遊戯王GX~精霊の抱擁~ 作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民
堕天使スペルビア(効果モンスター)
星8
闇属性/天使族
ATK 2900/DEF 2400
(1):このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、「堕天使スペルビア」以外の自分の墓地の天使族モンスター1体を対象として発動できる。
その天使族モンスターを特殊召喚する。
桜「闇属性の天使族モンスターだ。蘇生時に墓地の天使族を連れて来る効果を持つぞ」
都「除外からの帰還には使えないけど、相手が蘇生しても相手も天使族しか蘇生できないのは利点だよ」
桜「タイミングを逃す効果である事には注意してくれ。逆にこの効果で蘇生したモンスターには何の制約も無い事は利点だろう」
SIDE:無し
精霊三銃士にブルー6人がコテンパンにされてから数日後。
以前セブンスターズが集った水の滴る洞窟。そこに再び老若男女入り混じったメンバーが集結していた。ただ1つ、前回と異なる点がある。
『ほう、その男が君の言う戦力かね?』
『然り』
前は5人だった人影が6人に増えているのだ。
以前のメンバーはダークネスと呼ばれた細身の男、アマゾネス出身の女戦士、ヴァンパイアの貴婦人、眼帯をした大男にツタンカーメンのような少年。ここに今はいない男を含めて6人、それがメンバー編成だった。
新たに加わったのは少年。赤みがやや強い茶髪で年齢は15か16、オベリスクブルーの制服を着用している。中肉中背で見た目だけで言うのならば一般的な男子高校生の範疇から外れていない。
しかし、その目には異常なまでの闇が宿っていた。通常では考えられない、常人ならば抱えきれない程の膨大な漆黒の、ドス黒いドロドロの暗闇が、瞳の奥で渦巻いている。
ラースに連れられてやって来た、高田だった。
『成程、尋常では無い量の闇を感じる……。我らセブンスターズに迎えるに相応しいだけの技量があるようだ』
『無論だ、我が島を駆け回って探しあてた逸材であるぞ?』
『ヌハ、ヌハハハハハ!』
『クク、クハハハハハ!』
互いに高笑いする2人分の声。周囲に邪悪な声が溢れる中、残る5人のメンツは新入りに対して眉を顰めていた。
「こんなありふれていそうな男がここまでの闇を。一体何があったのだ」
「さあ? ま、タイプじゃないのは確かだけどね」
「誰も其方の好みなど聞いてはおるまい。しかし誠に凄まじい闇だな」
「しかもアカデミアの生徒だ。こんな闇を持った者までいるとは、最近の若僧は物騒だな」
「おっさん臭いぞ……、実際おっさんだが。しかし実際、一番手を切る身としては気が重いな……」
皆が好き勝手言う中で、新たな仲間となった少年は最後のダークネスの言葉に敏感に反応した。
「おい、仮面のアンタ」
「私か」
「他に誰がいるんだよ。アンタがトップバッターだってのか?」
「そうだ。まずは私からだ。標的は赤い服を着た少年が2人いると言うからそいつらからだ。赤が一番ランクが低いからな」
「へぇ……。そいつについて、モノは相談なんだがよぉ――」
ダークネスに耳打ちする高田。それを聞いていたダークネスはふむ、と頷いた。
「ほう、赤の少年2人は最強レベル。故に人質を取ると……」
「認めたくねぇが、色で識別すると痛ェ目に合うってのも確かだ。だがこっちも負けるワケにゃいかねぇ。だったら、相手が全力出せないように人質でも取ってやろうって寸法よ」
「成程、妙案だ」
ニヤリ、と鋭利なフォルムの仮面の下から覗く口が歪む。
しかしそれはすぐに元に戻った。
「が、断る」
「何!?」
「確かに私は奴らを倒し鍵を集めるのが目的だ。だが、その途中にあるデュエルもまた目的なのだ。そんな全力の出せない弱い奴とデュエルしたところで、私の中の魂は満足などできない」
「チッ、とんだカス野郎だな。重要なのはクソ共をぶっ殺す事だろうが、勝つための手段を選んでる時点で負けてんだよ!」
「デュエリストとしての魂や誇りまで捨てた覚えは無い」
「ケッ! なら俺は俺でやらせてもらうぞ!」
そう言って高田は懐からカードを取り出し、笑った。
来る途中にラースから貰ったカードと、ここに来た時に老人の声から貰ったカードだ。
「これさえあれば、俺様は無敵だ……! 待ってろよクズ共め! この俺様が叩き潰して、元の栄光あるアカデミアの姿に戻してやる! 赤も黄色も女もいらねぇ! 至高の青で学園を染め上げて、貴様ら全員を奴隷みたいに使い捨ててやる!
そうだ、俺様は力を手に入れた! 誰ももう俺を見下したりしねぇ! 誰も俺を見捨てたりしねぇ! これでこの俺様こそが最強だ! 今まで散々この俺様をバカにしやがった奴らを全員叩き潰してやる! まずはテメェからだ、化物ぉ! テメェの周りから大切なモンを残らず奪って壊して、そんでテメェを大勢が見ている前でフルボッコにして汚名返上してやらぁ! 覚悟しろぉ!」
フハハハハハハハハハハハハ! と高田の笑い声が轟き響く。
暗闇の外、月夜の中、怪しげな計画が動き出す。七つの鍵をかけた最初の戦いは、もう翌日にまで迫っていたのであった……。
怪しい会議の翌日の夕方、レッド寮前。そこでは1つのデュエルに今、決着がつこうとしていた。
「俺は手札の『瀑征竜-タイダル』の効果発動。手札か墓地の同じ属性もしくは種族のモンスターを2体除外し、手札または墓地から特殊召喚できる。墓地のドラゴン族『ガード・オブ・フレムベル』と『仮面竜』を除外して特殊召喚!
続いて魔法カード『エクシーズ・レセプション』を発動。俺の場にいるモンスターと同じレベルのモンスター1体を手札から、攻守を0にし効果を無効にして特殊召喚できる。
俺は場のレベル7『瀑征竜-タイダル』を選択し、『焔征竜-ブラスター』を特殊召喚!」
『ゴガァァァァッ!』
『ブォォォォォッ!』
瀑征竜-タイダル:ATK 2600
焔征竜-ブラスター:ATK 2800→0
エクシーズ・レセプション
【通常魔法】
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターと同じレベルのモンスター1体を手札から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0になる。
「更に墓地の地属性『カードガンナー』とドラゴン族『仮面竜』を除外して『巌征竜-レドックス』を、墓地の風属性『マブラス』とドラゴン族『仮面竜』を除外して『嵐征竜-テンペスト』をそれぞれ手札と墓地から特殊召喚!」
巌征竜-レドックス:DEF 3000
嵐征竜-テンペスト:ATK 2400
場にゲートを潜って登場する、四元素を司りし巨大な竜の軍団。滝の如く流れる怒涛の水の力、噴火のように荒れ狂う灼熱の炎の力、恩寵を与える無限に広がる地の力、吹き荒び全てを削り破壊する風の力が、ドラゴンの姿となって現れる。
「れ、レベル7が一瞬で4体だって!?」
「これがフィールドを制圧するドラゴン、征竜の力だ」
デュエルをしているのはデュエルを申し込んで来たレッド生と我らが主人公、黎だ。
レッド生:LP 3400
手札:2枚
フィールド
:千年原人(ATK 2750)、ダンジョン・ワーム(ATK 1800)
:伏せカード1枚、メテオ・ストライク(装備魔法・『千年原人』に装備)
黎:LP 500
手札:0枚
フィールド
:瀑征竜-タイダル(ATK 2600)、焔征竜-ブラスター(ATK 0)、巌征竜-レドックス(DEF 3000)、嵐征竜-テンペスト(ATK 2400)
瀑征竜-タイダル(効果モンスター)
星7
水属性/ドラゴン族
ATK 2600/DEF 2000
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族または水属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと水属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、デッキからモンスター1体を墓地へ送る。
このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・水属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
「瀑征竜-タイダル」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
焔征竜-ブラスター(効果モンスター)
星7
炎属性/ドラゴン族
ATK 2800/DEF 1800
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族または炎属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと炎属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・炎属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
「焔征竜-ブラスター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
巌征竜-レドックス(効果モンスター)
星7
地属性/ドラゴン族
ATK 1600/DEF 3000
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族または地属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと地属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、自分の墓地のモンスター1体を選択して特殊召喚する。
このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・地属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
「巌征竜-レドックス」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
嵐征竜-テンペスト(効果モンスター)
星7
風属性/ドラゴン族
ATK 2400/DEF 2200
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族または風属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと風属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、デッキからドラゴン族モンスター1体を手札に加える。
このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・風属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
「嵐征竜-テンペスト」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
「で、でもそのモンスター達じゃあオレの『千年原人』には勝てないぞ!」
「なら、勝てるモンスターを用意すれば良いだけの話だ。俺は、レベル7の『タイダル』と『ブラスター』で、オーバーレイ! 2体のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築!」
黎の掛け声に合わせて水の竜が青、炎の竜が赤の光に姿を変え、螺旋を描いて空高くへと飛び上がって行く。そしてそのまま上空で折り返し、地面に生まれた赤い銀河の二重円の渦へと飛び込んで行った。
☆7×☆7=★7
「エクシーズ召喚! 現れろ、『No.11』! 幻惑の瞳を持つ支配者、『ビッグ・アイ』!」
生まれるのは、巨大な眼球。そこから延びる鮮血の色をした視神経に白い球体が次々に集まり、逆円錐の形を作り上げ、名前通り大きな瞳を持った不気味な無機物のような生命へと姿を変えた。
No.11 ビッグ・アイ:ATK 2600
「攻撃力2600ぅ? お前計算もできなくなっちまったのかよ?」
「慌てるな、何も攻撃力で勝つとは言っていない。続いてレベル7の『レドックス』と『テンペスト』でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
先程と同じように、地の竜が橙、風の竜が緑の光となって螺旋を描き、銀河の渦の中へと突っ込む。
☆7×☆7=★7
「エクシーズ召喚! 出撃せよ鋼の龍、『幻獣機ドラゴサック』!」
幻獣機ドラゴサック:ATK 2600
続いて空を切って現れるのは白い戦闘機。亀と竜を足して2で割り、そこに飛行機の要素を取り入れたような巨大な戦闘マシーンだ。
No.11 ビッグ・アイ(エクシーズ・効果モンスター)
ランク7
闇属性/魔法使い族
ATK 2600/DEF 2000
レベル7モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターのコントロールを得る。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。
幻獣機ドラゴサック(エクシーズ・効果モンスター)
ランク7
風属性/機械族
ATK 2600/DEF 2200
レベル7モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
自分フィールド上に「幻獣機トークン」(機械族・風・星3・攻/守0)2体を特殊召喚する。
自分フィールド上にトークンが存在する限り、このカードは戦闘及びカードの効果では破壊されない。
また、1ターンに1度、自分フィールド上の「幻獣機」と名のついたモンスター1体をリリースして発動できる。
フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。
「だから攻撃力が……」
「物覚え悪いな、お前。攻撃力は飾りだっての。『ビッグ・アイ』の効果発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手モンスター1体のコントロールを奪う! “テンプテーション・グランス”!」
大きな目の瞳孔が開き、怪しい光線を放つ『ビッグ・アイ』。その光にあてられた青い原人は、のそのそと歩きながら黎の場へと移動した。
「何、オレのモンスターが!?」
「これで『千年原人』は頂いた。ただしこの効果を使ったターン、『ビッグ・アイ』は攻撃できない。
更に『ドラゴサック』の効果発動。オーバーレイ・ユニットを1つ使って、俺の場に『幻獣機トークン』を2体生み出す!」
幻獣機トークン:DEF 0
幻獣機トークン:DEF 0
「そして『ドラゴサック』第二の効果! 自分の場の“幻獣機”と名の付いたモンスターを1体リリースし、相手の場のカードを1枚破壊しつつ、このターン自身の攻撃を封じる。トークン1体をリリースし、その伏せカードを破壊する! “ドラグ・エアレイド・ボム”!」
「『ミラーフォース』が!?」
続いて場に半透明の戦闘機が現れる。2機あった内の片方が母艦である『ドラゴサック』へと溶け込み、爆弾に姿を変えて降り注ぐ。灼熱と爆風に煽られた赤いカードは、それによって木端微塵になってしまった。
「で、でもよぉ、お前のモンスターは2体とももう攻撃できねぇんだろ? だったらまだ勝負はついて……」
「俺はオーバーレイ・ユニットとして墓地に送られた『焔征竜-ブラスター』の効果発動」
「何!?」
「本来征竜の効果は1ターンに1度きり。だがこのターン、『ブラスター』は破壊、サーチ、特殊召喚のどの効果も発動していない」
「しまった!?」
「墓地の炎属性『クィーン・ドラグーン』とドラゴン族『レドックス』をゲームから除外し、墓地からこのカードを特殊召喚!」
『ブォォォォォッ!』
焔征竜-ブラスター:ATK 2800
翼を広げ、再び現れる灼熱の火炎竜。これで黎の場のモンスターの攻撃力の合計値は5550ポイント。
相手の場にいるのは攻撃力1800のモンスター1体のみ。伏せカードも無い。
「げげげ、オレの負けかぁ……。不調って聞いたから勝てるかもって思ったんだけどなぁ……」
「ハハ、これだけやれりゃあ十分だよ。ナイスファイトだ」
「おうよ! また頼むぜ! 次は負けねぇからな!」
「受けて立とう。それじゃあ、バトル! 『千年原人』で『ダンジョン・ワーム』を攻撃!」
「ううっ!」
レッド生:LP 3400→2450
「そして『ブラスター』でダイレクトアタック! “ヴォルケーノ・ブラスト”ォ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
レッド生:LP 2450→0
黎:WIN
レッド生:LOSE
「黎、調子戻って来たんじゃない?」
デュエル終了後、傍らで観察していたフィオが近寄って言った。
昨日のようなプレミもほぼ無く、淀みの無いデュエルを黎はできた。復活とは行かなくとも、小康状態とは言えるのではないだろうか。
だが黎は、黙って首を横に振る。
「え?」
「【征竜】は環境トップ、つまり最強に名を連ねた事のあるデッキだ。下手な事しない限り何度でもハイパワーなドラゴンが飛んでくる以上、こいつで勝てたぐらいでは復調とは言い難い。コンスタントにベタな勝利くらいはできても、こんな程度で本調子と言い張れるような腕は持ってないよ」
「そっか……」
「それに、これはエクシーズ召喚のデッキだ」
アカデミアで生活する中で、黎は1つの縛りを自分に課した。
即ちシンクロやエクシーズ、そしてそれに関連するカードは、この時代に生きている人達には使用しないと。
シンクロもエクシーズも未来のカード、それを使うという事は彼らの知らない・到達していない境地にあるカードで捻じ伏せる事を意味する。相手が悪党ならさて置き、それ以外が相手ではハンデが大きすぎてデュエルが成立しないと黎は考えており、それ故に彼は自分自身の意志でそれらを使う事を控えていた。
「でもまあ、昨日よかマシだ。心配してくれてありがとうな」
「ん……」
わしゃわしゃとフィオの頭をちょっと荒っぽく撫でる黎。フィオは猫か犬のように気持ち良さそうに目を細め、胸元の黎から預かった鍵がキラリと光る。
その光景を陰で密かに3人の精霊が見守っていたのだった。
『少しは、元気を取り戻したみたいだな』
『……やっぱり、暗い顔より明るい顔の方が好き』
『ま、辛気臭い状態よりかはマシですしね』
『ところでフレイ、お前主殿に何かしたか?』
『……あの場で、貴女だけサーのトコに残ってた』
『はて、何の事でしょう』
「って、子供扱いするなぁ!」
「ハッハッハ! ほれ、かいぐりかいぐりっと」
「だからぁ、ふにゃ~……。……ハッ!? レ~イ~!」
「アッハッハッハッハ!」
その晩、黎は部屋でデッキを編集していた。
彼の身の回りには、目算でも50以上の数のデッキがある。その全てが戦略に基づき、勝ち筋を複数持ったデッキだ。
「【征竜】、【ラヴァル】、【海皇水精鱗】、【幻獣機】、【甲虫装機】、【次元ダーク】、【クイダンデブジャンド】、【バイスリゾネーター】、【植物パーミ】、【ロックバーン】、【デッキデス】、【ジェネクス】、【4軸ガガガ】、【ゴゴゴアンデ】、【電池メン】、【BF】、【チェーンバーン】、【カオスロード】、【フォトン】、【ヒーローアライブ】、【ダーク・ガイア】、【アイスカウンター】、【ディフォーマー】、【カオスドラゴン】、【スキドレ墓守】、【シンクロダーク】、【インフェルニティ】、【上級スピリット】、【霞の谷の神風】、【スクラップ】、【エレキ】、【ワーム】、【νサイキック】、【8軸リチュア】、【10軸リチュア】、【スタンダード】、【ドラグニティ】、【除外海産物】、【BK】、【ダムドビート】、【フルバーン】、【炎星】、【フルバーン】、【A・O・J】、【墓地BF】、【デュアル】、【獅子黄泉帝】、【スキドレバルバ】、【バスター・モード】、【エンディミオン】、【獣ジャンク】、【暗黒未開域魔轟神】、【マシュ=マック】、【デーモン】、【アロマダムルグ】、【マシンガジェット】、【フレムベル】、【ナチュルパーミ】、【レスキュー・ラビット】、【六武衆】……」
名前を確認し、デッキをマルチで脳内で動かしていく。今、黎には精霊の力が無い。もし何かあった時に確実に相手を叩き潰せるだけの力が無ければ未来は無い。多少負担を頭にかけてでも、今は自分をギリギリまで強化するべきなのだ。
ジリジリと脳内のシナプスが焼けるような感覚を覚えながら、黎は必死にデッキを回す。
(まだだ、まだ足りない。あの時、フレイとのデュエルの終盤で、俺は何かを知って体感した。あれを常に引き出せなければ、俺はまた負ける。もう負ける事は許されない、次こそ『ジョーカー』に勝つためには、あの感覚を俺のモノにしねぇと……)
だがやり方が分からない。故にこんな無茶苦茶なやり方をしているのだ。
(デッキ1、墓地から『ゴーズ』と『ライコウ』を除外して『カオス・ソーサラー』を特殊召喚。効果で相手の『ダーク・アームド・ドラゴン』を除外しつつ、場の『エレキテルドラゴン』とオーバーレイ。『トレミス』をエクシーズ召喚。
デッキ2、トークンをリリースして『ライザー』をアドバンス召喚。『デモンズ・チェーン』を回収。更に『ダーク・コーリング』を発動。墓地の『ガイウス』と『グランマーグ』を除外し、『ダーク・ガイア』を融合召喚。
デッキ3、『ピンポイント・ガード』を発動し、墓地から『エレキングコブラ』を蘇生。これで相手の『ジェネシス・デーモン』の攻撃をガード。次のターン、『エレキングコブラ』でダイレクトアタック。相手ライフ残り500ポイント。
デッキ4、手札から『ブラウ』を召喚し、手札に戻して墓地の『グラファ』を特殊召喚。攻撃。『魔法の筒』で妨害発生。罠カード『魔のデッキ破壊ウイルス』をチェーン。相手攻撃力1500以下を3ターンの間破壊し続ける。
デッキ5、レベル1の『チューニング・サポーター』にレベル5の『クイック・シンクロン』をチューニング。『ドリル・ウォリアー』をシンクロ召喚。1枚ドロー。攻撃力を半分にしてから『シンクロ・ストライク』を発動。攻撃力2200で直接攻撃。
デッキ6、『マシュ=マック』の効果。『ミニマム・ガッツ』の効果で攻撃力が0になった『マシンナーズ・フォース』を対象に……)
背中と額を嫌な汗が流れ、呼吸が乱れ始める。精神力をガリガリ削っての荒行だ、常人なら5分も続けられない。黎だからこそできる荒業である。
本来なら人間の脳は2つも3つも同時に思考する事はできない。それを彼は自身の異能の力で脳を自己改造し、可能にしていた。無論、肉体に返って来る反動は全て無視して。苦しい、気持ち悪い、だがそれがどうしたと不調を抑え込み、脳内でのシミュレートを繰り返し続ける。脳の悲鳴を意志の力で抑え込みながら。
吐き気を覚え、瞑っているはずなのに眩暈を感じたその時だった。
「こーら、またそうやって無茶する」
ポン、と背中を誰かに叩かれた。途端に呼吸が落ち着き、グラついていた感覚が元に戻る。
振り返ると、そこには2人の女性。見慣れた明るいセミロングの茶髪。そして青い同じくらいの長さの髪。フィオとフレイがいた。
「駄目だぞ、黎。そうやって体ギリギリまで追い詰めたって、スポーツの特訓じゃあるまいし、君の体を壊すだけだ」
「ただでさえボロボロなのに、これ以上体を壊してどうするんですか。もうあの薬はリスク無しじゃ使えないんですよ」
「……、悪かった」
静かに頭を下げる黎。が、すぐに別の事に気付き顔を上げた。
「ってか、こんな夜更けに女が男子寮に来るのもどうかと思うんだが」
「大丈夫、フレイに頼んで色々誤魔化してもらったから」
「いや、男ばっかのトコってのが問題なんだが」
「桜さんとポーラがいるじゃん」
「だからここは男子寮で」
「そう固い事言うものでも無いぞ、主殿」
「……そもそも私達を同じ部屋に泊めてる時点で、説得力が無い」
机の上のカードから桜とポーラが実体化し、フィオの援護に回る。
お前ら寝る時とかカードだろう、とか突っ込みたかったが、泥沼になりそうな気がして止めた。
「で、何の用だ?」
「いやね、フレイが変な気配を感じたって言うから、君のトコに来たんだよ」
「変な気配?」
「ええ。プライドと少し似てますけど、まるで異質なんです。そう、見た目が似ているだけで中身が違う、『クリボー』と『屋根裏の物の怪』みたいな、たこ焼きとプチシューみたいな……。すみません、上手い例えが思い付かなくて」
「見た目だけ似ていて中身は違う……」
フレイの例えはさて置き、黎にはその気配の正体に1つだけ心当たりがあった。
先日、島の中で一瞬感じ取った邪神の気配。あれが何か関係しているのでは無かろうか?
それにセブンスターズの情報をこれまで集め続けているのだが、7つの星を名乗っておきながら、それらしい情報は今、6人分しか入っていない(タイタンに連絡を取ってみたが、今彼は手品師として各地を回っているらしく、候補から除外された)。となると恐らく、最後の1人は現地調達、最悪残りの護衛が手を貸している可能性まで出て来る。
その件を余す所無く、黎は皆に伝えた。
「成程、それは十分に考えられますね。もしかしたら、もうすぐそこにいるかも知れません」
「現地調達か……。鬱陶しいくらい下らない人間は、残念ながらブルーに掃いて捨てる程いるからな」
「……少なくとも、警戒は必要。……最悪、親しい誰かが相手をする可能性もある」
「別にわたしは誰が来てもそう易々と負けるつもりは無いけど、流石に護衛レベルは不安だね……」
むむむ、と4人が唸る中、黎はデッキを幾つかホルダーに収納した。
彼のおぼろげな原作知識の中では、最初の相手ダークネスは、鍵を渡した日の夜にやって来た。しかしそれはもう一週間近く前の事だ。それでも未だに動きは無い事に不気味さを黎は覚える。
明日香やカイザーは警戒を怠っていないし、大地もまた敵の策かと踏んでいる。一方で十代やサンダーあたりは呑気なもので、「俺に恐れをなしたか」とのたまっている始末である。
だが何時までも襲撃無しではいられないだろう。何時連中がやって来てもおかしくない。だからこそ、完成度を完璧に可能な限り近づけ、誰であろうとも勝てる可能性をギリギリまで上げたデッキをいくつも用意しているのだ。
(後は俺が、プレミさえしなければ……)
神妙な表情で左腕に装着したディスクを見つめる黎。その姿は、これまでのどんな姿よりも遥かに重く冷たく苦しそうなものだった。
まるで今にも潰れそうで、誰にも言えない責任に殺されそうで。そんな儚げで悲しげな姿に、フィオは思わず正面から彼に力強く抱き着いた。
「フィオ……?」
「大丈夫」
「え?」
「君はわたしが守る。何があっても、絶対に、傷つけさせたりしない」
ギュッ、と抱き着くフィオの体温が黎に伝わった。
「……」
何時以来だろうか、他人の体温をこんな近くに感じて、それを愛しい、失いたくないと思ってしまったのは。そんな自分を、嫌だと思えないのは。
そうだ、都が泣いて眠れない夜もこうだった気がする。フィオと都、2人は見た目も性格もまるで違うのに、どうしてこうも重なってしまうのだろうか。それは黎には分からなかった。
それでも、目の前にいるこの少女を大切にしたくて、黎はそっと少女を抱擁した。
その瞬間、眩い光が周囲を包み込んだ。
「え!?」
「何だっ!?」
「マスター!」
「主殿!」
「……2人とも!」
転移魔法の陣がこの部屋の床いっぱいに描かれていると分かった時にはもう遅い。黎ですら目を開けられない程のフラッシュが部屋を満たしたのだった。
目も眩む閃光は、やがて静まる。そしてその時になって気付いた。腕の中にあった温もりが、無い……!
「フィオがいない!」
「フレイもいないぞ!」
「……2人とも、どこへ……!?」
慌てふためく3人。やがて十代の部屋でも同じような事が起きていた事を、数分後に知る事となるのだった。
SIDE:フィオ
黎の部屋にフレイと一緒にいた、筈だった。
でもいきなり強い光に包まれ宙に浮かぶような感覚を味わった後、気付けばわたしはどこか違う場所にいた。
「フレイ、いる?」
「はい、ここに! どうやら敵の手によって強制的に転移させられたようです!」
良かった、取り敢えず独りじゃあ無いらしい。
周囲を注意深く見回すと、どうやらここはアカデミアの火山の山頂近くらしい。満月の星空の下でも電球の下のように明るいのは、マグマの赤い熱の光が届いているからか。ご丁寧に靴もちゃんと履かされている。
道が整備されているし学校もあるから噴火の恐れはまず無いんだろうけど、流石にここまで近いとなるとやや不安だ。それと熱い。
「一体誰がこんなトコにわたし達を……」
「それなんですが……」
フレイがぬっと指でとある方向を指し示した。
「恐らくあの方ですよ。転移時に魔法陣から漏れていた魔力の波長が完全に一致します」
そこにいたのは、見慣れたオベリスクブルーの制服を纏った男子がいた。右腕にはエジプトのウジャド眼をモチーフにしたブレスレットが着けられていて、暗めの茶髪をオールバックに纏めている。
それだけならどこにでもいそうな感じの男子だけど、全身からはまるで泥のような暗い気配が漂っており、ここから見える瞳には復讐とか、憤怒とか、そんなネガティヴな感情が凝り固まった漆黒のエネルギーが渦巻いていた。
わたしはその男子に見覚えがあった。過去何度かわたし達ブルー女子とも対立し、あの大がかりなブルーとの戦いの中で黎と戦った、最近落第が噂されている少年。
「君は、高田君か……!」
「ククククククククク……! 精霊ごと引っかかったみてぇだな」
そう、彼だ。いけ好かない、ブルーの中でも特に他人から嫌われている男子。
でも彼は精霊が見えなかったはず。フレイや桜さん、ポーラが隣にいても前にいても何の反応も示さなかったのに……。
「マスター、気を付けて下さい。もしかしたら、数日前に現れたという邪神の護衛が接触したのが彼なのかも知れません」
「!」
もしそうだとしたら、マズい。一体どれだけのパワーアップがされているのか分かったものじゃ無い。
神妙に構えるこちらを見て、高田君は嘲笑った。
「ンだよ、鍵持ってる化物を釣ったつもりが、持ってンのはテメェらかよ、腰巾着とその精霊」
「腰巾着……」
「ケッ、あのクズをこの力で叩き潰してやるつもりが、テメェからとはな。……まあいいや、どの道、あいつはただじゃあ殺すつもりはネェ、まずはテメェからだ!」
殺す。今こいつはそう言った。シャレでも脅しでも無い、恐らく本気の、本音の一言だ。
「へぇ、黎を殺す、か……」
「おうよ。つってもただ殺すだけじゃねぇ。生まれて来た事を後悔するぐれぇ無惨に、無慈悲に、徹底的に、完膚無きに打ちのめして、絶望に涙しているあいつを見下して、それからジックリと時間をかけてぶち殺してやるのよ! 楽には死なせねえぜぇ?」
「君は……、黎に何をするつもりだ! 彼はこれまでずっと苦悩と痛みの中にいたってのに、君なんかに黎の命を奪う資格があるとでも言うのか!」
「資格ぅ~? ギャッハハハハハハハハハハ! バカじゃねぇの!? そんなモン誰にもありゃしねぇんだよ! ただ殺したいから殺す! たったそんだけなんだよ! 憎いから、恨めしいから殺す! 人間ってのはそんなモンだろう? あいつだってそうなんだろ!? あいつだって邪魔で鬱陶しい敵を、憎いから殺した! 話は聞いたんだぜ!」
こいつ……、黎が怒りや憎しみだけで人を殺したと思ってるのか!?
ふざけた事を! 黎は大切な家族を守るためにその手を汚したんだぞ! お前なんかと一緒にするな!
「ハァ? 何カッコいい事言っちゃってるんだお前? アレか? あのカス野郎に変な妄想でも抱いてるのか? うわマジで受けるぜ! 所詮テメェも、あの化物に騙されてるんだよ! あいつは人を騙してその中に溶け込んで、殺す機会をじっと待ってる最低のクズモンスターなんだよ!」
「黙れ! お前に黎の何が分かる! 何かを理解しようともしていないお前に、黎を貶す権利なんて無い!」
「ギャハハハハハハハ! 理解~? したくもネェなぁ! 俺様は栄光あるオベリスクブルーの選ばれし人間様だぜぇ? あんなゴミみてぇなクズレッドの化物の事なんざ理解したら、俺様の格が下がっちまうぜ!」
「お前……! それがお前を落第寸前にまで追いやったってのがまだ分からないのか! そんな風に他人を排斥し続けるから友達も誰もかも離れていって独りになるんだ! 誰にも何も与えない奴は、誰からも何も貰えなくなる! だから白石君もクロノス先生も、もうお前の味方なんかじゃ無いんだぞ!」
「そいつは結構! 元々この俺の事を理解できねぇ奴は皆カスだ! 生きてる価値も無い! そんな奴はこの俺様がアカデミアの最強に返り咲いた暁にはボロボロになるまでぶちのめしてアカデミアから、いや人生そのものから叩き出してやる! 今こそ、俺様最強伝説が幕を開けるのさぁ! ギャアッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハァ!!」
チッ、駄目だ。こっちの言葉がまるで通じてない。こいつの中じゃあもう、こいつ以外の人がいないんだ。だから平気で他人を追い出して高笑いできる。
あまりにも哀れ。あまりにも愚か。こんな奴に、黎が負けちゃいけない。
ギリ、と奥歯を軋ませながら、わたしはペンダントみたいに首から下げた鍵を手に取って持ち上げた。
「……高田。お前はこの鍵が目当てでわたしをここに呼び出したんだろう?」
「ギャハハハ! そんな感じだ。まあ、鍵はおまけだがな!」
「おまけ……?」
「おうよ! 俺様の目的は復讐だ!」
復讐、だって?
「俺様は入学当初は栄えあるブルーの一員、いずれはカイザーをも凌ぐ実力を持った、次世代のカイザーになる予定だったのよ。だがそれがどうだ!? あの忌々しい化物のせいで成績も実技もどん詰まり! 輝かしい俺のロードはどんどん離れていっちまう! 挙句の果てにはイエローに降格と来た! それもこれも、全部あのクソが現れたからだ! 化物が人間様の世界に現れて好き勝手やっているからだ! だから決めたんだよ! あいつの大事にしてるモンを残さず叩き壊して、あいつが絶望するサマを見届けながら殺してやるってな!
以前の俺ならそんな事もできなかっただろうが、今の俺には力がある! あいつをぶち殺せるだけの圧倒的な力が! クソはクソらしく、場末のごみ溜めでハエと戯れてるのがお似合いなんだよ!」
「お前、いい加減にしろよ! そんなの逆恨みも良い所じゃないか! あいつは今、色んな人のために文字通り骨身を削って戦ってるんだぞ! 恩を仇で返す気か!」
「ギャハハハハハ! 知った事じゃねぇなぁ! 俺があいつを憎んでるから殺すんだよ! 他人がどうだろうと関係ネェ! 恨むんなら、俺様に恨まれるような事をしちまったあいつを恨めよ! 歴史にもあるだろ? 王様や貴族の機嫌損ねて首刎ねられたっつーバカみてぇな話がよぉ! ブルーは貴族! それ以外は全部クズだ! テメェらの生殺与奪の権利はこのオベリスクブルーにあるんだよ!」
「法治の行き届いた今の世に、人の命をどうこうする権利なんて誰にも無い! 弱肉強食の世界でもあるまいし、人が人を殺す事は死刑以外ではあってはならない! そして裁判で死刑があるのは犯した罪を罰するためだ! 生きていては償えない罪があるからこそ、当人の命を以て償わせるんだ! それ以外に人が人の命を奪って良い条件なんて存在してはいけない!」
「ならあいつも罰せられるべきだよなぁ! なんたってこの俺様の立ち位置を悪くしちまったんだ! その罪は万死に値する! ただ殺すだけじゃ足らねぇ! あいつの大切なモン全部あいつの目の前で叩き壊してやるぜ! そうすりゃあ万死にはならなくても五死ぐらいにはなるかもな!」
ああもう! ああ言えばこう言う奴だ!
こんな堂々巡りみたいな事をしていたら夜が明けてしまうよ!
「もう良い! お前の屁理屈は沢山だ! これ以上聞いていたら気が狂っちゃうよ!」
そう言って腰のホルスターからカードの束を取り出してディスクに差し込む。デッキに反応したディスクに電源が入り、手元のスイッチを押すとブレードが展開してデュエルモードに変形した。
「ここでお前を倒す! 黎には手を出させない!」
「ギャハハハハハハハハハハ! この俺とデュエルかぁ!? 身の程を教えてやるぜクズ女! 俺様はセブンスターズの高田順二朗! まずはテメェを捻り潰してあのゴミを地獄へ叩き落としてやる!」
「わたしはオベリスクブルー1年女子、神山フィオ! お前なんかに負けるものか!」
「その精霊、『勝利の導き手フレイヤ』のフレイ! 黙って聞いてましたが、貴方は極めて身勝手です! 貴方なんかが真の強さを手に入れられるものですか!」
「ギャハハハハハハハ! 行くぜぇ!」
「フレイ、行くよ!」
「はい!」
『デュエル!』
高田 VS フィオ
LP 4000 VS LP 4000
「先攻は俺様が頂くぜ、ドロー! 俺は『シャインエンジェル』を召喚!」
シャインエンジェル:ATK 1400
高田が最初に呼び出したのは天使族のリクルーター。光属性サーチの能力を持っていたはずだ。
こんな所でわたしは負けられない。ここでこいつを叩き潰さないと、わたしは黎に顔向けできない!
「更に手札からフィールド魔法『幻魔の王城』を発動だぜぇ!」
続いて発動するフィールド魔法。途端に火口への道だった周囲は、不気味な色を醸し出す巨大な城塞となった。わたし達は周囲を城壁に囲まれ、頭上高くに時計塔がある事を踏まえると、今いる場所は多分この城の中庭あたりか。
「このフィールドは一体……!」
『マスター、気を付けて下さい。凄まじく嫌な予感がします……!』
デッキから現れ半透明の姿で呟くフレイ。不気味なのはわたしの気のせいじゃ無いみたいだね。
「ククク、俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」
高田:LP 4000
手札:3枚
フィールド
:シャインエンジェル(ATK 1400)
:伏せカード1枚、幻魔の王城(フィールド魔法)
「わたしのターン!」
でも、どんなカードを敵が使って来ようとも、わたしのデュエルスタイルは変わらない!
「私は手札から『ヘカテリス』の効果発動! このカードを手札から捨てて、デッキから『神の居城-ヴァルハラ』を手札に加える!
更に魔法カード『トレード・イン』を2枚発動! 手札からレベル8の『堕天使スペルビア』と『The splendid VENUS』を墓地に送って4枚ドロー!」
ヘカテリス(効果モンスター)
星4
光属性/天使族
ATK 1500/DEF 1100
このカードを手札から墓地へ捨てて発動する。
自分のデッキから「神の居城-ヴァルハラ」1枚を手札に加える。
良し! 中々の手札!
「手札から永続魔法『神の居城-ヴァルハラ』を発動! 1ターンに1度、自分の場にモンスターがいない時、手札から天使族モンスターを1体特殊召喚できる! わたしは手札から『光神機-轟龍』を特殊召喚!」
『GAAAAAAA!』
光神機-轟龍:ATK 2900
赤い垂れ幕を通して登場するこっちのトップバッターは、長い胴体とドラゴンの頭を持った白い天使。貫通能力を持った優秀なモンスターだ。
神の居城-ヴァルハラ
【永続魔法】
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札から天使族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
光神機-轟龍(効果モンスター)
星8
光属性/天使族
ATK 2900/DEF 1800
このカードは生け贄1体で召喚する事ができる。
この方法で召喚した場合、このカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。
また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
「高田ぁ! お前が何を企んでいるかは知らないけど、ここでその企みは阻止させてもらう!」
「ハッ! やれるモンならやってみろ!」
「やってやるさ! バトル! 『轟龍』で『シャインエンジェル』を攻撃! “シャイニング・キャノン”!」
頭の先に光の砲弾を生み出し、射出する『轟龍』。これが決まれば1500ダメージだけど……。
「そうはさせるか! 永続罠『スピリットバリア』を発動! 自分の場にモンスターがいる時、俺は戦闘ダメージを受けない! ダメージは戦闘破壊の前に入る! モンスターが1体でもいれば、そいつとの戦闘ダメージであっても俺はダメージを受けないぜ!」
「それでも『シャインエンジェル』は破壊だ!」
スピリットバリア
【永続罠】
自分フィールド上にモンスターが存在する限り、このカードのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。
光の砲弾によって瞬時に蒸発する4枚羽の男天使。しかし衝撃波は半透明のバリアによって阻まれた。
やはり、そのカードを伏せてあったか。彼はこうやってリクルーターでダメージを最小限に削り、『ライトニング・ボルテックス』で場を薙ぎ払ってモンスターの総攻撃を仕掛ける。もしくは『残骸爆破』を連続で決めて無理矢理削り取る。正直言って長期戦を前提とした気の長い戦術。
対し、わたしは違う。重量級の天使族を軸に、カウンター罠や魔法を叩き込むパワー&トリックの戦術。キーカードが手札に来ればあんな専守防衛の戦い方を崩す事は容易い。
「さあ、『シャインエンジェル』の効果を使いたいなら使えば良い!」
「おう、使わせてもらうぜ! 俺は効果でデッキから『シャインエンジェル』を新たに特殊召喚だぜぇ!」
光のゲートに導かれ、素足の4枚羽天使が再び姿を現す。
そんな事をしても無駄だ! たかが攻撃力1400のモンスターで、わたしの上級天使が負けるわけが無い!
シャインエンジェル:ATK 1400→1900
え!?
「攻撃力が上がった!?」
「こいつがフィールド魔法『幻魔の王城』の効果だ! デッキから特殊召喚された元々の攻撃力が1500未満のモンスターは、攻撃力が500ポイントアップする!」
成程、リクルーターの攻撃力はほぼ1400。これならどいつも下級アタッカーになれるってワケか……!
しかしそれでも攻撃力は1900、『轟龍』の足元にも及ばない。なのにわざわざこのわたしにケンカ売って来たって事は、何か策があるって事か……。
ならここは……。
「わたしはモンスターを裏側守備表示で召喚し、ターンエンド!」
フィオ:LP 4000
手札:3枚
フィールド
:光神機-轟龍(ATK 2900)、セットモンスター1体
:神の居城-ヴァルハラ(永続魔法)
伏せたモンスターの守備力は1900より高い。これならこの戦線を突破する事は難しいはず……!
「俺様のターン、ドロー! ケヒヒヒ、教えてやるぜ、このフィールド魔法の真の恐ろしさを!」
「何だって!?」
「こいつはただの強化魔法じゃねぇって事だ! 俺はモンスターを召喚するぜ! こぉいつだぁ! 『コーリング・ノヴァ』を攻撃表示で召喚だぜ!」
コーリング・ノヴァ:ATK 1400
今度は羽の生えたクリスマスリースのような天使族リクルーター……。でも攻撃力1400で何を……。
「更に俺は『幻魔の王城』の効果発動! 1ターンに1度、俺様の場のモンスター1体の持つ属性を1つ選び、それと違う属性のモンスターのこのターンの攻撃を封じる!
バトル! 『シャインエンジェル』で『轟龍』を攻撃! “エンジェルス・ラリアット”!」
「迎え撃て! “シャイニング・キャノン”!」
筋肉質な右腕での打撃を目論んで突進して来る天使。こちらも光の砲弾を放って応戦する。
攻撃力の差は明確のはず……。一体何を?
『マスター、あれ!』
「な!?」
フレイが横から指を差す。それを見た途端、わたしは息を呑んだ。
『トォォォ、ハァッ!』
『GYUUUUUUUUUUU!?』
なんと高田の天使が光の弾を突き抜け、その腕でわたしの天使を粉砕したのだ。
「きゃあっ!?」
フィオ:LP 4000→3100
全身を突き抜ける衝撃。内臓を直接プロボクサーの拳で殴られて圧迫されたかのようなショックに、一瞬だけ呼吸が止まる。
「ケヒヒヒ、どうだ、闇のゲームの味は?」
「…………っ!」
これが、黎の体験していた闇のゲーム……。こんな衝撃をライフが尽きるまで浴びていたら、並みの人間じゃあ死んでしまう……! 君はこんな無茶を続けていたと言うのか!
でも今は、それよりも何故攻撃力で勝るわたしのモンスターが破壊されたかの方が重要だ。
一体何が……。
「ギャハハハハハハ! 何が起きたか分からねぇってツラだな! 俺様の『シャインエンジェル』の攻撃力を見てみな!」
「何……!?」
シャインエンジェル:ATK 3800
「こ、攻撃力3800!? さっきの2倍じゃないか!?」
「そうだ! これが『王城』の第2の効果! 選択した属性のモンスターが同じ属性のモンスターとバトルする時、その攻撃力はバトル終了時まで2倍になる!」
2倍……、それで攻撃力が1900から3800に上がったという事か……!
マズいね、こっちのターンじゃ『スピリットバリア』に阻まれてダメージは通らず、あっちのターンでは攻撃力を2倍にされて撃ち落とされる。これまでの防御主軸の戦い方じゃない、攻めて攻めて攻め落とすガッツリした攻撃型のデッキになっている!
「更に『コーリング・ノヴァ』で裏守備モンスターに攻撃ィ!」
突進して来るクリスマスリース型モンスター。それに合わせてわたしのモンスターが表側表示になる。
セットモンスター → ハープの精:DEF 2000
「光属性だな! なら『コーリング・ノヴァ』の攻撃力も2倍だぁ!」
コーリング・ノヴァ:ATK 1400→2800
突進に跳ね飛ばされ、黄色のローブを身に纏ったハープ引きの女性が倒れる。
く……、下級モンスター、しかもリクルーターに守備力2000の壁をこうも易々と突破されるなんて!?
ハープの精(通常モンスター)
星4
光属性/天使族
ATK 800/DEF 2000
天界でハープをかなでる精霊。
その音色はまわりの心をなごます。
「ギャハハハハ! 俺様はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」
高田:LP 4000
手札:2枚
フィールド
:シャインエンジェル(ATK 1900)、コーリング・ノヴァ(ATK 1400)
:伏せカード1枚、スピリットバリア(永続罠)、幻魔の王城(フィールド魔法)
「わたしのターン、ドロー!」
『マスター、このフィールドと言い、あの男の気配と言い、尋常では有りません』
「分かってる。でも、負けるわけにもいかない。全力で行くよ!」
『はい!』
「わたしは手札から魔法カード『強欲な壺』を発動! デッキからカードを2枚ドロー! 続いてわたしは『ヴァルハラ』の効果発動! カモン、『アテナ』!」
アテナ:ATK 2600
「更に手札から『勝利の導き手フレイヤ』を通常召喚! 頼むよ、フレイ!」
「任せて下さい!」
勝利の導き手フレイヤ:ATK 100
「その効果により、わたしの場の天使族がパワーアップする!」
「行きますよぉ!」
アテナ:ATK 2600→3000
勝利の導き手フレイヤ:ATK 100→500
わたしの場に現れる、小さな盾を持った戦女神と、パートナーでもあるチアガール風天使。
ここからがわたしのデッキの本領発揮だ!
「この瞬間、『アテナ』の効果発動! 天使族モンスターが現れる度に、相手に600ポイントのダメージを与える! “アサルト・シャイン”!」
戦女神の右手の槍が光り輝き、相手を突き刺さんとビームを放つ。
これでまずはジャブをお見舞いしてやる!
アテナ(効果モンスター)
星7
光属性/天使族
ATK 2600/DEF 800
1ターンに1度、「アテナ」以外の自分フィールド上に表側表示で存在する天使族モンスター1体を墓地へ送る事で、「アテナ」以外の自分の墓地に存在する天使族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
フィールド上に天使族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、相手ライフに600ポイントダメージを与える。
勝利の導き手フレイヤ(効果モンスター)
星1
光属性/天使族
ATK 100/DEF 100
自分フィールド上に「勝利の導き手フレイヤ」以外の天使族モンスターが表側表示で存在する場合、このカードを攻撃対象に選択する事はできない。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する天使族モンスターの攻撃力・守備力は400ポイントアップする。
「そうは行かねぇぜ! 永続罠『リクルート・ポイント』を発動! こいつが存在する限り、俺様が受ける効果ダメージは半分になる! あべしっ!?」
高田:LP 4000→3700
くっ! ダメージを削られたか!
「更に俺様が受けた効果ダメージ100ポイントにつき1つ、このカードにポイントカウンターを乗せる!」
リクルート・ポイント:ポイントカウンター 0→3
やるね……。でも、わたしはまだまだ本気を出し切っていない!
続いて手札を1枚切る。描かれているのは、半透明の女性の天使のモンスター。
「わたしは墓地の光属性『ヘカテリス』と『ハープの精』をゲームから除外し、『
「だが『リクルート・ポイント』の効果で半減する! ごぼぁっ!」
神聖なる魂:ATK 2000→2400
高田:LP 3700→3400
リクルート・ポイント:ポイントカウンター 3→6
「まだだ! 『アテナ』の効果発動! 1ターンに1度、自分の場の天使族を1体墓地に送り、墓地の天使族を1体復活させる! 『神聖なる魂』を墓地に送って、『堕天使スペルビア』を特殊召喚! 『アテナ』の効果でダメージを与える! “アサルト・シャイン”!」
「ダメージは半分になる! ぐえっ!」
『JAGAAAAAAAAAAA!』
堕天使スペルビア:ATK 2900→3300
高田:LP 3400→3100
リクルート・ポイント:ポイントカウンター 6→9
『スペルビア』は闇属性、これで属性バトルに強い奴の優位点を揺らがせる事ができる。
「まだまだぁ! 更に『スペルビア』は墓地から特殊召喚された時、自分の墓地から天使族1体を特殊召喚できる! わたしが呼ぶのは『The splendid VENUS』! 更に『アテナ』の効果でダメージを受けてもらうよ!」
『トゥッ!』
「ひでぶっ!?」
The splendid VENUS:ATK 2800→3200
高田:LP 3100→2800
リクルート・ポイント:ポイントカウンター 9→12
ぬぅ……、思ったよりダメージが少なくなってしまった……。ダメージが半分にさえなってなければ、あいつのライフはもう半分を切っていたってのに……!
神聖なる魂(効果モンスター)
星6
光属性/天使族
ATK 2000/DEF 1800
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に存在する光属性モンスター2体をゲームから除外した場合に特殊召喚する事ができる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手のバトルフェイズ中のみ全ての相手モンスターの攻撃力は300ポイントダウンする。
堕天使スペルビア(効果モンスター)
星8
闇属性/天使族
ATK 2900/DEF 2400
(1):このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、「堕天使スペルビア」以外の自分の墓地の天使族モンスター1体を対象として発動できる。
その天使族モンスターを特殊召喚する。
The splendid VENUS(効果モンスター)
星8
光属性/天使族
ATK 2800/DEF 2400
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、フィールド上に表側表示で存在する天使族以外の全てのモンスターの攻撃力と守備力は500ポイントダウンする。
また、自分がコントロールする魔法・罠カードの発動と効果は無効化されない。
「わたしは魔法カード『ホーリー・ドロー』を発動! 手札がこれ1枚で、自分のレベルが同じ天使族モンスターが2体、このカードを発動するターン内に除外されている場合、除外されたモンスターのレベル-1枚カードをドローし、デッキからカードをその枚数分墓地に送る!
このターン、除外された天使族は『ハープの精』と『ヘカテリス』、レベルは4! よってカードを3枚ドローする!」
ホーリー・ドロー(オリジナル)
【通常魔法】
手札がこのカード1枚のみで、このターン同じレベルの天使族モンスターが2体のみゲームから除外されている場合に発動できる。
このターンに除外された同じレベルのモンスターのレベル-1枚カードをドローし、その枚数分だけデッキの上からカードを墓地へ送る。
このカードを発動するターン、天使族以外のモンスターを通常召喚・特殊召喚・反転召喚できない。
新たなカードが手札に加わり、『大天使クリスティア』を始めとしたカード3枚が墓地へと送られて行く。
オーケー、良いカードを引いた!
「手札から装備魔法『エクスチェンジ・ガード・ローブ』を発動! このカードをフレイに装備させ、攻撃力を500ポイントアップさせる!」
「ハァッ!」
勝利の導き手フレイヤ:ATK 500→1000
フレイに装備された金色に輝くマント。これだけじゃあ数多の装備カードの中に埋もれてしまうけど、このカードの使い方は別にある!
「続いて手札から永続魔法『一族の結束』を発動! このカードは自分の墓地に存在するモンスターの種族が一種類のみの場合、それと同じ種族の自分フィールド上のモンスターの攻撃力を800ポイントアップさせる! わたしの墓地にいるモンスターは全て天使族! よってわたしの場の天使族モンスターの攻撃力は800アップする!」
アテナ:ATK 3000→3800
勝利の導き手フレイヤ:ATK 1000→1800
堕天使スペルビア:ATK 3300→4100
The splendid VENUS:ATK 3200→4000
「こ、攻撃力4000クラスが2体だとぉ!?」
「お前のモンスターの効果は確かに強力。でもその攻撃力は4000を超える事はできない!」
『幻魔の王城』の効果で攻撃力が500上がるのは元々の攻撃力が1500未満のモンスターのみ、つまり攻撃力の最大値は3998。本来のターゲットが黎だったって事は、デッキ内の属性を統一しているとは考えにくい。もし飛び出してくるとすれば、攻撃力0からモンスター効果で数値を跳ね上げる『カオス・ネクロマンサー』くらいだから、そっちだけを警戒すれば良い。そしてあのモンスターは闇属性。光属性しか場にいない奴に、わたしのモンスターを倒すだけの大火力は、無い!
「マスター、この装備カードの効果を!」
「分かってる! 攻撃力が変化したこの瞬間、フレイに装備させた『エクスチェンジ・ガード・ローブ』の効果発動! 装備モンスターの攻撃力が、装備された『エクスチェンジ・ガード・ローブ』以外の効果で変化した場合、その変化した数値分のダメージを相手に与える! 800のダメージを受けろ!」
「食らいなさい!」
「だがダメージは半分になるぜぇ! うぉっ!」
高田:LP 2800→2400
リクルート・ポイント:ポイントカウンター 12→16
フレイの羽織ったマントから放たれたビームが高田を撃ち抜く。こうやって攻撃力が変化するだけでダメージを与えられるんだから、このカードはコンボ前提だけど中々に強い。
「まだ終わって無い! 続いて装備魔法『シャイニング・エンブレム』を発動! このカードは自分フィールド上の光属性・天使族モンスター1体に装備され、墓地から光属性・天使族モンスターを1体除外して発動する。このカードを装備したモンスターの攻撃力を、除外したモンスターのレベル×200ポイント上昇させる!
わたしは墓地からレベル8の『轟龍』を除外し、フレイの攻撃力を1600ポイントアップ! と同時に、『エクスチェンジ・ガード・ローブ』の効果で、お前に1600のダメージだ!」
「それも半減させる!」
「でもダメージは受けてもらいますよ!」
勝利の導き手フレイヤ:ATK 1800→3400
高田:LP 2400→1600
リクルート・ポイント:ポイントカウンター 16→24
「ぐ、クソ……!」
更に放たれる金色のビームを受け、膝をつく高田。ダメージを半減させているとは言え、事実上、肉体に入ったダメージは2400になる。流石に1ターンでこれだけ浴びればキツいはずだ。
次は、デッキの中からリクルートできるモンスターを削る!
「バトル! 『アテナ』で『シャインエンジェル』を攻撃! “アイギス・ランス”!」
光の槍で貫かれる男の天使。デッキを圧縮させる危険はあるけど、これ以上光属性のモンスターを場にのさばらせるワケにもいかない。
「『シャインエンジェル』の効果で、デッキから『コーリング・ノヴァ』を特殊召喚!」
「『アテナ』の効果でダメージも受けてもらう!」
「ぐぼぉっ!?」
コーリング・ノヴァ:ATK 1400→1900
高田:LP 1600→1300
リクルート・ポイント:ポイントカウンター 24→27
「計算通り! 『VENUS』で後続の『コーリング・ノヴァ』を攻撃! “ホーリー・フェザー・シャワー”!」
「デッキから最後の『コーリング・ノヴァ』を特殊召喚だぜぇ!」
「『アテナ』でダメージ!」
「ひでぶっ!?」
コーリング・ノヴァ:ATK 1400→1900
高田:LP 1300→1000
リクルート・ポイント:ポイントカウンター 27→30
「いくらでも出せば良い! 『スペルビア』で攻撃力が高い方の『コーリング・ノヴァ』を攻撃! “ルシフェル・トラジェディ”!」
「デッキから3体目の『シャインエンジェル』を特殊召喚!」
「ダメージを受けてもらう!」
「半分になるがなぁ! ぐばぁっ!」
シャインエンジェル:ATK 1400→1900
高田:LP 1000→700
リクルート・ポイント:ポイントカウンター 30→33
「でもこれで光属性リクルーターは打ち止めだ! フレイ!」
「ええ! わたくしでの攻撃で最後のモンスターも撃ち落とします! 喰らいなさい、“チアリング・コンバット”!」
輝く羽の雨、闇の波動、フレイの近接格闘術が順番に高田のモンスターを討ち取る。
これで光属性リクルーターは『ユーフォロイド』のみ。流石にレベル6のあのモンスターはいれてないでしょ。
「ぐぅ……! だがこの瞬間、『コーリング・ノヴァ』のモンスター効果発動! デッキから『エンシェント・ドラゴン』を特殊召喚だぜぇ!」
ほらね。
それと、そのモンスターの特殊召喚は認めない!
「この瞬間『シャイニング・エンブレム』の更なる効果発動! このカードを装備したモンスターがバトルで破壊したモンスターの効果は無効となる! 更に相手モンスターを戦闘破壊した時、墓地からレベルの一番低い光属性・天使族モンスターを1体除外し、そのレベル×200のダメージを与える事ができる!
墓地の最も低いレベルを持ったモンスターはレベル6の『神聖なる魂』! よって1200のダメージを与える!」
「それも半減だ! ぐはぁぁっ!?」
高田:LP 700→100
リクルート・ポイント:ポイントカウンター 33→39
エクスチェンジ・ガード・ローブ(アニメオリジナル)(自己解釈効果)
【装備魔法】
このカードを装備したモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
装備モンスターの攻撃力が「エクスチェンジ・ガード・ローブ」以外の効果で変化した場合、その変化した数値分のダメージを相手に与える事ができる。
一族の結束
【永続魔法】
自分の墓地に存在するモンスターの元々の種族が1種類のみの場合、自分フィールド上に存在するその種族のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする。
シャイニング・エンブレム(オリジナル)
【装備魔法】
レベル4以下の光属性・天使族モンスターのみ装備可能。
発動時に自分の墓地から光属性・天使族モンスターをゲームから除外し、除外したモンスターのレベル×200ポイント装備モンスターの攻撃力をアップさせる。
このカードを装備したモンスター以外の表側表示で存在するモンスターがそのターンのバトルフェイズ中に戦闘を行っていない場合、装備モンスターは攻撃できない。
装備モンスターが戦闘で破壊したモンスターの効果は無効となる。
また装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊して墓地に送った場合、自分の墓地に存在する最もレベルの低い光属性・天使族モンスターを1体除外する事で、そのレベル×200ポイントのダメージを相手に与える事ができる。
この効果はデュエル中1度しか使えない。
ここまでやってなおも残る高田のライフ……。ここまでで通算7800ポイントのダメージを叩き込んだ。この数値はわたしの覚えている中では、1ターン内で最高の数値。それでもそれは半減されてしまった。できれば決めたかったんだけどね……!
「クソアマがぁ……! やってくれんじゃねぇか! 図に乗ってんじゃネェぞ!」
「……、わたしはカードを1枚伏せて、ターンエンド」
フィオ:LP 3100
手札:0枚
フィールド
:アテナ(ATK 3800)、勝利の導き手フレイヤ(ATK 3400)、堕天使スペルビア(ATK 4100)、The splendid VENUS(ATK 4000)
:伏せカード1枚、一族の結束(永続魔法)、エクスチェンジ・ガード・ローブ(装備魔法・『勝利の導き手フレイヤ』に装備)、シャイニング・エンブレム(装備魔法・『勝利の導き手フレイヤ』に装備)
あいつのライフは100、対してわたしのライフは3100。一瞬で消し飛ぶような数値じゃ無い、けど……。
と、その時。
「フィオーッ!」
「黎!?」
麓に続く、わたしの背後にある道から、黎が桜さんとポーラを従えて走って来た。どうしてここが……?
「嫌な気配を探って来たんだ。そしたら変なフィールド魔法が展開しててな、ここに着いた」
「……それより、対戦相手!」
ポーラが指差す先。そこに視線を合わせた黎と桜さんは、険しい表情で睨みつけた。
「ああ、よもや貴様とはな、高田ァ!」
「おのれ、そこまで腐っていたかぁ!」
高田を睨む黎と桜さん。それに対し、高田は鼻で嗤った。
「ヘッ、誰に向かって口利いてやがんだ。俺様はオベリスクブルーで、セブンスターズの一員! 様を付けろ様を! テメェらみてぇな低俗なゴミクズ如きが本来なら話しかけるどころか視界に入れる事すら許されねぇ高貴な存在なんだぜぇ?」
「黙れ! 貴様、俺だけならまだしも、フィオにまで手ェ出しやがって! 絶対に許さん!」
「お前が俺を許すだぁ? つけ上がるンじゃねぇよこのクズレッドが! 俺様がテメェを許す・許さないの権利はあっても、テメェが俺を許す・許さないの権利はネェんだよ! ゴミは黙って俺様に跪け! 分かったかこのカス!」
「テメェ……! 腐ってる腐ってると思っていたが、もう救いようの無いレベルにまで腐り果てたみてぇだな!」
「人としての恥じらいすら失うとは、呆れて物も言えんな! 人間失格とは、欠陥製品とはこの事か!」
「……口も暫く合わない内に、大分悪くなってる。……孤独の原因にすら気付けない哀れな人間と成り果てた」
「あぁ!? ナメてんじゃねぇぞコラ! 口の利き方に気ィ付けやがれっつってんだろうが! 調子乗ってんじゃネェぞこのクズ野郎共が! 殺されてぇのか!? 殺されてぇみてぇだなぁ、オイ!? ……良いぜぇ? この女を殺したら、次はテメェらだ! 女2人はミンチ肉にして化物、テメェの口の中に突っ込んでやる! 生まれた事を後悔するぐらいまで殺してやる!」
「俺達を殺すだと!? できもしねぇバカげた事を口にするな!」
「黎、気を付けて! 高田の馬鹿の奴、何かおかしい!」
「恐らく、最後の護衛に何かされたと思われます。気配もカードも妙ですし、これまでとは明らかに違います!」
ここまで来ると、もうこの異常さは何か薄ら寒い物すら感じさせるレベルだ。
本当に人はここまで荒々しく人を見下せる性格になるのか。人を見下して何が楽しいのか、わたしにはさっぱり分からないし、分かりたくも無い。
この男、もしかしたら最初から気が狂っていたのかとも思ってしまう。もうこいつは人間じゃ無い、悪魔に魂を売った魔物だ。
「さあ、お前のターンだ!」
「分かってらぁ! 俺様のターン、ドロー!」
高田が引いたカードを見る。その途端、奴の表情が変わった。まるで勝利を確信したかのような、不気味な笑みに。
「な、何がおかしい!」
「クククク! 俺は魔法カード『大嵐』を発動! フィールドの全ての魔法・罠を破壊する!」
「何!?」
ここでそんなカードを!?
緑のカードから風が吹き出し、フィールドを荒らし回る。その風によってわたしの場のカードは全て消し飛んでしまった。
折角伏せた『攻撃の無力化』が……! それに攻撃力もこれで元に……!
アテナ:ATK 3800→3000
勝利の導き手フレイヤ:ATK 3400→500
堕天使スペルビア:ATK 4100→4000
The splendid VENUS:ATK 4000→3200
「く……、力が……!」
「でも、これで奴の場にある魔法・罠カードも無くなった! この行動は寧ろ自分の首を絞めた!」
「そいつはどうかな?」
「何……?」
風が止み、舞い散っていた砂埃が収まる。そして気付く。この不気味な城もまた『大嵐』で破壊されるべきなのに、依然としてその姿を保っている事、そして奴の2枚の永続罠も場に残っている事に。
「俺は『幻魔の王城』の3つ目の効果を発動したのよ! こいつが場にある限り、表側表示の俺様の魔法・罠は1ターンに1度、破壊されねぇのさ!」
「何!?」
「おっと、まだまだ行くぜぇ! 俺は更に『リクルート・ポイント』の効果発動! 墓地の魔法1枚を除外し、このカードを墓地に送る事で、送った時に乗っていたカウンターの数×100、俺様のライフを回復! 更にその数値分だけ相手にダメージを与える! 墓地の『大嵐』を除外ぃ!」
「乗っていたカウンターは全部で39、って事は3900ポイントの回復とダメージですか!?」
「わたしは『ホーリー・ドロー』の効果で墓地に送られた『ピクシーのシェルター』の効果発動! 墓地のこのカードを除外し、除外された天使族1体を墓地に戻す事で、そのモンスターの攻撃力分、わたしが受ける効果ダメージを削る! 選択するのは『轟龍』! このカードの攻撃力2900ポイント分だけ、受けるダメージを減らす! キャァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアッ!」
「マスター!?」
高田:LP 100→4000
フィオ:LP 3100→2100
一瞬で回復する高田のライフ。わたしは逆に初期値の半分近くに減らされてしまう。
そ、そんな……。ここまで削ったライフを一瞬で逆転された……!
リクルート・ポイント(オリジナル)(改訂版)
【永続罠】
(1):このカードがフィールドに存在する限り、相手によって自分が受ける効果ダメージを半分にする。
その後、受けた効果ダメージ100ポイントにつき1つこのカードにポイントカウンターを乗せる。
(2):自分のターンのメインフェイズ1で、自分の墓地の魔法カードを1枚除外しこのカードを墓地に送って発動できる。
このカードに乗っていたポイントカウンター1つにつき自分のライフを100回復し、更にその数値分だけ相手にダメージを与える。
このターン、自分は効果ダメージを受けない。
ピクシーのシェルター(オリジナル)(改訂版)
【カウンター罠】
(1):ダメージを与える効果が発動した時に発動できる。
自分が受ける効果ダメージを0にする。
(2):自分が効果ダメージを受ける時、墓地に存在するこのカードをゲームから除外し、除外されている自分の天使族モンスターを1体墓地に戻して発動する。
その効果ダメージを、戻したモンスターの攻撃力分ダウンさせる。
「ギャハハハハハ! 更に俺は魔法カード『リクルート・ヒール』を発動! 俺の場の元々の攻撃力1500未満のモンスターを1体選択し、それと同じ属性の俺の墓地のモンスター1体につき、ライフを400ポイント回復する! 俺は『コーリング・ノヴァ』を選択!」
「クッ、『コーリング・ノヴァ』を光属性です!」
「奴の墓地にいる光属性モンスターは5体! って事は……!」
高田:LP 4000→6000
「ライフがまた回復された!?」
「このままでは差が開く一方です!」
リクルート・ヒール(オリジナル)
【通常魔法】
自分フィールド上に存在する元々の攻撃力が1500未満のモンスターを1体選択する。
自分の墓地に存在する選択したモンスターと同じ属性のモンスター1体につきライフを400ポイント回復する。
このカードは自分のライフが2000以下の時には発動できない。
まずい。わたしのライフは2100、このままじゃあわたしが圧倒的に不利……!
でも、奴の場には攻撃力1400の『コーリング・ノヴァ』が1体のみ。フレイには他に天使族モンスターをわたしが従えている場合、攻撃の対象から外される効果がある。そしてフレイ以外で最も攻撃力が低いのは3000の『アテナ』。
『コーリング・ノヴァ』は光属性・天使族しかリクルートできないから機械族であるリクルーターの『ユーフォロイド』を呼ばれる心配も無い。このデュエル、まだ負けたわけじゃ無い!
「ケケケケ、俺は『幻魔の王城』の更なる効果を発動! 1ターンに1度、墓地に攻撃力1500未満のモンスターが2体以上存在する場合、その2体のモンスターをデッキに戻してシャッフルし、1枚ドローできる! 墓地から2枚の『シャインエンジェル』をデッキに戻し1枚ドロー!」
「な、何だって!?」
「それじゃあほぼ無限にリクルート先を確保できるじゃ無いですか!?」
「ギャハハハハハハハハハ! これが俺様の、幻魔の力だぁ!」
幻魔の王城(オリジナル)(改訂版)
【フィールド魔法】
(1):このカードの発動は無効化されず、フィールドに表側表示で存在する限り自分フィールド上の表側表示の魔法・罠カードは1ターンに1度だけ破壊されない。
(2):このカードがフィールド上に存在する限り、相手はフィールド魔法を発動できない。
(3):デッキから元々の攻撃力が1500未満のモンスターが特殊召喚された場合、そのモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
(4):1ターンに1度、自分のメインフェイズ1で発動できる。
自分フィールドのモンスター1体の持つ属性を1つ選択し、選択した属性のモンスターが同じ属性の相手モンスターと戦闘を行う場合、自分モンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで2倍となる。
このターンその属性以外を持つモンスターは攻撃できない。
(5):1ターンに1度、自分の墓地の攻撃力1500未満のモンスター2体を対象として発動できる。
そのモンスター2体をデッキに戻してシャッフルする。
その後、自分は1枚ドローする。
「おっと、良いカードを引いたぜぇ?」
「っ!」
「俺は手札から魔法カード『リクルート・ラッシュ』を発動! 自分フィールド上のリクルーター1体を手札に戻し、効果を無効にして同じ攻撃力を持った同名以外のモンスターを可能な限りデッキから特殊召喚する!」
リクルート・ラッシュ(オリジナル)
【通常魔法】
自分フィールド上の元々の攻撃力が1500未満のモンスター1体を手札に戻して発動する。
戻したモンスターと同じ攻撃力の同名以外のモンスターを自分のデッキから可能な限り特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効になる。
「現れろ! 『巨大ネズミ』、『シャインエンジェル』、『キラー・トマト』、『
い、一気に5体のリクルーター!?
巨大ネズミ:ATK 1400→1900→1400
シャインエンジェル:ATK 1400→1900
キラー・トマト:ATK 1400→1900→1400
仮面竜:ATK 1400→1900→1400
ドラゴンフライ:ATK 1400→1900→1400
場に次々と現れるモンスター達。青い大きな齧歯類、4枚羽の男天使、ジャック・オー・ランタンのようなトマト、仮面を着けた赤いドラゴン、巨大なトンボがゲートを潜って出現した。
確かにモンスターが破壊されて次のモンスターに繋げる特性上、こいつらが並び立つ事は有り得なくも無い。だけどこんな簡単に、モンスターゾーンを埋め尽くすなんて……!
「だが攻撃力は『VENUS』の効果で500下がる! 更に天使族を特殊召喚したから600ダメージを受けてもらう! トドメだぁ!」
「『リクルート・ポイント』の効果で、このターン俺様はダメージを受けない!」
「ぐ……!」
戦女神の槍から光が放たれ、高田を狙う。
だが高田はバリアを展開し光の攻撃を防いでしまった。
「で、でもそのモンスター達は全て属性がバラバラ! わたしのモンスターを相手に倒せる布陣じゃない!」
「ギャハハハハハハ! 俺がいつ『リクルート・ラッシュ』を今引いたカードだと言った? 俺様が引いたのはこいつだぁ! 手札から魔法カード『エレメント・ユナイト』を発動! 手札を1枚捨てて属性を1つ宣言! ターンの終わりまで、フィールドにいる全てのモンスターは宣言した属性になる! これが俺様の切り札よぉ!」
「な!? ただでさえ同じ属性同士の戦闘に強いのに、属性を強制的に統一させるなんて!?」
エレメント・ユナイト(オリジナル)
【通常魔法】
手札を1枚捨てて属性を1つ宣言する。
フィールド上に表側表示で存在するモンスターは、ターン終了時まで宣言した属性になる。
「手札に戻した『コーリング・ノヴァ』を捨てて光属性を宣言するぜ! これでターンエンドまで全てのモンスターは光属性になる!」
アテナ:光属性→光属性
勝利の導き手フレイヤ:光属性→光属性
堕天使スペルビア:闇属性→光属性
The splendid VENUS:光属性→光属性
巨大ネズミ:地属性→光属性
シャインエンジェル:光属性→光属性
キラー・トマト:闇属性→光属性
仮面竜:炎属性→光属性
ドラゴンフライ:風属性→光属性
「そ、そんな……! ここでこれだけの戦力を一瞬で揃えるだなんて……!?」
「ギャハハハハハハハハ! これが俺様とテメェの格の差だぁ!」
く、悔しいけど、強い……! 冗談でも比喩でも無く、デタラメなパワーアップを遂げている……!
「これで最後だぜぇ! バトル!」
「フィオ!」「フィオ殿!」「……フィオ!」
「総攻撃で止めをさしてやるぜぇ!」
マズい! 何とかしないといけないのに、手札は無いし、伏せカードも消された……!
打つ手無し……、わたしの負け……!
「マスター、墓地の『エスクード・クルース』です!」
「え? あ、そうか! わたしは墓地の『エスクード・クルース』のモンスター効果発動! このカードとカウンター罠を1枚ずつ墓地から除外し、このターン中にわたしが受ける戦闘ダメージを0にし、モンスターもバトルでは破壊されない!」
「何ぃ!? そんなカード、何時墓地に送られたんだ!」
「『ホーリー・ドロー』の効果で墓地に送られたカードの内の1枚が、これだったのさ!」
エスクード・クルース(効果モンスター)(オリジナル)
星7
光属性/天使族
ATK 1500/DEF 3200
このカードは特殊召喚された場合、そのターンの終了時に墓地に送られる。
手札・墓地に存在するこのカードと手札・墓地のカウンター罠カードを1枚ゲームから除外して発動する。
このターン自分が受ける戦闘ダメージは0となり、自分フィールド上のモンスターは戦闘では破壊されない。
この効果は相手ターンでも発動できる。
除外されているこのカードは、手札の通常魔法カードを1枚ゲームから除外する事で1度だけ墓地に戻す事ができる。
地面に紫の魔法陣が現れ、そこから十字架の描かれた盾が浮かび上がる。
盾はわたしとモンスター4体分、都合5つに分裂して装備され、正面から突進して来たモンスター達を受け止め、弾き返した。
「これで、わたしのモンスター達はバトルでは破壊されない」
「まだまだ勝負はこれからです!」
これでこのターンは防げる。そう思いパートナーと共に宣言した。だが……。
「クヒ……」
高田は。
「ギャッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァッ!」
喉が裂けるんじゃ無いという程に嗤っていた。
「な、何さ! 何がおかしい!」
「ギャハハハハ! 俺は手札から速攻魔法『コンボ・マネジメント』を発動だぁ!」
それは、最後の手札!?
「こいつは俺様の元々の攻撃力1500未満のモンスターが相手とバトルしたバトルフェイズ終了時、相手モンスターが1体も破壊されていない場合に発動できる! バトルを行った相手モンスターを全て破壊し、その数1体につき500ポイントのダメージを与えるぅ!」
「な、なんだって!?」
「このターンバトルしたこちら側のモンスターは、わたくしを含めて4体! と言う事は……!」
「2000ポイントのダメージを喰らいやがれぇ!」
コンボ・マネジメント(オリジナル)
【速攻魔法】
自分フィールド上に元々の攻撃力が1500未満のモンスターが存在し、相手モンスターが発動ターン中に戦闘では破壊されなかった場合に発動できる。
このターン戦闘を行った相手モンスターを全て破壊し、その数×500ポイントのダメージを与える。
この効果で相手のライフが0になる場合、このカードは発動できない。
『ジャガァァァァ!』
『トォォォォアッ!』
『グジョォォォォ!』
『ガアアアァァァ!』
『ジジジジジジジ!』
攻撃が終わったと言うのに、再び突進をしかけて来る高田のモンスター達。
巨大齧歯類が盾ごと戦女神を噛み砕き、妖怪トマトが体当たりで壺型の堕天使を粉砕。更に巨大トンボが金色の天使を食い千切り、赤い仮面のドラゴンが炎でわたしのパートナーを焼き払う。
「フレイ!」
「すみません、マスター……ッ!」
「ギャハハハハハ! 死ねぇ、ゴミ女ァ!」
そして残った4枚羽の男天使が強烈なラリアットをわたしの首に叩き込み、空高く、ゴツゴツした岩肌の露出している山肌の方向へと吹き飛ばした。
「グ、ガハッ!?」
フィオ:LP 2100→100
血を吐いた瞬間、足が地面を捉えていない事に気付く。衝撃で空高く吹き飛ばされるのを感じながら、しかし意識は地上にいる黎に向いていた。
(あ、やば、これ人間の体じゃ死ぬわ……)
飛んだ先は空。下は固い岩に覆われた山肌で、この高さだと受け身も意味が無い。全てがスローモーションに見える、人生の最期の瞬間。
結局、高田の奴の言う通り、黎から大切な物を奪わせる結果になってしまった。
わたしも黎に近しい内の1人、わたしが死んで悲しまない程、彼は冷淡では無い。……いや、冷淡では
(まだ……、やらなきゃいけない事が山のようにあったのになぁ)
なんて益体も無い事を、走馬灯を浮かべるでも無く、わたしは考えていた。
おぼろげだけど、1年くらい前からわたしの物だけどわたしの物じゃない色んな記憶が泡沫のように現れ始めている。現実味は無いけれど、全て紛れも無い真実の記憶だと他ならぬ自分自身で確信している。その記憶では、わたしこそが君ら義兄妹が不幸を味わう諸悪の根源だった。だから2人揃うまでずっと手伝って、それから謝ろうと思っていたんだ。
ああ、黎、ごめん。本当にごめんよ。わたしは、君と都ちゃんに謝らなければならない。誠心誠意を込めて土下座し切腹しても、決して償えない罪があるから。
でも、もうダメみたいだ。ゴメンね、死んで逃げちゃって。
「フィオーッ!」
地上で叫ぶ黎。
喉に衝撃が直接入った影響でか、声を出す事どころか呼吸すらままならない。ただゴポリと奇妙な音を立てて血が噴き出るだけ。
せめて、せめて一言、謝りたかった。こんな事ならもっと早くに、曖昧な記憶であっても謝るべきだったな……。
(黎、ゴメン)
心の中でわたしは謝り、目を閉じた。
そこでわたしの意識は暗い暗い、真っ暗で何も見えない闇の中へと沈んで行った。
ああ、君が体験した死っていうのは、こういう、こと、なのか、な……。
ごめんね、れい……。
きみを、ふこうにした、げんいんなのに、ちゃんと、あやまれなくて、ごめんなさい……。
SIDE:黎
気が付くと俺は、大地を蹴って走り出していた。
高田のモンスターのラリアットを食らって空高くフィオが飛ばされた時、どうしてだろうか、俺は都が死んだシーンを思い出していた。シチュエーションも死因も何もかも違うのに、何故か俺はフィオと都を重ねた。
頭の中の全てが俺に訴えていた。殺させるな、今度は助けろと。
放物線を描くように飛ばされたフィオは、あのままだと間違い無く地面に頭から着地し、急な山肌を転げ落ちて行くだろう。いくらデュエリストの体が頑丈でも、そんな着地をしたら無事じゃ済まない。ほぼ間違い無く頭蓋か頸椎を骨折して死ぬ。
「そんなの、認めねぇ!」
道の脇の岩を踏み台にせんと足を伸ばした。
だが果たして俺が届くのか? 俺の助走有りの跳躍は幅が精々10メートル、高さは5メートルぐらい行けるが、それ以上どちらかを伸ばそうとするともう片方が犠牲になる。
フィオの位置にまで、それで届くのか!? 失敗したら俺が痛いだけじゃ済まないんだぞ!? 失敗したら、また俺は大切な人を失う! だがもう確実な手段を取るだけの時間的余裕は無い、やるしか、やるしか無い。
そうだ、やるしか無いなら開き直るしかない。限界の果てまでかっ飛んでやる! 諦めたら、何もかも無くなっちまうんだ!
こういう絶対に諦めないチャレンジスピリッツを何て言うんだったか……。ああ、そうだ思い出した。
ダン!
岩を強く踏んで、踏み砕くぐらいの勢いで空へと大ジャンプ。そして、腹の底から叫ぶ。
「かっとビングだ、俺ぇ!」
一瞬の逡巡がどうやら功を奏したようで、高く跳んだ俺はタイミング良く、見事にフィオの足を掴んで引き寄せる事に成功した。
更に手首に直接アンカー付きのワイヤーを生み出して、まだ地面にいた桜とポーラに向けて投げる。
「2人とも、頼む!」
「分かった!」「……任せて」
一瞬で俺の意図を察した2人は、そのワイヤーを掴んで俺達を力いっぱい引っ張ってくれた。
こっちもウィンチで高速で巻き取り、鉄線が緩まないようにして地面にまで戻る事に成功したのだった。
着地した俺達の下へ桜とポーラが駆け寄る。すぐにフィオのダメージを察した桜が治癒術をかけ始め、俺も髪の毛を変質させて注射針にし、鎮痛剤と強心剤を頸動脈に注入する。
「フィオ! しっかりしろ、フィオ!」
必死に俺が呼びかけるものの、彼女の反応は無い。
隣では『仮面竜』の炎で黒焦げになったフレイが脈を計っている。
「脈はありますし、怪我も致命傷ではありません……。気絶しているだけですが……、くぅ……っ!」
「フレイ、お前も休め! 闇のゲームは精霊にだって悪影響があるんだろう!? そんな黒焦げな状態なんだから、自分の心配もしろよ!」
「情けない、です……。マスターを、守れなかった……」
「何言ってやがる! お前はいつもフィオの傍で頑張ってたじゃないか! 皆知ってるぞ!」
「それでも……、こういう時に守れないのは、辛いですね……。ふふ、どうしてわたくしの攻撃力は100しか無いのでしょうね……」
後はお願いします、とだけ言ってフレイはその場に倒れ、光となって消えた。これは桜と初めて会って消えた時と同じ、カードに戻ったのだろう。
「フィオ、フレイ……」
強いお前らが、こんなにボロボロになっちまって……。俺の代わりにセブンスターズと戦ったせいで……! 俺が情けなかったから、弱かったから!
「ッ!」
パァン! と俺は頬を叩いて自分に喝を入れる。
もう俺は逃げない。俺が逃げて皆が傷つくのなら、俺は戦ってやる! どこまでも血塗れになって、敵は残さず殺す! 殺して殺して殺しまくって! 一匹残らず息の根を止めてやる!
「2人ともよく頑張ったな……。桜、ポーラ、ここ頼む」
「主殿……」
「……サー」
「後は全部、俺に任せろ!」
なあ『ジョーカー』。闇を見る事の本当の意味は、今でも分からない。
でももしフレイの言っていた通り、自分の中にある負の想念と向き合う事がそうだと言うのなら、俺はもうこの怒りや憎しみを肯定する事を躊躇わないし戸惑わない。
ずっと忘れていた。いや、忘れようとしていた。この憎悪の感情こそが、俺の本当の力の源。
「クヒヒヒヒヒ! おい化物、別れの挨拶は済んだかぁ?」
「高田、テメェ……!」
前の世界で手に入れた、闇の心。暗闇の殺意。
「お、おう……何だそのツラは……。び、ビビらせてるつもりか? ケッ、オシリスレッドのクセしてチョーシこいてんじゃねぇぞゴラァ!」
今の世界で手に入れた、光の心。明るい希望。
「テメェだけは、絶対に許さねぇ……!」
両者は当然、相反する。だがそれらが俺の中に有るのなら、両方とも俺の力にしてやる!
殺意は否定しねぇ。敵は全部ブチ殺す。綺麗事なんざ、最初から俺に似合うはずも無かったんだ!
だが希望だって受け入れる。明るい明日を信じて、俺は歩き続ける!
「高田、俺とデュエルだ! フィオとのデュエル、引き継がせろ!」
「何……?」
「ルールは通常のサシのデュエルだ。ただしテメェにはハンデを3つくれてやる」
「ほう、このパワーアップした俺様にハンディキャップとはな。身の程知らずめ!」
「ハンデ1は、ライフだ。新しく俺が参加する分、つまり4000をテメェのライフに加え、お前のライフは1万とする」
この戦いは、新しく心を入れ替えた、俺の出発点を飾るデュエルになる。
テメェが相手じゃあ力不足にも程があるだろうが、どうでもいい。ここでテメェはぶっ飛ばす!
「ハンデ2、手札枚数。お前は今のデュエルで手札を使い切った。新しく5枚補充しろ。手札0じゃあ流石の1万ライフも数ターンで消し飛ぶ。ンなデュエル、俺はゴメンだよ」
「ギャハハハハ! マジで身の程知らずの命知らずだな! 良いぜ、取り消しは却下だからな!」
その余裕、何時までも続くと思うなよ?
お前が見下していた腑抜けの俺はもういないんだからな。
「ハンデ3もライフ、ただし今度は俺のライフに関する事だ」
「ほう? 俺が1万になったからテメェは4000かと思ったが、何だ、テメェも1万か?」
「ハッ、お前程度の雑魚相手に5桁も要るかよ」
ぬっと俺は右手の人差指を立てた。
「1だ、俺のライフは1ポイント。それでデュエルを開始する」
to be continued
やっと書き写したい所まで到達
これが終わったら小規模なデュエルを1つ挟んで完全に新規となります