なのは+『永遠の空』   作:黒影翼

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後日談・力の資格

 

 

後日談・力の資格

 

 

Side~ディアーチェ

 

 

 

なんでこうなった…

 

 

我は心底疲れたように深く息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

「こんな子供に力を任せておいて大丈夫なのか?」

 

それが、休みに顔を出したフレアが、ユーリを見て放った第一声だった。

基本的に魔法メインやチームでの戦闘訓練が基本となる局での訓練だけでは嫌だと、休みにわざわざ家に来ているのだが…

 

 

相変わらずコイツは…第一声がこれか。

 

 

「エグザミアは…誰にも渡せませんよ?」

 

ユーリが自分の身体を抱きすくめるように腕を抱えてフレアを睨みつける。

第一声から失礼極まりない上に、力を任せないというニュアンスの提案を出されたようなものだから、ユーリが引くのも無理は無い。

 

だが、こやつがそんな陰謀など企てるわけが無いのだ。

コイツはコイツで、速人とは違うがとてつもない大馬鹿野郎の一人なのだから。

 

「ロストロギアなど、封じる気はあっても使う気はない。」

「封っ!?」

 

物騒な台詞に身を抱えるユーリ。

 

逐一誤解を招く台詞を吐いているが、おそらく『有事の際に』という事だ。

見かけたロストロギアを全部封印する気なら、小鴉が見逃されている訳が無い。

 

が、レヴィとユーリはそこまで察する事も無く、フレア相手に警戒心全開でぴりぴりとしている。

 

そんな様子を見ながら、フレアは小さく息を吐いた。

 

「リライヴのように最大値だけでも封印しておくべきではないのか?」

「珍しく人の家の内情に突っ込むなぁ…心配は分かるけどな。向こうでもクレーター作ったらしいし。」

 

速人まで庇わずフレアの口に乗る始末。

ユーリの機嫌は段々と悪化していく。

 

「そんな心配なら試してみるか?ユーリが加減して戦えるか。」

「やります。」

 

速人はフレアに提案したのだが、何故か普段押しの弱いユーリが、自分から進み出てフレアを見ながらそう言った。

速人も意外だったようで、自分で提案を出しておきながらユーリを見て目を瞬かせている。

 

「おいユーリ、別に他所者の戯言に付き合う必要など」

「見ててくださいディアーチェ、私頑張りますから。」

「む…ぐっ…」

 

バトルマニアでも修行好きという訳でもないユーリが無理してフレアに付き合う必要などないと思い止めようとしたのだが、我を見ながら静かに、でもはっきりと告げたユーリの声を聞いて言葉が詰まる。

 

不安を抱えたまま、それでも覚悟の決まった声。

わがままの全てを聞く…という訳ではないが、意思する事が出来るようになって久しいユーリの自由は、出来るだけ守る様にしている。

 

第一、それでなくとも我やレヴィを、速人はそうやって守ってきた。

ユーリに限っていきなり要望を無視するようなことになるはずが無い。

 

 

 

 

無いのだが…

 

 

改めて深く息を吐く。

全く…無視すればいいものを、宣戦布告を受け取って負けては言い訳も聞かぬではないか。

ユーリの奴、そこの所分かった上で戦う事にしたのか?負ける事を考慮していないのであれば、思い上がりが過ぎると言わざるを得んが…

 

 

フレア=ライト一等空尉。

管理局ですら扱いに困る無辜の民の守護者。

 

先のように口から何から悪いというかやり辛いというか…ともかく、あの有様でも重宝されるだけの実力の持ち主だ。

 

超高密度の魔力を宿した槍の先端は貫けぬ物がないというレベルの破壊力を有し、地球に来てからの技巧訓練のかいもあって、近接戦闘が可能かつ槍の面積を破壊するだけで倒せる相手には絶対に敗北しないとすら言われる程。

 

広域殲滅や巨大兵器等の破壊に関しては途端に戦力が落ちるあたりは、なのは達と違って融通が利かないが、それでも対人相手には類を見ない戦力として重宝されてはいるのだ。

 

 

そんな奴相手に試合。

いくらユーリの出力が桁外れと言っても、全てを扱いきれる訳でもないというのに…

 

 

 

 

 

「珍しく渋い顔してるね。」

「む…」

 

経緯を思い返していた我に声をかけてくるなのは。

いくら模擬戦と言っても、ユーリがフルスペックで戦うのならそれなりの舞台が必要だ。

そういう訳で、管理局に許可を貰ってある程度の面積がある場所を借りる事になった。

局の施設と言う事もあってか、顔を出す事が出来たらしい。

 

「ふん…別に休日と言うわけでもないだろうに…サボりか?」

「あはは…まーフェイトちゃんとかと違って調査段階から動く事ってあんまりないし、教導も基本短期だからね。」

 

否定も肯定もせず笑うなのは。

…どうせ様子見もかねているのだろう。

あのフレアが外部の人間と模擬戦をやると言う意味でも、全力戦闘にある程度の敷地が必要な人間との模擬戦という意味でも、なのはのような見張りを配置する理由には十分だ。

 

その見張りがなのはなのは…身内が手を回したのだろう。

ユーリの力が他所者に知れ渡ることも此方としては好ましくは無いからありがたいが。

 

「大体なんで奴がユーリのことを知っている?」

「それは言わないであげて、フェイトちゃん家で頭抱えてるから。」

「あぁ…」

 

そう言えば、『もう少しフレアをどうにかしたい』と息巻いていたな、奴は。

フレアは家に良く来るし、隠しても時間の問題だと事前説明でもしておいたのだろう。

 

それが早々軽い騒ぎで模擬戦だ、頭も抱えたくなる。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、フレア空尉も確かめておきたいだけ…だと思う…し。」

「二度も言葉に詰まるようなフォローなどいらんわ、何の足しにもならん。」

「にゃはは…」

 

苦笑するなのは。

フレアめ…ユーリを無事に帰さなかったら貴様もただで済むと思うなよ…

 

 

 

Side~ユーリ=エーベルヴァイン

 

 

 

…子供だって自分でも分かっていた。

きっと彼の言うことは正しい。

 

優しさで出来てるんじゃないかって思うくらいに綺麗で優しいリライヴですらその力を封じられていて、話で聞いた限りだと、局員の筈のなのはさん達ですら独断専行回避のために許可を貰わないと全力が出せない様になっている。

 

 

ディアーチェに『止めてもらった』私の力は…未だに全力を制御しきる事が出来ないでいる。

そんな私が全ての力を自由にさせて貰っているのは、きっと危険だ。

 

 

でも…

 

 

「…行きます。」

 

それでも、私は構えた。

彼に勝って、エグザミアの力を守り…

 

この場所にいるために。

 

 

 

 

「セイバーッ!!」

 

遥か遠く伸びた二本の刃を『連続』で振るう。

長い上、敵を倒す事しか考えていなかった昔は両方をいっぺんに振るしか思いつかなかったけど、腕を交差させれば片方ずつ振りぬいてもタイミングをずらせば大丈夫だと知ってからは出来るだけそうしている。

 

けれど、当たり前に私の攻撃を避けて接近してくるフレア。

『回避軌道』を取らず、ほぼ直進しながら身体を捻ったりするだけで攻撃を回避する。

 

…防御を使った強行突破なら当たる分期待があるのですが、当てられないとちょっと不安です。

 

けれど、そんなもの抱いていられる相手ではないので、意識を切り替える。

 

「はっ!」

 

魄翼を爪の形で、出来るだけ大きくして振るう。

小さいほうが当然小回りはきくけれど、私の技量じゃ小回りが利いても取り回しが良くても、きっと彼には通じない。

 

だから、速人にそうしたように、紙一重で回避しても大きく動かざるを得ない攻撃をするしかない。

 

 

そんな考えすら甘かった。

 

 

フレアは私の振るった爪に槍の先端を立てると、その場所を支点に槍を動かす事で私に向かって『加速』した。

 

「っ…」

 

背後を取られた私は全展防御を展開する。

技巧タイプの人ならそれほど出力は高くないはず…準備時間が無ければそう簡単に破られない筈だ。

 

ここで、まだ甘かった事を知る。

 

一瞬、ただの一撃を受けただけで防御がきしむ。

もたないと思って咄嗟に動く。それと同時に防御が破れて、槍の先端が私の背中を掠めた。

 

開始直後、こっちの攻撃を3回捌かれて、槍を振り抜かれた。ただそれだけ。

なのに…

 

 

つ…強い…

 

まともに当たってどうにかなる相手じゃない。

 

「くっ…なら!」

 

ヴェスパーリング。

貫通力の高い輪を飛ばす。

 

並の攻撃なら止められるはずも無いけれど…

無造作にも見える槍の一振りで、あっさりと断ち切られてしまった。

 

 

 

Side~ディアーチェ

 

 

「…相手が悪すぎる。」

 

以前ユーリ相手に総出で戦う必要があったのは、『防御を破れる力』と『広域攻撃を裁きつつ接近可能な技量』を両立する人間が居なかったからだ。

リライヴが全開であったなら、奴一人でも片付いた事だろう。

速人では常時防御を破る事も出来ないし、『徹』では直接衝撃を通してしまうから魔力ダメージを通す事が…昏倒させる事ができない。

 

だが、フレアは両方を持っている。

 

「うーん…ユーリも魔力運用上達してるんだけどね。」

 

なのはがユーリの出来を見て真剣な表情をしている。

ざっと見ただけではただぼろ負けしているようにしか見えんはずだが、よく気づく。

さすがに教官だけの事はあると言う事か…

 

「サクッとぶっ倒してくれないと、ユーリ止めるのに手間取った俺がフレアより弱いことになりそうなんだが…ユーリどうにかしてくれないかな?」

「ユーリにはレヴィほどの意思もシュテルほどの知も無い。逆転や攻略を見出すのは厳しいだろう。」

「速人お兄ちゃんがいきなり現れても驚かないんだね…」

 

何も無くいきなり現れた速人と普通に会話をし始めた我を見て苦笑するなのは。

こやつの気配が分からぬのは今更だ、集中していようがいまいが関係なく分からぬのだから仕方ない。

 

「じゃ、もう少し近くで応援しようぜ。お前が近くにいればユーリも張り切るだろうし。」

「あ、こら!」

「ちょ、勝手に手を握らないでよ!!」

「何だよ二人して、菌が映るーとか子供見たいな事言わないだろうな?」

「それは言わないけど…引っ張らないでよー!」

「わ、我は別に…ええい、もう勝手にしろ!!」

 

速人は我等の手を引いて、問答無用とばかりに歩き出した。

何の気もなしに見えることでも、何か考えている事があるからなこやつは…

ユーリのためだとするなら、付き合ってやるか。

 

 

 

Side~ユーリ=エーベルヴァイン

 

 

「スピアー!!」

 

多量の魔力弾を放つ。

 

まともに戦っていたんじゃ勝ち目が無い。

後はアドバンテージに頼って攻撃を降り注がせる位しか思いつかなかった。

 

さすがに彼もこの雨の中を突っ切ることは出来ないのか、その場にとどまり降り注ぐ魔力弾を槍で捌きつつ回避する。

 

「シューティングスターと同質の魔力散弾か…厄介だが、これだけではな。」

 

けれど、結局これも無傷で凌いでしまった。

つまらなそうに槍を下げたフレアは、冷めた目で私を見ている。

 

「…出力だけあったところで、この程度で速人達と肩を並べられると思っているのか?」

「っ!!」

 

淡々と告げられた問いかけ。

 

見透かされている。

 

何の経験の無い子供。

フレイアやアリシアみたいに私生活だって何が出来るわけでもない。

だから…この並外れたエグザミアの力が無かったら、私が何かの役に立てる時が無くなってしまいそうな、そんな気がして…

 

「奴は役にたたないからと人を見捨てるような事はない。私一人抑え切れない程度の力など、意地を張らずに捨てておけ。」

「嫌…です!」

 

再び刃を伸ばして振るう。

けれど、今度は両手持ちにした槍を一閃しただけで刃が断ち切られてしまった。

 

「まだっ!!」

「無駄だ。」

 

ヴェスパーリングを出鱈目に撃つ。

けれど、横へ下へとあっさりと回避されてしまう。

 

「どちらにせよ、ここで負ければ全て終わりだ。」

「負けません…私は絶対っ…こんな所で!!」

 

中空から禍々しい槍のような塊を取り出す。

 

 

エンシェントマトリクス。

 

 

最大出力のこの槍なら壊せないと思うし、回避されても中空炸裂させればある程度の範囲を塗りつぶす事ができる。

 

フレアが下から私を見て身構えるのが見えて…

 

 

 

「はああぁぁ…っ!?」

 

投げ放とうとした瞬間、フレアの先に見えた地面に小さな人影が見えた。

3つの人影、私のよく知る人影。

 

 

私の大切な人の……

 

 

だめです、今こんなもの投げたら皆が!

 

 

止めないと!止まって…っ!!

 

どうにか槍を放つのを堪え、その場にとどまる。

 

 

 

「及第点だ。」

 

 

最後、さっきまでの冷たい声が嘘のように優しげな声が届いたと思ったら、私は意識を失った。

 

 

 

Side~フレア=ライト

 

 

 

私は気を失ったユーリを抱えて、下に来ていた速人達の下に降りた。

 

「こんな幼い女の子相手にきっついなぁ…局員じゃないんだぞ?」

「貴様の所に住んでいて、並のロストロギアを遥かに凌ぐ力を持っていて、その制御も怪しいのに、局の管理を外れているなどと、これだけの悪条件が揃っているのにただの子供とは見れん。」

 

速人に呆れ交じりの声をかけられたが、突っ返すように言葉を並べる。

 

悪条件、程度では済まない話だ。

幼子に核爆弾とその起爆スイッチを持たせているようなものだ、到底見過ごせる状態ではない。

 

それゆえの確認と言ったところだが、力任せに走りそうになったものの3人の姿に気づいて堪えたあたりは評価できる。

 

「でも、堪えたのに及第点なんだね。」

「当然だ、敵に負けては奪われるのだからな。」

 

堪えたユーリに力を任せる事自体は許容できなくも無いが、それで負けては…

 

「もしお前がエグザミア目当ての襲撃者だったら、奪われてるって言いたいんだな?」

「あぁ。」

 

確認するように聞いてくる速人の言葉に一つの間も無く頷く。

なのははその表情を曇らせつつも、何も言わなかった。

寛容になれる代物でない事は理解しているのだろう。

 

「ハズレだ。」

 

だが、直後ニヤリと笑った速人が何の迷いも無くそう言いきった。

 

「何を甘い事を」

「もしお前が襲撃者なら…」

「こうなるのだ、よく覚えておくがいい。」

 

この結果を見てまだ笑っている速人相手に苦言を呈しておこうかと思った直後…

 

 

速人とディアーチェがデバイスを機動し、私に突きつけた。

 

……上等だ。

 

 

 

 

 

結局、速人を含めた二人掛りで奥義まで使われた私は、完全に意識を立たれるまで叩きのめされた後、フェイトに呼び出されて説教を受ける事になった。

 

 

SIDE OUT

 

 




二作連続で日常系統だったのではさんでみました(苦笑)
やたら超人的な演出になっちゃったフレアですが、さすがに平時のユーリは暴走中と同程度の出力は無いです(汗)
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