遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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STORY49:廃工場に飛ばされた家族 ★

 

SIDE:黎

 

 

 

 光に包まれて異世界へと飛ぶ事にも好い加減に慣れて来た今日この頃。

 今回俺を出迎えたのは無機質な金属の部屋だった。

 

「こういう場所は、私はあまり好かんな」

「自然の中で生まれたからな」

 

 広さにして三畳弱といったところか。四方八方が金属で覆われているが、暗くて細かいところまでは分からない。唯一、上から微かに光が差し込んでいる。

 密室に飛ばされたかと思い、木と炎の力で松明を作ると、正面にあったのは重厚そうな扉。半分以上が錆びついており、かなりの期間、手入れされていないようだ。

 力を込めてその扉を押す。ギ、ギギ、と不快な金属音と共に扉が開く。

 

「む……」

 

 ガゴ…、と開いた扉の先にあったのは、大きくて広い廃工場の一室だった。

 割れた窓ガラス、埃の積もった床、カビの臭いが辺りに漂っている。松明を消し、ところどころに残っている机の上の黄ばんだ資料らしき書類を手にすると、そこにあったのは植物の遺伝子改良の企画書だった。ドイツ語で書かれているが、問題無い。

 乾燥に強い野菜、長期間保存できる果物、水を貯め込む植物……。どれも理想的なものばかりで需要もありそうだ。何故ここが寂れてしまったのか疑問を感じざるを得ないラインナップである。

 

「主殿、それは表の顔のようだぞ」

「ん?」

 

 これを、と桜が差し出したのは別の資料。グシャグシャになっているが、読めないわけじゃない。

 

「成程な。コッチが本命か」

 

 それは植物の兵器改造の計画書だった。

 鋼のように固い砲弾になる椰子の実、爆弾が爆発しても傷一つ付かない樫の木、燃料になる油を捻出できる団栗、編み込めば刃物を通さない防刃性の植物繊維。起爆するリンゴや機雷になるアボガドなんてのもあった。

 

 どうやら需要に合わなくなったか、コストが嵩んだか、それとももっと他の理由かは知らないがここは今は使われなくなったらしい。窓の外にはここで栽培されていたと思われる植物兵器が野生化したものが群生しているのが見える。

 

「全く、自然を何だと思っているのだ。人間のオモチャじゃ無いんだぞ!」

「ここで叫ばれても困るんだがな」

 

 訴え先は不在です。

 

「ああ、済まない。私は長寿の桜の木から生まれた身でな、こういうのを見ていると自分や自分の家族が汚されているようで胸糞が悪くなってしまって」

「いや、憤る事には何も言って無いよ。ただ、叫ぶなら俺じゃなくてちゃんとした相手にってだけさ」

 

 怒る事には何も言わない。生きる上で必要な感情だからである。

 度を超し過ぎる事が罪なのであって、行為そのものには何の問題も無いのだ。

 

「さあ、探索はこの辺で切り上げて、飛ばされたであろう並行世界の人を探しに行くぞ」

「承知致した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホアチャァッ!」

「ぐあっ!」

 

 工場の中を探索する事10分余り、外から威勢の良い女性の声と鈍い男の声が聞こえて来た。

 スッパァン! と肌が張られる音が、響く。

 

「イグァ……」

「とぉりゃぁあっ! おりゃおりゃおりゃおりゃあっ!」

 

 バスバスバスッ! 勢いは落ちる事無く人体にぶつかる音がする。

 

「主殿、あっちだ!」

「了解した、細かい位置をサーチする!」

 

 打撃が当たる音が、味方の攻撃なら良いんだが……。逆に邪神の護衛の攻撃だとマズい。スロウスのような巨漢だったらペチャンコに潰されるだろうし、そうで無くてもこれまでの3人同様に武器を持っている可能性は高い。

 急いで雷の力を体内に流すと、サメの持つ探査能力を起動させる。

 

「“ロレンチーニ”!」

 

 バジッ! と電気が弾ける。

 サメの鼻先にある感覚器官は、生物の中を流れる生命電気を感じ取る力がある。この生命電気はただ単に流れているだけでは無く、体の動きを脳から伝達もしている。つまり、これを感じる事ができればどこに誰がいるかだけで無く体のどの部位が動くかを数瞬先に察知する事が可能なのだ。

 

「……いた! この壁の向こう側だ!」

「ぶち抜くより斬った方が速い! 下がってくれ!」

 

 殴り砕こうかと思った時に、桜がそう提案する。速いに越した事は無いので、俺は数歩後ろに下がった。

 

「はぁっ!」

 

 斬、斬斬斬、斬斬! 壁が桜の剣で叩き斬られ、ガラガラと音を立てて崩れる。

 穴が開くのももどかしく、俺は壁の向こうへと身を躍らせると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いえす、あいむうぃなー!」

 

 ぱちぱちぱちぱち…………。

 10代半ばから後半くらいの女性が、太った男の上で天を指差していた。傍らでは同年代の女性、いや、中性的な男性と10代前半から半ばくらいの少女が拍手をしている。

 

 えーと、何事?

 

「主殿、敵は……、どいつだ?」

「…………一応、上に乗っかられている太った奴」

 

 桜の困惑も分かる。人間に護衛が圧倒されているなんて、これまでの3人を見ても有り得ないと思うだろう。

 と、鼻を異臭が突いた。これは、アルコールのにおい?

 

「原因はこれだな。先刻の資料の中に記載されていた酒の取れるメロンだ」

 

 桜がヒョイと拾ったのは食べかけのメロン。

 確かに、同じ皮の模様のメロン、“バッカスメロン”がさっき見た資料の中に記載されていた。

 

「いいぞぉ、かぁさぁ~ん」

「そのままやっちゃいなさぁ~い!」

「いえー、あいむちゃんぴおん!」

 

 じゃ、何!? あの3人は酔っぱらってるの!?

 

「恐らくは」

 

 酔ってて護衛を倒せるんだから、あの女性は凄い。

 

「ぐぬぅ!」

 

 邪神の護衛は腕に装備した鉤爪で女性を斬り裂こうとするが、女性は素早くマウントポジションから下り、土を抉りながら(!?)蹴り飛ばした。

 デブ護衛はそのキックをもろに食らって数十メートル(十数メートルでは無い)上空へと吹き飛んだ。

 女性はそのまま空中で連続ジャンプ(!!?)を行って打ち上げられた護衛を追いかけると、空中コンボを決めるが如く、上へ下へと動き回り(!!??)、踵落としで護衛を地面に叩き落とす。そのまま落下の勢いを利用して横たわった護衛の腹に重量の乗った蹴りを力一杯叩き込む。

 

 メグキョッ!

 

「ゴゲェッ!?」

 

 ヒキガエルの断末魔というものは聞いた事は無いのだが、きっとあんな感じなんだろうなぁ……。

 

「に、人間のクセにぃ……」

「愛する夫と娘のためなら、妻は万象一切を灰塵に帰せるのよ!」

 

 それなんて総隊長?

 

「……桜、このカオスな状況をどうにかしたいんだが」

「……一応そこに、酔い覚ましのブドウがあるが?」

 

 メロンと同じページに記載されていた、酔い覚ましに使われるブドウ、“アグレープ”。それが確かに植えられていた。

 だが、どうやって食べさせようか……。

 

「ぶぎゅぁああぁああああぁぁっ!」

「愛を得た女をナメるなぁっ! ヒック!」

 

 あ、護衛が地面に沈んだ。

 

「のぶぉげぇえええぇえええええぇえっ!」

「夫と娘に手を出すのなら、このわたしがぶち殺す!」

 

 あ、護衛がバラバラに千切れた。

 

「あびょぉうおぉおぉぉおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「わたし達の幸せな家庭を壊すのというのなら、その幻想をぶち殺す!」

 

 それなんて幻想殺し(イマジンブレイカー)

 あ、護衛が木端微塵になった。

 

「のぺらぱぁああああああああああああああああああああああああっ!」

「それが、わたしの覚悟だぁ! お前にこの覚悟が、超えられるかぁ!」

 

 あ、護衛が灰になった。

 

「いやー、女性って凄いなぁ」

 

 初対面で砂と石をぶつけた有栖&有里ちゃんの母娘といい、神を内包している真奈ちゃんといい、半ば不死身の都といい、剣術と治癒術に長けた桜といい……。

 本当に女性は男性の一歩先を行くねぇ……。

 

「女性で一括りにされると困るんだが……」

 

 そう?

 

「おっけー、わたしさいきょー!」

「かーさんすごーい!」

「おー!」

 

 女性が何であっても、この状況を納めるのが最優先事項かな?

 そう思った俺はブドウをもぎ取ると、3人に近付いて口の中に無理矢理ブドウを押し込むのだった。

 護衛を圧倒していた女性相手だけは大苦戦したのは秘密です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――工場内部の寂れた応接室

 

 

「まだ頭が痛い……」

「貴女だけメロンを3つも4つも食べるからです」

 

 前頭部を押さえる女性に中性的な男性が窘める。

 あの場に落ちていた皮の量から判断するに、この場合の3つ4つとは玉の数だろう。

 

「えーと、取りあえず、あのカオスから救ってくれてありがとうございます」

「いや、こっちとしてもあのカオスから帰って来てくれないと話が進まなかったからね」

 

 同じように頭を押さえる少女の言葉に俺は返す。

 

「自己紹介がまだだったな、俺は遊馬崎黎。呼ぶ時は黎で良い」

「その精霊、桜と申す」

 

 桜が腰の剣に手を掛けながら礼をする。これはいつもの光景だ。

 

朝倉(あさくら)(ひかる)です。私も輝で結構ですよ」

 

 最初に自己紹介をして来たのは中性的な男性。

 長めの黒髪が、割れた窓ガラスから入って来た微風に乗って揺れる。

 

「念のために言っておきますが、私は」

「男性です、か?」

「~っ!」

 

 俺のセリフに目を見開き、ふるふると震える輝。

 何だ?

 

「しょ」

「しょ?」

「初見で私を男だと見抜いてくれたのは久し振りです!」

「それはそれは……」

 

 まあ、見た目女性っぽくもあるし、髪もキレイで長いからな。パッと見、女性に見えるのも頷ける。

 というか、そんな女扱いが嫌ならせめて一人称を僕とかに変えてみたらどうだろうか。

 

「感動です! 本当に感動しました! 貴方とは良い友になれそうです!」

「はい、そこまで。落ち着いて」

 

 ぐぐい、と迫って来る輝を押しのけたのは、先刻護衛を叩きのめしていた女性。ブラウンのショートカットに、勝気な目をしているボーイッシュな感じだ。

 

「わたしは一条(いちじょう)(あゆみ)。将来の姓は朝倉」

 

 ニカッ、と笑う歩。美人ではあるものの、取りあえず酒癖は悪いという事も脳内にメモしておく。

 

「将来か。随分と言い切るのな」

「いやいや、物的証拠があるよ」

「……まさかとは思うが」

 

 本当にまさかとは思うが。

 傍らにチョコンと座る小柄な少女を指差す。

 

「この子が二人の娘で、未来から来た、とか?」

「正解!」

 

 ……、まさか同じタイプのグループに2度も遭遇するとは。

 

「私は朝倉奈美(なみ)。未来から時間旅行の被験者としてやって来ました!」

「時間旅行……」

 

 黒髪ショートの少女がニコリと笑う。

 優達のケースの時は、有里ちゃんがどうして、どうやって来たのかは全くの不明だって言っていたな。有里ちゃん本人も口を噤んでいたし。

 で、こっちはタイムトラベルか。正直、どっちもどっちだなぁ。

 

「よろしく。しかし、転生者同士の夫婦とはまた珍しい組み合わせだな」

「え、て事は貴方も……」

「ああ、俺も転生者だ」

 

 異世界に来る、と一口に言っても方法は色々ある。

 例えば異世界転生。

 元より転生とは“生まれ変わる事”である。だから俺のように元の世界の体のままで新たな生を授かるのは厳密には転生とは言わない。

 ただ正確な形の転生とは新しく生まれなおす事、つまり0歳からのスタートだ。そういう意味では俺や優の“転生”は、真奈ちゃんの様に元の世界から直接こちらにやって来たトリップ、“異世界転移”が近い。ただし、トリップは“死んでいない事”が条件の1つなので、厳密には“トリップ”では無い。

 ちなみに“憑依”というものもあるが、こちらは文字通り他人の体に自分の魂が定着する事なので、前記2つとは違う。

 

「ま、俺は殺されたんだけどな。どんくらいいるんだ、遊戯王世界に殺されて転生って」

「それは……」

「ハハッ、気にしないでくれ。自分の中じゃもう整理くらいついている」

 

 あの雨の日、都を守れなかったのは俺自身の所為でもある。その辺をヘタに憐れまれても、困惑しかできない。

 

「私達の場合、普通の自動車事故ですからね」

 

 交通事故を普通で表現するのもどうかと思うがな。

 

「あはは、あの時はゴメン……」

「歩、私は一度でも謝罪を求めた? もう気にしてないから、謝罪するのはやめてくれないかな。好きな人を過ぎた事で責められる程、私は強くないから」

「……うん///」

 

 甘い空気が、漂って来たな……。

 父である輝の右隣にいた奈美ちゃんに俺はそっと囁く。

 

「(なんか良い雰囲気になって来たんだが……、平気かい?)」

「(あーまぁ、このくらいの年頃なら普通じゃない?)」

 

 なんと、奈美ちゃんは中学生くらいの割に随分と精神は大人だ。

 

「で、奈美ちゃんは普通にお腹痛めて生んだ子だと?」

「はい。少なくとも、私が河原で拾われたとか、養護施設から貰われて来たとかいう話は聞かないですね」

 

 更にサバサバしてる。

 

「で、ウチには更に妹が1人、レイン恵ちゃんがいるんです。私はメグちゃんって呼んでるけど」

 

 タッグフォースキャラが妹にいますか。

 シンクロアンデット使いの銀髪娘だったな、確か。

 

「で、メグちゃんは今日用事で出かけていて、父さんと母さんが今度のテストの勉強会をしてて、私はその近くでヒマを持て余していたんです。そしたらいきなり光に包まれてここに……」

 

 何と言うか、ここまで何でも無いですよーみたいな感じに言われると、逆に罪悪感が沸いて来るんだが……。

 

「で、何が起こったか分からずに私と母さんは混乱していて」

「そしたら近くにメロンがあったので、歩に手刀で切ってもらって食べました。落ち着く意味も込めて」

 

 あ、旦那さんが戻って来た。

 というか、手刀ですか……。

 

「で、気付いたら酔っ払っていて、あの太った人が“皆殺しだぁ~”とか言うんで“ふざけるな、輝達は殺させない!”って母さんがキレちゃって……」

「リアルファイトでボコメキョにした、と」

「はい……」

 

 なんつーか、本当に……。

 

「謝れば良いのか、呆れれば良いのか……」

「謝る? 何故?」

「3人がここに来たのは俺が原因だから。そして、それなのに俺に共に戦ってほしい事を望んでいるから」

 

 俺は3人に簡潔に事の顛末を話す。転生してからも受け継いだ化物の能力の事、復活が始まっている邪神の事、依り代として選ばれた都の事、これまで倒した邪神の護衛、飛ばされて共に戦った4人の戦友、戦う事で回避できるかもしれない破滅の未来。

 そして全てを話し終えて尚も半信半疑だった3人に、俺の過去に体験した映像を少しだけ、見せてあげた。

 全てを知った彼らは、少しの間だけ黙っていた。

 ややあっと、最初に口を開いたのは輝だった。

 

「貴方は……、辛くないのですか?」

「?」

「私は転生した前も後も、この見た目から、女性と間違われる事が多々あった。寧ろ貴方のように初見で男だと見抜く人の方が稀だった」

 

 確かに。輝の髪は俺と同じで長いし、容姿は俺と違って中性的だ。髪を切れと言いたい所だが、さっきから歩が彼の長髪を後ろ手でコソコソと弄っている所を見ると、どうやら彼女は彼の長髪を気に入っているらしい。

 

「私は今、貴方の過去を見ました。当然、貴方が化物として気味悪がられ、忌避され、攻撃されていた過去も。私も嫌な過去があるからその気持ちが少しだけ分かる。

 普通なら貴方は世界を恨み、今ここにいる私達を殺しにかかっても何ら不思議では無いというのに、貴方は我々を安全な場所へと誘導した上に、戦いの助力を願っている。

 何故? 私にはそれが不可解であり不安要素です」

「そうだね、わたしも輝の言う事は正しいと思う。少なくともわたしが黎だったら、護衛ごとわたし達を殺していると思う」

「あー、確かに。父さんと母さんの言う事は最もだね」

 

 ……ふぅ、確かにな。

 俺の過去を少しでも見れば、誰かに優しくする事は有り得ないと思うだろう。俺達義兄妹は、実際転生する前は誰からも優しくされなかった。親、他人、教師、大人、店員、その全てが俺達の敵だった。

 接する者は容赦無く散って行った。俺達が何をするでも無く、彼らは周囲から散らされた。ただ単にそこにいるだけなのに、俺達は疫病神の様に扱われた。本当に何もしていないのに、だ。

 いや、違うな。していたんだ。「そこにいる」という事を。

 

 人間不信。

 鬼気慟哭。

 

 吠えて吼えて咆えて……。そこにいる、生きている事自体が罪にされて、でも簡単には死ねなかった。虚無感よりも怒りが強かったからだ。

 俺達は常に復讐の機会を狙っていた。

 世界に。

 人に。

 理に。

 不条理に。

 全てに。

 

 だが、何をやっても空しかった。

 半殺しにしようとして来た奴を半身不随にしても。

 重火器を持って殺しに来た奴らを逆に殺しても。

 モノとしか見てない研究者を残らず廃人にしても。

 いい加減な采配で俺達を悪と決め付ける警官を病院送りにしても。

 蔑み嘲笑う奴らの大切なものを徹底的に粉砕しても。

 

 満たされない。

 渇く。

 飢えている。

 

 当たり前だった。そんな事をしても、傷が癒えるハズも無かったのだから。俺達に必要だったのはただ一つ、愛。七つの罪の正反対に位置するもの。

 都を愛していなかったと言えばウソになるだろう。でも、それは家族に向ける愛でも、恋愛感情の愛でも無い。寧ろそれは愛では無く、哀。傷を舐め合って生きる、どこまでも醜い生き方。

 助け合うのでは無い。傷を舐め合うだけ。

 それは癒さないし、癒されない。どれ程の涙を流そうとも、心に負った傷は、体の傷と違って、治らない。自然治癒できない傷だってあるのだ。

 それが分かっていても、俺達はその生き方をした。それしか、出来なかったから。

 

「確かに、俺はそういう生き方をして来た。でもな、恨むのも憎むのも、いい加減疲れたんだよ」

 

 疲れた。

 あの生き方は、疲れたんだ。

 

 それよりも、何も知らない無垢な子が俺達に向けた笑顔が、俺達の絶対零度の心に春一番を吹かせてくれる事に気付いた。

 怖がり、恐れている人が、俺達に放ってくれる感謝の言葉が、凍りついた心を温かく溶かしてくれる事を知った。

 

 空しさがあの時晴れた。だから俺達は人を、世界を、全てを恨むのを止めた。

 傷を負ったままだったけれど、俺達は復讐の刃を振りかざすのでは無く、共存の道を辿る事を決意したのだ。

 

「ありがとう。小さな少女のそのたった一言で、俺達の生き方は変わったんだ」

 

 辛かった世界に、暗かった世界に、光が満ちた。

 救われる道があると知って、救われようと努力した。

 

 

 

 

 

 でも救われなかった。

 

 

 

 

 

 何も変えられず、俺と都はあの雨の日に、死んだ。

 都を、目の前で殺された。

 俺は、あいつを救う事ができず、殺した奴を死ぬより辛い目に合わせて、代償として深手を負って死んだ。

 

「呪っても、願っても、救われないし、何も変わらない。だから正直、俺はもう呪うのも恨むのも止めたんだ。どっちをしても関係無いなら、どうせなら少しでも俺達を好印象で覚えていてほしいからな」

 

 こっちの世界に来て、仲間ができた。友達ができた。

 信を寄せても、裏切らない人達がいた。

 心安らぐ、場所が、21年間無かった場所が、そこにあった。

 

「俺は、都を兄として必ず取り戻す。俺だけが幸せを甘受するワケにはいかない。あいつにも同じ場所にいてもらって、同じ幸せを分け与える。それが、あの日の俺の誓いだ」

 

 不幸は、俺が全て背負う。

 幸せは、あいつに分け与える。

 だから、俺はあいつと一緒にいる。

 

「やましい事なんて何も無い。ただ、幸せを壊す事に、敵で無い人の生を壊す事に意味が無い事を知った。それだけだ」

「……わたし達が敵になったら、殺しに来るって、事……?」

「俺や俺の大切な人達に害をなす存在ならな」

 

 その瞬間、歩の鋭い正拳突きが飛んで来た。

 ゴン! と俺の鼻から音が響いた。

 

「「イタタタ…………ッ!」」

 

 俺は鼻を、歩は右の拳をそれぞれ押さえる。

 鼻には重金属のタングステンを仕込んでおいてある。皮膚は薄めだが、それでも十分な防御力がある、ハズなのに痛み分けだ。歩、細身の女子に見えて腕力あるな。

 

「!」

 

 鼻と拳の痛み、どちらが先に納まるかと言えば、当然拳だ。

 歩は先刻とは違う左の拳を曲げるように打ち出す。左フックか。

 これを俺は背中を反らして回避。続けて歩の繰り出して来た右の蹴りを背面跳びの要領で回避。

 座っていたソファの背もたれを掴み、カポエラで蹴りを打ち込む。歩はこれを受け流してガード。

 フワリと着地し、ソファを挟んで俺と歩は向かい合った。輝と奈美はいつの間にか部屋の隅に退避している。

 

「良い判断だ。受け止めていたら、骨にヒビくらいは入っていただろうな」

「伊達や酔狂で仕掛けたワケじゃ無いよ」

 

 ふ、と笑う。彼女の自信は、どうやら本物のようだな。

 が。

 

「ここで争っても無意味だ。戦いの前にムダに体力を消耗する事はお勧めできん」

「……でもアンタがあたし達を、輝と奈美を殺すかも知れないんだったら、ここで潰す」

「やれるモンなら、な!」

 

 そのセリフと同時に俺の髪と目が変色し、独特の模様が肌に走る。

 そのカラーは青と紫。水と雷の力だ。

 歩、失念してないか? 俺は、普通の人間どころか、一般的な生物ですら無いんだぜ!?

 

「“ミスト・エンド”!」

「ぴっ!?」

 

 霧が周囲を包み込む。生み出された霧は紫電を帯びており、静電気並みに弱いものからスタンガンのように強いものもある。

 ちなみにこの霧の電気に死ぬまでの威力は無い。電気量というのは電流(アンペア)×電圧(ボルト)の値になる。たった数十Aのコンセントの電気が流れてしまうと人間は死ぬが、数十万Vのスタンガンを浴びても死なないのと同じ理屈で、電気量が一定に満たなければ、電圧がどれだけ高かろうと、死ぬ事は滅多に無いのだ。

 霧が帯びている電気は、電圧は高いが電流は低く設定してある。体の弱い人間でも痺れるくらいで何も影響は無い。

 

 

 ただし、それはあくまで“健康に影響は無い”のであって、“戦闘に影響は無い”というワケでは無い。

 

 

「みっ!? みゃっ! あうっ! しびびっ!?」

 

 霧そのものに纏わせた電気は、大気中の水分を縦横無尽にかけている。電気を浴びた影響で体が反射的に動き、その動いた先の霧が帯びている電気が流れる。すると、再び体が動き、電気が流れる。霧も電気も俺が断続的に流しているから途切れない。

 

「歩! うっ!?」

「母さん! いっ!?」

 

 しかも部屋全体に充満しているから、隅に逃げていた輝と奈美も動けば電気を食らう。隅の方の密度は薄いが、それでも動きを阻害する事は可能だ。

 

 ガクン、と歩の足が力を失う。

 俺は、霧と雷を仕舞った。青と紫のカラーリングが、消える。

 

「く、……どういうつもり?」

「俺は敵じゃない。さっきも言ったハズだ、空しいってな」

 

 怪訝な顔の歩にそう答える。

 傷つけても、空しい。護衛の連中は、そしてあいつら(・・・・)を殴ればスカッとするけど、何の関係の無い人を殴っても、モヤモヤしたものが胸の内に残るだけだ。

 ……殺せば暗い喜びは芽生えるかも知れないがな。

 

「俺は、敵じゃない。歩達は、俺や俺の大切な人に害をなす存在じゃ無い。なら、俺が3人を攻撃する理由は無い」

「……さっきまで電気でいたぶっていたくせに」

「あれはそっちの動きを押さえるためだ」

 

 あのまま異種格闘技戦に持ち込んだところで意味は無かっただろう。護衛がまたやって来た時に疲労困憊で相手するだけだ。それは避けるべき事である。

 だったら一時的に相手を押さえ、再び会話できるように持ち込むしか方法は無い。

 

「済まなかった。桜、3人の治療を頼む」

「分かった」

 

 フワァ、とピンクの光が部屋全体を包み込む。程無くして膝をついていた3人は立ち上がる事に成功した。

 

「……敵になるんじゃないの?」

「共通の敵がいるんだったら、今は少なくとも手を組むべきだと思うが?」

「………………」

 

 歩は暫くこちらを睨みつけていたが、観念したのか、溜息を吐いた。

 

 その後は、輝や歩の世界観のお話だ。

 驚いた事に、彼らの世界は、彼ら自身の手で原作から離れたストーリーになっているらしい。

 ユベルが最初から十代と共にいたり、アニメ版の世界観だが紅葉(こうよう)プロがいたり、『トラゴエディア』がラスボスに関わり、その事件名が“The light of destruction”、通称“TLOD事件”というらしい事も教わった。

 更にその事件をラスボスを倒したのは輝であり、それ故に彼は向こうではちょっとした英雄として見られているという。

 何ともまあ、ぶっ飛んだ世界である。

 

「原作ブレイクにも程があるだろ……」

「あはは……」

 

 

 

 

 

 お互いの状況の説明が終わり、一段落ついた頃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 ドゴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

 

 

 

 

 

 

「何だ!?」

「爆発音!?」

 

 扉の向こう側から響く、火薬の炸裂音。

 この臭いは……、無煙火薬!?

 

「ちょ、ここはいつから爆弾作る兵器工場になったんです!?」

「最初からだろうな!」

 

 爆発するリンゴやミカンを作る工場だ。何十年経った今でも、野生化したそれらは残っている。敵がそれを使っても不思議では無いかも知れない。

 俺は扉に急いで数本の閂と、それを固定する鋲を打ち込む。数瞬の後、扉が凹んだ。閂で封をしていなかったら、吹き飛んでいたところだろう。

 

「皆、窓から脱出するよ!」

「分かった、先に行け!」

 

 割れた窓に歩は近くにあったソファを放り投げて(酔ってなくても力あるな、この子)完全な脱出口にし、3人は先に窓から脱出する。ここが1階で助かったと思いつつ、俺と桜も急いで窓から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛び出した先は、イチゴ畑だ。ただし、ここのイチゴは背がやや高いツルになっている。イチゴは野菜の仲間なので本来なら地面の近くになるのだが……。

 ちなみにイチゴの他にスイカも野菜の仲間だ。地面の近くにツルや背の低い節などになっている、或いは地中に埋まっているのが野菜、木の上になっているのが果物である。

 

 クン、と鼻が異臭を感知する。

 まさかこのイチゴは!?

 

「イチゴ畑ですか……、このイチゴもアルコールが入っているのかな?」

「いや、これ起爆するぞ?」

「「「え!?」」」

 

 植物兵器資料の中にあったものの1つ、“ニトロイチゴ”だ。胃の中の酵素と反応して無害になるが、衝撃で大爆発を引き起こす。

 

「音ぐらいは平気だ。が、強いショックで爆発する」

 

 資料には一箱で鉄筋コンクリート4階建てのビルを木端微塵にする、と書いてあった。

 プラスチック爆弾100グラムが3階建てを吹き飛ばす威力なので、つまりそれ以上の威力となる。

 ここに群生しているイチゴはどう見ても箱詰めにして二十箱を軽く超える量がある。1個でも爆発したら、残りのイチゴも誘爆してしまうだろう。そうなれば俺達は全員骨の欠片も残らない可能性が高い。

 大急ぎで俺は髪を伸ばしてイチゴを刈り取り、一ヶ所に集める。小粒なイチゴなので、二十箱を超える量と言っても、そこまで大した量にはならない。

 

 ドゴォン!

 

 また大きな爆発音がし、直後に複数の重い金属音がした。

 あ、ヤベ、閂外れたっぽい。

 

「見つけたぞぉ!」

 

 そして窓から飛び降りて来る巨躯。スロウスの様にガタイの良い巨人なのでは無く、横にデカい、有体に、そして俗に言うデブ、というヤツだ。

 差別用語だと批難されるだろうが、本格的にこいつは太っている。関取なんて目じゃ無いくらいに。ギネスには体重が500キロの人がいたそうだが、こいつはそれと同じかそれ以上にありそうだ。

 

「グヒヒ、“ニトロイチゴ”か……! これは丁度良い!」

 

 ジャキン! と護衛が鉤爪を装備する。

 マズい! 衝撃を与えて爆破するつもりだ!

 

「させるか!」

「させない!」

「させぬっ!」

「おっとぉ!」

 

 同時に飛びかかる俺と歩と桜。敵は俺の拳と歩の蹴り、桜の剣を器用に受け止める。

 

「うらぁっ!」

 

 更にその姿勢を崩す事無く護衛は足元の石を、山となったイチゴへ向けて蹴り飛ばす。

 速い!? あの速度で当たったら……っ! 防ぎたいが……、この距離じゃ間に合わない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スカッ!

 

 

 え?

 

「は?」

「ぬ?」

 

 石が、外れた……?

 

 というか、積み上げてあったはずのイチゴが、無い!?

 

「ご馳走様でした」

 

 パン。と掌を合わせたのは輝だった。

 ご馳走様って、まさか、お前……!?

 

「輝、おま、あの量のイチゴを全部食べたのか!?」

「はい。食べれば爆発しないんですよね」

 

 驚きで目を丸くする俺、桜、護衛。それに対して事も無げにケロリと輝は言い放つ。

 口の端にイチゴの赤い果汁がついているから、少なくとも食べたのは間違い無さそうだが……。

 

「5キロは軽くあったっつーのに……」

「よもや、あの短時間、しかもたった一人で全てを食すとは……!」

「父さんは健啖家だからね……」

 

 まだまだ食べたりない、といった表情の輝。その横で苦笑いしているのは娘の奈美だ。血の繋がった実の娘なら既知の事実なのだろうが、それでもあの表情を見るに彼女にとっての通常では無いようだ。

 

「このグラトニー相手に食で勝負か! ならばこの」

 

 おっと名前発覚。やはり、あの体型は“暴食”のグラトニーか。

 グラトニーは何も無い空間から大きな球体を取り出す。あれは……、スイカか?

 

「鉄球のように硬い“メタルスイカ”だ! 食べられるものなら」

「(バリボリゴリガリ……)皮は食べておいたぞ。塩が欲しいな」

「中身は頂きました。塩は、持ち合わせて無いですね」

「うぉう!?」

 

 ペッ、と種を飛ばす輝。皮は硬くても中身は違ったらしいな。

 グラトニーが次に取り出したのはナシだ。

 

「果汁が可燃性の油になる“油ナ」

「口にしても大丈夫ですよね、桜さん」

「毒では無いが……、食べた後で言うな」

「シ”って、もう食べた後かっ!?」

 

 その後もグラトニーは様々な果物を取り出すも、全て輝(一部俺や歩達)に食べられてしまった。

 

「まだまだ食べられるよ?」

「そろそろわたしはお腹が膨れて来たんだけど……、まだいけるよ」

「ぬぅっ!」

 

 暴“食”なのが災いしたな、グラトニー。持ち合わせの物は全て果物(一部野菜)、食べられるものならば、輝の前には無力らしいな。

 一応、有害なものでも桜が解毒の魔法を心得ているし、俺にも血清があるからある程度は問題無いのだが……。

 

「ぐぅ……」

「ネタ切れか、グラトニー?」

「でしたら、これはどうでしょう?」

 

 輝はそう言うと、懐からお弁当の包みを取り出した。

 

 

 

 ゾク……ッ!

 

 

 

 バカな、俺が、あのお弁当箱に、恐怖を感じている、だと……っ!?

 

「これを食べられますか?」

「食ってやるとも!」

「輝、それわたしが作ったヤツだよねっ!?」

 

 ああ、歩の作ったヤツなのか。

 それではどうぞ、と輝は包みの中からおにぎりを取り出し、差し出す。見た目は何の変哲も無い、普通の三角おにぎり。白い米を使っているし、海苔だって普通に長方形のものを巻いてあるだけ。においだって変なものは無い。大きさは大人の男の拳より一回りから二回り程小さいぐらいの、要するに一般的な大きさだ。輝が一齧りするが、彼自身に何の変化も見られない。

 なのに、何故だ!? 俺は何故あのおにぎりを恐怖するっ!?

 

「アグッ!」

 

 ガブリ、とグラトニーはその大きな口でおにぎりに齧り付く。

 その瞬間!

 

「アゲバシブベラゴェノブラベウギフォヴグリナバァッ!? Σ(.Д゜)」

 

 何か、飛んでも無い顔してぶっ飛んだ。もう錐揉みしながら、ド派手に。

 序に言うと、片方の目が白目向いているし、もう片方は虚ろだ。そして両方の目がそれぞれ違う方向を向いている。器用なマネを……。

 さて、桜、マイクあるか?

 

「どうぞ、マイクを」

「ありがとう」

 

 俺が差し出した手に、桜がどこからか取り出したマイクを手渡してくれる。

 電源は入っていないのだが、まあ、気分だ。

 すぅ、と息を吸い込む。

 

 せぇの。

 

 

 

 

 

 

「いやいやいやいやいや!? 食べて断末魔っておかしいだろ!? おにぎり食ってそれって何事よ!? 普通何か食べたら「美味しい」か「不味い」に二択だよな、感想は!? あの見た目キレイなおにぎりでそうなったって逆に怖いぞ!? それと食べただけで錐揉みしてぶっ飛ぶって何だよ!? 一体どこからどういうダメージを受けてそうなったワケ!? 今も不気味な紫と緑の泡吹いてるし!? 最早不味いとかいう次元じゃねぇっつう事か!? 何なんだよ何食べたんだよ何がおにぎりに化けてたんだよぉおおおおおおお!!?」

 

 

 

 

 

 

 ふう。

 

「歩、アレ、何?」

「何って、おにぎり……」

「歩の料理はABC兵器ですから」

「大量破壊兵器!?」

 

 A=Atomic(原子爆弾)

 B=Biological(生物兵器)

 C=Chemical(化学兵器)

 一応、ね。

 最近じゃAは核爆弾のN(Nuclear)に、それから高性能爆薬のE(Explosive)と放射性物質のR(radiological)なんかを加えて、CBRNE(シーバーン)なんて称されている。

 

「どう? 母さんの料理は凄いよ!」

「嬉しくないから!」

「うん、虫の知らせがして用意してもらったのは正解でした」

「だから突然用意させたの!? 折角愛情込めたのにっ!」

「まあまあ、愛情を込めて作ってくれた。それだけで私は充分お腹一杯ですよ」

「う、うぅ……、それなら、って、騙されるかぁ! 乙女ナメんなぁっ!」

 

 はいはい御馳走様。

 

「グヒ、あぐぁ……。あんな奇怪な食べ物は、有史以来、初めて、だぜ……」

「ヒドいっ!? 普通そこまで言う!?」

 

 乙女心はズタズタよぉ! と歩は泣き崩れ、輝と奈美ちゃんがそれを慰める

 ま、リアルファイトじゃこいつに勝ち目は無いな。大食い勝負?も輝がいればこっちに有利。そして歩の料理は食べられない。ほら、もう道は1つしか残ってない。

 

「どうする? 尻尾を巻いて逃げるか?」

「な、ナメるな! おいらは七つの大罪の内の一つ、“暴食”のグラトニー! 人間如きに敗走なんざするかぁ!」

 

 あ、復活した。流石は頑丈さが取り柄の護衛。

 

「なら、構えな。お前が俺達に勝つには、それ以外方法は無い」

 

 ジャキン、と俺のディスクが起動する。

 今回は、少し趣向を変えてみるか。

 更に朝倉一家にプロテクターを装備。説明は事前にしてある。

 

「うわ、あのデタラメカード軍団と戦うのか……。勝てるのかなぁ……」

「ほら、輝! TLOD事件を解決した英雄が弱気にならない!」

「父さん、頑張ろう? 母さんと私もついてるから!」

「……分かりましたよ。まあ、元から逃げるつもりは無いですけどね!」

 

 諦観と熱意を綯い交ぜにした輝がディスクを起こす。その背後には、沢山の、歴代メインキャラの精霊やエースが一瞬見えたような気がした。

 

「さ、て。輝を放って逃げるワケにもいかないし、いっちょやりますか!」

 

 勇気凛々といった様子の歩がディスクを起こす。背後に映ったのは、漫画版の融合ヒーロー達。

 

「大好きな父さんと母さんを殺させないためにも、私だってやるよ!」

 

 真剣な表情の奈美ちゃんも、二人とは異なるディスクを起動させる。その周囲を、サイバー流の機械龍達が取り巻くのがハッキリと見えた気がした。

 

「流石に3人もやられてるんでね、油断はしねぇぞぉ!」

「来いよ、今回もキッチリ勝ちをもぎ取ってやるからよ!」

 

 ジュクジュクとした気味の悪い闇が、グラトニーの腕に集まり、ディスクを生み出す。

 さあ来い、グラトニー! この【黒鬼の騎士】遊馬崎黎が相手してやる!

 

「覚悟しな、叩き潰してやる!」

「グヒヒヒ、おいらはこれまでの奴らとは一味違うぞ? ぶち殺すっ!」

「私達と黎達の未来のためにも、勝たせてもらいます!」

「輝と奈美はわたしが守る! アンタなんかに殺させない!」

「父さん、母さん、行くよ!」

 

 

『デュエル!』

 

 

to be continued

 

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