遊戯王GX~精霊の抱擁~ 作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民
次元幽閉
【通常罠】
相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃モンスター1体を選択して発動できる。
選択した攻撃モンスターをゲームから除外する。
フィオ「相手モンスターを除外するカードだよ。バリア系カードには枚数で負けるけどね」
黎「1体にしか効かない反面、通れば強いカードだ。再利用が難しいというのも大きな利点だね」
SIDE:無し
ぜえぜえと荒い息を吐きながら、ふらつく足で立つ黎。その視線の先には黒服の男が立っている。
ギッ、と黎は男を睨みつけた。傷だらけで流血している筈なのに、その気迫は消えていない。
「はぁ……、はぁ……、俺の、
黒い男は全く意に介さず答える。
「私たちの城に帰還いたしました。今や姫はあなたの義妹という立場より私たちの主の元にいらっしゃる事を望んでおられるのですよ」
ククク、と嘲笑う。黎の気迫が会場を揺るがす動の力なら、この男の存在は如何なる物事にも動じない静の存在。力押しは通じないだろう。
「しかし、いずれ私たちの主が完全に目覚めれば、姫は用済みとして廃棄されるでしょう。姫はあくまで主が復活するまでの仮の器なのですよ」
「テメェ…………っ!」
「無論、廃棄された者の行方など知った事ではありません。死か、或いは想像もつかない事になるでしょうね」
しかし、と男は続ける。
「主は罪の象徴である邪神。より多くの罪を求められております」
「……罪を生み出す人間を減らすと、弱る、か?」
「その通り。1人2人減った所でどうという事はありませんが、それでも源は1つでも多く確保しておきたいところです」
そして絶望も必要なのです、とも続けた。
絶望? と黎が問うと男が答える。
「主に限らず、意思を持ちし邪神は人の心の闇、つまりネガティヴな部分を力の源といたします。ほら、一生懸命頑張ったのに義妹を救えなかった義兄なんて、絶望の力が凄そうでしょう?」
「……はっ、お笑い種にもならねぇぜ」
「ククク、まあそう仰らずに。私はチャンスを差し上げましょうと申しておるのです」
「チャンスだと?」
「ええ。どうです、デュエルで勝てば貴方を主の城に案内し、更に姫を解放できる機会を差し上げましょう。そして貴方が負けても何も要求しませんよ?」
尤も、ただのデュエルではありませんがね。ポツリと呟いたのを黎は聞き逃さなかった。
だが、敢えてスルーをする。深く突っ込む気力はまだ戻ってないし、怖気づいたと思われたく無かったからだ。
「良いだろう。そのデュエル、受けて立つ!」
ガシン! とディスクが展開する。デッキを引き抜いて念入りにシャッフルし、互いにセットする。
そうだ、と男は何かを閃いた。右手を高く上げると、淡い光が飛び散り、黎と都との戦いによって壊れたリングや壁が修復されていく。
「サービスですよ。壊れたままではこちらの気分が悪いですから。ちなみにこれはあらゆるモノに対して無害です」
「……、一応礼は言っておく。半分は俺が壊したからな。ありがとう」
「いえいえ」
ニヤリ、と男は笑った。
「こうまでされて負けたら、貴方は立つ瀬が無いでしょう? また1つ追い詰められましたね」
「…………」
黎はこれ以上話す事に危険を感じ、言葉を発するのを止めた。この男は先刻から自分の絶対勝利を前提として話している。
この男に絶対の自信があるからなのか、或いはこちらを挑発する為にやっているのかは分からないが、怒りにまみれてしまえば冷静な判断力を失い、さっきのゴリラブルーの様に敗北するだろう。
勝てば手掛かり、負ければ何も無い。ならば勝たなくてはならないだろう。
義妹を取り戻すために、そして精霊界と人間界を狙う邪神を撃ち破るために、ここで敗北を喫する訳にはいかない。
身体の修復がおおよそ終了したのを感じ、気合いを入れ直す。
「“騎士”の魂、遊馬崎 黎。世界を守る為に、全力で参る!」
「七つの大罪の内が一つ、“傲慢”のプライド。いざ勝負!」
名乗りを上げ、ディスクを展開させてスイッチを入れる。
『デュエル!』
SIDE:明日香
何だか大変な事になっちゃったみたいね。
黎の義妹の登場。義兄妹の身体の秘密。邪神。七つの大罪。
いろんな事が一度に起きて流石の私も頭の整理が追いつかないわ。
「三沢くん、この状況……」
「天上院くん、言いたい事は分かるんだが……。済まない、正直俺も理解するだけで精一杯なんだ。まだ、説明出来る程理解はしていない」
そう。三沢くんでも出来ないのなら、十代やフィオに求めても無駄でしょうね。十代は筆記テストじゃ無くて実技での成績に物を言わせている訳だし、フィオの頭はぶっちゃけると悪いから。どのくらいかっていうと……、そうね試験番号、十代が110番ならフィオは109番かしら?
「……明日香、今何か失礼な事考えなかった?」
「気のせいよ」
さらっと言っておく。
余計な事考えてる場合じゃなかったわね。あのプライドという男と黎のデュエルが始まる。実力は未知数だけど、相当強いって事は伝わって来るわ。
黎、頑張って!
SIDE:黎
「俺のターン、ドロー!」
ぶっ倒す! 俺の全力で!
もう少しだけ待っててくれ都! 義兄ちゃんが今行くから!
「『F・S マグマドラゴン』を召喚! そしてモンスター効果発動! 如何なる召喚においても、『マグマドラゴン』が場に出た時、デッキか手札からレベル4以下の炎属性モンスターを1体特殊召喚できる!
俺はデッキの『F・S ヴォルカニック・ギア・ガイ』を選択!」
『ガォァアアア!』
『トォッ!』
F・S マグマドラゴン:ATK 1800
F・S ヴォルカニック・ギア・ガイ:ATK 1900
「魔法カード『融合』を発動! 手札の『F・S 鬼火のウィスプ』と『F・S バーンクロス』を融合! 融合召喚! 斬り開け『F・S ブレイジング・ナイト』‼」
『ハッ!』
F・S ブレイジング・ナイト:ATK 2900
融合
【通常魔法】
手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。
「まだまだぁっ! フィールド魔法『スピリッツ・ワールド』を発動!」
フィールド中に淡い光が溢れ始めた。これで例え相手が強力なアタッカーを出して来たとしても、1000ポイントのパワーアップができる。
ワンキルの心配は無いだろう。
「1枚カードを伏せて、ターンエンド!」
黎:LP 4000
手札:0枚
フィールド
:F・S マグマドラゴン(ATK 1800)、F・S ヴォルカニック・ギア・ガイ(ATK 1900)、F・S ブレイジング・ナイト(ATK 2900)
:伏せカード1枚、スピリッツ・ワールド(フィールド魔法)
悪しき敵と戦うために用意された精霊の力、ここで働かずしていつ働く。頼りにしているぞ。
さあ、かかって来い!
「私のターンです、ドロー」
SIDE:十代
観客席の十代だ(誰に説明してるんだ、俺は?)。
すっげえな、黎は。1ターンでモンスターを3体も揃えやがった!
とまあ、少し前の俺だったら何も考えずにはしゃぎまくったんだけど……。湖でのあのデュエルの時に黎が言ったあの言葉、アレが気に掛かっている。
“手札不足”
そう、黎は今のターンで手札を全て使い切った。三沢に聞いたんだけど、ハンドアドバンテージってのは今後の展開に重要なんだってさ。
俺は気にしないかな。いざって時にはちゃんとデッキが応えてくれるから、手札不足にはあんまり悩んだ事は無い。
でも、黎が今相手している男、プライドとかいう奴は俺でも分かるくらいにヤバイ奴だ。
「アニキ……、黎くん、勝つッスよね……?」
「あ、ああ……」
翔が不安そうな顔で聞いてくる。当たり前だろ、と答えられない自分をちょっと責める。
こういう時はビシッと言うモンだろ!? 俺のバカ!
「……、相手の出方次第だな。次のターンにフィールドを一掃されたら逆に不利になる」
「厳しいわね。普通の人間相手なら黎は負けないでしょうけど……」
「相手は多分、人間でも普通の相手でも無い」
三沢の状況判断、明日香の推測、フィオの結論が俺の不安を加速させる。
油断するなよ、黎。
SIDE:無し
「私のターンです、ドロー!」
プライドがカードを引く。引いたカードを見て、彼はニヤリと不気味な笑いを浮かべた。
「どうやら、私のこのターンでこのデュエルの勝者は決まってしまったようですね」
「何だと……!?」
キーカードを引いた。その事をデュエリストの直感で感知した黎は声を上げる。
思わず伏せカードに手をかけ、思い留める。このタイミングで使うカードでは無いからだ。
「……、やれるモンならやってみろよ」
精一杯の虚勢を張り、挑発する黎。
その挑発に乗ると乗らずとに関わらず、プライドは既に、発動するカード、そしてそのカードの発動後の手順、更にはこのターンに黎が受けるダメージの計算、その全て脳内で確定させていた。
「では、行きますよ? 私はフィールド魔法『集中豪雨地帯』を発動させます!」
ザァアアアアアアアァアァアアアアアアァァアアアアアァッ!
突如としてリングの上空に雨雲が発生し、凄まじいまでの降水量の雨が降り注いで来た。地面にあった魔法陣は、雨粒が当たった個所から消えていき、やがて足元が水浸しになるのと同時に消え失せた。
F・S マグマドラゴン:ATK 1800→900
F・S ヴォルカニック・ギア・ガイ:ATK 1900→950
F・S ブレイジング・ナイト:ATK 2900→1450
「これは……!?」
雨が黎の場のモンスターに当たっていくにつれ、彼らの体からどんどんエネルギーが奪われていく。赤い光がしぼんでいき、炎の戦士達は辛そうに顔を歪めている。
『ち、力が入らぬ……!』
『何だってんだ、こりゃぁ……!』
『ぬうぅ……!』
「『集中豪雨地帯』は場の全ての炎属性モンスターの攻撃力、及び守備力を半分にします。更に手札の水属性モンスターのレベルを1つ下げます。
私はこの効果で『ジェノサイドキングサーモン』を攻撃表示で召喚します」
ジェノサイドキングサーモン(通常モンスター)
星5
水属性/魚族
ATK 2400/DEF 1000
暗黒海の主として恐れられている巨大なシャケ。
その卵は暗黒界一の美味として知られている。
ジェノサイドキングサーモン:☆5→4
「まだまだありますよ? 『集中豪雨地帯』は私の場の水属性モンスターの攻撃力と守備力を200ポイントアップさせます」
ジェノサイドキングサーモン:ATK 2400→2600/DEF 1000→1200
「ちぃ……、要は『アトランティス』に対炎属性のメタ能力を付与したカードか……!」
「まあ、効果はまだもう1つありますがね。
では行きますよ。『ジェノサイドキングサーモン』で『F・S マグマドラゴン』を攻撃! 喰らいなさい!」
ゴゥッ! と巨大な鮭が突進を仕掛ける。『マグマドラゴン』は然したる抵抗も出来ずに吹き飛ばされた。
「ぐっ!」
ゴブリ……! と黎の口元から赤い鉄の味の液体が流れ出た。
「血……、闇のゲームか!」
「正解です。ただのデュエルでは無い、と申したでしょう?」
黎:LP 4000→2200
ザワザワと観客席から騒めきが上がる。人がソリッドヴィジョンで血を流した。しかも闇のゲームという怪しい単語とセットで。それでも生徒も教師も逃げ出さない。
何故か。理由は恐いもの見たさだろう。
黎は口の端から流れ出る血を指で拭うと、真剣な表情でプライドに向き合った。しかし、その内心は非常に焦っている、というのを本人とプライド、そしてフィオ達は理解していた。
当然だ。手札を全て
(……………………結構マズいか)
チロリ、と舌舐めずりをして黎はディスクを構え直した。
SIDE:黎
初っ端から飛ばし過ぎたか。1ターン目だから攻撃はできないってのは解り切っていたのに、心のどこかにあった
「リバースカードを2枚セット! ターンエンドです」
プライド:LP 4000
手札:2枚
フィールド
:ジェノサイドキングサーモン(ATK 2600)
:伏せカード2枚、集中豪雨地帯(フィールド魔法)
「俺のターン、ドロー!」
引いたカードは……、逆転の一手!
「『F・S バーナーズ・キャノン』を守備表示で召喚!」
『むん!』
F・S バーナーズ・キャノン:DEF 1200→600
F・S バーナーズ・キャノン(効果モンスター)(オリジナル)
星4
炎属性/戦士族
ATK 1500/DEF 1200
1ターンに1度、相手フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊できる。この時、相手プレイヤーに300ポイントのダメージを与える。
「フィールド魔法が邪魔だ! 『バーナーズ・キャノン』のモンスター効果で破壊させてもらう! “バーニング・ショット”‼」
白炎がバズーカから噴き出す。上空へ向けて放たれたそれは、雲に直撃すると、雨雲は瞬時に霧散した。
プライド:LP 4000→3700
「ふ、ふふふふ……」
「っ、何かあるみたいだな、その笑いは」
必殺のフィールド魔法が消滅し、俺の場のモンスターは全てその能力値が元に戻った。しかしプライドはダメージを受けたというのに、薄気味悪い笑みを浮かべている。
その理由はすぐに分かった。
「!?」
ザァアアアアアアアアァァアアアアアアアアアアアアァッ‼
「雨が、止んでない!?」
破壊したハズのフィールド魔法が、再び場に効力を発揮していた。
「ふふふ、申したでしょう? 『集中豪雨地帯』には後1つ効果があるってね」
「バカな……、破壊されない効果なら、ダメージも発生しない……。一体何なんだ!」
『バーナーズ・キャノン』のバーンダメージは「相手のカードを破壊した時」にしか発生しない。カード効果で破壊されないのなら、ダメージを受けるのはおかしい。
「破壊はされましたよ。しかし、『集中豪雨地帯』は破壊された時、デッキから同名カードをサーチし、発動させる効果があるのです」
「なんだと!?」
なんつー効果だ……。最低限後2回は破壊しないと、この鬱陶しい雨からは解放されないのか……!
集中豪雨地帯(オリジナル)
【フィールド魔法】
このカードのカード名は「海」としても扱う。
自分の手札とフィールド上の水属性モンスターはレベルが1つ少なくなる。
自分フィールド上の水属性モンスターは攻撃力と守備力が200ポイントアップする。
このカードが墓地に送られた場合、デッキに存在する「集中豪雨地帯」を発動させる事ができる。
「場の全てのモンスターを守備表示にし、ターンエンド!」
黎:LP 2200
手札:0枚
フィールド
:F・S バーナーズ・キャノン(DEF 600)、F・S ヴォルカニック・ギア・ガイ(DEF 600)、F・S ブレイジング・ナイト(DEF 1350)
:伏せカード1枚
くっ、マズイ状況だ。万が一の警戒で『バーナーズ・キャノン』を守備表示で出したのは正解だったぜ。お陰で戦闘ダメージは無いだろう。貫通ダメージは恐いが。
「私のターン、ドロー」
またレベルを下げた形での召喚が来る。す、と腕を交差させ、来るべき衝撃に備えた。
「出て来なさい、『暗黒大要塞鯱』」
『グガァアアアアアアアアァッ!』
出現するのは、背中に要塞を背負った巨大なシャチ。その効果は単発では使えないが、もし伏せているカードの内、どちらかがアレなら話は変わって来る。
暗黒大要塞鯱:☆5→4/ATK 2100→2300/DEF 1200→1400
「そして罠カード『魔の海域レベル3』を発動します」
「やはり、伏せてあったか……!」
魔の海域レベル3(アニメオリジナル)
【通常罠】
フィールド上に「海」が表側表示で存在する場合に発動する事が出来る。
レベルの合計が3になるように手札から水属性モンスターを特殊召喚できる。
「私は『魚雷魚』と『砲弾ヤリ貝』を特殊召喚!」
『暗黒大要塞鯱』の能力はあの2体がいないと使えない。いってみれば『暗黒大要塞鯱』は銃身で残る2体が弾丸だ。
暗黒大要塞鯱(効果モンスター)
星5
水属性/海竜族
ATK 2100/DEF 1200
自分フィールド上の「魚雷魚」1体を生け贄に捧げる事で、フィールド上のモンスター1体を破壊する。
自分フィールド上の「砲弾ヤリ貝」1体を生け贄に捧げる事で、フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する。
魚雷魚(効果モンスター)
星3
水属性/魚族
ATK 1000/DEF 1000
「海」がフィールド上に存在する限り、このカードは魔法の効果を受けない。
砲弾ヤリ貝(効果モンスター)
星2
水属性/水族
ATK 1000/DEF 1000
「海」がフィールド上に存在する限り、このカードは魔法の効果を受けない。
魚雷魚:☆3→2/ATK 1000
砲弾ヤリ貝:☆2→1/ATK 1000
アニメでアナシス(海の底にアカデミア作ろうとして、潜水艦で十代攫った奴)がやったのと同じ戦法か……ッ!
「『魚雷魚』と『砲弾ヤリ貝』を生け贄に貴方の場のモンスターと魔法・罠カードを1枚ずつ破壊します。私は伏せカードと『バーナーズ・キャノン』を選択」
「その効果にチェーンさせてもらう! 『ガード・ディザーブ』! 1度だけ『
ガード・ディザーブ(オリジナル)
【通常罠】
自分フィールド上に存在する「S」と名のついたモンスターを対象とする戦闘、または魔法・罠・効果モンスターの効果を無効にする。
『暗黒大要塞鯱』が撃ち出した『魚雷魚』と『砲弾ヤリ貝』は、薄緑色のバリアにて弾かれる。
仕組みは『魚雷魚』は『ガード・ディザーブ』で防御し、『砲弾ヤリ貝』は不発。コストとして払ったカードやモンスターは、その効果が不発しても戻ってこない。覚えておこう(誰に言ってるんだ、俺は?)。
それとコストは効果では無いので、『禁じられた聖杯』や『スキルドレイン』で無効化出来ない事も要チェックだ(だから誰に言ってるんだ?)。
「では、『暗黒大要塞鯱』で『F・S バーナーズ・キャノン』を、『ジェノサイドキングサーモン』で『F・S ヴォルカニック・ギア・ガイ』を攻撃!」
「くっ!」
シャチの背中の砲台の集中砲火、そして巨大なシャケの突進が俺のモンスターを軽々と粉砕する。
完全にナメてやがる。攻守の最も高い『F・S ブレイジング・ナイト』を場に残しやがった。
因みに『ナメる』は古語の“甘く見る”という意味の『なめし』が語源だ(誰に言ってるんだって……?)
「ターンエンドです。さあ、貴方のターンですよ?」
「言われなくても……、解っている!」
プライド:LP 3700
手札:1枚
フィールド
:ジェノサイドキングサーモン(ATK2600)、暗黒大要塞鯱(ATK 2300)
:伏せカード1枚、集中豪雨地帯(フィールド魔法)
「俺の、タァーン!」
気合い一閃、カードを引き抜く。引いたカードは……ドローソース!
「魔法カード『火炎の魅力』を発動! デッキから3枚ドローし、そこから炎属性モンスター1体を墓地に送る! ただし、この時炎属性モンスターを送らなかった場合、手札を全てゲームから除外する!」
これは賭けだ。俺のこのデッキは殆どが炎属性。だが、『ネクロ・ガードナー』などの汎用性の高い奴も入っているし、魔法や罠だけしか来ない場合も考えられる。
何も来なければ俺の負け。さあ、デッキよ、答えてくれ!
「1枚目!」
モンスターカード『フェイク・ガードナー』か!
「2枚目!」
魔法カード『強欲な
「頼むぞ……、3枚目!」
引いたカードは……『F・S』!
「『火炎の魅力』の効果で手札の炎属性モンスターを墓地へ送る! そして今送った『F・S バック・ドラフトマン』の効果を発動!
このカードが手札かデッキから墓地に送られた時、手札に加えるかライフを回復できる! 俺は1つ目の効果を選択! COME BACK、『バック・ドラフトマン』!」
火炎の魅力(オリジナル)
【通常魔法】
自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後手札の炎属性モンスター1体を墓地に送る。
手札に炎属性モンスターがない場合、手札を全てゲームから除外する。
F・S バック・ドラフトマン(効果モンスター)(オリジナル)
星3
炎属性/炎族
ATK 1300/DEF 1300
このカードがデッキまたは手札から墓地に送られた時、以下の効果から1つを選択して発動する。「F・S バック・ドラフトマン」の効果はデュエル中2回まで使用できる。
●このカードを手札に加える。
●ライフポイントを500ポイント回復する。
「そして、手札に戻った『バック・ドラフトマン』をデッキに戻してシャッフルし、『強欲な火山口』を発動! ドロー!」
強欲な火山口(オリジナル)
【通常魔法】
手札の炎属性モンスターを1体デッキに戻して発動する。デッキからカードを2枚ドローする。
不思議だ。状況は明らかに俺が不利だというのに、俺の心は静まっている。アイツに勝てると思っている。
そうだ、冷静になれ。落ち着いてプレイングすれば、勝機は見逃さない!
「速攻魔法『融合解除』を発動! 『F・S ブレイジング・ナイト』の融合を解除し、墓地の『F・S 鬼火のウィスプ』と『F・S バーンクロス』を特殊召喚!」
F・S 鬼火のウィスプ:DEF 800→400
F・S バーンクロス:DEF 2000→1000
「そしてモンスターを1体セット! ターンを終了する」
黎:LP 2200
手札:2枚
フィールド
:F・S 鬼火のウィスプ(DEF 400)、F・S バーンクロス(DEF 1000)、セットモンスター1体
:魔法・罠無し
「ふふふ、私のターン」
っさあ、来い! この布陣は簡単には破れないぞ!
「成程、確かに『F・S 鬼火のウィスプ』は攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊もダメージもありません。ですが、これはいかがでしょう? 伏せておいた『サルベージ』を発動! 効果で『魚雷魚』と『砲弾ヤリ貝』を手札に加えます」
チッ、また来る!
サルベージ
【通常魔法】
自分の墓地に存在する攻撃力1500以下の水属性モンスター2体を手札に加える。
「そして『魚雷魚』を召喚!」
魚雷魚:DEF 1000
「今召喚した『魚雷魚』を生け贄に『暗黒大要塞鯱』の効果を発動。『鬼火のウィスプ』を破壊します!」
放たれた魚雷は『ウィスプ』に直撃した。大爆発を巻き起こし、『ウィスプ』は一瞬で吹き飛んだ。
「くっ!」
「そして『バーンクロス』とセットモンスターに攻撃!」
『グガァアアッ!』
『ギジャアァアッ!』
再び集中砲火と突進。俺の場にいたモンスターはたった1ターンで全滅した。
「……(キッ!)」
「ターンエンドです」
プライド:LP 3700
手札:3枚(内1枚は『砲弾ヤリ貝』)
フィールド
:ジェノサイドキングサーモン(ATK 2600)、暗黒大要塞鯱(ATK 2300)
:集中豪雨地帯(フィールド魔法)
「俺のターン、ドロー!」
問題はあいつの手札の中の『砲弾ヤリ貝』だ。カードを伏せてもアレの前じゃ行動が制限されてしまう。使いどころを奴に握られているのと同じだ。
ここはとりあえず……。
「魔法カード『天使の施し』を発動。デッキからカードを3枚ドローし、手札2枚を墓地に送る」
引いたカードは『ネクロ・ガードナー』、『大木炭18』、『F・S バック・ドラフトマン』。意外と早く帰って来たね、『バック・ドラフトマン』。
取り敢えずこれとこれを送って……、と。
「今墓地に送った『バック・ドラフトマン』の効果発動。ライフを500回復する」
黎:LP 2200→2700
「モンスターとリバースカードをセットし、ターンエンド」
黎:LP 2700
手札:1枚
フィールド
:セットモンスター1体
:伏せカード1枚
「ふふ、万策尽きましたか? 私のターン」
「万策尽きたかどうかは、お前の眼で確かめろ」
「そうさせていただきますよ。『ギガ・ガガギゴ』を召喚!」
『ギガァアアアッ!』
ギガ・ガガギゴ:☆5→4/ATK 2450→2650/DEF 1500→1700
現れたのは、『コザッキー』によって改造を施されたトカゲ。防腐処理の施してある金属の鎧を着こんでいる、らしい。
「『暗黒大要塞鯱』で裏守備モンスターを攻撃、そして2体のモンスターでダイレクトアタックです」
巨大なシャチが三度背中の砲台を傾ける。そうはさせない!
「罠発動! 『次元幽閉』! 『暗黒大要塞鯱』をゲームから除外する!」
攻撃力の低い『暗黒大要塞鯱』で砲撃して来る事は分かっていた。コイツを除外してしまえば、奴の手札に残った『砲弾ヤリ貝』はただのザコに成り下がる!
セットモンスターの前の時空が歪んで砲撃を呑み込み、やがて集中砲火ごと『暗黒大要塞鯱』を呑み込んだ。
次元幽閉
【通常罠】
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
その攻撃モンスター1体をゲームから除外する。
「くっ、ならば『ジェノサイドキングサーモン』、やりなさい!」
『グジョアアアアアアアアッ!』
「墓地の『ネクロ・ガードナー』をゲームから除外して、その戦闘を無効化させる!」
ネクロ・ガードナー
星3
闇属性/戦士族
ATK 600/DEF 1300
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
半透明の黒い鎧武者が現れると、巨大シャケの突進を受け止めた。
『ネクロ・ガードナー』はフィールドに出すと攻撃を2回ガードできるが、意表を突けない。出さずに捨てると攻撃を1回しかガードできないが、意表を突ける。少々悩ましい効果だ。
「ちょこざいですね……! ならば『ギガ・ガガギゴ』! “パワード・クラッシャー”!」
グォン! と振られた爪がセットモンスターを斬り裂く。細長いバルーンを持った道化師が破壊された。
「いつまでもそんな小細工が通用すると思うなよ……! 1枚カードを伏せて、ターンエンドです!」
プライド:LP 3700
手札:手札2枚(内1枚は『砲弾ヤリ貝』)
フィールド
:ジェノサイドキングサーモン(ATK 2600)、ギガ・ガガギゴ(ATK 2650)
:伏せカード1枚、集中豪雨地帯(フィールド魔法)
…………? プライドの言葉が一瞬だけ乱暴になった?
どういう…………、まさか!
「俺のターン、ドロー!」
SIDE:大地
―――観客席
今現在、科学では証明できないような不思議な出来事が勃発している。
まず、どこからか黎の義妹さんが現れた。そのまま超人大戦を二人はおっ始め、決着が着いたと思ったら、黒服の男、プライドが乱入し、義妹さんをどこかへと連れて行った。
そしてデュエルに勝てば義妹さんを解放するという条件で黎とデュエルをやっているんだが、このデュエルも普通では無い。
闇のゲーム、というそうだ。近くにいた大徳寺先生が昔少しだけかじった事があるらしいが、デュエルのダメージが現実となり、敗者にはとんでもないペナルティが科せられるらしい。
現に、黎は先の攻撃で吐血した。すぐ止まったが、彼の異質な身体でなければ致命傷だっただろう。
そして現在に至る。
「防戦一方だな…………」
十代が苦々しく言う。それは俺も同感だ。俺の炎のデッキでもあのフィールド魔法相手では歯が立たない。
だが、アレで終わるとは思えない。
「三沢くん、あのプライドという男、さっき言葉使いが変わらなかった?」
天上院くん。それは俺も思っていた。
「仮説でしかないが……」
一応前置きをしておく。何の証拠も無い推理は妄想と同じだと、かのシャーロック・ホームズも言っていたからな。
「あの男は名前の通り、プライドが高い、或いは傲慢な男なのではないかと思う」
「確かに、言葉は丁寧だけどどこかで負けるワケが無いと思ってる節はありそうね」
恐らく想像以上に黎が粘っているから焦りが募り始めているのだろう。焦りはストレスを呼び、結果、冷静さを失う。つまり本性が見え始める、という事だ。
頑張れよ、黎。防戦から攻撃に転じるタイミングを誤るなよ……!
SIDE:黎
ストレスが溜まってきているのか。恐らくあの言葉使いこそが奴の本性。
なら、タイミングを見計らって攻撃に転じれば、奴の戦術を挫ける! タイミングを見誤るなよ、俺!
「魔法カード『強欲な壺』! デッキからカードを2枚ドロー!」
引いたカードは『カップ・オブ・エース』と『逆転の明札』。そして手札のこのモンスターを使うと……。
行ける!
「魔法カード『カップ・オブ・エース』を発動。コイントスを1度行い、表なら俺が、裏ならお前がカードを2枚ドローする。コイントス!」
ここで、ズルとは分かっていながらも、俺は視覚神経に働きかける。動体視力を底上げし、どのタイミングで手を被せれば
「裏! 従ってアンタがドローだ!」
「ふふふ、残念でしたね」
『あちゃぁ~、ディスアドだ~!』
『フン、所詮は奴の実力などこの程度だ』
ちなみに今のは前が誰か。後が万丈目。
もしもし? 運をそうホイホイ掌中に収められたら苦労はありませんよ、万丈目さん?
「そうでも無いぜ? アンタのドローにチェーンして手札の『F・S サニーハットキティ』の2番目の効果を発動! コイツを墓地に送って、手札の通常罠を発動する!」
「手札から罠カードですと!?」
「俺は『逆転の明札』を発動! 相手がドローフェイズ以外でドローした時、俺の手札の枚数が相手と同じになるようにカードをドローする!」
カップ・オブ・エース
【通常魔法】
コイントスを1回行い、表が出た場合は自分のデッキからカードを2枚ドローし、裏が出た場合は相手はデッキからカードを2枚ドローする。
逆転の明札(アニメオリジナル)
【通常罠】
相手がドローフェイズ以外にカードを手札に加えた時、自分の手札が相手の手札と同じ枚数になるようにドローする。
F・S サニーハットキティ(効果モンスター)(オリジナル)
星4
炎属性/獣戦士族
ATK 2000/DEF 900
デュエル中1度だけ墓地に存在するこのカードを手札に加える事ができる。
このカードを手札から墓地に送る事で以下の効果を得る。「F・S サニーハットキティ」のこの効果はデュエル中1回しか使えない。
●自分のターンに墓地に送った場合、手札から通常罠カードを1枚発動できる。
●相手のターンに墓地に送った場合、このカードと墓地に存在するレベル4以下の炎属性モンスターを1体特殊召喚できる。
半透明の麦わら帽子を被ったネコミミ少女が手札の罠カードを手に取り、出現する。半透明の姿が消えると、残された罠カードは正常に発動していた。
「アンタの手札は4枚。対して俺は1枚。従って3枚のカードをデッキからドロー!」
「まさか、ディスアドバンテージを見越していたとは……」
これで手札は補充できた。
さあ、反撃開始だ!
待ってろよ、都。もうちょっとで助けに行けるからな!
to be continued