・IFのため本編とは違う事が大小発生します。
・作者に恋愛経験はありません(苦笑)
今回は速人とシュテルです。
Side~シュテル
主従の方は気にしないだろう。
あのマスターがそんなことを気にするとは思えない。
身体のほうは…この幼い身体のままが好みでないのなら、マスター好みに弄る事もできる。
それを許してくれるか、望んでくれるかと言う問題はあるが、それでも重大な問題と言うほどではない。
本当の問題は…
「この身が…高町なのはを模した、永遠の作り物と言う事…ですね。」
義理とはいえ、妹として見ている人と同じ…いや、本物をベースに作った身体。
正常ならどう考えても手を出さないでしょうね…妹の人形やコスプレをした恋人と過ごすなど、普通ありえない話です。
『私は私ですが、私がなのはのコピーであるのも事実ですから間違いではありません。』
無視できない事実。
根底から覆す、と言う手もあるにはあるが…
「…どう考えても得策ではないですね。下手をすると私の存在自体が消えかねませんし、それでなくても、戦闘能力には確実に影響が出るでしょう。」
宵の騎士として、紫天の騎士として、いくら何でも本分を忘れるにも程がある。
…いや、こんな考えが出てしまう事自体が本分を忘れきっているとも言える。
「ふぅ…ん?」
溜息を自覚した所で、私を見ているレヴィの姿に気付く。
「…ねぇ、楽しいの?」
「え?」
レヴィの問いかけに自分の状態を確認してみる。
湯船に浸かりマスターの事を考えると同時、自分の体型に嫌になって思考に入り…
今は、裸で鏡を見ながら自分の胸に手を…
「…いや、あの、レヴィ、違います。」
「どしたの?何か顔赤いけど…」
「いえ、大丈夫…と言うか、忘れてください。」
邪気の欠片もない顔で首をかしげるレヴィを見ていると、慌てるのが逆に変に感じた私は、思い直して忘れるように念を押すに留めた。
アリシアを見ていただけの時は、覚悟を持って素直になれば少なくとも悩んだり迷ったりなどはしなくてもいいと思ったが、実際にはこの有様。
「はぁ…」
情けないですね、全く…
~永遠の空IF・創られた身体、無二の心~
「という訳で、協力して欲しいのですが。」
「偶の休みに娘と過ごそうとしてる人を呼び出して言う台詞?それに、いきなり言われてもどういう訳だかさっぱりなんだけど…」
とりあえず、元の身体の持ち主にてマスターの妹であるなのはとは話す価値があると考えた私は、休みのなのはを呼び出した。
知らない人間に聞かせる話でもないと、防音のホテルの一室を借りようとしたものの、なのはが嫌がったので仕方無く私の部屋に呼ぶ事になった。
ここで閉め切って軽く防音結界でも張っておけば、そうそう誰かに聞かれる事もない。
「あぁヴィヴィオなら心配なく。『なのはに用事があるので、エメラルドスイーツ謹製、プティング三種セットで手を打ってくれませんか?』と、誠心誠意頼んで笑顔で許可を貰いましたから。」
「ヴィヴィオ…」
プリンと引き換えに売られたと勘違いしたのか、がっくりと肩を落として落ち込むなのは。
実際は『強くなるって約束したから我慢する!』と、涙ぐましいガッツポーズを見せていたのですが。まぁ四六時中仲が良すぎてもそのうち破綻しそうですし、多少は喧嘩したほうがいいでしょう。
「ま、まぁこっちの事は置いておいて…恋愛相談なんて私にされてもまともに返せないよ?」
「そうでしょうね。」
「自分で言っててなんだけど、そう返されると虚しくなるね…」
先ほどから私が口を開くたびにダメージを受けている様子のなのは。
…こうやって弄るのも好みではあるのですが、本題から逸れすぎると話が進まないのでこのくらいにしておきましょう。
「直接的な恋愛相談…というわけではありません。ただ、相手が貴女の兄であるマスターで、私の体が貴女の体を元に構成されていると言う点についてです。」
「でも、スバル達には気にしていないような事言ってなかったっけ?」
「言いませんでしたか?私がなのはの身体から構成されている事『も』事実なのです。もしそこを無視できると言うのであれば、この身体のまま色々してもいいんですよ?具体的には」
「ごめんなさい、私が悪かったです。言わないで。」
頬を朱に染めたなのはが謝ってくるのを聞いて小さく息を吐く。
尤も、それ以前の問題で具体的な何かが出来るような仲になれていないのですが。
とはいえ、身体の問題を解決してからでなければ色々と試す気にはなれない。
アリシアがアレだけ恥知らずな真似を繰り返して効果がないのだから、アリシアより幼い見た目ではあまり意味は無いだろう。
「でも身体を弄ると言っても技師…アリシアちゃんの仕事になるよね?私に相談って?」
「貴女から見て、何処まで弄れば『私と関係ない』と言えるか…それを聞きたいのです。」
今時分でも歳は勿論髪型や色彩程度は違うが、やはり面影はかぶってしまう。
本人が否定できるくらいに違えばかまわない…と、割り切る基準にはなる。
「うーん…そう言われても、私とシュテルちゃんは違うからなぁ…」
「ふむ…つまり、なのはは私がマスターと結ばれる事そのものが嫌だと。」
「にゃ!なんでそうなるの!!」
この身体がなのはと違い、それでも私とマスターが結ばれるのを嫌がると言う事はつまりそういう事かと思ったが、なのはは慌てて否定する。
「い、一回普通に大人モード作ってみればいいんじゃないかな?お兄ちゃんのこととか、私の事とか全部無視して…魔法戦やりやすいようにとか。」
「…この期に及んで魔法戦ですか。」
「あぅ…心底呆れないでー…」
凄まじく場違いな案を出してくれた魔法馬鹿を冷めた目で見つつ、なのはの提案を反芻する。
…戦技に傾倒する必要があるかは置いておくとして、何も考えずに大人モードを作ってみると言うのは手ではある。
「…ですが、たしかにそれは真っ先に思い当たる事項ですね。通常時がこの幼い身体であるという固定概念にとらわれていたのかもしれません。」
「あ、試した事なかったんだ。」
「はい。」
なのはの方も意外だったのか提案を出しておきながら驚いたような反応をする。
「どちらにせよ私一人では無理なので、結果等が出たら報告します。ヴィヴィオが待っているでしょうから早めに帰ってあげてください。」
「わかった、無理しない程度に、節度を守って!頑張ってね。」
「大丈夫ですよ、アリシアと一緒にしないで下さい。」
節度を守って、とやたら強めに言うなのはに肩を竦めて答えつつ、私となのはは揃って部屋を出た。
なのはは帰り、私は研究室へ。
こもっているアリシアに、なのはとの話を伝えてみる。
「なるほど…その線は試した事なかったね。」
すこし考えるように腕を組んでいたアリシアは、キーを勢いよく叩き始める。
「それじゃ、戦闘バランスとかも考えて作ってみますか。要望とかあったら」
「リライヴより強くフレイアよりもスタイルよくお願いします。」
「ごめん無理。」
そんな冗談を皮切りに、私の別形態の作成が始まった。
Side~高町速人
アリシアに研究室に呼び出された俺は、なぜか途中で呼び出したアリシアとすれ違う。
『ま、お披露目くらいは二人きりでね。』
とか言ってたから何かあるんだろう。
とは思ってたんだが…
「…どうでしょうか?」
入って見た光景に、俺は言葉を失った。
肩を出したゴシックドレスに肘が隠れるくらいの長さのドレスグローブ。
髪型こそ変わっていないものの、全体的に背が伸びて大人びた様相となっている。
「もう少し胸があったほうが良かったでしょうか…ささやかな抵抗なのかアリシアがあまり乗り気になってくれず…」
胸の中心当たりに両手を置いたままで不満げに呟くシュテル。
確かになのはよりも一回り小さいように見えるが、スレンダーと言うか本人の整ったような落ち着いた雰囲気もあって、違和感にならない。
「あ、あの…」
「え、あ、あぁ…ちょっと綺麗でびっくりした。うん、似合ってると思うぞ。」
「…そうですか、よかった。」
褒めたからか安心したらしく小さく笑みを見せるシュテル。
本気で見違えるな、これは。
「コレだけ出来がよければ皆にも自慢」
先導する気で部屋を出ようとする俺の腕をシュテルが掴む。
しっかりとつかまれている。と言うのに、なぜか頼りなさげで…
「皆は…いいんです。」
「え?」
「好きです、マスター。」
振り返った俺の目をまっすぐ見て、けど不安そうに告げるシュテル。
捕まれた手を振り払う気など当然ないし、その手が微かに震えているようでは尚更で…
「この際、私一人だけ特別になどとは思っていません。それこそ寵姫でもかまいません。」
らしいと言うかなんというか、聞きなれない言葉を使うシュテル。
だが、そんなことに触れることなどできる空気ではなく、俺はシュテルの言葉の続きを待った。
「ですが…私だから特別答えてくれないのですか?なのはのコピーだから、元の身体がマスターの好みから外れているから、私が…人の身ではないから…」
だんだんと顔を上げていられなくなったのか、俯いてしまうシュテル。
流石に…答えるしかないか。
Side~シュテル
「まぁ…そうなるな。」
「っ…」
すこしだけ申し訳なさそうなマスターの言葉。
でもそれは、私が何をどうしても届かない事を意味していて…
ずるりと、マスターの腕を掴んでいた手から力が抜ける。
私はもう…マスターにこれ以上近づく事は…
「今のところ不老不死になるアテが無いからな。」
「え?」
思いもしない方向の言葉に、私は俯かせた顔を上げる。
苦笑いを浮かべたマスターは、小さく肩を竦める。
「生身同士でも全く同時に死ぬ事なんてそうそう無いけど、だからって取り残すのも…な。」
マスターの説明は、確かに『私が作り物である事』が、まともな答えを返さない理由ではあった。
けれど、それは決して忌み嫌ったものではなくて…必ずマスターが先に死んでしまうだろうことを危惧したからで…つまり…私の為…で…
「それで…まともに答えてくれなかったのですか?」
「ま、な。三人で相談とかしてるし、一人特別恋人を決めろって言われると答えかねるってのもあったし。」
身体がどうだ、見た目がどうだという話とは、あまりにかけ離れた問題。
それだけマスターが真剣に考えてくれていたと言う事でもあって…
「…ふぅ、全くマスターは。」
「そこ溜息吐くとこか?」
「吐く所ですよ。」
肝心な所は考え損ねているマスターに近づいて、その手を取る。
「振られたらそれだけで十分に傷つきます。皆が傷つかないようにと心配しているんでしょうけれど、その結果何も答えなければずっと不安なままですよ。」
「…なるほど…な。確かに俺が馬鹿だったみたいだ。」
私のとった手が握り返され、軽く引かれたかと思うと私の体はマスターの腕の中に納まっていた。
「暖かい…ですね。」
「仮にも研究室だからな、できるのはせいぜいで…」
「え?んっ…」
ぴったりと密着した状態からあごを指で撫でられたかと思ったら、口を塞がれた。
目の前にはマスターの顔があって…
「…このくらいだけどな。」
ゆっくりと離れたマスターの顔が、悪戯な笑みを浮かべる。
私は少しの間、どこか呆然と他人事のように状況を反芻して…
口付けされたと気付いたところで、一気に顔が熱くなった。
「ず、ずるいです…優柔不断ならそれらしく押しも弱いものでしょう?」
「色々決めかねて不安にさせたみたいだからな。それに、俺は決めたらすぐ動く方だ。」
照れている私を他所に笑顔でさっぱりと答えるマスター。
…よくよく考えれば、控えめなマスターと言うほうが不思議ですね。
此方ばかり恥ずかしくなるような事を堂々とするマスターだけれど、マスターを恥ずかしがらせるのは諦めた方がいいかもしれない。
手を繋いだままで部屋を出る。
「私は出来れば宵の騎士のまま愛されたいので、寵姫がいいのですが。」
「俺国持ってるわけでもないのに表現それでいいのか?」
「ディアーチェが王を名乗るのですから大丈夫でしょう。」
「それアイツが聞いたら怒るぞ。」
他愛ない会話を交えながら歩く。
繋いだ手から伝わる暖かさが、これからは今までよりずっと傍にあると思うと本当に幸せな気分になる。
「あ、あーっ!!」
「よ、アリシア。驚かせて貰ったぞ。」
居間まで来ると、アリシアとリライヴが向かい合って座っていた。
アリシアが私達が手を繋いでいる姿を見て大声を上げる中、マスターはあいている片手を上げて軽く挨拶する。
リライヴの方は何も知らなかったのか、私が大人になっているこの状況がよく分からないのだろう。
説明はアリシアでも出来るだろうから、今は…
「折角ですから今日くらいは二人きりで過ごさせてくださいね。」
「え?あ、う、うん…おめでと…今日くらい?」
リライヴが戸惑いの声を漏らす中、私は繋いでいた手を腕ごと絡める形に変える。
「私は寵姫でかまいませんので、マスターがよければ正妻は二人に譲りますよ。」
「あー…まぁ、そういう訳で。今日のところは失礼するぜ!」
私の言葉に二人が反応を示す前に、マスターは私と絡めた腕にしっかりと力を入れて、早足で家を出てしまった。
「すこし痛いです…」
「ったく…いきなり混乱を誘うなよ。」
私ばかり振り回されていたので、少し位マスターを困らせて見たくなっただけだったが、なぜかマスターは慌てて逃げ出してしまった。
「今たきつけたら絶対説明とか色々で潰されたろ、今日くらいは二人きりで過ごすんじゃなかったのか?」
「ぁ…」
笑顔で告げるマスターの言葉に胸の奥で何か動くような感じがする。
何でナチュラルにこういう事を思いつくんですか…
私が手玉にとられることなんてあまり無いはずなのに、何で色事に慣れても無いマスターに振り回されるのか…
「これが『惚れた弱み』と言うものなのでしょうか…」
「弱みって…楽しいならいいだろ?」
明るく言うマスター。
本当にマスターらしい答え、こんな事なら何も気にしない方がいいのかもしれない。
「…よければ、なのはの真似もさせて貰いますよ?」
何も気にしない。その一環で、悪戯のつもりで言ってみる。
反応が気になって、隣を歩くマスターの顔を覗きこんでみる。
と、マスターは小さく息を吐いた後、私の頭に手を置いてすこし乱雑に撫で回した。
「馬鹿なこと言ってんなって、そんな事気にしなくてもいいんだよ。大体気配も空気も全然違うんだからさ。」
髪を乱された私は、呆然とマスターを見る。
マスターはすこし呆れたようだった。
初めから、私の心配なんてまるで無意味だったのだ。
普通気にかかるだろう事をまるでなんでもないことのように言ってのけるマスター。
そこにすこしの嘘も偽りも感じない。
「本当…ずるいです。」
気配が違うとか言われてもさすがに私には分からない。
見た目の段階で戸惑っていたのが馬鹿らしくなるくらいにあっさりと言われてしまった。
「今は二人きりを堪能しようぜ。」
「…はい。」
手を繋いで町を回る。
…いつか、間違いなく来る別れの時。マスターが案じてくれた時。
けれど、何も無いままの別れは、その虚しさと痛みは既に体験してしまっている。
ですから、『その時』がきた時に後悔しないよう…少しでも傍にいましょう。
SIDE OUT
という訳で今回はシュテルIFでした。