遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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黎・フィオ「「なーにかな、なーにかな! 今回はこれ!」」



下克上の首飾り
【装備魔法】
通常モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターよりレベルの高いモンスターと戦闘を行う場合、装備モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみレベル差×500ポイントアップする。
このカードが墓地へ送られた時、このカードをデッキの一番上に戻す事ができる。



フィオ「通常モンスター専用装備魔法だね、レベルの差だけパワーアップするよ」

黎「レベルを持たないモンスターには何の意味も無い。“壊獣”みたいに自分から用意するのも手だ」

フィオ「レベル1と4でも1500の強化だから、狙って使ってみてね。でも除去には注意!」


STORY65:二人の上級護衛 ★

 

――アメリカ某所

 

 

 

SIDE:無し

 

 

 

 夜も更けたその路地裏で、デュエルが行われていた。

 片や、サングラスをかけ星条旗をのバンダナを頭に巻いた男。機械族モンスターを操る元全米チャンピオンの“バンデット・キース”ことキース・ハワードだ。

 もう片方は身長180センチ余りの男。スポーツ刈りに漆黒のスーツを着ている。しかしそれはビジネススーツでは無く、喪に服するための物だった。

 

「我のターン、ドロー!」

 

 現在、喪服の男の手札は0枚。しかし……。

 

「魔法カード『貪欲な壺』を発動。墓地のモンスター5体をデッキへ戻してシャッフル。そして2枚のカードをドロー」

「ここでドローソースだと!?」

 

 男がカードを引く。

 ニヤリ、と笑った。

 

「何がおかしいっ!」

「いや、我の勝利はたった今確定した」

 

 男は不敵に嗤った。

 その眼に映る光は、余りにも残虐。

 

「まだ名乗っていなかったな、キース・ハワードよ。我が名はラース、いずれ世界を滅するお方に仕える者だ」

 

 

――異世界の炭鉱場

 

 

「やッタ……、勝っダんだ……。ぅぐ、ガフッ!」

「分かったから喋るな、主殿! 傷口が開く!」

 

 ラストとの戦いを終え、黎、桜、空時ファミリーは操作場の近くの小屋で休んでいた。戦いが終わって緊張の糸が切れたのか、その場に倒れた黎を治療するためだ。

 メリオルを治療した時に比べて清潔さも広さも無いが、そんな事を気にする以前に黎の傷が深刻だった。今も結構な量の血を吐いた。

 桜はラストが黒い霞となって消滅しきるのを見届ける時間すら惜しみ黎に必死に回復術をかけて始めた。

 

「俺は、良い……。それより、アルフ達を……」

「止痛剤ならもう使った! 全員の治療も終わっている! 主殿が最後だ!」

 

 全身の何ヶ所にも及ぶ銃創、特に頭部に三発、胸部に四発、その他には十発以上喰らっている。常人なら、いや、人の何十倍も頑丈な黎ですら致命傷だ。

 ただでさえこの戦いの前からボロボロだったと言うのに、更に傷口が増えてしまった。

 

(ハハ、フレイに怒られちまうなぁ……)

 

 現在、必死になって桜が治療している。止血剤と造血剤を処方し、必死に治癒術を行使。元気だったレオとメリオル、『ゴーズ』達精霊に頼んで先の詰め所まで備え付けのタオルなどを取りに行って貰っている。

 

「黎……」

「案ずるなライ殿。主殿は頑丈だ、この程度では死なぬ」

 

 心配そうな顔するライを桜が励ます。しかし、それが空っぽの根拠だと言う事は誰よりも桜自身が分かっていた。

 

(死んでくれるなよ、主殿……!)

 

 桃色の光が彼の傷口を消していっているが、完治まではまだ時間がかかりそうだった。

 

 

 

 

 

――アメリカ某所

 

 

 

キース:LP 3000

手札:1枚

フィールド

:デーモニック・モーター・Ω(ATK 3600)

:一族の結束(永続魔法)、エクトプラズマー(永続魔法)、伏せカード1枚

 

 

 

ラース:LP 4000

手札:2枚

フィールド

:モンスター無し

:魔法・罠無し

 

 

 

「勝利が決まっただぁ?」

 

 キースは鼻で笑った。

 

「バカ言ってんじゃネェよ! 俺様の場には攻撃力3000超えの『デーモニック・モーター・Ω』がいるんだぜ! 対し、テメェの場はガラ空き! この状況でどう引っ繰り返すってんだ!」

 

 しかも、現在キースの場に伏せられているカードは『リミッター解除』。下手に突っ込めば逆にラースがやられてしまう。

 

 

 

デーモニック・モーター・Ω(効果モンスター)

星8

闇属性/機械族

ATK 2800/DEF 2000

自分のエンドフェイズ時に、自分フィールド上に「モータートークン」(機械族・地・星1・攻/守200)を1体攻撃表示で特殊召喚する。

1ターンに1度だけこのカードの攻撃力を1000ポイントアップする事ができる。

この効果を使用した場合、エンドフェイズ時にこのカードを破壊する。

 

 

 

エクトプラズマー

【永続魔法】

各プレイヤーは自分のターンのエンドフェイズ時に1度だけ、自分フィールド上の表側表示モンスター1体を生け贄に捧げ、元々の攻撃力の半分のダメージを相手プレイヤーに与える。 

 

 

 

一族の結束

【永続魔法】

自分の墓地に存在するモンスターの元々の種族が1種類のみの場合、自分フィールド上に存在するその種族のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする。

 

 

 

リミッター解除

【速攻魔法】

このカード発動時に、自分フィールド上に表側表示で存在する全ての機械族モンスターの攻撃力を倍にする。

この効果を受けたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

 

 

 

 だが、ラースは余裕の笑みを崩さない。

 静かに手札を1枚引き抜いた。

 

「こうやってだ。魔法カード『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』を発動。我の場と墓地からモンスターを除外し、その素材に見合ったドラゴン族融合モンスターを融合召喚する」

 

 

 

龍の鏡

【通常魔法】

自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。

(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

 

 

 

 ラースがディスクの墓地のゾーンに手をかざす。

 吐き出された『サファイアドラゴン』、『アレキサンドライドラゴン』、『スピアドラゴン』、『ストロング・ウィンド・ドラゴン』、『バイス・ドラゴン』を受け取ると、代わりにエクストラデッキのホルダーから融合モンスターを1体、ディスクに叩き付けた。

 

「さあ現れよ、『F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)』!」

『ジシャァアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 

 

 

F・G・D(融合・効果モンスター)

星12

闇属性/ドラゴン族

ATK 5000/DEF 5000

ドラゴン族モンスター×5

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカードは闇・地・水・炎・風属性モンスターとの戦闘では破壊されない。

 

 

 

F・G・D:ATK 5000

 

 

「な、『F・G・D』だと!?」

 

 光に導かれ、黄の鱗を持った巨大な五つ首の竜が現れる。

 炎、雷、地、風、闇の頭を持つ、デュエルモンスターズの中でも最強の一角に名を連ねるモンスターだ。

 

(だ、だが問題無ぇ! 『リミッター解除』で返り討ちにしてやる! そして手札の『死者蘇生』で『デーモニック・モーター・Ω』を復活してオレの勝ちだ!)

「バトル。『F・G・D』よ、その不格好な鉄屑のオモチャを攻撃しろ。“ギガ・デストロイ・バースト”!」

 

――このデュエル、貰った!

 勝利を確信したキースはディスクのボタンに手をかけた。

 

 

 

 

 

――炭鉱場

 

 小屋の中には相変わらず桃色の光が溢れている。治療開始から既に30分は経過しただろうか、しかし未だ黎の顔色は悪い。

 

『オイ桜ちゃんよぉ、こいつはマジメに治るんだろうなァ!?』

「治すために、私が今治療しているのだ! 余計な口を出さずに指示に従ってくれ!」

 

 青い顔で必死に桜は治癒術をかけ続けている。その効果がどれ程薄くても、桜は術を止めない。自分にできるのはこれくらいだからだ。

 どれだけ黎に自分がついて行っても、所詮は1枚のカードの精霊。できる事には限界がある。今、その限界がどこなのかを問われている。ここでマスターを殺させてしまうのか、それとも助けられるのか。

 

(死なせぬ。絶対に死なせはせぬぞ、主殿! 貴方が死んだら、誰が義妹君を救うのだ!)

 

 ギリリと歯を食い縛り、より一層術の力を強める桜。

 しかしその時だった。

 

 

 

 

 

――ガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァアッ!

 

 

 

 

 

「こ、この声は!?」

『ピキー!?』

「バカな!?」

「精霊陣、結界を張れ!」

『分かった!』

『了解です!』

 

 桜の指示によって、『ゴーズ』達精霊がドーム状のバリアを展開する。強度を優先したため、全員を包める程度のサイズだが。

 次の瞬間、爆発によって小屋が吹き飛んだ。

 

「ぐおっ!?」

「きゃあっ!?」

 

 結界のお蔭で中にいるライや桜達は全員無傷だが、小屋が綺麗さっぱり無くなってしまった。

 もうもうと立ち込める煙の中、人影が一つ。

 

『ちょっと、冗談じゃ済まないよ、これは……』

 

 腰まで届く、長い、漆黒の髪。

 

『もう1度戦うだけの力は残ってねェぞ!?』

 

 ボロボロになり、より扇情的になった黒いドレス。

 

『このデュエルで負けた者は、死ぬと聞いていましたが……!?』

 

 そして両手には拳銃。

 

『マズいですね……』

 

 更に腰には手榴弾。これで小屋を吹き飛ばしたのだろう。

 

「何故、貴様は生きているのだ……」

 

 そう、そこにいたのは……。

 

「答えろ、ラストッ!」

 

 先刻倒したハズのラストだった。

 

 

 

 

 

――アメリカ某所

 

「“ギガ・デストロイ・バースト”!」

 

 迫り来る最強のブレス攻撃。

 それを見てキースは1枚の魔法カードを発動させた。

 

「バカめ! リバースカード、オープン! 速攻魔法『リミッター解除』! これで『デーモニック・モーター・Ω』の攻撃力を倍にしてやる!」

 

 

デーモニック・モーター・Ω:ATK 3600→7200

 

 

 ガチン、という音と共に巨大な殺人マシンのエンジンが異常な回転数を弾き出し始める。限界値を強制的に振り切った事により、攻撃力が完全に『F・G・D』を上回った。

 だが――

 

「温いな。速攻魔法『禁じられた聖槍』を発動。モンスター1体の攻撃力を800下げ、エンドフェイズまでこのカード以外の魔法・罠の影響を消滅させる」

「何だと!?」

 

 

 

禁じられた聖槍

【速攻魔法】

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は800ポイントダウンし、このカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

 

 

「これにより、『リミッター解除』は当然の事、『一族の結束』の効果も適用されなくなった。よって攻撃力は元々の数値へと戻り、更にそこから800下がる」

 

 

デーモニック・モーター・Ω:ATK 7200→2000

 

 

「こ、こんなバカな事が……!?」

「貴様の負けだ、落ち武者」

 

 エンジンの異音が消滅し、平常運転へと戻った『デーモニック・モーター・Ω』。その巨体を後ろにいたキースごと、炎、水、雷、地、闇のブレス攻撃が呑み込んだ。

 

「ぐぁぁああああああああああぁぁぁあああっ!?」

 

 

キース:LP 3000→0

 

 

ラース:WIN

キース:LOSE

 

 

 

 

 

――炭鉱場

 

「ふ、ふふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふ……」

 

 半ば虚ろな瞳で黎達を見るラスト。

 体はノイズが走っているビデオのように時折揺らめき、フラフラと姿勢も安定していない。涎まで垂らしている。

 

「殺す……、コロす、こ、ココこ……」

『!?』

「キフヒャハハハハハハアハハハハハハハハハハハアアア! コロコロッロココロロロロロシテヤルゥウウゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!」

「こ、壊れやがったのか!?」

『来るぞ!』

「“害銃亡業(がいじゅうないごう)”ゥッ!」

 

 ラストの叫びと同時に、その拳銃が変化。二丁拳銃はサブマシンガンとなった。

 

『散れぇ!』

「シネェェェエエェェェエエエエエエエェェエエェェェェ!」

 

 引き金が引き絞られると同時に銃口が火を噴く。

 全員がバラバラの方向へと飛び退く。

 

「ギギッギギギィ! ニガ、サナイッ! “対犠冥分(たいぎめいぶん)”!」

 

 ラストはそこから更に、五人に分身する(・・・・・・・)

 そこからまるで鳥のようにジャンプしたラストは、手にしたマシンガンを標的という名の獲物に押し付けた。

 

「何!?」

「バカな!?」

『追いつかれただと!?』

『死にかけのコイツのどこにこんな力が!?』

 

 『ゴーズ』と『カイエン』に支えられたライの額に。

 『ギアフレーム』と『ピースキーパー』に乗ったアルフの胸に。

 『ダーク・ヴァルキリア』と『フレイヤ』と共に跳んだエルフィの腹部に。

 『キーメイス』のメイと共にメリオルを抱えて走ったレオの頭に。

 桜が背負った黎の背中に。

 

「チェックメイトォオオオオオオオオオオオッ!」

 

 無情なマズルフラッシュが、無人の炭鉱場に輝いた。

 

 

 

 

 

――アメリカ某所

 

「ク、クククク! やはり良いな、欲の強い人間は。こうして惨敗すれば、悔恨の意を残す。それこそが邪神様の復活の糧になるとも知らずにな!」

 

 スチャッ、と手の中にあるカードを見る。

 イラストには鉄格子が嵌めてあり、その中では先刻戦っていたキースが絶望と怒りが綯い交ぜになった表情で格子を掴んでいた。無論、絵は動かない。

 

「これで、また1人……。最初からこうすれば良かったのかも知れんな。こっちの方が集まる力は強い。最も、デュエルで勝利した後のみという限定的な物だが」

 

 まあ、一長一短か? とラースは嘲るように笑った。

 こうしている間にも、邪神は世界中の負の感情を糧に復活へと進んでいる。既に護衛は2人にまで減ったが、これなら間に合うかも知れない。

 

「さて、ラストの反応が消えたが、つまりそれはあの売女(ばいた)が死んだという事。即ち……」

 

 あの“騎士”は死ぬという事だ。

 勝者の笑みを浮かべ、ラースはその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

――炭鉱場

 

 無情に響く発砲音。だが、一滴の血ですら滴らない。

 

「アメェんだよ……」

「!?」

 

 銃口に対する感覚がいつの間にか無くなっている。

 声のする方向には、数瞬前まで狙っていた全員がいた。

 

「バカナ!? ナゼ死ンデナイ!?」

「そんなん、俺が髪の毛で回収したからに決まってんだろ?」

 

 確かに、黎の髪の毛には桜達精霊を含めて空時一家が巻き付かれている。

 トリガーを引く瞬間は確かに銃越しに感覚があった。なのに今はいない。

 

(ソれほど早く、回収したとデモ言うノ!?)

 

 黎はさっきまで精霊に背負ってもらわなければならない程衰弱していた筈だ。実際今でもかなりフラフラで顔色が悪い。

 

「主殿……」

「ありがとよ、桜。お蔭で元気になった」

 

 そんなワケが無い。桜は腰に回った黎の髪を掴みながら頭を振った。

 さっきまで彼は半死状態の重傷だったのだ。如何に回復術と言えど、そんなすぐに全快する事は有り得ない。だから医療・医学が発展したのだ。

 このまま戦えば、黎が致命傷を負う恐れがある。そんな桜の心配を他所に、黎は皆を下ろすと、ラストと向き合った。両手に赤い模様の走っている長刀を斜めに構える。

 一方のラストも、マシンガンを捨てて大型のバズーカを構えている。小型の弾丸では無く、こちらの威力のある一撃で決めるつもりなのだろう。

 

「キィシノタマシィイイイイイイイイイイイイッ!」

「ラストォオォオオオォォオオオオオオオオォッ!」

 

 機関銃が火を噴き、鬼が地を蹴る。

 爆発が、起きた。

 

 

 

 

 

――アメリカ某所

 

「ラストに何か仕掛けでもしたんですかい、ラースの旦那?」

 

 独り嗤うラースの背後から一人の男が現れた。

 四角いサングラスに尖った鼻。形の整った顔つきに細身ながらも引き締まった体躯。オールバックのダークブラウンの髪の毛。

 

「グリードか」

 

 七つの罪の内の一人、“強欲”のグリードだった。

 

「何、ラストが敗北する事は織り込んであってな」

「へぇ?」

「奴が死んだらとあるプログラムが起動するようにしてあったのだ」

「とあるプログラムってぇのは何ですかい?」

「それはな」

 

 それは? と笑いながらグリードは尋ねる。もしかしたら見当がついているのかも知れない。

 

「自滅プログラムだ」

「また何でそんなモンを?」

「上級護衛二位のグラトニーが勝てなかった相手に、三位のラストが勝てるとでも思うか? 我はあの売春婦が負けて散った時、1度だけ復活できるようにプログラムしておいたのだ」

「ヘェ~、旦那はそんな事ができたんスか。良いなぁ、プライドやグラトニーの奴らもそうしてもらえりゃ良かったのに」

 

 グリードが肩を竦めて言う。

 実際その通りだろう。そうすれば消滅する事無く、消耗した黎とまた戦えたのだ。グリードからしてみれば、寧ろ何故ラースがそれを他のメンバーに施さなかったのかが疑問でならない。

 だが、ラースはそれに止めておけと答えた。

 

「世の中にそんな上手い話があるとでも? デメリットくらい普通にあるぞ」

「デメリットですかい?」

「うむ」

 

 

 

 

 

――炭鉱場

 

「“絶爆殺界星天斬(ぜつばくさっかいせいてんざん)”!」

 

 赤色に染まった髪の黎の二刀流が、吠える。

 一撃入れるごとに小規模ながらも爆発し、確実にラストの体力を、体を削り取る。

 バズーカによる砲弾も、この距離では当たらない。

 

「ゼァァアアァァ!」

 

 斬る。爆発。斬る。爆発。斬る斬る斬る! 爆発爆発爆発!

 黎の右の剣がラストの右腕を切り落とす。その勢いを殺さずに回転、左の剣で首を躊躇無く撥ねる。

 再生するよりも早く、その傷口を爆炎で更に焼き払う。相手の足を蹴りで砕き、柄で再生した額を砕く。殴って構えられたバズーカを外側へと逸らし、鼻を咬み千切る!

 

「ぎゃぁぁあぁぁあぁぁぁぁああああああっ!」

「ガァァアァアアアアアアアアアアアァァッ!」

 

 加速する、加速する。まだ加速する!

 斬って斬って、斬って斬って斬りまくる! 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬るっ!

 

(再生のスキは、やらんぞ!)

 

 斬られる度にラストの体は回復する。そしてその回復の傍から、黎は木端微塵に切り刻む。

 ここで倒さなくては、守るべき人達を守れない。

 今いる仲間を守れずして本当に守りたい家族を救える訳が、無い!

 

(は、早スギて再生が間に合わなイ!?)

「うぉおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 

 

「すげぇ……」

 

 目にも止まらないラッシュに、ライは思わず呟いた。

 感心したのは剣の腕前では無い。事実、単純に剣道の試合みたいな形式ならばライに軍配が上がる。例え戦国時代から続く半ルール無用の武道だとしても、現代の剣術その他の形式は時代の流れと共に、自然と取り入れられる。剣道で生まれた、より無駄の省かれた戦法を得て知らなければ、戦場で出会った「剣道を極めた」敵に勝つ事はできないからだ。

 ライが固唾を呑んだのは、黎の戦い方だ。

 無駄を極限にまで削り取り、殺す事だけを全ての行動の主眼に置いた、血腥い戦い。生き残る為に敵を殺す、ボロボロになっても戦う屈服しない闘志。

 

「あれが本当の、殺し合い……」

 

 殺人の技と雖も、殺す相手がいなければそれは“知識としての技術”に過ぎない。実戦で使い磨いて初めて“技”に昇華する。

 故に、ライにとってはこれが初めての殺しの実戦。

 

「そうか、これが生き残るって事か……」

 

 何をしてでも生き残る。風雷流のモットーを今一度、今度は前よりもはっきりと噛み締めた。

 殺すという事を、当然ライは経験した事が無い。

 

(だから、ここで少しでも多くの事を見て学ぶんだ!)

 

 大切な彼女を守るために。

 何時の日か来るかも知れない、とてつもない巨悪に対抗するために。

 

 

 

「“炎帝大熱錯撃刃(えんていだいねつさくげきじん)”んっ!」

 

 十字に刀が振るわれ、ラストの最早人としての原型を留めていない体が4つに切り裂かれる。更に大爆発が生まれ、分割されたその体は更に木端微塵に弾け飛んだ。

 

「はぁ……、はぁ……、はぁ……っ!」

 

 チャキン、と腰の鞘に双剣をしまい、黎はその場にドサリと膝をついた。

 赤かった髪も元に戻り、顔に走っていた唐草模様も消えている。

 

「主殿!」

 

 戦いが終わったのを見届けた桜が、黎に駆け寄り回復術をかけ直す。

 

「何という無茶を! 一歩間違えれば死んでいたんだぞ!」

「……心配、してくれたのか。ありがとう、な……」

 

 真っ青を通り越して土気色の顔でも、黎は笑う。そうする事が当たり前かの様に。

 それを見て桜は思う。

 

(やっぱりだ。この人の笑顔には中身が無い)

 

 偽りの、相手を安心させるための、空っぽな喜び。そんなのしか浮かべられないなんて、なんて悲しすぎるのだろうか。

 だからこそ桜は思う。守りたい、支えたい、この人を心の底から笑わせてあげたいと。

 そう心に再び強く決めた。

 

 

 

 だから気付くのが僅かに遅れた。

 

「キシノタマシィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!」

 

 ラストが大筒を構えてこちらに狙いを定めているのに。

 

「黎っ!」

「桜さん!」

 

 ライとエルフィが気付いて叫ぶも、今から動けない黎を抱えての回避は間に合わない。

 

(不覚! 今からでは結界も間に合わんか!)

 

 黎を懐に抱き寄せて左手の盾を前に出す。防げるとは思えないが、無いよりかはマシになってくれるハズだ。

 

(桜、俺は)

(『俺は良いから、お前だけでも逃げろ』、か?)

(分かってるのなら)

(断る! 主殿を見捨てて逃げる事などできぬ!)

 

 せめて少しでも盾になろうと、桜が左手と足に力を込める。

 

「シネェ!」

 

 トリガーが無情にも引かれ、砲弾は過たずに黎と桜へと向かった。

 

 

 

 

 

――アメリカ某所

 

「はぁ!?」

 

 思わずグリードは目を丸くした。

 

「マジですかい、ラースの旦那」

「大真面目だ。冗談でそのような事を言う程、捻くれた性格はしていない」

「いやだって、復活しても獣かガキ並みの知能で、しかも2度目の死で魂ごと消滅って、笑えねぇっしょ!?」

 

 上級護衛は人間の魂を中核に作られている。それは下級護衛最強のグリードも聞いた事がある。護衛となる際にこの魂は邪神によって新しく作り変えられ、記憶と性格のみを引き継ぐ。

 下級護衛にとって魂の消滅という言葉は危機でも何でもない。コアになる魂その物が無いからだ。操り人形が形として近いだろう。故にこの復活は恐怖するべきものでは無い。戦闘能力が落ちる程度の認識だ。

 一方の上級護衛は魔法で動く生きる人形が近い。魂が無くなれば、それはもう糸の切れた操り人形である。

 

「人間としての魂は、最早我らにとって何の意味も持たぬただの土台に過ぎん。のだが、この術式だけは別だ。何せ死を無理矢理無かった事にするのだからな」

「はぁん、それで魂削って生きながらえると? 復活というより延命ッスね」

「そうだ。言っただろう、自滅プログラムだと。自食効果(オートファジー)と同じ事だ」

 

 オートファジーとは体内の栄養素が足りなくなった際、自身の筋肉などを削って基礎代謝に必要なエネルギーを賄う働きの事である。本来は緊急手段であり、おいそれと使える物では無い。

 組み込まれたプログラムの正体は魂を削る延命。存在その物を消耗して行くのだから、最早緊急よりも自滅プログラムと称されるのは頷ける。

 

「更に言えば、このプログラムは我らの残滓すら食い尽くす。我々は敗北しても、残っているエネルギーは邪神様復活の糧に使われる。だが……」

「これはそれすら無い?」

「うむ。ともあれ、あれが発動した以上、ラストが死ぬ事は避けられん。だが、奴とて雑兵では無い。それだけ“騎士”も消耗しているはずだ。そして一時的にでも復活したラストならば――」

「あの邪魔な野郎を殺せるって事ですかい?」

「その辺の悪知恵は働く悪女だからな。“騎士”の魂の仲間を狙うフリをして自ら当たりに行ってもらうくらいの事はしているだろう」

 

 クククク、とラースが笑う。

 夜の闇の中へと、不気味にその声は溶けていった。

 

 

 

 

 

――炭鉱場

 

 ズドォオオオオオオオオオオオン!

 

 炭鉱場に響く大爆発。だがその爆熱と爆風は、誰も傷つけなかった。

 

「ナニ!?」

「“尖月(せんげつ)”。本来これは武器を突き上げて飛ぶ技なんだけど、ちょっと応用してタイミングを間違えなければ、こうして相手の攻撃を跳ね上げて狙いを逸らす事もできる」

 

 灰色の煙を背景に、言い放つ。

 黎が回収していなかった鉄扇を開き、毒の抜けきった体で威風堂々と宣言する。

 

「ソラトキ、メリオルゥ!」

 

 年を経てもなおその美しさを失わないライ達の母、メリオルだ。

 険しい瞳でラストを睨むメリオルは、ビシッ、と鉄扇をラストに突きつけるように構える。激しい怒りを内側に秘め、湧き上がらんばかりの闘気を込めて鉄扇を持つ手に力を込めた。

 メリオルの敵対行為に対し、既に理性も知性も無くしたラストはその両の手にバズーカから持ち替えた拳銃を構える。砲弾は通じないと悟ったらしい。

 だが、次の瞬間、その手ごと銃は無数の断片にされた。

 

「俺も、忘れるなよ!」

「グギィ……、ソラトキレオォッ!」

 

 反撃に出された蹴りを華麗に回避し、クルクルと曲芸の様に刀を回しながら構える。メリオルの夫、レオ。こちらも闘気と怒気を漲らせて戦いの構えを取る。短く散髪された髪が、その吹き上がる気迫によって騒めいているように見えた。

 この二人に銃は効かないと察したのか、ラストは銃剣を取り出し、装着されているダガーを外して構えた。

 一方でレオとメリオルも大地を踏み絞り、何時でも飛び出せるようにする。

 

「連携、行くぞ!」

「了解!」

「ガァアアアアアアア!」

 

 ダンッ! と3人が走り出した。

 

 

 

 

 

――次元の狭間

 

 ここは、邪神と護衛がアジトにしている、何処かであり何処でも無い黒い空間。

 RPGのボスのお約束のような居城が、何も無い空間にポツリと浮かんでいる。

 

「ったく、ここも随分寂しくなったモンだよなぁ」

「7人いたのが今や2人だ、当然だろう」

「カーッ! 旦那はドライだねぇ。もっとこう、騒がしさとかさぁ、そういうの欲しくねぇのかよ?」

「要らぬ」

 

 ラースはドライにグリードへと返した。

 部屋の奥には祭壇があり、そこには真っ黒な球体が浮かんでいる。

 ラースは懐から取り出したカードを祭壇の下に置く。すると、そこから黒いエネルギーが球体へと流れ込む。鼓動するように、球体もそれを吸収していく。

 

「前よりデカくなってんな」

「当然だ。この中に依り代の姫がいる。即ちこの球体は邪神様そのもの、差し詰め繭か蛹といったところか」

 

 ニヤリ、とラースは笑う。

 ドクン、と鳴る度に、中で眠っている少女、都が苦悶の表情を浮かべる。

 

「ふふふ、経過は順調。人間の悔恨の念が最も強い瞬間の魂を封じたカードを集め続ければ、半年、否、数か月もしない内に復活は可能だ!」

 

 フハハハハハハ! と悪役らしい高笑いを上げるラース。それを見て勝者の笑みを同じく浮かべていたグリードだったが、ふと気になる事を思い出した。

 

「……ちなみに必要枚数は後何枚ッスか?」

「200枚程だな」

「……毎日5回はデュエルしても一ヶ月じゃ足りないんスけど、それでも?」

「当然だ」

 

 下級護衛にとって、デュエルでの敗北は闇のゲームでは無くても厳しいものがある。ましてやいくら下級護衛最強とは言え、この人はその辺を考えた上で言ったのだろうか。もう少し労わって欲しいものである。

 さっきだってナグモコージとか言う不良をノシてカードに封印して来たばかりだと言うのに。その前にもモモノマスミとか言う属性キルを使うアンチデッキ使いを封じたのに。

 存在するだけで邪神のエネルギーを消費し続けるというのに。

 

 

 

 

【ちょっと回想】

 

「『仮面魔獣デス・ガーディウス』と奪った『ダイヤモンド・ドラゴン』で直接攻撃! “マスク・ダーク・ショック”! “ダイヤバースト”!」

「このデッキの最強モンスターが……、ぎゃぁあああああああああ!」

 

 

グリード:LP 200

名蜘蛛:LP 3800→0

 

 

 

 

「魔法カード『地割れ』! これでお前の場はガラ空き! 『メルキド四面獣』を召喚してダイレクトアタック!」

「闇属性にメタを張っていたのに、負けるハズがグハァアアアアアアアアアア!」

 

 

グリード:LP 600

真澄:LP 1200→0

 

 

 

 

【回想終了】

 

 

「厳しすぎねぇ?」

「復活のためだ、我慢しろ」

 

 グリードは今晩は泣き寝入りしようと思った。

 寝るという行為そのものをしないのだが。

 

 

 

 

 

――炭鉱場

 

「“猛虎豪破斬(もうこごうはざん)”! “業魔灰燼剣(ごうまかいじんけん)”! うぉおおおおお、“烈風月華衝(れっぷうげっかしょう)”ぅっ!!」

「“雷神月詠華(らいじんげつえいか)”! “炎華封爆衝(えんかふうばくしょう)”! はぁあああああ、“龍爪旋空破(りゅうそうせんくうは)”ぁっ!!」

「焼き尽くせ、紅蓮の刃ぁっ! これが俺の、“殺劇舞荒剣(さつげきぶこうけん)”っ!」

「冥府へと誘う、朧月の棺っ! これが私の、“覇王籠月槍(はおうろうげつそう)”っ!」

「まだまだ行くぜ!」

「特攻上等! 機は熟したわ!」

「「“閃剣斬雨(せんけんざんう)駕王閃裂交(がおうせんれつこう)”ゥッ!」」

 

 ぶぎぃやぁぁあぁああああああぁぁぁああぁぁぁぁあああああああああああああぁっ!

 

「凄ぇ……」

 

 ダガーで対抗、しようとしたのだろう、ラストは。

 しかしレオとメリオルという阿吽の呼吸で動ける相手には、余りにも分が悪かった。瞬く間すら無くラストは斬られ、焼かれ、砕かれ、通電され、貫かれ、裂かれ、刻まれ、蹴られ、殴られ、斬り刻まれた。

 

 相手が悪い。黎にはそうとしか見えなかった。

 ただでさえ現在のラストは大きく消耗している。その上、完全な連携が取れるレオとメリオルが相手ではいくらなんでも勝算が無さすぎる。

 実際、連携が開始してからレオとメリオルは目を合わせる事も、声で合図する事も無く息をパーフェクトに合わせている。攻撃と防御が常に一体となり、まるで二人で一人の武人の様な動きをする。心と心で繋がっている証拠だ。女性を見下し、絆を嘲笑うラストは、恐らくこの連携の秘訣を理解できない事だろう。

 

(これが、信頼か……)

 

 黎は胸中でポツリと呟いた。

 21年間、たった独りで殺しの世界で生きてきた彼にとって、背中を預けるに足る信頼関係というのは理解し難かった。都という家族はいたが、彼女は安心できる心の拠り所であり、背中を預けられる仲間では無い。

 きっと、こういう関係を、望んでいたのかも知れない。

 背中を誰かに預けられる、そんな状況と仲間を。

 

「“オニ”ィイイイッ! “メギツネ”ェエエエッ!」

 

 ラストが叫ぶ。先刻からラストの顔は既にグチャグチャ。目鼻は愚か、顔の造形すら元の形を推測し難い。目だってもう見えてないだろう。

 そしてラストは理性を削り切ってしまった。彼女が叫ぶ言葉は、つまりそういう事だ。

 隣で俺を支えているアルフが首を傾げた。

 

「“鬼”と“女狐”って?」

「魂の型の事だな。多分もう目が見えないからそう言っているんだろう」

 

 ちなみにレオの魂の型は厳密に言うと“赤鬼”、メリオルは“葛葉(くずのは)”。

 片や『泣いた赤鬼』に出るように、人を愛した心優しい存在。意味するのは“人の届かぬ高みにいる猛者”と“人の優しさを持つ強者”。

 片や『九尾のキツネ』として知られる大妖怪が人となった姿。意味するのは“人の届かぬ領域にいる美しさ”と“遥か高みにある強さ”。

 ちなみに鬼=人食いのイメージの元となった単眼鬼キクロプス(サイクロプスとも言う)ならば逆に“人をも食らう獰猛さ”に、九尾の狐も人では無く動物の姿ならば“人を騙して笑う悪女”になる。

 

「成程、父さんと母さんらしいね」

 

 ちなみにこうして話しているうちにも二人のラッシュは続いている。メリオルは完全に毒が抜けきっており、反撃と言わんばかりの猛攻だ。

 一方のレオもまた犬歯を牙のように向いて刀を振るっており、愛する者を傷つけられた事への怒りが燃えている。

 しかし、見ている分には目は忙しくとも暇なので、黎は残る戦友三人の魂の型を説明し始めた。

 

「ライは“武士”。武に通じていて腕前のある奴に多い。巨悪を嫌うお前にはピッタリだな」

「へぇ……。あ、ラストが微塵切りになった」

「アルフは“鏡”。外部装置を通さない二重人格の類は強制的にこの型になるそうだ。表と裏で左右対象になるから、性格が違う二人が同居している事を示唆する事にもなる」

「成程。あ、ラストが木端微塵になった」

「そしてエルフィが海。どこまでも広く、果てが見えない。主に掴み所が無い奴がそうなんだが……、お前の場合は懐の広さと敵への容赦の無さだろうな。海難事故みたいな」

「う、ちょっと複雑……。あ、ラストがディスクを構えた」

 

 何? と黎が振り向く。

 見ると、3人は既にデュエルを開始していた。

 

 

 

 

 

――次元の狭間

 

「さて、ラストもじきに消滅する頃合いか。グリード、貴様はこれからどうするのだ?」

「オレっちかい? そうだな人間の魂集めながら、“騎士”の野郎が転移する頃合いを見計らって、こっちも別世界に行くってトコかねぇ」

 

 新たに出立の準備を整えながら、二人は会話する。また人の魂を閉じ込めるために行くのだろう。

 

「どうせ生贄になった人間の魂は邪神様の中でちっとずつ消化されていくんだ、焦らないでもすぐに腹減ったりするワケでもねぇんでしょう?」

「うむ。だが、復活が早まるという利点はあるぞ? それに……」

 

 ぬん! とラースはいきなり得物である戦斧を振った。身の丈程もある巨大な斧を、グリードは慌てて大鎌で受け流すように防いだ。

 更に追撃とばかりにラースは斧を両方の手にそれぞれ持ち、連続で振るう。まるで重量など最初から無かったかのように軽々と振るうが、ガードするグリードにしてみれば堪ったものではない。必死に右から上から左からと迫り来る刃を受け止め、流し、躱す。その暴力的な一撃の威力は、当たる度に真っ二つに折れるデスサイズが物語っていた。一発でも受ければシャレにならないダメージを被るだろう。

 暫く斧のラッシュは続いていたが、やがてピタリと止んだ。

 

「な、何すんでぇ、旦那!」

「気付かぬか、グリード。貴様自身もまた強化している事に」

 

 え? とグリードは自分の体を見る。服のあちこちが激しく裂けている。

 防いでいたと思っていた斧の攻撃は、どうやら何発も体に当たっていたらしい。

 

「あ、え? 何で? これだけ喰らったら復活まで時間かかるんじゃ……」

「今や護衛は我と貴様の二人。量産できる下級護衛を新たに生むよりも、貴様一人を強化した方が良いと判断したのだろう。今の貴様は上級護衛に相当するだけの力を手に入れたのだ」

 

 へぇ! とグリードは嬉しそうに鎌を振るう。言われてみれば確かに、並々ならない力を感じる。これならば誰が来ても勝てそうだ。

 

「だが、油断はするな。過信、慢心、油断、それがここまで我らが追い詰められた元凶だ。努々忘れ、怠るでないぞ?」

「分かってやす」

 

 ならば良い、とラースは手を振り、次元の扉を潜って行った。

 残されたグリードも出発しようとし、ふと、後ろを振り返る。大きな黒い繭の中には“騎士”の魂の義妹が浮かんでいる。時折苦悶の表情を浮かべ、もがく所から見ると、苦痛を味わっているのだろう。

 

「キキキキキ、良いぜ“騎士”の妹さんよぉ? お前の苦しみも邪神様の復活の糧だ。お前の不死身の体はあのお方の器にゃピッタリだぜ!」

 

 精々苦しめよ、とグリードは高笑いしながらその場を立ち去った。

 ドクン、と都の姿が歪んだ。

 

 

 

 

 

――炭鉱場

 

 

 

レオ:LP 4000

手札:3枚

フィールド

:ジャンク・ウォリアー(ATK 9300)、ジャンク・アーチャー(ATK 2300)

:強制終了(永続罠)、伏せカード1枚

 

 

 

メリオル:LP 4000

手札:4枚

フィールド

:スクラップ・デスデーモン(ATK 2700)

:伏せカード1枚、リビングデットの呼び声(永続罠・対象不在)

 

 

 

ラスト:LP 100

手札:1枚

フィールド

:フルアーマー・オーガ(DEF 1600)、ビッグ・キャノン・オーガ(ATK 2400)

:魔法・罠無し

 

 

 

ジャンク・ウォリアー(シンクロ・効果モンスター)

星5

闇属性/戦士族

ATK 2300/DEF 1300

「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、このカードの攻撃力は自分フィールド上に存在するレベル2以下のモンスターの攻撃力を合計した数値分アップする。

 

 

 

ジャンク・アーチャー(シンクロ・効果モンスター)

星7

地属性/戦士族

ATK 2300/DEF 2000

「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する事ができる。

選択したモンスターをゲームから除外する。

この効果で除外したモンスターは、このターンのエンドフェイズ時に同じ表示形式で相手フィールド上に戻る。

 

 

 

スクラップ・デスデーモン(シンクロモンスター)

星7

地属性/悪魔族

ATK 2700/DEF 1800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 

 

 

フルアーマー・オーガ(効果モンスター)(アニメオリジナル)

星5

炎属性/悪魔族

ATK 1600/DEF 1600

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した時、相手ライフに1000ポイントダメージを与える。

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、墓地に存在する「ガトリング・オーガ」1体を特殊召喚する事ができる。

 

 

 

ビッグ・キャノン・オーガ(効果モンスター)(アニメオリジナル)

星7

炎属性/悪魔族

ATK 2400/DEF 2400

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地に「フルアーマー・オーガ」が存在する場合に、自分フィールド上に存在する「ガトリング・オーガ」をリリースした場合のみ特殊召喚する事ができる。

このカードが相手ライフに与える戦闘ダメージは2倍になる。

このカードが破壊された場合、自分の墓地に存在する「フルアーマー・オーガ」1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

 ラストが残りの力を振り絞って挑んだレオさんとメリオルさんへのデュエル。

 だがそれは、俺の目には無謀な挑戦にしか見えなかった。

 

「ライフが1ポイントも減ってねぇ……」

「年期と才能の差、というヤツか。見事としか言いようが無いな」

 

「ワタシのターン、ドロー! ワタシは2体のモンスターをリリースし、『ロング・バレル・オーガ』をアドバンスショウカンッ!」

 

 虹色の光の中へと消える2体のモンスター。

 入れ替わりに出て来たのは自身の身長を遥かに超える長い銃を持った鬼だ。構造としては狙撃銃が近いかも知れないが、口径は明らかにキャノン砲のそれだ。

 

 

ロング・バレル・オーガ:DEF 3000

 

 

 

ロング・バレル・オーガ(効果モンスター)(アニメオリジナル)

星8

闇属性/悪魔族

ATK 1500/DEF 3000

このカードは特殊召喚できない。

召喚・反転召喚に成功した時、守備表示になる。

相手フィールド上に存在する最も攻撃力が高い攻撃表示モンスター1体を選択して発動する事ができる。

選択した相手モンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。

この効果は1ターンに2度行う事ができる。

 

 

 

「オノレ、ニンゲン……! ゼッタイに殺す! 『ロング・バレル・オーガ』、効果ハツドウ! 1ターンに2度、コウゲキリョクの1番タカイ相手モンスター1体をハカイシ、ソノ攻撃力分のダメージをアタエル! “グレートスナイプ・ファーストショット”!」

 

 ガコン、と薬莢を排出して引き金を引く大鬼。ターゲットは攻撃力が大きく跳ね上がった『ジャンク・ウォリアー』。喰らえば4000ライフが一息で消し飛ぶレベル。

 だが、それを喰らう程、あの二人はアマくねぇハズだ。

 

「リバースカード、オープン! 罠カード、『シンクロ・バリアー』! 私の場のシンクロモンスターを1体リリースし、次の私のターンのエンドフェイズまで受けるダメージを全て0にする! 『スクラップ・デスデーモン』をリリース!」

 

 

シンクロ・バリアー

【通常罠】

自分フィールド上に存在するシンクロモンスター1体をリリースして発動する。

次のターンのエンドフェイズ時まで、自分が受ける全てのダメージを0にする。

 

 

 

 青い戦士の腹を貫く砲弾。だが貫通した鉄の牙は、幾何学模様によって縁どられた7つのリングの盾によって防がれてしまった。

 

「グゥゥウウウ! ナラばモンスターだけでモ破壊スル! “グレートスナイプ・セカンドショット”! 対象は『ジャンク・アーチャー』!」

「だが、ダメージは受けない!」

「クッ、ターンエンドッ!」

 

 

 

ラスト:LP 100

手札:1枚

フィールド

:ロング・バレル・オーガ(DEF 3000)

:魔法・罠無し

 

 

 

「俺のターン!」

「グブッ!?」

 

 レオさんがカードを引く。と同時にラストが血の代わりに真っ黒な闇を吐き出した。人間にやや近い構成をしているのならば、明らかに危険な状態だろう。が、ラストは口元を拭うと、ディスクを構え直した。

 

「おいおい、もうお前ヤベェんじゃないのか?」

「ウルさイッ!」

「ああ、そうかよ。なら遠慮は無しだ! 永続罠『エンジェル・リフト』を発動! 俺の墓地からレベル2以下のモンスターを1体、攻撃表示で呼び戻す! 戻って来い、メイ!」

『はい!』

 

 

キーメイス:ATK 400

 

 

 

キーメイス(通常モンスター)

星1

光属性/天使族

ATK 400/DEF 300

とても小さな天使。

かわいらしさに負け、誰でも心を開いてしまう。

 

 

 

 カードからの光に導かれ、青い衣装の小妖精、レオさんの精霊のメイが現れた。身の丈程もある金色の鍵を勇猛果敢に振り回し、勇ましい目でラストと『ロング・バレル・オーガ』を睨む。

 

「更に装備魔法『下克上の首飾り』をメイに装備!」

『勝ちパターン行きますよ!』

 

 続いてメイの首に瞳をあしらったアミュレットが掛けられた。

 通常モンスターを軸にしたレオさんの【ローレベル】デッキでは八面六臂の活躍を確約してくれる1枚だ。

 

「バトル! メイ、『ロング・バレル・オーガ』を攻撃だ! “ビッグ・キー・ブレイカー”!」

「バカナ!? 攻撃力が遥かに劣るモンスターでコウゲキ!?」

『そう思うのならば、私の攻撃力をよく見る事ですね!』

 

 大筒を構える鬼目掛けて鍵を振り下ろすメイ。それを受け止めようと鬼は大筒を横向きに構えた。

 しかし、鍵と銃が接触した瞬間、メイの攻撃力が跳ね上がった。

 

 

キーメイス:ATK 400→3900

 

 

 レベル1のモンスターとは思えない攻撃力は、『下克上の首飾り』の力だ。

 

「歯ァ食いしばれよ最強(さいじゃく)、俺達の最弱(さいきょう)は――」

『――ちょっとばっかし響きますよっ!』

 

 跳ね上がった攻撃力に比例するかの様にメイの鍵が巨大化。高層ビルの如き巨大な鍵が、『ロング・バレル・オーガ』を跡形も無く圧し潰し粉砕した。

 

 

 

下克上の首飾り

【装備魔法】

通常モンスターにのみ装備可能。

装備モンスターよりレベルの高いモンスターと戦闘を行う場合、装備モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみレベル差×500ポイントアップする。

このカードが墓地へ送られた時、このカードをデッキの一番上に戻す事ができる。

 

 

 

「『ロング・バレル・オーガ』、撃破!」

『やりました!』

「ば、バカな……!? ワタシの『ロング・バレル・オーガ』ガ、あンナ雑魚モンスター如きニ……!?」

 

 デュエルはモンスターの基礎攻撃力や能力値だけじゃ決まらない。前々から推測していた通り、邪神やその護衛は攻撃力や火力だけで戦局を判断している。そういった奴らが相手なら、トリッキーな戦術を得意とするレオさんの【ローレベル】デッキは非常に相手し辛いだろう。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ! どうだ、ラスト? もう諦めた方が良いんじゃねぇの?」

「マダ、まダァ! エンドフェイズに手札の『スリープ・エスケーパー』のモンスター効果をハツドウ! ジブンのモンスターが戦闘にヨッテ破壊されたターンのエンドフェイズ、手札のこのカードをステテ、相手の場の伏せカードを1枚ハカイ! そして破壊されたモンスターを呼び戻ス!」

 

 

 

スリープ・エスケーパー(効果モンスター)(オリジナル)

星5

ATK 1000/DEF 2200

闇属性/機械族

自分の場のモンスターが戦闘によって破壊されたターンのエンドフェイズ時に、このカードを手札から捨てて発動する。

このターン戦闘によって破壊された自分のモンスターを全て自分の場に特殊召喚し、相手の場の裏側表示のカードを1枚破壊する。

この効果で特殊召喚したモンスターは次の自分のエンドフェイズまで効果を発動する事はできない。

 

 

 

 プシューと煙が噴き出し、その中から復活する『ロング・バレル・オーガ』。

 それと同時にレオさんが伏せた『くず鉄のかかし』が破壊された。

 

 

 

レオ:LP 4000

手札:2枚

フィールド

:キーメイス(ATK 400)

:強制終了(永続罠)、下克上の首飾り(装備魔法・『キーメイス』に装備)、エンジェル・リフト(永続罠・『キーメイス』を対象に発動中)

 

 

 

「私のターン、ドロー。……ラスト、アンタ本当に止めないのね? 今ならサレンダーも認めるし、逃げるだけなら見逃してあげても良いのよ?」

「フザケルナァ! ワタシは誇り高きジャシンサマの護衛が内の一人、“色欲”のラスト! 人間如きに、人間のオンナ相手に屈スル事などアッテはナラヌのヨ!」

 

 メリオルさんは優しく尋ねるのに対しラストは、最後まで強硬に突っぱねた。

 その様にメリオルさんは呆れるでも怒るでも無く「そう」とただ呟いた。

 

「なら、誇りに縋りながら逝きなさい。私は手札から魔法カード『死者蘇生』を発動! 墓地のモンスターを1体特殊召喚する! 蘇らせるのは私の『スクラップ・ドラゴン』!」

『ギギャァァアアアアアア!』

 

 

スクラップ・ドラゴン:ATK 2800

 

 

 軋むような錆びた金属の駆動音と共に、紫の魔法陣から金属のドラゴンが躍り出る。赤く光る機械的な眼は、生物的な要素は無いはずなのに、ラストに敵意を持っている様に見えた。

 

「『スクラップ・ドラゴン』のモンスター効果を発動。1ターンに1度、自分と相手の場のカードを1枚ずつ破壊する。私の『リビングデットの呼び声』と、『ロング・バレル・オーガ』を破壊! “スクラップ・ブレス”!」

 

 機械龍がメリオルさんのカードに噛み付き、咀嚼する。バリゴリとカードを噛み砕いて行くに連れてその口腔内にはエネルギーが満ちて行く。

 

「発射ぁ!」

『ガァァアアァアァァァァ!』

 

 そして満ちたエネルギーは真っ赤な高熱のブレスとなって、大筒を構えた軍服鬼を焼き払った。

 

「クゥッ!」

「これでアンタの場と手札は空っぽ。墓地のカードにも不明なカードは無い。もう防ぐ手段は無いわよ。何か言い残す事はある?」

「……クタバレ、全ての女共!」

「なら、その記念すべき最初の一人になりなさい! 『スクラップ・ドラゴン』、ダイレクトアタックよ!」

『ガギァアァァァアアアアアアアアッ!』

「“スクラップ・バーナー”!」

 

 機械龍から吐き出される紅蓮の焔。それが無慈悲にもラストを飲み込み―――

 

「グ……ッ、ジャシンサマ、バンザァアァアアアアアアアァァァァァァァァァァアアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァアアァイ!」

 

 

ラスト:LP 100→0

 

 

 色欲の歴史に二度目の敗北を刻み込んだ。

 

 

レオ・メリオル:WIN

ラスト:LOSE

 

 

「俺達の」

『「私達の」』

「「勝ちだぁ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「塵すら残らず、か……」

 

 ラストの消滅。それは今までプライド、エンヴィー、スロウス、グラトニーの4人を見て来た俺にとっては見慣れた物になる、はずだった。

 

「敗北は死、その闇のゲームにおける本質を捻じ曲げてまで存在し、剰え2度目の敗北を喫したのだ。こうなるのは当然だろうな……」

 

 桜が隣でしんみりと頷く。ラストの消滅は、これまでの連中とは全く違った。

 これまでの4人は体がボロボロと黒い塵になって消滅し、最終的には黒い塵も目に見えなくなっていく感じだった。

 ラストは違った。黒い塵になるのでは無く、まるで黒死病(ペスト)に侵されるかの様に全身が黒く染まって(服も髪も元から黒いが)、否、漆黒の闇に染まっていった。体は崩れるのでは無く、その染まった部分から呑み込まれるように消えて行った。

 

「当然の代償ってヤツか……」

 

 闇のゲームとは命と命のやり取り。勝者には栄光を、敗者には死を。その理屈を捻じ曲げれば、それ以上の対価を払うのは当然というワケか。

 ラストは終盤、発音の仕方や動作が不自然なものになっていた。あれも対価なのだろう。

 そうまでして、ラストは人が、女が憎かったのだろうか?

 だとしたら、その執念はハッキリ言って死者足りえない俺では計り知れない。

 

「いや、野暮なだけか」

 

 俺とあいつは何もかもが違う。性別、生きた年代、価値観、何もかも。赤の別人が詮索した所で、何かが得られるワケでも無いか。

 

 ギシギシと軋む体を無理矢理に動かし、俺は立ち上がった。目を閉じて体内を自己診察してみれば致命傷が複数箇所。

 でも、まだ俺は生きている。死んでない。なら、まだ負けてない。

 パンパン、と服についた土埃を叩き落とすと、俺は皆の方へと向いた。

 

「皆、ありがとう。皆のお蔭で無事に勝利できたよ」

「「大ドアホ!」」

 

 笑いながら言った途端、レオさんとライに背中を力一杯ぶっ叩かれた。

 

 パッシィィイイン!

 

「いってぇえええええええっ!?」

 

 何で!?

 

「この大馬鹿野郎!! 何が『無事に勝利できた』だ! お前はボロボロじゃねぇか!」

「一回姿見でテメェの全身見てみやがれ! そんな血だらけの服に真っ青な顔で無事もクソもあるか!」

 

 えー?

 そんなん元は日常だったんだが。

 

「「その日常は絶対におかしい!」」

『……全面的に同意させてもらうぜェ』

『はい』

『です』

 

 精霊にまで肯定されてしまった。

 その後ろではメリオルさん、アルフ、エルフィ、マシンナーズと天使族のコンビも頷いている。

 頼みの綱とばかりに桜へと振り向くが、ぷいとそっぽを向かれてしまった。

 アウチ。

 

「もう少し労われ。俺達を守るためってのは分かってるけどよ。そんな戦い方じゃあ身が持たないぜ?」

「護衛は後二人って事は、むこうも本腰入れるだろうな。ここで負けちまったら元も子もネェだろ?」

「えぇ……。『百里を行く者、九十九里を半ばとす』、ここまで来たらもう気は絶対に抜けないですよ」

 

 とは言え、この戦い方は変えようと思ってそうホイホイ変えられるモンでも無い。

 後は、戦いの流れや相方になるであろう者の運、か。

 ハ、笑えねぇ。

 寝るのも休むのも死んでからできるけど……、それやったらもう、何も出来なくなっちまうからな。

 

「この程度で死ぬつもりは無いですよ、俺は」

 

 目を閉じれば、今まで出会った色んな人達の顔が思い浮かぶ。

 皆、俺の事を心配してくれている。その思いは、無碍にしちゃいけない。

 

「フフ、その意気よ」

「絶対に、その思いは最後まで忘れないでね?」

「変なトコで死んじゃ承知しないから」

 

 順にメリオルさん、アルフ、エルフィ。

 戦いを経る度に、増える仲間達。それはそのまま、絆が増える事でもある。

 

「そうだ、PDAで写真を撮ろう」

「お、そりゃ良いな。皆がいた証拠になる」

「私は賛成よ。皆はどうする?」

「俺も!」

「僕も!」

「当然、私も!」

 

 ピピッ、カシャッ! シャッターが切られて画像がまた一つ増えた。

 そこには、円満な家族と友人、そしてそれを守護する頼もしい精霊の面々が写っていたのであった。

 

 増えた絆は心の強さの証。それは即ち、共に戦った証明でもある。

 心と心を繋ぐそれは、見えるけど見えないもの。何時までも仲間である事を保障し、未来永劫、その結束は壊れない。

 時の螺旋の中、俺達は出会った。その確かな証が今、ここに刻まれたのだ。

 幸せの欠片が、また1つ手に入った気がした。

 

 

to be continued

 




これにてコラボ編は全て終了
既に10年の月日が経っていますが、改めて皆様ありがとうございました!
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