんの足元に光る破片が見えた。俺のプロテクターが、『テネブラエ』を呼ぶ際の衝撃に耐え切れずに壊れてしまったようだ。
隕石がぶつかっても壊れないアレが粉々になったのだから、改めて『テネブラエ』の恐ろしさや強さが分かる。
究極魔導神-テネブラエ(エヴォルト・効果モンスター)(湊クレナイ先生オリジナル)
ランク20
闇属性/幻神獣族
ATK 6000/DEF 6000
「ブラック・ローズ・マジシャン」+「フォーチュンレディ・マテリアル」+「ゴットコアーダークネス」
このカードはシンクロモンスター及びエクシーズモンスターとしても扱う。
このカードの種族はデッキ・手札・フィールド・墓地に存在する限り、魔法使い族としても扱う。
このカードは相手のカード効果を一切受けない。
このカードの特殊召喚はデュエル中1度しか行えず、エンドフェイズにゲームから除外される。
このカードのオーバーレイ・ユニットを全て取り除く事で次の効果を上から順に全て発動出来る。
●お互いの墓地から魔法カードを五枚選択してゲームから除外する。
この効果で除外した魔法カードの効果をエンドフェイズまでこのカードの効果として任意のタイミングで発動出来る(ダメージステップ時にも有効)。
●自分の墓地に存在する魔法カード1枚につき、このカードの攻撃回数を増やす事が出来る。
●このターンのエンドフェイズまで、相手が発動する魔法カードの効果を全て無効にする。
「だぁがぁ、攻撃力6000じゃあオデには勝てないぃ~」
『クスクスクス、そこをどうにかするのがお主の仕事じゃろう、童?』
「無論だよ。リバースカード、オープン! 罠カード『シンクロ・アームズ・フォース』! このカードは自分の場のモンスターを任意の数だけ指定して発動する! 1体につき1000ポイントライフを払い、指定したモンスターを自分の場の別のモンスターに装備できる!
俺は自分の場の全てのモンスター、『G・L・S ダイヤモンド・チェリー』、『G・S モール・ドリラー』、『G・S アースカノン・ドラゴン』を選択!
ライフを合計で3000ポイント支払い、3体のモンスターをテネブラエに装備する!」
シンクロ・アームズ・フォース(オリジナル)(改訂版)
【通常罠】
自分フィールドにSモンスターが存在する場合、自分フィールドのモンスターを任意の数だけ選択して発動する。
(1):選択したモンスターの数×1000のライフを支払う事で、選択したモンスターを自分フィールドの別のモンスターに装備カード扱いとして装備できる。
この効果で装備したモンスターは、装備カード扱いとなっているモンスターの元々の攻撃力と守備力分だけ攻撃力と守備力がアップし、そのモンスターの内1体のモンスター効果を使用できる。
(2):(1)を発動したターン終了時に、装備カード扱いとなっているSモンスター以外のモンスターはゲームから除外される。
黎:LP 3125→125
「く、ぅぅ…………、っ!」
流石に、闇のゲームで1度に3000ものライフコストは、厳しい。
そしてこれで正真正銘、俺の場にカードは無くなった。
あるのは対象のいなくなった『リビングデッドの呼び声』だけ。
「黎さん!」
「だい、じょうぶ……だ! これで、テネブラエの能力値が上がる!
攻撃力は桜の2500、『モール・ドリラー』の2800、『アースカノン』の0の合計値、5300ポイントアップ!
守備力は桜の2100、『モール・ドリラー』の1900、『アースカノン』の0の合計値、4000ポイントアップ!」
究極魔導神-テネブラエ:ATK 6000→11300/DEF 6000→10000
「そして装備扱いとなった『アースカノン』の効果で、除外された岩石族1体につき攻撃力と守備力は800ポイントアップする! 除外された岩石族モンスターの数は変化していないため、攻守はそのまま17600ポイントアップだ!」
『クク、それで良い。お主の役目は妾のサポートじゃからのう』
究極魔導神-テネブラエ:ATK 11300→28900/DEF 10000→27600
光の粒子となった桜達が、テネブラエの中へと取り込まれて行く。
虹色のオーラが闇の神を覆い、その力を何倍にも跳ね上げた。
「こ、攻撃力28900ぅ~っ!?」
『クククク、言ったじゃろう? 貴様如きが妾に敵う訳が無いとな!』
「ア~ンド! 墓地の『スキル・サクセサー』を除外し、攻撃力は更に800ポイントアップする!」
「ぬぁんだとぉ!?」
究極魔導神-テネブラエ:ATK 28900→29700
「ば、ばかなぁ……、オデがパワーで負けるハズがぁ……!」
スロウスは攻撃力5000を4体も除外したというのに、こちらはそれを軽く上回った。驚くのも無理は無いというものだ。
「そしてアタシはテネブラエのモンスター効果発動! オーバーレイ・ユニットを全て取り除き、3つのモンスター効果を発動!」
『さぁ、もう終いにしようぞ。貴様のその下らぬ顔、長々と見られるものでは無いからのう』
「『“ダークフォース・ストリーム”!』」
パシュッパシュッパシュッパシュッ! 4つの光り輝く星が杖に取り込まれ、テネブラエの周囲に、墓地に存在する魔法カードが展開された。
「1つ目の効果! 全ての墓地から魔法カードを5枚選択してゲームから除外! そしてそのカード効果をテネブラエの効果として使用できる! “カオス・マジスタリー”!」
『古き魔よ、妾が今一度、その力を振るってやろう!』
総じて68枚の魔法カードの中から選び出される5枚のカード。
5枚の緑のカードは、テネブラエの胸元にある菫色のペンダントに吸い込まれて行った。
「更に2つ目の効果! アタシの墓地の魔法カードの数だけ攻撃できる! “レジェンダリー・エクストリーム”!」
『主の元に生れし魔術よ、妾に力を貸すが良い!』
68枚の中から、真奈ちゃんが使用したカード、23枚が浮き出て、残りが半透明になる。浮かんだカードは、テネブラエの杖の中へと溶け込んで行った。
「そして3つ目の効果! このターン、相手の魔法カードは全て無効になる! “シーリング・コンストラクション”!」
『下賤なる魔術など、見てるだけで不愉快じゃ。失せよ!』
バジバジバジバジッ! と紫電が駆け抜け、スロウスの場を支配する。これで、スロウスはこのターン中に魔法カードを使用する事はできなくなった。
「行くぞ! テネブラエの1回目の攻撃! 対象は『アボミナブル・ジェノサイド・ドラゴン』! “ダーク・マテリアル・メテオ”!」
『終焉と行こうかや? 消えい!』
「そうは行くかぁ! 罠カード発どぉう! 『ダーク・アーマー』! このターン、オデの場のモンスターは守備表示となりぃ、バトルでは破壊されなぁい!」
ダーク・アーマー(オリジナル)
【通常罠】
自分の場のモンスター1体は守備表示となり、エンドフェイズまでバトルでは破壊されない。
エンドフェイズ、自分の場に守備表示で存在するモンスター1体につき、相手に1500ポイントのダメージを与える。
黒い龍が防御の姿勢を取る。
無駄だ、スロウス。真奈ちゃんが除外したカードの内の1枚は、お前のあのカードだ!
「テネブラエの効果で、除外した5枚の魔法カードの内の1枚の効果を発動! 1枚目は『倦怠の刻印』! そして伏せていた『メテオ・レイン』を発動! これでこのターン、アタシの場のモンスターは破壊されない効果と守備力を貫通する効果を得る!」
メテオ・レイン
【通常罠】
このターン自分のモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。
究極魔導神-テネブラエ:ATK 29700→59400
「これで『アボミナブル・ジェノサイド・ドラゴン』の破壊耐性は無効!」
「何だとぉ~!?」
皮肉だな、スロウス。テメェの使った魔法カードでテメェの首を絞める結果になったんだ。
「ぬぁらばぁ、墓地の『笑い漏斗』のモンスター効果発動だぁ~。このカードをゲームから除外してデッキトップを墓地に送りぃ、貫通ダメージを無効にするぅ!」
む、『ソウトレス・リロード』で墓地に送ったのか!
笑い漏斗(効果モンスター)(オリジナル)
星3
炎属性/機械族
ATK 1000/DEF 1000
墓地に存在するこのカードをゲームから除外し、デッキの1番上のカードを墓地へ送る。
除外されたターン、守備表示モンスターを攻撃する事によって自分に発生する戦闘ダメージは0となる。
ズッガァン! と闇の流星が黒龍を貫く。
「そのまま『死神竜 ヘリング』に攻撃!」
『消えよ!』
「ぬぉおおおおおおおおおおおっ!」
スロウス:LP 40300→14200
「まぁだまだぁ! 罠カード発動ぅ! 『反逆者の復讐』ぅ! オデが戦闘ダメージを受けた時ぃ、相手モンスターの攻撃力はこの分攻撃力が下がるぅ! この効果は避けられないぃ!」
反逆者の復讐(オリジナル)
【通常罠】
プレイヤーが戦闘ダメージを受けた時に発動できる。
相手の場の全てのモンスターの攻撃力は受けたダメージ分だけダウンする。
この効果は「効果を受けない」効果を持つモンスターにも適用される。
ギュバッ! と怒気に満ちた波動がテネブラエを襲う。だが、無駄だぜスロウス? 真奈ちゃんが除外したカードの3枚目は、俺が『天使の施し』で捨てた、あの速攻魔法だ。
究極魔導神-テネブラエ:ATK 29700→28100
「なぁにぃ!? 攻撃力が1600下がっただけだとぉ!?」
「テネブラエの効果で除外した2枚目のカードは、速攻魔法『禁じられた聖槍』!」
『小賢しいのう!』
テネブラエは怒気の波動を一瞥すると、虚空から輝く槍を取り出す。それを地面に突き刺すと、それを起点にシールドを張る。怒気の波動はそのシールドに阻まれ、霧散した。
「これで対象モンスターは攻撃力を800ポイント下げる代わりに、このカード以外の魔法・罠の効果を受け付けない!」
「ぬぅっ!」
「本来『禁じられた聖槍』の効果で『テネブラエ』は他の魔法・罠の効果も受けない。だが、自身の効果で吸収した魔法効果は『テネブラエ』のモンスター効果に転写されている、そっちは無効にならないぜ!」
正直、あのカードを捨てるのは少々勿体無かったが、ここに来て良い方向へ作用してくれたようだ。
禁じられた聖槍
【速攻魔法】
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は800ポイントダウンし、このカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。
「3回目の攻撃! “ダーク・マテリアル・メテオ”! 対象は当然スロウス!」
『うぬ、よくも我が主を傷つけてくれたのう?』
「ぬ、ぅっ!」
『万死に値するわ!』
三度降り注ぐ闇の流星。だが、スロウスはそれを見てニヤリ、と笑う。
「オデ自身のモンスター効果発どぉう! 墓地の闇属性モンスターを4体除外しぃ、このターン相手より攻撃力が800ポイント高くなるぅ!」
星10
闇属性/戦士族
ATK 3500/DEF 3000
(1):このカードは特殊召喚できず、自分の場のモンスターを3体リリースしなければアドバンス召喚できない。
(2):このカードは相手のカード効果を受けない。
(3):1ターンに1度、自分の墓地の闇属性モンスターを1体ゲームから除外して発動する。
そのモンスターの攻撃力と守備力の数値分、このカードの攻撃力と守備力はアップする。
(4):このカードが相手の攻撃対象となった時、自分の墓地から闇属性モンスターを4体ゲームから除外する事で、このカードの攻撃力を相手より800ポイント高い数値にする事ができる。
(5):このカードが戦闘によって破壊された時、ゲームから除外されている自分の闇属性モンスターを、召喚条件を無視して可能な限り自分の場に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効となり、戦闘によって発生するダメージは0になる。
「オデはその効果で墓地の『死竜 デビヤマタ』2体、『アボミナブル・ジェノサイド・ドラゴン』、『ブラック・ドラゴスコーピオン』を除外ぃ~! これでオデの攻撃力は28900だぁ! “デスエナジー・ソウル”ゥ!」
七罪士 スロウス:ATK 23500→28900
「どぉだぁ! オデの方が攻撃力は高い~!」
「除外した3枚目のカード効果を発動! 3枚目は黎さんの『虚栄巨影』! 攻撃宣言時、モンスター1体の攻撃力は1000ポイントアップする! このカードは速攻魔法だけど、今はテネブラエ自身の効果として扱うため、『禁じられた聖槍』の影響を受けない!」
究極魔導神-テネブラエ:ATK 28100→29100
4体分のモンスターの影がスロウスの体内へと取り込まれ、スロウスが巨大化する。しかし、テネブラエはそれを鼻で笑うと、自分の力で自らの攻撃力を上げた。
「何だとぉ~!?」
『そのような幼稚な技で、妾に勝てると思うてか!』
所詮、スロウスの能力は墓地の闇属性、つまりは他人頼りの強化だ。自分で強化する事を怠けている奴に、己自身を研鑽する者を超える事など出来はしない。
「“ダーク・マテリアル・メテオ”!」
「ギィヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
究極魔導神-テネブラエ:ATK 29100→28100
スロウス:LP 14200→14000
降り注ぐ闇の流星は、一発たりとて打ち漏らす事無くスロウスを直撃。大爆発を引き起こし、鎧と獲物の大槌を木端微塵に粉砕してスロウスを吹き飛ばした。
「ぬぅおおお……、まだだぁ! オデがバトルで破壊された時ぃ、効果を無効にし召喚条件を無視して除外されたモンスターを特殊召喚できるぅ! オデは『F・G・D』3体と『アボミナブル・ジェノサイド・ドラゴン』、『スカル・ソードジェネラル』を特殊召喚だぁ!」
F・G・D:DEF 5000
F・G・D:DEF 5000
F・G・D:DEF 5000
アボミナブル・ジェノサイド・ドラゴン:DEF 5000
スカル・ソードジェネラル:DEF 500
「そのまま攻撃続行! “ダーク・マテリアル・メテオ”5連打ァ!」
『好い加減に鬱陶しいのう! 消えよ!』
『笑い漏斗』の効果で貫通ダメージは無効となっているものの、連続攻撃でスロウスの場は次々と壊滅的な状況となっており、焼け野原は愚か、地盤ですら残っていないのでは無いかという程の勢いで焼き払われている。
「まだ終わってないぃ! 墓地の『スカル・ソードジェネラル』と『F・G・D』を除外ぃ! オデはその効果で墓地の『アボミナブル・ジェノサイド・ドラゴン』と『ワインド・ワイバーン』を特殊召かぁ~ん! 更に『ワインド・ワイバーン』の効果でデッキから闇属性モンスターを1体墓地へ送るぅ!」
アボミナブル・ジェノサイド・ドラゴン:DEF 5000
ワインド・ワイバーン:DEF 1000
す、スロウス……、そろそろ『アボミナブル・ジェノサイド・ドラゴン』を使うのは止めてやらねぇか? 好い加減過労死するぞ、そいつ?
それにしても、あのグネグネとミミズみたいに動く翼竜、恐らく『笑い漏斗』の効果で墓地送りにされたのだろうが、よくもまぁそうホイホイと好みのカードを墓地へ送れるものだねぇ。
「しつこい! そのモンスターにも攻撃!」
『失せよ! 無知蒙昧にて曖昧模糊の雑魚共が!』
ギュウン! と闇の隕石で更に吹き飛ばす。
その途端、ミミズのような翼竜が炎上し、真奈ちゃんへ突っ込んで来た。
「「『な!?』」」
「『ワインド・ワイバーン』の効果発動だぁ! バトルで破壊された時ぃ、相手モンスター1体の効果を無効にするぅ! そしてその攻撃力分のダメージを与えるぅ!」
ワインド・ワイバーン(効果モンスター)(オリジナル)
星4
闇属性/ドラゴン族
ATK 1400/DEF 1000
このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから闇属性モンスターを1体選択して墓地へ送る。
このカードが戦闘によって破壊された時、相手の場のモンスターの効果は無効となる。
その後、このカードを破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。
赤々と燃え盛る炎。それは過たずテネブラエを、そして真奈ちゃんを包み込む。
『ぬぁああああああああああああああああああっ!』
「うわぁあああああああああああああああああっ!」
「『なんちゃって♪』」
ペロッ、と舌を出す2人。燃える炎は2人の周りを包み込んではいるものの、全く届いていない。
「テネブラエは、相手のカード効果を受け付けない。『反逆者の復讐』はテネブラエにも有効だった。でも、これは違う。残念でした♪」
『クスクスクス。妾をこのような児戯で仕留めようとしたのかや? まったく、頭のネジが緩いのぉ。最早小僧は怠惰と言うよりも欺瞞じゃな』
成程、『ワインド・ワイバーン』の効果は無効にした後にバーンダメージだ。相手の効果が無効にならない以上、その後のダメージは通らない。
「これで、お終い! “ダーク・マテリアル・メテオ”!」
「まぁだまだぁ! オデは『ワインド・ワイバーン』の効果で墓地へ送った『次元王のランプ』のモンスター効果を発動するぅ!
こぉのカードはぁ、ダイレクトアタックを受ける時ぃ、墓地から特殊召喚できるぅ!」
次元王のランプ:ATK 0
「このカードの攻撃力はぁ、特殊召喚された時に除外されているオデのモンスターの数×3000となるぅ!」
スロウスの除外されたカードは確か……。
【スロウスの除外されたモンスターカード】
『ハウンド・ドラゴン』
『マグナ・スラッシュドラゴン』
『スピア・ドラゴン』
『スピリット・ドラゴン』
『フックワイバーン』
『ドラゴラド』
『仮面竜』
『ポケ・ドラ』
『竜の尖兵』
『神竜アポカリプス』
『ライアー・ゾンビ』
『ディジーズ・ワイバーン』
『死竜 デビヤマタ』×3
『邪狂神の使い』
『ギガント・ゾンビゴーレム』
『リースト・デス』
『邪神教徒の鏡』
『インクシケート・ソルジャー』
『暗闇の同調者』
『アタック・アブゾーバー』
『F・G・D』
『新月の黒砲塔』
『スカル・ソードジェネラル』
『笑い漏斗』
『ブラック・ドラゴスコーピオン』
に、27体! て事は……!
次元王のランプ:ATK 0→81000
プカプカ浮かぶ灰色に辺りを照らすランプが、巨大化する。そのサイズは周囲の木を大きく超えている。
攻撃力が圧倒的にテネブラエを超えた、だとぉ……!?
次元王のランプ(効果モンスター)(オリジナル)
星10
闇属性/炎族
ATK 0/DEF 0
このカードは手札から召喚・特殊召喚できない。
相手モンスターがダイレクトアタックを行う時、このカードを墓地から特殊召喚できる。
このカードの攻撃力は、除外された自分のモンスター1体につき3000ポイントアップする。
「どぉだぁ、この圧倒的な攻撃力ぅ! 絶望しろぉ! そして邪神様の贄となれぇ!」
確かに、この攻撃力を相手にするのは、ほぼ不可能だ。
忘れたか、スロウス? お前が相手にしているのは、神なんだぜ!?
「(ネタに走るようだけど……)絶望はしない! テネブラエの効果で除外した4枚目のカード『ダブルバースト』の効果発動! これでテネブラエの攻撃力を倍にする!」
「なぁにぃ!?」
『クスクス、げに皮肉な事じゃのう。お主の使った魔法が、そのままお主を苦しめるのじゃからなぁ?』
ダブルバースト(オリジナル)
【通常魔法】
自分の場に存在する闇属性モンスターを1体選択して発動する。
エンドフェイズまで攻撃力は倍になる。
相手の場にモンスターが2体以上存在する場合、選択したモンスターはこのターン2回攻撃ができる。
究極魔導神-テネブラエ:ATK 28100→56200
「だぁがぁ、まだまだこっちの方が攻撃力が」
究極魔導神-テネブラエ:ATK 56200→112400
「上、だ…………」
「5枚目に除外したカードは『イリーガル・レコンストラクション・エンジン』。攻撃力が上昇したモンスターの攻撃力は更に倍になる!」
イリーガル・レコンストラクション・エンジン(オリジナル)
【速攻魔法】
自分の場のモンスターの攻撃力がアップした時にのみ発動できる。
そのターンのバトルフェイズ終了時まで、攻撃力は倍になる。
『小僧、攻撃力が、どうしたかや?』
「ぐ、ぬぅ、ぁあぁあああぁぁあああああああああぁぁあああああああぁっ!」
攻撃力の差は歴然。
そしてその差分を耐えられるだけのライフは、スロウスには残っていない。
「これで、終わりだぁ!」
『妾の主を傷つける輩は、排除させてもらうえ!』
「『“ダーク・マテリアル・メテオ”!』」
轟音と共に降り注ぐ闇の流星。
ランプに一発残らず命中したそれは、ガラスを、土台を、中の油を、メッシュを、取手を木端微塵に粉砕し、スロウスごと、吹き飛ばした。
「ぬがぁあああああああああぁああああああああああああああぁぁあああああああああああああああぁぁあああぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああぁあああああああああああぁああああぁぁああああああああああああああぁああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ! 邪神様万ざぁああああぁああああああああああいっ! メンドクセェ……………………」
スロウス:LP 14000→0
黎&真奈:WIN
スロウス:LOSE
「俺達の……」
「アタシ達の……」
『私達の……』
『妾達の……』
「「『『勝ちだぁっ!』』」」
【BGM終了】
「ありがとう、真奈ちゃん。君のお陰で、奴に勝てた」
「ううん、黎さんのサポート、あってこそ、だよ……」
スロウスが断末魔をあげ、最期の一言もあげる事無く消滅した後、真奈ちゃんは近くの切り株に腰かけた。あれだけの力を持つ神を召喚したんだ、主の方にも大きな負担がかかるのだろう、既に彼女はグロッキーで、呼吸も荒い。
「いや、君のサポートしかできなかった。結局は君のお陰だ―――」
「う……」
「っ、真奈ちゃん!?」
グラリ、と突然真奈ちゃんが倒れる。地面に頭を打ち付ける前に急いで彼女を支え、近くの草むらに寝かせる。安静にさせると同時に、透き通るような薄紫の髪の毛は、元の漆のように美しい黒髪へと戻って行った。
耳を澄ますと、クゥクゥという可愛らしい寝息が聞こえて来る。
「寝ているのか……」
『クスクスクス、妾を呼び出したのじゃ、このくらいは当然じゃのう』
「テネブラエ……」
フワリ、と浮かぶのは、デュエル終了によるソリッドヴィジョンの消滅と同時に姿を消した闇の神。『ブラック・マジシャン』に少し似た彼女は、アメジストと同じ綺麗な紫の瞳で微笑む。
『元々、妾がこの子の中で眠り封じられているだけで、この子は寿命の半分を消費していた。一時的であり、かつ本来の力の半分も出してなかったとは言え、人間であるこの子には厳しいものじゃろう』
「そっか」
無意識か、それとも俺達に心配をかけないためかは分からないが、この子は疲弊を隠していた。が、並大抵のものでは無かったらしく、僅かな時間の無理が祟ってぶっ倒れたのか。
健気だな、この子は。他人を大切にする心に溢れている。そう、丁度俺から過去を引き抜いたら、或いはこの子のようになるのかも知れない。
でも、俺は過去を捨てない。いや、捨てられない。
だからこそ、光を歩む、この闇の少女を助けなくてはいけない。
今の俺にできるのは、この子を見守る事だけ。
「桜、この子の治療を頼む」
「御意」
桜が実体化し、掌から桃色の光を放つ。真奈ちゃんにそれを当てて、治療を図る。
『しかし、何故妾は目覚めたのかのう?』
「ん? 宿主がピンチだったからじゃねぇの?」
『いや、妾は例え主がどれ程危険であっても、容易くは目覚めぬ。特にこの森は魔力の結合を阻害する粒子が漂っておる。妾が目覚めるには特に相性の悪い場所じゃ』
「だとしたら多分。真奈ちゃんの怒りが原因じゃないか?」
怒り? とテネブラエが首を捻る。
「ブチ切れたから、って事」
『この子は6歳の時に“マジ切れモード”を体得してから幾度となくキレた事がある。其の度に妾が顕現していたら、この子は今頃生きておらんぞ?』
「確かに。が、今回は違うだろう」
今回、真奈ちゃんは本格的にキレる前に1度キレかけた。それは止まったのだが、ローギアで怒り続けていた。最初に“処刑人モード”に移行した後、物腰は元に戻ったものの、『ダーク・ネクロフィア』は消えなかった。つまりそれは、彼女の怒りが完全には消失していなかったという事だ。
「ローギアで怒り続け、更に爆発的な怒りを抱く。彼女の怒りがテネブラエの力と関連していたなら、エネルギー源になっても不思議じゃない」
自分がどれ程貶されようとも、真奈ちゃんは怒らない。だが、友達や家族を傷つける輩には一切の容赦はしない。この時、怒りの臨界点を超えると『ダーク・ネクロフィア』が『ウィジャ盤』を引き連れて彼女の頭上に現れる。これが“処刑人モード”。
このまま放置するか怒らせ続けると『ウィジャ盤』の文字が、つまり“DEATH”の文字が揃う。これが“マジ切れモード”。こうなると何でも島一つはリアルファイトで吹き飛ぶそうだ。
最初は冗談か、トリッパー特有の能力かと思ったが、この能力は彼女がトリップする前から存在した。
ならば彼女は一般人とは異なる『何か』があると考えるのが妥当だろう。
そしてその『何か』というのが……。
『妾というワケか』
「正解」
テネブラエの力は凄まじい。普通に話している今でも威圧感を感じるくらいだ。桜だって傍にいるのは苦しいらしく、距離をおいている。
彼女が怒った際、テネブラエの力は彼女に流れると考えれば、島一つ吹き飛ぶという事象も説明がつく。今の段階でも恐らく、テネブラエは星の10分の1を楽に消し飛ばす事が可能な筈だ。10%も惑星が吹き飛べば公転や自転、磁場や重力に狂いが生まれて、その星に生きる生命体は全て死に絶える。要するにテネブラエは星中の人を人質に取れるのだ。
話が逸れたな。
つまり、本気でブチ切れる度にテネブラエの力が彼女へと流れるのであれば、テネブラエに対して真奈ちゃんの怒りのエネルギーが流れる可能性もあるという事だ。
そしてその仮説は正しかった。“憤怒”は俺が今戦っている“七つの大罪”の内の一つだが、決して悪いものでは無い。それは誰かの為を思う行動であり、大きな行動の源泉と成り得るからだ。
“傲慢”は自分の地位を支える自尊心。
“嫉妬”は他者を羨む欲であり願望。
“怠惰”は過度を防ぐ防壁。
“暴食”は力と成長を助ける源。
“色欲”は未来へと己の子を残す本能。
“強欲”は己に足らぬ物を欲する向上心。
“憤怒”は行動の起源となる力。
言い方一つ変えるだけで、モノは姿を変える。大罪は、人の根幹を成すものであり、悪じゃない。
もし悪ならば、彼女が誰かを思って怒る事は、罪悪か?
否。
彼女は、俺の為に怒ってくれた。俺達を助ける為に怒ってくれた。
それは、罪じゃ無い。
それが罪ならば、世の中の主人公は、全員が大悪人だ。
また話が逸れたな。どうもこの手の話に俺は熱くなってしまう。
結局の話、テネブラエが一時的とは言え、復活できたのは真奈ちゃんの怒りが有ってこそだ。彼女の怒りのエネルギーがミドル→ロー→ハイとテネブラエへと流れ込んだ。
普通、怒りというのは“危険に晒された”という認識や意識に起因する。こうなると脳からアドレナリン、ノルアドレナリン、カテコールアミンといったストレス・ホルモンが分泌される。これは一時的なものもあれば、長期的に続く場合(これが機嫌が悪いと呼ばれる、一触即発の状態)もある。
興奮状態を促すホルモンは一時的にエネルギーが増加したように錯覚させ、事実として何か行動する際に於いて疲労や痛みを忘れさせる。これが精神的なエネルギーの増幅だとすれば、テネブラエに流れるエネルギーが通常よりも多くなる事ぐらい楽に想像できるだろう。
判断力を鈍らせるのは困り物だが、その発揮される力はバカにならない。チベットの高僧、チョギャム・トゥルンパによれば「抑えつけてはいけない。しかし流されてもいけない」らしい。
ま、平たく言えば、怒るのも結構だけど、自分を見失わないように気をつけろって、事だわな。
『ふむ、という事はこの子がもう1度、あの様に長い期間憤怒の感情を抱えれば、妾は出て来れる、と?』
「どうだろう? 1度覚醒したんだし、召喚は兎も角、外の世界との接触くらいはもう容易なんじゃないか?」
『そうかのう?』
「何にせよ、ホイホイ出て来れるとは思えないけどな。僅か10分に満たない召喚で気絶だ。本格的な戦いが来るまで、無用な干渉は避けて、真奈ちゃんに一任するべきだろう」
『そうか』
「ああ」
「ん…………っ」
神妙な顔で頷くテネブラエ。その時、真奈ちゃんが呻き、体を起こした。
『む』
その瞬間、テネブラエは姿を消す。位置としては丁度真奈ちゃんの死角になっていたので、テネブラエの姿を見る事は無かっただろう。
『(妾はこれでお暇するえ。後の事は任せておく)』
くれぐれも妾の事は内密にの?
そうテレパシーで俺に伝えると、テネブラエの重くも優しい気配は消滅した。
「ふぇ、う……?」
「お早う、真奈ちゃん」
「おはよう、ございます……?」
フワ、と彼女の精霊達もその周囲に浮かび出す。
「う、ん……、あれ……?」
「どうした?」
「…………! そうだ、デュエル! スロウスとのデュエルってどうなったっけ!?」
「……はい?」
この子、自分がフィニッシャーだったのに覚えてないのか?
『黎さん、私も覚えて無いのですが……』
『途中から記憶がサッパリ無いんですぅ~』
彼女の精霊達も口を揃えて言う。
ここで漸くテネブラエの「自分の事は内密に」の意味が分かった。
どうやらテネブラエの召喚の負担が大きさは俺の想像を超えていたらしく、テネブラエに関する記憶がその関係でスッパリ抜け落ちているようだ。
「えーと、生きてるって事は、勝っ、た、の……?」
「ああ、君のお陰でね」
「ふぇ?」
完全に記憶が無いな。
「どの辺りから記憶が無い?」
「えーと、黎さんが『誤った指示』を除外してアタシを助けてくれたぐらいから、かな?」
「精霊の皆は?」
『私もそんな感じですね』
『ギャウッ!』
テネブラエが声をかける直前か。
俺は桜と視線を合わせる。
「(主殿、如何致す?)」
「(ん、まあテネブラエは内密にとは言ったが……)」
ポン、と俺は真奈ちゃんの頭に手を、10人の精霊の頭に髪を乗せる。
そしてそのまま、記憶の電流を操作する。
完全な封印から、一時的な催眠の忘却に。
「わにゃ!?」
『ぴっ!?』
『ギャウウッ!?』
「君達の中にある記憶を少しいじった。もう1度、絶体絶命の状態で“あいつ”が語りかけて来る状況になれば、自然とこの記憶は蘇る」
「あ、あいつって?」
「秘密」
テネブラエの性格の事だ、普通のデュエルどころか、闇のゲームでも彼女に力を貸すかどうか怪しい。
だが、逆を言えば彼女が真奈ちゃんに声をかけるという事は本当に命の危機だと言う事だ。その時になってこの記憶が無ければ不便だろう。
願わくば、彼女がそれまでにテネブラエと共に戦える程に強くなっている事を。
「それはそうと、ありがとう真奈ちゃん。君が居なかったら、スロウスに勝つ事はできなかった」
「あ、いえ、ここで黎さんが負けたらアタシ達も死んでたかもだし、その辺はお互い様だよ」
何ができたっていう話だけどね、と真奈ちゃんは苦笑い。
「そんな事は無いさ。俺こそ、君のサポートに回らざるを得ない身だった。化物のクセに、情けない」
そして俺も苦笑い。
『黎さん、それは謙遜だ』
そんな俺に渋い顔で忠告して来たのは、フォーチュンレディ六姉妹の長女、『アーシー』だった。
「む?」
『我らは森の中、そしてデュエルの最中、スロウスにマスターが幾度となく殺されかけた時、何もできなかった』
『ええ。貴方はマスターの、そして私達の命の恩人です。何度も助けて頂き、本当にありがとうございます』
眼鏡を外して、橙色の瞳で『アーシー』が神妙な顔でそう言う。
それに続けて次女の『ダルキー』が微笑む。
『その、あの、黎さんは、凄いです……』
『うん。あんな大きな怪物相手に怯みもしなかったんだから、もっと自信持って好いと思う!』
オドオドした三女の『ウォーテリー』が弱気に褒め、気の強い『ウインディー』が笑う。
『つーか、自分の事を化物だなんだって言うけどよぉ、こっちから見てみたらアンタは十分人間だぜ?』
『うんうん、少なくともスロウスよりずっと人間らしいよ!』
男勝りな『ファイリー』が頷き、陽気な『ライティー』が励ます。
お前ら……。
『貴方が何者であろうと、恩人に変わりはありませんよ』
『ギュッ!』
ナイト、ラブ……。
『いくら感謝しても、し足りないくらいです』
『同じ人間、同じ精霊、仲間だよ!』
ルーン、フレア……。
「お主達……」
「すまねぇなぁ……、本当にすまねぇ……」
ツ、と涙の感触。
感動で涙を流すなんて、いつ以来だろうか……。
「黎さん?」
「いや、何でも無い」
「そうですか」
ゴシ、と涙を拭う。
まだ泣けない。あいつが辛い思いをしているのに、こんなトコで泣いているヒマなんざ無い。
「義妹さん、早く助けられると良いですね」
「君の方も、ゴタゴタが片付く事を祈っているさ」
「究極の神と共に戦う事は熾烈を極めるだろうが、お主ならば大丈夫だろう」
「ありがとう、ございます」
にこやかに笑った真奈ちゃん。でも彼女の瞳は……。
「何が悲しいんだい?」
「え?」
「君より俺は5年長く生きている。誤魔化せると思った?」
顔は笑っているけれど、目は笑っていない。愛想笑いの証拠だ。
普通笑うなら目から笑う。でも彼女は愛想笑いでよくやるように口から笑った。
「俺の悩みに、戦いに君を巻き込んだ。そのくらいの相談は受けるよ」
「……不安、なんですよね」
「何が?」
「未来、“七究神”、家族、色々です。
今のまま戦って悪魔に勝てるのか、その時になって薙冴先輩やリアさんの足を引っ張らないか、神様はアタシと一緒に戦ってくれるのか、響くんやお兄ちゃん達はどれくらい心配しているのか……」
はぁ、と不安そうな顔で溜息を吐く真奈ちゃん。
俺はそんな彼女の頭を撫でてやるくらいしかできない。
「みゃ?」
「俺には、君の不安を取り除いてやる事はできない」
けれど、励ます事はできる。
「悪魔に勝てるか? そんなに不安なら力をつければ良い。君はスロウスに対抗できるぐらいの実力はある。なら、更に研鑽を積めば勝てるようにはなる。悪魔と邪神、どっちが強いかなんて想像に易いだろう?
足を引っ張らないか? 逆に君が彼らを前に引っ張るくらいの事をすれば良い。未来は不確定だからこそ、希望に溢れている。ジェローム・K・ジェローム曰く、『毎分、毎秒、新しい生き方が始まる』だ。
神様が一緒に戦ってくれるか? 逆に神様を従えるくらいの事をしてしまえ。自分はこんなにも一生懸命に戦っているんだから、寝てないで力を貸せってね。
心配してないか? そりゃ心配しているだろうよ。家族が、親友がいなくなれば心配するのは当然だろう。だからこそ、君は悪魔に勝たなくてはいけない。悪魔に負ければ、親友も、兄も、父も、母も、仲間も、全てを危険に晒す。敗北の許されない危険な戦いだ」
「…………」
「何故自分がこんな戦いをしなくてはいけないのかと疑問に思い、嘆く事もあると思う。なら逆に考えろ。大切な誰かがこんな危険な思いをしなくて済んだと。誰かが死ぬ可能性を自分が出る事で潰したのだと」
悲観すれば、全てはネガティヴに映る。
楽観すれば、全てはポジティヴに映る。
「君は状況を悲観と楽観のどちらかに偏って見るクセがある。良い方向を見ろ、否定するな、明るい光が差しているのならば、そこから目を逸らすな」
「でも、アタシにはそんな強さも度胸も無い……。黎さんみたいな不屈の心だって……!」
「ならこれから育てれば良い。無いんだったら自分が持っている物を武器にすれば良い。アーネスト・ヘミングウェイ曰く、『持っていないものではなく、持っているもので何ができるか考えよう』だ。無い物は無いんだったら、作るか代用すれば良い」
絶望を感じた時は、絶望する時じゃない。真に絶望するのは、愛を、そして心の中に秘めた夢が奪われた時だ。
戦う術が無いのならば、万難の壁が行く手を遮るのならば、蹴散らし、薙ぎ倒せ! その手が動くなら、カードが1枚でもあるのなら、希望はそこから繋がる。心が残っているのなら、絶望するには早い。
「持っている、もので……」
「偉そうな事言えた義理でも無いんだけどね。でも、ほぼ0%と0%は違うという事を覚えておいてほしい。例えどれだけ微細でも、あるものはある」
繰り上げ続けて行けば、どんな極小の数値でも1にはなる。だが、0は何度繰り上げようと1にはならない。
1と0、違いは僅か、されど絶対の差がある。
無と有が違う事を、忘れないでほしい。
「『闇とは、世界の負を受け止め、全てに寄り添う影。故に闇とは全ての母』だ」
「母……」
神妙な顔をする真奈ちゃんの傍ら、俺はテレパシーを試みる。
(テネブラエ……、お前今、俺のセリフに言葉重ねただろ? 内密にとか言っておきながら、自分でバラすような事してんじゃねぇよ)
(クスクスクス、良いではないか。そのくらいのお茶目、許されるじゃろう?)
まったく。古い喋り方をするかと思えば、子供のような茶目っ気がある。
一口に神と言っても、色々といるんだな。
「頼りになる神様が君の中にいるんだ、いざって時は寄り掛かれ。頼りにされないのもまた、侮辱みたいなモンだ」
「……、はい! ありがとうございます!」
パァ! と太陽のように笑う、重い運命を背負った少女。闇の魂を持ち、されど明るい少女。この子もまた、過酷な運命の元に生まれて来た、健気な選ばれし者、か。
願わくは、俺のような悲惨な生き様とならん事を。
「どうせだし、写真撮って行こうぜ? PDAで」
「りょーかい!」
ピピッ、パシャ! 軽快な音と共に画像が1つ追加される。
そこには、幸せそうな少女とその友人が、そして11人もの精霊が写ったのであった。
彼女との出会いは一時、されど思い出は永遠。
生は終わりがあれども、無限の螺旋の中を何時までも命はいる。今ここに俺達がいた証明と共に、心は悠久の時を過ごす。
幸せの欠片が、また1つ手に入った気がした。
to be continued