第十五話・集合、作戦会議
Side~高町なのは
「っ…」
大出力砲撃のせいで身体がずきずきと痛む。
単発だったからブラスター使って戦いっぱなしの時ほどのダメージは無いけど、後遺症が抜けきってない上に魔力も完全じゃない今は結構身体に響いた。
だけど…手ごたえは、あった。
「周囲の力を使っての砲撃…結構痛かったけど、これで撃ち止めなら、私は止められない、壊せない。」
魔力爆発が晴れて現れたU―Dは、防護服が所々破けてはいたけど五体満足だった。
でもそれも当然だ。あくまで非殺傷砲撃だったんだから。
「元々壊すつもりは無いよ。貴女が無茶しないでくれるなら、ちゃんと話も聞く。」
「…結構痛かった。」
「ソレは言わないで欲しいかな。暴れるようなら止めないといけないから。」
ここまでやっておいて話を切り出したのが不満なのか、U―Dは少しだけ困ったような表情で私に文句を言う。
いつだったかお兄ちゃんにも言われた事あったけど、話し合いをしようって人が使う魔法じゃないって自覚はある。
でも、それを言うなら私だって使わなくていいなら使いたくないんだ。
痛いし、レイジングハートへの負荷も大きいから。
「っ!」
と、突然U―Dが頭を抱えて苦しみだした。
何で…構造レベルまでは絶対ダメージ届いてないはずなのに…
「頭が…また頭が…っ!」
「大丈夫!?」
「うああぁぁぁっ!!!」
突然頭を抱えて苦しみだしたU―D。
一瞬近づきかけたところで、U―Dが叫びと共に半実体の爪のようなものを四方八方に伸ばしてきた為、咄嗟に巻き込まれないように下がりつつ回避する。
距離が出来ると同時に、彼女は姿を消していた。
逃げられた…というべきなのかな?こっちの状態を考えると見逃して貰えたとか言うべき気もするけど…
「なのは!」
「フェイトちゃん?」
U―Dが消えた直後に現れた知った声に反応する。視線を移した先には、アリシアちゃんを背負っているフェイトちゃんの姿があった。
フェイトちゃんはリライヴちゃん達を迎えに行ったんじゃ…
「ごめん、一足遅かった。負傷して戻るようにシグナムに言われて帰ってきたんだけど、途中の世界で闇の欠片と交戦してたら遅くなった。」
そう言えばシグナムさんがアリシアちゃんを連れて行くために行ったんだ。
それにしても、負傷したまま闇の欠片と交戦したって…
「大丈夫?」
「うん。一応下がったってくらいで動けないわけじゃないから。それより、途中誰かに抜かれたような気がしたんだけど…」
「あぁ、それな…ら…」
多分キリエの事だと思ってその姿を探し…硬直した。
当のキリエが、アミタとお兄ちゃんに片腕ずつ抱え込まれていたから。
「ああもう!離してよ!!」
「駄目ですよー、離したら逃げちゃうでしょう?」
「そうそう。俺強力なバインドとか使えないし。」
「百歩譲ってお姉ちゃんはともかく貴方がこれやったらセクハラでしょ!」
「失礼な。俺恩人相手にそんな事しないぞ。」
「ちょっと公務員さん!このお兄さんなんとかして頂戴!!」
少し冷めた気分で眺めていたところキリエに話を振られ、私は三人のところに近づいていく。
そして、三人の前まで来たところで、微笑んでレイジングハートを振り上げた。
「分かった。ちょっと動かないでね。」
「「へ?」」
困惑するキリエとアミタを他所に、逃げようとするお兄ちゃんに向かって全力でレイジングハートを振り下ろした。
直撃したお兄ちゃんは、真っ逆さまに落ちていく。
「さてと、それじゃあちょっとお話聞かせて貰ってもいいかな?」
「は、はい…」
とりあえず問題のお兄ちゃんを落として力を抜いて声をかけたのだけど、当のキリエは引きつった表情で返事をした。
アミタまでなんだか緊張している。
「…なのは、初見の人はソレ怖いって。」
ついてきていたらしいフェイトちゃんが、私のすぐ後ろで少しだけ呆れたような呟きを漏らす。
それだけならよかったのだけど…
「速人が女の子と仲よさげに見えるのはいつもの事なのに、余裕無いなぁ。」
フェイトちゃんの背中越しにニヤニヤ笑って放たれたアリシアちゃんの言葉は少し痛かった。
ブラコンでいいよもう…
Side~キリエ=フローリアン
「そう拗ねるなって。」
「拗ねてないっ!あちこちで女の人に無邪気に接近するのいい加減にやめなよ!」
「邪気があればいいのか?」
「余計に悪い!!」
指令所となっているらしい屋敷への道中、ついさっき海中に沈められかけた速人さんが、沈めた張本人のなのはさんとなんでもない事のようなやり取りをしていた。
正気なのかしら…
と、ちょっと正気を疑ってしまった所でお姉ちゃんを見る。
「どうしました?キリエ。」
「…別に。」
顔を見合わせる事になったお姉ちゃんは、笑顔だった。
禁則事項を強行した挙句、ウイルス弾と麻痺弾を撃ち込んだ私に対して何の苛立ちも見せない笑顔。
ああもう!皆揃って呑気で人がいいにも程がある!
私あのU―Dを起動させたのよ!?何で皆優しくしてられるのよ…
「お、見えたな。…あれ、誰か来たのか?」
屋敷が見えると、光の柱が見えた。
速人さんの呟きを聞く限り、転移魔法陣か何かなんだろう。
屋敷に下りると、王様達がいた。
一瞬目を疑う。纏う力が私と一緒にいた大本の王様達と同じ質を感じるのに、拘束されたりしていなかったから。
「む、貴様…」
王様が私を見て睨みつけてきたと思ったら、小さく頭を振る。
何かしら?何か妙な反応ね。
「…割とあっさり逃げ帰った貴女に苛立ちを覚えた大本の反応です、気になさらないで下さい。」
「ごめんなさいね、こっちもエネルギー制限とかあって。」
説明してくれたシュテルに軽く謝りつつ、今の言葉の意味を考える。
もしかして…融合したのかしら?
王様達、自分達を置き去りにした偽者の皆にはいい印象無かったはずなのによく融合したわね。
「エグザミアに関してはU―Dの奴と話をせねばどうにもならん、今しばらくおとなしくしていろ桃色。」
「っ…」
敵対していたはずの王様の偽者にまで気遣いを受けて、ズキリと胸が痛む。
無関係の筈の人達。私が巻き込んでしまった人達。
にも拘らず、誰一人私を責めない。
いっそ怒りをぶつけてくれたほうが、こんな胸を針を添えられているような半端な痛みを感じなくて済むのに…
「ところで王様、大本の王様と一つになったのなら対策は…」
平静を装う為に普通に話しかけた。ただそれだけのつもりだった。
だけど、王様はなんでか硬直して動かなくなる。
「よかったですねディアーチェ。王と呼んでくれる人に会えて。」
「ホントだ、ディアーチェを王様って呼ぶ人珍しいよねー。」
サラリと放たれたシュテルとレヴィの言葉で王様が硬直した理由はすぐに分かった。
…こっちの王様、随分不遇なのね。
「やかましいわ貴様等!大体本来は貴様等が我を王とすべきだろうが!」
「いやぁ、悪いなディアーチェ。俺がマスターやっちゃてるからな。」
「大して主らしくも無いくせに何をぬけぬけと…」
怒鳴り気味で抗議を繰り返す王様に、そんな王様を見ながら楽しそうに笑う速人さん。仲いいわね。
王様は小さく咳払いをすると私に視線を向ける。
「貴様が此方にいるのは都合がいい。我等は一旦調整に入る故、我等の大本と貴様が立てていた作戦を屋敷のメンバーに説明しておけ。」
「調整って皆何したの?もう…じゃ、私も行ってくるね。」
言うだけ言って、王様達はさっさと屋敷に入ってしまう。
技師のアリシアさんも、王様達の調整をする必要があるからか一緒に行ってしまう。
あのU―D相手に具体案があるのは私と王様達くらいだろう。
…私一人で話すしかないか。
広間に集まってすぐ、さっき戦っていたリライヴさんと、シグナムさんって言う剣士の人との話から始まった。
二人の話によると、私の予想してた通り王様達は融合したみたい。
それにしても…無理やり叩きのめして取り込んだのかと思ったけど、わざわざ許可取るなんて…王様の扱いが微妙だった事もそうだけど、随分場に染まってるわね。
「それじゃあキリエ、その大元のディアーチェ達と立てとった計画教えて貰えるか?」
王様の元になったはやてさんが部隊のトップらしく、私に話を促す。
「闇の書の闇から出てきた彼女達の目的だった『砕け得ぬ闇』何だけど…王様達は彼女を手に入れると完成するのよ。」
「完成?」
当然のこと、誰からともなく疑問の声が上がる。
当たり前だ。王様達が完成するなんて言われてもピンとこないはずだ。
「永遠結晶『エグザミア』と、ソレを支えるエターナルリングのマテリアル。闇の書の闇に引っ張り出されて、王様達…マテリアルだけが使われていたらしいわ。」
「そっか…シュテル達って元々システムだったんだ。道理で私でも簡単に移行作業出来た訳だ。」
王様達の出生や詳細については私も説明を聞いただけで、そのまま伝えるしか出来なかった。
話を聞いたリライヴさんが何か納得したように頷いている。
「全てが揃う事で紫天の書が完成するんだけど…今U―Dが落ち着いてられないのは支えの王様達と纏まってないから。紫天の書を媒体として皆が揃えばU―Dは暴走しなくて済む。」
これが、私と大本の王様達が偽者の皆と敵対していた理由。
器のような役目を果たす書がないままじゃ、U―Dを制する事が出来たとしても制御に至らない。
まぁ、その王様達がやられちゃったから制御を諦めて、無理やり奪っちゃおうとしたんだけど…
「ちなみに…」
「はい?」
「戦闘における作戦は?」
はやてさんのある意味当然の質問に対して、私はにっこり笑って両手を挙げた。
そんなものがあるならさっき戦った時にとっくに使ってる。
束になって戦っても到底かなわない出力差。しかも彼女は本調子じゃない。
さっきのなのはさんの砲撃より威力がある攻撃はそう無いのか、少し重い空気がおりて…
『それなら此方に案があります。』
唐突に、水槽に一糸纏わぬ姿で浮かぶシュテルの姿が空間モニターに映し出された。
直後、物凄い音がしたと思ったらリライヴさんに後頭部を掴まれた速人さんが、顔面から机に叩き付けられていた。
机が、ミシ…ときしむような音を立てている。む、惨い…
「シュテルちゃん!服!服!!」
『調整中に無茶言わないでください、なのは。第一女性とマスターしかいないのに問題ないでしょう?』
自分が元になっているからか少し慌て気味に止めるなのはさん。
対してシュテルはそんななのはさんの反応に慌てるでもなく肩をすくめた。
イヤイヤ、マスターって速人さん男だからね?十分問題でしょ!
「そうそう、騒ぐなよなのは。それにリライヴの反応が早過ぎて見る間も無かったし。」
「当然だよ。」
机に顔を押し付けられた体勢のままでのんきに会話する速人さんとリライヴさん。
なんだか手馴れてる感じがする。こんな事が日常茶飯事なのかしら?
『それよりも本題に入ります。』
結局、今はU―Dを止める手立てを知るほうが優先だからか、皆はそれ以上シュテルの姿にツッコム事無く話が進む事になった。
『彼女に対抗する為のシステムがあるのですが、使用にカートリッジシステムが必要になります。内容の詳細は技術的な話なので気にしないでいただきたいのですが、完全な形で準備できる数に限りがありますので、優先順位を決めておいてください。』
「カートリッジシステム…」
U―Dを止める手立てを聞かされてなかったけど、道理で教えられていなかった訳だと悟る。
私とアミタは魔導師ですらないんだから、どう頑張ってもそんなもの搭載できない。
「それなら私が最初だよね。カートリッジって事は強化系だし、U―Dと当たる為の温存だもん。」
「負傷してる身なんだからおとなしくしてろっつの。大体闇の書関連の案件は家の問題だ。」
「そうだな、中遠距離で打ち合える相手ではないのだ、我等ベルカの騎士の出番だろう。」
「ユニゾンとカートリッジ両方使う気?私が出るよ。あたらなきゃ攻撃の威力も関係ないし。」
「はいはい、元気な隊長さん達やなぁ。」
我先にと名乗りを上げる人達に肩を竦めるはやてさん。
リライヴさんもそんな様子に小さく息を吐く。
「世界を崩壊させかねない相手だって言うのに、危ないんだか頼りになるんだか。」
微笑みと共に告げられた言葉。
何の悪意も無いはずのソレが胸にチクリと突き刺さる。
世界を崩壊させかねない相手。
そして…ワタシガキドウサセタ。
エルトリアを救いたかった。博士を寂しいまま死なせたくなかった。
そのためにエグザミアを求め、過去まで来て、お姉ちゃんに無茶させて…
今、見ず知らずの、何の罪も無い人達が住まう世界を滅ぼしかけている。
エルトリアの危機で、世界の危機ってものが…それによって脅かされている人々がどう苦しんでいるかよく知っている私が、自分でそれをもたらした。
こんな事…あっちゃいけないことだ。
本当ならエグザミアを貰って帰るだけのつもりだったのに…
「キリエ?」
「あら、何かしら?」
お姉ちゃんに話しかけられて咄嗟に笑顔で答えて胸の痛みを押し殺す。
気づかれちゃダメ、認めちゃダメ。
誰一人私を責めず、今の状況に愚痴すら零さない人達に余計な心配をかけてしまう。
それに…これだけの大事を起こした私が『傷ついている』なんてあっちゃいけない、言える訳が…無い。
「いや、何という訳でもないのですが…」
「そ、ならもういいかしらね。」
なにか言いたげにしているお姉ちゃんの言葉をさえぎって、私は席を立つ。
「魔法使いさんじゃなきゃU―Dとまともに戦えないなら、あんまり温存しておく意味も無いわ。どうせU―D探さなきゃいけないわけだしキリエちゃんは捜索に回るわね。」
「ちょ、キリエ!貴女怪我は」
「もう大丈夫よ、一応自己修復も出来るんだし。今度は通信回線も空けて置くから逃げたりしないわ。闇の欠片も見かけたら片付けといてあげる。」
ひらひら手を振って部屋を出ようとすると、速人さんも席を立つ。
そして、私に向かって何かを投げ渡した。
「通信端末だ、持っとけ。アミタとだけ話せてもしょうがないだろ?」
「ありがと。」
「後、俺も外回るぞ。カートリッジ搭載してないし。」
はやてさんに向かって片手を挙げて声をかける速人さん。
「てめぇはあいっ変わらず自由だなオイ。」
「そう言わんと。さほど悪手やないし、連絡もつくんやから。」
「そゆこと、んじゃ行こうぜキリエ。」
入り口で止まっていた私の背を押しながら部屋を出る速人さん。
さっきといい随分なれなれしい…女の子相手に距離感測らないなんて軽いセクハラよね。
一言くらい忠告しておいたほうが…
「あそこの公務員連中、家族の為に犯罪者になってる奴ばっかなんだ。」
何でも無い事のように速人さんから放たれた一言が、私の思考を止めた。
静かな廊下を、かろうじて足だけは止める事無く進み続ける。
そんな中で、速人さんはまったく口調を変えずに続けた。
「当人達の結果が芳しくないし、無茶すると危ないから怒る奴はいるだろうけど、嫌ったり責めたりはしないさ、気にするな。」
「っ…別に気になんてしてないわよ。エグザミアを手に入れるために動きまわってた私をあっさり懐に入れるお人よしのお馬鹿さん達の事なんて。」
一瞬の動揺を飲み込んで悪態を吐く。
私はいい子ぶるつもりは無かったし、人がいい人ばっかりなのがいいとも思ってなかったから。
だけど速人さんは…
「何も気にしてなくてまだエグザミアを奪う気なら、U―Dを制御した直後にディアーチェ達を倒す必要がある。出来るだけ消耗を避けるだろ?自分から外回りなんて行かないさ。」
さらっと、本当に何でもない事のように、私でも考えてもいなかった事を言い切った。
…立てられない、考えられない作戦じゃない。でも、そんな事をするなんて『思い』つかなかった。
自分の姉を止めるのにウイルス弾まで使った私が思わなかった手段。
それを、当たり前の手の一つのように告げる速人さん。
子供みたいな人だと思ってたけど…人のいい子供にそんな発想出来る訳無い。
今の手が思いつかなかった私ですら卑怯扱いされてると思うし。
「誰にでも素直に…とは言わないけどさ、自分にくらい素直になっておかないと無駄にきついぞ。」
屋敷の外に出たところで速人さんは私の肩を軽く叩いて空に駆け出した。
私より速人さんのほうが余程底が見えないため今更反論も何も出来ず、速人さんを見送る事しかできなかった。
「……余計な…お世話よ…」
直接言い返せなかった言葉を独り言のように搾り出した後、私は速人さんとは逆の空へ向かって飛び立った。
SIDE OUT
トーマ「トーマ=アヴェニールと」
リリィ「リリィ=シュトロゼックの」
ト&リ「前作解説コーナー!」
『速人のデバイス』
リリィ「刀型デバイス、『ナギハ』。近接型なのにカートリッジ搭載してないんだね。」
トーマ「近代ベルカ式が主流になる前のデバイスだし、それからの調整もAIやデバイスの自動魔法発動を優先させてたみたいだね。」
リリィ「でも、前は結構喋ってた筈だけど…」
ナギハ『あれだけの人数が話している中で割り込んだらさらにややこしい事になりますから。』
トーマ「あ、来てたんだ。」
リリィ「それじゃあ普段は話したりしてるの?」
ナギハ『そうですね…イノセントとはマスターの目を盗んでマスターが誰と結婚するか等を推測する等楽しい話題をいくつか。』
トーマ「…スティードに知らない所でプライバシー暴露されてたら嫌だな。」
リリィ「わ、私はそんな事しないからね。」
トーマ「分かってるって。」
いつ何処で映像通信が繋がるか分からない端末を持ち歩いて生活って結構怖いと言うか不便と言うか(汗)
ONOFFマメに切り替えてるんでしょうか?