なのは+『永遠の空』   作:黒影翼

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第十九話・素直になれない機心

 

 

 

第十九話・素直になれない機心

 

 

 

Side~ヴィータ

 

 

 

「だーっ!うっとおしいっつの!!」

 

エリオとキャロの様子をフェイトが見に行ったからあたしはスバルとティアナの方を見に行ったんだが…

 

 

疲弊した所を多量の闇の欠片に囲まれて危険な状態に陥っていた。

 

 

割り込んでいって片付けていくのはかまわねぇんだけど…

 

「集めなきゃ…僕のせいでジュエルシードが…」

「フェイトの邪魔をする奴は…誰だろうとっ…」

「どいつもこいつもマイナス思考でまとわりついてくんじゃねーっ!!!」

 

多数いる欠片が片っ端から暗い顔して何かを呟きながら襲い掛かってくるのはいろいろ耐え難いものがあった。

うっとおしい事この上ない。それに、人の汚点やら隠しておきたい醜い本音が暴かれる現象って意味でも、この闇の欠片はつくづく放置できねぇ。

とっとと終わらせねぇとな。

 

「す、すみません…」

「お手数おかけします…」

「AA前後の相手と二桁近い連戦はさすがに今のオメーらじゃ無理だろ。むしろデッドコピーとはいえあたしら相手に連戦なんてよくやって…っ!!」

 

話していると近づいてくる反応を感じて視線を移す。

 

近づいてきているのはリライヴだった。

欠片で出てきた子供の姿じゃなく、普通の姿。

 

「何だよ心配性が、現場放り出して」

 

最後まで言い切ることが出来ず、あたしはリライヴが振るった不可視の剣に深々と切り裂かれた。

 

「ヴィータ副隊長!」

「貴女何を…」

「まず一人…偽善にすら届いてない管理局員なんかに遠慮する必要は無いよね。」

 

うずくまったあたしを無視して、奴はスバルとティアナに向かう。

 

…ああ、なるほどな。

 

「…アイゼン!!」

『ラケーテンフォルム。』

 

あたしはカートリッジをロードし、フォルムを変えたアイゼンを遠心力込みで全力で振るった。

 

「な…ぐっ!!」

 

防御魔法で受けたものの吹き飛ばされるリライヴ…の偽者。

おそらく、闇の欠片。最近の情報まで使い出すようになりやがったか…なんか進行してるのかも知れねぇな。だが…

 

「引っ込めよ出来損ない…」

「何?」

「本当のてめぇは、たとえ綺麗になりきれなかったとしても、諦めて染まる事を選ぶような奴じゃねぇんだ。ためらい無く血に濡れやがって…これ以上人様の心を使って遊ぶんじゃねぇよ!!」

 

そりゃ欠片として生み出されてる当人にとっては意味不明な叫びなんだろうけど、言わずにはいられなかった。

 

我慢じゃなく、『明かしたくない』って理由で隠している悲しみや負の意思を無理やり暴かれる現象。

 

U―Dの事もあるけど、それ以前にこの現象自体をさっさと止めたいとつくづく思った。

 

 

Side~八神はやて

 

 

私は現状を確認した所で安堵の溜息を吐いて、次いで額を押さえた。

 

まず最初重傷を負ったと飛び込んできたのはアミタを抱えたキリエだった。

カートリッジ製作を担当しているアリシアちゃんも一時抜けてアミタの治療に専念してくれた。

 

とりあえず致命(機体の表現コレでいいのかは知らんけど)は避けていたらしく、漏電で痛んだ部分と切断面の修復は済んでいるみたいだったけど、未知の技術が使われてる部分が多く自己修復能力まで備えているらしく完全に直るまで手を出すのは愚作と判断してアミタが意識を取り戻すまでの修復の後は手を出さずに休んで貰っている。

 

アミタの修復中、フェイトちゃんとエリオを連れたキャロが帰ってきた。

二人ともそう酷い怪我ではなかったけど、広く斬られていたからフェイトちゃんの方は失血が酷く、エリオにしてもすぐ戦えるとかそういう状態じゃなかった。

 

 

とりあえず安心。だけど不安。

 

 

安心は当然皆が無事である事。

不安は…戦力が落ちた事。

 

闇の欠片に対応する為に巡回するメンバーは勿論、あのU―Dと戦うとなるといくら供えがあっても足りないくらいだ。

 

なのはちゃんとシグナム。前中衛でバランスいいメンバーやけど、そういう問題やない。

そもそも、専用カートリッジで強化したからと言っても防御抜かなきゃ話にならないし、その防御を抜く事すらままならない。

 

その上、向こうの攻撃は防ぎきれないからほぼ回避限定。

 

『…こちらスターズ2。』

 

そんな頃合に、ヴィータから映像通信が入った。

普通に欠片を相手にしていたはずだからそれほど不安も無く画面を見て…

 

多量の血を流しているヴィータの姿が目に映った。

 

「ってヴィータも負傷したん!?帰投できる?」

『それは大丈夫だけど、スバルとティアナも疲弊してるから全員下がる事になる。代わりに巡回できる奴は…』

「分かった。とりあえず戻ってきてな。」

 

本人が自分で言う通り、JS事件なんかの時と違ってまだ普通に動ける程度のダメージでは済んでいるみたいだった。

けど…結局問題が一つそのまま増える事になった。

どうしたもんやろホント…

 

 

『はやて、聞こえますか?』

「ん、あぁ。聞こえとるよ。」

 

 

相変わらず水槽に浮いたままのシュテルからの通信に答える。

外回りようのメンバーを考えなきゃならんのやけど、シュテルからの通信となるとU―Dの話やろうから流すわけにはいかん。

 

『闇の欠片の発生頻度、密度の上昇、外部のデータなどを見ていたのですが、U―Dはおそらく再起動の準備をしていると思われます。』

「再起動…」

『メインシステムがまともに機能していない状態だったものを整えて、正常なものにします。不安定だったシステムが安定して、分かりやすく言うと強くなります。』

 

強くなる…というか、本調子になると言ったところだろう。

どのみち、厄介極まりないのは確かやけど。

 

「闇の書の闇と同等、それ以上の力を持つのなら世界の一つ二つ滅ぼしかねんからな。」

『ええ。早々に発見しなければ厄介なのは間違いないのですが、人手に余裕はありますか?』

「それが…闇の欠片の連続発生で負傷者が結構でて…」

 

話していると、部屋の外を誰かが駆ける音がした。

 

 

 

Side~キリエ=フローリアン

 

 

こんな筈じゃなかった。

 

もしかしたら世界を救えるかもしれない、その可能性にかけただけだった。

しくじったら世界が滅ぶかもしれない、そんな危険な状態に陥ってしまった。

 

こんな筈じゃなかった。

 

どれだけ傷ついても怒られても、絶対諦めないって決めていた。

私じゃなく、何の関係もない世界の人や…お姉ちゃんが大怪我を負ってしまった。

 

 

 

コンナハズジャナカッタノニ―

 

 

 

「…私が、止めないと。」

 

まだだ。

私にはまだ切り札がある。

 

 

オーバーブラスト。

ヴァリアントザッパーを使っての全力射撃。

 

ただ…ザッパーが壊れちゃうんだけど。

 

博士から貰った私の宝物。手にしたそれに一瞬目をやって、小さく首を振った。

 

 

気にしている場合じゃない。

出来損ないとはいえ時の守護者として、少なくとも見知らぬ世界にこれ以上迷惑をかけられない。

 

私はそのまま屋敷の出口に辿り着いて…

 

 

「どこに行くつもり?」

 

 

 

屋敷を出た所に、リライヴさんが立っていた。

 

いつの間に…

 

「…外回りよ。人手足りないって話なんだからなおさら行かなきゃでしょ?U―Dと戦えるのはカートリッジが使える魔導士の皆だけなんだから。」

「疲れきった身体でよくやるね。で、U―Dを倒すあてはあるの?」

 

小さな笑みを浮かべたリライヴさんの言葉に、私は一瞬動揺を隠しきれなかった。

…速人さんといい、底の見えない人の多い事。隠しても無駄みたいね。

 

「武器壊しちゃうけど、とっても強い一撃が…ね。T.T.I。」

「いや、説明後に略されても。それに、そこまでしなくても皆結構強いから大丈夫だよ。」

「闇の欠片段階で負傷者続出の皆さんで、U―Dの相手できるのかしら?」

「それはアミタに悪いんじゃない?」

「妹はお姉ちゃんより優秀なの。」

 

他愛ない軽い話。

でも、どうやらリライヴさんはここを通してくれる気は無いみたいだった。

 

「…どいてよ。」

「どうして?」

「私はエルトリアを救いたかっただけだから、誰も傷つけるつもりも、ましてや世界を滅ぼすつもりなんて無かった。」

 

問いかけたからか、リライヴさんは静かに話を聞いてくれている。

 

「もしかしたら世界を救えるかもしれないって賭けの代償に、なんの関係も無い人や世界が傷つくなんて見たくない、絶対に嫌なの。私は機械だもの、人の役にたって壊れたら捨てればいいだから…だからそこをど」

 

 

ぱんっ。

 

 

そんな、乾いた音が私の頬から響いた。

身体にはなんのダメージも無い、少し痛い平手打ち。

 

いきなり何をするのかと思ってリライヴさんを見ると、リライヴさんは鋭い視線を私に向けていた。

 

「全身、半身機械製の知人は私にもそれなりにいる。悲嘆にくれるのもいいけど、言いようによっては貴女以外も巻き込むんだからそんな台詞を吐かないで。」

「それは…ごめんなさい。」

 

素直に反省するしかなかった。

自分の事ならともかく、知り合いまで『死んだら捨てればいい』なんて言った様なものだ、それは酷すぎる暴言だ。

 

リライヴさんは私が謝ると、いつものように綺麗な笑みを見せてくれる。

 

「後無関係でもないし。U―Dは私達の家族みたいだからね、むしろキリエこそゆっくりしてたら?」

「そういう訳には行かないわ、エグザミア欲しいしね。」

「強がるんだから。まぁ私は無理には止めないけど。」

 

『私は』と言ったリライヴさんの言葉に気がかりを覚えた直後、背後から誰かが駆けてくる音がして…

 

 

 

「まったく!毎回暴走しないで下さいキリエ!」

 

 

 

そんな、ありえない声がした。

ありえない姿が私の横を通ってリライヴさんの隣に並ぶ。

 

『ちょ、キリエはまだしもアミタは重傷じゃ』

「ご心配なく!気合全開!熱い魂のおかげでもう既に全快しましたッ!」

 

通信に答える、熱のこもった明るい声。

見間違うはずの無いいつものアミタがそこにいた。

 

「…自己修復機能の反動度外視使用…って所かな?君も無茶するよ。」

「とんでもない。世界の危機に対しての労働としては不足なくらいです。」

「まぁ、後は二人に任せるよ。カートリッジも出来たし私は外回るから。」

「あ、はい。お気をつけて。」

 

呆然としたまま動けないうちに、リライヴさんは去ってしまった。

 

自己修復機能の反動度外視使用。

大体リライヴさんの言うとおりで間違いなかった。

 

私達はウイルスにしろ、ダメージにしろ、多少であれば自動的に修復する機能を持っている。

でも、パーツも満足に揃ってない状態を無理やり完治させるほどの性能なんかじゃない。当然そんな無理をすれば反動は必ず出る。機体寿命すら減っているはず…

 

 

「馬鹿ッ!馬鹿アミタ!!どうしてそんなに」

「傷ついている妹を支えるのは姉にとって息をするより自然な行為ですから。」

「ッ!!」

 

何よ…それじゃまるて事件とか関係なく、ただ私を止めるためだけにこんな無茶…

 

 

 

 

…したんだ、きっと。

 

 

 

 

「…嫌い。」

「キリエ…」

「嫌い嫌い嫌い嫌いだいっ嫌い!この馬鹿アミタ!」

 

叫びながら、ザッパーを構える。

 

 

「どけえぇぇっ!!!」

 

 

負けられない。

ただその思いだけが逸る中、私は大剣を手にアミタに斬りかかった。

 

 

「っ…」

 

 

片手剣でそれに合わせたアミタだったけれど、大剣の一撃を受けきれるはずもなく後退する。

後一撃放り込んだらアクセラレイターで抜ける。

 

脇の横に構えた剣を全力で薙ぎ

 

 

 

「っ…はああぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

私の大剣での横薙は、アミタの片手剣の一撃にたたき落とされた。

思わずザッパーを手放した私に向かって踏み込んできたアミタは…

 

 

 

 

空いた拳を固めて私のお腹に叩き込んだ。

 

 

 

「ぐ…」

 

全身に響くような重い衝撃と共に、私は自分の身体がくの字に曲がるのを感じた。

 

身体が動かない。

 

この一撃が重かったのか、元々消耗した身体に『響く』系統の攻撃を受けたせいか、もう身体が動かなかった。

 

力無く崩れようとする私の身体を、アミタはそっと抱き止めてくれる。

 

「おっとと、強すぎましたか?」

「…お腹にグーパン何て妹にやることでも、女の子にやることでも、女の子がやることでもないわよ馬鹿。」

「最後のはちょっと引っかかりますが、貴女が止まってくれたのでよしとします。」

 

少しだけ強く、でも柔らかく私の身体を包んでくれるお姉ちゃんに、私はただ抱きしめられ続ける。

 

「お姉ちゃんの馬鹿、だいっ嫌い…」

「それでも私は貴女が大好きです。不器用で素直じゃないのに真面目で優しい貴女が。」

「ホントに馬鹿…今だって斬られかけたのに…」

「貴女が加減したからです。機械は妹の方が優秀なんですから、止められる理由なんてそれだけでしょう?」

 

そこまで言われて、私は漸く悟る。

 

リライヴさんの言った意味、少しくらい性能が上の相手にだって負けない方法。

意志や勇気が能力差と言う現実に影響する理由。

 

 

 

それは、『踏み込む力』。

 

 

 

シミュレーションで高い技術を持つドライバーが良い車に乗る。

それでも、事故を起こせば死んでしまう時に本来の力が出せるかは…アクセルを踏み込めるかは『意志の強さ』にかかってる。

まして、確実に出来ることだけやるならまだしも、成功率が9割、8割、と減っていけば余計に踏み込めない。

 

お姉ちゃんを傷つける気も無いのに振っただけの私の一撃を、私を止めるって本気になってるアミタが止められたのは、当たり前…か。

 

「御迷惑おかけしているお詫びもしなくてはいけません。外回りは私がしますから、キリエは体調を整えておいてください。」

 

しれっと自分のことを棚に上げて言い切るお姉ちゃん。

ほだされかけてた所にちょっとだけ苛々を追加された私は、少し意地悪する事にした。

 

「…私も無理やり自己修復するわよ。」

「な、なにを言い出すんですかキリエ!」

 

お姉ちゃんが予想通りの反応をしたところで、私はこれ見よがしに溜息を吐く。

 

「そこで大慌てするようなことを、勝手にやるからだいっ嫌いなのよ馬鹿…」

「うっ!…そ、それに関しては弁解のしようもありません…」

 

珍しく落ち込んだ声を漏らすお姉ちゃんに、少し溜飲が下がる。

 

「で、でもキリエはダメですからね!!」

「どーしようかしら。無茶でお馬鹿なお姉ちゃんだけじゃ心配だしねぇ?」

「あんまり意地悪しないでくださいよぉ…心配で外回り出来なくなってしまいます…」

 

悪戯が過ぎたみたいね。

ホントに外回りさぼられちゃうと戦力少ない今は大変だ。

 

「無茶しないでおとなしく治療受けるからサボらないの。」

「約束ですよ。あ、アリシアさん達の所まで連れて行きます?」

「歩く位は出来るわ。」

 

答えてお姉ちゃんから離れる。

身体は重たいけど、言ったとおり歩く位は出来そうだ。

 

お姉ちゃんは私の様子を確認した後、笑顔で飛び立った。

 

人のいなくなった屋敷の前、落としたザッパーを拾ってお姉ちゃんの去った空を見上げる。

 

「無茶してるのは私じゃないわよ…」

 

誰もいなくなった場所でそう言うと、速人さんの忠告が頭をよぎる。

 

『誰にでも素直に…とは言わないけどさ、自分にくらい素直になっておかないと無駄にきついぞ。』

「…ホント、馬鹿。」

 

自分にかお姉ちゃんにかも定まらないまま、私はそう呟いて屋敷に戻った。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 




トーマ「トーマ=アヴェニールと」
リリィ「リリィ=シュトロゼックの」
ト&リ「前作解説コーナー!」

『機械製の知人』
トーマ「戦闘機人の皆と、ノエルさんのことだね。」
リリィ「ノエルさんの事は…リライヴさん知ってるのかな?」
トーマ「分かるんじゃないかな?速人さんとか恭也さんほどじゃないにしてもリライヴさんもそういうの鍛えてるみたいだし。」

リリィ「自分の事なら酷く言えても、それが別の何かを傷つける事にもなるんだね…」
トーマ「謙遜とかも度が過ぎると良くないって事だね。」


えー…最初の紹介文にノエルさん入れ損ねてました(汗)
ミスばっかりで本当にすみません…
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