◇月∨日
いつもと変わらずイズの店は繁盛している。美人な鍛冶屋は儲かるというのは事実のようだ。そんなことを考えながら一週間ほど前に頼んでいた九つの日本刀を受け取る。
お好みの名前を入力していいと言われたが、最初から決めていた名前を入力しておいた。私の尊敬する数少ないキャラの武器の名前だ。
そう、この九つの日本刀はロロノア・ゾロの技を再現するために必要なモノなのだ。ちなみに三振り目は「秋水」ではなく「雪走」である。
私は秋水より美しい波紋を持つ雪走の方が好きなので好みの違いで友達とは口論になりそうだ。それにイズの腕前が噂通りで助かった。
こんな同質の武器を九本も作ってくれるのは彼女ぐらいしか居ないだろう。そんなことを考えながら頭部のスロットに「和道一文字」をセットする。
魚介類を捕まえる時に偶然とはいえ武器を噛めることが分かって良かった。うん、これほど嬉しいことは食事の次くらいにない。
右腰に三本の刀を揃えるように佩いて二刀流や一刀流を店の近くにある空き地にて試す。握りは良いけど、筋力の無さで振るうのが遅いのかな。
◇月≒日
第2階層の建設を終えたという告知を受け取り、第1階層から人が減ってきた。そろそろ私も新しい食材を求めて、第2階層へ行こうかな。
ゴリゴリとした食感の石のようなトカゲを食べながらダンジョンへ向かっているとクマみたいなモンスターが出てきた。雪走を両の手で握り締め、高く刀を振り上げて特攻するように振り落とす。
ふむ、ゲームの補正効果の影響で見様見真似とはいえロロノア・ゾロの使っていた一刀流"大辰撼"の精度は上がっている。
そんなことを考えながら両断したモンスターが消える光景を見て後悔する。あれは生きたまま食べればクマの味を知ることが出来たのに、なんで斬っちゃったのよ。
自分の過ちを慰めるようにウサギを食べながらダンジョンの通路を歩いていると、メイプルとサリーが後ろからやって来るのが見えた。
メイプル達も第2階層を目指しているそうだ。
私はソロで来てるけど。いや、二人のパーティーには入らないよ。まあ、先駆者としてボス攻略のヒントを残してあげよう。
戦うところを出入り口の近くで観察するのはシステム的にも問題ないし、パーティーを組んでないなら攻撃を受ける心配もないよ。
◇月₩日
やっぱり、今時の女の子は漫画より可愛いものが好きなのだろうかと思いながらも昨日のシカを倒している光景を運営側に録画されていたようだ。
広場にて三刀流を使っている私が映っていた。まあ、誰かに見られても興味ないし、襲ってくるような相手はいないはずだ。
そんなことを考えながらハムハムと隣でクレープを食べるメイプルを見る。なぜか三刀流のようなスキルが欲しいと言っているのだ。
しかし、私はスキルというより趣味の延長で三刀流を使ってるようなモノだからね。それほど接近戦で二つの盾を使うキャラなんて居たわね…。
それでも大盾使いのメイプルには円形の盾は不向きのような気がするし、本人には聞いておいた方が良いのだろうか?
とりあえず、説明だけしておこう。
私の知ってる人なんだけど、その人は二つに別れる円形の盾は持っていてね。打撃技と盾を組み合わせていた。やっぱり、仮面ライダーオーズのブラカワニはカッコいい。
あとで動きは教えるけど。
今からイズのところで半月型の盾を二つほど作って貰うのもいいかな。そうすれば両の手に盾を装備できるし、近付いてきた相手を「シールドアタック」で叩けば攻撃もできる。