第十四話・希望を繋いで
Side~アミティエ=フローリアン
システムU―Dの姿を見つけた私は、キリエより先に見つけられた安心感と、その姿への疑問が浮かんだ。
色彩が変わっていた。
金髪は以前と変わらない。
でも、白を基調にした服に紫色のズボンを穿いていた前回と違って、今は赤を基調にした服に黒いズボン。
顔にタトゥーのような赤い模様が浮かんでいる。
なんだか禍々しい感じになっちゃってますね…
「間に合いました。システムU―D!」
「君は、この間の…」
「急で済みませんが協力してくれませんか、貴女の持つ『エグザミア』を妹に渡さない為に。」
つい焦ってヴァリアントザッパーを突きつけそうになって思いとどまる。
リライヴさんにしろなのはさんにしろ、状況を判断するだけの余裕は結構いつもあるように見えた。
話に来ていきなり喧嘩腰じゃ誰だって話を聞いてくれるわけも無い。
「永遠結晶『エグザミア』…これが無くなれば、私はこの体を保てなくなってしまう。渡すつもりは無い。」
「それは好都合!私が守りますから」
「必要ない。」
ばっさりと切られて言葉に困る。
た、確かに彼女ほど強いと一人二人でどうにかできるとは思えないけど…でもキリエは王様達と一緒にいるはずだ、一人じゃさすがに
「君は…時の旅人…」
「っ!?」
U―Dの呟いた一言が、私の思考を断ち切った。
彼女がいくらどれだけの古代から存在していたとしても、どれだけの情報を得られるのだとしても、この時代にいない私の情報を持っているはずが無い。
なのになんで…それが分かる?
「いや、それどころか人間ですらない。エルトリアの『ギアーズ』、それは…」
一瞬、U―Dの語りに意識を逸らされたその時…
「そこまでよっ!!」
「つっ…」
聞きなれた声と共に体に衝撃が走る。
直後、体に微弱な痺れが走り出した。
これは…麻痺弾…っ!
「王様達が頼りにならなくても…私は戦える!!」
弾丸を打ち込まれた腕を抑えながら、私は目の前に現れたピンク色の髪をなびかせるキリエの背中を、動きづらい身体で必死に見据えていた。
Side~キリエ=フローリアン
私は背後から聞こえてくるお姉ちゃんの声を無視して、U―Dと向かいあった。
「届けるんだ…博士を悲しいまま死なせない為に!!」
私はヴァリアントザッパーを手に、U―Dに接近しようとして…
脇の赤い霧から巨大な爪が現れた。
「く…っ!」
まともに当たれば一撃で砕けて散りそうなそれをどうにかかわす。
エルトリアの修行場にしてた所で訳の分からない異種生命ばっかり相手にしててよかったわ…対人戦ばっかりじゃ今の奇妙な攻撃避けられなかっただろうし。
遠巻きに見てたけどあのお兄さんよく難なく対峙してたわね…
「セイバー!」
「っ…」
唐突にU―Dの両腕から放たれ、振るわれる刃をどうにかかわす。
レーザーみたいに長くて直線を維持する刃を二本も振り回してくるとかやり辛い事この上ない。
「でもっ…これ位!」
回避機動をしながら射撃を連射する。放った射撃の雨が次々にU―Dに当たって…
涼風みたいに消えていく。
あぁもう!!小粒な攻撃なんて完全に無視されちゃうじゃない!
こうなったらやっぱり接近戦で…っ!
周囲から狭まってくるバインドをどうにか回避すると、狙い済ましたかのようにリングが飛んできた。
「カノン!!」
咄嗟に単発の強エネルギー弾を放つ。
あんな細いリングなら相殺できるかと思ったんだけど、相殺どころか殆ど弱める事も出来ずに掻き消された。
「ああぁぁっ!!」
咄嗟に身を丸めたものの、信じられないほどの衝撃が身体を襲う。
どうにか持ちこたえたけど…もう一撃でもまともに受ければ身体にがたがきそうな程のダメージ。
こんな…こんなに差が…こんなのどうしようも…
「っ!!!」
抜けかけた力を込め直す。
諦めない…諦めない…っ!
一度決めたら諦めずにやり通すんだって、お姉ちゃんにも博士にもそう教わった。
何より…二人に怒られるのが分かってて、それでも…それでも博士が悲しいまま死んじゃうのが嫌だって思ったから一人でここまで来たんだから。
だから…動いて!!
「アクセラレイター!!」
一縷の望みをかけて一気に接近する。
目の前に現れたところで私はヴァリアントザッパーを剣形態にして振るった。
障壁を展開されて防がれた。ケド…
U―D自体が軽いからか、張った障壁ごと押し込む事ができた。
力…出力はともかく、本人はそんなに上手くもなければ調整も効かないのね…これなら!!
「はああぁぁぁぁっ!!!」
「っ…」
大剣形態のヴァリアントザッパーを全力で振りぬいて、重さでU―Dを打ち上げる。
剣が防げたって何回も飛ばせば隙が出来るはず!
「私は絶対に…」
この一戦に全力をつぎ込むつもりで飛翔する。
あれだけの力じゃ小回りなんてきかない。先回りを繰り返すつもりで、防げていてもいなくても動いては剣を振るい、吹き飛ばしては動くと繰り返す。
「絶対に絶対にっ…」
そして、打ち下ろしが障壁に止められなかったのを感じた私は、銃形態にした両手のヴァリアントザッパーを振り上げ…
「諦めないんだからあぁぁぁっ!!!!!」
編み上げたエネルギーの塊を振り下ろした。
スラッシュ・レイヴ・インパクト。略してS.R.I.。
普通の技の中では最大の技。
後半の数回の斬撃とエネルギー弾は直撃だった。これなら…
「う…そ…」
まともに防御魔法も展開してなかったから常時防御位のはずなのに、U―Dは無傷で浮かんでいた。
さすがに倒せているとは思ってなかったけど、服に傷一つつける事すら出来ていなかったとなると…
「っ…」
身体の節々から痛みが走る。
まずい…攻撃受けた直後にあんなもの使ったから体が…
「君は…時の操手たりえない。」
「うるさいっ!ぁ…」
癇に障る事を言うU―Dに叫び返すと、その途端身体を魔力輪が縛る。
固…外れない…
「この魄翼の前に鉄屑として消える、それが定め。」
「く…っ!!」
U―Dの横の赤い霧から、紫色の槍のようなものが生まれる。
動けない私に照準が合わせられ…
「アクセラレイター!!!」
声が聞こえて、私の目の前に『何か』が割り込んできた。
何かって、そんな事分かりきっている。
私の目の前には見覚えのあるおさげ髪があって、U―Dが紫色の槍を撃つのが見えて…
目の前に割り込んできたお姉ちゃんはそれでも動かなくて……
「紫電一閃!!!」
唐突に現れた、いつか見た馬鹿なお兄さんが、風を纏った拳で槍を殴りつけた。
Side~アミティエ=フローリアン
キリエをかばう為に割り込んだ私に向かってきていた槍を、どこからか飛び込んできた速人さんが拳で殴り飛ばした。
す、凄い…
「後任せたぞ後衛!!」
直後、速人さんはU―Dではなく私達の背後を見る。
つられて視線を移すと、背後にはなのはさんの姿があった
「分かってる!ディバインバスター!!」
なのはさんの放った砲撃は、攻撃直後で動けないU―Dに直撃した。
でも…
「無駄。」
リミッターがかかったままの力じゃU―Dに攻撃を通すなんて当然出来ない。
平然とたたずむU―D。
「速人さん、ありがとうございます!」
「問題なーし。」
ひらひらとなんでもないことのように左手を振って答える速人さん。
でも、その右手から赤い液体がとめどなく流れ続けていた。
U―Dの攻撃、拳で触れるだけで問題だったんだ…
「あ、あの…」
「エグザミア…欲しいんだったな?」
痛々しい怪我に声をかけようとしたんだけれど、当の速人さんはそんな事お構いなしにキリエに視線を向けてそんな事を口にする。
「あの子を止めたら頼んでみてくれ。話は必ずさせてやる。」
自信満々の笑みで告げた速人さんは、キリエの言葉も待たずにU―Dに向かっていった。
「…馬鹿よ。」
キリエが俯いて漏らした呟き。小さかったけれど、はっきりと聞こえたそれに視線を移す。
「止められる訳ないじゃない。制御しようにも王様もいなくて、無理に奪おうとして私の攻撃だって通らなかったのに…ただの人間に何がどうできるって言うのよ…」
悪態を吐きながら、速人さんのくれた言葉を否定するキリエ。
でも分かる。顔向けできないとか、そんな気持ちでいっぱいになってる。
「私も行って来ます、キリエは速く逃げなさい。身体、あんまり動かないんでしょう?」
「うるさい…」
俯いて掠れるような声を漏らすキリエ。
今これ以上を速人さんとなのはさんに任せきりにしておく訳にはいかない。
力なくうなだれるキリエから離れ、私はU―Dに向かっていった。
「っ…はっ!」
速人さんは足裏に魔法陣を発生させながら空中で小刻みに跳躍やステップを繰り返し、U―Dの正体不明の攻撃を器用に避けて打撃斬撃を放り込んでいる。
常時防御を抜けば直撃しているはずなのに、U―Dは少しゆれる程度でまるで傷ついていない。
派手な動き。
U―Dの意識をひきつけようとしているような、そんな動き。
U―Dもそれに気づいたのか、なのはさんの姿を探す。
当のなのはさんは、空で魔力の塊を作っていた。
周囲の魔力を取り込んで、魔力の塊はどんどんその力を増していく。
なのはさん自身の魔力はもちろん、元々この辺りにあった魔力、U―Dが攻防に使った魔力、速人さんの魔力、その全てが流れていっている。
あれなら…『自分の力』がどれだけ封じられていてもあまり関係ない。
速人さんがU―Dをひきつけていたのは、なのはさんにあれを準備させる為。
でも、U―Dがなのはさんの作っているソレに気づいてしまった。
一番の脅威、当然U―Dはなのはさんを止めようと手をむけ…
「させません!」
瞬間、私は全力で加速してU―Dに斬りかかった。
全速力で飛び回り連続で斬りつけ、エネルギー弾をばら撒いていく。
「エンド・オブ・デスティニー!!」
ホントの切り札を除いては私の最大攻撃。
当然、キリエの攻撃が通らなかったんだからこれだって通るはずが無いんだけど、少なくとも止める事くらいは出来るはず。
撒いたエネルギー弾がU―Dに向かって一斉に飛んでいき、直撃して大爆発を引き起こす。
…麻痺を無視して無理に動いたから、これが限界。
なのはさんのほうに視線を移す。発動直前にいたっている魔法だけど、後もう少しが足り
唐突に風が吹いた。
再度U―Dを見ようとして、間に速人さんが立っている事に気づく。
そして、U―Dの肩の霧から槍が飛び出していた。
私達に向かって。
生身で魔力も多くない速人さんが、何度もU―Dの攻撃なんて防ぎきれる訳が無い。
私は直せるから大丈夫だと言うにも間に合わず…
横合いから飛んできたエネルギー弾が、U―Dの放った槍の軌道を逸らした。
よく見ている攻撃だから、ソレが誰の撃ったものか私にはよく分かって…
「キリエ!!」
思わず笑みを浮かべて視線を移すと、当のキリエはばつが悪そうに視線をそらした。
まったく…素直じゃないんだから。
「ひゃ!あ、速人さん?」
唐突に抱きかかえられたかと思うと、私は速人さんの腕の中にいた。
他所の女性の扱いじゃないと言いたくなったけど、当の速人さんはそんな事知る由も無く首だけ空に動かす。
「なのはの奴、希望を繋ぐの得意なんだ。いろんな場面でな。」
「…みたいですね、凄いです。」
速人さんが示した先には、U―Dに負けず劣らず強大な力の塊が出来ていた。
詳細は知らないけれど、その場にあった誰のものかも問わずに力を集め、束ねて作られた魔力の塊。
「スターライト…ブレイカーッ!!!!!」
十分に距離をとった所で、なのはさんの一声と共に放たれた星の光の名を冠した巨大な砲撃は、展開された防御魔法ごとU―Dを飲み込んだ。
あれは、ただ強いだけじゃない。
まったく無傷で終わってしまったキリエの戦いも、一切通じないのが分かっていて尚時間稼ぎに向かった速人さんや私の戦いも無駄にしない魔法で、どんなに強い相手でも、その相手が使った力も束ねる事で超えられる可能性にする魔法。
抱えていた私を放した速人さんは、桜色の光に満たされた空間を指しながら笑みを見せる。
「ま、自慢の妹さ。そっちと一緒でな。」
「…はいっ!」
桜色の光に満たされた海上にたたずむ、不器用だけど一生懸命でやさしいキリエの姿を眺めながら、私は力強く頷いた。
SIDE OUT
トーマ「トーマ=アヴェニールと!」
リリィ「リリィ=シュトロゼックの!」
ト&リ「前作解説コーナー!!!」
『紫電一閃』
トーマ「技自体はベルカ式の変換資質持ちの人の物と同じで、基礎にして奥義の魔力付与攻撃だね。」
リリィ「シグナムさん達が使ってる魔法だね。」
トーマ「そのシグナムさんやフレア空尉が速人さんに会って技量を鍛え始めたのと逆に、技量だけでグリフに勝てないから、他で補う為に使ったんだ。」
リリィ「速人さんの変換資質が風だから、吹き飛ばす力が強いみたいだね。」
リリィ「でも速人さん、U―Dの攻撃はじく魔力ないんじゃ…」
トーマ「側面から力を加えれば、そこまで強い力じゃなくても逸らせるんだよ。」
リリィ「そっか。」
トーマ「それにしたって飛来する攻撃にタイミングよく横から全力の一撃を当てるのは結構凄い芸当だけどね。」