遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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フィオ・フレイ「「なーにかな、なーにかな! 今回は、これ!」」



スモール・ワールド
【通常魔法】
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):手札のモンスター1体を相手に見せる。
見せたモンスターの種族・属性・レベル・攻撃力・守備力の内、1つのみが同じモンスター1体をデッキから選んで確認し、手札から見せたモンスターを裏側表示で除外する。
さらに確認したカードと種族・属性・レベル・攻撃力・守備力の内、1つのみが同じモンスター1体をデッキから手札に加え、デッキから確認したカードを裏側表示で除外する。



フィオ「うわ、何か凄いゴチャゴチャした効果だ」

フレイ「簡単に言えば、手札とデッキからモンスター2体を除外してサーチするカードなのです。これがあれば大抵のモンスターはサーチできるのですよ」

フィオ「とはいえこのカードありきでデッキを組まないようにしたいね、裏で除外されて別のパーツが使えないとか笑えないし」


閑話 スカッとするためにソリティアをするのは間違っているだろうか・破

 

SIDE:フィオ

 

 

 

 鮫島校長が留守の時を狙い、教育実習生の鰐一郎・フェイヴァー先生により仕組まれた実技テストでわたし達は手酷いダメージを負った。

 敗北し、叩き潰され、まるで負け犬と言わんが如く劣勢を強いられる。

 そしてそんなわたし達の中心である黎。彼にはなんと5人がかりでのデュエルが申し込まれた。

 幸いにもサシの戦い5連戦になったけど、いくら黎でもキツい筈だ。万一の事があったらわたし達が助けにいかないと。

 

 

──そう思っていた

 

 

『伏せておいた装備魔法『風魔手裏剣』の効果。お前のライフを700削る』

『は、ちょ、おま、こっちのライフは500って、ぐぁああああああー!?』

『まず一匹』

 

 

黎:LP 4000

ブルー生①:LP 500→0

 

 

 何と黎は、先行1ターン目でアッサリとブルー男子を1人倒してしまった。

 ボロボロにされたわたし達は、数少ない勝者の三沢君と十代君とわたしを中心に集まり、黎のデュエルを見守っていたが、どうにもいらない心配をしていたらしい。

 

「成程、これはツマラナイって言ったのも頷けるね」

「確かに相手にターンを渡さなければ、メタデッキは何の意味もありません」

「ましてや主殿は何種類ものデッキを用意した、あれではメタの張りようが無い」

 

 最初のターンは攻撃できない、必然的に勝利するためには特殊勝利かデッキ破壊、後は効果ダメージしかない。

 黎が選んだのは効果ダメージ……、ただし敵に与えたのは実質700ポイントのみ。

 あまりにもソリティアすぎる流れに、丸藤君が目を丸くして説明を求めてきた。

 

「三沢君、黎君は何をしたッスか!? 何かゴチャゴチャしながら自分のライフを減らしていたら倒しちゃったッス!」

「あれは『大逆転クイズ』というカードを使った戦術だ。黎は【緑一色(リューイーソー)】と言っていたな」

 

 そうして三沢君は丁寧に説明してくれた。

 あれはフルモンスターの亜種で、魔法カードしか入れていないデッキだという事。

 自分からライフをギリギリまで削る戦術を取るという事。

 そして最後には『大逆転クイズ』を発動してライフを入れ替えるという事。

 『大逆転クイズ』は発動時に手札と場のカードが墓地に行くため、墓地に送られたらダメージを与えるカードと組み合わせるという事。

 

「……そういう事なのね、だから黎は自分からライフをガリガリと削っていた」

「自爆に見せかけてのトリックプレイ、坊やったら趣味が悪いわ」

 

 黎が何をやったのかと言えば、只管に魔法カードを発動しまくった事だけ。使ったカードは10枚を超える。

 そうしてライフを残り500にした黎は『風魔手裏剣』を伏せて『大逆転クイズ』を発動。デッキが全部魔法カードだから外しようも無くライフは入れ替わり、勝利したというワケだ。

 

 

 

大逆転クイズ

【通常魔法】

自分の手札とフィールド上のカードを全て墓地に送る。

自分のデッキの一番上にあるカードの種類(魔法・罠・モンスター)を当てる。

当てた場合、相手と自分のライフポイントを入れ替える。

 

 

 

風魔手裏剣

【装備魔法】

「忍者」という名のついたモンスターのみ装備可能。

装備モンスターは攻撃力が700ポイントアップする。

このカードがフィールド上から墓地に送られた時、相手ライフに700ポイントダメージを与える。

 

 

 

 彼の戦術について「えげつない」「あいつマジ怒ってる」と皆が囁く中、2戦目がスタート。今回も先攻だけどデッキを変えていたから【緑一色】では無いみたい。

 

『魔法カードを発動、『天使の施し』。3枚ドローして2枚捨てる』

『テメェ……、まさかさっきみてぇな事する気か!』

『お、早速来たな。『スモール・ワールド』を発動。まず手札のモンスター1体をお前に見せる。見せるのはこの『千眼の邪教神』。

 次にこれと攻撃力・守備力・種族・属性・レベルのどれか1種類だけが同じモンスターをデッキから見せる。選ぶのは『太古の壺』、こいつは『千眼の邪教神』と同じレベル1だ。その後、『千眼の邪教神』は裏で除外する。更に……』

『長ェんだよ』

『そう言うな、まだ処理終わってねぇんだ。そんでこの『太古の壺』でも同じ処理を行い、今度は手札に加える。同じ地属性の『トレジャー・パンダー』をサーチする』

 

 

 

スモール・ワールド

【通常魔法】

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):手札のモンスター1体を相手に見せる。

見せたモンスターの種族・属性・レベル・攻撃力・守備力の内、1つのみが同じモンスター1体をデッキから選んで確認し、手札から見せたモンスターを裏側表示で除外する。

さらに確認したカードと種族・属性・レベル・攻撃力・守備力の内、1つのみが同じモンスター1体をデッキから手札に加え、デッキから確認したカードを裏側表示で除外する。

 

 

 

『そして見せた『太古の壺』もまた裏側表示で除外される。で、加えたこの『トレジャー・パンダー』を召喚』

『ホァイッ!』

 

 

トレジャー・パンダー:ATK 1100

 

 

 汎用的な手札交換カードを使用した後、今回のデッキではモンスターを召喚した。『大逆転クイズ』は使わないデッキみたいだ。凄く複雑な事をしてたけど、要するにアレって“手札とデッキのモンスターと似たステータスのモンスターをサーチする”って事だね。

 さて、あの探検家みたいなパンダで何を見せてくれるのだろうか。

 

 

 

『俺は『トレジャー・パンダー』の効果発動。自分墓地の魔法・罠カードを3枚まで除外し、その枚数と同じレベルの通常モンスターを1体デッキから特殊召喚する。

 墓地から『天使の施し』を除外し、デッキから『ダーク・プラント』を特殊召喚』

『フギャァアアアアアアア!』

 

 

ダーク・プラント:ATK 300

 

 

 は、え? レベル1のバニラモンスター? 何あれ、何をするデッキなの?

 

 

 

トレジャー・パンダー(効果モンスター)

星4

地属性/獣族

ATK 1100/DEF 2000

(1):自分の墓地から魔法・罠カードを3枚まで裏側表示で除外して発動できる。

除外したカードの数と同じレベルの通常モンスター1体をデッキから特殊召喚する。

 

 

 

ダーク・プラント(通常モンスター)

星1

闇属性/植物族

ATK 300/DEF 400

汚染された土と闇の力で育てられた花。

とても凶暴。

 

 

 

『更に『フレグランス・ストーム』を発動、『ダーク・プラント』を破壊して1枚ドロー。引いたカードは2枚目の『ダーク・プラント』、よってもう1枚ドロー。続けて『闇の誘惑』を発動し2枚ドローして『ダーク・プラント』を除外する。

 『トレジャー・パンダー』の効果発動。『闇の誘惑』を除外し最後の『ダーク・プラント』を特殊召喚。これを『フレグランス・ストーム』で破壊し1枚ドロー。

 再度『トレジャー・パンダー』の効果で『フレグランス・ストーム』を除外し『千眼の邪教神』を特殊召喚。これを対象に『ワンダー・ワンド』を装備し攻撃力を500アップさせる。そしてもう1つの効果により『千眼の邪教神』と共に墓地に送り2枚ドローする。

 もう1度効果発動。『ワンダー・ワンド』を除外し、デッキから『バニーラ』を特殊召喚』

『くっ、こいつ1人でやってやがる……!』

『おいクソレッド、遅延行為はやめろ! 反則負けにするぞ!』

 

 ドロー、ドロー、またドロー。更にドロー。またまたドロー。延々とドロー。

 そろそろ彼のターンが3分以上経過した頃だろうか。黎がやった事と言えば、『トレジャー・パンダー』の効果でモンスターを出してはドローソースに変えるだけ。

 更に先程『天使の施し』で捨てたカードをディスクで確認すると『ヘルバウンド』と『チェンジ・スライム』、雑魚モンスターだ。

 まるでモンスターを使い捨てるような戦術に、皆は不快感半分、退屈半分で状況を見ている。

 

『もう1度『トレジャー・パンダー』の効果』

『おい!』

『しょうがないだろ、必要なカードが来ないんだから。墓地の『打ち出の小槌』を除外してデッキから『弾圧される民』を特殊召喚。これを『馬の骨の対価』のコストにして2枚ドロー』

 

 やがて何度目かも分からなくなった手札交換をした瞬間、黎がニヤリと笑った。

 これは、何かを引いたのか。

 

『ククッ、長く待たせすぎて悪かったな。今終わりにする』

『はぁ、やっとかよ。これでオレの輝くステージが』

『速攻魔法『烏合無象』を発動。『トレジャー・パンダー』を墓地に送り、エクストラデッキから獣族モンスターを特殊召喚する。出でよ、『マスター・オブ・OZ』ッ!』

『ヌンッ!』

 

 

マスター・オブ・OZ:ATK 4200

 

 

 

烏合無象

【速攻魔法】

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分フィールドから元々の種族が獣族・獣戦士族・鳥獣族の表側表示モンスター1体を墓地へ送って発動できる。

元々の種族が墓地へ送ったそのモンスターと同じモンスター1体をEXデッキから特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できず、効果は無効化され、エンドフェイズに破壊される。

 

 

 

マスター・オブ・OZ(融合モンスター)

星9

地属性/獣族

ATK 4200/DEF 3700

「ビッグ・コアラ」+「デス・カンガルー」

 

 

 

「あ、あれって!」

「オレの切り札と同じカードなんだな!」

 

 黎の呼び出したボクサー風の巨大コアラを見て、十代君の同室の2人が驚愕する。

 確かに超レアでも何でもないカードだけど、同じカードを使う人が身近にいるってビックリするよね。

 

『攻撃力4200だと!?』

『ただしこの効果で特殊召喚したモンスターはターン終了時に破壊され、このターン攻撃できない。またモンスター効果も無効となるが……、こいつは元々効果が無いから今は関係無いな』

 

 え、身動き取れないモンスターをわざわざ出したって事?

 何を企んでるんだ、黎……。

 

『装備魔法『反目の従者』を『OZ』に装備して、更に『左腕の代償』を発動。手札2枚以上を除外する事で、デッキから魔法カードを手札に加える。このターン俺はカードを伏せる事はできない。サーチするのは『シエンの間者』だ』

 

 

 

左腕の代償

【通常魔法】

このカードを発動するターン、自分は魔法・罠カードをセットできない。

(1):このカード以外の自分の手札が2枚以上の場合、その手札を全て除外して発動できる。

デッキから魔法カード1枚を手札に加える。

 

 

 

『そしてこれで本当に最後だ、サーチした『シエンの間者』を発動。これで『マスター・オブ・OZ』のコントロールをお前に移す』

『ハァ? とうとうイカれやがったか化物、それに何の意味が──』

『『反目の従者』を装備したモンスターのコントロールが変化した時、移された側に装備モンスターの攻撃力分のダメージを与える。よって4200のダメージを受けて貰う』

『え? は?』

 

 一瞬で巨大なボクサーコアラの姿が消え、相手フィールドに次の瞬間に移動する。

 そして『マスター・オブ・OZ』は振り返って背後にいる相手プレイヤーに向け、強烈な鉄拳をお見舞いしたのであった。

 

『そんなバカなぁああああああああああああ!?』

 

 

黎:LP 4000

ブルー生②:LP 4000→0

 

 

『嗚呼、我ながらつまらねぇデュエルだ』

 

 唖然、茫然、騒然。

 また先攻でワンキルを叩き込んだ……。凄いな、彼の頭の中には何通りの戦術が入っているんだ……。

 

「三沢、あれって……」

「【モンスター転移】の戦術をワンショットキルのバーンに特化させた、といった所だろう。執拗にリクルートを繰り返していたのは欲しいカードを引っ張り出すためだったというワケだ。デッキレシピ次第ではドラゴン族を織り交ぜ『F・G・D』の召喚とて可能と見た。サルベージカードを採用すれば『エクゾディア』も行ける筈だ」

 

 

 

シエンの間者

【通常魔法】

自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

このターンのエンドフェイズ時まで、選択したカードのコントロールを相手に移す。

 

 

 

反目の従者

【装備魔法】

装備モンスターのコントロールが移った時、装備モンスターのコントローラーに装備モンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。

 

 

 

 ざわざわ、ざわざわ。

 わたし達の周囲で色々な声が聞こえる。

 大体が黎のデュエルに対する陰口。面白くないだの、卑怯だの、冷たいだの、何だのかんだの。

 まぁわたしも見てる分には面白くない。まるで壁打ちをしているかのように黎は淡々とデュエルをしている。エンタメ性の欠片も無い……、本気で相手をすり潰すためのデッキなんだと強く実感せざるを得ない。

 流石にこの流れは良くないと思ったのか、クロノス先生が黎に苦言を呈した。

 

『あー、ドロップアウトガイ、少しこれは良くないノーネ』

『何故です、禁止カードもルール違反も無かったでしょう?』

『確かにそうデスーガ、これじゃあデュエルじゃないノーネ。できれば、彼らにターンが回るデュエルをしてあげて欲しイーノ』

『そうですか?』

『そうナノーネ』

『そうだこのクズ野郎が! 実力で勝てないからと効果ダメージでいやらしく削りやがって! 貴様の性根がゴミだと透けて見えるぞ! リスペクトも知らねぇ低能低学歴のヘタレカスが! 幼稚園からやり直して来いや!』

『フェイヴァー先生、ややこしくなるから少し黙ってて下さいーノ』

 

 そしてそこに便乗するフェイヴァー先生。

 クロノス先生に任せれば良いのに、余計な事を言うんだから。

 

『はぁ、クロノス先生がそこまで言うのなら特別ルールを設けましょう。次から俺が相手に与える効果ダメージは全部100として扱います。これなら問題無いでしょう?』

『ふーむ、ティラミス風味、それで良いノーネ?』

『構いません。ぶっちゃけ相手にターン回すのダルかっただけなんで』

『……デュエリストとは思えない発言ナノーネ』

『卑怯者に正々堂々を求める程、人間は出来てないんですわ』

 

 

  ☆

 

 

『融合召喚に成功した事で『デストーイ・シザー・タイガー』の効果発動。その素材に使用したモンスターの数まで場のカードを破壊する。素材になったのは5体、よってお前のフィールドのモンスターを根こそぎ破壊する』

『ンだと!?』

 

 迎えた第3戦目、相手はブルー女子の中でも好感度ランキング最下位の高田。使うデッキは【リクルーター】で、普通に戦うと鬱陶しい相手だ。

 これを黎はモンスター効果で対処。フィールドにいた『巨大ネズミ』『コーリング・ノヴァ』『ピラミッド・タートル』『グリズリーマザー』『龍骨鬼』は全滅。モンスターがいなくなった事で『スピリット・バリア』の効力も切れた。

 

『クソッ! だがこっちのライフは5000もある、まだやられねぇ!』

『速攻魔法『融合解除』発動。戻って来い、『エッジインプ・シザー』、『ファーニマル・オウル』、3体の『ファーニマル・マウス』』

『ハッ、雑魚の数を揃えた所で──』

『『ファーニマル・オウル』の効果、ライフを500払い融合召喚を行う。現れろ、全てを噛み砕く荒野の魔獣、『デストーイ・シザー・ウルフ』。このモンスターは融合素材の数だけ攻撃できる』

『……は?』

『喰らいな、5連打を』

『ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

黎:LP 3500

高田純二朗:LP 5000→0

 

 

『所詮、お前はその程度だ高田。弱そうな奴に威張り散らし、強い奴には袋叩き。そういうのを何て言うか知ってるか? チンピラって言うんだよ、チンケで薄っぺらい下っ端って意味だ』

『テッ、メェ……ッ!』

 

 これで3連勝。約束通り黎は2ターン程、高田にターンを渡してから勝利したためクロノス先生との約束は破っていないし、効果ダメージも1ポイントですら与えていない。

 デッキを複数持ち、その全てで十二分以上に戦う。成程、彼が自分を化物というだけあって、人間離れした実力だ。

 

 

 

デストーイ・シザー・タイガー(融合・効果モンスター)

星6

闇属性/悪魔族

ATK 1900/DEF 1200

「エッジインプ・シザー」+「ファーニマル」モンスター1体以上

(1):「デストーイ・シザー・タイガー」は自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。

(2):このカードが融合召喚に成功した時、このカードの融合素材としたモンスターの数まで、フィールドのカードを対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

(3):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「デストーイ」モンスターの攻撃力は、自分フィールドの「ファーニマル」モンスター及び「デストーイ」モンスターの数×300アップする。

 

 

 

デストーイ・シザー・ウルフ(融合・効果モンスター)

星6

闇属性/悪魔族

ATK 2000/DEF 1500

「エッジインプ・シザー」+「ファーニマル」モンスター1体以上

このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードは、このカードの融合素材としたモンスターの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃できる。

 

 

 

『つ、つぇぇ』

『バケモノかよ』

『バケモノ自称してんじゃん』

『そうだったわ』

 

『つか自分でライフ削る事あってもダメージ受けてなくね?』

『確かに』

『最初の2人はターンすら貰えなかったですしお寿司』

『ウェーイ、あれと戦うとかテンションマジサゲぽよになりそうだわ』

 

『カッコイイかも……』

『え、ちょっとアンタ本気?』

『むぅ、さながら荒武者のごとき苛烈さだ』

『そんな可愛いモンかね、ありゃ修羅か羅刹の類よ』

 

 彼に対する評価は、アカデミアでは多岐に渡る。

 義理の妹のために死を恐れない勇者、どんな敵にも容赦しない無頼漢、気に入らない奴はぶっ飛ばすゴロツキ、人間の領域を超えた化物……。

 それぞれがそれぞれ、彼に対する印象を以てここで彼の無双を評価している。これが終わったら果たして黎の評価はどうなってしまうのだろうか。

 

(大丈夫ですよ、マスター)

(フレイ?)

 

 そんな風に不安になるわたしに、相棒は念話で優しく励ましてくれた。

 

(黎さんは元々、多くの人との繋がりを求めるタイプではありません。寧ろ孤独を愛し、誰とも一線を画す人です)

(それは、そうだけど……)

(何よりも……、あなたがいるじゃないですか。風聞も悪習も見ない、可愛い女の子が)

(か、からかわないでよ!)

(ふっふっふー、からかってなんていませんよー? こう見えて凄いお婆ちゃんですからね、わたくしは。長い長い時間を生きてきたわたくしの目を信じて下さい。貴女の存在はきっと彼の助けになります)

 

 そこまでフレイが言うのなら……、わたしに何ができるのかは分からないけど。

 けれどわたしが彼の支えになれるのなら、出し惜しみはしないつもり。自分でも何でかは分からないけれど、ただ彼を助けたいと、そう思えている。

 

(ねぇフレイ)

(はい)

(わたしがさ、人間じゃないって言ったら、軽蔑する? 黎と同類って言ったら、怖い?)

(最初から人外たるわたくしには愚問ですよ、マスター)

(……ありがとう)

 

 どうして黎を助ける事に喜びを覚えるのか、自分が人間じゃないと思えるのか、それは分からない。

 ただアカデミアに来てから少しずつ、何となくそんな感覚が日に日に増していっていた。自覚があるのはそれだけ、黎をどう思っているのかも、人間じゃないなら何の生き物なのかも、それすら一切合切分からないけれど。嗚呼、でも、だけども、けれども、されども。

 

「レーイィー! そのまま行っけぇーー! 後2人だぞぉーっ!」

 

 あの優しい黒鬼を助けられるのなら、それは悪くない事なんだろうなぁ。

 

「後2人! あっとふったり! あっとふったりっ!」

 

 

  ☆

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

『後2人! 後2人!』

『『あっとふったり!』』

『『『あーとふーたりー! あーとふーたりーっ!』』』

 

 つまらないデュエルを続ける事3回、フェイバーの嫌がらせは完全に的を外し俺ではなく成績上位者のブルーに恥を掻かせる結果が続いている。

 そんな俺を怖いものを見るかのように怯える皆。俺はそれに慣れたつもりだった。

 俺は所詮、人間じゃない。

 どこまで行っても俺は化物。

 それで良いんだと、俺と人間が分かり合える事は無いんだと、ずっと思っていた。

 けれども。

 

『頑張れー、レーイ!』

『もうちょっとだよー!』

『つまんねぇデュエルすんなー!』

『ワクワクするデュエルを見せろー!』

 

 最初は、フィオだった。

 彼女が俺に大声で応援を送った。

 そこから次第に、少しずつ輪が広がっていって。

 ほんの数分、ブルーの残党とフェイヴァーが作戦会議をしている間に、観客席では俺を応援するムードが広がっていた。

 

(ったく、物好きが。人を噛まない野獣なんていねぇんだぜ?)

 

 それは俺が縁を切っていた『温かみ』という、人の織り成す財宝。

 決してこの手には掴めなかった、都と傷の舐め合いをするだけが精々だった、いくら金を積んでも手に入らないものだ。

 拒むべきなんだろう。

 怒るべきなんだろう。

 でも、俺にそれはできなかった。

 あーあ、皆と触れ合う内に俺は弱くなったみたいだ。こんなナヨナヨした微温湯(ぬるまゆ)を喜んでいるなんて──、生前の俺が知ったらどんな反応をする事やら。怒るかな、困惑するかな、嘆くかな。

 

「先生、もう1度マイクをお借りします」

「どうぞナノーネ」

 

 すぅ、と軽く息を吸う。

 ったく、あいつらは本当に。

 

「おいお前らぁ! 俺みてぇな化物を応援するってのが何を意味するのか分かってんのかぁ!」

 

 出来るだけドスの効いた声で、脅すようにマイクに向けて喋る。

 

「食い殺されてから後悔しても遅いんだぞ! 人間の味方とは限らないクリーチャーに肩入れして、血迷ったのか!」

 

 それでも彼らは怯まない。

 口々に「望む所だ」「脅してる時点で優しい」「人間の敵であっても私達の味方でしょ」と返してくれた。

 十代が言葉を紡ぐ。「お前は俺の友達だ」と。

 明日香が言葉を紡ぐ。「後悔なんて絶対にしないわ」と。

 フィオが言葉を紡ぐ。「君が食い殺すなんて有り得ない」と。

 フレイが言葉を紡ぐ。「その時はその時です」と。

 そして、隣で桜が微笑みながら言葉を紡ぐ。「優しいな、主殿は。とても優しい怪物だ」と。

 

「はぁ……」

 

 そこまで言われたらしょうがない。

 

「良いだろう! つまらないデュエルはここまでだ! こっからは化物のこわーいデュエルをしてやっから、マジで震えて怯えやがれ!」

『『『ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーー!!!』』』

 

 クロノス先生にマイクを返した俺は、改めて残り2人のブルー生に向き直る。

 

「おいアンタら、今の聞いてたよな? 面白いデュエルにするんだ、協力してくれ」

「アァ!? 誰がやるかよ!」

「図に乗るんじゃねぇぞ!」

「そう言うなって。面白いデュエルってのは、大抵が鍔迫り合いか逆転劇だ。っつーワケで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2人まとめてブッ倒してやる、ハンデ付けてやっから2対1でかかって来い」

 

 

to be continued

 




ぶっちゃけこの程度が相手なら黎は負けません
強い弱いじゃなく、相手が真っ当なデュエルをする気が無いのですから
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