なのは+『永遠の空』   作:黒影翼

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第一話・出撃、機動六課

 

 

 

 

第一話・出撃、機動六課

 

 

 

Side~八神はやて

 

 

 

年も明けた頃、唐突に入った連絡に歯噛みした。

地球にて起こった妙な反応。どうやら地球で誰かが動いているらしい。

 

 

襲撃と聞いて思い出すのは、かつてすずかちゃんを襲った管理世界製の兵器。

密売をとめる事が出来なかったあの時、フェイトちゃんと速人君が間に合わなければどうなっていたかも分からず、結果的に助かったとは言っても地球で起こしてしまった大騒ぎの結果、すずかちゃん達は暫く管理世界に避難することになってしまった。

知り合いが誰もおらず、地球に戻るのであれば目立つ行動が殆ど取れない管理世界に。

 

そんな事もあって、地球での事件と言うのはとても苦い話だった。

 

「また地球でか…」

 

いい加減止めて欲しい所だけど、願った所で事件が遠慮などしてくれる訳も無い。

自由度高くすぐに動ける少数精鋭部隊として設立された実験部隊である機動六課。

レリックが関わってるかはともかく、JS事件の被害や、元々の予定を振り回された海の部隊、本局及び局内の不穏分子の排除他、とにかく現在管理局も教会も色々と荒れていた。

まして地球は管理外世界、普通の部隊は動かし辛い。

 

その為、私に…機動六課に連絡が入った。

 

 

こんな言い方は不謹慎やけど…丁度いい。

 

 

六課解散前でよかった。今度はいつかのように無力じゃないし、動く事もできる。

なんだか知らんけど、必ず止めてみせる。

 

私は誓って拳を握り締めた。

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

「…と言う訳で、管理外世界と言う事もあって最初に直接現地に行くのはシグナム副隊長を除く前線メンバーと医師のシャマル先生、技師のシャーリーになるから。」

「「「「はいっ!!」」」」

 

地球で起こった事件について出動要請がかかって、私達は地球に行く事になった。

詳細をフォワードの四人に伝えると、いつも通りの頼もしい返事が返ってくる。

 

平静でいると言う訳にもいかなかった。

 

ヴィヴィオがゆりかごにいた時ほど無理な我慢をする必要はなかったけど、地球で問題が起こったとなると気楽にはできない。

それははやてちゃんもフェイトちゃんも同じなようだ。

はやてちゃんはガジェット相手の出動要請の時より少し表情がきつめに見えたし、フェイトちゃんも話を聞いた時に表情を曇らせてた。

 

 

 

 

地球での拠点はすずかちゃんの家になる。

結構な人数だし、それだけの人間を揃えた上で盗聴なんかを避けなきゃならないことも考えると、ちゃんと管理世界の事も知っている人の大きな家を借りる必要があるから。

 

すぐに片付けばそれが一番いいんだけど、妙な反応があった位でまだ詳しい事も押さえ切れていない現状でそう簡単に事が片付くとは思えないから、常駐する場所が必要になる。

 

必要な話を終えて準備を始めた所で、何故か速人お兄ちゃんの顔が浮かんだ。

 

 

まさか…出てこないよね?

 

 

故郷とは言え管理外世界。情報だってそうそう拾えないだろうし、まして事件の話なんて耳にする事も無いだろう。

自分に言い聞かせるように念じながらも、私は何故だか全然大丈夫じゃないような気がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次元移動を必要とする周辺世界の探索は、フェイトちゃんとヴィータちゃんが主になって、私は地球でフォワードの皆と待機する事にした。

どうやら地球で小規模ながら戦闘があったらしい事は既に判明している。

 

「なのはちゃん達、毎回大変だね。」

「仕事だからね。それよりゴメンね、拠点に使っちゃって。」

 

部屋の割り振り等が済んだ待機時間、私はすずかちゃんと軽く話していた。

 

「地球で何かがあったなら他人事じゃないし、家も広いから全然問題ないよ。」

「ありがとう。」

 

警察が居座るようなものなのに何の気負いも無い笑顔を見せてくれたすずかちゃんが本当にありがたかった。

 

 

今度は大丈夫…ちゃんと戦える、戦っていいんだ。

 

 

だから、何があったとしても守ってみせる。

 

 

「っ!」

 

 

誓ってすぐ、結界の反応を感じた。

 

これは…闇の書の闇を消した場所?

 

発生した結界そのものはそれほど大規模な物ではなかったけど、位置が空中だった。

 

フォワードの皆は地上戦主体、フェイトちゃんとヴィータちゃんも離れてるし、私が様子を見てくるしかないか。

 

「…気をつけてね。」

「任せて。」

 

私が動くのが分かったのか、少しだけの心配を孕んだ優しい笑顔ですずかちゃんは私を送り出してくれる。

私はそんなすずかちゃんに自身と決意を込めて握り拳を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

ティアナ達に行動指針を伝えて、私は突如発生した結界に入る。

海上の中心には、良く見る姿で、今となっては見ない姿の…

 

「フェイト…ちゃん?」

 

幼い頃の姿のフェイトちゃんがいた。

金色の髪をなびかせるその姿と瞳を見れば、レヴィちゃんでない事は一目で分かる。

でもその瞳は…暗く悲しげなもので…

 

「…母さん…」

「え?」

「母さんが…待ってる…そこを…どけぇっ!!」

 

うわ言のような呟きを漏らしながらバルディッシュを振り上げたフェイトちゃんは、そのまま真っ直ぐに私に向かって飛来した。

 

突進からの一撃を咄嗟に障壁で受け、力任せにデバイスを振るってきたフェイトちゃんをバインドで拘束…

 

 

しようとした瞬間、フェイトちゃんの姿が掻き消えた。

 

 

「はあぁぁぁっ!!」

「く…」

 

背後に回り込んだフェイトちゃんが、鎌形態に変化させたデバイスを振り下ろしてくる。

私はその一撃を防御で受けて海中に沈んだ。

 

 

弱い。

 

 

戦闘スタイルが姿同様幼い頃のままなのは勿論、その幼い頃のフェイトちゃんよりも、何処か雑に感じた。

出来の悪いコピーのような、情報不足の断片のような、そんな感じ。

何より、この頃でも一応AAAクラスだった筈なのに、そこまでの魔力を感じない。

 

 

ディバイン…バスター。

 

 

水中から放った一撃にまともに反応する事も出来ずに、フェイトちゃんはそれを受けた。

 

さすがに直撃とは行かなかったけど、こんな見え透いた砲撃の一つも完全回避できないなんておかしすぎる。

 

掠めて空中で姿勢を崩したフェイトちゃんを改めてバインドで拘束する。

動けなくなったフェイトちゃんに接近して…

 

 

「ディバインバスター・インパルス!」

 

 

零距離砲撃を放った。

 

 

AAまで魔力に制限をかけられている以上節約も考えないといけない今、放った砲撃が距離で弱まったり対象から余分に漏れる部分が出来たりし辛いこの零距離砲撃は結構重宝する。

 

直撃だ、これなら沈黙させられたはず。

警戒はしつつ様子をうかがう。

 

すると…

 

「あ…ぁ…」

「え?」

 

目の前の、幼い姿をしたフェイトちゃんがブレていく。

 

バチバチと、何かが瞬くようにフェイトちゃんの全身が所々点滅して…

その姿を崩していって、消えてなくなった。

 

 

『なのはちゃん、聞こえる!?』

「エイミィさん、休暇中じゃないんですか?」

 

唐突に通信が入った為周囲を確認すると、結界は既に晴れていた。

 

『さすがに地球で騒ぎになってノンビリしてる訳にもいかないからね。』

 

聞いては見たものの、言われて納得した。

そりゃ私だって休みとって地球にいても、その地球で騒ぎが起きればボーっとはして無い。

 

『っと、ノンビリ話してる場合じゃなかった。今発生してる結界は闇の書の残滓が関係してるみたいなんだ。』

「闇の書の残滓?」

『詳しい事は解析してみないと分からないから、シャーリーが結界内のデータ見せてって。』

「了解、すぐに戻ります。」

 

このままただ戦ってても解決にならない。

とりあえずは散らしたものの、これで終わりとも思えないから。

 

それに…

 

 

『母さんが…待ってる…そこを…どけぇっ!!』

 

 

偽者と切るにはあまりに鮮明なフェイトちゃんの負の叫び。

フェイトちゃんが取り込まれた闇の書の夢の世界や守護騎士システムやシュテルちゃん達の事を考えると、少しばかり悲しい事になる気がした。

 

 

 

Side~フェイト=T=ハラオウン

 

 

 

闇の書の残滓により形成された私と戦った。

近隣世界を回って帰ってきた私とヴィータは、なのは達から聞かされた話に顔を顰めた。

 

自分の偽者が迷惑をかけたと言う点で私はいい気がしなかったし、ヴィータは闇の書の残滓が今頃騒ぎの元凶になっている事に険しい表情を見せていた。

 

「それにしても、何で今頃…」

「シャーリーとも話してたけど、これだけ時間がたって急に復活する理由は見えないから、この前の反応が原因だと思うって。」

 

私達が地球に来る事になった原因の妙な反応。それが関わってると見て間違いない。

 

「二人の方はどうだった?」

「私は特に何も…」

「こっちもだ。少なくとも周辺の世界で何か派手にやらかしたって形跡はなかったな。」

 

なのはの問いかけに私は肩を落として首を横に振った。

ヴィータも同じだったみたいで、収穫はなかったみたいだ。

 

調査は地道にこつこつ進めるものとはいえ、残滓相手となると戦って解決できるものでもない。

原因を元から断たないと、いつまでも誰かが発生するたびに消しに行かなければならないという状態になる。

 

だから、調査を続けるべきなんだけど…

 

「その…こっちの戦力は大丈夫?」

 

発生した残滓の私は昔の私よりも弱いものだったらしいけど、それでもリミッターつきのなのはとAA未満のフォワードの皆で対処しきれるのか、少し心配になる。

危ないなら、私かヴィータもこっちに残らないと。

 

「空戦…って言うのがネックだけど、戦力的には全然問題ないよ。あれくらいなら私は一人で複数相手に出来ると思うし、フォワードの皆も一対一で問題なく勝てる程度だったから、コンビ行動前提なら地上では安全にいける。大丈夫だよ。」

 

なのはが余裕を持った笑みを見せるのを見たヴィータが、私を横目で見ながら額を抑える。

 

「オメーはいちいち心配性すぎんだよ。あいつ等も強くなってるし。」

「なのはが一番心配なんだよ。ちゃんと強くなってる皆はともかく、なのははJS事件のダメージ未だに抜けてないのに…」

「あぁ、そっちか…」

 

私とヴィータが揃ってなのはに視線を向けると、なのはは引きつった笑みを浮かべた。

仕事が仕事だし、無理が出る部分もあるのは分かってるけど、数年単位の完全休養を薦められながら未だに教導に精を出し、事件でまで最前線を張ろうと言うのだから心配もする。

 

「だ、大丈夫だって。ヴィヴィオも待たせてるし、無茶はしないから。約束する。」

「…分かった。」

 

ヴィヴィオに関しては、なのはも色々考える事があったらしい。

実際、今まではスバル達の事しか気にかけていなかったけれど、出来る限り仕事を早めに片付けて帰るようになっている。

 

だからヴィヴィオの名前が出たら少し安心できた。

 

「それじゃ、明日からも私とヴィータで妙な反応の捜索、なのは達は地球で闇の書の残滓の警戒…だね。」

「うん。」

 

私達は三人で頷きあう。それ以上は必要なかった。

 

 

始まりの場所で、これ以上悲劇を起こさない為にこの事件を終わらせる。

きっとこの気持ちは地球からミッドに移った皆、同じだと思うから。

 

 

 

Side~クロノ=ハラオウン

 

 

 

地球であった妙な反応。

その話を聞いた僕は、時間を作って仕事場を離れて来た。

勿論ヴェロッサの真似事ではないんだが、仕事として顔を出すのは躊躇われる場所だった。

 

大丈夫だと言い聞かせつつも、こんな事をしなければならない時は大概ろくでもない事が起こっている。

 

そんな通例通りなのか、僕の目的地、『エメラルドスイーツ』には…

 

 

 

『臨時休業中』

 

 

 

と書かれた看板が下げられているだけだった。

 

 

 

予感はこの瞬間、確信となった。

 

 

 

「君…いや、クロノさん。」

 

と、背後から知った声が聞こえ、振り返る。

背後には、刀を腰に差した恭也さんと雫さんがいた。

 

「今日は私用のつもりで来ましたから、君で構いませんよ恭也さん。」

「そうか。私用と言うのは速人達の事か?」

「…はい。」

 

どうやら彼には全て見抜かれているようだった。

しかし、彼を残していなくなったと言うのだろうか?

 

「雫、先に風呂に行くといい。」

「分かった、入れておくね。」

 

閉まっている店の扉から家に入っていく雫さんを流して、恭也さんと向かい合う。

 

「速人達は?」

「用があるといって店を離れた。魔法絡みの時は危険要素以外の情報は貰っていないから、何処で何をしているかはわからない。」

「そうですか…」

 

こうも堂々と恭也さん達と離れられると、さも悪い事をしていないと言った感じに聞こえる。

…と言うか、速人には悪気は無いんだろう、間違いなく。

 

と、恭也さんはごそごそとポケットを漁り、小型のデータスティックを取り出した。

 

「これは?」

「アリシアに、他の局員に知れないように渡せる時に渡して欲しいと頼まれた。俺も内容は知らない。」

 

保険だったのか、確実に様子を見に来ると読まれていたのか…後者なら情け無い事この上無い話だな。局の指揮官が一般人に行動の先読みをされるなんて。

 

だが、他の局員に知れないように渡すと言うのなら、局員にすら漏れてもまずい話と言う事だろう。

 

「分かりました。」

「愚弟がすまないな。」

「いえ。余計なお世話かも知れませんが、恭也さん達も気をつけていてください。速人達が総出で離れるとなると、魔法関係に明るい方がいないという事になりますから。」

「忠告ありがとう、感謝するよ。」

 

挨拶を交わして、僕はこれ以上の収穫を得られないだろう店を後にした。

 

 

 

 

 

通信から隔離された場所、機材を使ってデータスティックの中身を確認する。

JS事件の事もあって、局内の不穏分子を警戒しているのかとも思っていたのだが、僕の予想は大きく裏切られる事になった。

 

 

「これは…冗談が過ぎるぞ…」

 

 

データスティックにはそれほど情報量はなかった。

だが、もしここに書かれた一文が冗談でなければ、僕だけにこれを渡した理由に筋が通る。

管理局に記録として残せるわけが無い話だから、他人に知れないように渡したんだろう。

 

 

 

 

『地球にて発見した人物からオーバーテクノロジーを確認。未来から来た可能性有り。』

 

 

 

 

他に根拠になるような情報が少量載せられていたが、この一文だけで十分だった。

 

 

時の操作ともなると、本当に次元が違う。

局に未来の技術情報が残ったりすれば、未来が変わる事になる等、どんな影響が起こるかわからない。

次元震だけで数世界に危機を及ぼすと言うのに、時や歴史に齟齬が発生すればどうなるか…

 

地球の調査をしている六課主要メンバーには伝えたい所だが、誰に聞かれるかも分からない通信回線を使って不用意に連絡を取る訳にも行かなくなってしまった僕は、この話をどう他に漏らさず速人達と接触するべきか悩まされる事となった。

 

 

「こう短期間に幾つも問題を持ち込まないでくれ速人…」

 

 

本人がいない上彼が犯人と言う訳でもない以上言っても仕方が無いことではあるのだが、僕は呟かずにはいられなかった。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 




トーマ「トーマ=アヴェニールと」
リリィ「リリィ=シュトロゼックの」
ト&リ「前作解説コーナー!」

リリィ「えっと…ここでは『ゲームに出てるのに出番が無いのもアレだし』って理由で、前作『風纏う英雄』で変わってる事についての説明を、私達が中心で説明するよ。」
トーマ「って、アミタ達が未来から来てる設定なら本編に出られてもいい気がするんだけどな…」
リリィ「トーマ、なのはさん達より強い人もいる所に混ざりたい?生身での修行量、六課より酷いみたいだけど…」
トーマ「……か、解説進めようか、リリィ。」
リリィ「そ、そうだね。」

『すずかちゃんを襲った管理世界製の兵器』
トーマ「これは管理世界から地球に興味を持った人が、人型機動兵器を地球の犯罪者に売ったせいでなのはさんの友人が襲われたって話だね。」
リリィ「この事件のせいで地球で妙な噂が広がって、暫くミッドに移ってたんだよね。すずかさんはもう帰れたみたいだけど。」

『ディバインバスター・インパルス』
リリィ「掌から放つ近距離速射砲撃だね。運動が苦手ななのはさんの為に速人さんが案を出して、なのはさんが調整した魔法だよ。」
トーマ「って事は…」
リリィ「どうしたのトーマ?冷や汗かいてるけど…」
トーマ「あのなのはさん相手に頑張って距離を詰めても、バインドとか防御抜きで迎撃される可能性があるってことなのか?しかも『速射』って…」
リリィ「それは…怖いね。」

トーマ「それじゃあ今回はこの辺で。」
リリィ「ま、またね!」


やっぱり前作解説はいるだろうなーと言う事と、上記理由、あとこっちだけ消すのが少し勿体無い気がして出してみました。
夏休みも終わっているので此方はのんびり投稿していきたいと思います。
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