遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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フィオ・桜「「なーにかな、なーにかな。今回はこれ!」」



湿地草原
【フィールド魔法】
フィールド上の水族・水属性・レベル2以下のモンスターの攻撃力は1200ポイントアップする。



フィオ「フィールド魔法の一種だね、攻撃力が1200ポイントアップするよ」

桜「ただし3種類のステータスに合わなければ強化はされない。レベルを下げたり種族・属性の変更は大して苦労は無いが、3種類の変更は難題だ」

フィオ「水属性のローレベルを意識すると、今度は3000を超えられない程度の攻撃力しかないから、上手く運用してね!」


STORY67:湿った土地の罠

 

――日本某所

 

 

 

SIDE:無し

 

 

 

「クククク……」

 

 喪服の男、ラースが笑う。

 手にしたカードの中には、先ほど封じた成田伸子の魂が封じられている。

 

「憎い相手に勝てなかった、これもまた負の想念の源となる。ククククク……!」

 

 一人笑うラースだったが、しかし、突如として胸元を抑えて苦しみ出した。

 

「ぐ……っ、おのれグラトニー……、貴様、死してなお我らが道を遮るか……っ!」

 

 そう、抑えた個所は、以前グラトニーが刺し貫き、爆破した所。傷はまだ完全に癒え切っていないようだ。

 苦々しい表情だったが、それでもラースは笑みを浮かべた。

 そして虚空を見上げる。

 

「……まあ、良い。人間程度が相手ならば、これでも充分だ。今やグリードも上級護衛クラス、容易く負けはせんだろう」

 

 

 

――中東某所

 

 

「ヒャハハハハハ! ザマねぇな! それでよくプロだなんて名乗れたモンだぜ!」

 

 夕方の路地裏、一目のつかない場所でグリードも一戦交え、勝利していた。

 相手は当地のプロを名乗る男だが、グリードが事前に得たここのプロリーグに、今相対している男の情報は無かった。嘘か、アマチュアなのだろう。

 

「ヒャハッ! これで今日は4枚目、ちょろいモンだぜ! 大した実力のネェ奴に限って無駄にプライドが高ぇ! ボロ儲けとはこの事だ!」

 

 ゲラゲラと大笑いしながらカードを弄ぶグリード。今週に入って集めた枚数は約20枚。この調子で行けば、復活の遅れを取り戻すどころか予定より早くなる可能性が高い。

 もっとも、早く集められる代わりに1枚1枚の力は弱いが。やはり相手の実力が低いとこうなのだろう。しかし強い相手だとこちらの消費する力が大きいので、数でカバーするしかない。この星には何十億という数の人間がいるのだから、たかが1万2万減ったところで、何ら差し障りは無いはずだ。

 

「おっと、こうしちゃいられねぇ。次の獲物を探しにいかないとな」

 

 ヒャーハッハハハハハッハハハ! 夕焼けの中へと、漆黒の高笑いが消えていく。

 

 

 

――デュエルアカデミア

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

 先鋒の一回戦、大地が強力な相手のエースを打ち破って見事に勝利した交流戦。次鋒はブルー女子最強のツートップの内の1人、明日香だ。

 ところで、俺には1つ気になっていた事があった。

 

「ところでフィオ」

「何?」

「リリースって言葉になってたよな?」

 

 大地が『ボンディング-H2O』を発動した時、確かにあいつはリリースと言っていた。この時代ではまだ呼び方は生贄だったはず……?

 

「あ、そうか、黎は休んでて知らないんだったっけ? 昨日から呼び方が変わったんだよ。リリース、アドバンス召喚、エクストラデッキ、ってね」

「昨日?」

 

 俺がラストとの戦いを終えた後の事か。流石に寝なくちゃかなわねぇレベルのダメージだったんで寝てたんだが、そうか、その時か。

 いや待てや。

 

「ご都合主義にも程があるだろ」

「わたしに言われても困るんだけど」

 

 フィオの言い分もごもっともである。

 

 

――控室

 

 

 

SIDE:無し

 

 

 

 明日香は、デッキと睨めっこをしていた。

 と言っても別に文字通り顔を使って遊んでいたワケではない。デッキの最終調整だ。

 

「…………」

 

 デッキ枚数や内容を考慮し、まだ使い慣れていない『サイバーエンジェル』の儀式デッキより、普段から使っていたプリマのデッキを使う事にしたのだが……。

 

「これで、良いのかしらね?」

 

 不安が拭えないのだ。

 何せ相手はノース校最強の5人の内の1人。自分が負けてもまだ3人いる、というのは分かってはいる。特に黎や十代が負ける姿なんて想像もつかない。

 だが、先の大地とて、勝ちはしたものの、ハッキリ言ってギリギリだった。もしあそこで『非常食』を伏せてなければ彼は負けていただろう。そういう勝つか負けるかの境界線の戦いが、この交流試合なのだ。これまで自分が体験してきたものとは、確実に一線を画す。

 別に負けても何かしらペナルティがあるワケではない。それでも勝ちたいのだ。それがデュエリストの性というものだろう。

 

「うーん……」

「何だ、明日香? もうじき始まっちまうぜ?」

 

 悩んでいると、チームの大将がやって来た。

 明るい茶髪に赤い制服、何時も陽気で能天気、それでいてデュエルの神に守られているかのような強さ。自分を初めてこの学園で負かせた男、十代だ。

 

「お、デッキで悩んでるのか?」

「ええ。これで良いのかしらって思うと、止まらなくて……」

 

 ふと、明日香はこの男に相談してみようと思った。

 何故そんな事を思ったのかは分からない。でも、彼ならきっと、自分の思いもよらない答えを出してくれる。そんな予感がしたのだ。

 

「ねえ、十代。私、今すごく不安なのよ」

「不安?」

「これから私は皆を代表した戦いと直面する。これまでの校内の、勉強の延長みたいなものとは訳が違うわ、自分の本当の実力を出し切らなくちゃいけない、真剣勝負よ」

 

 自分でも驚く程、明日香はスラスラと喋りだした。胸の内が、どんどんと流れ出していく。

 

「でも、私に本当にそんな実力あるのか、何もできずに負けるんじゃないかって思うと、怖気付いちゃうのよ。……おかしいわよね、オベリスクブルーの女王だクイーンだなんて呼ばれていても、結局は井の中の蛙。学校の外で通じる保証なんてどこにもないのよ。笑いたければ笑いなさい、見下したければ見下しなさい。そうよ、どれだけ頑張ったって、私なんて所詮小さな世界の女王様。私なんて「ストップ!」十代……?」

 

 不安をさらけ出していく内に、自分がどんどん暗くなっていくのを自覚した明日香。そのまま心情を吐露し続けようとした時、十代は声を張り上げてそれを止めた。

 

「黎の奴が、明日香が不安がっているんじゃないか、って言って様子見て来いって言ったけどよ、本当だったんだな。

 あのさ、明日香。俺、バカだから上手い事言えないけれど、これだけは分かる」

 

 十代はそこで一度区切った。大切な事を伝えるために。

 

 

「お前は、強い」

 

 

「十、代……?」

「だってよぉ、弱ぇヤツがオベリスクブルーのトップになれるワケねーじゃん? お前がそんな事言ってたら、お前より弱いヤツはどうなっちまうんだよ? もっとしっかり自信持てよ! お前はフィオのヤツと同じで、女子の代表なんだろ?

 それに、もしまだ悩むんだったら、黎の言ってた事思い出せよ」

 

 その言葉に、明日香はハッとなった。

 この戦いの順番を決めたのは、黎だ。彼の言葉はこうだった。

 

 

 

『先鋒は大地だ。どんな状況でも、臨機応変に戦えるその腕、期待しているぞ?』

『次鋒を明日香、頼む。もし大地が負けた時、流れている悪い空気をそこでせき止めてくれ。大地が勝っていたなら、そのまま勢いに乗ってくれ』

 

 

 

 そうだ、ここで自分がする事はウジウジ悩む事じゃない。今ある雰囲気に乗って、アカデミアの勝利に貢献する事だ。

 そして十代はそれに付け加えるようにして言った。

 

「それに、そのデッキはお前の信頼したものと、俺達の友情が詰まったデッキだろ? だったら、お前がそのデッキを信じれば、デッキはきっと答えてくれるさ!」

「十代……」

 

 ニカッと十代は笑った。

 何だか、これまで悩んでいた自分が、バカみたいだった。

 

「そうね。これで良いのよね? 私、行ってくるわ!」

「おう! しっかり応援するから、バッチリ勝って来い!」

 

 

 

――デュエルリング

 

 

 

SIDE:明日香

 

 

 

 すー、はー……。

 深呼吸を一つして、落ち着く。バカ十代に励まされるとは思わなかったけど、お蔭で勇気がわいてきた。

 自分一人じゃあプレッシャーに押し潰されて、こうはならなかっただろう。

 彼に、否、誰かに励まされるとは、思いもしなかった。

 今度、ジュースでも奢ってあげようかな。

 

 それに。

 

『ゴーゴー明日香! 頑張れ頑張れ明日香! レッツゴー、ファイトー!』

『明日香さーん、頑張って下さーい!』

『明日香さまー! ケチョンケチョンにしちゃって下さーい!』

 

 皆が私を応援してくれている。

 こんな私を慕ってくれるジュンコやももえのためにも、代表になれなかった皆のためにも、負けるわけにはいかない!

 

『それで~ハ、次鋒戦なの~ネ! アカデミアからはー、オベリスクブルーのクイーンの異名を持つ、“女王”、天上院明日香なの~ネ!』

 

 ……どうでもいいけど、あの厨二病チックな紹介、どうにかならないかしらね。

 

『対するノース校から~ハ、“沼地の蟒蛇(うわばみ)”、水島標呉(しめご)~!』

 

 私の相手、水島という男は、メガネをかけた男。さっきの点田とは違って、少々ガッシリした、それでも中肉中背の域を出ない体格。頭も普通のスポーツ刈りだけれど……。油断はできないわね、デュエリストは見た目じゃないもの。

 

「天上院明日香よ、女だからって、手加減はいらないから」

「水島標呉や。もちろん、そんな事するつもりはあらんから、安心してや」

 

 そう、それなら良かった。

 ディスクが起動し、私の頭にもエンジンがかかる。

 今、私がすべき事は勝利だ!

 

『それでーは次鋒戦、開始~!』

 

「「デュエル!」」

 

 

水島VS明日香

LP 4000 VS LP 4000

 

 

「先攻はもらうで! ワイのターン、ドロー! ワイは『天使の施し』を発動! デッキからカードを3枚ドローして2枚捨てるで!」

 

 いきなり手札交換ね。黎は確か墓地に行くカードも注意しておくように言ってたっけ。

 墓地に送られたのは……『カエルスライム』と『フィールドバリア』? 妙なラインナップね?

 

「そして『カエルスライム』を召喚!」

『ゲコッ』

 

 

カエルスライム:ATK 700

 

 

 

カエルスライム(通常モンスター)

星2

水属性/水族

ATK 700/DEF 500

カエルの頭の形をしたスライム。

ゲコゲコひどい歌を聴かせて攻撃。

 

 

 

 緑色の、カエルの頭のような粘液が現れる(逆かしら?)。

 低攻撃力のモンスターを攻撃表示って事は、明らかに罠。甘いわよ、あなたが伏せるであろうカードを処理してから、行動させて――

 

「ターン終了や!」

「……は?」

 

 

 

水島:LP 4000

手札:5枚

フィールド

:カエルスライム(ATK 700)

:魔法・罠無し

 

 

 

 か、『カエルスライム』を放置した? 攻撃力700、効果も持たないモンスターを?

 

「どうしたん、姉ちゃん? そっちのターンやで?」

「……私のターン、ドロー!」

 

 何を考えているのかは知らないけれど、私は全力で私のデュエルをするまでよ!

 

「私は『エトワール・サイバー』を召喚!」

『ハッ!』

 

 

エトワール・サイバー:ATK 1200

 

 

 見せてあげるわ、プリマデッキの力を!

 

 

 

エトワール・サイバー(効果モンスター)

星4

地属性/戦士族

ATK 1200/DEF 1600

このカードは相手プレイヤーを直接攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする。

 

 

 

「油断はしない! バトル! 『エトワール・サイバー』で『カエルスライム』を攻撃!」

「ぐっ!」

 

 

水島:LP 4000→3500

 

 

 !? 手札に罠の一つでも張ってあると思っていたのに、本当に何も無かったですって!?

 

「あなた、何を考えているの……?」

「ヒヒヒ、さーな?」

「不気味な人ね……。カードを3枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

 

明日香:LP 4000

手札:2枚

フィールド

:エトワール・サイバー(ATK 1200)

:伏せカード2枚

 

 

 

「ワイのターン、ドロー! ……姉ちゃん、ワイが折角あげたチャンス、無駄にしよったな?」

「何ですって?」

 

 チャンス、ですって……?

 

「ワイは初見の相手には1ターンだけチャンスをあげるんや。初めてワイのデッキを相手にする奴は決まって負けたからなぁ、ワイなりの礼儀っちゅーやっちゃ」

「初見殺し、というヤツね?」

「せや。でも、悔やんでももう遅いで。このワイのターンで一気に決めさせてもらうからな!

 ワイは永続魔法『ウォーターハザード』を発動! このカードはワイの場にモンスターが存在しない時、1ターンに1度だけ、手札から水属性モンスターを特殊召喚できるんや! その効果でワイは手札の『未知ガエル』を特殊召喚!」

 

 

 

ウォーターハザード

【永続魔法】

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札からレベル4以下の水属性モンスター1体を特殊召喚できる。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

 

未知ガエル(効果モンスター)

星2

水属性/水族

ATK 1200/DEF 600

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 

 

未知ガエル:ATK 1200

 

 

 呼び出したのは、槍を持ち、ゴーグルをかけた人型カエル。

 確かあのモンスターには貫通効果があったハズ……。

 

「レベル2で攻撃力1200……! でも、攻撃力は『エトワール・サイバー』と互角よ!」

「甘いでぇ? ワイは続いて『スター・ボーイ』を通常召喚!」

 

 

 

スター・ボーイ(効果モンスター)

星2

水属性/水族

ATK 550/DEF 500

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、フィールド上に表側表示で存在する水属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、炎属性モンスターの攻撃力は400ポイントダウンする。

 

 

 

スター・ボーイ:ATK 550→1050

未知ガエル:ATK 1200→1700

 

 

「こ、攻撃力が上がった!?」

「『スター・ボーイ』が存在する限り、場の水属性モンスターは攻撃力が500ポイント上がるんや! そして『死者蘇生』を発動! 蘇れ『カエルスライム』!」

『ゲコォ!』

 

 

カエルスライム:ATK 700→1200

 

 

 く……! でも、私の伏せた罠『ドゥーブル・パッセ』なら、『エトワール・サイバー』を守る事ができる! 『スター・ボーイ』と『カエルスライム』なら、『エトワール・サイバー』に勝つ事はできない!

 そう思ったのだけれど……!

 

「更に手札からフィールド魔法『湿地草原』を発動!」

 

 相手のフィールド魔法によって、場がいきなり変化する。

 じめじめとした小雨が降り注ぎ、背の低い草が生い茂った。

 

 

 

――ベンチ

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

「マズい、明日香の奴、伏せカード次第じゃあ負けたかも」

「お、おい、どういう事だよ、黎!」

 

 敵の発動したフィールド魔法を見て俺が呟く。それを十代は聞き逃す事無く問うた。

 

「相手モンスターのステータスを見てみな?」

「え?」

 

 

未知ガエル:ATK 1700→2900

スター・ボーイ:ATK 1050→2250

カエルスライム:ATK 1200→2400

 

 

「攻撃力が跳ね上がった!?」

「フィールド魔法『湿地草原』の効果だ。あれが場にある限り、全ての水属性・水族・レベル2以下のモンスターの攻撃力は1200ポイントアップする」

 

 効果の対象には3つの縛りを持つフィールド魔法だが、単体でアップする能力値は現存するフィールド魔法の中では最も高い。更に複数枚のカードと組み合わせる事によって得られる攻撃力は爆発的な物がある。

 

 

 

湿地草原

【フィールド魔法】

フィールド上の水族・水属性・レベル2以下のモンスターの攻撃力は1200ポイントアップする。

 

 

 

 『カエルスライム』を出した時からもしやとは思っていたが……。マジでやりやがるとはな。

 

「更に手札から永続魔法『一族の結束』を発動! ワイの墓地のモンスターの種族が一種利のみなら、ワイの場にいる同じ種族のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする!

 ワイの墓地には水族の『カエルスライム』1体のみ! よってワイの場の水族モンスターは攻撃力が800ポイントアップや!」

 

 

 

一族の結束

【永続魔法】

自分の墓地に存在するモンスターの元々の種族が1種類のみの場合、自分フィールド上に存在するその種族のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする。

 

 

 

未知ガエル:ATK 2900→3700

スター・ボーイ:ATK 2250→3050

カエルスライム:ATK 2400→3200

 

 

 こ、攻撃力3000オーバーが3体だと!?

 

「どや、総攻撃力は9950、姉ちゃんの攻撃力1200のモンスター1体だけじゃあ防げへんで?」

「くっ……!」

「バトルや! まずは『カエルスライム』で『エトワール・サイバー』を攻撃!」

 

 不気味なカエルのような流動体が、ウェーブした髪を持つプリマへ迫る

 ゲームセットか!?

 

 

 

――リング

 

 

 

SIDE:明日香

 

 

 

「そのままエロ同人みたいにしてまえ! “アムフィビアン・コマンド”!」

 

 ぐねぐねと嫌悪感を催す酸液の触手が『エトワール・サイバー』へと伸びる。

 冗談じゃないわよ、色々な意味で!

 

「罠発動! 『ドゥーブル・パッセ』! 相手モンスターの攻撃宣言時、お互いのモンスターはそれぞれの相手プレイヤーを攻撃する!」

 

 

 

ドゥーブル・パッセ(アニメ効果)

【通常罠】

相手が自分の場のモンスターを対象に攻撃宣言を行った時に発動できる。

戦闘を行うお互いのモンスターは、それぞれのコントローラーから見た相手プレイヤーに直接攻撃を行う。

 

 

 

「これでお互いに直接攻撃を行う!」

「攻撃力3200の攻撃をライフで受ける気かいな!?」

 

 水島が信じられない、といった感じで言う。

 冗談、そんな愚を犯す奴が代表になれるとでも思った!?

 

「リバースカード、オープン! 罠カード『ガード・ブロック』!」

 

 

 

ガード・ブロック

【通常罠】

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

「このバトルで私が受けるダメージを0にし、カードを1枚ドローする!」

「何やと!?」

 

 半透明の白いシールドで、カエルもどきの触手を遮る。

 これで終わりじゃないわよ!

 

「更に『エトワール・サイバー』はダイレクトアタックを行う時、その攻撃力を500ポイントアップさせる!」

「何やと!」

 

 

エトワール・サイバー:ATK 1200→1700

 

 

「“アラベスク・アタック”!」

「ひでぶっ!?」

 

 右目を赤い布で隠したバレリーナの蹴りが炸裂。ちょっとは堪えたかしら?

 

 

水島:LP 3500→1800

エトワール・サイバー:ATK 1700→1200

 

 

「ぐぬぬ、思った以上にやるな、姉ちゃん?」

「当然でしょう。私だって代表に選ばれたんだから」

 

 それに、流石にこれくらいはできないと、オベリスクブルーの女王だなんて呼ばれない。

 ……『ガード・ブロック』は黎から先日貰ったものだけど。『ドゥーブル・パッセ』と相性が良いだろう、って。

 私のフェイバリットカードの事まで考慮してデッキ構築・作戦会議に付き合ってくれた黎に、心の中で感謝。

 っと、まだデュエル中だったわね。

 

「せやけど! 『未知ガエル』と『スター・ボーイ』の攻撃は防げへんやろ!」

 

 水島は少々苛立ちを交えながら叫んだ。

 そうね、そっちの攻撃は防げないわ。

 

「喰らいや、“テンタクル・コマンド”!」

 

 単眼と触手を持った赤いヒトデから突き出される鋭い触手。それが過たず『エトワール・サイバー』を貫き蜂の巣のように穴だらけにする。

 ゾヅッ! と嫌な、水っぽい音を出し、私のモンスターは膝から崩れ、光になって散っていった。

 ……時々思うのだけれど、たまに妙にリアルよね。

 

 

明日香:LP 4000→2150

 

 

「ひゃっはぁ、どうや! そして『未知ガエル』でダイレクトアタック! “フロッグ・スピア”!」

「明日香!」

「明日香さん!」

「明日香ァ!」

 

 そのカエルの槍を受けるワケにはいかない!

 

「リバースカード、オープン! 罠カード『奇跡の残照』! このターン戦闘で破壊された自分のモンスターを特殊召喚する! 蘇って、『エトワール・サイバー』!」

 

 

 

奇跡の残照

【通常罠】

(1):このターン戦闘で破壊され自分の墓地へ送られたモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

 

エトワール・サイバー:DEF 1600

 

 

 一度は斃れた私のバレリーナが、カエル兵士の前に復活して立ちはだかる。

 それを無視するだけの知能が無かったのか、鋭い槍の一撃で壁モンスターを倒すだけでこのターンの攻撃を終えた。

 ありがとう、お陰で助かったわ。

 

「せやけど『未知ガエル』には貫通能力がある、攻撃力が守備力を上回った分だけダメージを喰らって貰おかっ!」

「くぅうううううう!」

 

 

明日香:LP 2150→50

 

 

「カァーッ、惜っしい!」

 

 『エトワール・サイバー』が爆散して私のライフを爆風が削る。

 危ない……。もう50だけステータスが違ったら私のライフが尽きていた、本当にギリギリね……!

 

「せやけどワイの場には攻撃力3000オーバーが3体! 対し、姉ちゃんの場は空っぽでライフも風前の灯火! もう勝負は決まったようなもんやな!」

「……そうね、あなたの言う通り絶望的な状況ではあるわ」

「そうやろ、そうやろ! 今ならサレンダーも「けどね」許、す……?」

「1つ、言っておいてあげるわ。さっきの『ガード・ブロック』のドローで、私の手札に勝利のためのコンボが揃ったわ。次の私の攻撃を全て遮断しないと、あなたの負けよ」

「……面白いやないか。そんなハッタリに騙される程、この水島標呉はマヌケじゃあらへんわ! ターンエンドや!」

 

 

 

水島:LP 1800

手札:0枚

フィールド

:未知ガエル(ATK 3700)、スター・ボーイ(ATK 3050)、カエルスライム(ATK 3200)

:湿地草原(フィールド魔法)、一族の結束(永続魔法)

 

 

 

「私のターン、ドロー」

 

 引いたカードは『融合』。でも今回は出番無し。

 

「……それじゃあ、覚悟は良いかしら?」

「は、ハン! せやけど姉ちゃんがこのターンでワイに勝てへんかったら、逆にワイの逆転勝利やで!」

「残念だけど、それは有り得ないわ」

「何やと!? どういう意味や!」

 

 何故か? 答えは単純。

 

「このターンで、その布陣を崩すからよ。例えターンを渡す事になったとしても、次のターンで私にトドメを刺す事はできない」

「くっ! そんなに言うのなら、やってみぃや!」

 

 言われなくとも!

 ふふ、血が騒ぐし、手に汗を握るわね……! でもこんなの、デッキを試験的に回した十代や黎とのデュエルの時と比べれば、全然物足りないわ!

 

「行くわよ! 私は『サイバー・チュチュ』を召喚!」

『やぁっ!』

 

 

サイバー・チュチュ:ATK 1000

 

 

「攻撃力1000? そんなザコモンスターで何ができるんや」

「あら、さっきの三沢君のデュエル、見てなかったのかしら? 攻撃力だけで判断したら痛い目を見るわよ。

 『サイバー・チュチュ』の効果、それは相手の場にこのカードより高い攻撃力を持ったモンスターのみ存在する場合、ダイレクトアタックができる!」

「何!?」

 

 

 

サイバー・チュチュ(効果モンスター)

星3

地属性/戦士族

ATK 1000/DEF 800

相手フィールド上に存在する全てのモンスターの攻撃力がこのカードの攻撃力よりも高い場合、このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。

 

 

 

「あなたの場のモンスターは全て『サイバー・チュチュ』より攻撃力が高い、よってダイレクトアタックは可能よ」

 

 

サイバー・チュチュ:ATK 1000

未知ガエル:ATK 3700

スター・ボーイ:ATK 3050

カエルスライム:ATK 3200

 

 

「行くわよ、バトル! 『サイバー・チュチュ』でダイレクトアタック! “ヌーベル・ポワント”!」

「あべしっ!?」

 

 

水島:LP 1800→800

 

 

 竜巻を纏いながら、鋭い蹴りをお見舞いする私のモンスター。

 いくら下にバレリーナの衣装を着ているとは言え、薄いスカートを履いているのだから蹴りはあまり良くないと思うのは私だけかしら?

 

「ぐぬぬ……、耐えたでぇ? 次のターンで『サイバー・チュチュ』を攻撃をすれば、ワイの勝ちや!」

「あら、それはどうかしら?」

 

 言ったハズよ、次のターンの私の『全ての』攻撃を遮断しないと負けるって。

 

「速攻魔法『プリマの光』を発動!」

「こ、ここで速攻魔法やと!?」

「私の場の『サイバー・チュチュ』をリリースし、手札かデッキから『サイバー・プリマ』を特殊召喚する!」

 

 

 

プリマの光(アニメオリジナル)

【速攻魔法】

自分の場の「サイバー・チュチュ」1体を生贄に捧げる。

「サイバー・プリマ」1体をデッキ・手札から特殊召喚する。

 

 

 

「来なさい、『サイバー・プリマ』!」

『ハァッ!』

 

 

サイバー・プリマ:ATK 2300

 

 

 スポットライトの光を浴び、その姿を変えるショートボブの少女。ライトが消えると、そこに現れたのは蝶のような仮面をつけた、長身のバレリーナだった。

 

「な、なんや攻撃力2300かいな……。それやったら、ワイのモンスターの方が攻撃力は上……」

「そう思うのなら、貴方のフィールドを見てみるのね」

「あん?」

 

 

未知ガエル:ATK 3700→1700

スター・ボーイ:ATK 3050→1050

カエルスライム:ATK 3200→1200

 

 

「な!? ワイのモンスターの攻撃力が一気に2000も下がったやと!?」

「『サイバー・プリマ』が特殊召喚に成功した時、フィールドの全ての魔法カードを破壊する! 『湿地草原』と『一族の結束』が消滅した事で、攻撃力が下がったのよ!」

 

 

 

サイバー・プリマ(効果モンスター)(アニメ効果)

星6

光属性/戦士族

ATK 2300/DEF 1600

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、フィールド上の魔法カードを全て破壊する。

 

 

 

「さて、『サイバー・プリマ』の攻撃力は2300、『カエルスライム』は1200でその差は1100。それがあなたの残りライフ800から引かれたら、どうなるか分かるかしら?」

「ぜ、ゼロ……」

 

 正解よ。

 

「これで止めよ! “終幕のレヴェランス”!」

「ぐぁあああああああああああっ!」

 

 

水島:LP 800→0

 

 

明日香:WIN

水島:LOSE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガッチャ! やったな、明日香!」

「グッジョブ! ナイスだったよ」

「ありがとう」

 

 デュエルを終えて控室に戻ると、十代とフィオが激励してくれた。

 結構ギリギリだったけれど、何とか勝てて良かった。もし負けたら、十代に申し訳が立たないもの。

 

「……あら?」

 

 どうして今、十代だけだったのかしら?

 同じチームのメンバーであるフィオ、黎、三沢君の事も、アカデミアの仲間達の事もすっぽかして。

 十代は確かに励ましてくれたけど、それは黎にそう言われたからで……?

 どうして十代だけ?

 

「どうしたの、明日香?」

「………………」

「ねえ、明日香~?」

「明日香?」

 

 黙っている私を不審に思ったのか、十代が顔を覗き込んで来た。

 よく見ると十代って、綺麗な目をしてるのね。宝石とかそういうんじゃ無くて、何というか、純粋な子供みたいな……。

 そのままずっと見つめていると、自分の汚さが浮き彫りになる気がして、でも何時までも見つめていたくて……。

 ……どうやら今日の私はおかしいらしい。

 

「ごめんなさい、整理する時間を頂戴」

「「???」」

 

 そんな疑問まみれの顔をしないで。私だってこれが一体何なのか、皆目見当がつかないのだから。

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

 十代が明日香の顔を覗き込んだ前後から、何か明日香の様子がおかしい。

 顔が微妙に赤いが、これって……。

 

(なあ、大地?)

(何だ、黎?)

(これはひょっとしたら、ひょっとするのか?)

(ひょっとしたら、ひょっとするのかも知れないな)

 

 大地とヒソヒソ会話をするが、あっちも同じ事を考えていたらしい。

 

(どうする?)

(どうしようも無いだろう)

(それもそうか)

 

 ……本人が自覚するまで黙っておこう。

 

 

to be continued

 




恐らく『プリマの光』をOCGに合わせるとこうなるという妄想


プリマの光
【速攻魔法】
(1):自分フィールドの「サイバー・チュチュ」1体をリリースして発動できる。
デッキ・手札から「サイバー・プリマ」1体をアドバンス召喚扱いで召喚する。
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