なのは+『永遠の空』   作:黒影翼

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注)IFはオリ主との恋愛話になっております。下記を確認した上で読んで下さい。
・IFのため本編とは違う事が大小発生します。
・作者に恋愛経験はありません(苦笑)


すずかIF~惑う答え~

 

黒い影。

手や刃や銃が、狂気の笑みや怒りが、いろんな声と意思が向けられて、身体が蝕まれていく。

 

 

私が異常だと知ってから、それに不安を覚えたり、発情期前後に偶に見る夢。

 

 

そんな夢がこんな風に変わったのは…いつからだっただろう。

 

 

黒い影を払う風。

その後に見える赤。

 

「天下無敵のスーパーヒーロー高町速人!ただいま参上!」

 

真紅のマントをたなびかせて振り返る速人君。

私はそんな速人君に感謝しながら抱きついて…

 

 

 

 

 

私の身体を抱き返されて、顔が近づいてくる。

あれ?ちょ、このままだと…

 

 

 

 

 

 

 

「や…ちがっ!…え?」

 

夢に逆らったのか何か分からないけど、私はなぜか飛び起きた。

 

夢を見た直後だからなのか分からないけど、はっきりと覚えてしまっているその光景。

普段は影を払われる程度。誤差はあるけどお礼を言ってそれで終わりだ。

 

何をやっているんだろう、これじゃまるで…

 

「まるで…も何もない…」

 

片思い。

それも、夢に見るほど。

 

でも…

 

「無理…だよね。」

 

困っていたら助けてくれる、苦しんでたら救ってくれる、行き場が無ければ傍に置いてくれる、行きたい所があれば…

 

 

 

送り出して…くれる。

 

 

 

そうして私は一人、帰ってきた。

勿論、一時避難だったのだから落ち着いたら戻ってくるのは当然だけど…本気で居たいと願えば、速人君は傍に置いてくれたと思う。

 

でも、お姉ちゃんのようにそう何かが出来るわけでもない。

手伝いは出来るけど、本気で刀を作る為に研究を重ねていたお姉ちゃんのような目標みたいなものも定まってない。

 

こんな有様で、あの速人君の傍にいられるはずもなかった。

 

 

 

すずかIF~惑う答え~

 

 

 

休日の朝、アリサちゃんと家のテラスでお茶を片手にのんびりしている時に、彼は来た。

 

「お邪魔しまーす。」

「で、出来たら玄関で呼び鈴鳴らしてくれないかな?」

 

木々からテラスに飛び込んできた速人君に、私は苦笑しながらそう言った。

 

「この馬鹿にそんな期待するだけ無駄でしょ?」

「新鮮な気分にはなれるから、いいかな。」

「無理してかばわなくてもいいのに…」

 

向かいに座っているアリサちゃんが肩を竦める。

でも、ちょっと位滅茶苦茶なほうが速人君らしいとも思う。

 

「今日はどうしたの?」

「用事でこっちに降りてきたから、折角だからと思ってな。」

「アンタもなのはもそれなりのイベントなりなんなりないと遊びにも来ないからねー。」

 

呆れたように肩を落とすアリサちゃん。

でも二人とも忙しい身だし、仕方ないと思う。

 

「アンタはヒモ…もとい暇なんだからいつでもこれるでしょうが。」

「失礼な!何もないときは基本修行だし、一応は依頼もあるんだぞ!…黒字行くかは微妙だけど。」

 

苦い表情で視線を逸らす速人君。

Js事件の報奨も途中脱走したから契約破棄扱いでもらえてないし、ユーリちゃんを助けた時も無断参加扱い。

消耗した装備は当然実費だし、難度はともかく黒い依頼は受けないから、そんなに頻繁に仕事も入らない。

 

「…大変だね、ヒーローさんも。」

「アリシア達がいてくれなかったら風来坊よろしく文無しであちこちさまよう事になりそうだったな…いやホントに。」

「普通に管理局行けばいいのに。変なこだわりね、本当。」

 

アリサちゃんが呆れ混じりに苦笑を浮かべ、それを隠すようにお茶を傾ける。

アリサちゃんも本当は分かってる。それだとどうも出来なかった人たちがいる事を。

 

『どうせアイツ大抵の人は上手く丸め込んでるんだから、たまには酷評受けておいた方がいいの。』

 

こういう意味だと…アリサちゃんの方が力になれてる気さえする。

私は傍にいたときですら、ただいただけに等しかったから。

 

「どした?」

「あ、なんでもないよ。それより、そういう事ならゆっくりして行ってよ。こっちに来る機会もそんなに多くはないでしょ?」

「え、あぁ。迎えが来るまではのんびりしてるつもりだ。」

 

…朝の夢のせいで、変な事ばかり考えちゃうみたいだ。

大丈夫、きっとそのうち忘れられる。

それまで夢に見るくらいは…許してくれるよね。

 

 

でも…聡いアリサちゃんの前で、いつまでも色々隠し通せるはずがなくて…

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった。

 

「むー!むーっ!」

 

口に布を巻かれて縛られた状態で、助手席で騒ぐ私。

一方で、黒スーツなんて着てまるで男装みたいになっているアリサちゃん。

 

「…すずか、帰ってきた時から速人の話で寂しそうにしてたのに、私が気付いてないと思った?」

「ん…」

 

返事をしようとして布を巻かれている事に気付いた私は、ただアリサちゃんの言うがままを聞き続ける。

 

「向こうでできる事なんて、本気になればいくらでもあるでしょ。逆に言ったらこっちにいたからいろいろできるって訳でもないし。」

 

答えられなかった。

確かに、フレイアさんだってやりたい事をちゃんとやれてるのに、私が出来ない理由はない。

 

「答えてすずか、本当に速人を捨ててこっちでなにか望みがあるわけ?」

 

信号を前に止まる車。

その中でアリサちゃんが鋭い瞳で私をまっすぐ見る。

 

縛られていたって頷くくらいはできる。

出来る筈…なのに…

 

「…ま、色々諦めるのはフラれてから位でいいんじゃない?どうせ、告白なんてしてないんでしょ。」

 

そう言ったアリサちゃんの目は、とても優しかった。

…強いな、アリサちゃんは。

 

 

「そう言う訳だから…速人の奴を見返すためにも、一暴れしてやるわよ!!」

「んぅ…」

 

それはちょっと違う気が…と思ったけど、口にも出せないから結局乗せられているしか出来なかった。

 

 

 

Side~高町速人

 

 

二階廊下の端から消える黒尽くめ二人を見た俺は、窓から外に出て家の入り口から先回りを試みる。

 

気配を頼りに先回りして、二人を捕捉すると二人はそれぞれに構えを取った。

一人は金属の棒を手に構え、一人は腰を低く沈めて拳を握る。

 

すずかとアリサの気配は既に無い。ったく…

 

「俺の前で『誘拐』に手を貸したんだから…色々あきらめろ。」

「「げ…」」

 

ナギハを展開、真紅のマントを纏ったいつものフル装備になった俺は、黒尽くめ二人に向かって飛び掛った。

 

 

 

 

「うぐぐぐ…」

「ちょ、ちょう加減してもええやろ…」

「折角後生で覆面残しておいたんだから、最後まで喋らないでおいたらどうですか?」

 

足やらお腹やらの服を適当にばらされ、ボディへの打撃で転がされた二人を見ながら、俺は小さく息を吐いた。

なーにやってんだか、晶師匠もレン師匠も。

 

「ま、その格好で帰って恥かいて下さい。何なら肉とか書きましょうか?」

「ち、知人の頼み聞いただけだろ…」

 

転がったままで答える晶師匠。

確かにそれも嘘ではないんだろうが…

 

「…ぶっちゃけて?」

「久々に速人君相手とやるんもおもろい思て。」

「まさかデバイスまで使うと思わなかったしな…」

 

まぁ確かにナギハを使う必要も無かったのだけど、車で逃げてるだろうし別に発信機とかついてるわけでもないから大変だ。

 

さて…と。どう探したもんか…

 

 

 

Side~月村すずか

 

 

 

「神社にくるのはいいけど、どうして私縛られてるの?」

「とりあえず誘拐感出しておけば、向こうに帰る理由にはなるかと思って。」

 

元々こっちで騒がれていたから、避難の為にミッドに行ったんだ。

だ、だからってこれは派手すぎる気もするけど…

 

「私が見つかってもアレだから、すずかだけここにおいていくわね。」

「う、うん…」

 

思考があまり働かなくて、縛られている身体が熱を帯びてきた。

 

ぁ…まず、これ…

 

「げ…」

「っ!」

「よう。」

 

階段を上り終えると、速人君の姿があった。

 

「さ、先回りって嘘でしょ!?」

「目立つ車だからな、ちょっと話を聞いて走ったらどうにか。偽装誘拐までやっといて信号はきっちり守ってたみたいだし、余裕だったぞ。」

「うぐ…」

 

真紅のマントに黒い服、二刀を携えたその姿は夢に見たあの姿と同じで…

 

「ったく…演出とはいえ、ホントに縄で縛るか普通?」

 

言いつつ、速人君は動きすらまともに見えないくらいの速さで抜刀。

私の縄だけを綺麗に断ち切った。

 

駄目だ…もう我慢できない…

 

「なんかどたばたしたし、今日は泊まってって…も?」

 

解放された私は、内からの熱で震えてどうにかなりそうな身体で速人君にすがるように抱きついた。

 

「あ、例の奴か。ちょっと待ったアリサ、車乗せてって」

「だ、だめっ…もう駄目…」

 

ぴったりとくっついた状態で速人君の顔を見上げる。

 

「ちょ、いくら何でも」

「夢に見るほど好きだって気付いて…こんなの我慢できるわけ無いよぉ…」

「え…」

 

滲む視界の中で速人君を見つめ…

 

 

首に衝撃を感じた私の意識は其処で途切れた。

 

 

 

Side~高町速人

 

 

 

手刀を首に叩き込んですずかを気絶させた俺は、そのまま崩れおちるすずかをゆっくりと地面に寝かせる。

 

「ちょ!いきなりなにしてんのよ!!」

 

遠くからアリサの声が聞こえるような気がするが、応対している余裕が無かった。

 

すずかを寝かせる為にしゃがみこんだ俺は、その姿勢のままで額を抑えた。

 

 

心の封殺して、ゆっくりと調整しつつ、異常を確認、修正していく。

 

 

何かが引っかかるような思考を破り、狂いそうに吼える気持ちを抑え、そうして元通りに修正していく。

 

完全に終わった所で立ち上がり、深く息を吸い込んで、小さく吐いた。

 

「ど、どうしたのよ…」

「…や、なんでもない。それより車乗せてってくれ。魔力なしで人一人抱えて長距離移動するのは疲れるし。」

「なんでもないって…ああもう、分かったわよ!」

 

すずかを抱えて階段を下り、後部座席に下ろして俺は助手席に座らせて貰う。

 

 

…催眠まで使うとは思わなかった。

 

 

視線を交わしただけでかかる催眠効果。

幸いこの手のは頭がやられてなければ自力で対処が可能だったが、薬品等と違い本当即効性だし解除も意志力次第っていうなんともやり辛い効果だった。

 

しかも…よりにもよってあのすずかがテンプテーションとは。

人前で言えないからって発作と言って伏せてるらしいが、あながち間違いでもない表現かもしれ…

 

『夢に見るほど好きだって気付いて…こんなの我慢できるわけ無いよぉ…』

 

発情ったって、狂ったりする訳じゃないんだ。

むしろ、理性が弱くなったら本音が出やすく…

 

「…アンタがどう思ってるか知らないけどさ。」

「ん?」

「普通恋愛なんてくっついて離れて繰り返すもんなんだから。初恋実って結婚してなんて流れで行ってる人間の方が希少なんだし、その…」

 

車を運転しながら口ごもるアリサ。

 

「…ちょっと位…叶えてあげなさいよ…アンタどうせ恋人いる訳でもないんだし…」

「何だよらしくないな、はっきり言えばいいだろ。」

 

聞き取れるが、ぶつぶつ途切れて聞き辛いアリサの声。

どぎっぱりしてキツめの応答が多いアリサにしては珍しいと思って突っ込んで見る。

 

「言えるかあぁっ!!!」

「わ、分かった!分かったから前!!」

 

やぶへびだったようだ。

運転中にもかかわらず俺を睨みながら殺しそうな勢いで叫ぶアリサに必死で操縦を促す。

空戦で白い堕天使を破ったヒーローが、地球で交通事故死って情けないにも程がある。

魔力なしでどっかに追突されたらありえる話だけに余計に怖い。

 

「…ま、真剣に答えるさ。」

「それ、全然分かってないじゃない…ったく…」

 

ぼやくアリサだったが、結局それ以上何かを言う事はなかった。

 

 

 

Side~月村すずか

 

 

 

ゆっくりと目を覚ます。

頭がぼーっとして整理がつかない。

えっと確か…

 

「あ…ぁっ…」

 

速人君と神社であって、我慢できなくなって、それで…

目を見…

 

 

 

私、なんて事を…

 

 

 

腕で目を覆う。そんな程度で止まってくれない涙。

 

「う…ぅ…」

 

こんな気持ちなのに、こんなに悲しいのに、未だに熱を帯びる身体が悲しくて…

 

でも、いつまでも泣いているわけにも行かない。

傍らから差し出されたティッシュを抜いて、目元を拭…

 

 

 

差し…出された?

 

 

 

「どうもー。」

「あ…ぁ…」

 

ティッシュ箱を手にしている速人君が、ベッドの横から顔を出していた。

 

私はベッドから跳ね起きて部屋から出ようとする。

けど、私は腕をとられてベッドに投げられた。

 

「速人君?私…」

「ごめん、さすがに外ではまずいかと思って気絶させた。」

「ぅ…」

 

やりきれない。

きっと私がやった事も全部分かってる。

何で謝るの…なんて聞けなかった。速人君が優しいから、優しすぎるから…

 

「なぁすずか、ミッドで暮らす気あるか?」

「え?」

 

いきなりの質問。

私はそれに答える事が出来なかった。

 

「…んじゃ、俺と一緒にいるのと地球に居るの、どっちが嬉しい?」

「っ…」

 

ひょっこりと顔だけ覗かせて悪戯な笑みと共に告げる速人君。

まっすぐに私の目を見てくる。あんな事をしてしまった後なのに…まるで何も気にしていないかのように…

見ていられなくて目を逸らす。

 

意地悪だ。断れる訳が無い。

 

「何で…何で今になってそんなっ…向こうにいた時には何もしなかったのに何で…」

「言っとくけど我慢してたんだからな?俺だって健全な青年男子な訳だし。それで、どうする?」

 

私を見つめながら、微笑んで問いかけてくる速人君。

 

「つれて…行って…」

「あぁ、よろしくすずか。」

 

邪気のない速人君に当てられたのか、それともそんな速人君だから好きになったのか、正常に考える余裕が無かったけど…

答えた瞬間、心が弾んだのだけは分かった。

 

見つめあったまま、顔が距離を縮めていって…その距離がゼロになった。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、私の身体が落ち着いたころ、私は迎えに来たリライヴちゃんと速人君、それと…

 

見送りに来てくれたアリサちゃんと一緒にいた。

 

「けどすずかと一緒にいるならこっちに残ればいいのに。」

「まだユーリやリライヴの件で無茶したってのもあるし、局が落ち着くまでは俺も向こうを離れないほうがいいからな。悪いすずか。」

 

白い目で速人君を見るアリサちゃん。

けど、速人君の方は凄く真面目に私に謝ってきた。

 

「…ごめんねアリサちゃん、色々世話かけて。」

 

でも…本当に怒られるのは私だってわかってる。向こうで出来ることも無いからって…なにもかんがえないままこっちに帰ってきたのに、アリサちゃんと一緒にいるつもりだったのに、今更になってやっぱり戻るなんて言うんだから。

 

と、うつむいていた私の額にアリサちゃんの指が近づいてきて…

 

「いたっ!」

 

デコピンで額をはじかれた。

 

「向こうじゃ私はあんまり手を貸せないんだから、そんな暗い顔してたら本当に何にも出来ないわよ?褒めたくもないけど恋人見つかったんだし、がんばりなさい。」

「…うん、ありがとうアリサちゃん。」

 

いつか…胸を張って言えるような願い事が見つけられるといいな。

 

 

 

SIDE OUT

 

 




という訳ですずかIFでした。
すずかでも『あんな設定』持ちだとさすがに色々我慢きかないのではと思った結果が…(汗)
アブナイ橋渡ったなぁ…
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