なのは+『永遠の空』   作:黒影翼

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第二十話・ファイナルシークエンス

 

 

第二十話・ファイナルシークエンス

 

 

 

Side~シグナム

 

 

 

カートリッジの準備は済んだ為、負傷したヴィータとテスタロッサの変わりに私となのはが出回る事となった。

 

美由希さんも手伝うかと申し出てくれたのだが、さすがに生身の地球の人間に魔導士と戦うのを当たり前にさせるのは忍びないので、すぐさま速人に出直して貰った。

 

「許さない…クライド君を…」

「我々がどうこう言える身ではないが、その同類に自分から染まった身でよくそんな事が言えた物だ。」

 

いつかの仮面で扮装を施していた猫姉妹の欠片を斬り裂いて、私は息を吐いた。

 

…よくよく考えれば主はやてが狙われたと言うだけで私やヴィータはこの猫姉妹と似た反応をしていると言うのに、襲撃を受けたなのはや闇の書に家族を殺されたリンディさんやクロノ提督はつくづく強いのだな。

 

心の闇を映し出すこの闇の欠片事件に巻き込まれているからこそ尚更に思う。

何しろ、隠している憎悪があればこの機に浮き彫りになってもおかしくは無いのだ。

だが、我等を罵倒するようななのは達の欠片に出会った事がない。

 

欠片すら悪意を抱いていないとでも言うのか、どこまで優しいのか。

 

肩をすくめた所で小さく笑みがこぼれている事に気づく。

いかんな、一応勤務中だ。神経を研ぎ澄まさねば。

 

気を取り直して捜索もかねて空を舞う。

 

 

 

直後、世界が揺れた。

 

 

 

繭のような結界。

闇の欠片を発生させていた大規模結界の力が、海上の結界に集まっていく。

 

「…今回は運がいい。」

 

絶望的なまでの力を集める海上の結界を見た私は、再度笑みを漏らした。

 

Js事件の折はあちこち飛び回った結果肝心な所に間に合わなかった事が多々あった。

最終的にリライヴを止めるためにこそ戦えたものの、少しばかり働き足りない気がしていたのだ。

 

カートリッジは持っている、目標も目の前。

 

堂々と先陣が切れる。

 

「主はやて、海上でU―Dと思われる反応を発見しました。先行しますのでリミッター解除を。」

『ちょ、一人で行く気か!?』

「多人数を広域攻撃でまとめて殲滅されればそれこそ戦力の後がなくなります。大して、一人相手に毎回強力な広域攻撃を使用すれば蓄えた力が一気に消耗します。束になればどうにかなる。と言う相手ではない以上、連戦の方が効果的かと。」

 

不安そうな主に説明もなしに突撃する訳にも行かない。

一応は納得してくれたのか、主は息を吐いた。

 

リミッターが外れ、力が戻ってくる。

 

『…無茶せんように。』

「カートリッジの効果時間はそれほど長くありません。その間位であれば全力戦闘は可能です、心配なさらず。」

 

確かな自身を持って宣言すると共に私は力を集めている結界に飛び込んだ。

 

 

暗い空。

一人孤独に佇むU―Dの姿がそこにあった。

 

「貴女は…夜天の守護騎士…烈火の将。」

「ああ、会うのは初めてだな、探したぞ。」

 

U―Dは私の言葉を聴いてうつむいてしまう。

 

「何をしに来たんですか?私に近づけば、皆壊してしまうのに…」

「私を知っているのだから、闇の書にいた時の事も覚えているのだろう?お前の絶望も案外大したものでもないかも知れんぞ。」

 

私の言葉を聴いたU―Dが、うつむかせていた顔を上げ、私を睨むように見てくる。

 

「いい加減な事言わないで下さい…闇の書の底で誰も使い切れずに封じられ続けた私を、そんなに都合よく制御できる人なんていませんよ。私は一人でもいられる強さを手に入れる、お願いだから逃げてください。」

「無理だな。」

 

少しの苛立ちを孕んだ悲しい声を一言で切り捨てる。

だが、確信に近いものがあった。

 

「私は本当に一人でいられる『強さ』を持つ者を知っている。故にそれがどれほどの苦行かも知っている。周囲から一人にされた現状を頭を下げて受け入れるような弱さでは、到底無理な話だ。」

 

管理局と戦い続けたリライヴは、それに近いものがあった。

誰かに仕える騎士にも、民がいる前提の国にも無い概念、管理外世界の魔法すら認知されていない小さな島国に来て初めて知る事ができた存在。

 

己が道を極めんと進む者。

 

求道者…とでも言うのだろうか?彼ら諦めで一人でいる訳ではない。

戦乱すら『人』がいないと成り立たないものだ、そんな険しい道を『仕方ない』程度で歩めるはずも無い。

 

「…じゃあどうしろと言うんですか、私に近づいたものは皆壊れてしまう。壊したくも無いのに皆…」

 

背にした赤い霧が揺れる。

強大な力だ、これ以上会話を続けている事もできないか。

 

「お前を救いに来た者がいる、信じて待っていろ。」

 

今はこれ以上の言葉は不要。

私はレヴァンティンを構え…

 

 

「プログラムカートリッジ、ヴィルベルヴィント…ロード。」

 

 

カートリッジが弾け、全身に力が満ちる。

効果時間は二分すらない程度。初手から全力で行かねばならない。

 

「さぁ…行くぞ!!」

 

私はレヴァンティンを手に、U―Dに向かって突撃した。

 

「無駄なんです…そんなもの。」

 

巨大な禍々しい爪。

まともに防げば砕け散るだろう、ならば…

 

「紫電一閃!!!」

「っ!?」

 

U―Dの爪と私の剣が衝突した瞬間、強大な衝撃と爆発によって互いに弾け飛んだ。

 

開いた距離を詰めなおすより先に剣を鞘に収める。

…防御の硬いU―Dに攻撃を通す為、このカートリッジの強化は攻撃に特化している。

受けるくらいならば攻め倒したほうがいい。それに、仮に私で倒しきれなくても相殺を繰り返せば消耗させられる。

 

「飛竜一閃!!」

 

抜刀より放つ砲撃系攻撃。

U―Dは咄嗟に防御で私の攻撃を受け止める。

…元々全身が多層防御で覆われていると言うのに個人で防御魔法まで張るか、破り難いことこの上無いな。

 

「スピアー!!」

「何…ッ!?」

 

唐突に作り出された二つの黒い球体。

そこから雨のように魔力弾が放たれた。

 

 

 

いかん、これは避け切れんか…!?

 

 

 

「アクセル……シュート!!!」

 

 

 

聞きなれた声と共に飛来した桜色の魔力弾が、U―Dの弾丸の雨から私に当たる軌道のもののみを掻き消していく。

相変わらずいい腕だ。

 

「貴女は…また…」

「うんまた。そして、コレで最後。止めるよU―D。」

 

高町なのは。

六課のエースオブエースが、その名のままにデバイスを手に空にいた。

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

いくらシグナムさんでもU―D相手に一人は無理が過ぎる。

私は結界に飛び込んで、シグナムさんに襲い掛かる雨のような弾丸を相殺した。

 

「…無駄です、何人で来た所で」

「ブラスター2!!エクセリオンバスター!!!」

「え?」

 

悲しげに何かを呟いたU―Dには悪かったけど、対抗カートリッジには時間がある。

即座に砲撃を放つと、一瞬声を漏らした後直撃して爆発した。

 

 

対抗カートリッジにブラスターの二重強化からの砲撃魔法。

 

 

爆発が晴れると、かろうじて防御は間に合ってしまったのか手を翳して浮いているU―Dの姿が現れた。

 

少し服の裾が破けている所を見るとちょっとは通ったみたい、いけるかな?

 

「…痛いです。」

「鬼かお前は。」

「にゃ!?」

 

気づくと、U―Dはともかくシグナムさんまで私に白い目を向けてきていた。

お、鬼って!カートリッジの効果時間短いのはシグナムさんだって知ってるはずなのに!

 

「い、今は聞き流しておきます!U―Dを止めないと!」

「と言うわけだ、すまないが苦情は後であの鬼母に言ってくれ。」

 

中、後衛の私に対して完全前衛のシグナムさんは、それだけ告げるとU―Dに斬りかかる。

速人お兄ちゃん達戦闘者のような神業こそ使えないものの、反応や鋭さは近接戦担当としてすさまじいもので、霧から現れる予測不能の爪から辛うじて身をかわしている。

 

私はそんな戦いの中心から少し距離をとり、砲撃準備に入る。

 

 

 

狙うは一撃。

スターライトブレイカーEXFB。

 

ブラスタービットも使用した、文字通り最大最強の一撃。

準備に入ってもシグナムさんなら止めててはくれると思うけど…

 

問題は、当てさせてくれるか…だ。

 

ちゃちなバインドなんて一瞬すら持たないだろうし、どうしようか…

 

『任せろ。』

「え?」

 

唐突に、シグナムさんから念話が届く。

任せろって…シグナムさんバインド系そこまで出来る訳じゃない筈なのに…

 

思った所で首を振る。

 

あのシグナムさんが無策であんな自身満々の念話を送ってくるはずが無い。

信じて自分の役割を果たす。

 

後衛の役割は究極、ただの砲台。

はやてちゃんのように前衛に護られながら、最大最強の一撃を放つ。

 

「ブラスター3!!」

 

膨れあがる魔力、軋む身体。

そのうちの全ての余計なものを排除して、ただ準備を進める。

 

 

近、中距離を行き来して攻防を繰り返していたシグナムさんが振るった剣が、U―Dの赤い爪と衝突して弾き飛ばされる。

 

大きな隙。無防備な私を打ち落とすには十分―

 

 

 

 

レヴァンティンが分解されていた。

 

 

 

あれは…シュランゲフォルム?

 

長い鞭状連結刃が、弾き飛ばされたシグナムさんのレヴァンティンから伸びて、U―Dの身体を取り巻き、その身体に巻きついた。

 

常時防御が硬すぎて刃が通っていないけど、バインドにかかったようにU―Dが拘束される。

 

「今だ高町!」

「はい!」

 

もう準備は出来ていた。確実に当てられる時が出来るのを待っていただけ。

 

展開されたブラスタービット、構えたレイジングハートがまばゆい光を帯びて…

 

 

 

 

「スターライト…ブレイカーッ!!!」

 

 

 

 

最大最強の一撃は、レヴァンティンに包まれて動けなくなっていたU―Dを撃ち貫いた。

 

 

 

光と轟音が辺りを埋め尽くす。

 

 

 

それが晴れると、U―Dの姿が見えた。

 

 

「この威力…いつかよりはるかに…」

 

 

直前でレヴァンティンを引きちぎれたのか、両手を翳して防御の体勢をとっているU―D。

 

…止まらなかった?

さすがに削れたとは思うけど、U―Dはまだ普通に動けそうだった。

 

専用カートリッジの効果が切れたのを自覚すると、途端に負荷が身体を襲う。

 

「はぁ…はぁっ…」

 

痛い。

JS事件のダメージが癒えてない状態でのブラスター3全力砲撃。

 

おまけにU―D用の強化カートリッジも使ってたから反動が半端じゃない。

 

血を吐きそうな気持ち悪さが込み上げ、意識が遠のいて…

 

 

 

ふらついた私の身体を、誰かが抱き止めた。

片腕だけど、しっかりと。

 

 

「こっから先はヒーロータイムだ。女の子はハッピーエンドを待ってゆっくりしてな。」

「…うん。」

 

 

お兄ちゃんの…高町速人の登場。

私にとって、少しの悔しさと『もう大丈夫』の象徴。

 

それでも、疲れ切った身体は安心してしまうともう動かせなくて…

伝わる暖かさに身を委ねて、私はまどろみに落ちた。

 

 

 

Side~高町速人

 

 

 

疲れきったのか、事件も片付いてないのに完全に力を失って身を委ねてくるなのはの重さと暖かさを感じながら、傍らにいたシグナムに視線を移した。

 

「騎士が武器を捨て駒にしていいのか?」

「言うな、世界の危機相手と互いに覚悟の上だったが、気に食わん手ではあったのだ。」

 

仏頂面で柄だけになったレヴァンティンを眺めるシグナムの様子を見る限り、自分でもそれなりに嫌ではあったのだろう。

まぁ確かにあのU―D相手というだけで大抵の事を妥協しないと戦ってられないか。

 

事実、聖王ですら止めきった一撃を食らっても、まだ平気な顔して浮かんでいる。

 

…消滅させるのにアルカンシェルまで使った闇の書の闇と同等なんだもんな、当然か。

 

「まぁいいや。シグナム、なのはを頼む。お前ももう戦えないだろ?」

「…それはお前もじゃないのか?カートリッジなど無いだろう。」

 

なのはを受け取ったものの、俺を訝しげにみるシグナム。

そりゃそうだ。

魔力値や出力なら俺より高いなのはやシグナムでさえ、専用カートリッジ付きで二人がかり、しかもそこまでやっても消耗させる事しかできなかったんだ、疑うのも無理はない。

 

尤も…無用な心配だが。

 

「戦う気ならやりようなんていくらでもあるさ。可愛い子供相手だからそれすら避けてたけど、いい加減一人で暴れさせとくのは忍びないしな。」

「…そうか、ならば任せるぞ。」

 

シグナムが離れていった所で、U―Dは俺を見つける。

 

 

 

 

 

少し前、欠片とそれを発生させていた結界が急に収束しだした瞬間に入った通信。

U―D再起動の連絡。

 

「んじゃ行くか。俺が牽制、リライヴがバーストセイバーを叩き込む。でいいんだよな?」

「うん。単発だからしっかり頼むよ。」

 

軽い感じの事前相談をリライヴとしていると、唐突に通信が入る。

 

「あれ?ディアーチェ。」

 

映像つきで送られてきた通信越しに表示された顔は、ディアーチェのものだった。

まだ調整中で水槽に浮かんでいるからか、身体が写らないようアップになっている。

 

『た…』

「た?」

『頼む…』

 

言いづらそうに開かれたディアーチェの口から漏れたのは、王として振舞う事を強く意識してきたディアーチェから放たれるには、重すぎる一言だった。

 

それだけ言うのにどれだけの葛藤があったのか、あるいは…

 

 

王として振舞う事より重要なくらいに、U―Dの事が心配なのか。

 

 

瞳を閉じて放たれたディアーチェの、たった三文字の頼みごと。

 

俺はリライヴと顔を見合わせて…

 

 

「「あははははっ!!!」」

 

 

盛大に笑った。

 

 

『き、貴様等それでも天使と英雄か!U―Dに何かあったらただでは』

「「誰に言ってる。」」

 

怒りからか恥ずかしさからか、真っ赤になって慌てるディアーチェに対して、俺はリライヴと一緒に親指を立てた手を見せた。

 

 

 

 

 

「悪いなU―D。」

「何が…ですか?」

 

こっちに来る前の会話を思い出しているうちに話せる距離まで近づいていたU―Dが、俺の突然の謝罪に首をかしげる。

 

 

「絶対破れない約束をしてきた。ちょっと無理やりにでもお前の絶望を取っ払う。」

 

 

どこか諦めたような目のままのU―Dに対して、俺はまっすぐにナギハを突きつけてそう言った。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 




『特に説明が無い為今回は休業とさせていただきます。』
リリィ「やっぱり…こうなっちゃうよね。」
トーマ「一回話した事は話さないだろうし、仕方ないけどね。」
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