なのは+『永遠の空』   作:黒影翼

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最終話・終わりと始まりの木の元で

 

 

 

最終話・終わりと始まりの木の元で

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

それぞれがそれぞれの居場所に戻って、少しの時が経ち…

 

始まりと別れを示す桜の花を『多量に散らせながら』別れの模擬戦を終えた、機動六課前線メンバー。

 

私達も、始まりの時は頼りなかったフォワードの皆も双方ボロボロで、花ビラも結構散ってしまったその場所で、色々おかしくなって笑い合う。

 

 

 

 

 

もう、勢揃いは同窓会とかだけになるかな…

 

 

 

 

 

今までの他の教え子の皆が悪いとか、駄目だったなんて訳じゃない。

でも…それでもスバル達は、この4人は私にとってきっと最高の教え子になる。

 

…いけないな。私の方が大人なんだから、私がしんみりしちゃってたら、皆がつられかねない。

 

別れじゃなくて旅立ち。しっかり成長した皆を、ちゃんと見送らないと。

 

 

後は片付けてお別れ会までのんびりしようかなーとか、そんな事を思っていると…

 

 

「あーあ、花散っちゃって…花より団子でも微妙なのに、花よりバトルの女性陣ってのも考え物だな。」

「桜の下で写真撮影とか良さそうだったんだけどね。」

 

 

ここにいるはずのない人達の声がした。

ちょっと驚いたけど、速人お兄ちゃんはJS事件から功労者ではあるし、リライヴちゃんも今何かしてるわけじゃない。

 

仕事じゃないお別れ会に混ざっても不思議じゃないか…そう思って声の方に視線を向けて…

 

 

 

 

硬直した。

 

 

 

 

「風情のない輩め…緑の大地を欲しがっていた奴らに合わす顔がないわ。」

「風情など貴女もそれ程無いでしょう?」

「け、喧嘩はしないでくださいね?」

「よーしっ!久しぶりに思いっきりやれるぞーっ!!」

 

 

変わらず悪態を吐くディアーチェ、そんな彼女に呆れるシュテル、二人の心配をしているユーリに、まるで関係なさげに元気なレヴィ。

 

 

去った世界の座標も分からずもう会えないはずの四人が、速人お兄ちゃんとリライヴちゃんの後をついてきていた。

 

 

 

Side~ユーリ=エーベルヴァイン

 

 

 

アミタとキリエが敬愛する博士が亡くなった頃。

私のエグザミアがちゃんとエルトリアの大地の力となってきた頃。

 

そんな頃になって、 私は自分がどれだけ子供で、どれだけ愚かだったのか思い知っていた。

 

 

 

思い知らされて…しまった。

 

 

 

時々起こる、レヴィの空元気にディアーチェの癇癪に近い怒声。

 

 

疑問に思う…所じゃなく、分かっていた筈だった。

だって、私と戦っていた時からずっと言っていた。

 

 

 

 

家族になる…って。

 

 

 

 

それで、私は確かに幸せになれた。

 

 

 

 

でも…

 

 

 

 

その家族を断ち切ってここに来た、ディアーチェ達の傷は…

 

 

「何でなんですか…どうしてなんですか…」

 

 

気がつけば、私はディアーチェに問い詰めていた。

 

 

「相談して決めるって言ってたじゃないですか…何で私のわがままを聞くためにここまでしたんですかっ!嫌です!こんなの嫌です!私が言ったことが原因で…私のために皆が傷つくなんてこんなの…っ!」

 

鳴きながら詰め寄る私の顔を無表情で見ていたディアーチェは、大きく息を吸い込むと…

 

 

 

 

「喚くな戯け!!!」

 

 

 

 

一声で、私の訴えを断ち切った。

すがりついていた手を離して後ずさる私の両肩を、ディアーチェはシッカリとつかむ。

 

「貴様と共にいるのは紫天の書に集いし我等の願い、今更離さぬし、後悔などない。」

「でもそれなら」

「そしてッ!」

 

優しく語るディアーチェに割って入ろうとすると、強い声で止められる。

 

「今この場に立つのは、宵の騎士として…我等を救ったあの馬鹿を慕い、その理想に沿うためよ。」

「あの人の…理想?」

 

宵の騎士。

巻物に離れ、10年近くの時を過ごしたディアーチェ達の称号。

 

「『全てを救う英雄』。宣言したと同時に嘘が確定する、語るだけ虚しい夢物語よ。」

 

虚しい嘘。

そう言いながら、ディアーチェは笑顔だった。

 

「だがな…我らは奴がそんな馬鹿だったから救われたのだ。暴走時の貴様と繋がり、それを知ることすらなかった我等は、安全上公務員に葬られるところだったのだ。」

「公務員に…」

 

『決まりの上で消される』。

こんな抵抗もろくに出来ないような運命、そうはない。

 

何しろまず、抵抗しようと思ってくれる人自体が現れない。

 

でも、全てを救うって足掻いた人がいて、ディアーチェ達は救われた。

 

「それから、そのまま放置では都合が悪い筈の、王足ろうとする我や暴れたがるレヴィを、強制力で縛ることなく時に怒り、時に自身の力と意志で世界を荒らさぬようにと足掻いていた。奴に言うことは絶対にないが…感謝していないこともない。」

 

言い方はらしかったけど、ディアーチェが感謝なんて言うとは思わなかった。

 

普通なら思っても絶対に言わない。だから、普通位じゃ収まらない感謝なんだ。

 

「そんな救い手を目指す奴が、世界一つ救える可能性を断ち切りたいと思うか?我らに意志がなければ、ただの力なら必ず渡したはずだ。」

「あ…」

 

分かってしまった私は、力が抜けたような気がした。

 

「離れ離れを選んだからこそ、我等には絆が残っている。そして、寂しさや苛立ちは…我等が宵の騎士として打ち倒さねばならぬ敵だ。だから…貴様が自分を責める必要も、泣く必要もないのだ。」

 

そう言って、ディアーチェは私の頭をゆっくりと撫でてくれた。

暖かい。暖かくて涙がまた出てきた。

 

それぞれの絆。でも、傍にいるだけの私と違って、時すら越えても壊せない絆を持っているディアーチェ達が…その絆の方が強い気がして、大切にされてる気がして…

 

 

嫉妬…と言うのでしょうか?

 

 

見苦しくてみっともなくて欲張りで…

それが分かってるのに消しきれない気持ち。

 

でも、ディアーチェ達がもっと苦しい気持ちと戦っているのだから私は…

 

 

 

 

「ハーイ、そうは問屋がおろしませーん。」

 

 

 

 

そんな場違いに明るい声が響いた。

 

 

 

Side~キリエ=フローリアン

 

 

 

全てを知った私は、胸に走る痛みを押し殺して割り入った。

 

「ラブラブ中ごめんなさいね、キリエちゃん乱入しまーす。」

 

言った途端、静電気でも起きたみたいにあわてて離れる二人。

言うと王様怒るけど、可愛い。

ちょっと和んだ、これならかるーく言えそうだ。

 

「実はね、時間移動シミュレートの結果、皆があれから少し経った時間に戻るのが、正常って出たのよ。」

 

まず嘘一つ。

 

本当はエグザミアの時と同じ、『可能性がある』。

正常なんて結果、時間超えて出るわけがない。

 

照れを隠す間も無く告げられた言葉に整理が間に合わないのか、王様が慌て気味に私を見る。

 

「ち、ちょっと待て貴様!別に戻る気など…」

「戻ってくれないと困るのよねー。エグザミア持って帰ってきた時と同じなら、それで世界が正常に動くわけ。ユーリの力があるかないかで世界の命運変わっちゃうでしょ?戻るのが正常なら戻らないとエルトリアまで滅んだりするかもしれないし。」

 

嘘二つ。

 

そもそも正常じゃなくて可能性なんだから、戻らない方が影響は少ない。

でも、そんなの言わなきゃわかんないし、世界を崩壊させかねない事をあの御人好しの英雄さんが望む訳が無い。それは、王様達の方が良く知ってる。

 

「エグザミアのデータなら、ユーリのおかげでいろいろあるし、回復始めた箇所とかからも情報集めれば何とかなるわ。速人さんとあなた達のプレゼントはもう十分。エルトリアはこの先復興に向かっていくわ。」

 

三つ。

 

そんな保証あるわけがない。

 

 

 

でも…やる。

 

 

 

元々帰る前に過去に頼らないって決めたのに、振って湧いた幸福に浮かれて、私は何をぶち壊しにして得られた幸福なのか、考える事すらしなかった。

お姉ちゃんも博士も私は大好きだ。お姉ちゃんが傷つくのも、博士が死んじゃうのも辛かった。

 

そんな分かりきった大切なものを、ぶち壊しにしてしまったんだ。

だから…元に戻す。

 

 

絆や優しさで傷つくなんてそんなに悲しい事、『こんな筈じゃなかった事』なんて他に無いはずだから。

 

「ささ、王様。シュテルとレヴィも呼んで、さっさと準備しちゃって下さい。お姉ちゃん馬鹿正直だから、コレだけ情報揃っててもまだ『時を弄るなー』とか言い出すかもしれないから。離れてる内に私が送っちゃうわ。」

「う、む…」

 

唐突過ぎて事態についていけないのか、王様が頭を悩ませていると、意外にもユーリがその手を引いた。

 

それで、決心がついたのか、大きく息を吐いた王様は…

 

「…さっさと準備を済ませろ。」

「ハーイ。」

 

ちょっぴり不機嫌そうに、顔を逸らしてそう言った。

 

 

 

 

 

準備は滞りなく終わった。

アミタが帰ってくる前にけりをつけないと、いろいろバレたらそれでおしまいになる。

 

「さてと、それじゃあ…」

「キーリーエーッ!!!」

 

大切な、よく知ってる、だからこそ今は絶対に聞きたくなかった声が聞こえた。

 

超高速ですっ飛んできたアミタは、肩で息をしながら私を睨む。

 

「あら、何かしら?」

 

私は、表面上なんでもない風を装って声を返す。

 

…言わせない、台無しになんか絶対させない。

前に過去に戻った時とは違う覚悟が胸にあった。

KKGの使いどころはきっとここ、何があっても、たとえお姉ちゃんでも今回だけは絶対に…

 

 

 

「私のいない時を狙って挨拶も出来ないまま皆を帰そうなんて何事ですかーッ!!!」

「…はいッ?」

 

 

 

言いながらお姉ちゃんが取り出したのは、フルーツバスケットだった。

再生の兆しを見せた大地で取れた、少量のフルーツを、籠いっぱいに詰めたもの。

 

籠をシュテルに渡すと、お姉ちゃんは改めて私を見る。

 

「貴女シミュレートの結果ログ、消し忘れて離れたでしょう。何を考えているか分かりやすかったですよ?」

「あらッ!?」

 

そんな初歩的な段階でミスしていたとは知らなかった。

皆の冷たい視線が私に刺さる。

 

「大体ですね、私は歴史の改竄等の私欲の悪行なら止めもしますが、帰ろうとする人を無理に止めるほど人でなしでもありませんッ!自慢じゃありませんがこれでも直情傾向ですッ!!」

「いや、ホント自慢にならないケドッ!?」

 

何を力説しているのかと思ってとがめたものの、相変わらず騎士の皆からは冷たい視線は私に向けられている。

 

「確かに、卑怯や非道はむしろキリエの領分ですね…」

「ずっこいよね。」

「うむ、中々に闇に向いておるな。」

「あーん!ユーリ、皆がいじめるー!」

「えっと…ごめんなさい。」

「謝られたッ!?」

 

何か味方がいなかった。

あれ?お姉ちゃんには怒られるもののキリエちゃんの優しさに感動しながら帰るって話じゃなかったのかしら?なんだか皆の視線が痛いわ。

 

「えー…コホン!皆さんのおかげでエルトリアの大地にも希望が見えてきました。その果物はそれを示す為のお礼です。良ければ向こうで速人さん達と味わって下さい。」

 

そう言ってお姉ちゃんは深く頭を下げた後、私に振る。

弱っちゃった…こんな時にまともに喋る事用意してないんですけど…

 

「…えっと…私のわがままで始まった事件がきっかけなのに、未来にまで来て協力してくれてありがとう。」

 

しょうがないので、本当に思ったまま告げて頭を下げた。

柄じゃないんだけど…

 

「何、良い余興が楽しめたわ。それに、帰っても先の楽しみが出来た。この地が未来なら、適当な頃合を見て顔を出してやらん事もない。」

「いや、それは無理でしょう。」

「何?」

 

いつも通りの大物の装いで喋る王様の言葉をあっさり否定するシュテル。

でも、その通りで…

 

「技術情報他、世界位置とかいろいろ不味いので記憶封鎖をかけますね。」

「な…ちいっ…それもなすべき事…か。」

 

お姉ちゃんの宣告を聞いた王様が、納得しかねる様子で表情を歪めた。

と言っても、エルトリアにまで来ちゃってる王様達がそのままこっちの情報もって帰るのは大分不味い。

 

不承不承と言った感じで処置を受けた王様達は、そのまま何事もなく元の時代に戻っていった。

 

去り際、ユーリが『ごめんなさい、ありがとう』と呟いていった。

 

「あの様子では、貴女の嘘はばれてしまっているみたいですね。」

「そうね、ユーリってばその気になれば相手から情報得られるみたいだし。」

 

アミタが交戦したとき、その時代に存在しないはずのギアーズの情報をユーリは語ったらしい。

それはつまり、私達から記憶か情報か心か…何かを読めないと無理な現象だ。

 

闇の欠片も心を具現化したものだったし、多分意識か何かを読み取ったりする能力があるんだろう。

 

「…さ、これから忙しいですよ。結局ユーリの力を借りずにどうにかしないといけないんですから。」

「はいはい、分かってるわよ。あんまり飛ばしすぎてまたエネルギー切れ起こさないでよね。」

 

苦労は山積み。でも後悔はなかった。

後は皆が、あのちょっぴり不安な英雄さんと一緒に、幸せに暮らせるよう願うだけだ。

 

 

 

Side~ユーリ=エーベルヴァイン

 

 

結局、そんなに長くエルトリアにいなかったけど、それでも暴走が収まってからだと今の所一番長くいた世界がエルトリアになる。

 

だから、物凄く人がいる世界がちょっと怖かった。

 

ディアーチェがそんな私の手を握ってくれて頼もしかった。

レヴィとシュテルが少しそわそわしていたから。

 

 

エメラルドスイーツ。

 

 

そう書かれた看板の店の前で止まる。

すると、少しして速人が出てきた。

 

「あれっ?やっぱりシュテル達?なんで…えっ!?」

 

凄まじい速度で駆け出したレヴィが突進に近い勢いで速人に抱きついた。

よっぽど会いたかったらしい。

シュテルも、早足で近づいていって、一緒になって速人を取り囲む。

 

 

…速人が悪いわけではないけれど、なんだかやっぱりちょっとだけ寂しかった。

 

 

ディアーチェも、そんな様子を見ながら笑みを漏らしている。

こんな安心したような表情始めてみた。

 

「…ま、いいや。経緯は中で聞かせてくれよ。」

「良かろう。フレイアの奴の腕が鈍っていないかも見せてもら…ん?」

 

歩き出そうとする…足を止めた私から離れようとするディアーチェの腕を思わず掴む。

 

多分嫉妬。それが分かっているだけに嫌だったけど、でもこの手を放すのも嫌だった。

 

「はは、なんだか離れるのは嫌って感じだな。さしずめ俺はユーリから家族を奪う悪い盗賊って所か?」

「その…そういう訳じゃ…ないですけど…」

 

言いながら速人が近づいてくる。

少しの不安、ディアーチェがその手を取るんじゃないかって、そんな気がして…

 

「それならこうすりゃ円満解決ってね。」

「え?きゃっ!!」

 

気がつくと、私とディアーチェはまとめて速人の腕の中に納まっていた。

おかげで、腕を掴んでいただけの私とディアーチェの距離も一気に近くなる。

 

「ば、馬鹿者!誰がベタベタくっつきたいなどと言ったか!そう言うのはレヴィとやっておれ!!」

 

ディアーチェは文句を言いつつも、結局あまり抵抗しなかった。

私の手を握ってくれたままで、収まってくれている。

 

…やっぱり、私は子供で全然敵わない。

私の小さな嫉妬なんてお見通しの上で、丸ごと全部包み込んでしまった。

 

そして、引き剥がす気にもなれなくて…

 

 

 

「あぁーっ!!」

 

 

 

お店の中から姿を見せた、えっと…アリシア…が、私達の様子を見て指をさして大声を出した。

 

「ロリコンなら私でもいいじゃない!何でユーリとディアーチェに突っ走るの!?」

「なっ!?ちょ、ちょっと待てアリシア!外でなんてやばいフレーズを叫んでる!!ご近所様に誤解を招くだろ!!」

 

慌てて私達からはなれ、弁解に走る速人さん。

そのままアリシアとの口論に入る。

 

レヴィとシュテルは、なんだかその様子を見ながらしきりに頷いていた。

 

「うん、マスターが女の子の事で怒られてるところ見ると、帰ってきた気がするよね。」

「そうですね。後はリライヴがきわどい話に照れたり、雫と忍の恭也の取り合いを見たりすれば完璧でしょうか。」

「そうそう!」

 

楽しげに話しながらお店に入っていくレヴィとシュテル。

レヴィが完全にお店に入る前に、私達の方に手だけを向けて手招きした。

 

「…相も変わらず馬鹿をやっているようだな。」

「あの…ディアーチェ、ろりこんってなんで」

「聞くな知るな考えるな覚えるなすぐに忘れておけ。」

「は、はい。」

 

凄い勢いでまくし立てられて、私はただ頷いた。

なんだか、あんまり聞かないほうがいい事がたくさん飛び交っている所みたいだ。気をつけないと。

 

 

 

Side~ティアナ=ランスター

 

 

 

当然のこと、質問が矢次に放たれる中…

 

「簡単に言うと、いろいろと片がついたから戻ってきたのだ。片道故もう一度行く事はあるまい。」

 

ディアーチェはそんな一言で全てを終わらせてしまった。

のんびり話す時間は後であるけど…なんて考えていると…

 

 

 

 

いきなり全員がデバイスを起動させ、フル装備になった。

 

 

 

 

あれ?これってまさか…

 

「さーてと、それじゃあ管理局最強の『奇跡の部隊』の皆と一般人最強の『英雄チーム』の親善試合と行こうじゃないか。」

「本職の人だもん、一般人に負けないくらい鍛えてるよね?」

 

速人さんとリライヴさんが先頭に並んで楽しげに言う。

あたしは、思わずデバイスを取り落としそうになった。

 

 

 

 

ちょっと待て。

 

 

 

まずディアーチェ、シュテル、レヴィが既にオーバーS確定。

しかもかつて管理局の部隊丸々壊滅させられたリライヴは、そのかつての力を発揮するのに必要なカートリッジをジャラジャラと音がしそうなくらいの数持っていて、速人さんはそんなリライヴでも勝てない可能性のある神懸りな技巧使い。

 

 

で、ユーリに至っては専用装備でそんな皆と私達全員合わせたくらいで漸く止まった存在。

 

 

ちょっとちょっと!!贔屓目にとか以前に勝ち目塵の欠片もないでしょこれ!!

 

間違いなく物凄く荒れるし、今散ってるのは周囲の花だけだけど、空から見える一面全部の花が丸裸になる可能性すらある。

 

景観的にももったいないし、やめておいたほうがいいんじゃないか?

 

そう告げようと隊長達に視線を移すと…

 

 

 

「抜かしてんじゃねーよ…欠片のリライヴならこの前片付けたばっかだ、魔力封印されてるテメーなんか楽勝だっての。」

「ふっ…我等だけの戦いより、『機動六課チーム』としての戦いが出来ると思えば、それもまた別の思い出か。」

「速人…届くとか思わないけど、それでも今の私なりに出来る全てを…」

「この間は数に任せて随分酷い戦いだったからね。今度はちゃんとした試合になるねユーリ。」

 

 

完全に出来上がっちゃってた。

 

あぁ…そっか…あたし達にとってのなのはさん達が憧れで、届いてみせると言いたい相手のように、なのはさん達からすれば、その一歩先をいってた速人さん達はそういう対象なんだ。

 

力が抜けかけた所で、誰かがあたしの肩を掴む。

ゆっくりと視線を移すと…

 

 

「やろうティア!!!」

 

 

これ以上ないくらい目を輝かせたスバルがいた。

なんだかエリオとキャロも乗り気らしい。

 

 

 

一体何処に勝機を見てるのよあんた達は!!!

 

 

 

凡人代表として、心の底から叫びたかった。

 

 

「あぁもう!やるわよやってやるわよ!」

 

 

あたしは殆どやけを起こしたみたいに叫びながら、デバイスをしっかりと握り直して構えた。

 

 

 

Side~八神はやて

 

 

「おー、やっとるなぁ。」

 

本当に大分離れた場所から眺めているんやけど、それでも分かるくらい音と魔力と魔力光が凄まじい事になっとった。

キャロがヴォルテール使ってる事に誰も何も咎めんのは、ようは『そういう戦闘』って事だ。

書類なかったら休憩で覗くなんてせんでも参加できたんやけど…

上って辛いわ。うん。

 

「けど本当になのはたちは凄い所にいっちゃったな…」

 

隣で見ているユーノ君が、しみじみとした様子で呟く。

 

「君が伝えた魔法だろ。自身を持ったらどうだ?」

「いや、もうとっくに手の届かない所だよ。」

 

クロノ君の後押しもあっさり振り切るユーノ君の台詞に、私とクロノ君は揃って肩を落として息を吐いた。

 

念話なんて使ってないけど、間違いなく今抱いた気持ちは一緒だと思う。

 

「そんなんやから未だになのはちゃんに告白できてないんや…」

「速人に見限られて、見合い写真何かを漁りだされたら本当におしまいだぞ?」

「何だよ二人揃って!大体既婚者のクロノはともかくはやてには言われたくない!!」

「うぐっ…言うたらアカン台詞を…」

 

ユーノ君の返しに反論できなかった私がうめくと、クロノ君は一人で静かに深く息を吐いた。

浮いた話が『周りの誰一人として無い』って状況は、古い友人として心配になるんだろう。

妹のフェイトちゃんにいたっては、すっ飛ばしてもう保護者二回目やし。

 

 

と…身内の近況に危機感を抱いている間に、模擬戦が進んでいた。

それも、割と最悪の方向に。

 

 

言うまでも無く不味いユーリの魔法、シュテル主体で融合したシュテルとレヴィによる広域殲滅攻撃、ディアーチェの広域攻撃、なのはちゃんフェイトちゃんによる合体広域攻撃、ティアナの未完成スターライトブレイカー、ヴォルテールの火炎。

 

 

これらが全部、フルパワーまでいこうとしていた。

 

「…ユーノ。」

「封時結界、防御結界展開。抑えきれなくても責めるなよ?」

「期待している。」

「そう言えばなんでも出来ると思うな!」

 

肩を叩いて告げるクロノ君にさすがに無茶だと思ったのか、ユーノ君がやけに近い怒り方をする。

まぁ、でも多分大丈夫だと思う。当のクロノ君も補佐するようだし、現地でもリライヴちゃんが気を効かせて準備してくれている。

 

多分大丈夫だと思

 

 

 

 

 

直後、思考を断ち切るような衝撃が辺りに響き渡った。

 

 

 

被害については人的被害は無く、かろうじて…

 

 

 

 

 

視界を彩っていたはずの桜色が、一瞬でむき出しの木々の色に変わり果てただけで済んだ。

あーあ、風情もなんもないな。

 

 

でも、そんな光景が、模擬戦やって訓練室壊しかけてた昔と重なって、なんだかうれしく思えた。

 

危機や事件は、コレだけじゃ済まない。

でも、きっと私達はこのまま戦っていけるし、仮に私達が朽ちて歪んでも、次の世代がきっと繋いでくれる。

 

それを証明してくれるような、なのはちゃん達と教え子の皆、速人君達とユーリが、ぼろぼろで笑いあう光景を、私は何処か暖かい気持ちで眺めていた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 




トーマ「と、言う訳でここまで!後はエピローグだけ!」
リリィ「ここまで見捨てず見てくれた皆さん、ありがとうございました!」
ト&リ(ちゃんと最終話までもった…っ!)

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