遊戯王GX~精霊の抱擁~ 作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民
鬼神の連撃
【通常魔法】
自分フィールド上に表側表示で存在するエクシーズモンスター1体を選択し、そのエクシーズ素材を全て取り除いて発動する。
このターン、選択したモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
都「エクシーズモンスターに2回攻撃を付与させるカードだよ」
フィオ「オーバーレイ・ユニットが無くなるから効果の封印に近いね。エンドカードにするか、デメリットの薄いモンスターと組み合わせよう」
都「オーバーレイ・ユニットが取り除かれた時に効果を発動するモンスターとの相性もバッチリ。ただしこの魔法カードのコストで取り除く点には注意してね!」
SIDE:無し
連絡を受けたフレイは、森の中を桜とポーラの気配だけを頼りに進んでいた。目印も無しという事は何か隠れる理由があるのだろう。そう考えたフレイは、地面から10センチ程浮いて移動している。小枝などを踏んで音を立てないためだ。
「ウキッ!」
「あら。こんにちは、お猿さん」
「ウキッキ!」
「え、あの薬草、そんな所に生えているんですか。ありがとうございます。今度またバナナ持って行きますね」
「ウキキキッ!」
「ええ、またデュエルしましょう。今度も勝ちは頂きますよ!」
「ウワッホォ、ウッキー!」
「はい、また今度。さよなら、皆さんによろしくお願いします」
とまあ、以前実験体にされていた猿の仲間と道中会話しつつ、フレイは木の陰に隠れていた桜達と合流した。
「桜さん、ポーラさん、お待たせしました」
「ああ、来てくれてありがとう」
「……早速だけど、アレ見て」
ポーラが指を差す先には、小さな森の広場があった。位置的にはレッド寮から徒歩5分くらいか。女子寮へ向かおうとしたフレイからは随分遠く感じられたが、どうやらそうでも無かったらしい。よく見れば黎が異世界へ転移する際に利用している空間だった。
そこにいたのは……。
「あれは……、ブルーの男子生徒?」
人数は6人。いずれも寮による差別を肯定し、それを利用して威張り散らしていた人物だと記憶している。
「うむ、森の中のあの広場でポーラとこれからを話し合おうと思ったら先客がいてな」
「……話をこっそり聞いていたら、剣呑な雰囲気だったから」
盗み聞きしたのか、とは突っ込まない。寧ろフレイも会話の内容を聞き取るべく耳を澄ませた。
『つまり要約すると、あの化物野郎は今調子が出ないから、ボコボコにして晒し者にしようって事だな?』
『ああ。このタイミングで奴を叩き潰せばこのおかしな風潮も無くなる。俺様達の楽園が戻って来るって寸法よ』
『成程。あの男のせいでおれ達が手狭な思いをしていたのも確かだしな。その計画乗った!』
『ムカつく田中達にも一泡吹かせて、オレらの地位も安泰ってワケだ』
『ヒヒヒヒヒヒ、見てろよカスレッドにクズイエロー、ザコ女どもにブルーの面汚しが! お前らはもう終わりだぜ!』
「――成程。吐き気がする程に低能な連中ですね」
「だろう? こんな開けた場所で作戦会議などするから猶更だ」
「……本当に頭が良いのか疑わしい」
作戦内容はただの奇襲。黎を目立つ場所に誘い出し、そこでボコる。単純に過ぎる。
確かに晒し者にすれば効果的だろうが、生憎と黎の不調は仲間内に知れ渡っている。しかも幸か不幸か、黎の不調が心因性であり、極めて重症である事もだ。
これではただのリンチ程度にしか映らないだろう。結果として得られる効果は恐らく薄い。
呆れる3人の前で、6人の中で一人だけ顔を渋らせている男がいた。
『果たしてそれで良いのだろうか?』
『あ?』
疑問の声をあげたのは金髪の眩しい男、白石光一だった。ちなみに地毛らしい。
『ンだよ白石、テメェまで田中達に味方するってのかよ』
『そうは言わぬ。……だが、我々のやり方が果たして合っているのかどうか、最近確信が持てないでいてな』
『オイ、チキッてるんじゃネェぞコラ? ここで奴らを潰さねえとオレらが危ねぇんだよ。腐ったリンゴも、腐敗させる虫も、早い内に駆除しねえと、優秀なモンまで腐っちまうじゃねぇか。分かってんのかゴラ?』
『理解していないワケでは無い』
『なら――』
『だが正しいとも思えんのだ。私が所属している属性六人衆を見てみろ。他の5人は最初から色に関係無く他者に接し、カツアゲから守っている。そしてその見返りとしてレッドやイエローから使わないカードを譲り受けたりトレードをしたりしている。そんなギブ・アンド・テイクの関係ではいかんのか? 私もその方法を取るようになって暫く経つが、不便は全く感じていない。アカデミア以外の学校がどうなのかは知らんが、こんな差別制度そうそう有るものでは無いと思うぞ』
『白石、テメェ……! 裏切るつもりか!』
『まあそう怒るな高田。私もまたこの階級制度から恩恵を貰っていた身。この作戦にぐらいは乗ってやろう。その後は……、知らん。私を引き留めたいのなら、努力してくれ』
『お前は誰よりも輝きたいんじゃねぇのかよ! おれ達を裏切ってそんな輝きが手に入ると思うなよ!』
『私は寧ろ、お前達とツルんだ分だけ輝きが弱まると思うのだが……』
他の5人から睨まれても動じない白石。どうやら決別の覚悟はとうに済ませているようだ。
それを見ていた桜達は感心したように頷いた。
「ふむ、なかなかどうして気骨のある男だ。残りの連中は……、まあ愚かとだけ言っておこうか」
「人を見下せばいつかしっぺ返しが来るのが人の世の定め。残りの5人が将来どうなるかは自明の理です」
「……きっと社会の荒波に揉まれて見下す相手もいない、寂しい人生を送ると思う」
鋭い毒舌で正鵠を射ている3人であった。
暫く様子を見ていた桜達だったが、やがてあちらも話が纏まったのか立ち上がり腕にデュエルディスクを装着した。
「そろそろわたくし達も出ましょう。スペース的には森の外に出たタイミングが良いですね」
「……彼ら全員を仕留めるのは、今のサーには難題。……だから私達がどうにかしなくちゃいけない」
「うむ。行くぞ、2人とも。しくじるなよ? 我々が何としてでもここで止めるぞ!」
ガサガサと藪を突き破り、森を出るブルーの前に、桜達が立ち塞がる。
桜は剣を、ポーラは雪の結晶の盾を、フレイは鋭く振り下ろした踵を地面に突き立てた。言外に「ここから先は通さない」と言っているのだ。
素手で勝てる相手では無い。そう直感しビビッた男達だったが、自分達は誇りと名誉と栄光あるオベリスクブルーの生徒。たった3人女相手に退却など有り得ない。見栄を張って脅し、無理矢理にでも通る事にした。
「な、何だお前ら! そこをどけ!」
「断る。ここは通さん」
「なんだとぉ!? 貴様らには関係無いだろうが!」
「……関係ある。……サーに手は出させない」
「あ!? ってテメェら、あの化物とよく一緒にいる女達じゃねぇか!」
「邪魔すんじゃねぇよクソアマ共が! オレらの用事が果たせねぇじゃねえか!」
「その用事を邪魔するためにいるのですから、当然です」
「この……。誰に向かってンな口聞いてやがる!」
「ったく、五月蝿い連中だ」
「……話があるのなら」
「これで筋を通しなさい」
ジャキン、とデュエルディスクを展開する桜、フレイ、ポーラ。
「おい、デュエルしろ」
「……デュエルで決着つけよう」
「わたくし達とデュエルです!」
ニヤ、と3人が不敵に笑う。一瞬呆気に取られるが、すぐにこれなら暴力に訴えなくても良い──要するに負け戦にならないのだと理解した。
白石を除く5人はすぐに、白石は空気を読んで渋々とディスクのスイッチを入れる。
「上等だ女ァ! 捻り潰してやらぁ!」
「オレらに喧嘩売った事を後悔させてやる!」
「ま、俺様達の勝ちは決まっているがな!」
「おれらが勝ったらお前らに何させようかな……、グフフフフ!」
「ヒヒヒヒ、さあてレアカードを寄越す準備はできたか?」
(やれやれ……。これでこいつらが友人だと思うと頭が痛い)
苦労性なのか、将来胃に穴が開きそうな白石にちょっと同情しかねなかった。
「形式は2対1を3戦同時に、変則タッグデュエルのルールで行う。貴様らの中で2人タッグを組み、こちらの1人と戦ってもらうぞ」
「ライフポイントはそれぞれ4000、こちらのライフかそちら2人のライフが尽きたら、その時点でデュエル終了です」
「……生き残った人のみ、この先に進める。……私達は勝者には手を出さない事を約束する。……逆に私達のライフを0にできなければ、ここで帰ってもらう。……以上」
「「「「「上等!」」」」」
「はぁ……」
「行くぞ!」
「行きますよ!」
「……行かせてもらう」
「ぶっ潰す!」
「吠え面かきやがれ!」
「泣いても知らねえぞ!」
「この勝負貰ったぜ!」
「レアカードを寄越せぇ!」
「頭と胃が痛い……」
「我が名は桜、参る!」
「俺様は高田! おぉし、行くぜぇ!」
「白石だ。いざ!」
桜 VS 高田 & 白石
「フレイと申します。手加減はしませんよ!」
「
「おれは
フレイ VS 襟山 & 糸杉
「……ポーラ。……語るのならデュエルで」
「
「
ポーラ VS 座水 & 古川
『『『デュエル!』』』
桜・フレイ・ポーラ VS オベリスクブルー6人
LP 4000×3 VS LP 4000×6
SIDE:桜
「まずは私のターンから行くぞ、ドロー!」
バトルロイヤルルールでは各プレイヤーは最初のターン攻撃できん。
だが、この程度の連中相手ならばそれは足枷にはならない。教えてやろう、この私の実力というものを!
「私は手札から2枚の永続魔法『世界樹』と『種子弾丸』を発動!」
私のフィールドに2種類の植物が生える。片や見上げる程大きな大木、片やアザミのように刺々しい葉をつけた蕾。
「『種子弾丸』は植物族が表側表示で場に現れる度にプラントカウンターを、『世界樹』は植物族モンスターが破壊される度にフラワーカウンターをそれぞれ1つずつ乗せる。
私は『イービル・ソーン』を召喚! そして『種子弾丸』にプラントカウンターが1つ乗る!」
イービル・ソーン:ATK 100
種子弾丸:プラントカウンター 0→1
種子弾丸
【永続魔法】
植物族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚される度に、このカードにプラントカウンターを1つ置く(最大5つまで)。
フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送る事で、このカードに乗っているプラントカウンターの数×500ポイントダメージを相手ライフに与える。
世界樹
【永続魔法】
フィールド上の植物族モンスターが破壊される度に、このカードにフラワーカウンターを1つ置く。
また、このカードに乗っているフラワーカウンターを任意の個数取り除いて以下の効果を発動できる。
●1つ:フィールド上の植物族モンスター1体を選択し、その攻撃力・守備力をエンドフェイズ時まで400ポイントアップする。
●2つ:フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
●3つ:自分の墓地の植物族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
「更に効果発動! このカードをリリースし、相手に300ポイントのダメージを与える! 対象は貴様だ、高田!」
「うっ!」
高田:LP 4000→3700
起爆する棘のついた実。鋭いニードルが敵を襲い、ライフを微量だが削り取った。一方でその実をつけていた植物本体の方は枯れてしまった。
「ケッ、たった300ダメージ! 無駄な抵抗だな!」
「慌てるな、ダメージ効果はおまけだ。『イービル・ソーン』の更なる効果! デッキから同じ名前のモンスターを2体特殊召喚する! 現れろ、2体の『イービル・ソーン』!」
イービル・ソーン:ATK 100
イービル・ソーン:ATK 100
種子弾丸:プラントカウンター 1→2
「何、モンスターが増殖しただと!?」
「ただしこの効果で特殊召喚したモンスターは効果を発動できない」
イービル・ソーン(効果モンスター)
星1
闇属性/植物族
ATK 100/DEF 300
このカードをリリースして発動する。
相手ライフに300ポイントダメージを与え、自分のデッキから「イービル・ソーン」を2体まで表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚した「イービル・ソーン」は効果を発動する事ができない。
「続いて手札から魔法カード『フレグランス・ストーム』を発動! フィールドの植物族を1体破壊し、デッキから1枚ドローする! この効果でドローしたカードが植物族なら、相手に見せる事で更に1枚ドローできる!
『イービル・ソーン』を破壊! そして同時に『世界樹』にフラワーカウンターが乗る!」
世界樹:フラワーカウンター 0→1
フレグランス・ストーム
【通常魔法】
フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター1体を破壊し、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
さらに、この効果でドローしたカードが植物族モンスターだった場合、そのカードをお互いに確認し自分はカードをもう1枚ドローする事ができる。
引いたカードは……、良し!
「私が引いたのは『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』、植物族だ。よって更に1枚ドロー!
更に永続魔法『超栄養太陽』を発動! 自分フィールド上のレベル2以下の植物族モンスターを1体リリースし、それよりレベルが3つまで高い植物族モンスターをデッキから手札より1体特殊召喚できる! レベル1の『イービル・ソーン』をリリースし、レベル3の『ローンファイア・ブロッサム』を特殊召喚!」
ローンファイア・ブロッサム:DEF 1400
種子弾丸:プラントカウンター 2→3
超栄養太陽
【永続魔法】
自分フィールド上のレベル2以下の植物族モンスター1体をリリースして発動できる。
リリースしたモンスターのレベル+3以下のレベルを持つ植物族モンスター1体を、手札・デッキから特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上から離れた時、このカードを破壊する。
燃える太陽の中へと消える、爆破の能力を持たない棘の実をつけた植物。入れ替わりに花火玉をつけ火花を散らす蔦植物が現れた。
まだまだ私のターンは終わりじゃないぞ!
「更に『ローンファイア・ブロッサム』の効果発動! 1ターンに1度、私の場の植物族を1体リリースし、デッキまたは手札から植物族を1体特殊召喚できる! 『ブロッサム』自身をリリースし、デッキから『フェニキシアン・シード』を特殊召喚!」
フェニキシアン・シード:ATK 800
種子弾丸:プラントカウンター 3→4
「更に『フェニキシアン・シード』の効果発動! このカードを墓地へ送り、手札から『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』を特殊召喚!」
フェニキシアン・クラスター・アマリリス:ATK 2200
種子弾丸:プラントカウンター 4→5
目のついた種が発芽し、現れるのは燃える彼岸花。花弁の1つが鳥の顔のような形になっている。残りの花弁は翼といった所だろうか。
さて、そろそろこのターンでの行動を詰めるとしよう。
ローンファイア・ブロッサム(効果モンスター)
星3
炎属性/植物族
ATK 500/DEF 1400
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター1体をリリースして発動できる。
デッキから植物族モンスター1体を特殊召喚する。
フェニキシアン・シード(効果モンスター)
星2
炎属性/植物族
ATK 800/DEF 0
自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送って発動できる。
手札から「フェニキシアン・クラスター・アマリリス」1体を特殊召喚する。
フェニキシアン・クラスター・アマリリス(効果モンスター)
星8
炎属性/植物族
ATK 2200/DEF 0
このカードは「フェニキシアン・シード」またはこのカードの効果でしか特殊召喚できない。
このカードは攻撃した場合、そのダメージ計算後に破壊される。
自分フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られた時、相手ライフに800ポイントダメージを与える。
また、自分のエンドフェイズ時、このカード以外の自分の墓地の植物族モンスター1体をゲームから除外する事で、このカードを墓地から表側守備表示で特殊召喚する。
「ザ、ザコモンスターが攻撃力2200のモンスターに化けただと!?」
「花の成長は早いからな、ぼさっとしているとあっと言う間だぞ? 『種子弾丸』の効果発動! このカードを墓地に送り、乗っていたプラントカウンターの数×500ポイントのダメージを与える! 乗っていた数は最大値の5つ、よって2500のダメージを高田、貴様に与える!」
「何だと!? ぐぁぁぁぁっ!」
高田:LP 3700→1200
私の場にいつの間にか咲いていた五輪の橙色のアザミ。その花からマシンガンの如く無数の種が飛び散り、あのいけ好かない男に全弾直撃した。
これで残りライフは3分の1を切った。もう放置しても問題無いだろう。
「さあ、これで残りライフは1/3を切った。頑張れよ、エリート様?」
「チィッ!」
「バトルロイヤルデュエルでは各プレイヤーは最初のターン攻撃できない。私はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」
桜:LP 4000
手札:1枚
フィールド
:フェニキシアン・クラスター・アマリリス(ATK 2200)
:伏せカード1枚、世界樹(永続魔法、フラワーカウンター:1)
「さあ、貴様らのターンだ。どっちから始めても構わんぞ?」
「う……。た、高田……。この女、もしやかなり強いのでは……?」
「うっせぇよ白石! 女如きに負ける俺様達じゃねぇ、エリートの実力を分からせてやるぞ! 俺様のターン、ドロー!」
分からせてやる、か。
本当に私に、分からせてやるだけの力があれば良いのだがな。
「俺様は手札から『巨大ネズミ』を召喚! そして装備魔法『団結の力』を発動! これで攻撃力800アップだ!」
巨大ネズミ:ATK 1400→2200
巨大ネズミ(効果モンスター)
星4
地属性/獣族
ATK 1400/DEF 1450
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の地属性モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚できる。
団結の力
【装備魔法】
装備モンスターの攻撃力・守備力は、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体につき800ポイントアップする。
「どうだ、これで攻撃力は互角だぜ!」
「フン、そういう自慢は、攻撃力が超えてからにするんだな」
「生意気言ってンじゃねぇよ! 『封印の黄金櫃』を発動! デッキから『停戦協定』を除外し、2ターン後に手札に加えるぜぇ!」
「このデュエルはバトルロイヤル形式、生憎と貴様の相方のスタンバイフェイズでは経過のためのカウントには使えんぞ」
「脳無しが、ならそれまで待てば良い! そんくれぇ考えろや! 更にカードを1枚伏せて、ターンエンド!」
高田:LP 1200
手札:2枚
フィールド
:巨大ネズミ(ATK 2200)
:伏せカード1枚、団結の力(装備魔法、『巨大ネズミ』に装備)
「さあ白石、お前もやれぇ!」
「……高田、お前は変わったな」
「何?」
「昔はそうじゃなかった。中等部の1年生の時、出会った当初はデュエルを純粋に楽しんでいた。だが今はどうだ? 今のお前には、デュエルはただ相手を踏み潰す道具でしかないんじゃないか?」
「るせえ! さっさとやれよ!」
白石殿……。お主は……。
「私のターン、ドロー! まあ、私とお前の仲だ、このデュエルくらいは付き合ってやろう。私は手札から魔法カード『トレード・イン』を発動! 手札からレベル8の『ラビードラゴン』を墓地に送り、カードを2枚ドローする! 更に『創世者の化身』を召喚!」
創世者の化身:ATK 1600
「リリースして効果発動! 手札の『
『ホォォォ!』
創世神:DEF 3000
創世者の化身(効果モンスター)
星4
光属性/戦士族
ATK 1600/DEF 1500
このカードを生け贄に捧げる事で、手札の「創世神」1体を特殊召喚する。
創世神(効果モンスター)
星8
光属性/雷族
ATK 2300/DEF 3000
自分の墓地からモンスターを1体選択する。
手札を1枚墓地に送り、選択したモンスター1体を特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードは墓地からの特殊召喚はできない。
思った通り、気骨のある男だ。以前見た時は高田同様の存在だと思っていたが、人は変わるものだな。
さあ、まずはこの雷を纏ったオレンジの巨神をどうにかしなくてはならん。
「私は『創世神』の効果発動! 1ターンに1度、墓地のモンスターを1体選び、手札を1枚墓地へ送る事で、選んだ墓地のモンスターを特殊召喚する! 私は手札の『エレキテルドラゴン』を墓地へ送り、墓地の『ラビードラゴン』を特殊召喚!」
ラビードラゴン:ATK 2950
「更に墓地の光属性モンスター『創世者の化身』をゲームから除外し、『霊魂の護送船』を特殊召喚! そして魔法カード『死者蘇生』を発動、墓地の『エレキテルドラゴン』を攻撃表示で復活させる!」
霊魂の護送船:ATK 1900
エレキテルドラゴン:ATK 2500
白石殿のフィールドに並ぶ、ウサギの龍、魂を引き連れた幽霊船、雷を纏った龍。
ほう、1ターンで4体のモンスターを揃えるとは……!
ラビードラゴン(通常モンスター)
星8
光属性/ドラゴン族
ATK 2950/DEF 2900
雪原に生息するドラゴンの突然変異種。
巨大な耳は数キロ離れた物音を聴き分け、驚異的な跳躍力と相俟って狙った獲物は逃さない。
霊魂の護送船(効果モンスター)
星5
光属性/悪魔族
ATK 1900/DEF 1000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に存在する光属性モンスター1体をゲームから除外した場合に特殊召喚する事ができる。
エレキテルドラゴン(通常モンスター)
星6
光属性/ドラゴン族
ATK 2500/DEF 1000
常に電気を纏い空中を浮遊するドラゴン。
古代より存在し、その生態には未だ謎が多いものの、古のルールにより捕獲は禁止されている。
「このターンは攻撃できん。私はこれでターンエンド!」
白石:LP 4000
手札:1枚
フィールド
:創世神(DEF 3000)、ラビードラゴン(ATK 2950)、霊魂の護送船(ATK 1900)、エレキテルドラゴン(ATK 2500)
:魔法・罠無し
「へぇ、やるじゃねえか白石」
「今の手札でできる最高のプレイングをしただけだ。そもそもお前のデッキの展開が遅いだけだろう」
「あ?」
「事実を言っただけだ。速攻で決めるとか言いながら後半戦に縺れ込まないと何もできん男に睨まれても怖くも無いぞ」
「て、テメェ……!」
また随分仲が悪い。友情に亀裂が入っているな、絶交も時間の問題か。
「私のターン、ドロー! 『強欲な壺』を発動! ……良し、『サイクロン』を発動! その伏せカードを破壊する!」
「『スピリットバリア』が!」
さて、このターンで仕留めるぞ。
「永続罠オープン、『アイヴィ・シャックル』! 自分のターンでのみ、相手モンスターは植物族となる!」
アイヴィ・シャックル
【永続罠】
このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターは自分のターンのみ植物族となる。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが相手の効果によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
巨大ネズミ:獣族→植物族
創世神:雷族→植物族
ラビードラゴン:ドラゴン族→植物族
霊魂の護送船:悪魔族→植物族
エレキテルドラゴン:ドラゴン族→植物族
無数のツタで覆われる獣や龍達。
毎度思うのだが、あれで本当に植物族になるのだろうか。そんな事だったら探検隊などはもうとうの昔に植物族や昆虫族になってそうだな。
「更に魔法カード『フレグランス・ストーム』を発動し、これで『創世神』を破壊する!」
「何!? 私のモンスターをだと!?」
「生憎だが『フレグランス・ストーム』は破壊するモンスターはどちらのモンスターなのかは問わないのだ。ドロー! 引いたカードは植物族の『ローズ・テンタクルス』! もう1枚ドロー!」
世界樹:フラワーカウンター 1→2
「魔法カード『死者蘇生』を発動! 墓地から蘇れ、『ローンファイア・ブロッサム』!」
ローンファイア・ブロッサム:DEF 1400
「更に『ローンファイア・ブロッサム』の効果発動! 自身をリリースし、デッキから『ギガプラント』を特殊召喚!」
ギガプラント:ATK 2400
「装備魔法『スーペルヴィス』を『ギガプラント』に装備! これでデュアルモンスターは再召喚された形となり、効果が発動できる! 『ギガプラント』の効果発動! 墓地の『ローンファイア・ブロッサム』を特殊召喚!」
スーペルヴィス
【装備魔法】
デュアルモンスターにのみ装備可能。
(1):装備モンスターはもう1度召喚された状態として扱う。
(2):表側表示のこのカードがフィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地の通常モンスター1体を対象として発動する。
そのモンスターを特殊召喚する。
ローンファイア・ブロッサム:DEF 1400
「そして『ギガプラント』をリリースし、『ローズ・テンタクルス』をアドバンス召喚!」
ローズ・テンタクルス:ATK 2200
これで手札は使い切った。だが勝利への条件も揃った。
そんな私のプレイングを見て、高田は心底おかしいと言わんばかりに大笑いを始める。
「ブッヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! 白石、わざわざ攻撃力を下げたぜあの女! 馬鹿だろ!」
「馬鹿は貴様だ高田! 『スーペルヴィス』が墓地に送られたのだぞ!」
おや、どうやら奴は何も知らないようだな。知は力、無知は罪というものよ。
「その通りだ。『スーペルヴィス』が墓地に送られた事で、墓地の通常モンスター1体を蘇生できる。デュアルモンスターは墓地で通常モンスター扱い。よって『ギガプラント』が復活!」
「はぁ!?」
ギガプラント:ATK 2400
これが、私の植物族連続召喚コンボ。1度に2体の上級植物族、大口を開けた草のクリーチャーと、バラの頭とツタの触手を持った魔物を場に出してやった。これで勝敗は決まった。
ローズ・テンタクルス(効果モンスター)
星6
地属性/植物族
ATK 2200/DEF 1200
このカードは特殊召喚できない。
自分のバトルフェイズ開始時に相手フィールド上に表側表示で植物族モンスターが存在する場合、このターンこのカードは通常の攻撃に加えて、その植物族モンスターの数だけ攻撃する事ができる。
このカードが戦闘によって植物族モンスターを破壊した場合、相手ライフに300ポイントダメージを与える。
「更に『世界樹』の効果発動! フラワーカウンターを1つ取り除き、フィールド上の植物族モンスターの攻守をエンドフェイズ時まで400ポイントアップする! 私は2つのフラワーカウンターを使い、『ローズ・テンタクルス』の攻守をそれぞれ合計800アップさせる!」
ローズ・テンタクルス:ATK 2200→2600→3000/DEF 1200→1600→2000
「「攻撃力3000だとぉ!?」」
「バトル! と同時に『ローズ・テンタクルス』のモンスター効果! バトルフェイズ開始時に相手の場に表側表示で存在する植物族モンスターの数だけ、このターンこのカードの攻撃可能回数を追加する! 更にこのモンスターは相手の植物族モンスターを戦闘破壊する度に、相手に300ポイントのダメージを与える! 『アイヴィ・シャックル』の効果で貴様らのモンスターは全て植物族! その数は4体! よって『ローズ・テンタクルス』はこのターン5回の攻撃が可能となる! 喰らえ、“ソーン・ウィップ”
「「ひ、ヒィィィ!?」」
「“ソーン・ウィップ・ワン”!」
振り下ろされる、巨大な植物の腕。
一度目の攻撃はウサギの龍を薙ぎ払う。
「ぐあっ!?」
白石:LP 4000→3950→3650
「“ソーン・ウィップ・ツー”!」
二度目の攻撃は青い大きなネズミを叩き潰す。
「ぐぇっ!? で、デッキから『巨大ネズミ』を特殊召喚っ!」
高田:LP 1200→400→100
巨大ネズミ:ATK 1400
「無駄な足掻きだ! “ソーン・ウィップ・スリー”!」
「ギャァァァァァァァァァァッ!」
そして三度目の攻撃が同じ姿のネズミを直撃し、後ろのプレイヤーごと吹き飛ばした。
高田:LP 100→0
「ば、バカな……! この俺様、が……!」
「高田ぁ!」
高田:LOSE
「まだ私の攻撃は終わっていないぞ! “ソーン・ウィップ・フォー”!」
四度目の攻撃で幽霊船を木端微塵に破壊。
「ぐぶぅっ!?」
白石:LP 3650→2550→2250
「これで最後! “ラスト・ソーン・ウィップ”!」
そして五度目の攻撃が雷を纏った龍を締め上げて地面に叩き付けた。
「げべしっ!?」
白石:LP 2250→1750→1450
五本のツタで攻撃を終えたバラの魔人は、暴れ済んだのか、その場で動きを漸く止めたのだった。
「これで貴様のライフは1450、もう止める術はあるまい?」
「く……!」
「止めだ! 『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』でダイレクトアタック! “フレイム・ペタル”!」
「ぐぁあああああああああああああああああっ!」
白石:LP 1250→0
白石:LOSE
「弱い。その程度では我々を打ち取る事など夢のまた夢だぞ」
これで、私のノルマは終了だ。口ほどにも無い。
「主殿、挫折は誰でもある事だ。きっと辛く、苦しいだろう。だがその苦境を乗り越えて初めて、人は更なる成長を遂げる。貴方が戦えないというのならば、私が代わりに戦おう。だからまた立ち上がってくれ、それまで私は待っているから……」
桜:WIN
高田・白石:LOSE
SIDE:フレイ
「わたくしのターン、ドロー!」
わたくしにとっては本日2度目のデュエルです。1日に何度もデュエルをするのは精神力を削ってプレイする関係上、あまりよろしくは無いのです。この辺は集中力が必要な他のゲームなんかでも同じ事が言えます。ですがまあ、この程度の相手なら問題無いでしょう。
「魔法カード『強欲で謙虚な壺』を発動です。デッキの上からカードを3枚めくり、中から1枚を選んで手札に加え、残りはデッキに戻します。またこのカードを発動するターン、わたくしはモンスターを特殊召喚できません」
強欲で謙虚な壺
【通常魔法】
自分のデッキの上からカードを3枚めくり、その中から1枚を選んで手札に加え、その後残りのカードをデッキに戻す。
「強欲で謙虚な壺」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン自分はモンスターを特殊召喚できない。
【めくられたカード】
『死者蘇生』
『カードガンナー』
『帝国の英断』
「『カードガンナー』を手札に加え、残りはデッキに戻します。更に手札から『カードガンナー』を召喚!」
わたくしの両隣に光のゲートが現れ、機械族モンスター。金魚鉢のようなヘルメットを装着し、キャタピラで移動するマシン。腕の先にはノズルのようなガンキャノンが装着されてます。
カードガンナー:ATK 400
「『カードガンナー』の効果発動、デッキからカードを3枚墓地へ送ります。そして送ったカード1枚につき攻撃力500ポイントアップです!」
【送られたカード】
『月の書』
『黄泉ガエル』
『ギガンテス』
カードガンナー:ATK 400→1900
ふむ、落ちの具合は中々ですね。特に『黄泉ガエル』がそのまま落ちたのは、このデッキにすると有難い限りです。
「これでターンエンドです!」
カードガンナー:ATK 1900→400
フレイ:LP 4000
手札:5枚
フィールド
:カードガンナー(ATK 400)
:魔法・罠無し
「さあ、無駄な足掻きを好きなだけすると良いのです」
「オレのターン、ドロー! ナメんじゃねぇぞ、女ァ! オレは永続魔法『凡骨の意地』を発動! これにより、オレがドローフェイズにドローしたカードが通常モンスターだった場合、相手に見せてもう1枚ドローできる! 更にフィールド魔法『フュージョン・ゲート』! これで素材をゲームから除外する代わりに『融合』無しで融合召喚ができる!」
フュージョン・ゲート
【フィールド魔法】
このカードがフィールド上に存在する限り、ターンプレイヤーは手札・自分フィールド上から融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、その融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
「手札の『砦を守る翼竜』と『フェアリー・ドラゴン』を融合! 現れろ、『カイザー・ドラゴン』!」
『ギジャァァァァァァァァァッ!』
カイザー・ドラゴン:ATK 2300
「更に手札の『ギガテック・ウルフ』と『キャノン・ソルジャー』を融合! 来い、『迷宮の魔戦車』!」
『ギギギギギギギギ!』
迷宮の魔戦車:ATK 2400
んん、【凡骨融合】ですか。しかしそんな金ぴかなだけの細い龍とゴテゴテした赤いドリルが付いているだけの青戦車でわたくしに勝つつもりとは、片腹痛いですね。
カイザー・ドラゴン(融合モンスター)
星7
光属性/ドラゴン族
ATK 2300/DEF 2000
「砦を守る翼竜」+「フェアリー・ドラゴン」
迷宮の魔戦車(融合モンスター)
星7
闇属性/機械族
ATK 2400/DEF 2400
「ギガテック・ウルフ」+「キャノン・ソルジャー」
「これで、ターンエンドだぜ! さあ、オレのモンスターの前に平伏せぇ!」
襟山:LP 4000
手札:0枚
フィールド
:カイザー・ドラゴン(ATK 2300)、迷宮の魔戦車(ATK 2400)
:凡骨の意地(永続魔法)、フュージョン・ゲート(フィールド魔法)
「おれのターン、ドローだ! おれは『古のルール』を発動! 手札からレベル5以上の通常モンスターを1体特殊召喚する! おれは『フロストザウルス』を特殊召喚!」
フロストザウルス:ATK 2600
「更に『ブラッド・ヴォルス』を召喚だぁ!」
ブラッド・ヴォルス:ATK 1900
古のルール
【通常魔法】
手札からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する。
フロストザウルス(通常モンスター)
星6
水属性/恐竜族
ATK 2600/DEF 1700
鈍い神経と感性のお陰で、氷づけになりつつも氷河期を乗り越える脅威の生命力を持つ。寒さには滅法強いぞ。
ブラッド・ヴォルス(通常モンスター)
星4
闇属性/獣戦士族
ATK 1900/DEF 1200
悪行の限りを尽くし、それを喜びとしている魔獣人。
手にした斧は常に血塗られている。
「そして永続魔法『絶対魔法禁止区域』を発動! これでフィールドにいる通常モンスターは全て、魔法の効果を受けなくなる!」
氷に包まれたブラキオサウルスに、鋭い斧を持つ魔獣。こちらは【通常モンスター】のようですね。もう片方の彼が出した融合モンスターもこの恩恵を得られるので、タッグとしては悪くありません。
ですが、ヌルい。そんな程度でわたくしを仕留める事など不可能です。
絶対魔法禁止区域
【永続魔法】
フィールド上に表側表示で存在する全ての効果モンスター以外のモンスターは魔法の効果を受けない。
「カードを1枚伏せて、ターンエンドだぜ!」
糸杉:LP 4000
手札:1枚
フィールド
:フロストザウルス(ATK 2600)、ブラッド・ヴォルス(ATK 1900)
:伏せカード1枚、絶対魔法禁止区域(永続魔法)
(この伏せカードは『決戦の火蓋』だ。次のターンに手札の『闇の量産工場』と合わせて、更にモンスターを召喚してやるぜぇ!)
やれやれ、大した事も無い連中のようですね。これはハズレを引いたかも知れません。黎さんとのデュエルの後ですから、猶更物足りなさを感じます。
「わたくしのターン、ドロー! まずはスタンバイフェイズに『黄泉ガエル』が復活します!」
『ゲロゲー……』
黄泉ガエル:ATK 100
恨みがましい視線をこちらへ向ける羽の生えた黄色いカエル。
すみません、もうちょっとだけですっ!
「そして『カードガンナー』の効果発動! 再びデッキの上からカードを3枚墓地へ送り、攻撃力が1500アップするのです!」
【送られたカード】
『簡易融合』
『ミラクル・フュージョン』
『爆炎帝テスタロス』
カードガンナー:ATK 400→1900
今度は酷いです……。流石に何度も良い落ちは来ませんね。
「そして『黄泉ガエル』をリリースし、『風帝ライザー』をアドバンス召喚です!」
『フォォォォォッ!』
風帝ライザー:ATK 2400
「み、帝モンスター!? 市場に数枚しか出回ってない、中には世界で1枚しかないとも噂される超レアカードじゃねぇか! ヤッベ、超絶欲しいぜ!」
「あげませんよ? 『ライザー』の効果発動です! 場のカードを1枚持ち主のデッキトップへ飛ばします! 対象は『迷宮の魔戦車』! そのモンスターは融合モンスターなので、直接エクストラデッキに戻ってもらいます!」
「何!?」
「そしてこれにチェーンして『イリュージョン・スナッチ』を手札から特殊召喚! 自分がアドバンス召喚した時、このカードは手札から特殊召喚できるのです! そしてそのレベルはアドバンス召喚されたモンスターと同じになります!」
『ギギャァム!』
イリュージョン・スナッチ:ATK 2400/☆7→6/闇属性→風属性/悪魔族→鳥獣族
まだまだ行きますよ!
「『迷宮の魔戦車』が!?」
「レベル6の『ライザー』と『イリュージョン・スナッチ』でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
☆6×☆6=★6
「エクシーズ召喚! 灼熱の鉄塊を双腕に込め、標的を撃ち抜け! 『ガントレット・シューター』!」
ガントレット・シューター:ATK 2400
風の化身と姿を自在に変える白い悪魔を素材にして現れたのは、肩に六連リボルバー形式の排気口を備えた大型手甲を装備したモンスター。このカードも中々優秀なのです。
ガントレット・シューター(エクシーズ・効果モンスター)
ランク6
地属性/戦士族
ATK 2400/DEF 2800
レベル6モンスター×2
自分のメインフェイズ時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターを破壊する。
「『ガントレット・シューター』の効果発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手モンスター1体を破壊します! 更にこの効果の発動回数に1ターン内の回数制限はありません!
わたくしはオーバーレイ・ユニットを2つとも使って、『カイザー・ドラゴン』と『フロストザウルス』を破壊! “メタルアーム・ランチャー”!」
ガントレット・シューター:ORU 2→1→0
『ギギャァァァッ!』
『ブゴォォォォッ!』
「お、おれらのモンスターが!?」
「こんなアッサリと!?」
射出された大型手甲によって体を貫かれる2体のモンスター。これで残るモンスターは『ブラッド・ヴォルス』1体のみです。
これで終わりじゃないですよ?
「更にランク6の『ガントレット・シューター』でオーバーレイ! 1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築します!」
★6→★7
「エクシーズ・チェンジ! 天空の彼方より現れ出で、疾風迅雷の如く貫け! 『迅雷の騎士ガイア・ドラグーン』!」
迅雷の騎士ガイア・ドラグーン:ATK 2600
来ました、ドラゴンに乗った二刀流の槍使い。ランク5と6はこのモンスターに繋げられるからお得ですね。
「そして魔法カード『鬼神の連撃』を発動なのです! 自分の場のエクシーズモンスター1体からオーバーレイ・ユニットを全て取り除き、そのモンスターはこのターン2回攻撃できます! これで『ガイア・ドラグーン』は2度の攻撃が可能となりました!」
「攻撃力2600の2回攻撃だとぉ!? インチキ効果もいい加減にしやがれ!」
「知りませんよ、そんな事。わたくしの管轄外です」
迅雷の騎士ガイア・ドラグーン(エクシーズ・効果モンスター)
ランク7
風属性/ドラゴン族
ATK 2600/DEF 2100
レベル7モンスター×2
このカードは自分フィールド上のランク5・6のエクシーズモンスターの上にこのカードを重ねてエクシーズ召喚する事もできる。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える
鬼神の連撃
【通常魔法】
自分フィールド上に表側表示で存在するエクシーズモンスター1体を選択し、そのエクシーズ素材を全て取り除いて発動する。
このターン、選択したモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
迅雷の騎士ガイア・ドラグーン:ORU 1→0
「そして魔法カード『ダーク・コーリング』を発動します! 墓地の『イリュージョン・スナッチ』と『ギガンテス』を除外し、『ダーク・ガイア』を融合召喚!」
『オォォォォ……!』
E-HERO ダーク・ガイア:ATK ?→4300
「「攻撃力4300だとぉ!?」」
これでわたくしの場に大型モンスターが2体に下級アタッカーが1体。
仕留めるには十分でしょう。
「バトル! 『ダーク・ガイア』、そこの大馬鹿を蹴散らしなさい! “ダーク・カタストロフ”!」
悪魔の掌の中で圧縮された闇の熱と重力場。それがうねりをあげて対戦相手に直撃します。
ガードもロクにできず、吹っ飛びました。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」
襟山:LP 4000→0
襟山:LOSE
「ンなアホなぁ……!?」
「襟山ぁ!?」
「余所見してる暇はありませんよ! 続いて『ガイア・ドラグーン』の1回目の攻撃です! 対象は『ブラッド・ヴォルス』! “ドラグーン・シェイバー”!」
「ぐえっ!?」
糸杉:LP 4000→3300
風と雷を螺旋状に纏った突撃槍が、斧を持った魔人を貫き、その衝撃を後ろのプレイヤーにまで伝えます。
おっと、これで終わりじゃありませんよ?
「『ガイア・ドラグーン』で2回目の攻撃! 今度はダイレクトアタックです! “ドラグーン・シェイバー・ランバック”!」
「ぐぼっ!?」
糸杉:LP 3300→700
「これで止めです! 『カードガンナー』でダイレクトアタック! “マシンバレット・フルシューティング”!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
糸杉:LP 700→0
糸杉:LOSE
「他愛無いですね、半分寝ながらでもできましたよ」
全く、これなら今のスランプ状態の黎さんでもどうにかできたでしょうね。所詮は物量以外に頭の無い連中です、時間の無駄でした。
こんなんでよく成績優秀者だなんて言えましたね。この学校のレベルが知れます。……まあ、彼らが特別低いのだとでも思っておきましょうか。
「黎さん、貴方の苦しみをわたくしは分かる事ができません。でも、心の中を知る事ができました。涙を流す程に悔しい時、膝を折る程に辛い時、心が砕ける程に悲しい時、そんな時は誰かに頼って下さい。貴方はもう、一人では無いのですから」
フレイ:WIN
襟山・糸杉:LOSE
SIDE:ポーラ
「……私のターン、ドロー」
サーを守るために始まった戦い。桜とフレイの様子を見るに、大した敵じゃあ無いみたい。でも油断は足元を掬う。気を緩めないようにしないと。
……流石に地の文の頭に3点リーダはほいほい付けない。
「……魔法カード『トレード・イン』。……手札のレベル8『ダークストーム・ドラゴン』を墓地に送り、2枚ドローする。……もう1度『トレード・イン』。……レベル8『フェニックス・ギア・フリード』を墓地へ。……更に『テイク・オーバー5』を発動。……デッキからカードを5枚墓地へ」
私に限らずデュアルデッキでは墓地のカードが肝要。できるだけ墓地に溜め込んでおかないと。
さて、何が落ちるかなっと。
テイク・オーバー5(アニメオリジナル)
【通常魔法】
自分のデッキの上からカードを5枚墓地に送る。
このカードが墓地に存在する限り、自分の「カードを墓地に送る」効果は無効となる。
自分ターンのドローフェイズ時に墓地のこのカードをゲームから除外する事で、1枚ドローする。
【送られたカード】
『デュアル・スパーク』
『デュアル・スパーク』
『デュアル・スパーク』
『黙する死者』
『貪欲な壺』
……うん。これで、大体のほしいカードは揃った。
泣いてない、泣いてないもん。良いカードばっかり墓地に行っちゃったけど、泣いてないもん……。でもデュアスパ3枚は酷いと思う……。
「……モンスターをセット。……カードを1枚伏せて、ターンエンド」
ポーラ:LP 4000
手札:3枚
フィールド
:セットモンスター1体
:伏せカード1枚
「オレのターン、ドロー! ケッ! テメェ手札をあんだけ交換したってのに、出せるのはその伏せモンスター1体だけかよ! とんだザコだな! そのデッキに入ってるレアカードが可哀想だぜ!」
「……耳障り。……そういうセリフは勝った時に言わないと、後で赤っ恥を掻く」
「ハ! なら地べたに這い蹲らせてやらぁ! オレは『ゴブリン突撃部隊』を召喚!」
ゴブリン突撃部隊:ATK 2300
あっちの先手はやられ役が定着した緑の鬼の集団。そう言えばこの間、病院に入院していたのを見た事がある。やられ過ぎで包帯グルグル巻きだった。保険が効くと良いんだけど。
「更に『突撃部隊』に装備魔法『愚鈍の斧』、『ジャンク・アタック』、『ビッグバン・シュート』、『閃光の双剣-トライス』を手札の『神剣-フェニックスブレード』を墓地に送って装備!
これで攻撃力は1000上がってモンスター効果は無効になり、戦闘で相手モンスターを破壊すればその元々の攻撃力の半分のダメージを与え、攻撃力が400上がり貫通能力を与えられ、攻撃力が500下がって2回攻撃ができる!」
愚鈍の斧
【装備魔法】
装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップし、効果は無効化される。
また、自分のスタンバイフェイズ毎に、装備モンスターのコントローラーに500ポイントダメージを与える。
ジャンク・アタック
【装備魔法】
装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。
ビッグバン・シュート
【装備魔法】
装備モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。
装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードがフィールド上から離れた時、装備モンスターをゲームから除外する。
閃光の双剣-トライス
【装備魔法】
手札のカード1枚を墓地に送って装備する。
装備モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。
装備モンスターはバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
ゴブリン突撃部隊:ATK 2300→3300→3700→3200
「……攻撃力3200」
「ハッハッハー! どうだ、この圧倒的な攻撃力は! 開いた口も塞がらないだろう! ターンエンドだ!」
座水:LP 4000
手札:0枚
フィールド
:ゴブリン突撃部隊(ATK 3200)
:愚鈍の斧(装備魔法・『ゴブリン突撃部隊』に装備)、ジャンク・アタック(装備魔法・『ゴブリン突撃部隊』に装備)、ビッグバン・シュート(装備魔法・『ゴブリン突撃部隊』に装備)、閃光の双剣-トライス(装備魔法・『ゴブリン突撃部隊』に装備)
この人は単純な【装備ビート】。でも手札1枚に対する割合が悪すぎ。手札5枚消費で900しか上がらないなんて、『突撃部隊』を2体並べた方がお得だったと思う。
「おれのターン、ドロー! おれは『切り込み隊長』を召喚! こいつが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚できる! 来い、『ネフティスの導き手』!」
『ハァッ!』
『タァッ!』
切り込み隊長:ATK 1200
ネフティスの導き手:ATK 600
2人目が召喚したのは軽鎧で武装された金髪の男性と、赤と金の法衣を纏った浅黒い肌の女性。
この陣形は確か……。
切り込み隊長(効果モンスター)
星3
地属性/戦士族
ATK 1200/DEF 400
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は表側表示で存在する他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。
このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる。
ネフティスの導き手(効果モンスター)
星2
風属性/魔法使い族
ATK 600/DEF 600
このカードと自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして発動する。
自分の手札またはデッキから「ネフティスの鳳凰神」1体を特殊召喚する。
「そして『ネフティスの導き手』の効果発動! こいつを含めて自分のモンスターを2体リリースし、手札かデッキより『ネフティスの鳳凰神』を特殊召喚できる! 現れろ!」
ネフティスの鳳凰神:ATK 2400
やはり、『ネフティスの鳳凰神』。
効果破壊されると次の自分のスタンバイフェイズに自己再生して、フィールド上の魔法・罠を巻き込む『大嵐』内臓モンスター。
そこまで強くないけど、何度も場を荒らされると面倒な存在。
ネフティスの鳳凰神(効果モンスター)
星8
炎属性/鳥獣族
ATK 2400/DEF 1600
このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、次の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚に成功した時、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。
「フヒヒヒヒ! 更にカードを1枚伏せて、ターンエンドだぜ!」
……『ネフティス』がいるのにカードを伏せた。つまりあれは自分から『ネフティス』を破壊するカードの可能性が高い。
ならば放置はできない。
「……リバースカード、オープン。……『サイクロン』。……今伏せられたカードを破壊」
「げっ!? 折角伏せた『激流葬』が!?」
やはり、そういうカードだった。危ない。
でもこの二人、デッキ相性が悪過ぎ。『ネフティス』の効果で味方の装備カードまで巻き込んでしまう。タッグを組むのなら、ある程度デッキの調整や相性を考えないと。
激流葬
【通常罠】
モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる。
フィールド上のモンスターを全て破壊する。
古川:LP 4000
手札:3枚
フィールド
:ネフティスの鳳凰神(ATK 2400)
:魔法・罠無し
「……私のターン、ドロー。……『テイク・オーバー5』を除外し、更に1枚ドロー。……セットモンスター、『チューンド・マジシャン』を反転召喚」
『トォッ!』
チューンド・マジシャン:ATK 1800
裏側表示のカードから出て来たのは、緑のリングをフラフープみたいに腰につけた、眼鏡の魔法使い。素の攻撃力もそこそこ高いからありがたい。
チューンド・マジシャン(デュアルモンスター)
星4
風属性/魔法使い族
ATK 1800/DEF 1600
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードをチューナーとして扱う。
「……更に『炎妖蝶ウィルプス』を召喚」
炎妖蝶ウィルプス:ATK 1500
「おいおい、そんなザコ2体で何ができるってんだよ?」
「……装備魔法『スーペルヴィス』を『チューンド・マジシャン』に装備。……これで装備されたデュアルモンスターは2度召喚された状態になる」
「だからそれの何が――」
「……『チューンド・マジシャン』は再度召喚された場合、チューナーになる」
「何!?」
見せてあげる。私の更なる切り札を。
「……レベル4のデュアルモンスター『炎妖蝶ウィルプス』に、レベル4の『チューンド・マジシャン』をチューニング。
……有と無の境界、ここに重なりて顕現する。……龍の姿となりて、世界を焼き払え!」
☆4+☆4=☆8
「……シンクロ召喚。……目覚めよ、『ブラック・ブルドラゴ』!」
『グゴォォォォォォォォッ!』
ブラック・ブルドラゴ:ATK 3000
雄叫びをあげて堂々と登場する、隆々とした筋骨の体を持った黒い鱗のドラゴン。二本足で立ち、丸太のように太い腕で地面に手をついて体重を支えている。これが私のエースモンスター。
「攻撃力3000だとぉ!?」
「……更に装備されていた『スーペルヴィス』の効果。……このカードが墓地に送られた時、墓地のデュアルを復活させる。……蘇って、『フェニックス・ギア・フリード』」
フェニックス・ギア・フリード:ATK 2800
更に地面に紫の魔法陣が現れ、その中から炎を周囲に躍らせている白い鎧の騎士が現れた。
フェニックス・ギア・フリード(デュアルモンスター)
星8
炎属性/戦士族
ATK 2800/DEF 2200
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●相手が魔法カードを発動した場合、自分の墓地に存在するデュアルモンスター1体を選択して特殊召喚する事ができる。
また、自分フィールド上に表側表示で存在する装備カード1枚を墓地へ送る事で、フィールド上に存在するモンスターを対象にする魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
「攻撃力2800だと!? こんなモンスターまで墓地に送ってやがったのか!?」
「……『ブルドラゴ』の効果発動。……手札のデュアル1体を墓地に送り、相手の場の魔法・罠を1枚破壊する。……手札の『ヘルカイザー・ドラゴン』を墓地へ送り、『ビッグバン・シュート』を破壊。……“ブラック・フレア・ブレイカー”」
ゴウッ! と黒い炎を吐いて装備カードを焼き払う黒い龍。普通なら『サイクロン』の代用程度だけど、今回はそれだけじゃ済まない。
様々な武器を持った緑の鬼の集団が、光となって歪んで消えた。
「……『ビッグバン・シュート』が装備モンスターより先に場を離れた事で、装備モンスターはゲームから除外される」
「しまった!?」
「……更に魔法カード『死者蘇生』を発動。……『ダークストーム・ドラゴン』を特殊召喚」
ダークストーム・ドラゴン:ATK 2700
地面に紫の魔法陣が生まれて、その中から黒い風を従えた暗黒の翼竜が現れた。
これでレベル8が2体。手を緩めるつもりは無い。
ダークストーム・ドラゴン(デュアルモンスター)
星8
闇属性/ドラゴン族
ATK 2700/DEF 2500
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。
フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。
「……レベル8の『フェニックス・ギア・フリード』と『ダークストーム・ドラゴン』でオーバーレイ。……2体の通常モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築」
☆8×☆8=★8
「……降り注ぐ雷、今その姿は龍となる。……エクシーズ召喚、『サンダーエンド・ドラゴン』」
『グォォォォォォォン!』
サンダーエンド・ドラゴン:ATK 3000
これがこのデッキに搭載されている2体のランク8の内の1体。青白い電流を纏った巨大な龍。デュアルが通常モンスターでもある点がおいしく活かせる優秀なカード。
ちなみにもう1体は『エネアード』。どうでも良いけど『アトゥムス』は嫌い。このデッキじゃ活用も難しいし。
サンダーエンド・ドラゴン(エクシーズ・効果モンスター)
ランク8
光属性/ドラゴン族
ATK 3000/DEF 2000
レベル8通常モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動する事ができる。
このカード以外のフィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。
「こ、攻撃力3000が2体!?」
「……『サンダーエンド』の効果発動。……オーバーレイ・ユニットを1つ使って、フィールド上の自分以外の全てのモンスターを破壊する。……“プラズマティック・ストーム”」
『ギギギギギギィィイッ!』
サンダーエンド・ドラゴン:ORU 2→1
金色に輝く光の玉を噛み砕く雷の龍。そしてその巨体を中心に巨大な雷の竜巻が発生し、フィールドにいる全ての命を焼き尽くした。
『ブルドラゴ』、ゴメン。
「ぐ……! だが次のおれのスタンバイフェイズに『ネフティス』は蘇る!」
「第一こいつバカだぜ! 自分のモンスターまで巻き込んでやがる上に『突撃部隊』がいる時に使えば手札を減らさずに済んだってのによぉ! 次のターンでテメェは終わりだぜ!」
「……問題無い。……このターンで全部終わらせる」
「「何!?」」
「……『ブラック・ブルドラゴ』のモンスター効果発動。……このカードが破壊された時、自分の墓地からデュアルモンスターを1体特殊召喚できる。……蘇れ、『ヘルカイザー・ドラゴン』」
『ギャォーン!』
ヘルカイザー・ドラゴン:ATK 2400
黒い龍の断末魔は墓地へと響いた。その轟いた叫びは墓場に眠っていた別の龍を呼び覚ます。節を白い骨格で覆った黒い翼竜が、同じ龍の無念に応えるように現れ咆哮をあげた。
「こ、こいつはさっき『ビッグバン・シュート』を破壊するために墓地に行ったカード!?」
「クソッ、わざわざ手札を減らしたのはこれが目的だったのか!?」
「……今頃気付いても、もう遅い。……『ブラック・ブルドラゴ』の効果で特殊召喚されたモンスターは再召喚された状態になる。……『ヘルカイザー・ドラゴン』は再召喚されている場合、1ターンに2回攻撃できる」
「「な、なんだってー!?」」
ブラック・ブルドラゴ(シンクロ・効果モンスター)
星8
炎属性/ドラゴン族
ATK 3000/DEF 2600
チューナー+チューナー以外のデュアルモンスター1体以上
1ターンに1度、手札からデュアルモンスター1体を墓地へ送って発動できる。
相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。
また、このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地のデュアルモンスター1体を選択して特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したデュアルモンスターは再度召喚された状態になる。
ヘルカイザー・ドラゴン(デュアルモンスター)
星6
炎属性/ドラゴン族
ATK 2400/DEF 1500
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
「……まだ終わらない。……魔法カード『鬼神の連撃』。……『サンダーエンド』のオーバーレイ・ユニットを全て消費し、このターン『サンダーエンド』に2回攻撃の権利を与える」
「何ぃ!? 攻撃力3000の2回攻撃だとぉ!?」
サンダーエンド・ドラゴン:ORU 1→0
「……『サンダーエンド』でそっちの人に連続攻撃。……“ボルティック・ブラスター”2連打」
「うぎゃぁあああっ!」
座水:LP 4000→1000→0
座水:LOSE
「ば、かな……。レアカード、万歳……」
「座水ぃ!」
「……次はあなたの番」
「うっ!」
これで、フィニッシュ。
「……『ヘルカイザー・ドラゴン』でダイレクトアタック。……“ヘルズダブル・フレアブレス”」
「ヒッ! アヂヂヂヂヂャアアアアアアッ!?」
古川:LP 4000→1600→0
古川:LOSE
「……手応えがまるで無い。……こんなお遊びに付き合ってられる程、サーは暇人じゃない」
タクティクス、コンビネーション、直観力、デッキの構成、全てが甘い。その程度のレベルじゃあサー黎に勝つ事は不可能。今のスランプのサーならどうかは分からないけど、少なくとも惨敗は無いと思う。
井の中の蛙、大海を知らず。彼らにはその言葉がピッタリ合う。
「……サー、貴方は沢山の苦しみを抱え背負い受け止めてきた。……私達は、そんな貴方の頼りになる姿を見て、任せきりにしていた、何もしなくて良いと思い込んでいた。……貴方1人に、負担をかけ過ぎていた。……今度は私達が、背負う番」
ポーラ:WIN
座水・古川:LOSE
「私達の……」
「わたくし達の……」
「……私達の……」
「「「(……)勝ち(だぁ)(です)!」」」
桜・フレイ・ポーラ:WIN
高田・白石・襟山・糸杉・座水・古川:LOSE
SIDE:無し
桜は腕を組んで鼻で嗤った。弱い、あまりにも弱すぎる。
フレイは溜息を深々と吐いた。張り合いが無いにも程がある。
ポーラは蔑むような視線を送った。詰まらないデュエルだった。
「さ、これで貴様ら全員の負けは決まった。さっさと去れ」
「ぐ……!」
「仮にもデュエリストなんですから、約束は守りますよねぇ?」
「うぐ……」
「ぬぅ……」
「……ザコに構っている暇は無い。……早く消えて」
「クッソ! 畜生! 栄光あるブルーなのに、クソッタレ!」
そんな侮蔑と軽蔑の視線を受け、敗北の屈辱を噛みしめていた白石を除く5人はその場から立ち去った。或いは栄光あるブルーの顔に泥を塗った事に対する責任でも感じたのかも知れない。
「覚えてろよ!」
「この屈辱は!」
「後で必ずっ!」
「百倍にして!」
「返してやる!」
そんな捨て台詞を残しながら走って行く5人を見ながら、頭痛でもするのか白石は頭を押さえながら立ち上がった。
「ふぅ、あれで懲りる連中なら私も楽なんだがな。ああ……、胃と頭が痛い」
見るからに顔色の悪い彼に、フレイがどこからか取り出した薬箱を片手に近寄り声をかけた。
「大丈夫ですか、薬ありますよ?」
「ああ、すまない。……私は敵だと言うのに、そんなものを譲ってくれるのか?」
「構いません。貴方だけは最初から明確な敵意がありませんでしたから」
そう言ってニッコリ笑うフレイ。後ろで桜とポーラも頷いている所を見ると、その辺は3人とも分かり切っていたらしい。
薬を服用してある程度顔色の良くなった白石は、ゆっくりと立ち上がった。
「世話と迷惑をかけたな。すまなかった」
「何、問題無い。この程度、片手間でできる」
「厳しい言葉だ……」
「主殿が復活したら、デュエルに関して教えを乞うのはどうだ? 教え方も上手いし要点も抑えているから分かりやすいぞ?」
「そうするとしよう」
それはそうと、と白石は話題を変えた。
顔付きも神妙なものになり、3人の顔を真剣に見据えている。
「……どうしたの?」
「頼みがある。……高田を止めてくれ」
「何?」
「信じられない話だとは思うが、高田は、あいつは最初はあんな高慢な奴じゃあ無かったのだ」
白石と高田はアカデミアの中等部、それも入学した時からの親友だ。
共に上を目指し互いに切磋琢磨しあった仲であり、お互いに気の置けない存在である。
最初は純粋にデュエルを楽しみ、学年で誰よりも強くなろうとしていたものだった。
汗を流し、敗北に涙し、勝利に歓喜し、笑い合った。どれも掛け替えの無い大切な思い出だ。
「だが奴は変わった。3年の始め辺りからか、他人を見下すようになっていったのだ。今にして思えば、この高等部のオベリスクブルーの見学に行った直後だった」
恐らくブルーの影響をモロに受けたのだろう、と白石は分析した。
他人を見下し、傲り高ぶり、格下の者がレアカードを持っていればカツアゲする。昔はそんな方法を取った事など一度も無かったのに、この高等部に来てからは特にそれは顕著だと言う。
「私が何度言ってもあいつは聞く耳を持たん……。最近は化物、いやあの男の影響で差別意識も改善され始め、ブルー内でも彼の授業のお陰か成績が上がって行く者も増えている。対し高田は元々あまり出来なかった勉強も足を引っ張って落第寸前、村八分もそう遠くないかも知れん。
このままではあいつはダメになってしまう。イエローに落ちでもしたら、レッドになったらどうなるか分かったものじゃない。発狂、自害、退学、引きこもり、自暴自棄……、何だって考えられる」
そうなる前にどうにかしてほしい。それが白石の頼みだった。
「勉強自体が嫌いだから、私がいくら教えても効果が薄い。方法は任せる、あのバカをどうにかしてくれ……。これ以上親友が落ち零れて行くのは見ていられん……。頼む!」
ダン! と地面に正座をし、白石は両手を地面につける。そしてその手の甲に向けて額を下した。紛う事無き土下座の姿勢だ。それだけ彼が真面目に、心の底から高田を救ってほしいと願っている証拠でもあった。
数瞬呆気に取られた精霊トリオだったが、ややあってフレイが声をかけた。
「顔を上げて下さい、折角の綺麗な制服も汚れてしまいますよ」
そう言ってひょいと白石の体を右手で持ち上げると、地面に立たせた。
白石は決して軽くは無いはずの自分を片腕で持ち上げた事に驚きはしたが、それでもフレイの言わんとする所を察し、顔を綻ばせてフレイの両手を取った。
「で、では!」
「はい、引き受けましょう。と言っても、具体的に何をするかはまだ全然なんですけど……」
「いやそれでもありがたい! ありがとう! これで高田のバカも救われる!」
そう言って握手をするようにぶんぶんと両手を上下に動かす。
喜びの剣幕に押されたフレイは、ただただ苦笑いをするしかできなかった。
「調子の良い男だ……」
「……でも嘘じゃなさそう」
「ありがとう! 本当にありがとう!」
「あははは……」
一方その頃、件の高田はと言うと、フレイ達の傍の木陰で顔色を衝撃に染めていた。
「ありがとう! これで高田のバカも救われる!」
(白石、テメェ……!)
話は最初から最後まで聞いていた。
白石は純粋に彼の事を心配している。だが高田の心に生まれたのは、感謝でも喜びも無かった。
「ありがとう! 本当にありがとう!」
(あの化物の仲間に俺様を更生してくれだなんて頼みやがって! テメェまで俺を裏切る気か!)
高田の心の中に巣食う原罪、傲慢。プライドが真実を邪悪に歪めてしまった。
追い詰められた今の彼にとってはレッドとイエローと女子は奴隷、或いはゴミ程度の存在としか思えていない。道端に放棄されたポイ捨てされたゴミより劣る存在。さっさと廃棄されるべきもの。決して手に取ったり、剰え頼み事をしたりする存在では無いものだと。彼のような者は追い詰められても自分より更に下を作り下を見て、「まだ俺は人の上にいる」と安心させているのである。
確かに彼より実際に勉強やデュエルの腕が劣る者も多い。だが下を見ていてはキリが無いのだ。同じ見るのなら、同様にキリが無いのであっても上を見なければ、人の中の向上心は失われる。それは即ち堕落とイコールで繋がる。
(あいつらも、クロノス先生も俺の事を見捨てて、お前だけはと思っていたのに……! お前は見捨てないと思っていたのに!)
一緒にいた4人とは去り際に別れた。彼らが最後に放った言葉は思い出すだけで涙が滲む。
――畜生、どういう事だ! お前のせいでボロ負けしちまったじゃねぇか!
――クソッタレ、お前の嘘情報に踊らされちまったよ!
――落第寸前のテメェの言う事を信じたオレらがバカだったぜ!
――二度と目の前に現れるな、とっとと落第しちまえドロップアウト野郎!
何だと言うのだ。自分達は同じオベリスクブルーの仲間として楽しくやっていたのではなかったのか。
共にレッドやイエローを嘲り、レアカードをカツアゲして、実技最高責任者の後ろ盾の下で思う存分アカデミアの生活を謳歌していた仲だったと言うのに、この手の平返しはどういう事だ。
「白石、しだいじ……っ!」
強いはずの自分の地位はもう無い。このままでは青い制服も、元々持っていたレアカードも、親友も、何もかもを失ってしまう。
だが、打つ手は無い。自分の未来には落第しか無い。
焦りと怒りと悲しみが集い、高田は思わず走り出した。
「白石の、バカ野郎ぉーっ!」
そんな捨て台詞を、置き土産として。
驚いたのは白石だ。まさか今の会話を聞かれていたとは思わなかったのだ。
「た、高田!? 待て、私は純粋にお前の事が心配で……!」
声をかける暇も無く、高田は森の奥へと走り去る。
「マズいですね、今の聞かれてましたよ……」
「親友が我々に頭を下げた光景、奴の性格を考えれば……」
「……多分、この世の終わりにも等しい事」
「高田……」
ただただ虚空へと伸ばして、掴む相手のいない白石の手が空を切る。
親友のために良かれと思ってやった事が、思わぬ形で裏目に出てしまった。これからの事を思い、白石には途方に暮れる事しかできなかった……。
「畜生、畜生、畜生っ! どいつもこいつも俺様の事をバカにしやがって! 俺様の事を虚仮にしやがって! クズレッドの分際で! ゴミイエローの分際で! カス女の分際で! 奴らに肩入れするブルーの面汚しの分際で! 俺をバカにしやがってぇぇぇぇぇ!」
いつの間にか降り出した雨の中、高田はひたすらに森の中を走り続けていた。止まったら、何かが崩れそうな気がしたから。自分を支える何かが壊れそうな気がしたから。ただガムシャラに走り続けた。
「っぶ!?」
だから足元の石にも気付かずに、転んでしまった。
振り返って見れば、それは普通なら転ぶはずも無いくらい小さな石。それが、自分がバカにしてきた、小物と嘲って来た連中と重なる。
「クソッ! どいつもこいつもこの俺を、この栄光ある偉大なオベリスクブルーの俺様を見下しやがって! 俺様はオベリスクブルーなんだぞ! この学園の最高のエリートなんだぞぉ!」
慟哭、それがその叫びには相応しい名前だった。
裏切って行く仲間達への怒りが、何もできない無力な自分に対する苛立ちが、彼の焦燥感を加速させる。そして人として禁じられた領域にすら彼は踏み込みだした。
「力が……、力が欲しい! 何もかもを圧倒し叩き潰し捻り潰せるだけの力が! そのためなら悪魔に魂を売っていい、どんな代償だって支払ってやる! 誰でもいい、この俺様に力を寄越しやがれぇぇぇぇ!」
『その言葉、嘘は無いな?』
「誰だ!?」
『誰だとは、ご挨拶だな。悪魔を求めたのは貴様であろう』
スゥー、と闇がその場に集う。そこにいたのは全身真っ黒な男。服、髪、目と全てが漆黒の闇を溶いたように黒い。身長は180センチを優に越えている。ガッシリした肉付きで、細身ながらその全身には無駄な筋肉や脂肪は欠片も見当たらない。鍛え抜かれたアスリート、否、武道の選手のようだ。
「悪魔……。なら、俺のさっきの言葉も聞いていたな?」
「ああ。魂を売ってでも力を手にしたいそうだな」
「そうだ。俺様は力がほしい。どんなクソ野郎でも捻じ伏せられるだけの圧倒的なパワーが! そしたら他には何も要らねぇ! そのためなら魂でも何でも、俺の払える代償は何だって払ってやらぁ!」
「ク、ククククククククク! その心意気や良し! 良かろう、貴様のような強い心の闇を持っている者もまた珍しい。くれてやろう、貴様に力を! もっとも、使いこなせるかどうかは貴様次第だがなぁ?」
「や、やってやろうじゃねぇか! 俺様はオベリスクブルーだ! 選ばれたエリートだ! どんなカードだって使いこなしてやるぜ!」
「クカカカハハハハハ! ますます気に入ったぞ! ならば……」
男は懐から紙を2枚取り出すと、高田に手渡した。
1枚目にはアカデミアの詳細な地形図と日付と時刻が、2枚目には高田を紹介する文が記されていた。
「その時刻にその場所に行け。貴様に力をくれてやろう。仲間もおまけでついてくるぞ?」
「おお、ありがてぇ! ……で、見返りは何だ? 魂か? 金か? レアカードか? 何だって払うぞ!」
「いらぬ。元々貴様の魂や金やカードなどに興味は無い。魂を奪うにせよ、熟成が足りん」
「ほ、本当か!?」
「まあ、精々頑張る事だな。我は不要でも、貴様を待つ者達の中には魂を欲する者もいる。ククク、食われんように気を付けろよ? では、記された時刻にまた会おう」
そう言って男は後ろを向いた。
男について何も知らないと気付いた高田は慌てて叫ぶ。
「ま、待ってくれ! アンタ、名前は!?」
「我が名はラース。覚えておけ、小僧」
「ラース……。記憶したぜ、アンタは俺の大恩人だ! 俺様のもう1人の父さんだ!」
「クククククク、さらばだ」
ラースの声と姿が夕闇の中へと溶け込む中、高田は一人、ほくそ笑んでいた。
これで全てを取り戻せる。これで何もかもが元通りになる。自分の未来が約束された事に、高田は内心で有頂天になっていたのだった。
この出会いが、何を呼ぶかも知らないで……。
「ん……?」
小雨の降る海岸に座り込んで今後の自分について考えていた黎は、ふと何かの気配を察知した。
一瞬、本当に一瞬だったが、それは確かに感じられた。背筋にスライムのような粘度の、生暖かい汚泥を流し込まれたような感覚。それは間違い無く邪神の配下の気配だ。
だがそれも一瞬の事。すぐに消えて無くなった。
しかし、確かにに黎は何かを感じ取った。気配の範囲ギリギリを通り過ぎたといったものでは無い。気配を消されたとでも言うのだろうか、それがピタリと当てはまるような、そうで無いような。
島に異変は無い。無いのだが、先刻までとは何かが変わった気がする。純白のハンカチに一滴の黒いシミが生まれたような、異色の変化。
それを正しく例える方法を黎は知らない。
己の語彙を探し、やがて彼はこう呟いたのだった。
「風が変わった……」
今夜は、この雨は止みそうに無かった。
to be continued