遊戯王GX~精霊の抱擁~   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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※『マスラ-O』の(3)の効果をモンスター効果に対して発動したシーンを修正しました


五濁悪世(ごじょくあくせ)
仏教に於ける末法の世、五つの汚れに満ちた悪い世の意。「五濁」は五つの穢れで、以下の5種類を指す
・時代の汚れで他の4種が蔓延る時代となる『劫濁(こうじょく)
・煩悩による悪徳が横行する『煩悩濁(ぼんのうじょく)
・誤った思想が常識となる『見濁(けんじょく)
・人間の資質そのものが衰える『衆生濁(しゅじょうじょく)
・生きている事の有難みが薄れたり、人間の寿命が減る事で最長で10歳までしか生きられなくなると言われる『命濁(みょうじょく)





フィオ・フレイ「「なーにかな、なーにかな! 今回は、これ!」」



ヴァレルロード・ドラゴン(リンク・効果モンスター)
リンク4
闇属性/ドラゴン族
ATK 3000
【リンクマーカー:左/右/左下/右下】
効果モンスター3体以上
(1):このカードはモンスターの効果の対象にならない。
(2):1ターンに1度、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする。
この効果の発動に対して相手はカードの効果を発動できない。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(3):このカードが相手モンスターに攻撃するダメージステップ開始時に発動できる。
その相手モンスターをこのカードのリンク先に置いてコントロールを得る。
そのモンスターは次のターンのエンドフェイズに墓地へ送られる。



フィオ「大型リンクモンスターだね、戦闘に有利な効果を沢山持ってるよ」

フレイ「互いのターンに対象に取る効果を使えるので【ヴァレット】デッキではまさに必殺の銃です。素材が重いので召喚の際にはご注意を」

フィオ「モンスター効果の対象にならない効果は自分のモンスターの効果にも適用されるよ、気を付けてね!」


STORY86:五濁悪世(ごじょくあくせ)を喰らう覚悟

 

黎:LP 1700

手札:1枚

フィールド

:EXモンスターゾーン無し

:ヴァレルロード・X・ドラゴン(ATK 3000・ORU:1)

:伏せカード2枚、リボルブート・セクター(フィールド魔法)

 

 

 

ジョーカー:LP 2000

手札:『ジャックス・ナイト』

フィールド

:アルカナ パラディンジョーカー(ATK 5000)

:フルール・ド・バロネス(ATK 3000)、超重天神(ちょうじゅうてんじん)マスラ-O(DEF 4000)、魔救の奇跡(アダマシア・ライズ)-ドラガイト(ATK 3000)

:マイルド・ターキー(7)=ファイヤーオパールヘッド(0)

:ディヴァイン・キャッスル(フィールド魔法)、連成する振動(永続罠)、凡骨の意地(永続魔法)、アークライト・バリア(永続魔法・カウンター:4)

 

 

 

SIDE:黎

 

 

 

「融合召喚! 輝ける刃が舞い、我が極致に馳せる! 天位の究極騎士、『アルカナ パラディンジョーカー』!」

 

 

アルカナ パラディンジョーカー:ATK 5000

 

 

 攻撃力、5000……。

 とうとう奴の切り札を超えた切り札が出て来たか。

 紫色をベースにした鎧はそのままだが、より強固に、よりシャープになっている。盾もバックラーのような小型のものじゃなく全身を隠すような大型のスクトゥムに、剣もロングソードから本来なら重さ故に両手持ちのバスタードソードに変わっていた。

 あれがアイツの本当の姿、ジョーカーが俺を討つために出した奥の手……!

 

「『超鬼札融合(アルカナ・ワイルドフュージョン)』の効果で融合召喚されたモンスターはリリースできず、またオレ自身はコントロールが変更できない。打ち倒すなら真正面から来るしかないぞ」

「……」

 

 コントロール変更とリリースの禁止。前者は『ヴァレルロード・ドラゴン』対策に、後者は“壊獣”や『ラヴァ・ゴーレム』対策になるワケか。

 ハイパワーなモンスターにこの耐性は強いぞ……。

 

「まぁ、このターンで終わるお前には関係無い話だがな! バトル! オレ自身で『ヴァレルロード・X・ドラゴン』を攻撃!」

 

 宣言と同時にジョーカーは両手剣を右手でしっかり握り、鍔から赤・青・黄色の光を流し剣にまとわせる。電子回路のような複雑なラインを描いた光は剣に満ち、一回りも二回りも剣が大きくなったかのように錯覚させた。

 

「……攻撃力の差は2000!」

「これを受けたら、黎さんの負けです!」

 

 3色に輝く光をまとった剣で、ジョーカーが俺のドラゴンに斬りかかる。

 あれを受ければ確かにアウト……。しかしその強烈な一撃が、用心深い性格が、お前を倒す!

 

「俺は『エクスチャージ』を対象に、墓地の『リコシェット・ドラゴン』のモンスター効果を発動! このターン戦闘では勝敗の因果が逆になり、相手に倍のダメージを与える! ただし2500以上のダメージは与えられない!」

 

 本来なら発生するダメージは4000になる、よってジョーカーにダメージは入らない。

 だがここに例外がある。

 

「成程、ジョーカーの発動中の永続魔法『アークライト・バリア』の効果で4000ダメージは2000になる」

「ジョーカーの防御札が、逆に黎に有利になった!」

 

 墓地から小型の金属質な龍が現れ、ジョーカーの重い剣を受け止める。硬質な音と共に衝撃波が発生した両者の激突は均衡を保つも、次第にジョーカーが押し返され始めた。

 アイツのライフは2000、反射するダメージとピッタリ同じ。これで終わりだ!

 

 

 

リコシェット・ドラゴン(効果モンスター)(オリジナル)

星4

闇属性/ドラゴン族

ATK 800/DEF 1500

このカード名の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):墓地のこのカードを除外し、自分の闇属性・ドラゴン族モンスターを対象に発動する。

このターン1度だけ対象のモンスターとの戦闘で発生するダメージは倍となり、相手が受ける。

この効果で相手が2500以上のダメージを受ける場合、ダメージの数値を0として扱う。

またモンスターが戦闘によって破壊される場合、その破壊を無効にし、戦闘破壊されない方のモンスターを戦闘破壊する。

 

 

 

「そうはさせない」

 

 ジョーカーは冷静にそれだけ呟くと、器用に残った手札の『ジャックス・ナイト』を左手で放って光に変えた。

 

「オレ自身の効果発動! フィールド・墓地のカード1枚のみを対象に効果が発動した時、手札1枚を捨てる事でそれを無効にする!」

「じ、自分以外を対象にしても発動できる上に、手札コストの中身を問わないだと!?」

「更にこの効果でモンスターカードを捨てて相手モンスターの効果を無効にした場合、その両者のモンスターカードの攻撃力の合計の半分を、次のオレのターンが来るまでオレ自身に加える!」

「何だって!?」

 

 俺の『リコシェット・ドラゴン』の効果を無効にしただけでなく、800と1900の合計値の半分、1350もバンプアップするだとっ!?

 

 

アルカナ パラディンジョーカー:ATK 5000→6350

 

 

 一旦は押されていた紫騎士の大剣が今度は逆に押し込み始める。

 赤色の金属龍は抵抗を続けていたものの、やがてその刃を受け止める頭ごと真っ二つにされ消滅してしまった。

 

『グゴォオオオオ!?』

「これでもう抵抗の術も無いだろ!」

「くっ!」

 

 

 

アルカナ パラディンジョーカー(融合・効果モンスター)(オリジナル)

星10

光属性/戦士族

ATK 5000/DEF 3800

「アルカナ ナイトジョーカー」+「ジャックス・ナイト」+「キングス・ナイト」+「クィーンズ・ナイト」

(1):フィールド・墓地のカード1枚を対象にした効果が発動した時、手札を1枚捨てて発動できる。

その発動を無効にし、破壊する。

(2):融合召喚されているこのカードが(1)の効果でモンスターカードを捨て、相手のモンスター効果を無効にした場合に発動できる。

次の自分のスタンバイフェイズまでこのカードの攻撃力は、手札から捨てたモンスターと効果を無効にしたモンスターの攻撃力の合計の半分アップする。

(3):このカードのコントロールは変更できない。

(4):このカードが相手によって破壊された時に発動できる。

墓地、または除外状態から自分の「アルカナ ナイトジョーカー」を召喚条件を無視して守備表示で特殊召喚する。

 

 

 

「トドメだ!」

 

 斬り捨てた鉄のドラゴンの事には見向きもせず、ジョーカーの剣が大上段から振り下ろされる。

 赤黄青の3色の光を放つオーラは過たず『ヴァレルロード・X・ドラゴン』を捉え、剣の衝撃波が貫通するように俺に向けて放たれた。

 さながら、過日の敗北を再現するかのように。

 

「黎、避けて!」

「駄目です、もう防ぐ手段がありません!」

「……ジ・エンド!?」

「ここまでなのかっ!?」

「“ワイルドジャックポット・アルカナロイヤルフラッシュ”!」

「ぐぉあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 防御の手も無く真正面からそれを喰らう俺。

 着弾と同時に大爆発が起き、そのまま俺のライフは抉り取られた。

 

「黎ぃっ!」

「主殿ぉお!」

「……負けた!?」

「ここまで喰らい付いたのに……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黎:LP 1700→25

 

 

 ただし首の皮一枚を繋げる形で。

 

「ゑっ!?」

「これは……」

「何と!」

「……おぉ」

「耐えただと!?」

 

 爆発の煙が晴れ、やがてこちらの視界も明瞭に確保されていく。

 そしての俺の目の前には、俺のライフをギリギリで残してくれたドラゴンが、その腕に装着した透明な盾をから煙を上げていた。

 

『ゴォオオオ……!』

 

 

シールドバリスタ・ドラゴン:DEF 2100

 

 

「何だと……!?」

「はぁ……、はぁ……、はぁ……っ! 手札の『シールドバリスタ・ドラゴン』は、戦闘ダメージを半分にして特殊召喚できる……。今発生したダメージは3350、だからその半分の1675が俺のライフから削られ……、ぜぇ、ぜぇ……、25だけライフが残ったってワケだ……!」

「チッ!」

「更にッ! 闇属性・ドラゴン族モンスターが戦闘により破壊された事で、自身の効果により『マッド・トリガー・ワイアーム』を墓地から……ぐっ……、特殊召喚……っ!」

「……『ヴァレル・アンド・カートリッジ』で戻しておいたカード」

「これで壁が2体になりました」

 

 

マッド・トリガー・ワイアーム:DEF 100

 

 

 破壊された大砲の龍に変わり、防弾シールドを持った龍とイカれた目をした引き金型の龍が現れ防衛ラインとなる。

 まだ、俺は負けてない。まだ負けられない……!

 

「あの布陣を前に黎は諦めてない……。最後まで勝とうとしている!」

「……サーは生粋の負けず嫌い、敗北と死が同等だった以上は当然の諦めの悪さ」

「往生際の悪い奴め、だがだからこそか。ならば『マスラ-O』、『ドラガイト』! 邪魔な壁モンスターを蹴散らせ! 『マスラ-O』は守備表示のまま、守備力の数値で戦闘を行う事ができる! 消えろ!」

「っ!」

 

 白い鉄巨人と青い石龍が俺のモンスターを薙ぎ払い、粉砕する。

 これで再び俺の場はガラ空きになった。

 

「『マッド・トリガー・ワイアーム』の……、効果発動……! デッキから闇属性・ドラゴン族モンスターを2体、墓地に送るっ!」

「だがその効果で墓地に送ったカードの効果はこのターン発動できない! そしてオレにはまだもう1体攻撃できるモンスターが残っている!」

 

 確かに、『マッド・トリガー・ワイアーム』の効果で埋葬されたモンスター効果はこのターン無効。

 そして奴の場にはモンスターが4体いて、攻撃は3回しか終わってない。奴の途切れないペンデュラム召喚の戦線、まさかここまで脅威とはな。

 

「トドメだ! 『フルール・ド・バロネス』、奴のライフを削りきれ!」

『ハァァァアア!』

「トラップ発動、『カウンター・ゲート』! ダイレクトアタックを無効にし……、ぐっ、1枚ドローッ!」

 

 白百合の女騎士がジョーカーの号令に合わせて馬を駆り剣を振るう。

 真正面から横薙ぎに振るわれる剣は確実に俺の首を捉えていたが、硬質な音と共に障壁の表面を削るだけに留まった。危ない。しかし『ガード・ブロック』よりこっちの方がこのデッキには合ってると思ったけど、モンスターを引けなかったな。お陰で……。

 

「オレは『マスラ-O』の効果発動! 1ターンに1度相手の効果が発動した時、オレの手札が3枚になるようドローできる!」

 

 ご覧の通りジョーカーの手札が0枚から、一気に3枚になるまで補充されてしまった。

 あの中にモンスターを追加で召喚するカードがあると不味い。『ガード・ブロック』なら適用されないタイミングだったのに、カードチョイスを完全にミスったな。

 

 

 

カウンター・ゲート

【通常罠】

(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。

その攻撃を無効にし、自分はデッキから1枚ドローする。

そのドローしたカードがモンスターだった場合、そのモンスターを表側攻撃表示で通常召喚できる。

 

 

 

「オレはこれでバトルを終了する」

 

 ……どうやら速攻魔法等で追加召喚するカードは引けなかったらしい。

 

「し、凌ぎ切ったぁ……」

「首の皮一枚、いえ薄皮一枚ですかね」

「……超ギリギリ」

「まだ奴のターンは終わっていない、油断するには早いぞ」

 

 後ろでへなへなと腰を抜かすフィオと、それを支えるフレイ。そして安堵の息を吐くポーラに、表情が険しいままの桜。

 残りライフ25、フィールドもズタズタになり、奴の完全な優勢は明らか。しかも手札が3枚もある。やれやれ、追い込まれたな……。

 

「しぶといな、良い事だ」

「はぁ……、はぁ……、ふぅー……っ。そうかい、ありがとよ」

「フッ。オレは魔法カード『タイマンソウル』を発動。この効果によりお前はオレ自身以外を攻撃できなくなり、バトルの間一切のカードを発動できなくなる」

 

 

 

タイマンソウル(オリジナル)

【通常魔法】

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象に発動する。

そのモンスターがバトルフェイズ開始時に存在する場合、相手は他のモンスターをそのターン攻撃できない。

またこの効果で選択されたモンスターが戦闘を行う攻撃宣言時からダメージ計算終了時まで、お互いにカードの効果を発動できない。

(2):墓地のこのカードを除外して発動する。

自分の墓地から通常モンスターを5体選択し、相手はその中から2枚を選ぶ。

選ばれたカードを好きな順番でデッキの1番上に戻す。

 

 

 

 やるな、これで俺は攻撃力6350のモンスターを攻撃しなくちゃいけなくなった。

 しかも奴はコントロール変更ができないし、リリースで除去もできない。対象を取る効果にも強い。更に1ターンに1度魔法・罠を無効にする『ドラガイト』がいて、手札補充の『マスラ-O』もいる。実に盤石、鉄壁の戦線、あれを突破するのは困難を極める。

 

「更に墓地の光属性『聖騎士アルトリウス』と闇属性『幻殻竜』を除外し、『カオス・ソルジャー-開闢の使者-』を特殊召喚!」

『ハァッ!』

 

 

カオス・ソルジャー-開闢の使者-:ATK 3000

 

 

 げっ、ここで『開闢の使者』かよ!

 

「そしてカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

「この瞬間、墓地の『シールドバリスタ・ドラゴン』の効果発動! 墓地のこのカードを除外し、このターンにバトルで破壊されたモンスターの効果を無効にし、攻撃力と守備力を0にして特殊召喚する! 蘇れ『エクスチャージ』!」

 

 

ヴァレルロード・X・ドラゴン:DEF 0

 

 

 

シールドバリスタ・ドラゴン(効果モンスター)(オリジナル)

星5

闇属性/ドラゴン族

ATK 0/DEF 2100

このカード名の(1)(2)の効果はデュエル中にそれぞれ1度しか発動できない。

(1):自分の闇属性・ドラゴン族モンスターが戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。

このカードを手札から特殊召喚し、戦闘ダメージを半分にする。

(2):相手ターンの終了時にこのカードを墓地から除外して発動できる。

このターンに戦闘で破壊された自分の闇属性・ドラゴン族モンスターを自分の墓地から1体選んで特殊召喚する。

この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり発動できず、攻撃力・守備力は0となる。

 

 

 

 地面に紫の魔法陣が開き、中から盾を装着した龍が姿を現した。『シールドバリスタ・ドラゴン』の背中が左右に開くと中から光を乗せた(いしゆみ)が現れる。弩は弦を引き絞って装填された光を射出すると、その光は黒と赤の大砲の龍に成り代わった。

 

「……ではオレは改めてターンエンドだ。効果も使えず、攻撃力も守備力も無い。そんなモンスターで何ができるか、見せてみるが良い」

 

 

 

ジョーカー:LP 2000

手札:0枚

フィールド

:アルカナ パラディンジョーカー(ATK 5000)

:フルール・ド・バロネス(ATK 3000)、超重天神(ちょうじゅうてんじん)マスラ-O(DEF 4000)、魔救の奇跡(アダマシア・ライズ)-ドラガイト(ATK 3000)、カオス・ソルジャー-開闢の使者-(ATK 3000)

:マイルド・ターキー(7)=ファイヤーオパールヘッド(0)

:伏せカード1枚、ディヴァイン・キャッスル(フィールド魔法)、連成する振動(永続罠)、凡骨の意地(永続魔法)、アークライト・バリア(永続魔法・カウンター:4)

 

 

 

 確かに奴の言う通り、今の『エクスチャージ』は木偶の坊も同然。

 敵はモンスターが5体、いずれも攻撃力3000を最低値にした大型モンスター。

 対する俺のライフはたったの25、風前の灯火。ジョーカーは2000だが、永続魔法の効果で2000ダメージが遮断されてしまうので実質4000。

 普通に考えればここから逆転する事なんてできやしない。

 だが。

 

「これが俺のラストターンだ、行くぞ」

「来い」

 

 こんな窮地、何度でも乗り越えて来た。

 負ければ死ぬ状況なんて腐る程あった。

 俺は、負けない。勝つんだ、光を超えて、闇を超えて、ただ純粋に、勝つ。

 勝利して光の力を手に入れて、闇すらも掌中に納めてみせる。

 

「俺のターン」

 

 燃える心を抑え、力強くデッキトップに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バヂンッ!

 

 

 

 

 

「っ!」

 

 な、何だ……?

 カードに、指が弾かれた?

 

「随分禍々しいカードを使っているな」

「何?」

「ここは神聖なる領域、邪悪なものは存在すら許されない。お前のデッキの1番上のそのカード、お前が一瞬触れただけで悍ましいエナジーが膨れ上がった。

 恐らくこの聖域によってカードの内側に封じられた力が、お前という逃げ道に入り込もうとしたからだ。警告してやる、そのカードをドローするのはやめておけ。ああ、善意からの警告だとも。そいつを使ったら最後、お前がどうなるかはオレにも分からんぞ」

 

 邪悪なカードか。つまり、このデッキトップの正体はあのカード。

 ……。

 

「お前は武勇を示した、誰も笑いはしない。敢闘を讃え──」

「うるせぇよジョーカー」

「何?」

「俺のターン……」

 

 再び指が弾かれるような衝撃を受けるが、腕と手の筋肉を硬直させ離す事を防ぐ。痛い、これまでに経験した事の無い痛みだ。

 どう痛いのか、叩かれるような痛みでも斬られるような痛みでも、刺されるような痛みでもない。例えられないんじゃない、恐らくこの激痛は本当にこの世に無い、見つかってないんじゃなくて『存在しない』。これは文字に起こせない、起こしてはいけないものなのだろう。

 痛覚神経をカットして痛みを遮断しようと試みるが、痛みは変わらず脳に訴えられ続けている。神経を介した電気信号じゃないのか。それだけでもこのカードの存在が人知を超えた悪しき異物だと示唆していた。

 だが、それがどうした。

 

「ドロォーッ!」

 

 俺はカードを指で摘まんだまま腕の動きだけでカードをドローし、運命のカードを引く。

 常人なら手が弾け飛ぶだろう。だが俺は化物、人間じゃない。髪の毛の一本まで自分の意志で操るヒトデナシ。爆ぜる手も、吹き飛ぶ指も、俺には存在しない。

 

「俺が引いたカードは『RUM-ケイオス・フォース』! ぐ……っ!」

「黎!?」

 

 聖域の中だから分かる。このカードからまるで蛇のように邪なナニカが這うように俺の中に入り込んで来ている。

 ラースの時は恐らく余剰分が大気中に発散されたからここまでじゃなかった。だがこの場所ではそれが出来ない、だから俺に逃げ込もうとしているんだ。

 使えば確実に、俺はこの黒いモノに犯され潰される。掴んでいるだけでも右指から右腕までがどんどん黒い瘴気のような存在に蝕まれている……!

 

(だったら)

 

 けれど、それでも。

 

(だったら、何だ! 何が問題だってんだ!)

 

 それは俺が、このカードを使わない理由にはならない!

 

(俺は、このカードで破滅しようが、勝つために決闘して(たたかって)来たんだ!)

 

 腐りそうになる腕に力を籠める。筋肉に、骨に、血管に、神経に命令を下す。即ち『負ける事は許さない』と。

 邪神が何だ、このカードの半分はフィオの力! アイツが俺を破滅させるために仕込んだってのか? ふざけるな! 俺はフィオを信じる! アイツが何を懺悔したいのかは知らねぇよ! だが、俺はボロボロの体で俺のためにこのカードを授けてくれたアイツを信じる! 絶対にだ!

 

「ごっ、お、ぉおおおおおおっ!」

「お前……」

「行くぞジョーカァーッ! フィールド魔法『リボルブート・セクター』の効果発動! 墓地の“ヴァレット”モンスターを特殊召喚する!」

 

 モンスターの数の差は4体、4体蘇生できれば十二分!

 

「この馬鹿野郎が……。ならテメェには、力を発揮すら出来ない敗北をくれてやる! 『ドラガイト』の効果発動、『リボルブート・セクター』の発動を無効にし破壊する!」

 

 青い石のドラゴンが冷凍光線を吐き、俺のフィールド魔法を粉砕する。墓地からの召喚もこれで不可能となった。

 良し、これで『ドラガイト』の効果はこのターン使用できない。

 

「更にオレはトラップ発動、『死魂融合(ネクロ・フュージョン)』! 墓地からおジャマ達を除外し、『おジャマ・キング』を融合召喚! その効果によりお前のメインモンスターゾーンは3ヶ所使用不可能となる!」

『おジャマァァァキングゥウウウウ!』

「くっ、ここでか……!」

 

 

 

死魂融合(ネクロ・フュージョン)

【通常罠】

(1):自分の墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを裏側表示で除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。

 

 

 

 ジョーカーはこちらのカードを砕いただけでなく、更に3匹のモンスターを合成した白い不気味な魔獣の能力でモンスターゾーン3ヶ所に罰印を置いてきた。

 展開も封じられ、守備力3000の壁まで増やして……。ますます追い詰められて燃えて来るなぁ!

 ジョーカーの徹底した対策は、そのまま俺に対して感じる危険度! アイツが俺を警戒している事の証左! こんな俺を危険視して最大限に手を打つ、嬉しいねぇ本当に!

 

 

おジャマ・キング:DEF 3000

 

 

「これでお前はモンスターをもう1体しか追加で召喚できない。諦めろ」

「そうはさせねぇよ。1ヶ所空いてれば十二分、エクストラモンスターゾーンを使えば2体出せるって事だからな」

 

 それに奴の手札は今0枚。『マスラ-O』の効果は、俺がカードを発動させなければ使えない。『ドラガイト』で無効にした以上、手札補充は無しだ。

 焼きつきそうな指を力業で動かし、俺は右手に持ったカードをジョーカーに突き付けた。

 

「行くぞ、これが俺の魂のカード! 手札から『RUM-ケイオス・フォース』を発動! このカードは自分のエクシーズモンスターを2つまでランクアップさせ、カオスエクシーズを特殊召喚する!」

 

 フィールドに現れる、黒と白の破滅的な紋様を写し取った魔法カード。

 これこそが俺の切り札、俺の最後の手段。これで勝てなければ、俺の負けだ。

 そして『ケイオス・フォース』を使って敗北するなんて事は、絶対に有り得ない!

 

「俺はランク4の『ヴァレルロード・X・ドラゴン』をランクアップさせ、新たなモンスターに進化させる! 見せてやるよ俺の切り札、お前を打ち倒す最後の鬼札をな!」

「それはどうかな?」

「!」

「オレはオレ自身の効果を発動!」

 

 莫迦な、奴に手札はもう無い筈!?

 訝しむ俺の眼前に展開された魔法陣に黒く歪んだ空間が生まれ、中から光が飛び出す。現れた輝きは1枚の魔法カードになり、その場で除外エフェクトによって分解された。

 

「墓地の『超鬼札融合(アルカナ・ワイルドフュージョン)』の効果発動! 融合モンスターの効果で手札を捨てる時、代わりにこのカードを除外する!」

「なん……だと……っ!」

 

 

 

超鬼札融合(アルカナ・ワイルドフュージョン)(オリジナル)

【通常魔法】

(1):EXデッキの裏側表示のカードを3枚除外して発動する。

自分の手札・フィールドから、「アルカナ」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、または墓地から除外し、その融合モンスター1体をEXデッキからEXモンスターゾーンに融合召喚する。

この効果で融合召喚されたモンスターはリリースできない。

(2):融合モンスターが効果を発動するため、またはその効果によって手札を1枚捨てる場合、墓地のこのカードを代わりに除外できる。

この効果はこのカードが墓地に送られたターンには使用できない。

 

 

 

 バギンッ!

 ガラスか氷の割れる音かと一瞬思った。

 そのくらい甲高い音がして、俺のカードがグレーアウトして砕けたのだ。

 

「俺の、ランクアップマジックが……!?」

 

 まさか手札を0枚にしたのは罠!? 俺がフィールド魔法を囮に本命を使う事を予想していた!? そうして俺が何かカードを発動した瞬間、墓地の『超鬼札融合』を除外する効果で俺の最大の一手を潰すつもりだったのか!?

 

「これでお前のカードは使えない」

「まだだ!」

「ほう?」

「マジック発動っ! 『リターン・ランク・アップ』! 墓地の“RUM”を手札に戻す!」

 

 

 

リターン・ランク・アップ(アニメオリジナル)

【通常魔法】

自分の墓地から「RUM」と名のついたカード1枚を選択して手札に加える。

 

 

 

 墓地ポケットにいつの間にか収納されていた俺のRUMが吐き出され、それを手に取る。触れた瞬間、再び焼けるような、刻まれるような形容し難い、筆舌に尽くし難い痛みに襲われる。

 知るか。痛いから何だ。苦しいから何だ。

 このまま何もせずにいればいつか都が、フィオが、死ぬんだぞ。

 それを俺のこの数刻の苦痛で防げるなら、あまりにも安い!

 

「『ケイオス・フォース』が手札に戻った!」

「……でも、これで」

「そうだ、『マスラ-O』の効果発動! オレの手札が3枚になるようドローする!」

 

 再びジョーカーの手札が補充される。

 終盤にあの制圧は本当にキッツい……!

 

「『RUM-ケイオス・フォース』、発動!」

「オレ自身の効果! 手札を1枚捨てて、それを無効にする!」

 

 『スキル・サクセサー』が墓地に落とされ、手札に戻った俺のランクアップマジックが再び割れて消滅する。

 これで俺の手札は無くなった。フィールドに残っているのは効果も攻守も無いモンスターが1体のみ。

 対する奴はモンスター6体を従えた制圧陣形。誰が見ても、もう俺に逆転の芽は残されていないと言うだろう。

 

「くっ、主殿がこれだけやってジョーカーはまだ2枚も手札が残っているのか!」

「そんな……、これじゃあ、黎は……!」

「最早打てる手が残っていません、ジ・エンドです」

「……彼は頑張った、褒めるべき」

 

 フィールド魔法の展開もできない、オーバーレイ・ユニットが無いから『エクスチャージ』の効果も発動できない。

 

「ここまでだな、貴様は良く戦った」

「……」

「だがもう終わりだ。大人しくターンを終えろ、無駄に引き延ばさず次でトドメを刺してやるよ」

「……」

「なぁ、時には勝てない絶壁があるって知っているだろ?」

「俺は……、墓地の『デフラドラグーン』の効果発動。墓地から同じ名前のモンスター3体を除外する事で、墓地から特殊召喚できる」

 

 

デフラドラグーン:ATK 1000

 

 

 『スニッフィング・ドラゴン』が3枚消滅し、先程落としておいた赤い金属質な翼竜が墓地から復帰する。

 確かに、もう壁モンスターを並べる以外に道は無い。それだって俺の場に出せるのは2体か3体まで。奴の6体のモンスターの猛攻は止められない。『おジャマ・キング』は攻撃力0だが墓地に『スキル・サクセサー』が落ちたから実質800、僅か25だけのライフには致命傷……。

 状況はあの時と同じ、いやそれ以上に悪化しているな。

 

 

 

デフラドラグーン(効果モンスター)

星3

闇属性/ドラゴン族

ATK 1000/DEF 600

このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードは手札の他のモンスター1体を墓地へ送り、手札から特殊召喚できる。

(2):このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地からこのカード以外の同名モンスター3体を除外して発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

 

「まだ足掻く気か? お前なら『カオス・ソルジャー-開闢の使者-』の効果を知らないワケじゃないだろう」

「ああ、モンスターを戦闘破壊すれば2回目の攻撃ができる。つまり俺の『ヴァレルロード・X・ドラゴン』と『デフラドラグーン』はそいつだけで突破されてしまう」

 

 しかも『デフラドラグーン』は攻撃表示だ、2000ダメージが通れば俺の負けになる。

 

「黎……」

「主殿……」

「黎さん……」

「……サー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからこれが、正真正銘、本当に、最後の最後だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで俺は、墓地の『スーパーリローダー・ドラゴン』のモンスター効果発動!」

「何!?」

「ライフを半分支払い、墓地のこのカードとフィールドの闇属性・ドラゴン族モンスターを除外する! 俺は『デフラドラグーン』を除外!」

 

 

黎:LP 25→13

 

 

 ぐ……、25から13ってのも珍しいけど、ここまで来ると体への負担も本当に重てぇ!

 

「そしてこのターンに相手によって無効にされたカードと同じ種類のカードを、相手によって無効にされた回数と同じ枚数だけ墓地から手札に戻す!」

「ンだとぉ!?」

 

 このカードのモチーフはコンピューター用語で言う“スーパーリロード”。即ちデバイスの中に残っているキャッシュを無視して、強制的にWebページを再度読み込む方法である。

 相手のカウンターというキャッシュの不具合を無視して、俺の望むカードを再度読み込ませるこいつは、こういう事を想定して1枚だけ突っ込んでおいた。

 ジョーカーが狭い範囲ながらもカードを無効にする効果を持っている以上、無効化合戦がどこかのタイミングで発生するのは想定の範囲内。ならば今こそ、その仮想の状況を現実に反映する時だ!

 

「……このターンに無効にされたのは『リボルブート・セクター』、それと『ケイオス・フォース』」

「一度墓地に落ちてから回収している以上、カウントは3枚扱いだ」

「って事は……!」

「墓地から戻れ、『死者蘇生』! 『リターン・ランク・アップ』! そして『ケイオス・フォース』!」

 

 

 

スーパーリローダー・ドラゴン(効果モンスター)(オリジナル)

星4

闇属性/ドラゴン族

ATK 1800/DEF 500

このカード名の効果はデュエル中1度しか発動できず、発動したターン自分はカードをセットできない。

(1):LPを半分払い、墓地のこのカードと自分フィールドの闇属性・ドラゴン族モンスター1体を除外して発動する。

このターン相手によって無効にされた自分のカードの枚数だけ、自分の墓地から無効にされたカードと同じ種類(モンスター・魔法・罠)のカードを手札に戻す(同名カードは1枚まで)。

この効果で手札に加えたカードは他のカードを発動・特殊召喚するために手札から離す事はできない。

 

 

 

 墓地ポケットから排出される3枚のカードを手にした瞬間、腕の中に何かが抉るように入る感覚が刺さった。

 激しい痛み、筋骨を毟り取られるような不快感、電気信号をどうイジっても変えられない世界のルールのようなそれを、俺は意志の力だけで抑え込む。

 痛い? 知るか。

 苦しい? だったらどうした。

 辛い? 黙れ。

 そんなものが何の役に立つ。俺に必要なのは、どんな敵も叩き伏せる圧倒的なパワーのみ!

 

「魔法カード『死者蘇生』! 蘇れ、『フュリアス』!」

「『ヴァレルロード・F・ドラゴン』の効果は2体を対象にします、ジョーカーの効果じゃ防げません!」

「つまりジョーカーに選択の余地は無い!」

「チィッ! オレはオレ自身の効果を発動! 手札を1枚捨てて、『死者蘇生』を無効にし破壊する!」

「続けて『RUM-ケイオス・フォース』、発動! 俺は、ぐっ! ランク4の『エクスチャージ』でっ、お、オーバーレイ!」

「オレ自身の効果! 手札1枚と引き換えにそれを無効にして破壊だ!」

 

 俺の墓地に『死者蘇生』と『ケイオス・フォース』、ジョーカーの墓地に『地盤沈下』と『オールド・バウアー』が飲み込まれ、カードの応酬が一瞬で終わる。

 俺の手札はこれで1枚、奴は0枚。

 

「はぁ、はぁ……っ。少し、ばかり、足りなかったな……!」

「……っ!」

「マジック……、発動! 『リターン・ランク・アップ』!」

 

 墓地から再びランクアップマジックが手札に戻る。

 ふと、右腕を汗が伝う感覚がした。

 視線をやればそこには、赤い血がドクドクと零れていくドス黒く変色した俺の右腕が。邪神の力に耐えられず、俺の腕の方が負けてしまったらしい。

 痛みは……、あるけれど耐えられる。常人ならのたうち回る程の激痛も、俺にとっては些事だ。

 

「はぁ、はぁ……、すぅ、はぁー……っ」

「れ、黎、腕が……」

「狼狽えんなよ、フィオ。俺は化物、この程度でどうこうなるワケが無いだろ?」

 

 痛覚遮断、失敗。

 感覚遅鈍化、失敗。

 筋骨修復、失敗。

 既に右手は完全にイカれているみたいだ。切り落として一から生やすしか無いらしい。

 

(嗚呼、良かった)

 

 脂汗を垂らしながらランクアップマジックを改めて右手に持ち、俺は安堵する。

 

(こんな目に遭うのが(ヒトデナシ)で、本当に良かった)

 

 大丈夫。俺は……、このくらいじゃ死なないから。

 

「ここで墓地の『フュリアス』のモンスター効果発動。このカードを墓地から除外し、墓地の闇属性リンクモンスターを蘇生させる。ただしこのターン、効果を発動する事はできない。蘇れ、『トポロジック・ボマー・ドラゴン』」

『GuVooooooo!』

 

 

トポロジック・ボマー・ドラゴン:ATK 3000

 

 

 これで準備は整った。

 お終いにしようぜ、ジョーカー。

 

「すぅー……、ふぅー……」

「……」

「行くぞ!」

「っ!」

「俺は『RUM-ケイオス・フォース』を発動! 自分フィールドのエクシーズモンスターを2つまで高いランクのカオスエクシーズにランクアップさせる! 俺はランク4の『ヴァレルロード・X・ドラゴン』でオーバーレイ・ネットワークを再構築!」

『ゴォオオオッ!』

 

 既に右手は思うように動かない、なのでカードを挟んだ指先ごと髪の毛を巻き付け操り人形のように外側から強引に動かす。もう少し耐えろ、俺の右腕。勝つんだ、負けちゃいけない。デュエルが終わるまで形を保て。邪神を討つまで朽ちるな。俺に今ここで死ぬ事は許されない。許されてはいけない。

 俺のランクアップマジックが光を放ち、その光が『エクスチャージ』に受け継がれる。背中に二門の大砲を背負った赤と黒の龍はエネルギーの塊となって銀河の渦に再び飛び込んで爆発を起こし、新しい命を紡ぐかのように輝いた。

 

「カオス・エクシーズ・チェンジ!」

 

 

★4→★6

 

 

 最初に構築されるのは、翼。紅色だったレーザーウィングはより大きく、力強くなり、色も赤と紫の二色に書き換わる。

 

金輪奈落(こんりんならく)より産まれし雷轟、五濁悪世(ごじょくあくせ)に満ちる時!」

 

 背中の大砲は三門に増え、両肩と頭の上に構築されていく。伴ってより鋭い爪と牙、より禍々しい尾が明確な形を得た。

 

三世十方(さんぜじっぽう)を焼き尽くす瞋恚(しんい)(ほむら)が終焉を告げる!」

 

 ボディは全体的に真っ黒になり、赤と紫の電子回路のような模様が刻まれた。そして背中には毒々しいまでの棘が無数に並ぶ。

 

来臨(らいりん)せよ、ランク6!」

 

 最後に目が白い輝きを得る。黒目の無いその眼は、漆黒のボディと相俟って闇夜に獲物を狙う獰猛な魔獣を思わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ヴァレルオーバーロード・CX(クロスエクスチャージ)・ドラゴン』ッ!」

『Vaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 圧倒的な威圧感。

 そこに存在するだけで重く伸し掛かる気配。ただ強いモンスターというだけではない、コイツには邪神という理外の力が流用されているが故のものだ。

 

「れ、黎っ、腕が……、腕が……ぁっ!」

 

 半ば錯乱したフィオに指摘されて右腕を見る。

 俺の右腕はグチャグチャに変形し、ベコベコに凹んでいた。四方八方から圧力をかけられパンクしたかのようにも見える。これが腕だったと言っても信じる奴はいないだろう。

 ああ、痛みが薄まったと思ったらこんなになっていたのか。よく見れば胴体に邪悪なエネルギーが侵入を始めている、時間をかけてられねぇな。

 

 

ヴァレルオーバーロード・CX・ドラゴン:ATK 4000

 

 

「テメェ、腕一本の犠牲では済まねぇんだぞ、そのカードは!」

「自覚しているさ。この邪神のクソ野郎は肺まで狙い始めやがった、ランクアップマジックはもう墓地に行ったのに『クロスエクスチャージ』に移り変わって俺に流れ続けてやがる。5分もすれば俺の肺はお陀仏、呼吸できなくなって俺は死ぬ」

「!」

 

 だが、お陰で分かった事が1つある。

 そうか、そういう事だったんだ。

 本当は俺だったんだ。

 都じゃなかったんだ(・・・・・・・・・)

 

「決着と行こうじゃないか、ジョーカー!」

「やれるものならやってみろ! お前がEXデッキからモンスターを特殊召喚したこの瞬間、墓地の『オールド・バウアー』のモンスター効果発動! デッキトップのカードと墓地のこのカードを除外し、墓地から絵札の三銃士の内2体を手札に戻す! オレは『キングス・ナイト』と『クィーンズ・ナイト』を選択!」

 

 

 

オールド・バウアー(チューナー・効果モンスター)(オリジナル)

星3

地属性/戦士族

ATK 1000/DEF 1000

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「クィーンズ・ナイト」を1枚手札に加える。

このターン、通常の召喚とは別に「クィーンズ・ナイト」を召喚できる。

(2):相手がEXデッキからモンスターを特殊召喚した時、デッキの1番上のカードと手札・フィールド・墓地のこのカードを除外して発動できる。

墓地に存在する「クィーンズ・ナイト」「キングス・ナイト」「ジャックス・ナイト」の中から2枚を選択して手札に加える。

 

 

 

 奴の手札が2枚増えたか。で、除外されたデッキトップは……『おジャマジック』だな。

 だが関係無い!

 

「『ヴァレルオーバーロード・CX・ドラゴン』の効果発動! “アンチ・エネミー・クロスエクスチャージ”!」

 

 今、俺は自分の運命を悟った。

 十二分だ、俺がここに来た意味はあった。それで重畳。俺は、俺の人生を、見極めたのだ。

 人生ってのは、そういうモノだろう? 死を前にして自分の生まれた意味を知るものだろう?

 

「ライフを半分払いオーバーレイ・ユニットを1つ使う事で、墓地の“ヴァレル”リンクモンスター1体を対象に発動! そのモンスターを特殊召喚する!」

「オレ自身の効果発動! 相手がフィールドまたは墓地のカード1枚を対象に効果を発動した時、手札を1枚捨てる事でそれを無効にし破壊する! 手札の『キングス・ナイト』を捨てて、“ターンカット・オーダー”!」

 

 奴の手札が1枚消え、剣先から波動を放ってこちらの効果を妨害してくる。

 怪しげな電波のようなものを受けた大砲の黒龍はしかし、それを受けても平然としており、鬱陶しいと言わんばかりに弾き返した。

 

「無駄だジョーカー。俺のランクアップマジック『ケイオス・フォース』は特別製でね、ランクアップしたモンスターは相手ターン終了時まで相手の効果を受けない。よって『クロスエクスチャージ』の効果は無効にされない」

「なん、だと……!?」

 

 

ヴァレルオーバーロード・CX・ドラゴン:ORU 1→0

黎:LP 13→7

 

 

「さぁ蘇れ、『ヴァレルロード・ドラゴン』!」

『Gaaaaaaaaaaaa!』

 

 

ヴァレルロード・ドラゴン:ATK 3000

 

 

「チッ、だがお前はオレ以外を攻撃できない! そしてオレは自身の効果でコントロールを奪えない!」

「更に! この効果でモンスターが特殊召喚された時、相手モンスター1体の効果を無効にして攻撃力・守備力を自分フィールドのリンクマーカー1つにつき600ダウンさせる! 俺が対象に選ぶのは、当然お前自身だ!」

「ば、莫迦な……っ!?」

 

 

 

ヴァレルオーバーロード・CX(クロスエクスチャージ)・ドラゴン(エクシーズ・効果モンスター)(オリジナル)

ランク6

闇属性/ドラゴン族

ATK 4000/DEF 4000

レベル6モンスター×3

このカードは「(カオス)」モンスターとしても扱う。

このカードの(2)の効果を発動するターン、自分は1度しか攻撃宣言できない。

(1):このカードは効果では破壊されない。

(2):このカードが「ヴァレルロード・X・ドラゴン」をX素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、LPを半分払ってこのカードのX素材を1つ取り除き、自分墓地の「ヴァレル」リンクモンスター1体を対象に発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

その後、相手フィールドのモンスター1体を選んでその効果を無効にし、攻撃力・守備力を自分フィールドのリンクマーカーの合計×600ダウンさせる。

 

 

 

 轟! と新しく生まれた黒い龍が口腔内の砲門からビームを放つ。

 ジョーカーは器用にそれを盾で受け止めるが、毒に犯されるかのようにその場で片膝をついた。

 

 

ヴァレルオーバーロード・CX・ドラゴン:ORU 1→0

アルカナ パラディンジョーカー:ATK 6350→5000→200

 

 

「ぐ、ぅぅぅ……!」

「エグッ!? 攻撃力が一気に200になっちゃった!?」

「これで攻撃力の差は3800!」

「ただしこのターン、俺は1回しか攻撃できない」

「だが永続魔法『アークライト・バリア』の効果でオレが受けるダメージは2000ポイント減る! よってダメージは1800にダウンし、ライフは200残る! 更に強化されたオレは破壊された時、元のオレ自身を特殊召喚できる効果がある! それでお前は終わりだ!」

 

 確かに次のターンに奴のフィールドには攻撃力3800の奴自身と守備力4000の『マスラ-O』が存在する事になれば、そのどちらかの攻撃を受けたら俺は終わりだ。

 次のターンがあればな!

 

「お前、1つ忘れてるぞジョーカー」

「何!?」

「『ヴァレルロード・ドラゴン』の効果発動! 1ターンに1度、モンスター1体の攻撃力を500ダウンさせる! “アンチ・エネミー・ヴァレット”! この効果の発動に対し、相手はカード効果を発動できない! 俺はお前自身を選択!」

「しまった!?」

 

 

アルカナ パラディンジョーカー:ATK 200→0

 

 

 そして追加で赤い龍の援護射撃が突き刺さる。

 側面から放たれたビームが盾に直撃し、強固な大盾は耐えきれずに砕けてしまった。

 

「ぐっ!」

「……攻撃力が、ゼロに!」

「これでジャスト2000ダメージだ、主殿!」

「行くぞ! 『ヴァレルオーバーロード・CX・ドラゴン』で『アルカナ パラディンジョーカー』を攻撃!」

 

 三門の大砲を背負った龍が四つん這いのように大地に伏し、背中と口の中、更に装甲を稼働させて覗かせた肩や脇腹の砲門を構えて狙いを定めた。キャノン砲には黒い光が集い、禍々しいまでのビームを撃ち出す。

 盾を壊されたジョーカーは大剣でそれを受け止めようとするが、しかしブラックビームの奔流はジョーカーの全身を過たず無慈悲に呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“黒焉(こくえん)のヴァレル・テンペスト”!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見事だ」

 

 黒い光線を全身に浴びた騎士は、それだけを呟くと断末魔すら零さずに吹き飛んでいった。

 

 

ジョーカー:LP 2000→0

 

 

黎:WIN

ジョーカー:LOSE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やった、の? 黎が勝ったんだよね!」

「はい、文句無しの逆転勝利です!」

 

 着ていた紫の鎧も砕け、地面に倒れるジョーカー。

 右半身を犠牲にしつつも辛うじて勝利を得た俺。

 今、雪辱は果たされ趨勢は決定された。

 

「やった……、やった、やったー! 黎が勝ったぁー!」

「大逆転、見事だった主殿!」

「やりましたね、黎さん!」

「……ぱちぱちぱちぱち」

 

 取り敢えずは後ろでずっと俺の戦いを見守ってくれた彼女達に、一言お礼を言いたいな。

 そう思って痛む右腕を抱えつつ振り返り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこで俺の意識は途切れた。

 

 

to be continued

 




五濁悪世は本来1人で背負うものではありません、例えそれが人間を遥かに凌駕する化物であっても……。



現在、新しいシリーズの構想を練っております。ゲストで黎が裏方参加する、かも……?
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