なのは+『永遠の空』   作:黒影翼

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第十一話・進化VS成長

 

 

第十一話・進化VS成長

 

 

 

Side~ディアーチェ

 

 

 

「ははは!どうした?その程度か!」

 

っち、小賢しい…

 

偽者との戦闘は、厄介なものだった。

妙な技を使ってくるのも原因の一つだが、最も厄介なのは遠近両用バインドだ。

 

発生速度まで速いというふざけた仕様の拘束魔法。

バインドを警戒しなければならない為遠距離から高威力の魔法を撃つ事もろくにできず、此方の小技は丸ごと高威力砲撃や、インフェルノとか言う謎の黒弾の雨を放つ魔法によって掻き消される。

 

まったく…厄介な物だ。

 

「ならば、これでどうだ。」

 

王として、部下を扱う事を目的に鍛えてきたゴーレム操作。

専用に作っておいた人形等を操作したり、土等から簡易ゴーレムを生成して操作する事が可能。

当然専門技能から外れている為、専用のデバイスを用意する等の手間はあったが、保有魔法にも併用できるため無駄ではなかった。

 

空中戦の最中の為、今回は人形を放つ。

槍を持たせた人形数対を放出し、誘導弾のように飛ばした。

 

「そんな物で何が出来るか!」

 

小さな魔力弾を次から次へと人形に向かって放つ偽者。

さすがに人形操作で、オマケに半自動状態では魔力弾などかわしきれる筈もなく…

 

 

魔力弾の直撃を受けた人形は爆発四散した。

 

「なにぃ!?」

 

人形の爆発によって一瞬互いの姿が隠れる。

直前の叫びを聞く限りでは驚いてはくれたらしい。

 

人形内に仕込んでおいたのは、宴会用の爆煙を放つ道具を加工した物。

管理局では質量兵器は使えない為使い手が少なく、この類の小道具は意表をつきやすい。

リライヴや速人は魔法以外の小道具も多用する為、同様に小道具に分類される人形に仕込んでおいたのだ。

 

いくら奴が自在にバインドを扱えると言っても、遠距離で視界から外れている相手に高速バインドなどは扱えまい。

 

「消し飛べ!アロンダイト!!」

 

全力での魔力砲撃。

煙を破るように放たれた砲撃が、偽者の居た辺りに向かっていき…

 

 

何かと衝突した。

 

「ち…いっ!」

 

晴れた視界の先に映ったのは、同じく砲撃魔法を放つ偽者の姿。

撃ち合いまで拮抗するとは、ふざけた偽者だ!

 

互いに力を込め、出力を上げた所で…

 

 

爆発が起きた。

 

 

相殺されたか、つくづく厄介な。

 

「っ!何!?」

 

砲撃相殺の衝撃で崩れた体勢を整えた程度の時間で、我の体にバインドがまとわりついていた。

くっ…派生が速過ぎる。

 

「ふん、随分手間をかけさせてくれたな。だが!」

 

デバイスを振り上げる偽者。

膨れ上がる魔力が、それまでの小技とは異なるものを放つ気でいる事を示している。

 

「これで終わりだ。小鴉のコピーに過ぎない貴様と我の力の差…その身で味わうがいい!」

 

告げると同時、偽者の前に黒い巨大な魔法陣が展開される。

 

たかが単発の大技、バインドさえ解除できれば捌いてみせるわ!

 

魔法発動の直前でどうにかバインドを解除する事が出来た。

さすがに今からでは魔法発動そのものを止めるには間に合わん。相殺するだけの攻撃も打つ時間がない以上防御か回避で凌ぐ事になる。

 

おそらくは広域高威力攻撃。完全に避けるのも防ぎきるのも難しいだろうが、威力の薄い場所まで移動した後防ぎきる事は可能なはずだ。

 

 

 

 

「いでよ巨獣!ジャガーノート!!」

 

 

 

 

魔法陣から放たれたのは、小鴉のフレースヴェルグを思わせる連続砲撃だった。

だが、一つも我に着弾することなく周囲に逸れて…

 

 

 

フレースヴェルグ?

 

 

 

思い出した魔法に嫌なものを感じた瞬間、我は闇の魔法に飲み込まれた。

 

 

 

Side~シュテル

 

 

 

炎を纏った自身の偽者と戦いながら私は、炎熱変換の能力はシグナムのような剣士よりむしろ射砲撃に合うと感じていた。

 

「くっ…」

 

障壁に衝突した誘導弾がその度に爆熱を伴い障壁を揺るがす。

 

誘導弾そのものの威力に、爆発と熱の威力が着弾時に逐一加えられる。

なのはがマスターに攻撃を当てる為に開発した、放った弾の魔力をそのまま爆発させるバースト系の効果を、殆どの魔法が常に持っているのだ。

 

シグナムのような近接戦の場合、武器そのものを爆発させる訳にもいかないし、武器に纏った魔力を爆発させても武器が傷む。

更に、炎…熱というのは元々低いほうへ広がる性質を持つ。武器に収束させるより、放って着弾地点で更に広がるほうが炎の性質にも合っている。

 

厄介な相手だ。

 

周囲から狭まってくるバインドに拘束される前に上昇し、デバイスを構える。

 

「パイロシューター。」

 

放ったのは、こちらも同じく誘導弾。

直線的で制御も利かない単発砲撃など、回避されて終わってしまうから。

 

が…予想外の事が起きた。

 

「っ…バインド?」

 

バインドに拘束されたのだ。

 

確かに誘導弾制御中は確かに自由に動けない。

だが、放たれた魔力弾が縛られただけでいきなり消えるなどということがあるはずもなく、私が放った誘導弾は偽者に着弾直前に至っていた。

 

防御や回避の間もまともにない。いったいどうする気かと眺めていると、偽者の防護服が弾けとんだ。

 

 

リアクターパージ。

 

 

防護服に使われている魔力を全て使って身を守る緊急防御手段だが、それはつまり防護服を失う事を意味している。

再構築すれば問題ないが、それにも間が必要な為本来は最終手段のようなものだ。

間違っても攻撃を当てる為に使う代物では…

 

そこまで考えて、昔模擬戦でなのはが私に似た手を使った事を思い出した。

 

「この状況の何が可笑しいのですか?」

「あぁいえ、貴女のほうがなのはに似ていると思いまして。」

「…なのはの完全模倣品で魔法に個性の一つもない貴女がよくそんな事を言いますね。」

 

別に侮辱する意図はなかったのだけど、彼女にとってはあまり関係のない話のようだ。

おそらくは自身の偽者に評価を受けるという事自体が苛立つ原因なのだろう。

 

随分と余裕のない話だ。

 

だが、実際に余裕がないのは私のほうだった。

偽者は炎を猛らせながら砲撃の体勢に入っていて、私のほうはバインドの解除にまだ少し時間が要る。

 

「ディザスター…」

 

初めて聞く詠唱ではあるが、溜めている魔力を見ても体勢を見ても間違いなく砲撃であろう事は想像がつく。

解除して直線上を外せれば…

 

「ヒート!」

 

灼熱を伴う砲撃が放たれると同時、どうにかバインドの解除が間に合った私は即座に砲撃と垂直方向に移動することで射線をはずれ…

 

 

移動中の私に向かって二射目が放たれた。

 

 

砲撃『連射』魔法?

なのはのフォースバースト等を考えれば出来ない芸当でもないだろうけど、完全に殺す気の魔法だ。

 

避けられないと判断した私は、咄嗟に防御魔法でそれを受ける。

即時防御で砲撃魔法を受けきるのは難しいとも思ったから回避を選択したが、連射ならその分一発の威力はそこまででもないはず…

 

「ぐ…」

 

着弾と同時に爆発する砲撃。

防御から不快な音と感触が伝わるものの、連射になっている分威力と射程は落ちているようで、予想通り凌げ…

 

 

 

防御魔法越しに三発目の砲撃魔法が放たれ、向かってくるのが見えた。

 

 

 

当然だが、別に二発で終わりとは誰も言ってはいない。

気づくと同時、砲撃魔法が着弾して防御が砕ける感触がした。

 

 

 

Side~レヴィ

 

 

 

どー見てもフェイトのソニックフォームだからわかってはいたんだけど…

 

速い。メチャクチャ速い。

 

「がんがん行くよ!光翼連斬!!」

 

中距離で何をし出すのかと思ってたら、いきなり光翼斬が二個連続で飛んできた。

あのフォームって速くなるための物じゃないの?

フルドライブとか言うののはずだから強い魔法が使えるようになってるのは不思議じゃないけど、魔法の発動が速くなるなんて聞いた事ない。

 

フルドライブの時用に連続で撃てるように魔法作っておいたのかな?って

 

「考えてる場合じゃない!光翼斬!」

 

ボクは一つ目に光翼斬をあわせて相殺、二つ目に来たのをデバイスで叩き切った。

それで間に合ったのはいいんだけど…

 

「隙だらけ!貰った!!」

「あぐっ!!!」

 

ただでさえ速いのに大振りで飛び道具なんて掻き消したら、振りぬいた所を狙われるのは当たり前だ。

咄嗟に手甲で受けとめたけど、それでも思いっきり吹っ飛ばされた。

 

うーん、自分の偽者が強いのは喜んでいいのかな?弱かったら弱かったで何かショックな気もするし。

 

「何だよ、ついてこれてないのに決められない。」

「そりゃボクだって一応高速型だし、ちゃんと見えてるんだからな。」

 

スピードで勝ってるのにボクを倒しきれないのが納得いかないのか不満そうな偽者。

 

マスターとかと試合すると見えてても防げない時があるから、そういうのに比べたら変なことが無くていい。

って言ってもやっぱり速いし、受けたら止められるマスターの剣と違って吹っ飛ばされるし大変は大変なんだけど。

 

このままやっててもどうしようもない気がする。よーし…

 

「走破・雷鳴陣!!」

 

さすがに高速移動魔法と一緒に攻撃できるこれなら少なくとも回避は出来ないはず。

そう思ったボクは、雷を撒きながら超高速で偽者の目の前に移動して…

 

「あれ?」

 

あたると思った位置に、偽者の姿がなかった。

よく見れば結構後方に水色の魔力が見えて…

 

「うわっ、バインド!?」

 

いきなり拘束された。

ボクが動くのと同時に下がったんだ。

 

「追の太刀・極光!!」

 

そのまま偽者は、十字にデバイスを振るって水色の刃を飛ばしてくる。

結構大きい…直撃したらさすがに危ない!

 

「これくらい…っ!!」

 

バインドを無理やり引きちぎって慌てて防御魔法を展開する。一つ目の刃が防御に食い込んで、二つ目が重なって十字になったところで防御が割れた。

 

「っ!あ、危なぁ…」

 

ぎりぎり防御魔法が砕けて掌がちょこっと裂けただけですんだ。

助かった、と思ってると…

 

 

水色の魔力剣がいくつも飛んできた。

 

 

あたったらまずい、避けないと。

 

「よし!何とか避け…あれ?」

 

どうにか避けきった。そう思ったんだけどいきなり体が動かなくなった。

何か引っかかってるような感じがして背中を見てみると、マントに剣が突き刺さってた。

外れた剣も、ボクのすぐ傍で逃げ道を塞ぐ様に止まってる。

 

「はっはっは!見たかボクの新技!魔力光だけ違う訳じゃないんだからな!」

 

剣が突き刺さったボクに向かって、偽者は手をかざした。

それと同時に、剣の魔力が膨れ上がっていく。

 

うわ、これまずい…

 

「雷刃封殺爆滅剣!!!」

 

危ないと思ったちょうどその時、ものすごい雷撃音が当たりに響き渡った。

 

 

 

Side~ディアーチェ

 

 

 

「ははははは!直前でバインドを解いた所で逃げ切れるはずもなかろう!所詮模造品などその程度…なに?」

 

偽者の高笑いが聞こえる中、どうにか浮かんでいられた。

ケージ、プロテクション、フィールドと三連続で張っても戦闘不能直前まで追いやられるとは思わなかったが。

 

「ちいっ、模造品の分際でしぶとい。だが…」

 

偽者が悪態をついた直後、紅の炎と水色の雷撃が離れた場所で輝いた。

これは…シュテルとレヴィの偽者達の魔法か。

 

「他も片がついたようだし、あとは貴様から紫天の書を取り返せば終わりだ。」

 

あくどい笑みを浮かべる偽者に少し苛立ちを覚える。

 

「そう悔しがるな、ここまで持ちこたえただけでもよくやったと」

「勘違いするな馬鹿者が。」

 

得意げだった偽者の表情が一気に歪む。

短気極まりないな、まったく…余裕がないと言うのはこうも小物に見えるのか。少々気をつけねばならんな。

 

「貴様…その様でよく暴言を吐けるものだな。」

「二人を見てみろ。」

「何?」

 

怒りに表情を歪める偽者に、シュテルとレヴィの戦っている方に目を向けるように言う。

偽者は素直に視線を移し…

 

 

未だ尚鏡合わせのように相対しているシュテルとレヴィの姿を視界に捕らえた。

 

 

「っ…ええいこの塵芥共が、妙に粘りおって。」

「それも勘違いだ。」

「黙れ!」

 

偽者の激昂と共に、我を取り巻くようにバインドが展開される。そのまま狭まってくるリング状のバインドに対して、我は避けるでもなくデバイスを構えた。

 

「アロンダイト!」

「何ぃ!?うおぉ!!」

 

バインドごと砲撃で貫いて偽者を狙う。

予想外だったのだろう偽者は、慌てて砲撃を回避した。

 

「き、貴様ぁ…毎回毎回無茶苦茶しおって…」

 

恨めしげに睨んでくる偽者に対して、我は小さく肩を竦めた。

 

「貴様の勘違いは二つある。」

 

見えやすいように左手の人差し指と中指を立てると、偽者は黙ってその指を見つめた。

 

「一つは『この程度』で我らが危機的状況だと思っていること。もう一つは、我がやった程度の事が『無茶苦茶』だと言う事だ。」

 

話しながら指を折り曲げていき、左手が拳になった所で杖を偽者に突きつける。

 

「無論一般的にはどちらも貴様のほうが正しいのだが…高町速人率いる宵の騎士にとってのみ、この程度はよくある準備運動程度だ。」

「その有様が準備運動だと?笑わせるな!」

 

我の言葉を強がりと見たのか笑う偽者。

確かに耐えたと言っても三層防御全てを抜かれた我の身は、端から見れば誰が見ても満身創痍。

 

 

だが、高町速人の…『戦闘者』の戦いはこの程度ではすまない。

 

 

手足の一つや二つ無くしたとしても、その状態で戦う事すら念頭に入れて修行するのが常の一家、更に速人はその中でも最も無茶な不可能事を願いとしている。

 

何より、高町速人がそんな馬鹿だったからこそ、我らが今を生きていられると言うのなら…

 

その速人を主とする我ら『宵の騎士』が、まさか安全に諦めよく戦う訳にはいかない。

 

 

「笑いたければ笑っていろ、説明せずともすぐにわからせてやるわ。」

 

 

淡々と語り構えた我を偽者は忌々しげに見つめていた。

 

 

SIDE OUT

 

 




トーマ「トーマ=アヴェニールと」
リリィ「リリィ=シュトロゼックの」
ト&リ「前作解説コーナー!」

『走破・雷鳴陣』
トーマ「人によっては目視で見えなくなるくらい速い高速移動魔法中に攻撃なんてしたら体を壊すから、普通そんな事は出来ないんだけど…」
リリィ「移動中に変換資質を使って雷に変換した魔力をばら撒きながら移動するだけなら反動とかがないから大丈夫って作った魔法なんだ。」
トーマ「速人さんがレヴィと一緒に考えた魔法で、今回は発動と同時に距離をとられて失敗したけど、雷撃が命中して痺れた相手に近接攻撃を繋げるって言うのが基本の使い方みたいだね。」

トーマ「満身創痍で強がるって中々出来ないよな…俺ヴェイロンにぼろぼろにされたとき仇だと思ってたのにぜんぜん体動かなかったし。」
リリィ「なのはさんたちとの訓練の後も疲れてヘトヘトだもんね。」
トーマ「宵の騎士の三人の中じゃ一番頑張ってなさそうなディアーチェでこれだもんな、俺も頑張ろう。」
リリィ「トーマ、それはちょっと失礼なんじゃ…」


パワーアップしても3連射のシュテル。
…フォースバーストとか平気な顔して撃ってたなのはって(汗)
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