第二十二話・紫色の炎雷
Side~レヴィ
ボクは抱えていたマスターをおろして色の変わったU―Dを見る。
戦闘モードか…シュテルの話だと、あれじゃU―Dの意思そのものから破壊に向いちゃうって事だったな。
…なんか、色変わる前からマスターには結構本気で怒ってたみたいに見えたけど。
「とりあえず任せてよ。『アレ』もちゃんと使えるようにして貰ってきたから。」
「ええ、さすがアリシア。融合してからこの短時間でいい仕事です。カートリッジ生成を全てシャーリーに放り出していた辺りもいい性格です。」
ボクの言葉を聞いた直後は笑顔だったマスターが、シュテルの話を聞いて頭を抑える。
「二つ目絶対褒めてないよな…ってかシャーリーさんまた惨い目に…」
「いえ、目の下に隈を作りながら満面の笑みを浮かべてキーを叩き続けていましたが。」
「そりゃ楽しそうで何よりだ。」
小さく肩を竦めたマスターは、普段見ないちょっと真面目な表情でボクとシュテルを見る。
「躯体そのものはどうにかできるかもしれないけど、俺には『砕け得ぬ闇』のシステムやU―Dの無限回復、強化を止める手立てがない。出てくる度に身体壊すのも可哀想な話だしな。」
「マスター…」
魔導士としてはそこまで力の無いマスター。
救えないって言う気が無いマスターにとっては、今の状況どうするか考えるのは本当に難しいんだろう。
「…ここは任せた。」
「…うんッ!!」
「必ず。」
ボクとシュテルはそれぞれに返事を返した。
手伝いならともかく、完全に丸々預けるのはマスターとしては嫌なのかもしれない。
それを飲み込んで、ボクとシュテルに譲ってくれたんだ。絶対助けないと。
「やばそうなら助けには入る、安心していって来い。」
「大丈夫!って言うかたまにはマスターゆっくりしててよ。そんな身体で乱入されたらかえって心配だよ。」
「今回は怪我は無いはずなんだがな…ま、そういうならゆっくり見させてもらうさ。」
そこまで話すとマスターは離れていった。シュテルが会話に混ざらなかったから不思議に思ってみてみると、どこか遠くをみて会釈をしていた。
その先には手を振るリライヴ。
ボクも手を振り返すとリライヴも戦闘空域から離れて…
迫ってくる力を感じた。
と言うか、わざわざ感じたなんて言わなくても分かる。
…これが、スターライトブレイカーとバーストセイバーを直撃した後の反応なのかってちょっと考えてしまった。
だって、どっちも軽く数回死んだ気になれるくらいの破壊力とダメージだよ?
何でまだボク達二人でかかっても勝てなさそうな位の力が残ってるのさ。
「あたっ。」
考えていると、シュテルがボクの額を指で弾く。
「考えるのは私の領域です、貴女はいつも通り戦いなさい。」
「わ、分かってるよシュテるん。」
咄嗟に口をついて出た呼び名に、自分で首を傾げる。
「…あぁ、大本の使っていたあだ名ですね。そう言えばレヴィの大本はそれほど怨恨の念はありませんでしたね。抵抗無く融合した分、今までの貴女らしくない部分も残っているのでしょう。」
言われて少し昔を思い出す。
何にも知らなかった頃。負けるとか弱いとか、考えた事も無かった頃。
その割に痛かったり苦しかったりしたらすぐ音を上げていた頃。
大本のボクはそのまま眠ってたんだっけ。
シュテルみたいに戦術とかいろいろ考えたり、地味な戦い方の方が安全で確実だって事が見えてきて…
それでも、カッコいいと思う自分でいようとするボクの事を、マスターが馬鹿にしたりしないで『羨ましい』って思ってくれたから。
痛くても怖くても、ボクはボクが望んだボクのままで、頑張ろうって決めたんだ。
ボクは、軽く自分の胸を叩く。
安心して…ボクとシュテル、結構強いから!
弱いままの、弱い事を怖がってる頃の自分に向けて言い聞かせるように念じて、近づいてきたU―Dと向かい合った。
「シュテル…レヴィ…」
「貴女が知っている私達とは少々違うかもしれませんが、その通りです。」
「はじめましてU―D。」
大本の皆は知っていたのかもしれないけど、一回分離してるボク達にとってはこれが正しい挨拶になる。
「何をしに?」
「勿論、キミを助けに。」
「不可能です。」
一言でばっさり切り捨てられた。
性格も変わるって本当だなぁ…
「私はこのまま完成する。仮に連続攻撃でこのまま私を壊せたとしても、助けるなんて夢物語だ。」
「よかった。」
「え?」
鋭い口調のU―D。でも、ボクは確かに聞いた。
助けるのが『夢物語』だって。
「私達のマスター、高町速人が目指すヒーローには、二種類の意味があります。一つは本当の英雄。世界や人々を救って見せるそんな存在。」
「特殊な技法は使っていたようですけど、あの程度の力でそんな事を」
「もう一つあるんだよ。」
冷静に否定しようとしたU―Dの言葉をさえぎる。
シュテルが先に英雄の方を話したのは、今回本当に必要なのがもう一つの方だからだ。
だから、何か言うならそのもう一つを聞いてからにして欲しい。
「休日の朝番組。」
「は?」
「古代ベルカを例に出すなら、物語や伝記でしょうか。」
「見ててわくわくどきどき出来て、思わず楽しくなって、憧れる奴!!」
ボク達が話せば話すほどU―Dの表情が曇る。
あんまりちゃんと伝わってないのかな?こういうテレビって地球の日本じゃないと目立たないしなぁ…
「それが何だと」
「分かりませんか?つまり、『子供の夢を体現し、笑顔と幸せをあげる者』ですよ。今の場合は…貴女に。」
「夢に見るほど助けて欲しいんだよね。今日のボク達ヒーロー代行でもあるから、絶対叶えてあげるよ。」
ボク達の言葉を聞いたU―Dが小さく首を横に振る。
「そんな事が出来るなら…もうとっくにやっている。貴女達も知っている筈です、誰もがその力を欲しがって、誰も制御できずに押し込められた事を。」
「うん知ってる。」
大本の皆と一つになったときに、人型になる前の情報も取り戻してた。
だから、知ってる。
今まで一度も救われてないU―Dが、そんな都合のいい話が信じられるわけが無いって。
「だから無理に信じなくてもいいよ。」
でも、U―Dは知らない事がある。
挑戦と勇気で万に一つの可能性を拾ってきた、マスターやなのはのような人を。
万に一つの奇跡なら、万回の挑戦で引き当てるまでだ!
「後から必ず笑顔にしてみせるから!!」
ボクは言い切るとシュテルの手を取った。
戦闘前に自分たちを動きづらくするボクたちを見て、U―Dが不思議そうに首を傾げる。
「何を…」
「「合…体っ!!」」
ボクとシュテルが合わせて宣言すると、お互いの身体が光る。
そして…溶け出した。
魔力光が混ざる、魔力の質が混ざる。
下手な人がやったら融合事故になるんじゃないかと思うくらい色々混ざって…
「完成っ!!」
『…ですね。』
ルシフェリオンで補強されたバルニフィカス、ボクとシュテルの魔力光が混ざった紫色の炎雷、そして内側から聞こえるシュテルの声。
ユニゾンのようでちょっと違うボク達が、U―Dの前に浮かんでいた。
Side~アリシア=テスタロッサ
「何してるんですかあああぁぁぁぁぁっ!!!」
『何やっとるんやああああぁぁぁぁぁっ!!!』
通信越しのはやてと傍のシャーリーから殆ど同時に響いた怒声に思わず耳を塞ぐ。
ばれたら怒られるなーって思ってはいたけど、相手がU―Dだし覚悟はしてた。でも、ここまで怒鳴らなくてもいいのに…
「う、うるっさいなぁ…もう少し普通の反応してよ。」
『できるかぁ!融合事故じゃすまんわアレ!魔力光も魔力の質も完全に解けあっとるやんか!』
「融合機の情報コレに使ったんですか!?元が融合機でもないのに危なすぎますよ!!」
畳み掛けるように怒ってくるはやてとシャーリー。
ま、それだけ二人の事を心配してくれてるってことだし、一つ一つ不安を解消させてあげようかな。
「二人とも元々実体じゃないマテリアルって存在で、躯体にそれが乗ってるって感じだから出来る芸当なの。意識は混ざってないから、分かれるときは身体を作り直す…って感じになるのかな。問題なく分離は出来るよ。」
『そ、それにしたって何でこんなもん…いや、言わんでいいわ、想像ついた。』
言いかけた言葉を飲み込むはやて。
多分正解である『カッコいいから』って結論にあっさりたどりついたからだ。
「でも、作るとなったら私も遊び半分で…全部遊びで作ったわけじゃないよ。」
『今言い直したな?作成理由が既に9割遊びやもんな。』
「とにかく!解説は必要なら後でするけど…」
追求から逃れられる気がしなくなった私は、無理やり話を終わらせ…
「相当強いから安心して見てていいよ。」
自信を持って推せる部分を言い切った。
Side~レヴィ
「うおおおぉぉぉぉっ!!!」
ボク主体の合体の時専用、『バレルソード』になったバルニフィカスとルシフェリオンを振りかざして、ボクは空を駆けた。
合体の時専用何だけど、いつもと違っていろいろ変えられなくて大剣限定になっている。
ルシフェリオンが根元の方で本体補強をしてるから、砲撃の時に先端にバルニフィカスの実体部分があったらバルニフィカスをいためながら砲撃を放つ事になる。だから、手元から先に実体部分をさらす形態は使えない。
ボクは剣が一番気に入ってるから問題ないけど。
「ああああぁぁぁぁっ!!」
絶叫と共にU―Dの爪が振るわれる。
苦しそうだな…早く止めてあげないと!
ボクの大剣とU―Dの爪が衝突して…U―Dの体が後退した。
「な…押し負けた?」
「行くよU―D!必殺!真・爆雷掌!!!」
よろけたU―Dの胸元ど真ん中に掌を押し当てて魔力を集中、そのまま叩き込む。
僕の特性である雷撃がほとばしった直後、溶け合ってるシュテルの新しい特性の炎が大爆発を起こした。
じ、自分でやっておいてアレだけど、超至近だと手が痛い…U―D大丈夫かな?
『前。』
「え?わっ!!」
シュテルに注意されたけど一瞬遅くて、ボクは頭をU―Dの爪につかまれ…
「はあぁぁっ!!」
「うわあぁっ!!」
海に向かって投げつけられた。
物凄い勢いで海中に沈んだボクは、そのまま水中で体勢を整えて再び空中に躍り出る。
「な…くっ、セイバー!!!」
ボクが接近する前に、U―Dは両脇から閉じてくる刃を伸ばす。
確かに強そうだけど…ッ!!
「こんなもの!!」
弧を描く一振りの斬撃で、両脇から迫ってきた刃二つを叩き斬る。
それを見たU―Dが目を見開いた。
ひょっとして結構驚いてるのかな?
「そんな…なんで…魄翼にまともに掴まれたはずなのに…」
『無駄ですよU―D。』
驚いているU―Dに答えたのは、ボクじゃなくて内のシュテルだった。
『私とレヴィは完全に個別に魔法、魔力を扱えます。レヴィが隙だらけでも貴女の攻撃は私が防ぎます。それに…貴女自身、いつまでも無敵の力を振えると思っているのですか?』
「っ…」
シュテルの指摘に、U―Dが表情を歪める。
あ、そっか。U―Dもそれなりに弱ってるんだもんね。
それにしても…つかまれてた時シュテルが防御張っててくれてたんだ。
「シュテるん、ありがと。」
『その呼び方気に入ったんですか?まぁかまいませんが…ともかく、今のU―D相手ならカートリッジが効いている間は有利に戦えるでしょう。…貴女らしく、思いっきり行きなさい。』
「オッケー!」
ボクらしく…なら!
真正面から真っ向勝負!!
「スピアー!!」
まさに丁度加速したところで、雨のような魔力弾がU―Dによってばら撒かれた。
まず…咄嗟に方向転換なんて…
『そのまま。』
「っ…うん!!」
聞こえてきたシュテルの声に素直に答えて、魔力弾の雨に向かって真正面から加速する。
ボクと違って常に考えてるシュテルなら、闇雲じゃない。
ボクは信じてボクらしく!!
多少痛くてもこらえようって覚悟したところで、魔力が使われる感覚がした。
『チェインスパーク。』
聞き覚えの無い魔法の発動。
それと共に、雨のような魔力弾に次から次へと伝達するように雷撃が伝わっていって、魔力弾を破壊していく。
「おお!」
『電気は伝達の性質を持ちます。貴女も小技で動きを封じようとする相手には使ってみてはどうですか?』
「そうする!ありがと!」
無傷で直進して抜けるのが予想外だったのか、U―Dは魔法を制御した体勢のまま動けないでいる。
ここだ…ここがチャンス!!
「一つ!二つ!」
「あつっ!」
斬撃が障壁を抜いてU―Dの身体に傷をつける。
ちょっと痛ましいけど、ごめん。今は君を破らせて貰う!!
「雷神・疾風脚!!」
「うああぁぁぁっ!!」
加速をつけての雷撃蹴り。
高速戦闘に必殺技をってボクの為にマスターが考えてくれた魔法。
それと…コンボ!!
「大本のボクから貰った超必殺…雷刃封殺爆滅剣!!!」
強大な魔力で作り出されたいくつもの雷剣が、次々にU―Dの身体に突き刺さる。
よし、コレで縫いとめた!!
「後は任せるよ!!!」
『ええ。』
シュテルの返事を聞いたところで、ボクは両手で持っている大剣を、砲撃体勢でU―Dに突きつけた。
Side~シュテル
身体そのものはベースとなっているレヴィが操作している為、照準はレヴィ任せになる。
でも…魔法そのものは内部の私でも自由に放つ事ができる。
それがたとえ…最大最強の一撃でも。
表立って動いているレヴィが目立てば目立つほど、私の主砲が切り札だとは気づけにくくなる。それがこの融合の利点の一つ。
「なんで…またっ…」
『前後衛による、牽制から最大攻撃。ワンパターンは通用しないと思うかもしれませんが、本当の基本の基本というのは、相手より上手なら何をどうしても崩されないものなのですよ。』
先よりなのはとシグナム、マスターとリライヴが使っている手にも関わらず彼女に破る事ができない事がその証明。
つまり…どれだけ『エグザミア』や『砕け得ぬ闇のシステム』に力があった所で、それらを扱うU―Dが、今まで戦った誰より弱いと言うだけの話。
『心配は要りません、家族に戻ればいろいろと教えます。だから…今は止まってください。』
「うあああぁぁぁぁぁっ!!!」
U―Dの悲痛な叫び。でも、まともに刺さったレヴィの拘束剣はそれでも砕ける事は無く…
『ルシフェリオンブレイカー!!!』
炎雷を伴った極大砲撃が、U―Dの身体をその悲鳴ごと飲み込んだ。
『む…カートリッジが切れたようですね…』
「問題ないない。U―D止まったみたいだし。」
砲撃の中沈んだU―Dの様子を見ていたレヴィが、陽気な声を漏らす。
確かに、U―Dは止まったようで、魄翼から姿をのぞかせている爪も見る影も無くぼろぼろで、U―D自身も力の殆どを消耗しているようだった。
「後は紫天の書でU―Dを制御すれば終わりだよね。」
『そうですね。』
「紫天の書は…ディアーチェが持ってるんだよね。」
『そうですね。』
そこまで話した所で、漸く気づいたのかレヴィが凍りついた。
「…ディアーチェ…は?」
『分かりきった事を聞かないでください。私達が先に調整を済ませて貰ったので、まだ調整中ではないですか。』
掠れるような声で聞いてきたレヴィが、今度こそ完全に静止する。
レヴィの視界には、その力を殆ど削がれながらも、破壊する気も無かったが故に徐々にではあるが回復を始めているU―Dの姿が写っている。
対抗カートリッジはもう切れて、そもそも私達自身もかなり魔力を使い倒している。
無制限に回復する彼女をどれだけ押しとどめられるか…
「ディ…ディアーチェの馬鹿ああぁぁぁっ!!!」
レヴィの叫びが闇夜の空に響く。私は実体がないので内心でのみ溜息を吐いた。
実際にはアリシアの手が回りきっていないだけなので、正直ディアーチェ本人には今回は完全に非がないけれど…
『もう少し空気読むべきだとは思いますね、まったく…』
いい所でしっかりと現れるマスターと違い、いい所でしっかりオチをつけてくれる私達の王様に、ある意味らしさを感じながら再度溜息を吐いた。
SIDE OUT
トーマ「トーマ=アヴェニールと」
リリィ「リリィ=シュトロゼックの」
ト&リ「前作解説コーナー!」
『融合機の情報』
トーマ「技術情報交換で融合機の情報をシャーリーさんから貰ってたんだよな。」
リリィ「交換したのは、リライヴさんがイノセントに搭載してたAMF無効化フィールドだね。」
トーマ「でも融合変身って俺達みたいだな。」
リリィ「融合専門で生まれたわけじゃないからかなり大変なはずだけど…結構色々出来てるよね。」
トーマ「好きこそ物の上手なれって本当なんだな。」