遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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黎・フィオ「「なーにかな、なーにかな! 今回はこれ!」」



天魔神ノーレラス(効果モンスター)
星8
闇属性/悪魔族
ATK 2400/DEF 1500
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性・天使族モンスター1体と闇属性・悪魔族モンスター3体をゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、お互いの手札とフィールド上のカードを全て墓地へ送り、自分のデッキからカードを1枚ドローする。



黎「レベル8の闇属性・悪魔族モンスターだ、召喚条件として墓地から4枚カードを除外するぞ」

フィオ「途方も無く重いねぇ……。代わりに強力なリセット効果を持っているよ!」

黎「基本的に『ファントム・オブ・カオス』でコピーしてから使うのが良いだろう。自爆効果だからその辺は気を付けてな」


STORY66:潜水艦と水龍

 

SIDE:黎

 

 

 ラストとの戦いを終えて眠っていた俺は、全身に走る痛みで目が覚めた。

 カーテンからは夕日が差し込んでいる。

 

「……知らない天井だ」

『レッド寮の自室だろう、何を言っている』

 

 桜のツッコミが冷たいぜ。

 

『知るか。私は漫才の相方では無い』

 

 アウチ。

 まあ良いや。桜、俺は何日寝てたんだ?

 

『丸一日寝ていた。フレイやフィオ殿が顔を真っ青にして看病していたぞ、後で礼を言いに行くべきだ』

「あいつらが?」

 

 ふと、額の上に何かが乗っているのに気付く。手にしてみると、濡れタオルだった。

 あいつら……。

 ふわり、と桜が実体化してそのタオルを手に取り、近くのタライの中の水に浸して絞る。そしてまた俺の額に乗せた。

 

「今は寝ていろ。明日は大きな戦いなのだろう?」

 

 ……そっか、今日は土曜日か。

 明日の日曜日はノース校との交流戦。副将として、負けるワケにはいかねぇな。

 そう考えると、何となくプレッシャーみたいな物を感じて、それ以上に残っていたダメージのせいで眠くなってきているのに気付く。

 重くなって来た瞼を感じながら、俺はポツリと呟いた。

 

「……お休み、桜」

「ああ、お休み、主殿。良い夢を」

 

 そう言えば、誰かに「お休み」なんて言われるのは初めてかも知れないな。

 あっちじゃあ都の前ですら、誰かと寝た事なんてなかったから。

 

 

 

SIDE:無し

 

 

 

――日本・某所

 

「はぁ……、はぁ……、はぁ……っ!」

「ふん、その程度か? ガキを守ると言っておきながらその体たらく。所詮貴様の実力はその程度というワケか」

「くっ!」

 

 町のとある場所、夜の帳がおり始めた時間。

 二人のデュエリストが向かい合いながら、デュエルを行っていた。

 片や、黒い喪服に身を包んだ男、ラース。

 もう片方はポニーテールの二十歳前後の女性。頭に小さな王冠を乗せている。

 

「まだ、負けてないっさ!」

「そうか。だがこの戦況をどう覆すと言うのだ、成田伸子(なりたのぶこ)よ」

 

 

 

ラース:LP 4000

手札:4枚

フィールド

:F・G・D(ATK 5000)×2、メテオ・ブラック・ドラゴン(ATK 3500)

:魔法・罠無し

 

 

 

成田伸子:LP 500

手札:2枚

フィールド

:モンスター無し

:魔法・罠無し

 

 

 

 圧倒的に不利。その言葉しかその場には無かった。

 近所の子供達と遊んでいた伸子であったが、突如として現れたラースが子供達に暴行を振るう場面を見てデュエルによる静止をかけた。しかし、今になって思う。こいつの狙いは自分だったのだと。

 このターン、自分の場にいたモンスターは全滅させられた。辛うじて踏み止まったが、次のターンで挽回しないと負けてしまう。この手の輩は勝利を盾に何をしてくるか分からない。そういった大人の汚い所は、同じ大人であっても伸子は嫌いだった。

 

「さあ、貴様のターンだ」

「妾のターン……」

 

 この引きに全てを賭ける。

 自分の持てる、全てを!

 

「ドロー!」

 

 引いたカードは……、『オーバーロード・フュージョン』!

 

「手札から魔法カード『オーバーロード・フュージョン』を発動だモ~!」

「ほう、ここでそのカードを……!」

 

 お得意の動物の鳴き真似をしながらカードを発動させる伸子。墓地に手をかざし、出て来た2枚のカードを手に取る。

 

「墓地の『リボルバー・ドラゴン』と『ブローバック・ドラゴン』をゲームから除外し、『ガトリング・ドラゴン』を融合召喚するっさ!」

『ギォオオオオオオオオオオオッ!』

 

 

ガトリング・ドラゴン:ATK 2600

 

 

――デュエルアカデミア

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

 一日明けた今、俺達は港でノース校を出迎えている。

 潜水艦から数々の向こうの生徒が現れる。

 

「(……潜水艦って、航路とかの関係で中に色々機材詰め込む必要があるから、あんな何十、何百って数はあのサイズには収納できないんだが)」

『(RPGで道具をどこに持ってるか疑問視してはいけないのと同じ事だ)』

 

 出て来るあちらさんの男子生徒の中で、前にずずいと出て来るのが4人。どいつもガタイが良い。こいつらが、代表か。

 ……見える生徒の9割以上が男子だが、ノース校って男子校なのか?

 そしてそれぞれが当たる相手と握手を酌み交わす。

 

「先鋒の三沢大地だ。よろしく頼む」

「うす、先鋒の点田三郎(てんださぶろう)だべ」

「次鋒の、天上院明日香。よろしくお願いします」

「うぉっしゃあ、女の子! 次鋒の水島標呉(みずしましめご)や!」

「中堅の神山フィオ。正々堂々、悔いの無い勝負をしよう」

「ふ、ふひひひひ。中堅の犬養通(いぬかいとおる)。ボーイッシュ萌えス~」

「副将、遊馬崎黎。勝ちは譲らないんで、よろしく」

「ケ、随分と強気なやっちゃ。副将の光前寺久良丸(こうぜんじくらまる)じゃ」

 

 パシッ、と手と手が合って握手。一部変なのもいたが、スルー。

 そしてその後ろで十代がキョロキョロと周囲を見回している。

 相手が見当たらないのがこのデュエル馬鹿には不安なのだろう。耐え切れなくなったらしく、ノース校の校長、一之瀬氏に直接問いかけた。

 

「なぁなぁ、俺の相手は?」

「俺様だ!」

 

 バン! と潜水艦のハッチが勢い良く跳ね上げられ、中から飛び出したのは、ご存じ鳥頭。黒のややボロいコート状の服に袖を通し、以前の濁ったそれとは異なる、生命力に満ち溢れる目つきをしている。

 

「十代、貴様の相手はこの俺、ま」

「万丈目じゃねぇか! 久しぶりだな!」

「よお、スリー。生きてたのか」

 

 ズザザザザッ、とハッチからずっこけて落ちる万丈目。スリーの由来は万丈目“さん”だ! と煩かったから。

 

「テメェら! 万丈目さんになんて事を!」

「おのれ、よくもワシらの代表に!」

「黙れ!」

 

 騒ぎ立てる周囲を万丈目は一喝。

 空へ向けて指を高く突き上げた。

 

「俺様の名を言ってみろ! 俺様の名は、一! 十!」

『百!』『千!』

『『「万丈目サンダァーッ!」』』

 

 その瞬間に巻き起こるサンダーコール。

 ナマで見ると、結構圧巻だな。

 と、その時。上空から数台ヘリコプターが飛んで来た。ヘリの腹には「万」の文字が刻まれており、何台かの扉からはカメラがこちらの様子を撮影している。

 最初に着陸したヘリから若い男が二人降りて来た。双方ともに黒髪で、片やヒゲを蓄えた精悍そうな男性、片や刈り込んだ頭の神経質そうな男性だ。

 

「「準ーっ!」」

「に、兄さん達!?」

 

 二人ともが駆け寄りながら叫ぶと、ギョッとしたように未来のサンダー君は言った。

 

「どうしてここに!?」

「お前が交流試合に出ると聞いて、すっ飛んで来たんだ!」

「既にTV放送の契約は取った! 今日の主役はお前だ!」

 

 契約取るの早いな、あんたら……。

 

 

――日本某所

 

 

 

SIDE:無し

 

 

 

 伸子の呼びかけに応じて現れる、機関銃の龍。黒い金属でできた体には三つのガトリングの銃身が取り付けられている。

 

「『ガトリング・ドラゴン』の効果発動! 1ターンに1度、コイントスを3回行って、表が出たのと同じ数だけ、場のカードを破壊するんだメェ~!」

 

 3度投げられるコイン。その全てが表を現した。

 

「やた! これでお前のモンスターは全滅!」

「ぬっ!?」

「そしてバトル! 『ガトリング・ドラゴン』でダイレクトアタァアアアアアック!」

 

 伸子は手札のカード、『リミッター解除』を見て確信した。

―――勝った!

 

 だが……。

 

『ぬん!』

 

 機関銃の龍から放たれた無数の弾丸は、老人の展開した障壁によって阻まれてしまった。

 いつの間にか、ラースの場には龍の甲冑を身に着けた老人が座禅を組んでいたのだ。老人はバリアの爆発と共に消滅したが、ラースは一切負傷していない。

 

「な!? 何なのさ、そのモンスターは!」

「我は手札から『霊廟の守護者』を特殊召喚させてもらった」

「わ、妾のターンで手札のモンスターを!?」

 

 

霊廟の守護者:DEF 2100

 

 

「そうだ。このカードは我のドラゴン族モンスターが破壊された時、手札から特殊召喚できる。貴様の『ガトリング・ドラゴン』の効果で我のモンスターが破壊され墓地に送られた事で特殊召喚されたのだ」

「っ!?」

「これで攻撃終了、貴様は成す術を失った。さあ、どうする」

「……カードを2枚、セッツ! ターンエンド!」

 

 

 

霊廟の守護者(効果モンスター)

星4

闇属性/ドラゴン族

ATK 0/DEF 2100

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する場合、このカードは2体分のリリースにできる。

(2):このカードが手札・墓地に存在し、「霊廟の守護者」以外のフィールドの表側表示のドラゴン族モンスターが効果で墓地へ送られた場合、または戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。

このカードを特殊召喚する。

墓地へ送られたモンスターが通常モンスターだった場合、さらに自分の墓地のドラゴン族の通常モンスター1体を選んで手札に加える事ができる。

 

 

 

成田伸子:LP 500

手札:0枚

フィールド

:ガトリング・ドラゴン(ATK 2600)

:伏せカード2枚

 

 

 

 伸子が伏せたカードは『リミッター解除』とブラフの『魔法石の採掘』。『リミッター解除』で迎撃するつもりなのだ。

 だが、真実や現実というのは、時にどんな物語よりも悲劇をこの世界にもたらす。

 

「我のターン、ドロー。……無駄な事を」

「何!?」

「如何なる策を弄しようとも、我の前では無意味。一縷の希望ですら打ち砕き、踏みにじる現実の残酷さを教えてやろう」

 

 バンッ! とラースは手札を1枚ディスクに叩き付けた。

 

「我は魔法カード『死者蘇生』を発動、墓地より『グランドタスク・ドラゴン』を特殊召喚する!」

『GuuuRaaaaaaaaa!』

 

 

グランドタスク・ドラゴン:ATK 1400

 

 

 フィールドに出現したのは大きな牙を持つ山よりも巨大なドラゴン。『未来融合』で墓地に送られ『龍の鏡』で除外、その後『異次元からの埋葬』で墓地に戻されたカードだ。

 本来ならソリッドヴィジョンの関係でそこまでのサイズにはならない筈だが、闇のゲーム故の特性で本当に空を突くような大きすぎる龍になっている。

 

「このカードを召喚・特殊召喚した時、フィールドのカードを2枚まで破壊する。そしてその数×600の攻撃力を得る。我は貴様のリバースカード2枚を破壊!」

「クッ! 速攻魔法『リミッター解除』発動! これで機械族モンスターの攻撃力を2倍にするんだメェ~!」

 

 

 

グランドタスク・ドラゴン(効果モンスター)

星8

地属性/ドラゴン族

ATK 1400/DEF 2400

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、このカード以外のフィールドのカードを2枚まで対象として発動できる。

そのカードを破壊し、このカードの攻撃力は破壊した数×600アップする。

 

 

 

グランドタスク・ドラゴン:ATK 1400→2600

ガトリング・ドラゴン:ATK 2600→5200

 

 

 巨大な黄色の龍によって粉砕される2枚の伏せカード。咄嗟に『リミッター解除』でガトリング砲を取り付けた機械龍を強化は出来たが、『魔法石の採掘』と共に消されてしまった。相手がこのまま何もしなくともデメリットで『ガトリング・ドラゴン』は破壊されてしまう以上、絶体絶命である。

 それでも1枚だけドローできる次のカードに未来を託せる。ふざけた語尾を操る女は冷や汗を流しながらも、そんな微か過ぎる希望にすがった。

 

「それで凌げたとでも思ったか」

「何っ!?」

 

 だが、絶望とはそんな生易しく無いからこそ絶望なのだと、この日彼女は思い知る。

 

「手札から『ボマー・ドラゴン』を通常召喚」

「そ、そのモンスターは……!」

「バトルだ! 『ボマー・ドラゴン』、奴の『ガトリング・ドラゴン』に負けて来い!」

 

 ラースが召喚したのは爆弾を抱えた小さな龍。それがそのまま鋼鉄の魔龍にぶつかり、自爆した。

 

「『ボマー・ドラゴン』の効果発動。このカードの攻撃で我はダメージを受けず、貴様のモンスターを道連れにする。失せろ、紛い物の鉄屑よ!」

『GuOooooooooo!』

「が、『ガトリング・ドラゴン』ッ!?」

 

 手持ちの爆弾によって消し飛んだ龍だったが、しかし頭から突進した事でその爆発は相手モンスターを巻き込むという自爆テロの様相となる。

 これによりフィールドのモンスターは残り1体と化す。そしてそれは、ラースのモンスターがまだ健在という事を意味していた。

 

「弱者には死あるのみ、強者以外は生きる価値無し! 『グランドタスク・ドラゴン』、あの雑魚女を噛み砕け!」

「うわぁあぁあああああああああああああああああああああああぁぁあああああああっ!」

 

 

伸子:LP 500→0

 

 

ラース:WIN

成田伸子:LOSE

 

 

――アカデミア・選手控室

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

「しっかし、万丈目の奴が相手の大将ってのは驚いたぜ!」

「海を渡ってノース校まで行ったのかしらね」

「ハハハハハハ、意外と根性あったんだね、万丈目君は」

 

 現在、選手控室で俺達5人は待機中。

 歓談に花を咲かせる十代、明日香、フィオをさて置き、俺と大地は部屋の隅の方でヒソヒソ内緒話である。

 

「大地、万丈目の奴、グループの御曹司だったのか?」

「俺も初めて知ったよ。万丈目グループそのものは知っていたが、まさかあいつが本家の血筋だとは思わなかった」

 

 こっちの世界じゃあそんなにポピュラーな苗字なのか、万丈目。

 

「まあ、それは良い。戦うのは十代だし、あいつはそんな事に気ぃ遣うタマじゃねぇしな。だが……」

「何かあるのか?」

「控室に来る前にな、偶然、十代と見たんだよ、万丈目の控室を」

 

 

――準、お前、前にこの学校を退学になったそうだな?

――金に糸目をつけずに手に入れたレアカードだ。これでお前のデッキを補強しろ!

――俺は金融界、正司は政界、お前はデュエル界を制せ!

――負けるのは許さん。お前が負けたら、我がグループの顔に泥を塗る事になるんだからな。

 

 

「あの二人が?」

「パッとスーツケースの中を見たが、パラレルレアで力強いカードばかりだった。本番直前でデッキを変えるとは考えづらいが……」

「分かった、一応十代には作戦を指示しておく」

「頼む。軍師はお前に任せた方が良さそうだ」

「ああ」

 

 そう言って大地は、リラックスしている十代に話しかけた。

 俺も俺で、デッキの最終調整に入る。

 頭の中で何通りものカードの出方や相手のデッキをシミュレートし、不要なカード、必要なカードを分ける。

 最初はバーンやデッキデスも考えたが、見栄えが良くないので止めた。鮫島校長に恥をかかせるワケにもいくまいて?

 ちゃっ、とデッキのキーカードを手に取る。

 

『苦渋の選択』

『天使の施し』

『闇の誘惑』

『異次元からの埋葬』

『精神操作』

 

「ったく、禁止も制限も緩いと、強いデッキが組みやすいったらありゃしない」

 

 少しは楽しませてくれよ?

 

 

 

SIDE:大地

 

 

 

「……それは本当か?」

「ああ、俺見たぜ? トイレですっげぇ悔しそうにしてたんだ」

 

 ふむ、と俺は首を捻った。

 十代がここ、控室に向かう途中のトイレで万丈目の奴を見たと言っていた。

 

 

――いっつもそうだ! 俺はいつも兄さん達と比べられる!

――誰も、俺の苦労なんて分かってはくれないんだ!

 

 

 果たして、それはどういう意味か。

 答えは一つしかない。兄から受けるプレッシャーだ。あの二人は大会社のリーダーと大物政治家。兄が優秀であるのならば弟もきっとそうだろう、世間からそう見られるのが一般的だ。

 万丈目は万丈目なりに、兄に苦労や心配をかけさせまいとして、世間に見栄えが良いようにしていたんだろうと俺は推測する。

 だが、十代や黎に負け、俺に負けてイエローに格下げされた挙句にアカデミアを飛び出した。あいつの兄二人にしてみれば、十分スキャンダラスな事だろうな。

 普通に考えればいくら交流試合に弟が出るとは言え、TV局まで引っ張って来るのはおかしい。つまり二人の目的は、この晴れ舞台で万丈目の失墜した名声を回復すると共に、世界を掌中に納める第一歩にする事なのだろう。

 少なくとも純粋に弟を心配した、という線は薄いと考えて良い。

 

「キナ臭くなって来たな……」

 

 ……黎に報告しておくか。

 プライドという男と2度目の戦いが終わった後、俺達限られたメンバーにだけ、黎は自分のプライベートの一部を暴露してくれた。

 異世界、死、転生、年上……。

 どれもが現実と甚だしく乖離していたが、黎を見ていると、何となく説得力があった。

 シンクロもエクシーズもそれで説明がつくし、妙に大人びていたり知識が豊富だったりする点も理解できる。

 そういう事を加味すれば、この一件も黎に報告して二人で考えれば心強い。

 

「あ、そういえば万丈目の奴、精霊連れてたよな?」

「十代君も見たのかい? それなら私の見間違いって線は薄そうだね」

 

 ……報告すべき事がもう一つ増えたな。

 俺も精霊とやらを見てみたいものだ。

 実体化した桜さんは、どちらかと言えば精霊よりも人みたいな感じだからな。

 

 

 

SIDE:無し

 

 

 

――デュエルリング

 

 

 試合が始まるという事で、黎達は控室から移動し、リングの傍に特設されたベンチで観戦すべく座っていたのだが……。

 

『フレー! フレー! アカデミア! フレッフレッ・大地! 頑張れ頑張れ・大地! フォーッ!』

 

 観客席の一番上の通路で、アカデミア本校の女子生徒達がチアガールコスで応援していた。

 しかも。

 

「もっと声を大きくです!」

『はいっ!』

 

 フレイがコーチについていたりした。

 お堅い麗華や引っ込み思案の彰子は顔を真っ赤にし、ヤケッパチなツァンやノリノリの雪乃、張り切っている友紀などなど……。

 黎は思わず桜の方を向いて、視線で聞いた。

 

――何だあれ?

――知らぬ。

 

 そんなアイコンタクトを察したのか、フィオがずずい、と黎と桜の間に入って話しかけて来た。

 

「黎は休んでいたから知らないんだっけね。実は数日前、フレイが女子生徒集めて……」

 

 

 

『皆さん、チアガールをやりましょう! 代表5人を応援するのです! 可愛い恰好して応援すればきっと代表の方々はやる気を出してくれるハズです!』

 

 

 

「って強引に話進めて……」

「こうなったと」

 

 あいつ、何がしたいんだ?

 思わずフレイの方へと顔を向けると、フレイがウィンクを投げかけてきた。

 

 

――どうです、黎さん? 皆、頑張ったんですよ?

 

 そう語られているように黎には思えた。

 知るか、と思わず黎は答えそうになった。

 

 

 

 

 チアガール達の応援もやがて終わった頃、アナウンスのスイッチが入り、クロノスの声で放送が始まった。

 

『あーあー、静粛にぃ~。これよーり、デュエルアカデミア本校VSノース校の対抗試合を開始するの~ネ! うーん、わたくし~が、テレビに映るなん~て、夢のようなの~ネ』

 

 本人はマイクを切って言ったつもりのようだが、スイッチはオンになりっぱなしである。

 それと放映の主役はデュエルする生徒であり、彼本人ではない。

 

『えー、コホン。それで~は、まずは先鋒戦なの~ネ! アカデミア本校からはラーイエロー在籍~ノ、“黄色の智将”、三沢大地なの~ネ!』

 

 クロノスの紹介に合わせ、大地がベンチを立ってデュエルリングに上った。

 頑張れ~、という声援を受けて、大きく手を振って答えた。

 

『そしてノース校から~ハ、“天獄の門”、点田三郎なの~ネ!』

 

 対する相手、点田も上がる。

 頭は丸刈りにしていて背は大地よりやや低く、針金のように細く見える。それでも全体的に痩せている感じは無く、線が細いという印象しか与えない。

 

『ルール説明なの~ネ。先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の順にデュエルを~し、勝った方に1点が加えられるの~ネ! ただし、大将戦までに2点以上の差があった~ラ、大将戦で勝った方に5点贈呈されるの~ネ!』

 

 ブゥン、と電光掲示板に組み合わせが映し出された。

 

 

 

 

先鋒戦:三沢大地VS点田三郎

次鋒戦:天上院明日香VS水島標呉

中堅戦:神山フィオVS犬養通

副将戦:遊馬崎黎VS光善寺久良丸

大将戦:遊城十代VS万丈目準

 

 

 

 

『それでーは、二人とも構えるの~ネ!』

 

「改めてよろしく、三沢大地だ」

「うす、点田三郎だべ。よろしく頼むべよ」

 

 互いに向かい合い、軽く会釈。陰険な雰囲気はどこにも見当たらない。

 そしてそのまま左腕に装着したデュエルディスクにデッキを挿入して起動スイッチを入れる。ライフカウンターがオンになり、レーンにそってエッジが走る。キュシン、ピン! という音が鳴り、準備が整った。

 

『先鋒戦~……、開始!』

 

「「デュエル!」」

 

 

大地VS点田

LP 4000 VS LP 4000

 

 

「まずは俺のターンからだ、ドロー! 魔法カード『トレード・イン』を発動! 手札のレベル8のモンスターを1体墓地に送り、カードを2枚ドローする! レベル8の『ウォーター・ドラゴン』を墓地へ!」

 

 引いたカードを見ると、大地はニヤと笑った。

 最初のピースが来たからだ。

 

「魔法カード発動、『化石調査』! デッキからレベル6以下の恐竜族モンスターを手札に加える! この効果で『オキシゲドン』を手札へ!」

 

 

 

化石調査

【通常魔法】

(1):デッキからレベル6以下の恐竜族モンスター1体を手札に加える。

 

 

 

「俺は『オキシゲドン』を召喚!」

『グルルルルッ!』

 

 

オキシゲドン:ATK 1800

 

 

 初手で大地が呼び出したのは、青緑色の翼竜。酸素をモチーフにした、彼のデッキの切り込み役だ。

 

 

 

オキシゲドン(効果モンスター)

星4

風属性/恐竜族

ATK 1800/DEF 800

このカードが炎族モンスターとの戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、お互いのライフに800ポイントダメージを与える。

 

 

 

「更に魔法カード『封印の黄金櫃』! デッキから『ボンディング-H2O』を除外して、2ターン後のスタンバイフェイズに手札に加える!」

 

 

 

封印の黄金櫃

【通常魔法】

自分のデッキからカードを1枚選択し、ゲームから除外する。

発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。

 

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

 

大地:LP 4000

手札:3枚

フィールド

:オキシゲドン(ATK 1800)

:伏せカード1枚

 

 

 

 続いて、点田にターンが回る。

 

「ウス、オラのターンだべ! ドロー! 『ジャイアントウィルス』を守備表示で出すべよ!」

 

 

ジャイアントウィルス:DEF 100

 

 

 対し、点田が呼び出したのは紫の巨大な病原菌。短く細い触手のようなものが無数に生えており、見る者に生理的な嫌悪感を呼ぶ。

 

 

 

ジャイアントウィルス(効果モンスター)

星2

闇属性/悪魔族

ATK 1000/DEF 100

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、相手ライフに500ポイントダメージを与える。

さらに自分のデッキから「ジャイアントウィルス」を任意の数だけ表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

 

 

 

「カードを2枚伏せる!」

 

 大地は高速で脳を動かす。『ジャイアントウィルス』の特性、ダメージと増殖。闇属性で悪魔族、豊富なサポートカード。低いレベル。『リミット・リバース』に対応。伏せの警戒レベルは中。

 そして手札を見る。

 

(問題無い、次のターンに叩ける)

「ターン終了だべよ!」

 

 

 

点田:LP 4000

手札:3枚

フィールド

:ジャイアントウィルス(DEF 100)

:伏せカード2枚

 

 

 

「遅れは取らない。俺のターン!」

 

 

封印の黄金櫃:1ターン目

 

 

「俺は『テイク・オーバー5』を発動! デッキからカードを5枚墓地に送る!」

 

 事前に墓地を肥やし、デッキを圧縮する事の重要性を黎から教わった大地は、以前なら投入を迷ったカードを発動する。

 罠カードの『針虫の巣窟』と違って速効性があり、なおかつドローの補助もあるというありがたいカードだ。黎もこれに何度か救われたとの事。

 

 

 

テイク・オーバー5(アニメオリジナル)

【通常魔法】

自分のデッキの上からカードを5枚墓地に送る。

この効果を発動した次の自分のターンのドローフェイズ時、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、デッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

「更に『ハイドロゲドン』を召喚!」

『グォォォオオオオォォッ!』

 

 

ハイドロゲドン:ATK 1600

 

 

 続いて大地が呼び出したのはリクルーターの天敵とも言えるモンスター。茶色く濁った水の、四足の恐竜だ。

 

 

 

ハイドロゲドン(効果モンスター)

星4

水属性/恐竜族

ATK 1600/DEF 1000

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、自分のデッキから「ハイドロゲドン」1体を特殊召喚する事ができる。

 

 

 

 そしてまだ終わらないと言わんばかりに、更に手札を切る。

 

「続けてフィールド魔法『ウォーターワールド』を発動!」

 

 発動し、立体映像が現れると、そのカードのイラストから怒涛の波の如く水が流れ出した。青く清らかな水は、瞬時に辺りを水で多い尽くし、デュエルリングは一面海となった。

 

 

 

ウォーターワールド

【フィールド魔法】

フィールド上に表側表示で存在する水属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、守備力は400ポイントダウンする。

 

 

 

「これで、俺の『ハイドロゲドン』を強化する。攻撃力500ポイントアップだ!」

 

 

ハイドロゲドン:ATK 1600→2100/DEF 1000→600

 

 

 大地は考える。

 

(『ハイドロゲドン』で攻撃を続け、『ジャイアントウィルス』を全て破壊すれば、相手に2200のダメージを与えられる。『オキシゲドン』の攻撃力は1800、4体目のダイレクトアタックが通れば、俺の勝ちだ!)

 

 そして手札を見る。

 

(手札のカードは『攻撃の無力化』。例えこのターンで仕留め損なっても、最悪何とかなる)

 

 布陣は手堅く、地道かつ派手にアドバンテージを重ねていく。

 勝利の方法は多数あれど、アドバンテージの多い方が有利なのはデュエルの常だと、大地は黎から教わっている。

 そしてそうしたギャンブル性や運に頼らない戦術は、彼の得意とする方針だ。

 

「バトル! 『ハイドロゲドン』で『ジャイアントウィルス』を攻撃! “ハイドロ・バースト”!」

 

 ドジャァッ! と吐き出された濁流が、紫色の菌を押し流す。しかしその瞬間、『ジャイアントウィルス』は風船が破裂するかのように四散し、周囲に闇のエネルギー波を撒き散らした。

 

「ぐっ!?」

「『ジャイアントウィルス』がバトルで破壊された時、おめぇに500ポイントのダメージを与えるだ!」

 

 

大地:LP 4000→3500

 

 

「更にデッキから、同じ名前のモンスターを攻撃表示で2体まで特殊召喚できるど!」

 

 

ジャイアントウィルス:ATK 1000

ジャイアントウィルス:ATK 1000

 

 

 放たれた闇のエネルギー波が大地を襲う。

 更にそれだけでは止まらず、点田の傍らにヘドロのように沈着し、新しい細菌生命体となって増殖した。

 

「だが、『ハイドロゲドン』の効果も発動する! このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、デッキから同じ名前のモンスターを1体特殊召喚する!」

『ギォォォアァァァァォアォアォアアォオオッ!』

 

 

ハイドロゲドン:ATK 1600→2100

 

 

 大地とて負けてはいない。

 濁水の恐竜が声高々に咆哮し、増殖効果に対抗して増援効果を発揮。新たに仲間を呼んで戦力を増強した。

 

「行くぞ! 2体目の『ハイドロゲドン』で『ジャイアントウィルス』を攻撃! 今度はダメージが発生するぞ!」

「げぶっ!」

 

 

点田:LP 4000→2900

 

 

「だが、おめぇも500ダメージを受けてもらうべよ!」

「分かっている。ぐっ!」

 

 

大地:LP 3500→3000

 

 

 先刻と同じ事が再び発生し、両者がダメージを負う。

 

「3体目の『ハイドロゲドン』を特殊召喚!」

『ガァッ!』

 

 

ハイドロゲドン:ATK 1600→2100

 

 

 だが、先刻と違うのは細菌が増殖しない事。

 更にダメージも違う。大地の方が受けたダメージが圧倒的に少ない。

 

「行くぞ、攻撃だ!」

「ぐぁっ!」

 

 

点田:LP 2900→1800

 

 

「ダメージを受けるのはお互い様だべよ!」

「っ! だが、受けるダメージはお前の方が多い!」

 

 

大地:LP 3000→2500

 

 

 三度繰り返される光景。しかし、既にその時点でライフポイントには700の差がついていた。

 

「俺の場には攻撃力1800の『オキシゲドン』がいる。お前のライフも1800、これでジ・エンドだ!」

「そうはいかんべ! オラは『ダメージ・コンデンサー』を発動するだ! 自分がバトルダメージを受けた時に手札を1枚捨てて、デッキから受けたダメージ以下の攻撃力のモンスターを1体、攻撃表示で特殊召喚するべよ!」

 

 

 

ダメージ・コンデンサー

【通常罠】

自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を1枚捨てて発動する事ができる。

その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する。

 

 

 

「オラはデッキから攻撃力1100以下のモンスター、『ハープの精』を特殊召喚だ!」

 

 点田が手札を捨てて、罠カードを発動する。

 デッキからカードが1枚吐き出され、それを場に出した。

 

 

ハープの精:ATK 800

 

 

 光のゲートを潜って出現したのは、身の丈以上にあるハープを奏でる女性。金色のゆったりとした服を羽織り、優しい音色を奏でた。守備力の高い天使族のため、フィオも使いやすい壁モンスターの1体として活用する事もあるモンスターである。

 

 

 

ハープの精(通常モンスター)

星4

光属性/天使族

ATK 800/DEF 2000

天界でハープをかなでる精霊。

その音色はまわりの心をなごます。

 

 

 

「なら、『オキシゲドン』でそいつを攻撃するまで! “オキシ・ストリーム”!」

「ぐえっ!」

 

 

点田:LP 1800→800

 

 

 優しげな女性モンスターであっても大地は容赦しない。翼竜に指示を飛ばし、強烈な気流で背後にいた相手ごと、美しい演奏者を吹き飛ばした。

 

『ブーブー!』

『BOOOOO!』

 

 そして沸き起こる大ブーイング。ヴィジュアルと価値観という、何とも難しい問題である。

 

「(仕留めきれなかったか……)カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

 

大地:LP 2500

手札:0枚

フィールド

:ハイドロゲドン(ATK 2100)×3、オキシゲドン(ATK 1800)

:伏せカード2枚、ウォーターワールド(フィールド魔法)

 

 

 

「オラのターン、ドロー! 魔法カード『強欲な壺』! デッキからカードを2枚ドローするべ!」

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

 アカデミアの交流戦、先鋒の戦いを有利に進めているのは大地だ。

 

「オラは魔法カード『鳳凰神の爆風』を発動! 手札を捨てて、今捨てた墓地の『カオス・ソーサラー』をデッキの1番上に戻すべ!」

 

 だが、どうも腑に落ちない。

 今の相手の、点田の行動だってそうだ。わざわざ『カオス・ソーサラー』をデッキトップに置くようなマネをして、何の意味があるのだろうか。

 普通あれは『インフェルニティ・デーモン』によるサーチ効果や、『D・HERO ダイヤモンドガイ』の魔法効果を誘発するために使用されるコンボ。だが、どちらも奴が持っているとは考えにくい。

 

 

 

鳳凰神の羽根

【通常魔法】

手札を1枚捨てる。

自分の墓地からカードを1枚選択し、デッキの一番上に戻す。

 

 

 

 点田のこれまで出したモンスターは、いずれも低ステータスで、入れようと思えば大体のデッキに投入できる。

 奴は一体何のデッキなんだ?

 【カオス】デッキかと一瞬考えたが、違うだろうな。それなら『カオス・ソーサラー』をデッキトップに戻す必要が無い。

 

「更に魔法カード『盗人ゴブリン』を発動! おめぇのライフを500、頂くべよ!」

「うっ……!」

 

 

大地:LP 2500→2000

点田:LP 800→1300

 

 

 

盗人ゴブリン

【通常魔法】

相手ライフに500ポイントダメージを与え、自分は500ライフポイント回復する。

 

 

 

 今度はライフ回復+バーン……?

 考えろ……。

 奴が墓地に落としたモンスター、デッキトップに戻したカード、今のライフ回復……。

 何故ライフを回復した? 多分ライフコストを確保するため。

 何故デッキトップにカードを戻した? 恐らく次のドローを確実なものにするため。

 

 ライフコストが必要で、次のドローを確定させるカードは……、っ!

 

「マズい! 大地が負ける!」

『え!?』

 

 同じベンチで観戦していたフィオ、十代、明日香が驚いたように反応した。

 

「どういう事だい、黎! 三沢君が負けるって!」

「伏せカード次第じゃあ2300のダメージを受けて負けるって事だ!」

 

 そう、恐らく点田が出そうとしているのは……!

 

 

 

SIDE:大地

 

 

 

 黎の言葉が聞こえた。

 俺が負ける、だと……?

 

「ふふ、おめぇの仲間が勘が良いべや。オラの手ェ読んだんだからな」

「……まさか、俺が本当に負けると思っているのか?」

「当然だべ!」

 

 奴の手札は今2枚。フィールドにはリバースカードが1枚あるのみ。攻撃にも召喚にも反応しなかった所を見ると、恐らくその手のカードじゃない。ブラフという可能性も有り得る。

 だとすると、奴の手札にこそ形成逆転の1枚がある。

 

「オラがハッタリ言ってるとでも思うべや? このカード見たら、そんな事も言えなくなるべよ!」

 

 そう言って、予想通り点田は手札を1枚引き抜いた。

 

「このカードは通常召喚できねぇ。オラの墓地から光属性・天使族モンスターを1体、闇属性・悪魔族モンスターを3体、ゲームから除外して特殊召喚するべよ!」

 

 点田の周囲に、半透明の姿で現れる『ジャイアントウィルス』3体と『ハープの精』。

 この召喚条件は……!

 

「出て来るべぇ! これがオラのデッキのエースモンスター、『天魔神ノーレラス』だぁ!」

 

 

 

天魔神ノーレラス(効果モンスター)

星8

闇属性/悪魔族

ATK 2400/DEF 1500

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地の光属性・天使族モンスター1体と闇属性・悪魔族モンスター3体をゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。

1000ライフポイントを払う事で、お互いの手札とフィールド上のカードを全て墓地へ送り、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

「くっ、こいつか!」

 

 出現するのは、白い包帯を巻いた闇の天使。悪魔然とした翼を持ち、黒い全身のあちこちに拘束具のような革のベルトが巻かれている。白い顔に光る赤色の単眼が、こちらの恐怖心を増大させる。

 成程、それでさっき『カオス・ソーサラー』をデッキトップに戻したのか。

 

 

天魔神ノーレラス:ATK 2500

 

 

「『ノーレラス』の効果発動! オラのライフを1000支払って、手札とフィールドの全てのカードを墓地に送る! そしてこれにチェーンして罠カード、『亜空間物質転送装置』を発動!」

「何!?」

「オラの場のモンスターを1体、エンドフェイズまで除外するべや!」

 

 

 

亜空間物質転送装置

【通常罠】

自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、このターンのエンドフェイズ時までゲームから除外する。

 

 

 

点田:LP 1300→300

 

 

「オラのライフは300になっちまったが、もう関係ねぇ! やるべ、“天地創造・魔神烈波”!」

 

 強力な魔の波動を撒き散らす闇の天使。自身も飲み込みかねないそのエネルギー波は、しかし当人は別の空間へと退避して回避してしまう。

 当然、術者がいなくなった程度で波状攻撃が終わるはずも無く、お互いの場の全てのカードを深く暗い闇の中へと飲み込んで、漸く納まった。

 

「ぐっ!」

「そしてカードを1枚ドローする! まだだべ、オラは墓地の、『ダメージ・コンデンサー』の時に捨てた『ファントム・オブ・カオス』と、今墓地に送られた『シャインエンジェル』を除外し、『カオス・ソーサラー』を特殊召喚!」

 

 くっ、これが黎の言っていた事の正体か!

 『亜空間物質転送装置』で『ノーレラス』を守り、デッキトップを操作して『カオス・ソーサラー』を特殊召喚する手筈を整えた。

 何て奴……。これが、この代表戦に選ばれるだけの実力……。

 

 

カオス・ソーサラー:ATK 2300

 

 

「おめぇのライフは後2000! この攻撃で終わりだべや!」

「…………」

「『カオス・ソーサラー』でダイレクトアタック! “闇と光の螺旋波動”!」

 

 肌色の悪い、黒い鎧を着た魔術師の魔法が俺を飲み込む。

 防ぐ手段を持たない俺は、その攻撃を正面からまともに喰らった。

 

「いよっしゃあ! オラの勝ちだべ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、そう上手くは行かせない!

 

 

大地:LP 4000→1700

 

 

「な、何だべぇ!? 何でおめぇのライフが0になってねぇんだべよ!?」

 

 驚愕に目を見開く点田。まあ、そうだろうな。自分の必殺コンボで相手を仕留めきれなかったのだから。

 だが、俺もアカデミアの代表。そう易々と負けるワケにはいかないんだ。

 

「お前が『ノーレラス』に『亜空間物質転送装置』を発動したように、俺も『ノーレラス』の効果に速攻魔法をチェーンして発動したんだ」

 

 俺が見せるのは、ビスケットや缶詰のイラストを持った緑色のカード。

 まさか、これに助けられるとは思わなかったよ。

 

「そ、そのカードは!?」

「速攻魔法『非常食』。俺の場の『非常食』以外の魔法・罠を墓地に送り、その数×1000ライフを回復する。『ウォーターワールド』と伏せておいた『攻撃の無力化』をコストに、2000ポイントのライフを回復したんだ」

「そ、それでライフが4000になり、止めを刺せなかったってワケべや……」

 

 別に『攻撃の無力化』を『サイクロン』で狙われる確率を下げただけのつもりだったんだが、思わぬ形で救われたようだ。

 とは言え、本当に今の一撃を凌いだだけ。

 次のターンにどうにかできなければ、俺のライフは尽きる。

 

「ターンエンド! そして『ノーレラス』が帰って来るべよ!」

 

 

天魔神ノーレラス:ATK 2400

 

 

 

点田:LP 300

手札:0枚

フィールド

:天魔神ノーレラス(ATK 2400)、カオス・ソーサラー(ATK 2300)

:魔法・罠無し

 

 

 

「俺のターン、ドロー! この瞬間、『テイク・オーバー5』と『封印の黄金櫃』の効果が発動する! 『テイク・オーバー5』をゲームから除外し、もう1枚ドロー! 更に『封印の黄金櫃』で除外しておいた『ボンディング-H2O』を手札に加える!」

「手札0から3枚だとぉ!?」

 

 自分の手札を見て、ふとデッキをあーでもないこーでもないと組み上げていた時の事を思い返す。

 黎は俺のデッキを見て、こうアドバイスしてくれた。

 

 

 

──『ウォーター・ドラゴン』は確かに強いが、召喚に手間がかかる

──万が一に備えて保険があった方が良いだろう、何ならそっちで相手を仕留めても良い

──素材と足並みを揃えられる恐竜族と、切り札と同じ水属性……どっちが良い?

 

 

 

 俺がその時に選んだカードが、このドローによって来てくれた。それら3枚のカードが光のラインを紡ぐ。

 1枚1枚が次のカードへと軌跡を繋ぎ3枚が4枚、4枚が5枚になり……。逆転の準備は、これで整った!

 

「俺は装備魔法『早すぎた埋葬』を発動! ライフを800払い、墓地から『ハイドロゲドン』を1体復活させる!」

『ゴァアア!』

「そして続けて『死者蘇生』も発動だ! 蘇れ、もう1体の『ハイドロゲドン』!」

『グォオオ!』

 

 

大地:LP 1700→900

ハイドロゲドン:ATK 1600

ハイドロゲドン:ATK 1600

 

 

 1度は斃れた俺のモンスター達が墓地から蘇る。

 濁流の蜥蜴達が戻り、点田とモンスターの数がこれで並んだ。

 

「ウーッハッハッハッハッ! 攻撃力1600程度、悪足掻きだべよ!」

「慌てるな、まだ準備は終わっていない。ここで俺は墓地の『幻創のミセラサウルス』のモンスター効果を発動。墓地のこのカードと恐竜族モンスターを好きな枚数だけゲームから除外し、その枚数と同じレベルの恐竜族モンスターをデッキから特殊召喚する事ができる。俺は墓地から合計4枚の恐竜族モンスターを除外し、デッキからレベル4の恐竜族モンスターを呼び出す!」

 

 墓地から霊魂をまとうトリケラトプスの骨を始め、蘇生しなかった『ハイドロゲドン』と『オキシゲドン』、デッキから直接墓地に送られた『フロストザウルス』が吐き出され、光となって消える。

 『フロストザウルス』は水属性かつ恐竜族、そして『化石調査』にも対応するという事で黎から譲り受けたモンスターの1枚。攻撃力もレベル6なのに2600もあるという超強力なカードであり、バニラ(効果が無い)モンスターである事を補って余りあるカードだ。

 どちらも『テイク・オーバー5』で墓地に送られたカードで、残りは『サイクロン』、『天使の施し』、『魔法の筒』。非常に痛いラインナップだが、勝利の対価として甘受しよう。

 

 

 

幻創のミセラサウルス(効果モンスター)

星4

炎属性/恐竜族

ATK 1800/DEF 1000

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分・相手のメインフェイズに、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。

そのメインフェイズの間、自分フィールドの恐竜族モンスターは相手が発動した効果を受けない。

(2):自分の墓地からこのカードを含む恐竜族モンスターを任意の数だけ除外して発動できる。

除外したモンスターの数と同じレベルの恐竜族モンスター1体をデッキから特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。

 

 

 

フロストザウルス(通常モンスター)

星6

水属性/恐竜族

ATK 2600/DEF 1700

鈍い神経と感性のお陰で、氷づけになりつつも氷河期を乗り越える脅威の生命力を持つ。

寒さには滅法強いぞ。

 

 

 

 俺が黎から教わった事。それはデュエルとは即ち“積み木”や“羊羹”であるという考え。

 1つ1つを積み上げて高くする、1枚1枚は薄くとも最後には削り切る。そうした下拵えや下準備が、勝利を導くという事だ。

 

 

 

──けれどもやはり……、『ウォーター・ドラゴン』で、俺は勝ちたい

──我儘で非論理的だとは思うが、そこを曲げてはいけない気がするんだ

 

──よく言った、それでこそデュエリストだよ

──じゃ、そいつで勝てるように工夫しないとな

 

 

 

「デッキから出でよ、新たな『オキシゲドン』!」

 

 

オキシゲドン:ATK 1800

 

 

「そんな雑魚モンスター、いくら並べた所で、オラのモンスターの敵じゃねぇべ!」

 

 嘲ったように笑う点田。

 確かに、こいつらの攻撃力じゃあ『ノーレラス』も『カオス・ソーサラー』も倒せない。

 だが知っているか? 水素2つと酸素1つが組み合わさるとどうなるか!

 

「相手をするのはこいつらじゃない! それに忘れたか、俺が『封印の黄金櫃』で手札に加えたカードの事を!」

「なぬ!?」

「魔法カード『ボンディング-H2O』を発動! 俺の場の『ハイドロゲドン』達と『オキシゲドン』をリリース!」

 

 見せてやる、今この俺の出せる、最高のモンスターを! 黎に無理を言ってまで揃えて貰ったカードでパワーアップした俺のデッキ、その最初のデュエルで躓くワケにはいかないんだ!

 

「出でよ、『ウォーター・ドラゴン』!」

『ギィオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』

 

 

ウォーター・ドラゴン:ATK 2800

 

 

 濁水と酸素が混ぜ合わさり、一つとなる。それは蛇のようにうねり、やがて神話に登場するミズチのような蛇然とした龍となった。

 これが俺の、最強モンスターだ!

 

「こ、攻撃力2800!?」

「そうだ。これがお前が莫迦にした『雑魚モンスター』の、真の姿だ!」

 

 黎は言っていた。雑魚と侮辱するのは簡単だが、それはそいつらの真の力を知らない奴のセリフだ、と。

 俺はその言葉に感銘を受けた。それは正しく、モンスターの本当の力を引き出せる、真の猛者の言葉だったからだ。

 然るに、俺は点田の雑魚発言を聞いた瞬間に確信した。俺はこいつに勝てると。

 奴には真のデュエリストたる資格は、無い!

 

「今回は俺の勝ちだ! 腕を上げてからまた来い!」

「ぐ、うぅ……!」

「バトル! 行け、『ウォーター・ドラゴン』! 『天魔神ノーレラス』を攻撃! “アクア・パニッシャー”!」

 

 吐き出される激流。凄まじい勢いの清らかな水の柱は、闇に染まった天使を貫き……。

 

「ぬ、ぐ、うおぁあぁぁああぁぁああああああああああああっ!」

 

 

点田:LP 300→0

 

 

 奴のライフを根こそぎ奪い取った。

 

『そこまでなの~ネ! 勝者、三沢大地~!』

 

 

大地:WIN

点田:LOSE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

――ベンチ

 

 

「ナイスデュエル、大地」

「ありがとう、黎。正直、お前が『非常食』を進めてくれなければヤバかった」

 

 そう言って大地は頭を掻く。

 そう、『非常食』を差すように助言したのは、俺だ。

 俺のいた世代は特殊召喚で強いモンスターを連打して来るのが王道。そういったデッキに対抗するのなら『昇天の黒角笛』や『神の警告』、『サモン・リミッター』に『灰流うらら』を入れているのが常。

 一方、この時代ではまだワンパワーな展開が多い。モンスター1体か2体の攻撃を凌げれば、少なくとも負けずに済む。だから大きくライフを回復できる『非常食』や『ドレインシールド』が役に立つのだ。

 

「これでまず一勝だな! この調子で行こうぜ!」

「調子に乗らないの、十代。貴方が負けたら最悪パーなんだからね?」

 

 明日香が十代を窘めるように言う。

 この5対5のデュエル、2点以上の差がついて大将戦を迎えた場合、大将戦で勝ったチームに5点が加えられる。つまり副将までの4人が勝っても、十代が敗北してしまうとアカデミア側の負けなのだ。

 しかも副将まで4戦なので、引き分けに持ち込む以外1点差というのは有り得ない。実質、全て大将戦にかかっていると言っても過言ではないのだ。

 

「じゃあ何で5対5にしたんだよ」

「黎、それ以上言っちゃダメ」

 

 

<デュエルアカデミア交流試合>

本校VSノース校

現在の戦績:1勝0敗

 

 

to be continued

 




これでも恐竜族サポカを2枚しか使っていないという恐ろしい現実
こういったオーバーパワーを貰えると言われても、10年前の自分は信じなかった事でしょう……
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