なのは+『永遠の空』   作:黒影翼

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第十二話・鏡合わせの終焉

 

 

 

第十二話・鏡合わせの終焉

 

 

 

Side~レヴィ

 

 

 

ボクは高速移動でマントに刺さっていたり周囲に浮いたりしている剣から走る雷撃から離れた。

 

 

 

宵闇乃建御雷神。

ボクのフルドライブで、最高最速のフォーム。

 

 

なんだけど…防御は完全に無視してるからフェイトがソニックフォームでも残してる手甲も無い。

マントもなくなるから、剣の拘束から逃げる事が出来た。

 

「何だよー…そっちも出来たんじゃないか。早く使えばいいのに。」

 

ボクがフォームを変えられるのに変えてなかったのが不満なのか、ちょっと睨むようにボクに視線を向けてくる偽者。

ずっと眠ってるような生活だったんだから、知らなくても当然だな。

 

「へへん、『切り札』は最後に切るのがカッコいいんだぞ。」

 

マスターと一緒に見てたテレビ番組で覚えた事を胸を張って教えてあげる。

けど、偽者の方はなんだか不機嫌だった。

 

「そんなの、負けたら意味ないじゃないか。」

「別にまだ負けてないだろ!」

 

ちょっとは危なかったけど…

 

「とにかく!ここからは本気で行くぞ!」

「好きにすればいいよ、またぶっ飛ばしてやる!」

 

ボクと偽者はお互いに構える。

偽者の方は相変わらず手足に水色の羽。ボクの方は手足の羽と全身から漏れる魔力光。

 

 

一瞬の間の後、ボク達は互いに空を駆けた。

 

 

「う、うわ!」

 

デバイス同士がぶつかって驚く偽者。

ボクのほうが速いからびっくりしたんだろうけど、背後が取れそうな程の違いはないみたいだ。

かっこ悪いからそういう事する気はあんまりないけど、出来ないくらいの違いしかないってなると意味が違ってくる。

 

速さを使って飛び回りながらあちこちから斬りかかる。でも、さっきまでのボクと同じで同じ速さで動けないけど見て防ぐくらいは出来る見たいだ。

そうなると、あんまり長時間保たないボクのほうがまずい。

 

「電刃衝!!」

 

偽者がいきなり8つの魔力弾を撃ち出して来た。

これまで数が増えるのか!?

 

直射弾の筈だから、少しだけ周り込むつもりで高速移動魔法で迂回して接近する。

 

と、止まった所で、8つの魔力弾がボクに向かってぐるりと方向転換するのが見えた。

途中で止まって向きが変わるのコレ!?

 

偽者に近づいていたボクは、さすがに避けてる場合じゃないと思って防御魔法で魔力弾を凌ぐ。

 

「っぅ…」

 

普通ならバリアジャケットの防御効果でそれほどでもないんだけど、宵闇乃建御雷神じゃ防御能力殆どないから、防御魔法を張っても伝わってくる衝撃で手が痛い。

 

それでも何とか魔力弾を防ぎきった所で、偽者が目の前まで来ていた。

 

「コレでどうだ!」

 

大鎌の形態をとったデバイスを振り上げる偽者。

避けている暇はない。だったら…

 

 

近づいて刃を受けるのを避けて、金属部分を左腕で受けた。

 

 

嫌な音、嫌な感触、激痛。

全部を無視して、僕は右手に握っていたバルニフィカスを手放して、空いた右手で偽者の腕をつかむ。

 

「い…っくぞおぉぉぉっ!!!」

 

ボクはそのまま、高速移動魔法を使った。

 

 

目標は真下の砂漠。その砂の中。

 

 

いつも通りの衝撃の後、砂埃が満たす視界の中でボクは右手を振り上げた。

 

「うぇ…な、なんて滅茶苦茶…っ!」

 

下敷きになっている偽者が、振り上げたボクの手…そこに集中されている魔力に気づいて息を呑む。

 

「そ、そんなあぁぁぁっ!!!」

「爆雷掌!!」

 

何かしようにも体がまともに動かないんだろう偽者に向かって、ボクは雷を纏った右手を叩き付けた。

 

視界が閃光で埋め尽くされて、偽者は完全に意識を失った。

 

ボクは静かに右手を空から落ちてくるバルニフィカスに向かって伸ばす。

そのままそれをキャッチして…

 

「この力でボクはと…ったあぁぁっ!!!」

 

決めポーズを取ろうと左腕に力を入れた瞬間、それ所じゃなくなった。

大事な所失敗しちゃった…ここまで全部やるからカッコいいのに。

 

 

 

Side~シュテル

 

 

 

ダメージは軽くない。

爆裂砲撃なんて殺傷力の高いものを受け切れなかったのだから、それも無理はないのだけれど…

それでも防御魔法を展開はしていたからか、どうにか息は繋いでいた。

 

「…無駄にしぶといですね。」

「そんな事はありませんよ。」

 

自嘲気味に返したつもりだったが、笑みを浮かべてしまったせいで偽者には余計に機嫌を悪くされた。

しぶといと言うのはむしろなのはやレヴィのようないっぱいいっぱいでもまだ頑張る人向けの評価だ。

 

「ブラスト…シューター!」

 

これ以上を語る必要もないと判断した私は、3つの巨大なシューターを放つ。

シューターより強く、砲撃より融通が利くものが欲しくて作った巨大誘導弾。

 

「ディザスターヒート!!」

 

だが…連射される砲撃のせいで決め手にはならなかった。

彼女の連射砲撃は、着弾までの速度が私の巨大シューターよりも速い。

誘導性がある分私のほうが目標物へ当てやすいかもしれないが、砲撃を避けるよう誘導するような真似はできなかった。

相殺してくれたのが唯一の救いだ。

 

これ以上まともに相手はしていられない。

 

そう判断した私は…

 

 

 

 

偽者に背を向け、全力で飛び去った。

 

 

 

 

一直線に距離を開ける。それと同時に、ディアーチェが戦っているであろう辺りを目指し…

 

 

 

私の体を、朱色のバインドが取り巻いた。

 

 

 

『戦闘中に勝てないと判断して逃げ出し、挙句二人掛でも狙うつもりだったのですか?見るに耐えませんね。』

 

声を届けるには大変な距離になったからと言って、わざわざ念話を使ってまで侮辱の言葉を届けてくる偽者。

 

バインドは解除できるが、外す頃にはまた先のように彼女の砲撃の射程に入ってしまうだろう。

 

当然、彼女もそのつもりで近づいてきて…

 

 

 

 

私が仕掛けておいた設置型のバインドに拘束された。

 

 

それも、彼女が遠巻きに私を拘束したバインドと異なり、私の方は置ける最大数を全て一箇所においてきた。

解けつつある私と違い、彼女は完全にがんじがらめになる。

 

炎の持つ熱が広がっていく性質のせいか、彼女の砲撃が威力を発揮する射程はそう長くないようだった。

だから距離をとり、かつディアーチェの援護に向かう演技をする事で、速く止めなければと思いこませ、直線的に追いかけさせた。

 

『設置型のバインドを一箇所に…こんな馬鹿な戦い方が』

『教科書には乗っていないでしょうね、通常薦められる方法ではありませんから。ですが、だからこそ相手の意識から外せます。』

 

念話越しに届く苦情に答えつつ、バインドを解いた私は砲撃体勢に入る。

彼女の砲撃が届く距離ではないが、なのはのコピーを脱却していない私の砲撃は、彼女より射程が長い。

 

『本当は大して重要ではないんですよ、本物も偽者も。戦闘能力のないオリジナルもいれば、一級品のレプリカもあるんですから。貴女の敗因は…そんなどうでもいい所に気を取られた事です。』

 

告げるべき事は告げ、チャージも終えた。

 

後は…渾身の一撃を放つのみ。

 

 

 

「ブラスト…ファイアー!!!」

 

 

 

私が放った全力の砲撃は、未だバインドにとらわれている偽者に直撃した。

遠い空を落ちていくその姿を見る限り、完全に意識を絶つ事ができたようだ。

 

勝つには勝った。

 

ただ、彼女の敗因となった『偽者に対しての怒り』。

私としてはそういうものを素直に表せるのは羨ましかったので、少し負けた気分になった。

 

 

 

Side~ディアーチェ

 

 

大見得を切ったものの、全開でいい勝負が出来る偽者相手にこの満身創痍でどう戦うか…

 

間違いなく、遠距離で打ち合えば此方が先に潰れる。

 

…付け焼刃でどこまで対応できるかはわからんが、仕方ない。

道は無ければ作るしか無いのだ。

 

「満身創痍の出来損ないに何が出来るものか!」

 

小型誘導弾と羽型魔力弾を乱射してくる偽者。

細々とした攻撃とはいえ、誘導弾が混じっているせいで砲撃で消しきる事もできず、細々としているが故に回避もし辛い。

 

そういう理由で防御で凌ぐ事にしたものの、いつまでも受け手に回っているとまた拘束されかねない。

 

ち…仕方ない。

 

 

偽者が、動かない我に対してバインドを発動したその瞬間、我は偽者に対して接近する。

 

「はっ…無駄な事を。」

 

バインドを回避して接近するまでは読んでいたのか、即座に先ほど同様の魔力弾の連射に切り替える偽者。

 

だが…

 

 

急所以外への弾を全てを無視して、我は偽者に向かって進み続けた。

着弾した箇所から次々に痛みが走るが無視して距離を詰める。

 

無視できる理由は二つあった。

一つは、急所を避けているが故に死にはしないと言う事。

もう一つは…非殺傷魔力ダメージになっていないが故に、怪我をするだけで魔力の消耗が無い事。

 

尤も…とてもスマートな戦いと言える代物ではない為気は進まなかったのだが。痛いし。

 

「な…ふん、馬鹿な真似を。」

 

近接戦闘の距離まで近づいた我に対して、杖を振り上げる偽者。

我は杖を左手に持ち替えて…

 

「剣!」

『プットアウト。』

 

一言で左手のデバイスから現れた武器を手にして、偽者が振り下ろした杖を避けて振るった。

 

 

 

「細剣だとぉ!?」

 

 

 

我が手にしている武器が意外だったのか、驚愕の声を漏らす。

手首の返しだけでも振える上にその先端の細さと、鞭のようにしなる事で上がる速さから生まれる切断力はかなりのものだ。

 

王族貴族の嗜みの一つと言う事で習得していた細剣戦闘。

地上では雫にも勝てん程度ではあるが、それでも我や小鴉と同種の目の前の偽者が杖を振り回す程度なら近接戦で上回る事は容易だ。

 

「く…っ!」

 

近接戦で勝てない事を察したのか、偽者は全力で距離をとりにかかる。

去り際、左腕を裂いたものの再び距離を離された。

 

「ち…まさかそんなものまで扱えるとはな…だが、そのダメージで先の無茶な距離の詰め方は出来まい。」

 

怪我の痛みに顔を歪めていた偽者は、笑みを浮かべて杖を構える。

距離をとっての撃ち合いでは奴のほうが優勢だったのだからそれも無理は無い。

それに、魔力弾の雨に突っ込んだせいで全身に負ったダメージは我のほうが遥かに多い。

 

 

「「アロンダイト!」」

 

 

どちらからとも無く砲撃を放ち、二つが衝突して…

 

 

 

偽者が構えている杖を取り落とした瞬間、我が放った砲撃が偽者の砲撃を抜いて着弾した。

 

 

「ぐ…ぁっ…な、に?」

「全身のダメージはどう見ても我のほうが多いが、自分の怪我位把握しておくべきだったな。」

 

事態が飲み込めていない偽者に答えを告げる。

そして、偽者は自身の両腕を見て硬直した。

 

 

我が狙って切断したのは、両腕の筋肉。

 

 

 

魔力強化も何も、『手を握る』動作の為の部位そのものを傷つけられたのだから、オーバーSクラスの砲撃の衝突の衝撃を受けて杖など握っていられる筈が無い。

そして…砲撃の土台になり大部分の魔法を制御するのに必要な杖を…デバイスを取り落とした偽者には、もう殆どの魔法をまともに制御する事ができない。

仮に落ちた杖を拾いに行ったところで、腕が瞬時に治るわけでもない。それに…

 

「今の貴様にコレを防ぐ力はあるまい。発動すればそれで終わりだ。」

「っ!!!」

 

多数展開される魔法陣。

デバイスが落ちただろう先と多数の魔法陣と我をぐるぐると見回して落ち着きの無い偽者。

 

 

「何、話は聞いてやる。とりあえず寝ておくがいい。」

「お、おのれええぇぇぇぇっ!!!」

「アロンダイト・ファランクスシフト!斉射ぁっ!!!」

 

降り注ぎ次々に爆発を引き起こす魔力砲撃の雨に飲まれた偽者は、完全に力を失って墜落した。

 

 

 

Side~キリエ=フローリアン

 

 

 

全身真っ白な魔導士のおねーさん、リライヴさんとの交戦の最中に、王様達の魔力の反応がとても小さくなった。

 

それが意味する所は…

 

「はい私の予想通り。」

「っ…」

 

やわらかい笑みを浮かべて告げるリライヴさん。

 

『基本性能が少しくらい高い相手が敵に回っても、シュテル達は負けないよ。』

 

彼女が事前に告げていた言葉が、そのままになった。

 

「あらら…王様達ホントに負けちゃったのね…」

 

…まずい。

王様がいない上に紫天の書も無いとなるとU―Dが制御できないとかそういう話ですらなくなってくる。

 

全力を出せば、王様を助けて書を回収してくるくらいなら…

 

「いつも通りを演じてるけど、結構余裕ないみたいだね。隠してる全力でも使って私を抜いてみる?」

「っ!」

 

あまりに綺麗に言い当てられたせいで読心術でも使えるんじゃないかって気になってくる。

まぁ…私に普通の読心術を使ってもしょうがないとは思うケド。

 

「ストレートな人も分かるけど、貴女みたいに皮一枚かぶって変装しようとしてる人も割と分かりやすい。ちゃんと本音を隠せるのは、海みたいに広い器の人か闇みたいに底の見えない人位だよ。」

「私が猫かぶってるって?普通の女の子ならそういうの大抵あると思うんだけど。」

「みたいだね。普通に生活するようになってからちょっとだけ女性が怖くなったよ。」

 

自分は違うと言いたげなリライヴさん。

でも、私から見ていても彼女はなんとなくそういう普通の女の子と違う気がした。

なんて言うか…お姉ちゃんみたいな『熱血バカ』じゃ無いけど、涼しげなフリして何かにまっすぐと言うか一つしか見てないタイプの『○○バカ』。

 

相手にするには面倒そうだ。

それに、全力をこんな所で使ってしまえば本来の目的のほうが果たせなくなる。

 

「残念だけど、ここは引かせて貰いまーす。王様には謝っておいて。」

「そこは気にするんだ、変なところで律儀だね。」

 

引くと聞いたリライヴさんは、まだ私がいなくなったわけでもないのに透明な剣をおろした。

 

「一人で無茶しないようにね。」

「余計なお世話。それじゃ、バイバーイ。」

 

こっちを警戒しつつも追ったり動いたりする気配のまったく無いリライヴさんをよそに、私は世界を飛んだ。

 

…そう、怒られてる場合じゃないし、怒られたとして話なんて聞いていられない。

王様達が何も出来なくなったとなると、私が自力だけで『エグザミア』を手に入れないといけない。

 

無茶でも何でもやらないと…エルトリアで博士が待ってるんだから。

 

 

 

SIDE OUT

 

 




トーマ「トーマ=アヴェニールと」
リリィ「リリィ=シュトロゼックの」
ト&リ「前作解説コーナー!」

『宵闇乃建御雷神』
トーマ「フェイトさんの真・ソニックフォームとかでもついている手甲すらなくした形態で、バランスは考えられてない危険なものなんだ。魔力も漏れてるんじゃないかって位に身から出しっぱなしで、効率は凄い悪いんだ。」
リリィ「本人はカッコいいから好きみたいだけど…危ないよね、本当に。」

『高速移動自爆(笑)』
トーマ「…笑えないよ。」
リリィ「普通の人間だったら死んじゃってたみたいだから、できるならもう使って欲しくないよね。」

『ブラストシューター』
リリィ「大きいサイズの誘導弾…ってだけだね。」
トーマ「普通の誘導弾と相殺しないで当てられる攻撃が欲しかったから覚えたみたいだよ。」

『細剣について』
トーマ「ディアーチェは元々貴族の嗜みとかは真面目に練習してたりしたんだ。」
リリィ「乗馬とか、笛とか…」
トーマ「…って、馬どこで乗ってたんだろうな?」
リリィ「さ、さぁ?」

トーマ「それぞれがらしさを使って勝ったんだな。」
リリィ「個性かぁ…私達、ディバイダーが銃剣だからアミタさん達とかぶ」
トーマ「ちょっとへこむから出来ればやめてくれリリィ。」


ちなみに『爆雷掌』は新技です。
といっても、魔力集中させた掌を叩き込むだけなので紫電一閃とほぼ変わらないのですが。
違うと言えば…魔力の続く限り『掴みっぱなし』で変換資質を使って攻撃し続けられる事位です。
…一対一じゃ十分すぎるくらい危険な技ですね(汗)
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